昔々、1人の魔王がいました。
魔王はとても強く、とても頭が良かったため、誰も倒すことができませんでした。
各国は挙って魔王を倒そうと躍起になります。
「うちの国の勇者が倒す!」
「いやうちの国だ!」
「とにかく勇者を魔王城に送るのだ!」
いつしか魔王城には勇者達による長蛇の列が出来上がっていました。
そしてある日。
魔王「もうめんどくさいから1人にしてくれ」
勇者A「え……!?」
この一言が、世界を変えてしまったのです。
元スレ
勇者Aがあらわれた!勇者Bがあらわれた!勇者Cがあらわれた!
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2章
勇者2「では行ってきます」
△△王「うむ、頼むぞ」
勇者2「はい、きっと魔王を倒して参ります」
兵士達「勇者様ばんざーい!」
兵士達「勇者様ばんざーい!」
代々、△△王国に仕えている家に産まれ育った僕は世間的に見れば何の不自由もない、温室育ちのエリートなのだろう。
しかしそれは大きな間違いだ。
僕には兄がいたのだ。
△△王「おお、兄よ!今回もまたよくやってくれた!」
勇者2兄「ありがとうございます」
勇者2「……」
よくある話なのかもしれない。
僕の兄は昔から何をやっても一番だった。
そして誰にでも分け隔てなく接する兄は皆からの信頼も厚く。
「今回もお手柄だったな!兄よ!」
「全く羨ましいよ」
そんな兄が勇者に選ばれるのも時間の問題だった。
「おめでとう!」
「流石だな、兄よ」
「兄様―!」
勇者2兄「ありがとうございます、必ずや父の仇を、そしてこの国に、世界に平和をもたらします!」
先代の兵士長だった父は魔王の部下に殺された。
兄も僕も心から悲しみ、そして魔王を怨み。
共に腕を磨いてきた。
「それに比べて弟は」
「早く出世しろよ出来損ない!」
「どうしてこうなったんだろうなあ」
はずだった。
何のことも無い。
僕は普通で。
どこにでもいるような凡人で。
ただ、兄が優秀すぎた。
それだけだった。
ただ、それだけだったのだ。
勇者2「……」
そんな兄がある日、帰国した。
「おい!大変だ!兄がやられたぞ!」
「なんだって!?」
「馬鹿な!?あの兄が!?」
勇者2「……」
動かぬ姿となって。
兄は魔王に殺されたのだった。
僕は必死に腕を磨いた。
誰よりも鍛錬を重ね、誰よりも強くなろうと思った。
そうして僕は勇者となった。
「勇者様ばんざーい!!」
「勇者様ばんざーい!!」
兄が死体となってこの国に帰ってきて、
確かに僕は悲しみ、そして魔王に更なる怨みを持った。
父のため、兄のため、この国のため、世界のため。
必死に鍛錬を重ね、勇者を目指してきたはずだった。
勇者2「この国ともしばらくお別れか」
なのに、何故だろう。
今、僕はこれまで味わったことの無い高揚感に充たされている。
勇者2「これで魔王を倒すことが出来れば……」
勇者1「お前が勇者2か」
勇者2「……え?」
勇者1「世界の平和のため」
勇者1「さようなら」
これで魔王を倒すことが出来れば皆に認めてもらえる。
父や、兄以上の存在になれる。
僕はただ、それだけのために勇者になったんだ。
「ああ、きっと自分のためだよ」
「そうなのか?」
「ああ、だってあいつさ」
「兄の追悼式で、笑ってたんだぜ?」
勇者1「……」
2章おわり
宿屋「勇者様―!出てきてくださいー!」ドンドン
宿屋「勇者様―!!」ドンドン
宿屋「いくら勇者様だからっていつまでも無賃で泊まられちゃあ困るんですよー!!」ドンドン
勇者3「……」
勇者3「……うう……すみません……」
宿屋「謝って済むと思ってんのか!!良いから出て来い!!」ドンドン
勇者3「……うう……」
勇者1「……」
3章
勇者3「……」
勇者3「……」
勇者3「……あれ」
勇者3「……静かになったな」
宿屋「勇者様、あんたに客だよ」コンコン
勇者3「へ?」
宿屋「あんたの恩人なんだ、開けてやりなよ」
勇者3「……?」
勇者1「こんにちは」
勇者3「?」
勇者3「宿代を!?」
勇者1「ええ、払っておきましたよ」
勇者3「それであんなに静かに……」
勇者1「あはは」
勇者3「……貴方には感謝してもしきれない、ありがとうございます」
勇者1「いえ、困っている人を見たら助けろと、幼い頃より父から教えられてきたもので」
勇者3「……父上は、ご立派な方だ」
勇者1「……」
勇者3「……それに比べて、僕は……」
勇者1「……」
勇者1「あの」
勇者3「……何でしょう」
勇者1「宿屋の主人から聞いたのですが、貴方……勇者、なんですよね?」
勇者3「……」
勇者1「どうしてこんな……」
勇者3「……」
勇者1「……」
勇者3「……嘘、なんです」
勇者1「……嘘」
父は僕が幼い頃に死に、母は体が弱く。
それでも2人で幸せに暮らしてきました。
贅沢なんて夢のまた夢。
畑の作物を育て、それを売った金でその日を凌ぐ。
そんな生活でも母と2人。
慎ましく暮らしていけばそれで良いと、そう思っていたのです。
しかしある日、作物を売って家に帰ると。
勇者3「!!」
勇者3「母さん!!」
母が倒れていたのです。
元々体が弱かった母はその年の流行り病にかかってしまっていたのです。
家にあるお金を全てかき集めても、
薬の1つも買えない。
ただ、死を待つのみ。
絶望に打ちひしがれていたそんな時に、僕は勇者募集の話を聞きました。
勇者になることが出来れば大金を貰える。
勇者の母親ともなれば優遇され、きっと城で療養もさせてもらえる。
けれど畑仕事としがない商売しかしたことのない僕に勇者なんて務まる筈が無い。
そこで僕は友人に……いや、今となっては知人とも呼べないような輩にある頼み事をしたのです。
「俺が勇者選抜の試験に?」
勇者3「ああ、僕の代わりに出て欲しい」
その男は屈強な肉体と多くの呪文を扱え、そして。
勇者3「お前の変身の呪文で僕に姿を変えて出てくれないか?」
僕に成り代わることの出来る、変身の呪文が得意だったのです。
勇者3「勿論報酬は分ける!母の薬さえ買うことができれば後はお前の好きにして良い!」
かくして、僕はその男に影武者として勇者選抜試験に出てもらい、
見事、勇者となったのです。
勇者3「ありがとう!これで母の病を治すことが出来るよ!」
「なーに、俺も大金を戴けたからな、礼には及ばないさ」
そして、彼は姿を消したのでした。
何も知らずに残された僕は当然勇者として義務を果たさねばならず、
□□王「では頼むぞ!勇者よ!!」
勇者3「……」
勇者である僕が、残りの軍資金を持っていかれた、などと言うわけにもいかず。
兵士達「勇者様ばんざーい!!」
兵士達「勇者様ばんざーい!!」
母を残し、僅かなお金を持って、魔王討伐へまちを出たのでした。
勇者1「……」
勇者3「……僕は」
勇者3「……僕は母と暮らしていくことが出来ればそれで良かった」
勇者3「……すぐにどこか小さな村へひっそりと逃げて、そこでまた慎ましく暮らしていこうと、そう思っていた」
勇者3「僕は、それで良かった、幸せだったんです!」
勇者1「……」
勇者3「なのに……」
勇者3「なのに、どうしてこんな事に!」
勇者3「僕は世界の平和なんてどうでも良いのに!」
勇者1「……」
勇者1「……」
勇者3「……まちに戻って母を連れ、どこかへ逃げようかとも思いました」
勇者3「けれど……今の僕にはそんな力も……気力もない……」
勇者1「……」
勇者3「……ただ、ただ、あの男が憎くて……それだけで……」
勇者1「……」
勇者3「……」
勇者1「……」
勇者3「……」
勇者3「……そういえば貴方……言ってましたよね……」
勇者1「?」
勇者3「困っている人を見たら助けろと、父から教えられてきた、と」
勇者1「……」
勇者3「……そうだ、僕は困っている」
勇者3「僕は困っている!とても困っている!」
勇者1「……」
勇者3「僕を助けてくださいよ!」
勇者3「そうだ、僕の代わりに魔王を退治してください!」
勇者3「そして魔王を倒した時は少しだけその報酬を僕に譲ってもらえれば良い!」
勇者3「後は貴方の好きに使えば良い!」
勇者1「……」
勇者3「貴方見たところ旅慣れしている!」
勇者3「金もあるのでしょう?」
勇者1「……」
勇者3「ねえ!お願いしますよ!」
勇者3「僕がこんなに困っているんですよ!?」
勇者1「……」
勇者3「ねえ!!」
勇者1「……」
勇者3「ねえ!!」
勇者1「……わかりました」
勇者3「!!ほ、本当ですか!?」
勇者1はさみだれけんを放った!
