【 PART1 転生 】
男「ふぅ、やっとバイト終わった……」
男(あーあ、俺ってこのままずっとだらだらうだつの上がらない人生送るんだろうなぁ……)
男(今、主人公が転生する物語が流行ってるらしいけど、俺もとっとと死んで転生してえ)
男(だけど、俺なんかが異世界行ってもどうしようもないだろうし)
男(どうせだったら、強いキャラに転生してみたいもんだが……)
男(たとえば、ゴルゴ13とか……)
パァァァァ…
男「ん?」
元スレ
男「転生したらゴルゴ13だった件」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1542276129/
男「なんだこの光……!?」
神様「私は神だ……」
男「か、神様!?」
神様「おぬしは今の人生に嫌気がさし、本当に転生したいと思ってるのか?」
男「ええ、思ってますよ。友達もいないし、結婚もできそうにないし……」
神様「ならばその願い、叶えてしんぜよう」
男「へ?」
パァァァァァ…
男「うわっ、光が俺を包む――」
ゴルゴ13「ここは……? ホテルの一室みたいだが……」
ゴルゴ13「んん……!?」
ゴルゴ13(鏡に映ってるのは……ゴルゴ13!?)
ゴルゴ13(いや、違う! これ俺だ! 俺の顔がゴルゴになってるんだ!)
ゴルゴ13(ちょっと脱いでみるか)ヌギッ
ゴルゴ13「うおっ! すっげえ筋肉、体じゅう傷だらけ、白ブリーフ!」
ゴルゴ13「マジかよ……! 俺、ゴルゴ13になっちまった!」
【 PART2 超A級の生活 】
― 酒場 ―
ゴルゴ13(すたれた酒場で、一人で酒……こういうのに憧れてたんだよな)
マスター「どうぞ」スッ
ゴルゴ13「…………」グビッ
ゴルゴ13「くぅ~、きくぅ~!」プハッ
ゴルゴ13(おっと、ゴルゴはこんな声出さないよな。いかんいかん)
ゴルゴ13(葉巻を吸ってみたいけど……吸い方がよく分かんねえ)モゾモゾ
金髪女「はぁい」
ゴルゴ13「ん?」
金髪女「今晩、あたしと遊ばない?」プリンッ
ゴルゴ13(うひょ~! こんな美人が向こうから話しかけてきた!)
ゴルゴ13(さっすがゴルゴ! モテモテだぜぇ!)
ゴルゴ13(漫画の中でもよく、ゲストで出てくる女があっちから惚れてくるもんな!)
ゴルゴ13(しかも、俺英語なんてろくに喋れないのに喋れるようになってる!)
ゴルゴ13(ゴルゴは色んな国の言葉を話せるからなぁ……)
チンピラ「おい、イエロー」
ゴルゴ13(イエロー? ああ、黄色人種のことか)
チンピラ「オレの女になに手ぇ出してやがる!」
ゴルゴ13「いや、手を出したっていうか、何もしてないんだけど……」
金髪女「あたしはあんたの女になった覚えなんかないわ!」
チンピラ「なんだってぇ!? てめえ、ぶっ殺してやる!」ガシッ
ゴルゴ13「ひっ!」
ゴルゴ13(いや待て……。今、俺はゴルゴになってるんだ。やってやる!)
ゴルゴ13「こうかわして……こうか?」シェッ
バキィッ!
チンピラ「ぐはぁっ!」ドサッ…
ゴルゴ13(ふぅ~、さすがゴルゴの肉体。下手くそチョップでも敵を倒せた)
ゴルゴ13「ザコが……」
金髪女「ステキ……!」ギュッ
ゴルゴ13(おほぉぉぉぉぉ! ゴルゴになってよかったぁ~!)
― ホテル ―
金髪女「オオオ~ッ!」
金髪女「すごい、すごいわ! こんな男らしい体した人はじめて!」
ゴルゴ13「へへへ……だろ?」
金髪女「でもテクニックはまるで子供みたい……」
ゴルゴ13「ぐ……!」
ゴルゴ13(俺じゃ、“恋のサントロペ”なんて言わせるのは無理だな……)
次の日――
ゴルゴ13(そういや、ゴルゴって預金どれぐらいあんだろ?)
