女「コーヒー飲む?」
男「ああ、もらおうかな」
女「砂糖とミルクは?」
男「どっちもいらない。ブラックでいい」
女「それだと苦くない?」
男「……」グビッ
男「うん、コーヒーはブラックに限るな」
女「かっこつけてるだけでしょ?」
元スレ
男「コーヒーはブラックに限るな」女「かっこつけてるだけでしょ?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1547467867/
男「そんなことないよ」
男「俺たち≪対宇宙特別防衛隊≫は、宇宙という闇(ブラック)に挑み続ける仕事だ」
男「だからこそ、コーヒーもブラックで飲み、気を引き締める必要があるんだ」
女「私は砂糖もミルクも入れさせてもらうわ」サッサッ
ビービー… ビービー…
男「!」
女「サイレンだわ!」
『XD-4P地区にエイリアン出現! 繰り返す、XD-4P地区にエイリアン出現!』
男「出撃だ!」
女「のんびりコーヒー飲んでるヒマもないわね」
XD-4P地区――
エイリアンA「キュイイイイイイイッ」ビビビビッ
ズガァァァァァン!!!
エイリアンB「キュイイイイキュイイイイイ」ビビビビッ
ドゴォォォォォン!!!
女「あいつらね……」
男「人の星で好き勝手しやがって……」
男「数は?」
女「全部で10体ってところ」
男「よし……それぐらいなら俺らだけでやれるな。後続を待つまでもない」
男「いくぞ! 光線銃を構えろ!」
女「うん!」
男「喰らえッ!」バシュッ
エイリアンA「キュイイ!?」ズガァンッ
女「こっちよ!」バシュッ
エイリアンB「キュイィィィ!」ズガァンッ
男「よし、二体倒した!」
女「どんどんいくわよ!」
エイリアンC「キュイィィィィ!」ビビビビッ
ドゴォォォォォン!!!
男「おっと!」サッ
男「そこだ!」バシュッ
エイリアンC「ギュイイィ!」ズガァンッ
男「三体目撃破!」
女「残りが全部、こっちに向かってくるわ!」
バシュッ… バシュッ… バシュッ…
エイリアンD「ギュイイィィィ……」ドサッ…
男「よし!」
女「今のでラスト?」
男「ああ、10体目だ」
女「ったく、こんだけ忙しくて命がけなのに給料安いし、うちってホントブラック企業よね」
男「何百年も前に流行った言葉らしいな、それ」
女「うん、労働条件が悪い組織を指す言葉だったんだって」
男「ブラック企業……結構じゃないか」
男「俺たちが宇宙の脅威と戦ってるから、地球の人達は平和に暮らせるんだからさ」
女「まーたかっこつけちゃって。あんただってもっと給料欲しいでしょ?」
男「かっこつけてなんかいないよ。本心さ。俺は今の給料で十分だよ」
女「はいはい」
男「それより、司令官にエイリアン殲滅の報告に行こう」
女「了解しました、男殿!」
司令官「うむ、ご苦労だった。下がっていい」
男「はいっ!」
女「はいっ!」
男「さて、もう一杯コーヒー飲もうかな」
女「やっぱりブラック?」
男「もちろんさ」
女「かっこつけちゃって、もう」
それからしばらくして――
男「司令官直々に緊急の呼び出しだなんて、なんだろう?」
女「只事じゃなさそうな雰囲気だったわね」
ザッザッザッ
男「失礼します!」
女「失礼します!」
司令官「さっそく、任務を申し渡す」
男「緊急事態とのことですが……?」
司令官「悪名高き宇宙人、≪エビル星人≫の次のターゲットが地球になったらしい」
男「なんですって?」
女「“宇宙のならず者”の異名を欲しいままにしてる連中ね」
司令官「うむ、奴らが地球に降り立ったら、甚大な被害が出ることだろう」
司令官「当然、我々も戦艦を出して宇宙空間で応戦するが、おそらく劣勢になる」
司令官「そこで、君たちには我々が戦ってる隙に、エビル星人の戦艦に侵入して」
司令官「敵の司令官――“エビル帝王”を抹殺してもらいたい」
司令官「これが今回の任務だ」
男「了解(ラジャー)!」
女「了解(ラジャー)!」
女「あーあ、とんでもない任務ね。敵の戦艦に乗り込んで親玉の首を取れだなんて」
男「だが、戦艦の力では勝るエビル星人に勝つにはそれしかない」
男「奴らに目をつけられ絶滅させられた星だってある。これは地球存亡を賭けた戦いなんだ」
女「分かってるわよ」
女「まだ時間あるし、コーヒー飲む?」
男「ああ、ブラックでな」
女「まーたかっこつけちゃって」
作戦開始――
司令官「エビル星人の戦艦が来たぞ!」
司令官「撃て、撃てぇーっ!!!」
砲撃手「全砲門、最大出力!」
バシューンッ バシューンッ バシューンッ バシューンッ バシューンッ
ズガァァァァン… ドゴォォォォン… ドグワァァァン…
司令官(……頼むぞ!)