勇者3「え?」
勇者1「これでもう困ることもないですよね?」
「知ってる?勇者様のお母様の話」
「ああ、聞いた聞いた」
「薬、効かなかったんですってねえ」
「勇者様が旅立った後にお亡くなりになったって」
「かわいそうに……」
勇者1「……」
勇者1「さようなら」
3章おわり
魔物Aがあらわれた!魔物Bがあらわれた!魔物Cがあらわれた!魔物Dがあらわれた!
男4「うお!こいつはやべえ……」
その日、いつものように修行をしていた俺はヘマをやらかした。
魔物Aのこうげき!男4に50のダメージ!
魔物Bのこうげき!男4に54のダメージ!
男4「……くそ!」
MPも底を尽き、回復道具もなくなっていた。
すぐにまちへ帰ろうと思っていたんだ。
魔物Cのこうげき!男に70のダメージ!
男4「……ぐ……」
勇者1「……」
勇者1は大爆発の呪文を唱えた!
4章
男4「いやー!助かったよ!ありがとう!!……いてて」
勇者1「まだ完全に回復してないのに大声出したら駄目ですよ」
男4「あっはっはっは!いやいやなんのこれしき……いてて」
勇者1「もうちょっとの辛抱ですからあまり騒がないで」
男4「はは……すまないねえ、おじさん、もう年なもんで」
勇者1「そのおじさんがどうして1人で魔物の群れと」
男4「どうしてって、そりゃあ修行だよ」
勇者1「修行、ですか?」
男4「ああ、もうすぐ近くの城で勇者の選抜試験があるんだ」
勇者1「……まさかその試験を」
男4「うん?おじさんが受けたら駄目なんて事ないだろ?」
勇者1「……」
勇者1「はい、完治しました」
男4「いやーありがとう、見たところ若いのに大したもんだ」
勇者1「いえ、そんな」
男4「上級呪文も扱えるみたいだし、どうだ?おじさんと一緒に試験受けてみるか?」
勇者1「いえ、結構です」
男4「そうか?あっはっはっは」
勇者1「……1人で暮らしてるんですか」
男4「ああ、まあな!そうだ!今晩泊まるところ決まってないんなら泊まってくか!」
勇者1「良いんですか?」
男4「ああ、そうと決まれば夕食の準備しなきゃな、ちょっと待ってろ」
勇者1「はあ」
男4「どうだ?」
勇者1「……あんまり美味しくないですね」
男4「あっはっはっは!いや、料理はどうにも上達しない!」
勇者1「……ずっと1人で?」
男4「……昔妻を亡くして、子供が2人いるんだがな」
勇者1「……」
男4「今は単身赴任中だ!」
勇者1「……勇者選抜試験のために?」
男4「まあ、そんなところだ!おかわりあるぞ!」
勇者1「いえ、結構です」
翌日。
男4「あ」
しまったうっかりしていた。
昨日久々の来客があったせいで回復道具を買い忘れていたんだった。
そして今俺はMPも尽きている。
魔物Aはもえさかるかえんを吐いた!男4に80のダメージ!
男4「う」
やっちまった。
2日続けてヘマをやらかすとは俺もいよいよここまでか。
勇者1「……全く」
勇者1は巨大な火の玉を放った!!
男4「いやーまたしても助かった!」
勇者1「……一応見に来てみたらこの有様ですか」
男4「あっはっはっは!いやすまん!」
勇者1「……全く」
男4「おおそうだ!」
勇者1「?」
男4「もし良ければ試験の日まで修行に付き合ってくれんか?」
勇者1「え」
男4「君がいれば心強い!その代わりといっては何だが寝食は俺が提供する!」
勇者1「え、あの」
男4「おじさんの一生の頼みだ!」
こうして半ば強引にこの少年に俺の修行を手伝ってもらうことにした。
本当は話し相手が欲しかっただけなのかもしれない。
弟が無事成長していれば、丁度この子と同じくらいか。
男4「いてて」
勇者1「どうしてこんなに必死に」
男4「……俺の中の、勝手な意地なんだ」
勇者1「意地?」
男4「子供がいるって言ったろ?」
男4「昔、俺はとある国の兵士長やってたんだよ」
男4「子供は2人いてな、その国に置いてきた」
勇者1「……」
男4「魔王討伐の時に俺、魔王の配下にやられちまってよ」
男4「部隊は全滅で、俺だけはどうにか助かったらしい、このまちで目が覚めた」
男4「かなりの間、俺は眠ってたみたいでな、噂に聞いたんだが俺は魔王の配下に殺されたってことになったらしい」
勇者1「……」
すぐに帰ろうと思った。
けれど今帰ったところで、俺はただの負け犬、それどころか部隊を全滅させてしまった無能な兵士長だ。
顔向けできない。
王国兵達に。王に。
そして息子達に。
だったらやることは決まっている。
胸張って帰れることをやってから帰ったら良い。
聞けば近々、近くの××のしろで勇者選抜試験があるというじゃないか。
俺はここでまた一から始めるんだ。
魔王の配下に、
魔王に負けないくらいに強くなって。
そんで胸を張って息子達の下へ帰ろう。
俺は迷うことなく勇者になることを目指して修行を始めた。
勇者1「……そんなことが」
男4「ガラじゃないけどよ、早く息子達に会いたいんだ」
男4「兄はきっと立派な兵士になってる、もしかしたら勇者になってたりするかもな」
男4「弟は昔から兄と比べられてきたが優秀な奴だ、兄に負けない兵士に、いや勇者にだってなれるくらいの素質を持ってる」
勇者1「……」
男4「だから俺も」
男4「俺も胸張って、あいつらが皆に自慢できる父親として帰りたいんだ」
男4「……親馬鹿かもしれないけどよ」
男4「それが今の、いや今までも、これからもずっと」
男4「俺を支えてくれてるものなんだ」
勇者1「……」
俺のくだらない話にじっと耳を傾けてくれたその少年は、
次の日も、その次の日も飽きることなく俺の修行や俺の話に付き合ってくれた。
そして、勇者選抜試験を明日に控えたその日の夜。
男4「いよいよ明日かー!」
勇者1「……そうですね」
男4「お前さんのおかげで修行もはかどった!」
男4「何より、毎日が楽しかったよ!」
男4「本当に、感謝をしてもしきれない、ありがとう」
勇者1「そんな、こちらこそ、寝床から食事までお世話になりっぱなしで」
男4「この生活も今日で終わりだな……」
勇者1「……」
男4「寂しいか?ん?」
勇者1「……男4さん」
男4「ん?」
勇者1「お願いがあります」
男4「なんだ、改まって……お前さんは俺の恩人なんだ!どんと言ってみろ!」
勇者1「……試験は受けないで下さい」
男4「……!!」
勇者1「……お願いします」
男4「……」
勇者1「……」
男4「……なんだ?俺みたいなおじさんが試験受けるのが心配か?」
勇者1「……」
男4「それとも何か、勇者になって魔王を倒すのが無理だと?」
勇者1「……」
男4「……大丈夫だ、これでもけっこうレベル上がったんだぞ?」