ゴルゴ13(ちょっと調べてみるか……)
ゴルゴ13「……すげえ~! 桁いくつあんだよ!」
ゴルゴ13(しかも、ゴルゴって用心深いから他にもこういう口座があるんだよな)
ゴルゴ13(マジセレブじゃん!)
― レストラン ―
店員「お待たせいたしました」
ゴルゴ13「待ってました!」
ゴルゴ13「う~ん、うまい!」パクパクモグモグ…
ゴルゴ13(“俺”だった時は、いつもコンビニ飯だったからなぁ)
ゴルゴ13(こんな高い飯食ったのはじめてだ!)
ゴルゴ13(ゴルゴになってよかったぁ~!)
【 PART3 憧れの武器屋へ 】
― デイブの工房 ―
ゴルゴ13「よっ!」
デイブ「……あんたかい」
デイブ「どうせまた面倒な注文を持ち込みにきたんだろう?」
ゴルゴ13(うおおお! 憧れの生デイブ!)
ゴルゴ13(今まで何度もゴルゴに無茶振りされてきたけど、ちゃんと期待にこたえてくれるんだよな)
ゴルゴ13「いや、今日は特に用はないんだ。遊びに来ただけ」
デイブ「……へ?」
ゴルゴ13「すげぇ~、銃がいっぱいある! すげぇ~!」
デイブ「!?」
ゴルゴ13「ちょっと撃ってみてもいいか?」
デイブ「もちろんいいとも……」
ズキューン… ドキューン… ズキューン…
ゴルゴ13「やっぱり案外難しいもんだな……」
ゴルゴ13(ゴルゴの体だから、ちょっと練習すりゃすぐうまくはなるんだろうけど……)
デイブ(なんて下手くそだ! まるで銃を撃ったことのない初心者じゃあないか!)ジロ…
ゴルゴ13(やべっ、怪しまれてる……)
ゴルゴ13「今日は調子が悪いみたいだ! じゃあな!」バタン…
デイブ(あれは……誰だったんだ!?)
デイブ(整形した偽者!? しかし、あの姿形は間違いなく本物だったが……)
【 PART4 受難 】
― 隠れ家 ―
ゴルゴ13(結局のとこ、見た目はゴルゴだけど中身はしょせん俺だから、余計なことしない方がいいな)
『本日は、リクエストで讃美歌13番をお送りいたします……』
『G13型トラクター求む』
ゴルゴ13(ゴルゴにコンタクト取りたい奴からメッセージ来てるけど、こんなもん無視無視!)
ゴルゴ13(スナイパーなんかやめて、たっぷりある貯金で楽しく暮らす!)
ゴルゴ13(これが最良のゴルゴ生活てなもんさ!)
バタバタ… バタンッ!
殺し屋「見つけたぞ!」
ゴルゴ13「ん?」
殺し屋「ボスの仇、取らせてもらう!」ジャキッ
ゴルゴ13「は!? 人んちに土足で……って土足でいいのか。誰だよお前!?」
殺し屋「死ねぇ!」ガガガガガッ
ゴルゴ13「ちょっ!」
ガガガガガッ… ガガガガガッ…
ゴルゴ13「ひいいいいいいっ!」ザウッ
ゴルゴ13(あっぶねえ……ゴルゴの危険を察する本能みたいのがなきゃ、蜂の巣だった!)
ゴルゴ13(逃げなきゃ!)ダッ
殺し屋「くそっ……逃げられたか!」
殺し屋(しかし、今の動き……素早くはあったが、動きそのものはまるで素人だった……)
殺し屋(あいつ、本当にあのゴルゴ13なのか?)
