1 : 以下、名... - 2018/12/28 22:10:17.79 T+gyQ9sf0 1/27

「入って」
「お邪魔します」

彼氏が家に来たので、出迎えた。
彼は律儀に挨拶をして、敷居を跨ぐ。
すると、リビングから姉が顔を覗かせた。

「お! いらっしゃい、副会長」
「ああ、今日もお邪魔させて貰うぞ」
「毎度毎度かしこまらなくていいわよ。それより、ちゃんと宿題持ってきた?」
「おう。約束通り、持って来たぞ」
「ありがと! やっぱり持つべき者は頼れる副会長ね! あんたが妹の彼氏で本当に良かった!」

親しげにやり取りをする、姉と彼氏。
念を押しておくが、彼は私の彼氏である。
それなのに、2人の距離はとても近い。
その理由は、我が校の生徒会役員同士だから。
姉が会長で、私の彼氏が副会長。
校内においても、校外においても、仲が良い。
高身長の彼と、女子にしては背が高めな姉。
立ち並ぶと、とても絵になるベストカップル。
ちなみに私はチビ。おまけに貧乳だ。
姉は胸が大きく、ウエストは私よりも細い。
十人男が居れば、十人とも、姉を選ぶだろう。
それでも、この人は、私を選んでくれた。
私だけの、かけがえのない、彼氏なのだ。

「……行こ」
「ああ、わかった」

袖口を引っ張って、彼氏を自室に連れ込んだ。

元スレ
姉「彼氏を虜にする方法、知りたくない?」妹「なにそれ、知りたい!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546002617/

2 : 以下、名... - 2018/12/28 22:12:46.29 T+gyQ9sf0 2/27

「数学のこの問題、難しくなかった?」
「ああ、これはこの公式に当て嵌めて……」
「ははあん。なるほどね~」

彼氏と一緒に、当然のように姉もついてきた。
とはいえ、これが常だ。日常茶飯事な一幕。
肩を寄せ合って、数学の宿題に勤しんでいる。

「あーもう! このゲーム、ムズすぎ」

そんな2人をよそに、私はゲームをしていた。
彼の勧めでやってみたのだが、とても難しい。
何度トライしてもクリア出来ず見兼ねた彼が。

「ちょっと貸してみ」
「あ、うん」
「これ、難しすぎたか?」
「うん……私には少し、難易度が高いかも」
「じゃあ、やって見せるから」

そう言って、ピコピコと携帯ゲーム機を操り。
あっさりとクリアしてみせる彼氏。神業だ。
思わず拍手すると、得意げに鼻を鳴らした。

「どうだ、すごいだろ?」
「すごいすごい! 天才!」
「はいはい天才副会長! この問題も教えて!」
「ん? ああ、これはだな……」

はい。楽しいひと時はあっという間に終わり。
再び、姉と彼氏は2人だけの世界へと戻る。
私はまた、下手くそな独りプレイを始めた。

3 : 以下、名... - 2018/12/28 22:15:48.77 T+gyQ9sf0 3/27

「お姉ちゃん、近すぎ」
「あんたにだけは言われたくないわよ」

しばらくして、私の苛立ちは頂点に達した。
姉に彼氏との距離を注意するも言い返された。
たしかに私もだいぶ近い。対抗心である。
どのくらい近いかと言うと、ほぼゼロ距離。
膝の間に陣取り、背中を胸板に預けていた。
要するに今、彼氏は私の座椅子となっている。
ちなみに姉は、彼と横並びに座っていた。
それだけなら、まだいい。問題は、胸元だ。
ゆるゆるの襟から谷間が丸見えで、溢れそう。
彼は気にしていないけれど、私は気になる。

「その服、だらしないから着替えてきて」
「なんで? いつも家ではこんな感じでしょ?」
「それは、そうだけど……」

たしかに、姉は普段から家ではだらしない。
ちなみに学校ではキッチリと制服を着ている。
模範的な服装の、真面目な生徒会長なのだ。
その反動なのか、家ではご覧の有様だった。
別に、私の彼氏を誘惑しているわけではない。
そうとはわかっているが、苛々が収まらない。