勇者1「……」
男4「……止めても無駄だぞ」
勇者1「……」
勇者1「……お願いします」
男4「……お前さんの持ってるその剣」
男4「魔物の血の臭いがほとんどしないな」
勇者1「……」
男4「けれど」
男4「血の臭いはしっかりしてる」
勇者1「……」
男4「……兵士長だったんだ、数え切れない程の戦いを、多くの血を浴びてきた」
男4「それくらいわかるさ」
勇者1「……」
男4「その剣の、血の臭いと、関係あるのか」
勇者1「……」
男4「関係あるんだな」
勇者1「……」
勇者1「男4さん」
男4「お前さんがどんな事情なのか、どうして旅をしているのか、まるで勇者であるかのようなその強さ」
男4「今更聞きだそうとは思わない」
勇者1「……」
男4「だがな、少年」
男4「お前さんの事情と俺の事情は関係ない」
男4「俺は試験を受ける、そして勇者になって魔王を退治する!」
勇者1「……」
男4「そんで息子たちのいるまちに胸を張って帰る!」
男4「絶対にだ」
勇者1「……」
男4「お前さんに譲れない信念があるのと同じように俺にも譲れない信念がある」
男4「止めても無駄だからな」
勇者1「……」
翌日。
俺は勇者選抜試験に受かり、晴れて勇者となった。
あの少年がどうして俺を止めたのかは今もわからない。
けれど、後悔はしていない。
俺は譲れないもののために戦った。
そしてあの少年も。
ただそれだけなんだ。
勇者4「……」
勇者1「……」
勇者1「……ご飯、美味しかったです」
勇者1「……」
勇者1「……さようなら」
4章おわり
54 : 以下、名... - 2010/10/17(日) 23:03:45.64 hxMLGTqMO 44/144
勇者1→?
勇者2→男4の息子。次男
勇者3→死亡
男4→勇者2、勇者2兄の父親
ってとこか
勇者3は繋がりなしかな?
56 : 以下、名... - 2010/10/17(日) 23:06:28.65 LO0MHLZj0 45/144
>>54
おー!そうです!そんな感じです!!
57 : 以下、名... - 2010/10/17(日) 23:07:51.09 qS8Q8Djt0 46/144
勇者2は死んでないのか
描写は3と同じだが
59 : 以下、名... - 2010/10/17(日) 23:09:43.64 LO0MHLZj0 47/144
>>57
死んだ、でおkです
確かにわかりにくいな、これは
久しぶりに昔の夢を見た。
幼馴染「ばいばい、1くん」
勇者1「うん……」
幼馴染「ぜったい、わたし、勇者になるからね」
勇者1「うん」
幼馴染「そしたらきっとまたあおうね!」
幼馴染はそう言ってまちを出て行った。
10年前のことだ。
そしてそこで夢は終わった。
突然の轟音におれが目を覚ましたからである。
60 : 以下、名... - 2010/10/17(日) 23:12:04.13 hxMLGTqMO 49/144
>>59
死んでたのかww
じゃあ勇者4も死んだの?
64 : 以下、名... - 2010/10/17(日) 23:14:43.67 LO0MHLZj0 50/144
>>60
死んでますね!
後に死んだって描写は一応ありますwww
5章
ドォォォォン!!
勇者1「!!」
勇者1「何だ?爆発?」
「きゃー!!」
「助けてー!!」
「誰かー!!」
勇者1「!!」
魔物2「ふはははは!!」
魔物2があらわれた!
魔物2「人間共!死ぬが良い!!」
魔物2はしゃくねつのほのおを吐いた!!
「きゃー!!」
「誰か!誰か戦える者はいないのか!?」
勇者1「……あれは魔王の部下か!?」
勇者1「くそ!」
勇者5は祈りを込めて十字を切った!
勇者1「!?」
天の裁きが魔物2を襲う!!
魔物2「な、なんだこれは!?」
魔物2に190のダメージ!!
勇者5「そこの人!手伝ってください!」
勇者1「あ、ああ!」
勇者1は究極の剣技で相手を薙ぎ払った!
魔物2に350のダメージ!!
魔物2「ぐおおおおおおお!!!!」
勇者1「……」
勇者5「ふはあ、緊張した」
勇者1「……」
勇者5「あ、あの手伝ってもらっちゃって、というかほとんど貴方任せになっちゃって」
勇者1「いえいえ」
勇者5「でもお強いですね、一体どんな……って!!」
勇者1「!!」
勇者5「……え、えと……1、くん?」
勇者1「……幼馴染……?」
勇者5「1くん!久しぶりー!!」
勇者1「抱きつくな!!」
勇者5「うわー!まさかこんな所で会えるなんて!!」
勇者1「良いから少し離れて……」
「お二方、ありがとうございました!!」
勇者5「へ?」
勇者1「え」
「その強さ、勇気……もしやお二方とも勇者様では!?」
勇者5「は、はい……」
勇者1「!!お前……勇者に……?」
勇者5「1くんこそ勇者になったんだね!おめでとう!」
勇者1「……あ、ああ」
「2人の勇者様を祝してかんぱーい!!」
「かんぱーい!!」
勇者5「わーい、かんぱーい」
勇者1「……」
勇者5「あ、1くんとまた会えたことにもかんぱーい!」
勇者1「あ、おう」
「さあさ、好きなだけ召し上がってくださいな」
「まだまだおかわりありますよ!」
「しもふりにくも、ちからのたね入りスープもまだまだあります!」
勇者5「ありがとうございますー!」
勇者1「……」
勇者5「……1くん?食べないの?」
勇者1「あ、ああ、食べるよ」
勇者5「zzz」
勇者1「……」
勇者5「zzz」
勇者1「……」
勇者5「……むにゃ」
勇者1「!」
勇者5「えへへ……1くん……zzz」
勇者1「……」
翌朝
勇者1「……」すたすた
勇者1「……」すたすた
勇者1「……さっさと次のまちへ行こう」
勇者1「……」すたすた
勇者5「おーい!1くーん!!」
勇者1「!!」
勇者5「はあ……はあ……せ、せっかく会えたのに何も言わずに行こうとするなんて」
勇者1「……おれは急いでるんだ」
勇者5「なんで?」
勇者1「なんでって……そりゃ一刻も早く平和を」
勇者5「私も一緒に行く!」
勇者1「はあ!?」
勇者5「昨日2人で戦ってわかった!1くんと一緒ならどんな強い魔物だろうと負けない!」
勇者1「……あのなあ」
勇者5「2人で行く方が早く世界を平和にできるよ!」
勇者1「……」
勇者5「駄目って言ってもついてくからね!目的地は一緒なんだから!」
勇者1「……わかったよ、好きにしろ」
勇者5「やったー!!」
勇者になると言って聞かなかったその昔。
そしてその言葉通り勇者になっていた今。
こいつは一度言い出したら聞かないんだ。
