エリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」【1】
エリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」【2】

530 : 以下、名... - 2016/12/07 04:44:41.38 fMmaLUd7o 336/872


エリカ「ああ、雪」

エリカ「決戦の日にふさわしい、皮肉のきい たロマンチックさじゃない」 ハン

エリカ「あれから鍛え上げて生まれ変わったニュー逸見エリカを見せつけてやるわ」

エリカ「そう、この見違えるような新しい砲塔……」

エリカ「そして去年と変わらぬオドオドしたあの子の姿……」

エリカ「Ⅳ号になってるじゃないのよ!!!」

エリカ「ええ!?」

エリカ「このタイミングで!? ウッソでしょ!?」

エリカ「ちょ、継続相手に戦わせなさいよ!?」

エリカ「こーいう形でプラウダと闘うなんて想定してないんだけど!?」

ツチヤ「あれ、何かエンジン音がおかしいな」

麻子「ああ……試合の時はいつもそんなんだ……」

沙織「寒さでやられちゃったのかなあ」



531 : 以下、名... - 2016/12/07 04:55:43.56 fMmaLUd7o 337/872


エリカ「最悪だわ……本当に最悪……」

エリカ「あーーーーもお!」

エリカ「いくら黒森峰が副隊長不在でも戦えるチームづくりをしたとはいえ、所詮はやって一年の特訓」

エリカ「知波単レベルならともかく、継続相手には厳しい戦いになる……」

エリカ「どうする、さっさと気絶する……?」

エリカ「今までの法則性からいって、意識を手放せば戻れそうだけど……」

ビュオオオオオオオ

エリカ「……さ、寒い……」

エリカ「戦車なのに寒さを感じる……」

エリカ「眠る、っていうのは現実的じゃない寒さだわ……」

エリカ「眠ってられない寒さだし、やっぱり試合で早々に負けてもらうしかなさそうね……」

ボフッ

エリカ「わぷっ!?」

エリカ「……雪玉……?」

キャッキャキャイキャイ

エリカ「あ、遊んでるーーーーーっ」 ガビーン

エリカ「準決勝よ!? この子達自覚ないの!? ええ!?」

エリカ「いや、もう、この際いいわ……さっさと負けなさい!!」

532 : 以下、名... - 2016/12/07 05:02:11.59 fMmaLUd7o 338/872


ブロロロロロロ

優花里「あっ」

沙織「だれ?」

みほ「あれは……」

エリカ「げっ」

カチューシャ「……」 フフーン

みほ「プラウダ高校の、隊長と副隊長……」

優花里「“地吹雪”のカチューシャと、“ブリザード”のノンナですね」

「地吹雪野カチューシャさん……代わった名字をされているんですね」

沙織「異名じゃないの?」

エリカ「この黒髪どか食いロングヘア、ダージリンとかも本名だと思ってたんじゃないでしょうね……」

533 : 以下、名... - 2016/12/07 05:21:06.84 fMmaLUd7o 339/872


「異名ですか……」

「と、いうことは――」

沙織「それに見合った強さってことなんだろうなあ」

「でも地吹雪って、どういうことなんだろう?」

あや「ブリザードはあれかな、冷酷の象徴とか」

エリカ「それはあながち間違っちゃいないわね」

優花里「プラウダの恐ろしいところは、異名が決して通称じゃないところにあるんです」

エルヴィン「と、いうと?」

優花里「聖グロリアーナなんかだと、見た目とか語感の響きで身内が名付けますが……」

カエサル「ソウルネームみたいなものか」

エリカ「ハンドルネームみたいなものでしょ」

優花里「プラウダの異名は、むしろ外部の人達がその強さを恐れるままに名付けたものが浸透したとされています」

優花里「それほど恐ろしい相手なのです……!」