「もういい! わかった! 今に見てろよ……」
「ん? どこに行くんだ? 喧嘩はやめとけ」
「喧嘩じゃないし! すぐに戻ってくるから!」

憤慨した私は立ち上がり、彼氏に心配無用と告げると、クローゼットから手早く目当てのTシャツを1枚取り出し、駆け足で脱衣所に向かった。

4 : 以下、名... - 2018/12/28 22:17:53.04 T+gyQ9sf0 4/27

「おまたせ」
「お、おう。どうしたんだ、その格好は?」
「そのTシャツ、サイズが合ってないわよ?」

速攻で戻ってきた私に、2人の視線が集まる。
姉の言う通り、このTシャツはかなりダボダボ。
それもその筈、これは彼氏のTシャツである。
先日、彼の家にお邪魔した際に失敬してきた。
すぐに彼氏がそのことに気づいて首を傾げる。

「あれ? もしかして、それは俺の……」
「ちょっと借りた」
「無断で持ち出すのは借りるとは言わないぞ」
「じゃあ、貸して」
「あ、ああ。そりゃあ、構わないけど……」
「ん。ありがとね」

彼氏への事後報告は済んだ。委細問題はない。
重要なのは、その反応だ。明らかに挙動不審。
目が泳いで、ソワソワしている。当然だろう。
なにせ片方の肩が剥き出しだ。スースーする。
遠山の金さん状態な私。もちろん刺青はない。
ちなみに、ブラはポイしてきた。ノーブラだ。
もちろん、めちゃくちゃ恥ずかしいけれども。
ともあれ、これにて無事に、彼女としての立場を守り抜いた……かに、思われたのだが。

「そんな格好してると、風邪ひくぞ」

おもむろに立ち上がり、余計なことをする彼。
自分が着ていたジャケットを潔く、脱いで。
そっと私の肩に羽織らせてきた。あったけー。

5 : 以下、名... - 2018/12/28 22:19:40.09 T+gyQ9sf0 5/27

「……ありがと」

赤面しつつ、彼氏の思いやりに感謝する。
なんかとっても嬉しいけど、とっても複雑。
ものすごい醜態を晒したような気分になった。
くそっ。どうしてブラまで脱ぎ捨てたし。
今となっては当時の決意が無意味に思えた。
しょんぼりして、再び独りでゲームしてると。

「ぷっ……ザコすぎ」

姉が小声で嘲り、おまけに耳を齧ってきた。

「ひぅっ!?」

びっくりして、操作を誤り、ゲームオーバー。

「ぷーくすくす! ゲームオーバーだって!」
「お、お姉ちゃん! 意地悪しないで!!」
「本当に可愛いんだから! 食べちゃいたい!」
「食べるなぁっ!!」

耳を齧るのは反則だ。私は耳が弱いのに。
それを知ってて、姉は耳たぶを咥えるのだ。
本人は可愛がっているつもりなのだろうが。
本当にやめて頂きたい。ビクッてなるから。

「おい、あんまり揶揄うなよ。可哀想だろ」
「なによ副会長。もしかして、独占欲?」
「別に、自分の彼女なんだから当たり前だろ」
「まったく、お熱いことで。火傷しそうよ」

冷やかしながらも、姉の追撃は止んだ。
彼氏が庇ってくれて、なんとか助かった。
本当に彼は良い人だ。頼りになる男だった。
出会ったのは、二年ほど前。中2の時のこと。
この彼氏と巡り会えたのは姉のおかげだった。

まるで、昨日のことのように、覚えている。

6 : 以下、名... - 2018/12/28 22:21:25.34 T+gyQ9sf0 6/27

「紹介するわ。同じクラスの同級生よ」
「どうも、お邪魔してます」
「あ、どうも」

私が中2の時に、姉が男友達を家に招いた。
その時、姉は高1。男友達も同じく高1だった。
第一印象は、背が高くて、大人びた男の人。
歳上の異性と接する機会など、それまでなく。
とてもガチガチに緊張したことを覚えている。

