男「やっべー。また遅刻だよ。後で出席日数もう一度確認しとくか」
わいわい がやがや
男「ん? なんか教室騒がしいな」
ガラガラッ
男「ういーっす」
元スレ
転校生「あのね、友達ができたよ」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1315017642/
男子1「マジで? 俺もそれ好きー」
女子1「うっわ、露骨に趣味合いますねアピールじゃん」
男子2「いやでも、俺も結構好きだよ」
女子2「そ、そうなんだ」
女子3「お、焦ってる焦ってる」
ガラガラッ
転校生「?」
友「んあ?」
男子2「お! 男ぉー。 お前そろそろリーチじゃね?」
男「ほっとけ」
女子3「ね、転校生来たよ。転校生」
転校生「あ、始めまして。わたし、転校生って言います」ぺこり
男「あ、うん。よろしく」
転校生「はい。これから半年、よろしくお願いします」にこっ
男「! か、可愛い……」
転校生「? 何か言いました?」
男「な、何も。全然、まったく、これっぽっちも」
転校生「そうですか?」
友「あー、転校生ちゃんマジ可愛いよなぁーっ。あたしも髪伸ばそっかなー」
男子2「え。そ、そのままでも可愛いと思うけど」
男子1「そうかぁ? ……そうかぁ??」
友「うっさいな! 二度言うな!」
女子2「いいなぁ。友ちゃん」
男「おいおい。今俺のターンだろ。外野うるせぇぞ」
転校生「ふふ。みなさん賑やかで。とっても楽しいです」にこっ
男「そ、そうか。みんなうるさいけど良い奴だし、転校生さんもきっとすぐ馴染めるよ」
転校生「はいっ! ありがとうございます」
女子1「あ、男ぉ顔赤いしー。ウケるぅ」
男子1「はぁ? お前、転校生ちゃんに手ぇ出したら承知しねぇぞ」
女子3「それはあんたにも言えることだっつーの、この発情魔神。さり気無く転校生ちゃんの隣取ってるくせに」
男子1「いや、これは」
転校生「あ、別に嫌じゃないですよ」にこっ
男子1「! うわ、俺ここで一生終えてもいいかも」
友「じゃーもうそっから飛び降りたらいいよ」
男「はぁ。ほんと、賑やかだな」
転校生「わたし、このクラスになれて良かったです」
男「そう言ってもらえると嬉しいかな。遅刻してきた俺が言うのもなんだけど」
転校生「ふふっ」
キーンコーンカーンコーン
友「お、もう休み時間終わりか」
女子3「はいはい、アホやってないで席戻るよー」
男子1「待て、話はまだ終わって――」
転校生「あ、そうだ。友さん」
友「友でいいよ。教科書だろ? 机くっつけて半分見せるから」
転校生「! ありがとうございますっ!」
友「なーに、気にすんなよ。友達だろ?」にかっ
転校生「あ、ありがとう――友ちゃん」カーッ///
男「ほんと、すぐ馴染めそうだな。この様子だと」
* * *
友「なぁ。転校生ってメシどーすんの?」
転校生「あ、お弁当持ってきてる」
女子2「あ、そーなんだ。見せて見せて」
転校生「で、でも大したことないよ?」
女子3「なになに? もしかして手作り?」
転校生「ま、まぁ、一応?」かぱっ
友「何で疑問系なんだよ」
男子1「うっわ! すっげ美味そうじゃん!」
転校生「そ、そんなことないよ。冷凍食品ばっかだし」
女子1「可愛いー。ね、これ写メってもいい?」
友「なぁ、あたしのこのコンビニパンと一口交換しねぇ?」
転校生「うん。いいよ」
友「マジでか。お前やっぱいい奴だなぁ」
転校生「おおげさ。ふふっ」
男「なんつーか、すっかり人気者だな」
男子2「ま、あの可愛さだからな」
男「ん。まぁ可愛いな、確かに」
男子2「お、珍しいな。お前が女子に可愛いなんて言うなんて」
男「んなことねーよ。女子1も女子2も、女子3だって可愛い」
男子2「……友は?」
男「わかんね。それよりメシ食おうぜ、腹減った」
男子2「わかんねぇ、か。俺は、お前の方がわかんねぇよ」ぼそっ
* * *
キーンコーンカーンコーン
男「ふぁああっと」
友「お前、寝坊で遅刻しといて欠伸すんなよな」
男子1「おーい、今日空いてるか?」
男「ん? どうした?」
男子2「転校生ちゃんの歓迎会やろうって、女子1たちが」
男「お、いいな、それ」
友「で、肝心の転校生はどこだよ?」
男子1「いや、クラスの他の奴らが、『流石にお前ら転校生を独占しすぎだ』って、学校の案内に」
男「連れてかれたわけか」
男子2「ま、そんなとこ。女子1たちは先行ってるって言ってたし、俺らも行こうぜ」
友「転校生は?」
男子1「校門で待ってるって伝えてある」
男「じゃあ行こーぜ。どこ行くんだよ?」
男子1「んー。ボーリングか、カラオケ」
友「なんでもいいよ。とりあえず、あたしは何か食いたい」
男「お前……昼飯あんだけ食ってまだ食うのかよ」
男子2「でも、細いよなー」
男子1「胸もねぇけどな」
友「おい。セクハラで訴えるぞ、お前」
* * *
転校生「ふぅ、ウーロン茶、ウーロン茶っと」
男「よっ」
転校生「あ、男さん」
男「ウーロン茶?」
転校生「は、はい」
男「おっけ。…………はいっ、お待ち」
転校生「ありがとう、ございます」
男「そんな固くなんなって、男でいいよ。……疲れた?」
転校生「うん。少しだけ。カラオケ、初めてだったから」
男「そうなんだ」
転校生「うん。前の学校、女子高でね。あんまこういうとこ行こうって人、周りにいなかったんだ」
男「そういうもんなの?」
転校生「まぁ、そのとき一緒にいた女の子たちが、大人しい子だったっていうのもあるかもしれないけど」
男「じゃあ、今はちょっとうるさすぎたり?」
転校生「ううん。すごく楽しいよ」
男「それは良かった。で、初カラオケは? どうだった?」
転校生「緊張した。……でも、やっぱり楽しい」にこっ
男「そ、そっか。……って、そろそろ戻ろうぜ。飲み物遅ぇって文句言われちゃうしさ」
転校生「ふふっ、そうだね」
ガチャ
がやがや
男子1「遅ぇよ! 待ちくたびれたっつーの」
男「いやー、飲み物どれにするか迷ってさ」
女子1「あ、そのカルピスもーらいっ」
女子2「えー、わたしどれにしよっかな」
友「あたしオレンジジュースな」
女子3「子供か、あんたは」
転校生「はい、友ちゃん」
友「お、サンキュー」
男子2「じゃあ俺もそれで」
女子2「じ、じゃあ私もそれで」
男「はぁ? オレンジジュース人気過ぎだろ」
転校生「あ、じゃあわたし取ってきますね」
男「いや、いいよ。主賓なんだから、大人しくもてなされとけって」
転校生「は、はい」
男「えっと、オレンジジュース2つ追加な」
ガチャ
男「そんな美味いのか、バ○リース」
男「俺もオレンジジュースにしよっかな」ピッ
友「おーっす」
男「あれ? お前は飲み物あるだろ?」
友「ん。女子2にあげてきた」
男「? で? お前は?」
友「やっぱ炭酸飲みたくなってさ」
男「ふーん」
友「なんだよ」
男「ばーか。炭酸苦手だろ、お前」
友「飲みたいときだってあんだよ」
男「ま、別にいいけど。どぉーしても飲みきれないときは飲んでやるよ」
友「ば、馬鹿にすんなよなっ! ……でも、ありがと」
男「おい、見ろよドクター○ッパーあるぜ、ここ! って、なんか言ったか?」
友「――っ、何も言ってねぇよ!」
* * *
友「いやーっ、歌ったなぁーっ!」
男子1「あー、喉痛ぇ」
女子2「また来ようね」
女子3「そうだね。男子の奢りで」
男子2「嫌だよ」
女子1「友ちゃん、すっごく喜んでたね」
男子2「お前らがどーしてもって言うんなら、考えなくもない」
男「お疲れ」
転校生「ううん、全然。わたしもまた来たいくらい」
男「良かった。今日一日楽しめたみたいで」
転校生「うん。……本当に」
男「――あのさ、前も言ったけど、何も心配することないから」
転校生「え?」
男「そのうち、こういうのが当たり前になってくから」
転校生「! ……ありがとう、男くん」
男「え? 俺は、別に何も」
転校生「ううん。言いたいの。ありがとうね」にこっ
男「っ! ほら、帰ろっか! な! そうしよう!」///
友「…………」
* * *
男「はぁ、転校生、か」
男「なんつーか、可愛かったなぁ」
転校生『男くん』にこっ
男「へへっ」
コンコンっ
母「ごめーん、お風呂の掃除、お願いしていーい?」
男「!! び、びっくりさせんなよ!」
母「? じゃあ頼んだわよー」
男「あーはいはい、わかりました」
男「はぁ。明日、アドレスでも聞いてみるか」
* * *
転校生「お母さん、今日ね。友達が出来たよ」
転校生「転校初日なのにね、なんと7人も」
転校生「すごいでしょ? わたしだって、やれば出来るんだよ」
転校生「それでね、みんなで帰りにカラオケに行ったんだ。人生初カラオケ」
転校生「友ちゃんっていう女の子がね、すっごく歌が上手でさ」
転校生「お母さんにも聴かせたかったなぁ」
男『こういうのが当たり前になってくから』
転校生「そう、なるかな?」
転校生「なるといいな」
転校生「……それじゃ、もう寝るね。おやすみ」
* * *
弟「ねーちゃん、まだ起きてんの?」
友「あ、ごめん。眩しかった?」
弟「ん。ちょっと」