大丈夫、あと2人いる。
その時までにはきっと。
勇者5「待ってよー!」
勇者1「はいはい」
5章おわり
勇者6「はあ!?これが1000G!?お前ナメてんの?俺勇者だよ?」
武器屋「は、はあ……しかし」
勇者6「しかしもクソもねえよ!俺はお前達の為に命賭けて戦ってるんだよ!」
武器屋「わ、わかりました……」
勇者6「お、そこの子、一緒に遊ばない?俺勇者なんだぜ?」
女A「え、いや、ちょっと急いでて……」
勇者6「そう言わないでさ、何でもご馳走するよ?俺、勇者だし」
女A「で、でも私約束が」
勇者6「そんなの良いだろ、俺と遊ぼうぜ?な?」
勇者1「……」
勇者5「なにあれ!ちょっと行ってくる!」
勇者1「!おい!」
勇者5「ちょっと、何やってるんですか」
勇者6「お、可愛いね、君」
勇者5「へ?」
勇者6「今夜一緒にどう?俺、勇者だし」
勇者5「な、なななななにを言ってるんですか!あなたそれでも勇者なんですか!?」
勇者6「恥ずかしがっちゃってかわいいね」
勇者5「なななな、な、なにを!」
勇者5「ちょ、ちょっと1くんも見てないで来てよ!」
勇者6「!……なんだよ男連れかよ」
勇者1「……」
勇者5「1くんからも何か言ってよ!」
勇者1「何かって」
勇者6「ねえ、そんなつまらない男と一緒にいないでさ、俺と遊ぼうよ」
勇者6「俺、勇者だし」
勇者5「私も1くんも勇者です!」
勇者6「!!……何?」
勇者5「勇者がこんなことして恥ずかしくないんですか!?」
勇者6「……チッ、うっせーな、関係ねーだろうが」
勇者5「あ、ちょっと!」
勇者6「あ?やんのか?言っとくが俺はつえーぞ?」
勇者5「なっ」
勇者1「……ほっとけ」
勇者5「でも!」
勇者1「良いから」
勇者6「ハッ、勇者のくせに腰抜けか、同じ勇者として恥ずかしいわ」
勇者5「……!!」
勇者1「おい、良いから行くぞ」
勇者1「……」
勇者1「……夜分遅くにすみません」
武器屋「ん?なんだい、悪いが店は」
勇者1「いえ、人を探してるんですが」
勇者1「昼に来た勇者が何処に行ったか知りませんか」
武器屋「……ああ、あいつなら多分そこの宿に泊まってると思うが」
勇者1「そうですか、ありがとうございます」
武器屋「……あんたあいつの仲間かい」
勇者1「まさか」
武器屋「下手なことしない方がいい、腐っても勇者だ」
勇者1「……どこの国の勇者なんですか」
武器屋「噂じゃ▽▽王国のとこのって話だが兵士や住民に話してもそんな奴知らないって言うんだ」
勇者1「……なるほど」
宿屋「それがさっき部屋に行ったらいなくなっててねえ」
勇者1「どこに行ったかわかりますか?」
宿屋「さてねえ、宿代も払わないでどっか行っちまったよ」
宿屋「皆に聞いても見てないって言うし……」
勇者1「……なるほど」
宿屋「全く、とんだ勇者様だよ」
勇者1「……ありがとうございました」
勇者5「昨日の夜どこ行ってたの?」
勇者1「ああ、ちょっとな」
勇者5「ふうん、あ、次のまちに着いたよ!」
勇者5「昨日の勇者みたいな人がいないと良いけど……」
勇者1「あんなのが毎度いたら平和どころじゃないな」
勇者5「本当だよ、全く……」
「ふざけてんのか!?俺は勇者だぞ!さっさとよこせや!」
勇者5「!?」
勇者1「!!」
勇者3「俺は勇者だぞ!」
「何あの人……」
「噂じゃ□□王国のところの勇者様みたいよ」
「酷い……」
勇者3「ああ!?文句あんのか!?」
勇者5「このまちにもいるよ!」
勇者1「……」
勇者5「昨日とは違う人……あんな勇者が2人もいるなんて……」
勇者1「……だな」
勇者5「とにかく止めに行かないと!」
勇者1「!ちょっと待て!」
勇者5「何で!?」
勇者1「また昨日みたいな騒ぎが起きるぞ」
勇者5「だからって放っておけないよ!」
勇者1「下手すると勇者同士、戦わなきゃいけなくなる」
勇者5「……!!」
勇者1「そんな事、町民がいる前でできるか?」
勇者5「……でも」
勇者1「……おれに考えがある」
勇者5「!……考え?」
勇者1「……とにかく、ここは引くんだ」
勇者3「ったくちょろいったらないな」
勇者3「……」
勇者3「……くくく」
随分と金も貯まった。
全く美味しい職業だよ、勇者ってのは。
それもこれも全部あいつのおかげだな。
前のまちで2人組みの勇者達に言った言葉は勿論本当だ。
俺は強い。あんな奴ら一捻りにできる。
が、俺が最も自信を持っているものは強さじゃあない。
それは変身の呪文だ。
子供の頃からこの変身の呪文に助けられてきた。
これを使えば他人になって何でも出来る。
どんなことでも出来る。
そして変身を解けば、俺はそいつではなくなる。
これほど美味しい呪文はない。
しかしもっと。
もっと有効に使える術があるはずだ。
俺はずっとその術を探してきた。
他人になって悪戯をするような餓鬼の遊びにも飽きてきた頃だった。
あいつが俺に話を持ちかけてきたのは。
勇者。
こいつになると、まず初めに大金が転がり込んでくる。
最初は大金を持って逃げた。
勇者なんて面倒くさい事誰がやるか。
しかしその後すぐに気付いた。
「勇者」という単語を出せばどんな事でも出来る。許される。
□□王国に今更戻ってもややこしくなるだけだ。
それなら。
俺は▽▽王国に行き勇者選抜試験を受けて合格し、勇者になった。
「▽▽王国の勇者」、「□□王国の勇者」、そして「俺」。
俺はこの3つの姿を使い分けている。
これらをバランスよく使うことで俺は何にも困らない、最高の生活を送っている。
俺の足取りを掴めなくすることもできる。
なんだって出来る。
これだ。
俺が求めていたものはこれなんだ。
勇者3「さて……そろそろ次のまちへ行くか」
だが、あの2人組みの勇者に会った事は計算外。
勇者はそれぞれの国と強い繋がりを持っている。
少々厄介だ。
勇者3「早いところ……」
勇者5「待って下さい」
勇者1「……」
勇者3「!!?」
勇者3「お前らは!!」
勇者5「貴方の行動を全て●●王に報告します」
勇者5「貴方が複数の勇者の姿を使い分けて酷いことをしている、と」
勇者5「すぐに▽▽王にも伝わるでしょう」
勇者3「……な、何を言ってるか」
勇者5「さっき私達を見て、まるで前にも会ったような事を言いましたよね」
勇者5「今、初めて会ったはずなのに」
勇者3「……!!そ、それは」
勇者5「調べればすぐにわかる事です、観念してください」
勇者3「……く」
勇者3「クソがああああああああ!!!!」
勇者1「……馬鹿が」
勇者5「!!1くん!」
勇者1はさみだれけんを放った!!