「ちゃんとゲーム持ってきた?」
「ああ、持ってきたぞ」
「じゃあ、妹に操作の仕方を教えてあげて」

姉の指示で私はゲームの操作を教えて貰った。
単純に、遊び相手を増やす目的だったらしい。
私はそのゲームのやり方を覚えて、対戦した。

「また私の勝ち!」
「流石だな」
「……また私がビリ」

姉と男友達さんはゲームが上手だった。
私はいつも負かされていたのを覚えている。
そんな私に男友達さんは優しくコツを授けた。

「ここはこうすれば上手くいくよ」
「あ、ほんとだ」
「ほら、出来ただろ?」

上手く出来ると、男友達さんは褒めてくれた。
優しくて、良い人。笑うと、少し幼く見えた。
気がつくと、私はこの人を好きになっていた。
会える日が待ち遠しくて、何度も姉に尋ねた。

「あの人、次はいつ来るの?」
「なによあんた、もしかして惚れちゃった?」
「ち、違うし!」

姉は昔から勘が鋭くて、いつも揶揄ってきた。

7 : 以下、名... - 2018/12/28 22:23:02.41 T+gyQ9sf0 7/27

「ゲームもいいけど、勉強も頑張んなさい」
「……勉強苦手」

中3になると、事あるごとに勉強しろ言われた。

「ゲームも苦手でしょ? ていうか、あんたさ」
「何?」
「私と同じ高校に入学したくないの?」

姉と同じ高校とはつまり、あの人とも同じ高校……というわけで、私は鼻息荒く、頷いた。

「入学したい!」
「だったら、頑張んなさい」
「うん! わかった!」

こうして、私は寝る間も惜しんで勉強をして。

「受かった!」
「流石、私の妹。ところで、あんたに朗報よ」
「朗報?」

無事、姉と同じ高校に入学した。そこで朗報。

「今、あいつが家に来てるから」
「あいつ?」
「私の男友達」
「ほんと!?」
「もちろん本当よ。ちなみに」
「何?」
「今あいつ、彼女居ないってさ」

それを聞くや否や、私は全速力で駆け出した。

8 : 以下、名... - 2018/12/28 22:25:07.09 T+gyQ9sf0 8/27

「あの!」
「ん?」
「私、同じ高校に受かりました!」
「おお! それは良かった! おめでとう!」

男友達さんは我が事のように喜んでくれた。
飛びつきたいのをぐっと堪え、意を決して。
私は、自分の気持ちを、男友達さんに伝えた。

「私、あなたが好きです!」

すると、目を見開き驚いた様子。畳み掛ける。

「だから同じ高校を目指して頑張りました!」
「……そう、だったのか」
「も、もしよろしければ、私と付き合って……」
「それなら、俺と付き合ってくれないか?」

最後まで言い終える前に、返事をくれた。

「はいっ!」

もう、我慢する必要はない。飛びついた。
彼は、とても優しく、抱きしめてくれた。
嬉しかった。その喜びは今でも忘れられない。

こうして私は、彼氏とお付き合いを始めた。

9 : 以下、名... - 2018/12/28 22:27:41.68 T+gyQ9sf0 9/27

「それじゃあ、そろそろ俺は帰るよ」
「えっ? もう?」

回想を終えると、彼が帰宅する時間となった。
不満を視線に込めると、困ったような表情。
するとそれを見兼ねて、姉が私を窘めてきた。

「私の副会長を困らせるんじゃないの」
「私の彼氏だもん!」
「じゃあ、あんたが彼のお母さんの代わりに夕飯を作ってあげられる?」
「……カレーなら」
「それ以外作れないでしょ? 毎日カレー?」
「……ちゃんと他の料理も覚えるし」
「なら、覚えてから引き留めなさい」

姉はズルい。正論すぎて、反論の余地がない。

「また来るよ」
「明日も来て」
「ああ、約束だ」

律儀に約束を交わして、彼は帰って行った。

10 : 以下、名... - 2018/12/28 22:29:41.80 T+gyQ9sf0 10/27

「お姉ちゃん、ちょっと」
「なによ」
「明日は2人きりにして」

切実な願いを姉に要求すると、鼻で笑われた。

「あんたさぁ……2人きりで、何するつもり?」
「……別に、何も」
「だったら、別に私が居てもいいでしょ?」

また正論。うんざりだ。本当にムカつく。

「私たち、付き合ってるんだよ?」
「もちろん、知ってるわ」
「だったら邪魔しないで」
「邪魔なんてしてないわよ」
「じゃあ、引っ込んでて」
「あんたじゃあるまいし、私は出るところは出てるメリハリボディだから、無理な相談ね」
「うるさい! お姉ちゃんなんて嫌いっ!!」