友「ごめんごめん。あたしも、もう寝るからさ。電気消していいよ」
弟「んー。おやすみー」
友「おやすみ」
友「……はぁ、なんだかなー」
友「なんだろ、なんかザワザワする」
友「……寝よ」
* * *
男「やっべ! 遅刻だよ!」
男「あと1分っ! 間に合うかっ!?」
ガララっ
男「判定はっ!?」
友「アウトーっ!」
キーンコーンカーンコーン
友「なーんつって」
男「あ、あっぶねー。驚かすなよ」
友「そっちが悪いだろ、どう考えても」
転校生「ふふっ。おはよう、男くん」
男「おう、おは――」
男「あ、髪型、変えたんだ」
転校生「う、うん」
男「いいじゃん、それ。ツインテール」
転校生「あ、ありがと」
男子1「朝っぱらからイチャイチャしてんじゃねーよ」ドンッ
男「いってぇ!」
男子1「おっす」
男「お、おう」
友「……あたしも、結んでみよっかな。髪」
女子3「お、いよいよ自分の気持ちを自覚か?」
女子1「なになに? 何か面白そうな話?」
友「いや、ほら、最近暑いしさ。髪切りに行く時間もないし」
女子1「あー、もうすぐ競技会なんだっけ?」
友「そうそう。去年は2位だったから、今年はトップ狙いだな」
女子3「……それだけ?」
友「何が?」
女子3「髪結ぼうと思った理由」
友「は? んー、まぁ、そうじゃね?」
女子3「こりゃ、まだ先は長そうだな」
友「?」
* * *
キーンコーンカーンコーン
友「よーっし。部活だな」
女子2「もうすぐタイム測定なんだよね、頑張れ。また明日」
友「ん、ありがとね。また明日」
男「前回は惜しかったなー。また俺らで応援行くからさ、頑張れよ」
友「狙うはトップのみ、って奴かな」
転校生「友ちゃん、陸上部なんだ」
友「そ、短距離」
転校生「すごい! かっこいい!」
友「かっこいい、かぁ? ただ走るだけだけど」
転校生「わたし、走るのすっごく遅いから。今度走り方教えてね」
友「いいよ。あたしなんかでよければ」
陸上部の人「おーい、友ぉー! そろそろ行くよー!」
友「呼ばれちった。行ってくるわ」
転校生「わたしも! 応援、行くから!」
友「ありがとーっ」たったった
男「行っちまったなぁ」
転校生「やっぱり、速いね」
男「……帰るか」
転校生「うん」
* * *
男「家、こっちの方なんだ」
転校生「うん、広宮の方。駅から10分くらいだよ」
男「へー。俺、篠田だから、結構近いわ」
転校生「あ、それってバスで行けるとこだね」
男「そうそう。って、この辺り、まぁまぁ慣れてきた?」
転校生「どうだろう。まだちょっと迷うかも」
男「だよなぁ」
転校生「ね。今度さ、またみんなで遊ばない? そのとき、出来たらこの辺も案内してもらいたいなぁ、なんて」
男「いいね。確かにそれなら、役立つし、楽しいしで一石二鳥かも」
転校生「やった。じゃあ決まりね」
男「帰ったら、みんなにメールで予定聞いてみるよ」
転校生「あ、じゃあさアドレス交換、しよ?」
男「あ、あぁ、そうね」
転校生「えっと、赤外線はっと」
男「ラッキー」ぼそっ
転校生「あったあった。男くん、携帯出して」
男「了解」
ピロリーン
男「じゃあ次、俺が送るよ」
転校生「うん」
ピロリーン
男「これでよし、と」
転校生「あ」
男「ん?」
転校生「こっちに来て初めての、男の人のメールアドレス」
男(!? う、上目遣い!? か、可愛すぎるだろ!)
男「へ、へぇ。そうなんだ」
転校生「って、どうでもよかったね。そんなこと」
男「いや、そんなことはないけどさ」ぼそっ
転校生「あ。じゃあ、わたし帰りこっちだから」
男「そ、そっか。また明日」
転校生「明日は遅刻しちゃ駄目だよー?」
男「し、しないって! ってか今日はセーフだったし!」
* * *
ヴー ヴー
友「ん、メールだ」
友「男から?」
友「今週の土曜日か、確か午後からオフだったような」
友「……えっと、ご、ご、な、ら、い、け、る、っと」
友「って流石に、シンプル過ぎか?」
友「午後、なら、空いてるよ、で絵文字は――いっか、別に」
友「だぁ! やめやめ! メールなんかどうだっていいんだよ!」
友「……大体、相手はどうせ男だし」
友「はぁ。どーしたんだ? あたし、何か変だぞ」
* * *
3日後 土曜日 駅前
転校生「えっと、誰か来てるかな?」
転校生「って、さすがに10分前じゃ来てないよね」
転校生「ふぅ、暑いなぁ」
転校生「あー楽しみ、みんなでお出かけ」
友「そんな期待されてもなぁ」
転校生「ぅひゃあ!」
友「お、おぉ。大丈夫か」
転校生「び、びっくりしたぁ」
友「ごめん」
転校生「あ、謝ることじゃないよ」
友「にしても、早いな。まだ10分前だぞ」
転校生「友ちゃんもだよ?」
友「ま、あたしはなんとなくだよ」
転校生「今日の格好、すっごく可愛いね」
友「へ、変じゃないかな?」
転校生「なんで? 似合ってるよ
友「そ、そか」
転校生「わたしも、髪切ろうかな」
友「え?」
転校生「ほら、これだけ長いとやっぱり暑くてさ」
友「でも、せっかくそんな綺麗な髪なんだし、もったいないって」
転校生「そう、かな。ありがとう」にこっ
友「学校はもう慣れたか?」
転校生「うん。みんなのおかげで」
友「そうか。そりゃ良かった」
転校生「ありがとね、友ちゃん」
友「あたしは別に、何もしてねぇよ」
転校生「ううん、言いたいの。ありがとう」
友「……照れるから」
転校生「……あ」
友「ん?」
転校生「このやり取り、どこかでしたと思ったら、この間の男くんとのやり取りだ」
友「……ぁ」
転校生「カラオケ行ったときにね、男くんが――」
友「うん、見てたよ」
転校生「そ、そっか」
友「なぁ、お節介じゃないか? あいつ」
転校生「え?」
友「ほら、あいつ、意外と気ぃ遣いだからさ。遅刻魔のくせに」
転校生「ふふっ。遅刻魔は関係ないんじゃない?」
友「余計なお世話だと思ったら、そう言っていいんだからな?」
転校生「ううん。逆、かな。むしろ」
友「逆?」
転校生「なんとなく、今わたしがみんなにちやほやされてるのは、わたしが転校生だからなんじゃないかなって思ってたの」
友「そんなこと、あるわけないだろ?」
転校生「そうだね。でもさ、やっぱりそういうのって、誰かに聞けることでもないし、結構不安だったりしたんだよね」
友「転校生……」
転校生「一週間後、二週間後、一ヶ月もしたら、わたしは特別じゃなくなるでしょ? そのときも、この人たちは今と同じようにわたしに接してくれるのかなって」
友「男は、なんて?」
転校生「こういうのが、当たり前になってくって」
友「……そっか」
友「大丈夫。なるよ、絶対。っていうか、あたしがそうするし」
転校生「――友ちゃん」
友「心配すんな」にかっ
転校生「ふふっ。それ、男くんも言ってたよ? 今はもう、心配してないんだけどなぁ」
友「げ。あいつと同じかよ」
転校生「似たもの同士なんだね。気ぃ遣いさん」
友「違っ、付き合い長いから、あいつの考え方が伝染っただけだって」
転校生「……付き合ってるんだ、ふたり」
友「――っ!? 違っくて、腐れ縁的な意味で! ってか、あんな奴と付き合うとか、ありえねーから!」
転校生「なんだ。……でも、お似合いだと思うけどな」
友「なわけないって! あいつだって、そんなん意識してないし」
転校生「そうかな?」
友「ってゆーか、むしろ転校生の方が好かれてるんじゃねーの?」
転校生「わ、わたし? そんな、だって好かれるようなこと、何もしてないよ? 知り合ってまだ数日だし」
友「いや、転校生は女の目から見ても可愛いからな。一目見て、こうグッとくる奴はたくさんいると思うぞ」
転校生「で、でもわたし、男くんのこと、まだあんまり知らないし」
友「これから知る機会なんていくらでもあるって。クラス一緒なんだし」
転校生「……そっか、そうだね! 同じ、クラスだもんね」
友「そう、だよ」
転校生「うん。わたし、みんなのこと、もっと知りたい。たくさん知って、もっとみんなと仲良くなりたい。――もちろん、友ちゃんともね」にこっ
友「っ……だから、そういうのが照れるんだって」
* * *
転校生「お母さん、わたし、親友が出来たかもしれない」
転校生「友ちゃんっていう、すっごく可愛くて、優しくて、元気な女の子」
転校生「今日もね、友達と出かけたんだ」
転校生「遅刻魔の男くんが、やっぱり遅刻して」
転校生「友ちゃんと男子1くんに怒られたり笑われたりしてね」
転校生「遅刻した罰とかいって、女子1ちゃんと女子3ちゃんに、人数分のジュース奢らされて」
転校生「あ。女子2ちゃんは、男子2くんから飲みかけのジュースもらって、ご機嫌だったみたい」
転校生「でも、そんな男子2くんは友ちゃんのことばっか見てて」
転校生「……友ちゃんは、気付いてないみたいだったけど」
転校生「そうそう。途中、わたしがケータイのストラップ落としたときにね、みんなが一生懸命探してくれて」
転校生「結局見つからなくて、落ち込んでたら、ほらこれ」
転校生「友ちゃんが、自分のケータイのストラップ、くれたんだよ」
転校生「可愛いでしょ? これ、金貨かな?」
男『心配することないから』
友『心配すんな』