勇者5「……どうして逃がしたのよー」
勇者1「国王に報告したんだろ?そのうちどこかで捕まるさ」
勇者5「でもー」
勇者1「仕方ないだろ、思った以上に逃げ足が速かったんだから」
勇者5「ぶー」
勇者1「ほら、行くぞ」
勇者6「はあ……はあ……クソが」
勇者6「……いいさ、金はあるんだ」
勇者6「はあ……はあ……また1から……」
勇者6「……え」
勇者6「……」
勇者6「……ない!俺の金がないぞ!」
勇者6「……まさか、あの時……」
「「「「「「「「グオオオオオ!!」」」」」」」」
勇者6「!?」
魔物Aがあらわれた!魔物Bがあらわれた!魔物Cがあらわれた!魔物Dがあらわれた!魔物Eがあらわれた!魔物Fがあらわれた!魔物Gがあらわれた!魔物Hがあらわれた!
勇者6「……な」
魔物はどんどん集まってきている!
勇者6「……な、なんでこんなに魔物が……」
魔物の群れはいきなり襲いかかってきた!!
勇者6「う、うわああああああああああああ!!!!」
勇者5「そういえば1くん、何であの人が変身の呪文使ってると思ったの?」
勇者1「え?……それは、まあ、勘だよ、勘」
勇者5「勘なの!?」
勇者1「いいだろ、本当に変身の呪文使ってたんだから」
勇者5「えー!?」
勇者1「ほら行くぞ」
勇者5「あ、待ってよー!」
勇者1「……あいつだったらやっても良かったのに……」
勇者1「……さようなら」
6章おわり
私と1くんが感動の再会を果たし、一緒に旅を始めてから1ヶ月が経とうとしています。
今私達はあるまちで1人の勇者に出会いました。
しかし。
勇者1「……」
勇者5「可愛いねーいくつ?」
勇者7「こどもあつかいすんな!8さいだ!!」
あの勇者みたいに酷い事をしている人ではなくて安心しました。
しかし。
勇者7「おれは勇者だぞー!!」
勇者1「……」
勇者5「そ、そっか、ごめんね」
なんとこのまちで出会った勇者は10歳の子供だったのです。
勇者7「こどもあつかいすんなー!!」
7章
勇者7「……ちゃんと勇者のしけんだってうけたよ!」
勇者1「そうなのか!?」
勇者7「あたりまえだ!おれは勇者だぞ!!」
勇者5「1くん駄目でしょー!ごめんね」
勇者7「……でも」
勇者7「うけたの、おれひとりだった」
勇者5「えっ!?」
勇者7「おれの住んでたとこ…◇◇国なんだけどさ」
勇者7「王様が戦えそうな大人をほとんどみんな勇者にしちゃったんだ」
勇者1「……」
勇者7「みんなやられちゃって……おれの父ちゃんも」
勇者7「戦えるような大人がいなかったんだ」
勇者5「それで……」
勇者1「……」
勇者5「今日会った子……偉いよねえ」
勇者1「……ああ」
勇者5「……でも、危ないよね」
勇者1「……」
勇者5「……1くん?」
勇者1「ん、ああ、そうだな」
勇者5「……」
1くんは時々何か考えているみたいです。
けれど何を考えているのか教えてくれません。
私は1くんと再会できて、一緒に旅をできて嬉しいのに。
勇者5「zzz」
勇者1「……」
勇者1「……」
バタン
勇者5「……」
勇者5「……」
1くんは時々夜に私が眠っていることを確認し、1人で何処かへ出かけていきます。
勇者5「……」
勇者5「……よし、今日こそ」
勇者7のこうげき!魔物Aに30のダメージ!
魔物Aのこうげき!勇者7に60のダメージ!
勇者7「……くそー!」
勇者7のこうげき!魔物Aに40のダメージ!
魔物Aはたおれた!
勇者7「はあ……はあ……」
勇者1「……」
勇者5「1くん!」
勇者1「!!??」
勇者1「何でお前がいるんだ!!」
勇者5「え、何でって……」
勇者7「おい!」
勇者1「!!」
勇者5「わあ!!」
勇者7「なんでおまえらがここにいるんだ!」
勇者1「……」
勇者7「おれが1人でしゅぎょうしちゃ悪いのか!!」
勇者5「……え、えっと」
勇者7「もういい、帰る」
勇者5「あ!ちょっと……」
勇者1「……はあ……」
勇者7「……」
勇者5「ご、ごめんね……こんな夜に1人で大丈夫かなあって」
勇者7「……」
勇者5「ほ、ほら1くんも……」
勇者1「何でおれも……」
勇者7「……わるいかよ」
勇者5「えっ」
勇者7「わるいかよ!子供が勇者になって魔王たおそうとして!」
勇者7「子供のおれが父ちゃんのかたきとるために勇者になってわるいのかよ!?」
勇者5「!!」
勇者7「世界を平和にしたいんだ!」
勇者7「おれみたいな奴をふやしたくないんだ!!」
勇者7「そのためだったら何でもしてやるよ!!」
勇者1「……」
勇者7「だめかよ!!」
勇者5「……」
勇者7「ぐす……お、おれだって……」
勇者7「ひっぐ……友達とあそびたいよ……ぐす」
勇者7「父ちゃんと……もっとあそびたかったよ……」
勇者7「うえええええん……とうちゃん……とうちゃん……」
勇者1「……」
勇者5「……泣き疲れたのかな、寝ちゃった」
勇者1「……そうか」
勇者5「ん……」
勇者5「……あれ……いつの間にか寝ちゃってたんだ」
勇者5「……1くん?」
勇者5「……」
勇者5「……あれ?」
勇者5「……おーい」とことこ
勇者5「……1くんー?」とことこ
勇者5「……あ」
勇者1「……」
勇者7「zzz」
勇者1「……」
勇者1は静かに剣を構えた……
勇者5「!!」
勇者1「……」
勇者1「……起きたのか」
勇者5「……」
勇者1「……」
勇者5「今、この子を斬ろうとしてたよね……?」
勇者1「……ああ」
勇者5「……どうして」
勇者1「……」
勇者5「……言えないの?」
勇者1「……」
勇者7「……ん……?」
勇者5「!……ごめん、起こしちゃった?」
勇者7「……ん……」
勇者5「ごめんね、すぐ行くから安心して眠って?」
勇者7「……zzz」
勇者1「……」
勇者5「……やっぱり言えないのね」
勇者1「……」
勇者5「……噂で聞いたんだけど」
勇者5「この前、△△王国と××王国、それに□□王国の勇者が遺体で見付かったんだって」
勇者1「……」
勇者5「魔物にやられたみたいだけど」
勇者5「中には人間にやられたんじゃないかって言う人もいるって」
勇者1「……」
勇者5「……1くんがやったの?」
勇者1「……」
勇者5「……否定はしないんだね」
勇者5「どうして勇者を?」
勇者1「……」
勇者5「私達の敵は魔物じゃないの?」
勇者5「ねえ、どうして?」
勇者5「もしかして誰かに頼まれてやってるの?」
勇者1「……」
勇者5「……」
勇者1「……」
勇者5「……事情は言えないんだね」
勇者1「……」
勇者5「……私も」
勇者5「私も、なの?」
勇者1「!!……それは」
勇者5「……」
勇者1「……」
勇者5「……あと、何人?」
勇者1「……2人だ」
勇者5「……私と、あの子」
勇者1「……そうだ」
勇者5「……」
勇者5「いつまでにやらなきゃいけないの?」
勇者1「……魔王と戦う前まで」
勇者5「……そう」
勇者5「わかった」
勇者5「私も一緒に魔王の城まで行く」
勇者1「……!?」
勇者5「魔王と戦うまで、私を生かしておいて大丈夫なんでしょ?」
勇者1「……それは……そうだが」
勇者5「私が着いて行ってあげるから」
勇者5「だから一緒に行こう」
勇者1「……」
勇者5「きっと、1くん1人じゃ、魔王にまで辿り着けない」
勇者1「え……」
勇者5「心が、折れちゃうと思う」