殺し屋(まあ、どっちでもいい! ゴルゴの首がありゃ俺は裏世界のVIPよ!)ダッ
ゴルゴ13「なんなんだよ、いきなり!」
ゴルゴ13「家にまでやってくるとか反則だろ……」
ゴルゴ13(そういや、ゴルゴが山荘でくつろいでたら、原子炉持った工作員がやってくるなんて)
ゴルゴ13(エピソードもあったっけ……)
ゴルゴ13(他にも、自分の船で健康診断しようとしたらFBIに絡まれたりとか……)
ゴルゴ13(どんだけトラブル巻き込まれ体質なんだよ、ゴルゴ……)
ザッ…
ゴルゴ13(誰だ? 敵じゃあないようだが……)
CIA職員「突然すみません、CIAの者です」
ゴルゴ13「……へ?」
CIA職員「実はあなたに急きょ依頼したいことがありまして……」
CIA職員「通常のコンタクト手段では連絡がつかなかったので、ルール違反は承知でこのような手段を……」
ゴルゴ13(こんなとこまでやってくんなよ! 俺にプライバシーはねえのかよ!)
ゴルゴ13「帰れ! 今、俺は用件を聞かない!」
CIA職員「しかし……」
ゴルゴ13「帰れぇ!」
― 田舎町 ―
ゴルゴ13「ふぅ、しつこかった……」
ゴルゴ13「何十万ドル積まれてもやらねえよ。俺はもう、スナイパーはやめたんだから……」
ゴルゴ13(殺し屋も怖いし、しばらくこの田舎町でひっそり暮らすか……)
ゴルゴ13(そうすりゃそのうちゴルゴ13は死亡したってことになるだろ……)
中年「……む」
中年(あれはゴルゴ13!?)
中年(奴が意味もなくこんな田舎町に来るわけないし、きっとワシを殺しにきたにちがいない!)
中年「ゴルゴ13!」
ゴルゴ13「はい?」
中年「ワシは殺されんぞぉっ!」ズキューンッ
ゴルゴ13「うおっ!?」バッ
中年「誰の依頼だ!? 誰の依頼でワシを殺しにきた!?」ズキューンッ
バキューン… ズキューン… ガゥーン…
ゴルゴ13(なんなんだよ、もぉぉぉぉっ!)
ゴルゴ13「……ん!」
ゴルゴ13(やばい、右手が痺れてきた)ビリビリ…
ゴルゴ13(これはまさか……ギランバレー症候群!? 正確には違う病気らしいけど……)
ゴルゴ13(なんでこんな時に……今戦いになったら絶対殺されちまう!)
タタタッ…
「あっちだ!」 「いたぞーっ!」 「ゴルゴだっ!」
ゴルゴ13「ひっ!」
ザザザッ…
「デューク東郷、捜しましたよ!」 「どうか依頼を受けて下さい!」 「あなたしかいない!」
ゴルゴ13「こっちからも!」
ゴルゴ13(どうすればいい!? どうすればいいんだ!?)
ゴルゴ13「神様、助けてくれーっ!!!」
パァァァァ…
ゴルゴ13「おおっ、この光は!?」
神様「おぬしの強い嘆きを感じてやってきたが、どうかしたかね?」
ゴルゴ13「あっ、神様! 頼む、俺を元の“俺”に戻してくれ!」
神様「なぜだ? せっかく願い通りゴルゴ13に転生させてやったというのに……」
ゴルゴ13「いや、ゴルゴがこんなに大変だとは思わなかった!」
ゴルゴ13「気が休まる時が全然ない! お願いだぁ、元に戻してくれ!」
神様「転生のチャンスは一度きり。戻ってしまうともう転生はできぬがよいか?」
ゴルゴ13「もちろん!」
神様「ならば……戻してやろう」
パァァァァ…
【 PART5 終幕 】
男「……ん」
男(この体は……ゴルゴじゃない! 元の体だ!)
男「バンザーイ、戻ってこれた! これでもう、誰かに狙われなくて済む!」
男「いくらうだつが上がらなくても、やっぱり普通が一番だな!」
男「これからは俺なりに、有意義な人生送れるよう努力しよう!」
男「ワーイワーイ、やったーっ!」
ワーイワーイ… ヤッター…
ゴルゴ13「…………」
ゴルゴ13「俺は俺のいかなる複製品も許さないし、俺に転生することも許さない……」
ゴルゴ13「有罪(ギルティ)……!」チャッ
ズキューン…
END