転校生「……本当に、全然心配する必要なんかなかった」
転校生「本当に、こっちの学校に来てよかった」ぽろっ
転校生「ふふっ。ありがとね、お母さん」ぐすっ
* * *
9日後 篠田第一競技場
男子1「暑ぃよー。喉渇いたよー」
男子2「友も頑張ってんだ、気合入れろ」
女子3「そうだよ、もうすぐ走るんだから」
女子1「って言っても、本当に暑いねぇ。汗でシャツ透けてきちゃったよ」
男子1「夏! 最高ぉ!!」
男「うるせぇよ」
女子2「ねぇ、男子2くん。お茶、飲む?」
男子2「え? あぁ、もらおうかな」
女子2「うんっ」
女子3「あー、暑いな、色々」
転校生「あ、あれ! 友ちゃんじゃない?」
男「どれどれ?」
友『おーいっ』ぶんぶんっ
転校生「ほら、あの手振ってるの」
男「あ、本当だ。ってか余裕だな、あいつ」
アナウンス『えー、それでは次回測定の走者は、指定位置にて待機してください』
男子2「頑張れ! 友ぉ!」
女子1「友頑張れぇー!!」
男子1「ゆけぇ! 風になれぇ!!」
女子3「それ、何キャラ?」
転校生「友ちゃーん! 頑張ってねー!!」
男「一位取ったら、なんか飲み物奢ってやるよ!!」
友『絶対だかんなーっ!』
男「返事はしなくていいーっ!」
アナウンス『それでは、次の走者はスタートラインへ――』
* * *
友「んっ、んっ、んっ、――ぷはぁっ!」
男「オヤジか、お前」
友「いやぁ、一汗かいた後のスポーツドリンクって何でこんな美味いんだろーな?」
男子1「確かに、それは俺も思うわ」
転校生「すごかったよーっ、友ちゃん!」
友「ま、練習の成果だな。最近、調子も良かったし」
女子1「かっこよかったねー」
女子2「うんっ! 何ていうか、すごかった!」
女子3「あんたボキャブラリー少なくない? まぁでも、すごかった」
男子2「あ、あのさ、友」
友「ん?」
男子2「この後、みんなで打ち上げやらないか? 祝勝会」
友「いいって。まだ本番じゃないし」
転校生「そっか、これでようやくスタートラインなんだっけ?」
友「そ。ま、あたしなんかがどこまでやれるかわかんないけどさ、やれるだけやってくるよ」
男「じゃ、これから頑張るために、鋭気を養うってことで、いいんじゃないか?」
友「男?」
男「これがスタートにせよ、ゴールにせよ、頑張ったご褒美はあるべきだろ」
男子2「そ、そうだよ! これから、また頑張るためにも、さ!」
女子3「友ぉ。タダ飯食えるチャンスかもよ?」
女子1「女子3、言い方」
転校生「友ちゃん、わたしも出来たら祝わせてもらいたいかな」
女子2「うん、そうだよ。これは、友達として。わたしだって祝いたい」
男「うっし、決まりだな。自己ベスト、おめでとうの会だ」
友「みんな……、ありがとな」
* * *
男子2「えー、それでは、友の頑張りを称えて」
みんな『かんぱーい!』
男「で、なんでウチなんだよ」
女子1「いーじゃん、別に」
男「まぁ、いいけどさ。一応、ツッコミ入れとくのがお約束かと」
女子3「ねぇ、このコーラ開けていい?」
男子1「うっま! このブルーベリーパイうっま!」
男子2「男のお母さん、やっぱ料理上手いよなぁ」
転校生「え? これ、男くんのお母さんが作ったの?」
女子2「そう。ママさん特製おやつは、いつ食べても美味しいから、ついついみんな男くんの家に来たがるんだよねー」
友「すみません、毎度気を遣わせてしまって」
母「あら、いいのよ。別に。他ならぬ、友ちゃんのためのお祝いなんでしょ?」
友「ありがとうございます」
母「晩ご飯、食べてくかしら?」
女子3「あ、いえ。そこまでは流石に、悪いですし」
男子2「お誘いは非常に嬉しいんですけど……」
転校生「そこまでご迷惑をおかけするわけには――」
母「構わないわよ。お祝いごとはね、とことんやった方がいいに決まってるんだから」
男「みんな、食べてけよ。大勢いた方が、母さんも作り甲斐あるだろうし」
友「それじゃ、ご馳走になります。お言葉に甘えて」
男子1「ご馳走様でーす!」
女子1「ご馳走様でーす!」
母「それじゃ今夜は腕によりをかけなくっちゃ」たったった
男「あー、あんま張り切らないように。って、いないし」
女子2「はぁ、男くんのお母さん、綺麗だなぁ。優しいし」
転校生「お母さんと、仲いいんだね」
男「まぁ、ね」
転校生「……すごく、いいことだと思う」
男「?」
友「転校生?」
* * *
転校生「お母さん、友ちゃんがね、県大会の出場決まったんだよ」
転校生「それで、男くんの家でお祝いしてきたの」
転校生「男くんのお母さん。すっごくいい人でね」
転校生「晩ご飯ご馳走になってきちゃった」
転校生「お母さんの料理より、ちょっとだけ美味しかったかも」
転校生「……なんてね。嘘だから、拗ねないで」
転校生「ねぇ、お母さん。わたし、久しぶりに、お母さんの料理食べたいな」
転校生「って、無理だよね。ごめん、……もう寝るね」
転校生「おやすみ」
* * *
弟「ねーちゃん」
友「え? あぁ、ごめん。もう寝るから。電気だよね」
弟「? まだ9時だよ? もう寝るの?」
友「あ、本当だ」
弟「おめでとう、ねーちゃん」
友「ありがとう」
弟「やっぱ疲れた?」
友「なんで?」
弟「さっきからずっとボーっとしてるよ」
友「そっ、か……」
弟「なんか悩みごと?」
友「ま、まさか」
弟「学校でね、ストレスは胃によくないって言ってた」
友「そっかー。でも大丈夫。ゆっくり寝たら大丈夫だから」
弟「早く元気になってね?」
友「うん」
* * *
回想 1時間前
転校生「それじゃ。友ちゃん、男くん、またね」
友「おぅ、ゆっくり寝ろよ」
男「また明日」
転校生「お母さんに、ご馳走様でしたって」
男「伝えとく」
転校生「うんっ。おやすみ」
友「おやすみー」
バタン
男「しっかしまぁ、本当に近かったな」
友「本当、送ってける距離で良かったよ。あいつみたいな可愛い女の子、夜一人で歩かせれないしな」
男「確かに、一発で襲われそうだよな」
友「ま、お前一人に送らせるのも怖いから、あたしも着いてきたわけだけど」
男「信用ねぇなぁ」
友「あたしに言うな、男子1に言え」
男「ってことは、友は信用してくれてるのか」
友「賭けてもいいけど、お前にそんな度胸はない」
男「あー、はいはい。さいですか」
友「冗談だって。じゃ、あたしも帰るよ」
男「は? いや、送ってくって」
友「いいよ、そんな距離ないしさ」
男「あ、お前さてはやっぱり俺を信用してないだろ」
友「ぎくっ」
男「ぎくっ、じゃねぇよ」
友「あっはっは。冗談だって。じゃあ、送ってってもらおうか」
男「ったく。襲われてもしらねーぞ?」
友「大声出すから大丈夫」にかっ
男「本当に俺が襲ったら、大声出す前にボコボコにするくせに」
友「そんなひどいこと、出来ませんよぅ」
男「キモい」
友「うっせ」
男「……よかったな、県大会行けて」
友「な、なんだよ急に」
男「いや、なんか言いそびれてたから。おめでとう、友」
友「――っ! ふ、ふんっ。まぁ、今の実力なら当然だっ」
男「嘘つけ。前日ビビッてそわそわしてたくせに」
友「んなっ!」
男「今度は、ちゃんと本物の金メダル、獲れるといいな」
友「……ぁ」
男「友?」
友「そう、だな。うん」
男「なぁ、アレ、まだ持ってるか?」
友「ん? あぁ、アレね。あげた」
男「はぁ!? 誰に!?」
友「誰でもいいだろ、別に」
男「ま、まぁ、そりゃ、そうだけど」
友「……悪かった」
男「い、いや、いいって。ほら、あれだろ。今度は本物獲るってアピール」
友「……うん」
男「友、俺は気にしてないから。元気出せ」
友「……気に、しないのか」
男「あ、あぁ。全然」
友「っ! お前がくれた物、勝手に人にあげたのにか?」
男「そ、それは」
友「……そっか。その程度って、ことだよな」
男「友?」
友「!! ……悪い。頭冷やすわ。今のあたし、気持ち悪い」
男「友!」
友「なんかやっぱ疲れてるみたいだ、あたし」
友「おやすみ」たったった
男「お、おい!?」
* * *
友「はぁ、最低だ」
友「あたしが自分で勝手にやったことなのに、男を悪者みたいにして」
友「すっげぇ、自分勝手」
男『友と話してると、すげー楽しい』
友「――っ! 出てくんな! お前!」
友「何だよお前。お前は、お前は……っ」
ぼふっ
友「……明日、ちゃんと謝ろう」
友「それで」
友「ちゃんとしなきゃ」
* * *
男「やべぇ、遅刻だよ」たったった
男「友の奴、昨夜に変なこと言うから眠れなかったじゃねーか」
友『その程度って、ことだよな』
男「……ちっ」もやもや
男「だぁー、間に合えーっ」だだだ
男「はぁ、はぁ、はぁ」
男「よし、体育館裏! ここを抜けたら――」
???「ごめんなさいっ!」
男「!?」
他クラスの男子「他に誰か、好きな人がいるとか?」
転校生「え? あ、あの、それは」
他クラスの男子「もしいないんならさ、試しに付き合ってみるっていうのも、悪くないんじゃないかな?」
転校生「た、試しに?」
他クラスの男子「ほら、俺たちってさ、まだお互いのことあまり知らないだろ? だから、付き合ってみて知っていこうっていうか」