勇者1「……!!」
勇者5「ね、だから私も」
勇者1「……わかった」
勇者5「少し寝て、この子が起きないうちにこのまちを出よう」
勇者1「……けどこいつは」
勇者5「さっき見たでしょ」
勇者5「この子は……勇者じゃないよ」
勇者5「勇者にはまだ、なれないよ」
勇者1「……」
勇者5「……ほら、寝よ?」
勇者1「……ああ」
1くんは疲れていたんだと思います。
勇者5「昨日の勇者みたいな人がいないと良いけど……」
勇者1「あんなのが毎度いたら平和どころじゃないな」
酷い事をする勇者ばかりいるわけがない。
苦しんで、そうするしかなかった。
そんな事もあったんだと思います。
短い時間でしたが、1くんは静かに、深い眠りについていました。
「草むらで倒れているのを発見されたらしい」
「魔物にやられたんだろうなあ」
彼が亡くなった事を聞いたのは、私達がまちを出てしばらく経ってからでした。
勇者5「……さようなら」
7章おわり
「困っている人を見たら助けろ」
幼い頃から何度も何度も父に言われた言葉だった。
勇者であった父に言われた言葉だった。
1章
父は強く、優しい人だった。
先代の魔王を倒した父は、世界中の誰よりも強く。
そして、おれにとっては世界中の誰よりも優しい父であった。
おれはそんな父に憧れていた。
勇者になりたいと強く願っていた。
幼馴染「ばいばい、1くん」
勇者1「うん……」
幼馴染「ぜったい、わたし、勇者になるからね」
勇者1「うん」
幼馴染「そしたらきっとまたあおうね!」
必ず勇者になると約束し、あいつはまちを出て行った。
「大変です!勇者様がやられました!」
そんな父がやられた。
次代の魔王、つまり今の魔王にやれたのだった。
父を世界中の誰よりも愛していた母は自ら父を追っていった。
世界中の誰よりも強いはずの父がやられた。
希望を失った国王がすぐに目を付けたのが。
○○王「君は今日からここで暮らすんだ」
勇者1「……ここで?」
1人残された父の、勇者の血を引く息子であるおれだった。
そこからは悲しむ間もない、涙を流す間もない、修行の毎日。
魔王を倒すため、先代の勇者を越えるため、父以上の強さを見に付けるための修行の毎日。
母の事も、幼馴染との約束も。
父への憧れも。
何もかも忘れてしまうかのような毎日。
そしておれは勇者になった。
先代の勇者である父をも越えた、世界中の誰よりも強い勇者になった。
おれの出発が近付いた頃。
○○王「勇者を1人に絞れ、とな?」
勇者A「は、はい…そうしなければ、戦わない、と」
父と母が死に、修行が始まって以来、世の中の事など知る由もなかったおれは驚いた。
つい最近まで魔王城には勇者による長蛇の列が出来ていたらしい。
世界最強の男を倒す程の力を持つ魔王。
その魔王を倒すことが出来ればその名は世界中に知れ渡ることになる。
各国はその名声を手に入れんと挙って勇者を魔王討伐に送り出していたのだ。
そしてそんな状況に飽きた魔王は1人の勇者としか戦わないと言ったらしい。
○○王「それを聞いたのは君1人だけじゃな?」
勇者A「は、はい……自分が最後尾でしたから……」
○○王「運が良かったな、下がって良いぞ」
もっとも、ここ数日はさすがに疲弊してきたのか各国とも勇者を送り出してはいなかった、とか。
○○王「伝えた通りじゃ、状況が変わった」
勇者1「はい」
○○王「この事を各国に広めれば戦争の火種になる」
○○王「皆名声を欲している、特に代々魔王討伐を成し遂げてきた我が国は敵視されていると言っても過言ではないだろう」
○○王「今人間同士が争えば魔物共に付け込まれる隙になるだけじゃ」
勇者1「はい」
○○王「かと言って魔王討伐を諦めることなど出来るはずも無い、そうじゃろう?」
勇者1「それは勿論です」
○○王「そこで、じゃ」
○○王「君には……魔王討伐に向かいながら各地に散らばる戦争の火種を消していってもらいたい」
勇者1「火種……?」
○○王「他の国に勇者を1人に絞らなければならない事が伝わるのを阻止する、すなわち」
○○王「他の国の勇者達が魔王城に辿り着く事を阻止して欲しいんじゃ」
○○王「あくまで、内密に、誰にも悟られないように、な」
○○王「そうすることで、我々人間が無闇に争うことも避けることが出来る」
勇者1「!!……まさか他の国の勇者を」
○○王「違う違う違う、断じて違う」
○○王「火種を……静かに、消すんじゃ、わかるな?」
勇者1「……!!……し、しかしそれは……」
○○王「残念ながら君にしか頼めないんじゃこれは」
○○王「勇者ともなればそれなりの強さを持っている」
○○王「勇者レベルの強さを持つ兵はあまりいない」
○○王「そして易々と城から出させるわけにもいかないのじゃ……国を守らねばならん」
勇者1「……」
○○王「火種を、静かに、消す事が出来るのは、君だけ、なんじゃ」
勇者1「!!……」
○○王「このまま放っておけば人間同士の争いが起き……」
○○王「そして魔王に世界を征服されてしまう」
○○王「そうじゃろう?」
○○王「特に●●王は曲者でなあ、あやつも何を考えているか――」
勇者1「……」
毎日修行を積んできた。
先代の勇者を、父を越えるため。
魔王を倒すため。
おれが強くなったのは人を殺めるためなんかじゃない。
絶対に違う。
おれが強くなったのは……
○○王「世界を平和にしたいのじゃろう?」
勇者1「!!」
○○王「ならば多少の犠牲は致し方ないのう……」
勇者1「……」
○○王「おお勇者よ!頼んだぞ!」
勇者1「はい」
兵士達「勇者様ばんざーい!!」
兵士達「勇者様ばんざーい!!」
勇者1「……」
おれは勇者になった。
世界を平和にするために。
1番初めの勇者はどんな人なのかもわからなかった。
わからない方が楽だと思った。
けれど、わかった上でやることがおれの責任なのではないかと思った。
だから2番目の勇者はどんな人なのか知ろうと思い、話した。
少しかわいそうだったけれど。
自分がどんなに不幸で、どんなに困っているのか必死に話してきたおかげで、楽にやれた。
3番目の勇者は子供達の為に頑張っているおじさんだった。
初めて苦しんだ。必死に止めた。
けれどこの人には信念があって。
おれにも信念があることを見抜いてた。
やらなきゃ駄目だ。そう言い聞かせた。
苦しかった。
5番目の勇者はどうして勇者になれたのか理解できない程の人間だった。
おそらく、3番目の勇者を苦しませた奴なのだろう。
こんな人間が世の中にいるのかと驚いた。
皆がこんな人間だったらどんなに楽な事か。
けれどおれは、初めてやらなかった。
いや、やれなかった。
6番目の勇者は子供だった。
すぐにやってすぐに行こうと思っていた。
早くしないと、きっと出来なくなる。
そう思ってやろうとしていたのに。
出来なかった。
けれど後で、彼は死んだと聞いた。
そして今、おれは4番目に出会った勇者と共に魔王城の前に来ている。
4番目の勇者はおれの幼馴染だった。
10年振りに再会して、とても綺麗になっていた。
再会して、おれに着いていくと言って。
こいつとならずっと一緒にいれるんじゃないか。
そんな事を考えたこともあった。
6番目の勇者をやろうとしている所を見られてしまい、
今までやってきた事が知られてしまってからも一緒に旅を続けてきた。