私はキレた。これはキレてもいいだろう。
何がメリハリボディだ。もいでやる。くれ。
その出っ張りを、私に寄越せ。吸収してやる。
そんなものがあるから、争いが起こるのだ。
皆平等に平たい胸族ならば、平和に暮らせる。
そうすれば、クラスの男共に揶揄されない。
『出がらし』だの、『ミニチュア』だのと。
散々、人を馬鹿にしやがって。絶対許せない。

11 : 以下、名... - 2018/12/28 22:31:32.10 T+gyQ9sf0 11/27

「お姉ちゃんは小さいのも可愛いと思うわ」
「上から目線で言われても嬉しくない!」
「あ。そういえば、あんた」
「……何?」
「今日は随分と大体なことをしたわね?」
「っ……!」

言われて、赤面する。黒歴史を持ち出された。

「よもやダボダボTシャツに変身するなんて」
「……やめて」
「まさか、まだ魔法少女に憧れているの?」
「ち、違うもん!」
「変身したところで、スカスカだけどね!」
「うわあぁぁああああんっ!!」

残念ながら、もう守ってくれる彼氏は居ない。
私は泣かされた。尊厳を踏みにじられた。
畜生。なんの恨みがあるってんだ。バカ姉め。

「おーよちよち」
「ううっ……触んなっ!」

頭を撫でてくる姉の手をぺしっと払い除ける。

「あー怖い怖い。ところで」
「ぐすっ……何?」
「彼氏を虜にする方法、知りたくない?」
「なにそれ、知りたい!」

なんだよもう、最初からそれを言ってよ。

12 : 以下、名... - 2018/12/28 22:36:12.97 T+gyQ9sf0 12/27

「そんなに知りたいの?」
「知りたい! だって虜に出来るんでしょ!?」
「そう。これであいつは、あんたの下僕よ」
「わ、私の、げぼ、げ、下僕……うっ。鼻血が」

姉の悪魔の囁きは、私には刺激が強すぎた。

「ちょっと、大丈夫?」
「な、なんとか……」
「まったく、先が思いやられるわね」

トントンと首すじを叩いていると呆れられた。

「もう平気だから、詳細プリーズ」
「知りたかったら、ちゃんとお願いしなさい」
「お願い?」
「お姉様、教えてくだちゃい!って、可愛く」
「い、言えるかっ!」
「だったら、この話はなかったことに……」

畜生。背に腹は代えられず、私は頭を下げた。

「ううっ……教えて、ください」
「ちゃんと言って」
「お、お姉様……教えて、くだちゃい」
「はい、よく出来ました。ちょっと耳貸して」

姉に秘策を耳打ちされて、私は盛大にむせた。

「ぶっふぉっ!? な、何言ってんの!?」
「どう? すごい作戦でしょ?」
「すごいも何も、全然意味わかんないよ!?」
「大丈夫。あんたなら、きっと上手くいくわ」

常に正しかった姉の言葉が私の胸に刻まれた。

13 : 以下、名... - 2018/12/28 22:38:22.72 T+gyQ9sf0 13/27

「入って」
「お邪魔します」

翌日、再び彼氏が家にやってきた。
出迎えると、律儀に挨拶をして敷居を跨ぐ。
そして今日の私の格好を見て、驚いた様子。

「また俺のTシャツを着てるのか?」
「気に入ってるの。ダメ?」
「別に、駄目じゃないけどさ……」

やはり反応はすこぶる良い。出だしは好調だ。
また上着を羽織らされる前に、行動開始。
下僕にする為の作戦は既に始まっているのだ。

「私の部屋に行こ」
「ああ……あれ? 会長は?」
「今日は1人で勉強するってさ」

大変喜ばしいことに、今日は邪魔者は居ない。
そういう約束だ。抜かりはないのだ。
袖口を引っ張って、自室に連れ込む前に。

「えへへ……2人っきりだね」
「っ……そ、そうだな」
「顔赤いよ? そんなに嬉しいの?」
「ああ。もちろん、嬉しいよ」

ここぞとばかりに微笑めば、イチコロだ。

14 : 以下、名... - 2018/12/28 22:40:40.95 T+gyQ9sf0 14/27

「さあさあ、どうぞどうぞ、遠慮なく」
「お、押すなって」

グイグイと、大きな背中を押し込んで。
彼氏を自室に招いた。作戦は順調である。
残念なことに私の部屋には鍵が付いていない。
逃がさないように、扉の前で通せんぼをする。