エリカ「……ま、うちは真摯に戦車道をしてるからあだ名なんて用いないし、黒森峰という集団で最強だから異名なんていらないんだけど」

エリカ「でもああ見えて、腕は一流」

エリカ「さすがにアンタも年貢の納め時じゃない?」

みほ「……」

534 : 以下、名... - 2016/12/07 05:31:47.40 fMmaLUd7o 340/872


カチューシャ「ぷっ……」

カチューシャ「クク……」

エリカ「?」

カチューシャ「あははははははははははは!!」

カチューシャ「このカチューシャを笑わせるためにそんな戦車を用意したのね!?」

あや「あのパンタローネ様ばりに心底楽しそうに人を煽る笑い方してる子供が……」

エリカ「ええそうよ」

エリカ「……といっても、傍受機もないみたいだし、私が解説しても伝わらないのだけれど」

「やあやあカチューシャ」

「よろしく、会長の角谷だ」

エリカ「まあ伝わらないと分かったうえで言うけど、そのお子ちゃまにその角度から握手求めたら――」

カチューシャ「……」

カチューシャ「ノンナ!」

エリカ「ほら、面倒くさいことになった」

535 : 以下、名... - 2016/12/07 05:40:35.65 fMmaLUd7o 341/872


カチューシャ「貴方達はね、全てカチューシャより下なの!」

カチューシャ「戦車も技術も身長もね!」

エリカ「まーたはじまった」

カチューシャ「聞こえたわよ!」

カチューシャ「人の話を遮るように突然エンジン音が大きくなるなんて、とんだポンコツね!」

エリカ「むっ……」 イラッ

カチューシャ「この中じゃマシな戦車みたいだけど、精々が中の上」

カチューシャ「弱い相手に活躍できても、一流相手には通用しないのよ!」

エリカ「……」

エリカ「Ⅳ号に向けて言ってるんだろうけど……」

カチューシャ「井の中の蛙にバイカル湖の凄さを教えてあげるわ!」

エリカ「私が一番言われてムカつくことを言ってくれるわね……」 ビキビキ

カチューシャ「所詮強者を気取った二流であることを教えてあげるわ!」

エリカ「西住流こそ一流、そして黒森峰こそが一流ッ」

エリカ「身長と違って本当に高い鼻っ柱、へし折ってやる……!」

536 : 以下、名... - 2016/12/07 05:52:15.10 fMmaLUd7o 342/872


「そもそも肩車してるじゃないか……」

カチューシャ「アンタも聞こえたわよ!」

カチューシャ「よくもカチューシャを侮辱したわね、粛清してやる!!」

カチューシャ「行くわよノンナ!!」

エリカ「フン、やれるものならやってみなさい」

エリカ「今年こそ、私達2人でアンタを――」

エリカ「……」

エリカ「……何言おうとしてるのよ、私」

エリカ「これじゃあまるで、私があの子と2人でリベンジしたかったみたいじゃない」 チッ

537 : 以下、名... - 2016/12/07 05:58:39.79 fMmaLUd7o 343/872


カチューシャ「あら、西住流の」

みほ「あ……」

カチューシャ「去年はありがとう」 ニタァ

カチューシャ「貴女のおかげで、去年は私達優勝できたわ!」

みほ「……っ」

エリカ「まったくね」

エリカ「この子が余計なことしてなければ、勝ってたのは私達だった……」

エリカ「余計なことをされただけで負けた自分の不甲斐なさも腹が立つけど、でも……」

エリカ「自分の行いに胸を張って、アンタみたいなやつの嫌味に反論できないこの子にも苛立つわ……」

エリカ「何とか言ってやりなさいよ……っ」

エリカ「アンタ、友達が出来て変わったんでしょう!?」

エリカ「黒森峰に居たときみたいに、ただ黙って困ったような顔をしている気!?」

カチューシャ「今年もよろしくね、家元さん」

エリカ「……はあ!?」

エリカ「西住流の後継者は隊長!!!!!!」

エリカ「この子じゃな――こら聞け! 聞きなさい豆粒ドチビ!!!」