おれ1人では魔王に辿り着けないと。
おれにずっと着いて来てくれた。
こいつと再会して、一緒に旅を始めてからだ。
おれの手が、剣が。
人の命を奪っていないのは。
おれはこれから魔王を倒すため。
世界を平和にするために。
この幼馴染を殺さなければならないのだ。
1章おわり
8章
勇者5「着いたね」
勇者1「……おう」
勇者5「……」
勇者1「……」
勇者5「なんか思ったよりすんなり来れたね!」
勇者1「……おう」
勇者5「こんなことなら1くん1人で来れたかもね!」
勇者1「……」
勇者5「あはは……」
勇者1「……」
勇者5「さて」
勇者5「どうしましょうか」
勇者1「……」
勇者5「……」
勇者1「……」
勇者5「……やっぱり私をやらないと、だよね」
勇者1「……」
勇者5「ね?」
勇者1「……」
血反吐が出るような修行を積んだ。
先代の勇者を、父を越えて、魔王を倒すため。
世界の平和を手に入れるため。
沢山の事を、沢山の人を犠牲にしてここまでやってきた。
もうあと少しでそれが叶う。
世界の平和はもうすぐそこなんだ。
今更後戻りなんて……
勇者1「……今更後戻りなんて……」
勇者5「……」
昔々、1人の魔王がいました。
魔王はとても強く、とても頭が良かったため、なかなか魔王を倒せないのでした。
その魔王を倒すために、厳しい修行を積んだ勇者があらわれました。
その勇者は世界の平和のために、沢山の事や沢山の人を犠牲にして、
そして自分を犠牲にして、ついに魔王城に辿り着いたのです。
ギィ……
魔物1「何か話し声が聞こえると思ったら」
魔物1「人間でしたか」
勇者1「!!」
勇者5「!?」
魔物1「魔王様を倒しに来たのですか」
勇者1「……」
勇者5「そ、そう、ですけど」
魔物1「そうですか」
魔物1「しかし残念ながら貴方達の旅もここまでです」
勇者1「!」
勇者5「ま、負けてたまるかー!」
魔物1「魔王様は先日、ご病気の為亡くなられました」
勇者5「……えっ」
勇者1「……」
勇者1「……え……?」
しかし、
魔王はもうすでに、死んでいたのでした。
魔王が死んだ?
病で?
あの父さんが倒せなかった魔王が病で?
そんなわけないだろう。
何言ってんだこいつ。
魔物1「我々は魔王様が全てでした」
魔物1「その魔王様を失った今、我々にこれ以上戦いを続ける力も、気力もありません」
魔物1「各地に出払っている魔王軍もすでに撤退を始めています」
魔物1「直に全ての兵が完全に撤退するでしょう」
撤退?
待てよ。
世界を征服するんじゃなかったのか?
何だよ撤退って。
勇者5「ちょっと待ってよ!じゃあ私達はどうすれば……」
魔物1「どうすれば?私に聞かれても何をどうお答えするべきなのか皆目検討もつきませんが」
魔物1「我々はもう戦う気などありません」
魔物1「貴方達人間が勝利した、とでも全世界に伝えれば良いのでは?」
勇者5「そんな……」
おれ達が勝った?
おれはまだ戦ってもいないんだぞ?
戦っていないのに勝利って何だよ。
おかしいだろ。
納得できるわけないだろう。
戦わせろよ。
戦わせてくれよ。
勇者1「……そうだよ、戦わないと」
勇者5「1くん……?」
勇者1「そうだよ!お前が代わりに魔王になれば良いだろう!」
勇者1「お前でなくても良い!誰か代わりに魔王になれよ!そうすれば良いじゃないか!」
勇者5「1くん」
魔物1「……何故貴方がそのような事を言うのか全く理解できませんが」
魔物1「先程も言った通り、私達はもう戦わない」
勇者1「何でそんな簡単に諦めるんだよ!?」
勇者1「ここまで戦ってきたのに簡単に諦めて良いのかよ!!」
魔物1「貴方こそ何故そこまで諦めないのです?」
勇者1「……え……」
魔物1「戦わず、傷付かず」
魔物1「何の犠牲も無く、勝利するなどこの上なく喜ばしい事なのでは?」
勇者1「……」
魔物1「兎にも角にも、我々はもう戦う気は一切ない」
魔物1「後は貴方達の好きにするが良い」
勇者5「ちょっと!」
魔物1「これから魔王様の埋葬を行う」
魔物1「すぐにでも帰って戴きたい」
バタン……
勇者5「ちょっと!!」
勇者1「……」
何の犠牲もない勝利?
それができるなら初めからそうしてるよ。
それができなかったから。
そうすることしかできなかったから。
おれはこうしてここにいるんじゃないか。
勇者達を殺して。
おれはここにいるんじゃないか。
それが何だ?
喜ばしい事?
ふざけてんじゃねえよ。
その一言で片付くほど簡単な事じゃねえんだよ。
何も知らない奴が軽々しく言ってるんじゃねえよ。
おれを……
おれを……
勇者1「おれを戦わせろよ!!!!」
勇者5「1くん」
勇者1「おれを戦わせろよ!!!!」
勇者1「何のためにここまで来たと思ってるんだよ!!」
勇者1「ここまで来るのにどれだけの犠牲を払ったと思ってるんだよ!!」
勇者1「世界の平和のためと都合よく理由付けてごまかして!!」
勇者1「おれがどれだけ苦しんできたと思ってるんだよ!!」
勇者1「これ以上おれを苦しませないでくれよ!!」
勇者1「これ以上おれを生き永らえさせないでくれよ!!」
勇者1「おれに死場をくれよ!!」
勇者1「おれにこれ以上罪を背負わせないでくれよ!!」
ここで死ぬつもりだった。
魔王を倒して、自分も死ぬつもりだった。
世界の平和のために死んで。
やっと楽になれると思ってたんだ。
勇者5「……1くん」
勇者1「なのに!」
勇者1「なのにどうして!!」
勇者1「……」
勇者5「……1くん」
勇者1「……」
勇者5「1くん」
勇者1「……」
勇者5「……」
勇者1「……良かったな、これでもう」
勇者1「おれがお前を殺す必要もなくなった」
勇者5「……」
勇者1「だからとっととおれの前から消えてくれないか」
勇者5「……1くん」
勇者1「……」
勇者5「1くん」
勇者5「これからどうするの」
勇者1「……どうって」
勇者5「魔王はもういない」
勇者5「世界は平和になったんだよ」
勇者1「……だから何だよ」
勇者1「魔王は死んだ」
勇者1「世界は平和になった」
勇者1「だからおれは安心して○○の国に帰って良いってか?」
勇者1「そんな莫迦な話があるのか?」
勇者5「……」
勇者1「魔王はおれが倒したんじゃない」
勇者1「平和はおれの手で掴んだんじゃない」
勇者1「……おれが望んだ物は」
勇者1「こんな物だったのか……?」
勇者5「……1くん」
勇者1「……」
勇者5「きっと、だけど」
勇者5「もし仮に魔王が生きていて」
勇者5「1くんが魔王を倒して」
勇者5「1くんの手で平和を手に入れたって」
勇者5「1くんは今と同じようなことを思っていたと思う」
勇者1「……」
勇者5「どんな事をしても1くんがやってきた事は消えない」
勇者5「ううん、消せない」
勇者5「1くんは誰よりもそれをわかってる」
勇者1「……」
勇者5「1くんは優しすぎるんだよ」
勇者5「昔から、変わらない」
勇者5「私が一番、1くんを好きなところ」
勇者1「……」
勇者1「……おれが今更何を思おうとも、罪は消えない」
勇者1「何をしようとも、この現状は変わらない」
勇者1「おれはどうすれば良いんだ……」
勇者5「……そうだね」
勇者5「だったら私が1くんを殺してあげるよ」
勇者1「……」
勇者1「……え?」
勇者5は究極の剣技で相手を薙ぎ払った!