「なんで床にブルーシートを敷いてるんだ?」
「さて? どうしてでしょう?」

床に敷かれたブルーシートを見て、驚く彼氏。

「もしかして、雨漏りか?」
「んーちょっと惜しいかな?」

用途は近いけれど、漏れるのは雨ではない。

「はい、そこに寝て」
「えっ?」
「ブルーシートの上に、寝転がって」
「なんで?」
「その為に敷いたの。察して」
「お、おう……これでいいか?」

怪訝そうにしつつも横になった彼氏に舌打ち。

「は? 上半身裸に決まってるでしょ?」
「はい?」
「ほら、とっとと手早く脱いだ脱いだ!」
「や、やめろって! 自分で脱げるから!」

私が脱がせにかかると、彼は自ら服を脱いだ。

15 : 以下、名... - 2018/12/28 22:44:13.43 T+gyQ9sf0 15/27

「やば……背中、ちょーかっこいい」
「今になって恥じらうのはおかしいだろ」
「お、おかしくないし!」

初めて彼氏の裸を見た。上半身のみだけど。
私の反応はおかしくないと思われる。普通だ。
だって、とっても筋肉質で、魅力的だもの。

「それで、横になればいいのか?」
「あ、うん。うつ伏せで、よろしく」
「どうしてうつ伏せなんだ?」
「察して」
「お、おう」

まだピンと来ない様子の彼氏。鈍感男である。
それでも指示通りにうつ伏せになってくれた。
本当に良い人だ。益々、好きになってしまう。
ともあれこれで、彼の方の準備は整ったので。

「ちょっと、跨ぐね」
「えっ?」
「察して」
「お、おう」

察して、とは便利な言葉だ。私は彼を跨ぐ。

「よいしょ……この辺、かな?」
「なあ、何をするつもりなんだ?」
「えっ? おしっこだよ」
「おっ?」
「今から、おしっこを、ひっかけるの」

作戦は最終フェーズへと、滞りなく移行する。

17 : 以下、名... - 2018/12/28 22:46:05.31 T+gyQ9sf0 16/27

「お、おしっこ、だと……?」
「うん。嫌なの?」
「嫌とか、そういう問題じゃなくてだな」

ここに来て難色を示す彼氏に、確認をする。

「気持ちの問題でしょ? 私のこと、好き?」
「好きだよ」
「あっ……そう、でしゅか」

彼にきっぱりと断言されて、心臓が弾けそう。
ドッドッドッて、苦しくなる。顔があっつい。
嬉しい。嬉しすぎる。私も心から、大好きだ。
この想いを、おしっこに変えて、ぶちまける。
その為にブルーシートを敷いて、準備をした。
排尿しやすいようにダボダボのTシャツを着た。
その下がどうなっているかはご想像に任せる。
とにかく私は彼氏におしっこをかけたかった。

「じゃあ、かけるよ」
「その前に、ひとつ聞いてもいいか?」
「何?」
「なんでこんなことをしようと思ったんだ?」

その質問に対し、正直な気持ちを打ち明けた。

18 : 以下、名... - 2018/12/28 22:48:59.66 T+gyQ9sf0 17/27

「……私だけの、彼氏になって欲しいから」

それが、私の願い。すると彼氏はこう諭した。

「俺は今までもこれからもお前だけの彼氏だ」
「……誰にも、盗られたくない」
「誰も盗らないから、心配するな」
「でも、お姉ちゃんが……盗るかも、知れない」
「会長が?」
「……うん」