カチューシャ「本当に何かあのⅣ号にむかっ腹立つんだけど、クラーラにでも破壊させようかしら」

ノンナ「さすがに破壊工作をするには試合直前すぎるかと」

沙織「直前じゃなきゃやるんだ!?」

538 : 以下、名... - 2016/12/07 06:04:10.31 fMmaLUd7o 344/872


カチューシャ「まあいいわ」

カチューシャ「じゃあね、ピロシキ~」

ノンナ「ダスビダーニャ」

あゆみ「ロシア語……?」

あや「うわ、どうしようロシア語わからないよ?」

「とりあえず、知ってるロシア語を返しておけばいいんだよ!」

桂利奈「ぼ、ボルシチー」

典子「ええと、キャービアー!」

おりょう「ザンギエフ」

「アスタラビスタベイベー」

沙織「それ違うくない?」


539 : 以下、名... - 2016/12/07 06:10:29.86 fMmaLUd7o 345/872


エルヴィン「それにしても、あれが“地吹雪”と“ブリザード”か……」

カエサル「ブリザードにふさわしい、凍てつくような視線だったな……」

あや「地吹雪はやっぱりよくわからなかったけどね」

「確かに」

優花里「昔は小さな巨人ってフレーズもあったみたいですけど、本人が怒り狂うから地吹雪に落ち着いたらしいですよ」

左衛門佐「ほう」

沙織「そうなんだ」

優花里「ちなみに先程ちらっと出たクラーラ選手はロシアの人で、特殊部隊の親御さんに仕込まれた工作技術も有してるんですよ」

エルヴィン「詳しいな」

沙織「……もしかして、また?」

優花里「いや、今回は潜入まではできなかったので、ネットを駆使して調べました」

優花里「戦車道は好きなんですけど、主に戦車にばかり目が行っていて、選手の知識はそこまで膨大なわけでもないので」

沙織「それでも私達より全然詳しい気がするけど」

優花里「はは、光栄であります」

エルヴィン「ちなみに、どれがクラーラとやらなんだ?」

カエサル「あ、双眼鏡」

優花里「ええっと、あの金髪の方です」

優花里「通称・ロシアの核弾頭ですね」

エルヴィン「結構留学生が多いんだな」

優花里「国際色豊かなんですよね。クラーラさんの傍にいるのがクラーラさんの車輌の砲手ですね」

優花里「彼女の異名は、ロシアのプラスチック爆弾です」

沙織「あっという間に異名が被ってきた」

エルヴィン「その奥の少女は?」

優花里「操縦手で、通称・ロシアの爆竹ですね」

沙織「そんでどんどんショボくなってきた」

540 : 以下、名... - 2016/12/07 06:14:53.44 fMmaLUd7o 346/872


優花里「何だかんだで昨年度優勝校」

優花里「その前から四強の一角でしたからね」

優花里「異名がつく程度の実力差はゴロゴロしています」

カエサル「そうなのか」

「だからあんなに態度がデカイんだな」

エリカ「チームの強さを自分の強さと勘違いしてるフシがあるわね」

「まったく、無駄に威圧的で自分を偉いと勘違いしているやつはこれだから」

麻子「どの口が言うんだ……」

「あんな奴らに負けてられないぞ、西住!」

エリカ「そうね」

エリカ「いや私としてはさっさと気絶させられたいんだけど、でもあんなのに黙って負けるなんて御免だわ」

エリカ「ベストはカチューシャをさっさとボコボコにして、でもプラウダのフラッグ車は潰せないまま負けることね」

「んで、どーすんの」

541 : 以下、名... - 2016/12/07 06:21:36.09 fMmaLUd7o 347/872


みほ「とにかく、相手の車輌の数に飲まれないで、冷静に行動して下さい」

みほ「フラッグ車を守りながら、ゆっくりと前進して、まずは相手の動きを見ましょう」

カエサル「……ゆっくりもいいが、ここは一気に攻めてたらどうだろう?」

みほ「ええ!?」

エリカ「あーあー、見事な突撃希望の嵐ね」