女「始まったわ……」
男「戦艦同士が派手にやり合ってる隙に、ここから侵入できそうだ」
男「いくぞ!」
女「オッケー!」
タタタッ… タタタッ…
タタタッ…
エビル星人A「!?」
エビル星人A「なんだオマエタチハ!?」
男「……」バシュッ
エビル星人A「グワッ!」ズガァンッ
女「……」バシュッ
エビル星人B「ウギャ!」ズガァンッ
男(帝王はどこだ?)
エビル星人C「侵入者ダ!」ビビビビビッ
バチッ!
男「しまった!」
女「このっ!」バシュッ
エビル星人C「グエェ!」ズガァンッ
男「俺としたことが、光線銃を破壊されてしまった……!」
女「あなたは退却して! 帝王は私が何とかするから!」
男「いや……」
男「ストッキング貸してくれ!」
女「いきなりなにいってんの!?」
男「いいから!」
女「分かったわよ、もう……」ヌギヌギ
女「こんなものどうするの?」
男「このストッキングに、光線銃の残骸やそこらの破片を詰め込むんだ」
男「できた!」ヒュンヒュンッ
女「なにそれ?」
男「簡易的な武器だ。ブラックジャックっていうらしい」ヒュンヒュンッ
男「これでもかなりの殺傷力を誇る」
女「そんなんでエビル星人と戦うの? かっこつけてるだけでしょ?」
男「いいや、俺は本気だ」
女「バッカじゃないの? 自殺行為よ!」
男「やってみなきゃ分からないさ」
男「いくぞ、エビル星人!」ヒュヒュンッ
バキッ! ドカッ! ドゴッ!
「グオォ!」 「ウゲェ!」 「ギャア!」
男「どうだ?」
女「や、やるじゃない……」
男「どうやらエビル帝王はあの部屋にいるようだ。乗り込むぞ!」
女「うん!」
エビル帝王「なんダ!? なぜ地球人がここニ!?」
男「エビル帝王、お前を倒しに来た!」
女「あんたさえ倒せば、指揮系統は崩壊するわ!」
エビル帝王「フン、地球人如きに俺を倒せるわけないだろウ!」
エビル帝王「死ネッ!」ビビビビビビッ
ズガガガァァァァァン!!!
男「ぐっ!」
女「今までのエビル星人とは比較にならないパワーだわ!」
男「喰らえッ!」ヒュヒュンッ
ドガッ! バキッ!
エビル帝王「……フン」
エビル帝王「痛くも痒くもなイ!」ビビビビビビッ
ドゴォォォォォン!!!
男「あぐっ!」
男(やはり、こんな武器が通じる相手じゃないか……!)
女「くっ!」ジャキッ
エビル帝王「撃たせるカ!」ビビビッ
ドォォォォォン!!!
女「きゃあっ!」
カランカランッ
エビル帝王「頼みの綱の銃は転がっていったナ……」
エビル帝王「まず、メスからトドメを刺してやル!」
男「いいや……ナイスパスだ!」サッ
エビル帝王「ナ!?」
エビル帝王「コイツ……!」
男「遅い!」
男「出力最大で直撃させる!」バシュッ!
ズバババババッ!!!