すると、彼氏はなにやら深い溜息を吐いて。

「不安にさせて、ごめん」

真摯な謝罪を受け、私は泣きそうになった。

「謝らないでよ……」
「いや、俺が悪かった」
「違うの。悪いのは、自分に自信がない、私」

思わず溢れたその言葉こそが、本音だった。

「だから、おしっこをかけようとしたのか?」
「うん……そしたら虜にして下僕に出来るって」
「なるほどな……会長にそう言われたのか」

全てを察した彼氏は再び大きな溜息を吐いた。

19 : 以下、名... - 2018/12/28 22:52:47.72 T+gyQ9sf0 18/27

「ごめん……こんなの、おかしいよね?」

私は我に返った。何をしようとしていたのか。
彼氏におしっこをかけるなんてどうかしてる。
やっぱりやめようとしたら、足首を掴まれた。

「いいから、そのままかけてくれ」
「えっ? でも……」
「たぶん、これは俺への罰なんだろう」
「罰?」
「ああ。お前に心配をかけた、罰だ」

だから甘んじて受け入れると、彼は言う。

「ほんとに、いいの?」
「ああ、どんとこい」
「……嫌いに、ならない?」
「嫌いになんて……」

一抹の不安が過った私に対し、彼は怒鳴った。

「なるわけ、ないだろっ!!」

びっくりして、ちょろっとおしっこが漏れた。

「あっ、ごめ……」
「フハッ!」

慌てて謝るよりも早く、彼氏が愉悦を漏らす。

「フハハハハハハハハハハッ……もごっ!?」
「静かにして。お姉ちゃんに聞こえちゃう」

彼氏の口を塞いで哄笑を遮って、排尿を再開。

20 : 以下、名... - 2018/12/28 22:57:25.23 T+gyQ9sf0 19/27

「んっ……んんっ。なに、これ……すっごい」

チョロチョロと私の尿が彼氏の背中に滴る。
しかも今、私は彼の口を塞いでいた。
それがなんとも背徳感を増幅させた。
足首は力一杯握り締められて、少し痛い。
痛いくらい、気持ち良かった。新感覚だ。

「あっ……まだ、出るっ」

溜め込んだ尿の量に、自分でも驚く。
こんなに、出してしまった。恥ずかしい。
姉の特製レモネードはもの凄い威力だった。
止まって欲しいのに、止まって欲しくない。
少なくとも、自らの意思では止められない。
これが異常な行為という認識はもちろんある。
しかし、だからこそ、特別な儀式と思えた。
私たちは一線を超えて、普通じゃなくなった。
この瞬間に、特別な存在へと変わったのだ。
それを実感すると満ち足りた気持ちになった。
だから私は快感に身を任せて、全て出しきる。
そうすると、堕落に対する恐れが湧いてきた。

「ああ、お願い! 嫌いに、ならないで……!」

幻滅して欲しくなくて、切実に懇願すると。
返事の代わりに、ぎゅっと、足首を握られた。
その瞬間に、何もかもが、赦された気がして。

「好き……大好き」

キスがしたくなった。でも、彼氏はうつ伏せ。

「あむっ」
「もがっ!?」

仕方なく、肩を噛むと、彼氏がビクついた。

21 : 以下、名... - 2018/12/28 22:59:54.04 T+gyQ9sf0 20/27

「はぁ……はぁ……終わったよ」
「ぷはっ。はぁ……はぁ……気は、済んだか?」
「うん……最っ高の、気分」

おしっこをかけ終えて、彼の口から手を離す。
お互い荒い吐息を吐きながら、言葉を交わす。
頭の中が真っ白で、もう何も考えられない。
私は女だけど理解した。これが賢者タイムだ。