エリカ「……もしかして、これをさせるために、わざわざ煽りにきたのかしら」

エリカ「まあだとしても、そのうえで叩き潰すのが強者なんだけど」

エリカ「……でもコレは、あまりにも素人集団特有のソレね」

エリカ「黒森峰なら、隊長の言葉は絶対だし、こんな時でも一喝で収めて自分達のスタイルを貫かせるけど――」

みほ「……」

みほ「わかりました」

みほ「一気に攻めます」

エリカ「……アンタは、隊長とは違って、やっぱりそうするのね」

548 : 以下、名... - 2016/12/09 02:09:30.35 AcGYyT7Co 348/872


エリカ「昔っから、アンタは隊長の考えをすぐに理解した」

エリカ「……でも、決して隊長と同じ考えではなかった」

エリカ「だから互いに高めあってたし、隊長を追いかけてるだけの私じゃ勝てなかった……」

エリカ「……」

エリカ「早く、負けちゃいなさいよ」

エリカ「アンタが負けて、そのプラウダに私達がリベンジすることで、ようやく私はアンタを越えられるんだかr」

エリカ「……」

エリカ「そのためには、まずは継続戦だけど……」

エリカ「……早急に戻れたとして、私の出る幕あるのかしら……」

エリカ「……」

エリカ「もしかすると……」

エリカ「病気で倒れてると思われてる私の席なんて、とっくに、補欠に――――」

549 : 以下、名... - 2016/12/09 02:23:16.22 AcGYyT7Co 349/872


まほ「…………」

小梅「今回も、例の病気みたいですね……」

まほ「前回でわかったんだが、こうなると、一人じゃ歩くのが困難らしい」

直下「まるでバイクですね」

小梅「スクーターかも」

まほ「まあ、概ねそんな感じだな……」

まほ「胸を揉めば移動するが――」

直下「以前、エクソシストブリッジしたまま学園中を走行してましたよね」

まほ「あれをやるのはさすがにまずい」

まほ「初戦敗退の数十倍は各方面から恥さらしとして怒られる」

小梅「慎重に肩を担ごうとしても、変な所を触ると……」

まほ「ああ、変なことになる可能性がある」

直下「うーん……」

550 : 以下、名... - 2016/12/09 02:26:40.66 AcGYyT7Co 350/872


まほ「試合会場までは運搬出来るし、戦車に乗せてしまえば後は何とかなるんだが……」

小梅「最悪、逸見さんの車輌は動きが鈍ってる前提で指揮を執ればいいですもんね」

まほ「問題は、試合前の挨拶だ」

まほ「エリカは副隊長」

まほ「出ないわけにはいかない」

まほ「黙っているとしても、立ち会わないわけにはいくまい」

まほ「……問題は、その顔合わせをどうするかなんだ」

小梅「うーん……」

直下「サラシでおっぱいを固定して、自動で歩かせるとか……」

小梅「それだと止まれないから問題じゃ」

直下「あ、そうか」

まほ「それにドルンドルン言うしな」

552 : 以下、名... - 2016/12/09 02:36:48.83 AcGYyT7Co 351/872


直下「乳首を押さなければどこを触っても何も起こらない、なんてことは……」

まほ「あまり期待できないな」

まほ「自動車のエンジンを切っていても手動で窓が開くように」

まほ「また、戦車でもイグニッションを入れずとも稼働してしまう場所があるように」

まほ「全ての機能がオフになるとは言い切れない」

小梅「確かに……」

小梅「戦車の搭乗口がパカリと開く感覚で、いきなり大股開きされても困りますもんね……」

まほ「ああ」

まほ「一応黒森峰には報道カメラマンもたくさん来るから、本当にシャレにならないことになる」

直下「そっかー……」

直下「そういえばハンバーグ射出したりもあるもんなあ」

小梅「うーん……」

553 : 以下、名... - 2016/12/09 02:39:19.48 AcGYyT7Co 352/872