転校生「でも、わたしは」
他クラスの男子「別に怖いことなんかないって。な、転校生、好きだ」ぐっ
転校生「やっ、め――」
男「あー、やべー、遅刻だー。大変だー」
他クラスの男子「!」びくっ
転校生「お、男くんっ!」
他クラスの男子「お、おう。男か。お、お前また遅刻か?」さっ
男「いやー、それが、寝坊しちゃってさ」
他クラスの男子「き、気をつけろよ? お前そろそろ出席日数ヤバいって聞いたぞ」
男「そだな。じゃ、遅刻しないうちに教室行くよ。転校生」
転校生「!」
男「ほら行くぞ。俺が遅刻したらお前のせいだからな」
転校生「む、無茶苦茶だよ」
男「いーから」
転校生「ま、待って。あの、男子くん?」
他クラスの男子「な、なんだよ」
転校生「ごめんなさい。やっぱりわたし、好きな人がいるからあなたとは付き合えません」
他クラスの男子「……わかったから、さっさと行けよ」
転校生「でも、好きと言ってくれたことは嬉しかったです。ありがとう」
他クラスの男子「こっちも、ちょっと乱暴だった。ごめん」
転校生「じゃ、行こっか。男くん」ぐいっ
男「あ、あぁ」
転校生「ほーら、早く行かないと遅刻しちゃうよ?」
男「好きな人、いるんだ」
転校生「うん」
男「そっか」
転校生「気になる?」
男「ま、まぁ、ちょっとは」
転校生「……ねぇ。手、震えてるのわかる?」
男「怖かった?」
転校生「うん。それもあるけど。告白されるの、久しぶりだったし」
男「前の学校、女子高だったっけ」
転校生「中学ぶりだよ」
男「そっか」
転校生「……それはそうと、もう少し早く出てきてくれても良かったんじゃない?」
男「え。気付いてたの?」
転校生「あー。やっぱり隠れてたんだ」
男「って、かまかけですか……」
転校生「どこから聞いてたの?」
男「ごめんなさい、の辺りから」
転校生「ふーん」
男「ごめん、すぐ立ち去らなきゃって思ったんだけど」
転校生「ううん。助けに来てくれて、嬉しかった」
男「ごめん」
転校生「もう、なんで謝るの?」
男「だって、こんな手震えてるし。もっと早く俺が出ていけば――」
転校生「この手の震えはね、別の理由」
男「え?」
転校生「生まれて初めて、好きな人と手をつないでるから、かも」
男「は?」
転校生「――なーんちゃって。ビビッて手震えてるなんて、恥ずかしいから、ちょっと嘘ついちゃった」
男「お、お前ねぇ。びっくりさせんなよ、ほんと。心臓に悪いから」
転校生「ふふっ。やぁい、小心者ぉ」
男「ったく。何かお前、明るくなったな」
転校生「そうかな?」
男「被ってた猫をどっかで落っことしてきた感じ」
転校生「ふふっ。そう、かもね」
男「転校生?」
キーンコーンカーンコーン
転校生「う、うわ。チャイム鳴っちゃった」
男「やべぇな、間に合うか?」
転校生「走ろう!」
クラスの女子A「ねぇ、あれ転校生ちゃんじゃない?」
クラスの女子B「あ、本当だ……って、あれ男じゃん?」
クラスの女子A「手、繋いでたよね?」
クラスの女子B「繋いでた、ね。がっちりと」
友「…………」すたすた
* * *
男「はぁ、あっぶねー、はぁ」
転校生「はぁ、はぁ、なんか、走ったの、久しぶりかも」
女子3「おはよ。……どしたの?」
女子1「なんか二人とも、息荒くない?」
男子1「なっ! てめぇ、転校生ちゃんに何したぁ!?」
男「走ってきたんだよ! 遅刻しそうだったから!」
男子2「あのな、今日は持ち物検査で、先生来る時間がいつもより遅いからセーフだっただけであって、時間的にはアウトだからな?」
男「わーってるって」
ずいっ
友「……おはよ」
男「あ、あぁ、おはよう」
友「……昨日は変なこと言って、ごめん。それだけ」
男「あぁ、あれね。大丈夫、気にしてないから」
友「――そっか。気にしてない、っか」ぼそっ
男「友?」
友「おはよ、転校生!」
転校生「え? あ、うん。おはよう、友ちゃん」
友「……」じーっ
転校生「な、何? 何か付いてる?」
友「うん、やっぱこれでいいんだよな」にかっ
転校生「へ? どーしたの? 何がいいの?」
友「へへっ、なんでもねーよ」
転校生「えぇ? 教えてよ、友ちゃーん」
友「やーだ。秘密だ秘密」
男「…………」
友「これで、いいんだ」ぼそっ
* * *
屋上
男「友、なんか様子おかしいんだよな」
男子2「そう、か?」
男「なんか、こう無理してる、みたいな?」
男子2「あー、あれじゃね? もうすぐ県大会の一次測定だしさ」
男「んー。そういうのとは、またなんか違うような気も」
男子2「なんでそんな気にするんだよ?」
男「は? そりゃ、友達の様子がいつもと違ったら、気になるだろ」
男子2「……はぁ。それ、本当に友達だからか?」
男「当たり前だろ。それ以外に何が――」
男子2「今日、朝、転校生と二人で手ぇ繋いで登校してきたって」
男「!!」
男子2「そういう噂が、クラスの女子の間で流れてる」
男「あれは……」
男子2「心当たりは、ありそうだな」
男「でも、それとこれと、どういう関係が」
男子2「多分な。お前の知りたがってることと、関係あると思うぜ。俺は」たっ
男「お、おい、男子2。……どこ、行くんだよ?」
男子2「別に。気晴らしだよ。なんか、嫌な天気だし」
男「確かに、一雨来そうだな」
男子2「――なぁ、男」
男「ん?」
男子2「俺は、友が好きだぞ」
男「! へ、へぇ、そうか。いい奴だもんな、あいつ」
男子2「俺は……今度の、一次測定が終わったら、あいつに告白しようと思ってる」
男「そ、そうか」
男子2「何か言うことは?」
男「俺が言うのも変な話だけどさ……あいつを、よろしく頼むよ」
男子2「はぁ、そうかよ」
男「あぁ」
ばたん
男子2「そうじゃねぇだろ、男」ぼそっ
* * *
教室
友「あのさ、あたし、前に女子3の言ってたこと、ちょっとわかったかも」
女子3「ぶっ!」
女子1「ど、どしたの? 急に」
友「汚ぇなぁ。……だから、自分の気持ち、っていうかさ」
女子3「それって、つまり?」
友「いや、まだわかんねぇよ? その、男女の好きなのか、友達の好きなのか」
女子1「それで、何がわかったの?」
友「んー。まぁ、その、あれだ」
女子3「ここにきてごまかすなよ」
友「だから、それは」
女子1「ほら吐けー。吐いたら楽になるぞー?」
友「だぁーっ! だから、あたしが男のことで少なからず落ち込んだり、不安になったりするってことだよ!」
友「昨夜あいつに言ったこと、ぐるぐる考えて、眠れなくなるくらいには気になってるかもってこと!」
友「他の人と手繋いでるの見ただけで、タイムの測定前みたいに膝ががくがくするくらいには、意識してんのかもってこと!」
女子1「そ、それって……」
女子3「めちゃめちゃ気になってるし、っていうか、恋する乙女まんまだし」
友「あーもう、アホらし。もうすぐ測定前だってのに、なーんでこんな厄介なコンディションにしやがりますかなぁ! あいつはぁ!」
女子1「アホらしいのは」
女子3「どっちだよ」
女子1・3『はぁ』
* * *
廊下
友『だから、あたしが男のことで少なからず落ち込んだり、不安になったりするってことだよ!』
友『昨夜あいつに言ったこと、ぐるぐる考えて、眠れなくなるくらいには気になってるかもってこと!』
友『他の人と手繋いでるの見ただけで、測定前くらいに膝ががくがくするくらいには、意識してんのかもってこと!』
転校生「――っ!」すたすた
女子2「どこ行くの?」
転校生「!!」びくっ
女子2「教室、行くんじゃないの?」
転校生「あ、えっと、ちょっとトイレに」
女子2「今、行ってきた帰りじゃないの?」
転校生「トイレに、忘れ物してきちゃったから」
女子2「ふぅん」
転校生「じ、じゃあ、わたし、行くね?」
女子2「聞かなきゃよかった、って思ってる?」
転校生「ぇ?」びくっ
女子2「ごめん。見てたし、聞いてた」
女子2「ねぇ転校生ちゃん。……知らないってさ、甘いよね」
転校生「な、何のこと?」
女子2「でも、知った途端にすっごく苦くなる。苦しくなる」
転校生「女子2ちゃん」
女子2「どうするの? これから」
転校生「だから、何が?」
女子2「知ってしまったことを忘れるつもりなら、オススメしないな」
転校生「……女子2ちゃん」
女子2「どうせ無理だもん。そんなこと出来るわけないから」
転校生「女子2ちゃん!」
女子2「それとも、相手が可哀想だから身を引く? それって、遠回しに相手のこと馬鹿にしてるよね」
転校生「じゃあどうしたらいいの!?」
女子2「知らないよ。わたしだって、教えて欲しいくらいなんだから」
転校生「! ふぅん。そんなんで、よく、わかったような顔できるね」
女子2「出来るよ。だってわたしは、転校生ちゃんの友達だもん」
転校生「……友達?」
女子2「あのさ。わたしね、男子2くんのことが好き」
転校生「……やっぱり。なんとなく、そうかなって思った」
女子2「でも、男子2くんはさぁ、友ちゃんが好きなんだよね」
転校生「それも、なんとなく知ってた」
女子2「わたしはさ、どちらか一つしか選べないなら、わたしの幸せと、わたしの好きな人の幸せ。どっちを選ぶべきなんだろうね?」