勇者5「……1くんほど上手には出来ないけど」
勇者5「それでも今の1くんを殺すには十分だよね」
勇者1「……なんで」
勇者5「変身の呪文使って悪さしてた勇者」
勇者5「酷い人だったよね」
勇者5「あの人、殺せなかったって思ってるでしょ」
勇者5「多分、死んだよ」
勇者1「……!?」
勇者5「においぶくろって知ってる?」
勇者5「持っていると魔物がよく出てくる道具」
勇者5「あれをね、あの人の懐にこっそり入れといたの」
勇者1「……!!」
勇者5「かなりのダメージを受けて」
勇者5「お金も回復の道具も、装備も持たないであわてて飛び出して行って」
勇者5「その上魔物がよく出る道具持ってたらねえ」
勇者5「きっと死んだと思う」
勇者1「……なんで……おまえが」
勇者5「その後会った子供の勇者」
勇者1「……まさか」
勇者5「1くんが眠った間にね」
勇者5「短い時間だったけど1くんぐっすりだったからねえ」
勇者5「殺してその辺の草むらに放り出すことくらいできたよ」
●●王「上手く伝えたか」
勇者A「はっ、○○王は勇者に他の勇者達を殺すよう、命じていました」
●●王「聞けば向こうの勇者はお前の幼馴染だと言うじゃないか」
●●王「上手く取り入って、共に行動し最後まで生き残れ」
●●王「そうすれば勝手に向こうが邪魔者を排除してくれる」
●●王「後は油断した所を殺せ」
●●王「いいな?」
●●王「これは世界の平和の為だ」
上手くいくはずがない。
もし1くんが私の事を忘れていたら。
覚えていたとして、1くんが私の事を平気で殺せるような人になっていたら。
そもそも1くんが他の勇者達を殺すなんて。
仮に上手くいったとしても。
私は1くんを殺さなきゃいけないの?
世界の平和のためとは言え、そんなことができるのだろうか。
そんな私の心配をよそに。
10年振りに会う1くんは私の事を覚えてくれていて。
困っている人を放って置けない、昔から何も変わっていなくて。
けれど苦しそうな顔をしていて。
何か考え込んでいて。
きっと、何かある。
きっと。
やりたくないことをやっているんだ。
それで苦しんでいるんだ。
だったらその苦しみを。
その責任を、その罪を。
私も一緒に背負おう。
1くんと私で背負おう。
この事を1くんに伝えればきっと断られる。
きっと一緒についていく事を断られる。
1くんは優しいから。
そこが一番好きなところだから。
だから最後にこのことを伝えて、2人で魔王を倒して。
2人で世界を平和にして。
その後の事は終わってから2人で考えよう。
2人でなら何でも出来る。
2人でなら何処へでも行ける。
勇者5「けど魔王はすでに死んでいて」
勇者5「1くんはもう、立ち上がれない」
勇者5「1くんを立ち上がらせる言葉がない」
勇者5「探しても探しても探しても……見付からない」
勇者1「……」
勇者5「……私も1くんと同じだよ」
勇者5「もう、どうすれば良いのかわからない」
勇者5「これからどうすれば良いのか」
勇者5「消えない責任を、罪を背負ってどうすれば良いのかわからない」
勇者1「……」
勇者5「だから」
勇者5「ごめんね」
勇者5「こうするしか方法は見付からない」
勇者5「1くんを楽にしてあげる方法」
勇者5「これしか思い付かなかったの」
勇者1「……」
勇者5「ごめんね」
勇者1「……」
勇者1「……」
勇者は静かに目を閉じ、
そして微笑んだ。
勇者5「さようなら」
勇者5「ぐすっ……1くん」
勇者5「ごめんね……1くん……ひぐっ」
勇者5「ごめんね……ぐすっ」
勇者5「ごめんね……ぐすっ」
勇者5「うええええーん……」
これからどうすれば良いんだろう。
1くんを殺して。
大好きな人を殺して。
一人ぼっちになった平和な世界で。
私はどうすれば良いのだろう。
今すぐにでも死んでしまいたい。
1くんの後を追って死んでしまいたい。
同じところに行けるかわからないけれど。
それでも。
それでもこの世界に1くんはいない。
私がこの世界から1くんを消してしまったのだから。
勇者5「ぐすっ……」
勇者5「1くん……」
けれど私は、私は彼の罪を背負って生きていかなければならない。
1くんを殺して。
それで私も死ぬなんて。
1くんがあれだけ苦しんでいたのに。
苦しんで、耐えて、頑張っていたのに。
1くんの罪を一緒に背負うって約束したじゃない。
私がここで……
勇者5「……私がここで立ち上がらないと駄目なんだ」
勇者5「1くん」
勇者5「もう少し、待ってて!」
瞬間、風が吹いた気がした。
魔王「ご苦労だった」
勇者5「……え……?」
魔王はするどい爪を振り下ろした。
魔王「あの男の息子が勇者になった、と聞いた時は流石に驚いたものだ」
魔王「全てはこいつを倒す為に」
魔王「こいつの心をより深く、抉る為に」
魔王「各国の勇者選抜に関して根回しをした」
魔王「そして心が折れた所を、というつもりだったが」
魔王「どうやらその必要も無かったかな」
魔物1「と、言いますと」
魔王「こいつも結局は、他の人間達と同じ」
魔王「私の言葉に従った時点で、あの男を越えてはいなかった、ということだ」
魔王「しかし私が全く手を下さずに死んだことに関しては予想外」
魔王「○○王と●●王」
魔王「私に媚を売る他の王共よりかはマシだと思っていたが」
魔王「奴らと同等、いやそれ以上に屑だったわけか」
魔物1「兵達には何と?」
魔王「派手にやれ」
魔王「初めから人間達を生かすつもりなど毛頭ない」
昔々、1人の魔王がいました。
魔王はとても強く、とても頭が良かったため、誰も倒すことができませんでした。
各国は挙って魔王を倒そうと躍起になります。
「うちの国の勇者が倒す!」
「いやうちの国だ!」
「誰でも良いから勇者を魔王城に送るのだ!」
いつしか魔王城には勇者達による長蛇の列が出来上がっていました。
そしてある日。
魔王「もうめんどくさいから1人にしてくれ」
勇者A「え……!?」
この一言が、世界を変えてしまったのです。
魔王の支配する世界へと、魔王が、そして人間達が自ら変えてしまったのです。
魔王「全ての人間達よ」
魔王「さようなら」
おわり
210 : 以下、名... - 2010/10/18(月) 07:13:40.68 WA6yHUkt0 144/144
おわり
途中何度もさるさんに戦いを挑まれて大変でした……
読んでくれた人、熱い議論を交わしつつさるよけしてくれた人、
意見をくれた人、しえんしてくれた人、ありがとう!
えっと、描写が足りないことに関しては、その通りだとは思うのでwww
ただ想像もして欲しかったところもあります
とりあえず、俺の技量が未熟だったってことなんで、しっかり参考にします!