「ふぅ……虜に、なってくれた?」
「そんなの、見ればわかるだろ?」
「……嬉しい。大事にするね」
「それはこっちの台詞だ」

やっぱり、姉の助言は正しかったらしい。

『おしっこをかけると、虜に出来るわよ』

まさに、その通り。彼は、私の虜になった。

「肩、噛んじゃって、ごめんね」
「ん? いいよ、むしろ気持ち良かったし」
「……バカ」

つい、思い切り噛んでしまって歯型が付いた。
軽口を交わしながらも、彼氏を労わりたくて。
そっと、その歯型に唇を寄せた、その時。

「お楽しみのところ、ごめんくださーい!」

ガチャリとドアが開いて、姉が乱入してきた。

22 : 以下、名... - 2018/12/28 23:02:26.04 T+gyQ9sf0 21/27

「お、おね、おねっ……!?」
「なによ、おねしょでもしたの?」
「違うよ! お姉ちゃん、何しに来たの!?」

予期せぬ乱入に度肝を抜かれ、問いただすと。

「忘れ物を届けに来ただけよ」
「忘れ、物……?」
「はい、バスタオル」

バスタオルを手渡されて、ふと気づく。

「あっ……忘れてた」
「まったく、あんたは詰めが甘いのよ」

作戦終了後は背中を拭いてあげる予定だった。
その為のバスタオルの用意を、失念していた。
姉は私の額を小突き、おもむろに脚を上げて。

「へぶっ!?」

何故か、私の彼氏の後頭部を、踏んづけた。

「ちょっと! 私の彼氏に何するの!?」
「だってこいつが顔を上げようとしたから」
「全然意味わかんないよ!? 踏まないで!」
「あんた、ガード甘すぎ。下から丸見えよ?」
「ふぇっ? ……ッ!?」

やっば。危ないとこだった。心から姉に感謝。

「近頃、規制が厳しいから、気をつけなさい」
「はい……すみません。でも、私が踏むから」
「あっそ。それなら、しっかり踏みなさいよ」
「うん、わかった。ちょっと、ごめんね」
「ぷぎゃっ!?」

姉の代わりに彼氏の頭を踏んづけて一件落着。

23 : 以下、名... - 2018/12/28 23:05:32.33 T+gyQ9sf0 22/27

「お姉ちゃん、上手くいったよ」
「あらそう。流石は、私の妹ね」
「えへへ」

彼氏の背中を拭きながら、姉に成果を報せた。
すると、にっこり笑って、褒めてくれた。
グリグリ頭を撫でられても、嫌じゃなかった。
ひとしきり撫で回した姉は彼氏に語りかける。

「良かったわね、副会長」
「……なんのことだ?」
「大好きな彼女におしっこかけられて」
「……勘弁してくれ」
「少しは反省した?」
「海より深く、反省したよ」
「なら、許してあげる。ただし」

突然、姉は私を抱きしめて、釘を刺した。

「私の妹におしっこをかけたらダメだからね」

何を言ってるのやら。恥ずかしいからやめて。

「ああ……肝に銘じておくよ」

真顔で返事をする彼氏も、やめて頂きたい。

24 : 以下、名... - 2018/12/28 23:08:36.13 T+gyQ9sf0 23/27

「じゃあ、シャワーを借りるぞ」
「うん、行ってらっしゃい」

後始末を終えて、彼氏は浴室へ向かった。
拭いただけでは痒くなる可能性がある。
なので、遠慮する彼にシャワーを浴びさせた。
部屋には、私と姉が残った。水入らずだ。
私は満ち足りた気持ちで、一部始終を話した。

「それでね、すっごく、気持ち良くてね……」
「私が言った通りだったでしょ?」
「うん! ありがとね、お姉ちゃん!」

姉に感謝を告げるも、まだ足りない気がして。

「……彼と巡り会わせてくれて本当にありがと」
「ぷっ。なにそれ、あははは!」

小さくボソッと付け加えたら、姉は笑った。

「わ、笑わないでよ!」
「だって、そもそも、あいつがあんたに会いたいって言うから、私は家に連れて来たのよ?」
「えっ?」

なにそれ。初耳だ。そんな話は聞いてない。

25 : 以下、名... - 2018/12/28 23:11:14.28 T+gyQ9sf0 24/27

「高1の時、私はあいつのことが好きでさー」
「ええっ!?」

衝撃的な事実に耳を疑う。信じられない。
よもや姉が彼のことを好きだったとは。
そんな素振りは、微塵もなかったのに。

「それで告白したら、あえなく撃沈したのよ」
「なんで!?」
「背が小さい女の子が好みなんだってさ」

単純明快な理由。姉はたしかに背が高かった。

「だから、チビのあんたを紹介したってわけ」
「……お姉ちゃんは、それで良かったの?」
「それで親しくなれたわけだし、文句ないわ」
「でも結局、私に奪われたってことでしょ?」
「生意気言わないの。あんたを利用したのよ」
「……そんな風に、言わないで」

彼と一緒に居る為に、私を、利用したと言う。
だけど、これまで、そんな素振りはなかった。
いや、違う。あの谷間は、誘惑だったのかも。
そう考えるとムカついてきた。巨乳は滅びろ。
とはいえ彼氏は私に夢中だし。眼中にないし。
それは姉も知っているわけだから、無意味だ。
故に、あれは偶発的な谷間で人為的ではない。
ごく普通に、姉として、見守ってくれていた。