女子2「どっちが、正解なんだろ? どう思う? 転校生ちゃん」
転校生「わかんないよ、全然、わかんない」ぼそっ
* * *
男子1「雨か。大分降ってきたな」
男子1「なーんか、嫌な雨だしよ」
てくてく
男子1「あれ? お前、こんなとこで何してんだよ」
男子2「……別に」
男子1「とうとう降ってきちまったな」
男子2「また、晴れてくれたらいいんだけど」ぼそっ
男子1「? 何言ってんだお前。止まない雨なんかないんだぞ」
男子2「……知ってるよ。知ってる」
支援ありがとう
男「告白、かぁ」
男「友は……あいつは、何て返事するだろうな」
友『好き? お前が? ははっ冗談』
男「うわ、ありそう」
友『……本気か? 好きって、お前、あれだろ? その、男女の好き、とかだろ?』
男「そうだよ。告白だぞ? 意味わかってねーのかお前」
友『何で、あたしなんだよ』
男「何でって。それを今聞くのか?」
友『あたしは、その、ガサツだし、全然女の子っぽくないし』
男「……」
友『身勝手で、わがままで、あたしが男なら、絶対こんな女は選ばない』
友『なのに、なんでお前はあたしのこと好きとか言うんだよ』
友『あたしの、どこが好きになったんだよ?』
先生「誰かいるのか?」
男「――っ!!」びくっ
先生「なんだ男か。雨降ってきてるぞ。なんで屋上に?」
男「別に。何でもありません」
先生「ははぁ、さてはお前も虹でも見に来たか?」
男「そんな恥ずかしいことしませんよ」
先生「恥ずかしくなんかないさ。私はこう見えて虹が好きでね」
男「知りませんよ」
先生「まだ見えないだろうが、こんなのは通り雨だ。じきに、綺麗な虹が見える」
男「……先生は、どうして虹が好きなんですか?」
先生「綺麗だから、かな」
男「へぇ」
先生「ただ、好きになったきっかけは覚えてないな。気づいたら好きだった」
男「はぁ、そんなもんですか」
先生「はぁ、って何だ。はぁ、って。きっかけなんてどうだっていいだろ。大切なのは今なんだから」
男「ふっ。そう、ですね」
先生「どうせなら一緒に虹でも見てくか? 悩みなんてすぱっと忘れられるぞ」
男「……いえ、帰ります。用事思い出したんで」
先生「そうか」
先生「気をつけて帰れよ。悩める少年」
* * *
転校生「……はぁ」
転校生「知らないは甘い、知るは苦い、か」
男「よ、風邪ひくぞ」
転校生「! お、男くん!」
男「傘ないなら、送ってくけど?」
転校生「……ううん。いいよ。止むまで待ってみる」
男「そっか」
転校生「また明日ね、男くん」
男「……あのさ、今日何かあった?」
転校生「え?」
男「朝はあんなに元気だったのにさ」
転校生「……別に。何もないよ。ただ、雨が嫌いなだけ」
男「ふぅん。雨、嫌いなんだ」
転校生「うん」
* * *
少女『雨、止まないなぁ』
Prrrrrrr
叔父『はい、叔父です。はい、そうですが』
少女『?』
叔父『な、なんですって!?』
叔父『はい、はい。広宮西大学病院ですね、はい』
少女『叔父さん? どうしたの?』
叔父『わかりました。すぐに向かいます』
少女『叔父さん? 顔、真っ青』
叔父『姉を……お願いします。娘が、待ってるんです』
少女『お母さん? お母さんが、どうかしたの? ねぇ』
叔父『お願い、します』
少女『ねぇってば! 叔父さん!』
* * *
転校生「それでね、お母さんのお葬式も、雨だったから」
男「そっか」
転校生「って、ごめんね。こんな暗い話。しかも、結局男くん引き止めちゃって」
男「いいって。……それより、話してくれてありがとう」
転校生「え?」
男「そういう話ってさ、他人には出来ないことだろ?」
転校生「う、うん。まぁ」
男「そっか、知らなかった。転校生のお母さん……」
転校生「もう、3年も前の話だよ」
男「違う。まだ、3年しか経ってないのに、転校生はいつも俺たちに笑顔を見せてくれてたんだ」
転校生「男、くん……」
男「偉いよ、本当に」ぽんっ
なでなで
転校生「男、くぅん……っ。なんで、そんな――」ぐすっ
男「先生さ、虹が好きなんだって」
転校生「え?」
男「さっき屋上で会った」
転校生「? そ、そうなんだ」
男「虹ってさ、雨のあと見えるだろ?」
男「なんかご褒美みたいだよな」
転校生「ご褒美……?」
男「そうご褒美。頑張ったなら、報われるべきなんだ」
転校生「男、くん?」
男「転校生!」
転校生「は、はいっ!」
男「あのさ、明後日。友の大会の日。話があるんだ」
転校生「え?」
男「少しでいいから、時間くれない?」
転校生「……ぁ」
男「駄目かな?」
転校生「……そっか。うん、いいよ」ぐすっ
男「ありがとう」
転校生「わたしも――っ、わたしも、話あるから」
男「俺に?」
転校生「うん。男くんに」
男「わかった」
転校生「ありがとう。……本当に」
男「あぁ、ほら。傘ささないから、顔濡れてるぞ」
転校生「すんっ……えへへっ」ぐすっ
* * *
弟「ねーちゃん、携帯鳴ってるよ?」
友「ん? 誰から?」
弟「えっとね、転校生、さん?」
友「なんだろ、こんな時間に」
弟「僕に聞かないでよ。それより、明日の試合頑張ってね」
友「おー、任せときな。おやすみ」
弟「うんっ」てってって
友「……もしもし?」
転校生『あ、もしもし? 夜にごめんね。……今って、時間大丈夫?』
友「別に平気だけど?」
転校生『よかった。ちょっと話したいことがあって』
友「話? あたしに?」
転校生『……大事な大会の、前の日なのにごめんね。でも、どうしても今日話さなくちゃって』
友「いいって。それより、ずいぶんもったいぶるな」
転校生『あ、ごめん。そんなつもりじゃないんだけど。えっとね、男くんの、こと、なんだけど』
友「! お、おぉ。男が、どうかした?」
転校生『あのさ――』
転校生『わたし、男くんのことが好き』
友「…………そ、っか」
転校生『明日。告白するつもり』
友「ははっ、大丈夫だって。二人、お似合いだから」
友「あいつもあいつで、意外といい奴だし。あいつなら、転校生のこと、任せられる。うん」
友「うん。よかったよ。本当、よかった」
転校生『ねぇ、友ちゃん』
友「幸せになれよ! あたしも、応援するからさ!」
転校生『なれないよ。まだ』
友「え?」
転校生『わたしは男くんが好き。でも、友ちゃんも好きだから』
友「!」
転校生『あ! でもね、その、好きっていうのは、男くんに対する好きっていうのは別の好きで――』わたわた
友「くすっ。……わかってるって」
転校生『えっと、わたしね。友ちゃんが男くんのこと好きなの、知ってるよ』
友「! す、好きって」
転校生『ごまかさないで。大事なことだから』
友「……う、うん」
転校生『わたしは言ったよ。友ちゃんは……どうかな? 男くんのこと、どう思ってる?』
友「……だよ」
転校生『ん?』
友「好きだよ! 多分、ずっとずっとずっと前から!」
転校生『うん』
友「……なんでだよ。なんで、気づくのが今なんだよ。なんで、こんなに――っ! 遅いんだよぉっ!!」じわっ
転校生『友ちゃん。わたし、明日の告白やめないから』
友「ぐすっ……だから?」
転校生『今の友ちゃんの話聞いて、やっぱり負けたくないって思った』
友「負けるもなにも、あいつは――」
転校生『こんなこと、わたしが言うのはおかしいってことはわかってる。でも』
転校生『友ちゃんは、スタートダッシュで出遅れたからって諦めるような女の子じゃないよね』
友「!」
転校生『ごめん、長話しちゃったね。明日、早いのに』
友「……ううん、転校生。ありがと」
転校生『――っ! わ、わたし、感謝されるようなことなんて、してないっ!』
友「あたし、諦めないよ。だから、二つだけお願い」
転校生『……何?』
友「これからも、友達でいて。……ううん、やっぱ、親友」
転校生『いいの?』
友「男のことは関係ないから。あ、あたしも、転校生のこと好きだし」
転校生『……うん』ぐすっ
友「それと――」
* * *
――そして、翌日 篠田第一競技場
男子1「暑ぃー。だりぃー」
女子3「雨上がったと思ったら、急に気温上がったよね」
女子1「友ちゃん、大丈夫かなぁ? 倒れないよね?」
男「縁起でもないな」
男子2「……」
転校生「た、確かに暑いけど、やっぱり晴れてよかったよね」
女子2「……」
男子1「ねぇ、何? この空気。何かあったの?」ひそひそ
女子1「さぁ」ひそひそ
男子2「……トイレ行ってくる」
男子1「は? 今かよ」
女子2「……」
女子3「雨降ってなんとやら、なればいいけど」ぼそっ
転校生「あ、走るよ!」
男「……頑張れよ、友」
アナウンス『それでは第一走者、スタートラインについてください』
友(大丈夫、練習したように、走るだけ)
係員『それでは、位置について――』
ピィィーーーーッ
* * *
1時間後 競技場 控え室廊下
友「…………」
友「……ずずっ……はぁ……」
友「ははっ、今頃、足震えてやんの」
友「ほんっと、何もかも遅い」
友『それと――』
転校生『それと、何?』
友『あー、えっと。もし、あたしが明日一位取れたらさ』