エビル帝王「グオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
エビル帝王「グ……俺としたことガァ……!」
女「やったぁ!」
男「よく攻撃を喰らうふりして、光線銃をパスしてくれた!」
女「あんたもよく私の狙いに気づいてくれたわね!」
エビル帝王「ククク……」
男「!」
エビル帝王「俺を倒さなけれバ……地球人は絶滅だけは避けられたかもしれなイ……」
エビル帝王「しかし、これデ……地球人は確実に絶滅すル……」ガクッ
男「……死んだ」
男「今のはどういう意味だ?」
女「ただの強がりでしょ。意味なんてないわよ」
ゴゴゴゴゴ…
男「!」
女「!」
男「な、なんだ!? エビル帝王の死体からものすごいエネルギーが!」
女「逃げるわよ!」
タタタタッ… タタタタッ…
司令官「一体どうなっているのだ!?」
観測員「エビル帝王の死体の質量が急速に増大し、ブラックホールが形成されつつあります!」
観測員「どうやら、自分が死んだらそうなるよう、仕掛けを施していたようです!」
女「死なばもろともってわけ!? なんて奴なの……!」
男「申し訳ありませんっ!」
司令官「いや、こんなことになるなど、到底予測もつかなかったことだ……」
男「このままいくとどうなるんだ?」
観測員「地球はおろか、太陽系全てがあのブラックホールに飲み込まれてしまうでしょう……」
司令官「何か手はないのか?」
観測員「あれはいわゆる自然発生する純粋なブラックホールではありません」
観測員「ブラックホール内部に飛び込み、核(コア)を破壊できれば、消滅させることは可能です」
観測員「ただし、成功確率は12.15%、飛び込んだ者の生存確率はさらに低く……」
司令官「うむう……」
男「やります」
司令官「え」
男「ブラックホールを消滅させる任務、俺にやらせて下さい!」
女「ちょっ!」
女「なにいってるの! 私たちはもう十分働いたでしょ! なんであんたが……!」
男「しかし、並の隊員じゃ、無駄死にするだけだろう。俺が行かなきゃ……」
女「バカよ! ブラックホールに飛び込むなんて! かっこつけてるだけでしょ!?」
男「ああ……その通りだ」
男「地球を……いや、君を守るため……俺はかっこつけたいんだ」
女「うう……バカ……!」
男「行ってもいいよな?」
女「行きなさいよ……! バカにつける薬はないもの……!」
女「だけど……」
男「?」
女「必ず帰ってきて……。約束して!」
男「ああ、約束する!」
男「司令官、この任務、俺が志願します!」
司令官「うむ……頼んだぞ!」
ギュゥゥゥゥゥン…
観測員「ブラックホールへの突入を確認!」
……
観測員「……ブラックホール消滅!」
観測員「どうやら、核(コア)を破壊できたようです!」
司令官「おお、やってくれたか! さすがだ!」
観測員「しかし……彼の生存反応は確認、できません……」
司令官「……そうか」
女「バカ……」
一年後――
女(あれから……あっという間に一年が経った)
女(私は≪対宇宙特別防衛隊≫で死に物狂いで働いた)
女(彼の死を忘れたかったから? いいえ、そうじゃないわ)
女(地球を平和にしておかなきゃいけないから――)
女(いつでも彼が帰ってこれるように――)
女「……」コポコポ…
女「……」グビッ
女(すっかりコーヒーをブラックで飲むのも慣れちゃったわね)
女(だけど、なかなかあの人のようにはいかないわ。今日も苦戦しちゃったし)
ザッ…
女「――!」ハッ
男「やぁ」
女「……!」
女「やっぱり……やっぱり帰ってきた!」
男「ブラックホールは壊せたものの、その影響でまた違う空間に飛ばされちゃってね……」
男「遠回りになったけど、やっと帰ってこれたよ」
男「えぇっと……ただいま!」
女「お帰りなさい!」
女「さっそくコーヒー入れるね! ブラックでいいんでしょ?」
男「あ、それなんだけど……」
男「本当は俺、砂糖とミルクが入ってる方が好きなんだ……」
~END~