まほ「いっそのこと、全ての機能が停止するようなスイッチがあればいいのだが……」

小梅「まるでロボットですね」

まほ「……ああ」

まほ「実際は人間の奇病だし、期待は出来ないな……」

まほ「だが、現に乳首でイグニッションが入ったり、様々な動作が確認されている」

まほ「何か特定の動作をするツボのようなものがあるのかもしれない」

小梅「これまで判明した中にはありませんでしたけど……」

まほ「安静にさせておこうと、あまり触ってこなかったのが裏目に出たな……」

まほ「……」

まほ「一応――穏便に終わらせる方法が無いこともない」

小梅「え?」

まほ「エリカを、病欠させる」

まほ「実際に病気なんだ、問題はないだろう」

554 : 以下、名... - 2016/12/09 02:43:49.70 AcGYyT7Co 353/872


直下「……それしかない、ですよね……」

まほ「……」

まほ「だが――」

まほ「何があろうと前に進むのが西住流」

まほ「例えどんな病気であろうと、戦えるのなら当然戦車前進だ」

直下「ええ……?」

小梅「……」

小梅「それ、本気で言ってるんですか……?」

まほ「……ああ」

まほ「西住流後継者として、一度決めたベストメンバーを気軽に変えるようなバタついた采配は許されない」

まほ「何があっても動じず、己を貫き、前進するのが西住流だ」

まほ「責められるべきは、自己管理が出来ないエリカだ」

まほ「それで無様に敵前逃亡を行ったり、足を引っ張るようならば、容赦なく見限らなくてはならない」

小梅「……」

まほ「……それが、西住流後継者としての、口にしなくてはならない意見だ」

まほ「西住流の後を継ぐ以上、ここをブらすわけにはいかない」

555 : 以下、名... - 2016/12/09 02:46:36.09 AcGYyT7Co 354/872


まほ「それに――」

まほ「エリカ車の皆に、罪はない」

まほ「彼女達は暴走しがちなエリカの指示についていけるだけの鍛錬を積んできた」

まほ「エリカとは決して理解し合える友人ではないようだが、それでもチームワークは黒森峰でも指折りだ」

まほ「エリカを欠いたら大きく戦力が落ちると分かって、それでもなおエリカの不在をカバーするとも言っている」

まほ「……そんな彼女達を、試合前挨拶で恥をかくのを避けたいからと、下げることなんて、したくはない」

小梅「隊長……」

まほ「それに、黒森峰の副隊長は、エリカなんだ」

まほ「……ワガママかも知れないが、このメンバーで戦い、勝利する時は、エリカに隣に居て欲しい」

まほ「そうして何かを感じ取ってほしいから、私はあの子を、副隊長にしたんだから」

まほ「……」

まほ「それが、西住まほとしての、ワガママ極まりない意見だ」

556 : 以下、名... - 2016/12/09 02:52:33.94 AcGYyT7Co 355/872


直下「……まあ、確かに」

小梅「大洗の一件から、明らかに気迫が違ったもんね」

直下「……負けたくないんだろうなあって、逸見の森でも皆で言ってたし……」

小梅「誰より一回戦で奮闘してたのも逸見さんだった……」

直下「……」

小梅「……」

直下「しょうがないかあ」

小梅「やっぱり逸見さんが居ないと、しまらないもんね」

まほ「……すまないな、私のワガママに巻き込んで」

小梅「ううん、いいんです」

小梅「私も逸見さんと一緒に試合、出たいですから!」

557 : 以下、名... - 2016/12/09 03:02:21.34 AcGYyT7Co 356/872


直下「そうなると、どうやって穏便に挨拶させるかですけど……」

まほ「……」

まほ「考えながら、電源OFFのような、全ての機能を止めるスイッチを探すのが、やはり一番だと思う」

小梅「……ですよね」