転校生『うん』
友『――欲しいもの、あるんだよね』
友「あーぁ、やっぱ本物は遠いわ」
友「一生懸命、頑張ったんだけど。なぁ? 男」
男「何だ、気付いてたのか」すっ
友「女の子の背後からこっそり忍び寄るなんて、変態のすることだぞ」
男「うっせぇ」
友「泣いてると思ったか?」
男「いーや。どうせお前、家帰るまでは泣かないだろ?」
友「見たことないくせに」
男「出来るだけ見たくねーよ。お前が泣いてるとこなんか」
友「じゃあ来んな」
男「なんで?」
友「お前に、会わせる顔がない」
男「それで、さっきからこっち向いてくれないわけか」
友「……」
男「惜しかったな。もうちょいだった」
男「……あのさ、何て返事した? 男子2に」
友「見てたのか?」
男「違う。一昨日、男子2から聞いたんだ」
友「ふぅん」
男「本当だって。告白の盗み聞きなんて、最悪だろ?」
友「転校生のはしたくせに」
男「なっ! お前、いつ聞いた!?」
友「昨日。電話で。ま、わざとじゃないみたいだけど」
男「電話、したのか。あいつと」
友「色んな話したよ。お前のことも」
男「へぇ。どんな話、したんだ?」
友「あたしの告白の返事と、どっちが聞きたい?」
男「……じゃあ、後者で」
友「ま、前者は別に興味ないよな」
男「いや、ある」
友「は?」
男「でも、知ったところで変わらないから」
男「見つけたんだよ。変わらないもの」
友「……何、言ってんだ? お前」
男「お前さ、俺と初めて会ったときのこと、覚えてる?」
友「……別に。忘れた」
男「俺は覚えてるよ」
男「中学2年のとき、お前はグラウンドの隅っこで泣いてた」
友「覚えてないって」
男「団体戦のメンバーから落とされたんだっけか」
男「あのときもお前、泣いてないって言ってたよな」
友「……」
男「なぁ友。こっち向けって」ざっ
友「――ッ!! だから! 来んなって!」じわっ
男「さっき、転校生の告白断ってきたよ」ざっ
友「は、はぁ?」
男「好きな奴がいるから、って」ざっ
友「お前、何、を――」
ぎゅっ
友「……ぅぁ」
男「嘘つけ。泣いてるじゃねぇか」
友「お、お前! 何いきなり抱きついてきて――」
男「ほら、これ」すっ
友「!!」
男「まぁ、前回と同じで申し訳ないんだけどさ」
友「――っ!!」じわっ
男「っていうか、昨日一日かけて同じもの探したんだけど。結局、見つからなくて」
友「……お前っ!」ぐすっ
男「で、結局、返してもらった。これから先の“昼飯”を条件に」
友「お、お前さぁっ! もう、むちゃくちゃだろっ!」ぐすっ
男「ほら、頑張ったご褒美の、金メダル」
友「だからコレ、金貨だって……っ!」
* * *
男『勝てなかったからって、泣くなよ』
友『泣いてねーよ、ばか』
男『ったく。勝ったときに渡そうと思ったんだけどなぁ』
友『? なんだよ』
男『ほら、頑張ったご褒美の、金メダル』すっ
友『……はぁ?』
男『だから、お前が勝ったときにな、ネタで渡そうと思ってたの!』
友『ストラップじゃん、これ』
男『馬鹿、お前。この金貨。金メダルっぽいだろ?』
友『……ぷっ。はははっ! ま、まぁ、お前がそう言うんなら、そう見えるんじゃねぇの?』
男『なっ! てめぇ、今馬鹿にしたろ!? なぁ、馬鹿にしたよな!? 返せ!』
友『やーなこった! 一度もらったもんはあたしのもんだ!』
男『いーから返せよっ』
友『あっはははっ!』
* * *
男「……落ち着いたか?」
友「……ばか。あたしの泣き顔、見たくないんじゃなかったのかよ」
男「いやぁ、意外といいもんだぞ。たまに見るぶんには」
友「変態」
男「あー、友たんの汗の匂いー。くんくん」
友「――っ!? こっの! 変態!!」
バキッ
男「痛ぇっ!!」
友「だいたい、いつまで人に抱きついてるつもりだ! この痴漢!」
男「えー。その言い方はないだろー」
友「うるっさい! あーっ! もー! 何だお前はっ!」
友「お前は、あたしの友達だろっ!?」
友「それが、なんでっ!」
友「なんで、めちゃくちゃ可愛い女の子の告白断って!」
友「わざわざこんな薄汚れたストラップ用意して!」
友「なんで今、あたしの前にいんだよっ!」
男「聞きたい?」
友「聞きてぇよ! 聞きてぇから、聞いてんだろーが!」
男「お前が、好きだから」
友「――っ!」
男「友達じゃなくて、恋人になりたいと思ってるから。……これで満足か?」
友「その……、その余裕の態度がムカつくんだよ!!」
男「どうしろっつーんだよ」
友「もっと、こう、あるだろ! 転校生相手にしてたみたいなリアクション!」
男「じゃあ、お前の返事を聞いたら、してやるよ」
友「返事、って」
男「だから……、もういいや。一度しか言わないからな? その、あー、好きです、俺と付き合ってください」
友「――なっ!!」
男「俺だってなぁ、生まれて初めての告白で、心臓割れそうなくらいドキドキしてんだ。さっさと返事を――」
友「……ぅぁ」///
男「は?」
友「うぁぁぁあああああっ!」だだだっ
男「はぁっ!? ちょ! おま! 逃亡ってどういうことだ、こら!」
男「待ぁてぇええええっ!!」だっ
* * *
転校生「お母さん、わたしね、振られちゃった」
転校生「でもね、不思議。全然悲しくないし、悔しくないんだ」
転校生「何もかも、初めての経験だったから、かな」
転校生「ねぇ、聞きたいんだけどさ、お母さんの初恋って、どんなだった?」
転校生「機会があったら、聞かせて欲しいな」
転校生「あ、そだ。見てコレ、お弁当作ったの。上手くなったでしょ?」
転校生「お母さんはさ、もしかしたら笑うかもしれないけどね」
転校生「わたし、もうちょっと頑張ってみよっかなって」
転校生「だから、今日ね。宣戦布告してくる」
転校生「勝てるかどうか、わかんないけど」
転校生「せめて、あと一年半――卒業するまでは、頑張ろうかなって」
転校生「ふふっ、わがままだよね。呆れるよね。みっともないよね」
転校生「でも、友ちゃんだったら、きっと笑ってくれると思うから」
転校生「負けるかーって、笑ってくれると思うから」
転校生「わたしね、もう、そんな、わがまま言ってもいいくらいの友達が出来たんだよ」
転校生「このお弁当は、わたしの武器で、お礼で、それから――」
転校生「って、もう行かなきゃ」
転校生「じゃあね。行ってきます、お母さん」
* * *
友「聞いてねーよ!」
男「はぁ? 言っただろ」
転校生「お邪魔しまーす」
友「お、ま、え、さぁ」
転校生「やだ、友ちゃん怖いよ?」
友「振られたって聞きましたけどぉ?」
転校生「え? 何のこと?」
友「男ぉ! お前、つ、つ、付き合い始めてからいきなり浮気ってどういうことだよ!」
男「噛みすぎだ、馬鹿」
転校生「友ちゃんのストラップを、男くんに返す条件だもん」
友「だから、そんなの聞いてないって」
男「昼飯を条件に、って言ったろ」
友「そ、そんなんで、『毎日、お昼は手作り弁当を食べること』なんて話だって、わかるわけねーだろ!」
男「転校生、意外と強情でさ。折れなかったんだよ」
友「これは立派に浮気だろ! なぁ!?」
男子1「まぁいいじゃん、弁当くらい。それが嫌なら、友が手作り弁当作ってくればいいだろ?」
友「あたしが料理作れないの知ってて言ってるよな!?」
男子1「お前、好きな奴のために努力しようって発想はないのか」
女子3「それは同意。って、あーっ! これ、さっき取られた奴だーっ!」
女子1「まぁまぁ。浮気って、別になんもやましいことしてるわけじゃないんだしさ。よっし、1抜け。ほらほら、取りなぁ」
男子2「なんつーか、俺も、もうちょっと頑張ってみよっかなっと。……げ。お前、これ最後かよ」
女子2「わたしが言うのもなんだけどさ、転校生ちゃん、かなりキャラ変わった? お、あーがりっ」
友「人が真剣な話してんのに、ババ抜きしてんなーっ!」
転校生「友ちゃん、これ、宣戦布告のあいさつ代わりに。あーん」
友「うまっ! なにこの唐揚げ! さっくさく!」
男「マジ?」
転校生「はい、男くんも。あーん」
男「そ、それはさすがに」
転校生「あーん」
男「……はい。あーん」
友「だぁーっ! それ、完全に浮気の現行犯逮捕!」
転校生「友ちゃん」
友「な、なんだよ」
転校生「友ちゃんも男くんに、あーん、する?」
友「……するっ」ぶすっ
みんな『えぇー』
友「うっさい!」
転校生「ねぇ友ちゃん。あのね、わたし、今すっごく幸せ」
友「……はぁ、悔しいけど、あたしも同意見だよ」
転校生「二人とも、大好き」にこっ
男「て、照れるって」
友「っ! ほら! あーん!」ぐいっ
男「ぬあっ! わかったから! 食べるから! 顔をテカテカにすんなって」
fin ?
294 : 以下、名... - 2011/09/03(土) 20:51:41.03 eQ++Ge9w0 153/200
これにて終了です。ありがとうございました
初めてSS書きましたが、みなさんの支援がすごく嬉しかったです
本当にありがとう
書き溜めてあった物語はもう消化してしまいましたが
スレ終わるまでのんびり後日談書いてもいいですか?