26 : 以下、名... - 2018/12/28 23:18:05.12 T+gyQ9sf0 25/27

「だから、私は今、わりと幸せなの」

そう語る姉の表情はたしかに幸せそうだった。

「どうして、盗られたのに、幸せなの?」
「だって、可愛い妹と好きな人、どっちも同じくらい大切だから。両得だと思わない?」
「……お姉ちゃん、ズルい」
「姉ってのは欲張りで、ズルい生き物なのよ」

そんな姉のことを私はもっと大好きになった。

「……ずっと一緒に居ようね」
「嫌だと言われても付き纏ってあげる」
「でも、彼は私のものだからね?」
「妹のものは、姉のものでしょ?」
「そんな名言、あってたまるかっ!」

私たちはこれからも喧嘩して、仲直りをする。
時には、嫌い合うこともあるとは思うけれど。
同じ人を好きになった私たちは仲良しなのだ。


【妹の彼氏は姉と妹のもの】


FIN

27 : 以下、名... - 2018/12/28 23:19:19.97 T+gyQ9sf0 26/27

余談

「お姉ちゃん、ひとつだけ聞いてもいい?」
「なによ、改まって」

彼女としては、これだけは聞いておきたい。

「彼のどんなところが好きになったの?」
「んー胸をジロジロ見ないところかな?」
「見られるの、やっぱり嫌?」
「あまり不躾な視線は、ちょっとね」
「それだけ?」
「それだけで充分だったわ。だって、胸じゃなくて、私という存在を、認識してくれたから」

貧乳の私にはイマイチぴんとこないけれど。
それはきっと姉にとって嬉しかったのだろう。
そう考えると、たしかに腑に落ちる点も多い。
恐らく、そうした不躾な視線を避けるために、学校ではキッチリとした服装をしているのだ。

「もしかして、彼は胸に興味ないのかな?」
「胸も小さいのが好きみたいね」
「よっしゃあっ!!」

これで姉の巨乳に怯える心配はなくなった。
彼氏は貧乳好き。巨乳は興味ない。
たぶん、だからこそ、姉は気楽なのだ。
不躾な視線を送らない彼を、好きになった。
興味を持たれないからこそ、恋に落ちた。
彼の前でなら、姉は自然体でいられるわけだ。

「……なんか、恋って難しいね」
「彼氏持ちの癖に、何を偉そうに……あむっ!」
「ひゃあんっ!?」

しみじみと呟いたら、姉に耳たぶを噛まれた。


【姉の好みは天邪鬼】


FIN

28 : 以下、名... - 2018/12/28 23:21:05.94 T+gyQ9sf0 27/27

追記

(やっぱり、可愛いな。本当に、羨ましい)

妹の耳たぶを齧りながら、改めてそう思った。
副会長が妹に惚れるのも当然だ。可愛いもの。
むしろ、惚れなかったらぶっ飛ばしてやろうと心に決め、紹介してやったあの日が懐かしい。

(よもや、妹まで、同じ男を好きになるとは)

それは奇妙でありながらも、必然と言えた。
だって、副会長は本当に良い男だったから。
私の妹に優しくして、大切にしてくれている。
おしっこをかけたとしても、へっちゃらだ。
そのくらい、お互い好き合っているのだろう。

(ほんと……私ってば、恵まれてるなぁ)

妹に、嫉妬しないと言えば、嘘になるけれど。
それよりも、この関係に充実感を感じていた。
この子と一緒に居る時の副会長は幸せそうだ。
それを傍で見ていられるだけで、幸せだった。
なにより、さっき妹から言われた、あの言葉。

『……ずっと一緒に居ようね』

それだけで、私は居場所を見つけられた。

「お姉ちゃん……泣いてるの?」
「うん……なんか、嬉しくてさ」

気づくと涙が出ていて、私は妹を抱きしめた。

「……お姉ちゃん、胸がドキドキしてる」
「私だって、胸がときめく時くらいあるわよ」
「私の彼氏に?」
「あんたに」

こんなにズルくて醜い姉に優しくしてくれて。
明らかな邪魔者である私に、居場所をくれて。
ありがとうと、感謝を込め、妹を抱きしめた。


【姉の居場所】


FIN

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