後日談
女子2「あ、あのっ! これ! 受け取ってください!」
男子2「えっと、俺だよね?」
友「当たり前だろ。他に誰がいるんだよ」
女子3「つべこべ言わず受け取ればいいでしょーが」
女子2「ま、待ってみんな。あの、無理して受け取らなくてもいいから」
男子2「って、言っても」
転校生「女子2ちゃん……健気っ!」
男子1「いや転校生ちゃんがそれ言うのは、どうなの?」
友「こいつのは健気っていうか粘着質じゃね?」
転校生「友ちゃんなんか言った?」
友「ううん! 何にも!」
男子2「あのさ、盛り上がってるとこ悪いけど……」
男子2「今日、俺、誕生日じゃないぞ」
みんな『えっ?』
女子3「え、待って。誕生日じゃないの?」
男子2「うん。俺まだ2ヶ月先だし」
女子2「そう、だっけ?」
男子2「そうだよ」
男子1「……さーってバイト行くかー」
転校生「あれ? どこ行くの? 情報源の男子1くん」
男子1「え、えー? 何のことかなー」
友「お前さぁ、女子2がどんな気持ちで……」
男子1「あ、あーっ! バイト遅刻だーっ! じゃ、みんな、また明日!」しゅたっ
友「待てこら! 短距離走選手から逃げ切れると思うなっ!」だっ
男子2「……えーっと」
女子2「あ、あの、ごめんね! 誕生日でもないのに、こんな!」
男子2「いや、貰うよ。ありがとう」
女子2「! だ、男子2くん……」
女子3「よかったねー、女子2。ケガの功名って奴?」
女子2「うんっ!」
転校生「やっぱり、頑張ったら報われなくっちゃね」にこっ
女子2「転校生ちゃん……! クッキー、教えてくれてありがとね」
転校生「ううん、これくらい」
男子2「へぇ、これクッキーなんだ」
女子2「うん。チョコレートクッキー。……嫌いだった?」
男子2「まさか。うおっ! 美味そうじゃん。じゃあ早速――」
ガララッ
女子1「遅れてごめーん! ねぇ渡せた!? 女子2、渡せた!? あ、ついでに男子2、誕生日おめでと」
女子3「どーどーどー、落ち着け」
男子2「ってか、ついでかよ。俺のハッピーバースデーついでかよ!」
転校生「まぁまぁ、今日は誕生日じゃないわけだし」
男子2「……それにしても、あいつ、何で今日が俺の誕生日だって勘違いを――」
* * *
男『俺、来週誕生日なんだよ』
男子1『へー。リア充は氏ね』つーん
男子2『そうなんだ。リア充は氏ね』つーん
男『イジメだろっ! なぁ、これイジメだろ! 何で語尾に必ず氏ねがつくんだよ!』
男子1『な、ん、で? どう思います? 奥さん』
男子2『あら嫌だ。クラスの美少女二人を毎日侍らせて、誰からも恨まれてないとか思ってるのかしら』
男子1『性の乱れねー。不潔』
男『乱れてねーよっ!』
男子2『だいたいお前なぁ、俺の気持ち知ってただろーが。それを――』
男『それは……、悪かったって。結果的に横取りするみたいな形になったことは、本当に悪いと思ってる』
男子1『男……』
男『でもな。俺は友が好きだ。大好きだ。それは、お前のおかげで気づけたんだよ』
男『だから、ありがとう』
男子2『……はぁ。お前にはやっぱ勝てないな』
男子1『だな』
男『あ。転校生からメールだ』
転校生《明日のお弁当、ハンバーグでいいですか? ^^》
男子1『くっそー! やっぱリア充は氏ねーっ!』
* * *
男子2「……あれか」
女子2「どうしたの?」
転校生「あ、友ちゃん」
友「てめー! バイト今日ねーじゃねーか!」
男子1「痛っ! 痛い痛い! 首締まってるから!」
友「何ガセネタ掴ませてんだよ!」
男子1「いや、あの、悪気はなくってですね」
男子2「おい友! あと転校生!」
友「あぁん?」
転校生「……わたしも?」
男子2「今日は男の誕生日だ。……多分な」
友「は?」
転校生「え?」
男子1「マジで!?」
男子2「いや、お前は聞いてただろ」
女子1「なになにー? 結局どーいうこと?」
女子3「あの馬鹿が、男と男子2の誕生日間違えたってこと」
女子2「男子1くん……本当に人騒がせだね」
転校生「男くんの、誕生日? 今日?」
友「お前は本当……ロクなことしねぇなっ!」
男子1「痛い痛い! こんな痛いのに、胸も当らないし――」
友「うっさい!」ぐきっ
男子1「ぐはっ! どうせなら、転校生ちゃんに、やってもらいたかった……がくっ」
転校生「お断りします」にこっ
女子3「でもさ、転校生ちゃんはともかく、友があいつの誕生日知らないのはマズいんじゃない? 彼女として」
友「う」
女子1「まぁまぁ。彼女だから何でも知ってるってわけじゃ」
女子2「あはは……わたしも、好きな人の誕生日知らなかったわけだし」
女子3「でも彼女でしょ? 男、内心、期待してたんじゃないかなー」
友「うぅ」
転校生「だったら、今から祝いに行こうよ」
友「転校生……」
転校生「もちろん、みんなで」
友「って、ついてくる気か」
転校生「もちろん。今からまっすぐ帰って用意すれば、クッキーくらいなら持ってけるだろうし」
友「しかも手作りのプレゼントを用意しようとしている!」
転校生「男くんは甘いのあんまり好きじゃないから、バタークッキーなんかいいかな」
友「聞いてないし!!」
男子1「なぁ、俺やっぱり男に殺意が湧いてる」
男子2「安心しろ。今クラス中の男子が同じことを思ってる。なぁ?」
クラス中の男子『おう』
女子1「あはは、やっぱあの二人は面白いねー」
女子2「なんか、どんどん転校生ちゃんのキャラが変わってくよね」
女子3「たくましくなってるよね。特に友に対して」
女子1「わたしも男くんの争奪戦、参加しよっかな。面白十分で」
クラス中の男子『……男、殺ス』めらっ
女子3「やめたげて。さすがに、あいつ胃に穴空くから」
女子2「あ、あんま大げさに聞こえないね」
* * *
男「っくしゅん!」
???「風邪ですか? 先輩」
男「えぇ? そんなことはないと思うけど――」
???「体調管理くらい、ちゃんとしてくださいよ?」
男「っくしゅん!」
???「ほらほら、行きますよ?」
* * *
転校生「で? 何でみんなついてくるの?」
友「あたしは、男へのプレゼントを探しに」
男子1「俺も俺もー」
女子1「わたしもわたしもー」
女子2「……なんとなく?」
男子2「同じく」
女子3「暇つぶし」
転校生「……はぁ。まぁ、いいんだけどね」
女子1「うっわ、あれ見て! わんちゃん! 超可愛い!」
女子2「本当だ! 可愛い!」
男子1「か、可愛い。……タイプかも」
女子3「おい、どこ見てんだ。飼い主じゃなく犬を見ろ」
ぞろぞろ
男子2「あいつら……勝手すぎる」
友「あー、じゃああたしが見てよっか――」
男子2「いいって。男へのプレゼント探すんだろ? あいつらのことは任せとけ」
友「そっか? 悪いな、なんか」
転校生「友ちゃん! ちょっと来て!」
友「ん? どーかしたか?」
転校生「……あれ、誰だと思う?」
友「ん?」
男『――――』
???『――――』くすくす
男『――――』てれっ
友「お、男!?」
転校生「隣にいるの、誰だろう? 遠くて会話は聞こえないけど、なんか楽しそう」
友「あいつ……」ゆらっ
転校生「その怒りのオーラはもっともだけど、ちょっと待って。もう少し様子を見た方がいいかも」
友「なんでだよ! お前になびくならともかく、見たこともない女子と一緒に歩いてんだぞ!? しかも誕生日に! 楽しそうに!」
転校生「友ちゃん、涙目になってるよ」
友「なってない! だいたい、なんでお前はそんなに余裕――」
転校生「しっ、声が大きい。わたし、あの子どっかで見た記憶が……」
友「ウチの生徒か?」
転校生「わかんない。ちょっと尾行してみよう?」
友「わかった。……あ、その前にちょっとメールしてみる」
転校生「……」じっ
友「な、なんだよ。あんまジロジロ見んなって」
転校生「ふーん。待ち受けの写真、男くんなんだ」
友「べ、べ別にいいだろっ!」///
転校生「ま、わたしもだけど」
友「はぁ!? なんでだよ!!」
転校生「しーっ! 声が大きい!」
* * *
ピロリーン
男「おっと、メールか」
友《今忙しい?》
男「友か。何だろう?」
???「先輩、何してるんです? 置いてっちゃいますよ?」
男「あ、あぁ。悪い」
ピッピッピ
男《ごめん、今ちょっと手が離せない》
ピロリーン
男「待てよ! お前、歩くの早いって」
???「先輩が遅いんですよ。短足ですか?」
男「ほっとけ」
* * *
ピロリーン
友「あ、返信帰ってきた」
男《ごめん、今ちょっと手が離せない》
友「……ほぅ」
転校生「友ちゃん、落ち着いて。顔が般若みたい」
友「なーにが、今ちょっと手が離せない、だよ! あの……ばか!」
転校生「今忙しい? なんてメールしたら、そういう返事が来てもおかしくないでしょ」
友「じ、じゃあ何てメールすればよかったんだよ」
転校生「待って。わたしもメールしてみる」
友「……」じっ
転校生「な、なに?」
友「お前、ほんとに人の彼氏の写真待ち受けにしてんのな」
転校生「……えへっ」
友「くっ、可愛いな! まぁそれは後回しにするとして。今はあの女が誰か突き止めねーと」
転校生「うん。だね」
転校生《こんにちは。さっき買い物に出たら、広宮で男くんに似てる人見つけたから声かけようと思ったんだけど、すぐに見失っちゃった ^^;
もしまだ近くにいたら、買い物手伝ってくれると嬉しいな》
転校生「これでよし、っと」
友「なぁ、それ、怖くねぇか?」
転校生「え? そっかな?」
友「ま、いいや。送信っと」
転校生「あ、勝手に押さないでよー」
* * *
ピロリーン
男「またメールか。誰だ?」
転校生《こんにちは。さっき買い物に出たら、広宮で男くんに似てる人見つけたから声かけようと思ったんだけど、すぐに見失っちゃった ^^;
もしまだ近くにいたら、買い物手伝ってくれると嬉しいな》
男「!?」
???「先輩? 急にキョロキョロしてどうしたんです?」
男「え、あ、いや何でもない」
男(見られた……? 転校生に? どうする?)
???「汗すごいですよ? さっきもくしゃみしてたし……。本当に具合は悪くないんですか?」
男「だ、大丈夫! すごい元気!」
???「なら、いいんですけど。……あんまり心配かけないでくださいね?」
男「そ、それより、次はどこ行くの?」
???「はいはい。ちゃんと案内しますから」
男「とりあえず返信はしないとヤバいよな……」
男《え? それ多分人違いだよ。俺、今家だし。笑
ちょっと今忙しいから、またあとでメールするよ》
男「うわー、バレたら殺されそう」
ピロリーン
* * *
ピロリーン
友「お。返信来たみたいだな」
男《え? それ多分人違いだよ。俺、今家だし。笑
ちょっと今忙しいから、またあとでメールするよ》
転校生「……これ、どう思う?」
友「死罪は免れないでしょうな」
転校生「男くん……信じてたのに。よよよ」
友「あたしの前で嘘泣きしてどーすんだよ。それより今は――」
転校生「浮気男をどう懲らしめるか?」
友「そうそれ」
転校生「うーん。でも、わたしはね。多分あれ浮気じゃないと思う」
友「はぁ? あんなもん、どっからどう見ても浮気だろ!」
転校生「……本当にそう思う?」
友「だ、だって今、現にあいつは――」
転校生「わたしは、まだ男くんのこと信じてるよ。友ちゃんは?」
友「――その聞き方はずるいだろ」
転校生「そうだね。ふふっ」
友「だーっ! じゃああの女は誰で、あいつらは何してんだ?」
転校生「じゃあ友ちゃんにヒント」
友「ヒント? お前、正解わかったのか?」
転校生「半分ね」
友「半分? って、何かそれでも悔しいな。あたし、あいつの彼女なのに、あいつが何考えてんのかわかんない」
転校生「悔しいって、それはこっちのセリフ」
友「は?」
転校生「あの二人が入ってくお店は?」
友「……あ」
* * *
男「でかっ! ってか、広っ!」
???「当たり前ですよ。何のためにここまで来たと思ってるんですか?」
男「いや、感謝してる。ありがとな」
ぽんっ
???「ふん。触らないでください」
男「何だお前? 照れてんのか?」
???「馬鹿ですか? 先輩の頭って果てしなくおめでたいですね」
男「お前……ほんと俺に容赦ないな」
???「当たり前です。だって先輩は――」
男「あーわかったわかった。今度何か奢るから、それでいいだろ」
???「ふんっ」
男「しっかし、これだけ大きな店なら、多分あるな」
友「何があるんだ? ここに」
男「あぁ、だから――って友!? 転校生も!?」
転校生「こんにちは」
男「いや、あの、これは、違うんだ。その、浮気とかじゃなくって」
転校生「ふふっ、慌てすぎ。疑われてもおかしくないね、今の反応は」
友「まったくだな」
男「……って、あれ? 怒らないの?」
転校生「浮気じゃないなんてことくらい、わかってるよ」
友「っていうか。改めて思ったけど、お前にそんな度胸はない」
男「ぐっ」
転校生「それから、このスポーツ用品店に来たってことは、どうせ友ちゃん絡みでしょ?」
男「ぐぐっ」
友「図星か。あとは、そこの女が誰なのか説明して――って、あれ?」
???「と、と、友先輩!!」
友「お、おぉ?」
???「私です! 覚えてないですか!? 後輩です!」
友「後輩? って、あの後輩か? え!? あの後輩か!?」
後輩「は、はいっ! あの、とかよくわかんないですけど。よかったー、覚えていただけていて!」
転校生「……あ。どっかで見たことあると思ったら、友ちゃんの測定会予選に応援に来てた子だ」
後輩「あ、そ、そうです。えっと、はじめまして。わたし後輩って言います」
友「中学が一緒だったんだ。2つ下」
後輩「はい! それで私、先輩の高校受験するつもりで、今日資料を貰いに行ったんです」
後輩「そしたら……」
* * *
男「あれ? お前、後輩じゃん」
後輩「げ。男先輩ですか」
男「げ、って何だお前。失礼だな」
後輩「なんか用ですか?」
男「相変わらず態度悪っ! なんでここにいんだよ」
後輩「受験の資料もらいにきたんですぅ」
男「……お前、そんなに俺と喋るの嫌か?」
後輩「ところで先輩。なんでも、最近、可愛い彼女が出来たそうで」
男「あ、あぁ。まぁ」てれっ
後輩「けっ。まったく、友先輩はこんな男のどこがいいんですかね?」
男「おーい、聞こえてんぞー」
後輩「おまけに地獄耳」
男「あれ? っていうか、俺が友と付き合い始めたの、何で知ってんだよ」
後輩「私が友先輩に関して知らないことがあるとでも?」
男「た、たいした自信だな」
後輩「当然です。好きな食べ物、嫌いな食べ物はもちろん、スリーサイズまで知ってます」
男「へ、へぇ。そう」
男「……」
男「あ。じゃあお前さ、友の足のサイズとか知ってる?」
後輩「はい。知ってますけど」
男「あ、じゃあ友の好きなスポーツブランド」
後輩「もちろん知ってます」
男「この辺の大きいスポーツ用品店」
後輩「私も陸上部ですから」
男「神よ!」
後輩「(びくっ)」
男「いやー、お前。いいタイミングで現れたな!」
後輩「な、なんですか? 気持ち悪さがほとばしってますよ?」
男「お前には言われたくない。……あ。しかも、お前って女子だったよな?」
後輩「確認しないとわかりませんか? 失礼さが留まるところを知らないですね」
男「一石二鳥じゃん」
男「あー、後輩? ちょっと頼みたいことがあるんだけどさ」
後輩「えー?」
男「嫌そうな顔をしない! ほらお前の好物、ジョニーズの特性パフェ奢ってやるから」
後輩「本当ですか?」
男「あぁ」
後輩「まぁそこまで言うなら、頼まれてあげなくもないですよ」
男「……ちょろいな」
後輩「ところで、どうして私の好物を知ってるんですか? 事と次第によっては訴えます」
男「いや、別に。中学のころ友と一緒にジョニーズ行ったとき、そんな話してただろ?」
後輩「先輩とジョニーズに行ったのは、一回か二回だったと思いますけど?」
男「まぁ細かいことはいいだろって」
後輩「……気持ち悪い」
男「なんでだよ!!」
* * *
後輩「というわけで、先輩の買い物に付き合ってたわけです」
転校生「やーっぱり友ちゃん絡みか」
友「だ、だからってな! あれだぞ! 嘘はよくないぞ!」///
男「ごめん。サプライズにしたかったからさ」
転校生「ふふっ。友ちゃん顔真っ赤だよ?」
友「……ぅぁぁ」
後輩「まったく。人騒がせな先輩です」カシャ
男「で、なんでお前はいきなり写メってんだよ」
後輩「だ、だって赤面する友先輩ですよ!? れ、レアすぎます!」
男「はぁ。……勝手にしろ」
友「で、でも。何でお前、あたしにプレゼントなんだよ?」
男「あー、俺あんま陸上詳しくないけどさ。お前のスパイク、大分傷んでるみたいだったし」
友「そ、そうじゃなくって。今日はお前の誕生日だろ? 何であたしにプレゼントなんだよ」
男「なんだ。そういうこと」
男「今日の朝、親から誕生日プレゼントって言って、現金貰ったんだよ」
男「だから、特に欲しいもんもないし、お前に喜んでもらおうかな――って」
男「ど、どうした? お前、本当に顔真っ赤だぞ?」
友「お前……っ」
男「あ、えっと、やっぱスパイクって自分で選んだ方が良かったか? 俺本当そういうのわかんなくって」
友「す、好きだ男!」ぐいっ
男「は、はぁ?」
ちゅっ
男「……はい?」
友「…………っ」///
転校生「あー、はいはい。ごちそうさま」
友「お前、それ、あたしの初めてだからな!」
男「えっと、今のは」
友「誕生日プレゼントだと思って一生大事にしろよな!」
男「ど、どーやって!?」
友「ぅぁああ」
後輩「友先輩……そんな暴れるくらい恥ずかしいならやらなきゃいいのに」
男「えーっと、ちょっと友は一先ず置いといて……」
転校生「置いとくの!?」
男「これ、転校生に」
転校生「え? わ、わたしに?」
男「あんまこういう小物選ぶセンス自信なかったから、後輩についてきてもらったんだけど」
男「結局それ気に入っちゃって、一人で選んじゃった」
転校生「そ、そうなんだ」
男「うん」
転校生「開けても、いいかな?」
男「うん」
転校生「これ――!」
男「傘のストラップと、虹色の髪留め」
転校生「これ、わたしに?」
男「あ、うん。雨が嫌いな転校生に、傘と、今まで頑張ってきたご褒美に、虹のプレゼント。……なんちって」
転校生「……ばかぁ」じわっ
男「え? 何で泣くの? え? あれ?」
転校生「ばか! おおばかっ!」ぐいっ
男「あ、あれー? なに、この既視感」
ちゅっ
転校生「それ、お返しだから」
男「えっと、転校生、さん?」
転校生「あと、それも初めてなんだから、大切にしてよねっ!!」///
男「だからどーやって!?」
友「あーっ! 男お前ぇ!!」
男「は、はいぃっ!」
友「今のは浮気だよな! どー考えても浮気だよな!?」
男「えぇ!? 俺のせい!? どっちかっていうと事故みたいなものっていうか」
転校生「ひどいよ、男くん。わたしの初めて、事故で奪ったってこと?」よよよ
男「いや、奪われたのはむしろ俺の方じゃ――」
友「てめー、男! あたしの親友泣かしてんじゃねぇーよ!」
ばきっ
男「ぐはっ!」
カシャッ
後輩「んー。題名は、『女の敵、滅びる』かな」
男「お前、な……」こてっ
男子1「あ、いたぞ! あいつら!」
女子1「あー! 何か面白そうなことになってるぅー! わたしを置いてー!!」
女子3「まったく、何やってんだかあいつら」
女子2「何だか楽しそうだね、女子3ちゃん」
男子2「あいつら、飽きねぇな。本当」
わーわー ぎゃーぎゃー
転校生「お母さん。あのね、わたしね、こんなに素敵な友達ができたよ」
転校生「見てるかな? お母さん」にこっ
Fin