直下「隊長でもパッと対策思い浮かばない時点で、既存のものだけじゃ厳しい、ですもんね」

まほ「かといって、闇蜘蛛には試せない」

まほ「下手なのを引いて大惨事になったら困るからな」

まほ「試合まで時間もないし、試せても1つか2つ」

小梅「……」

まほ「……どうを、どうするのがいいと思う?」

直下「えーっと……」

まほ「……正直、異例のことすぎて、私には検討も付かない」

まほ「だが――幸か不幸か、これは戦車道ではない」

まほ「普段の上下関係などなく、フラットに、意見を出し合いたいと思う」

小梅「隊長……」

558 : 以下、名... - 2016/12/09 03:05:23.65 AcGYyT7Co 357/872


直下「……」

直下「電源ボタンのようなもの、か……」

直下「……」

小梅「?」

まほ「どうかしたのか」

直下「ああ、いえ……」

まほ「……言ってみてくれ」

直下「いや、でも、その……」

まほ「……私は、黒森峰の伝統は尊重していきたいと思っている」

まほ「全てを変えてしまうようなら、最初から他校に入っているしな」

まほ「だが、同時に伝統を重んじながら改善の余地があれば改善したいと思っている」

まほ「そのうちの一つが、厳しい年功序列の排除だ」

まほ「私は、下からの意見には、上から見ただけでは分からない意見があると思っている」

まほ「だから――何の気兼ねもなく、話して欲しい」

まほ「私と、エリカと、そして黒森峰のためにも」

直下「……」

直下「はい、分かりました……」

まほ「すまないな……ありがとう」

直下「いえ……」

直下「……」

直下「……」

直下「あの……」

まほ「ん?」

直下「ちょびっツって――知ってますか?」

559 : 以下、名... - 2016/12/09 03:14:33.63 AcGYyT7Co 358/872


まほ「いや……知らないな……」

まほ「何かの機械の名前か……?」

直下「惜しいけど、違います」

小梅「漫画じゃなかったっけ、カードキャプターさくらの人の」

直下「そう」

直下「人形パソコンの漫画です」

直下「ある意味今の逸見さんにそっくりですし、参考になるかもしれません」

まほ「パソコン……」

小梅「ってことは、電源スイッチも?!」

直下「……あります」

まほ「なるほど……」

まほ「確かに闇蜘蛛にやるより、『人が機械になったらこうなる』という想定をされているであろう箇所から探る方がいいだろう」

まほ「それで、その漫画で電源スイッチはどこに?」

直下「……」

直下「いきなり言うと驚かれると思うんで、手順を段階踏んで説明しますね」

まほ「驚く……?」

まほ「まあいい、続けてくれ」

直下「はい」

直下「まずパンティーを脱がします」

まほ「ちょっと待て」

560 : 以下、名... - 2016/12/09 03:18:52.53 AcGYyT7Co 359/872


まほ「いきなりおかしくないか?」

小梅「そうだよ……」

小梅「花の女子高生がパンティーなんて言い方するなんてどうかと思うよ?」

まほ「いやそこではなく」

小梅「え?」

まほ「ゆっくり段階を踏むはずが、一段目からキノコ食べてるマリオも即死出来るレベルの高さがあったが」

まほ「もはや段階というより、死まっしぐらの断崖絶壁じゃないか?」

直下「まあ、確かに、まずはベルトを外すところからでしたよね」

まほ「そういうことが言いたいんじゃない」

直下「まあでも実際、確かに断崖絶壁に突き落とすレベルのファイナル感はありますけど、この先がありますからね」

まほ「まさか……」

直下「そうです、子宮の奥まで指を突っ込んでもらいます」

まほ「せめてオブラートを……」

小梅「電源ボタンじゃなくて電源コカンだったってこと?」

まほ「オブラートになってない」

561 : 以下、名... - 2016/12/09 03:22:45.34 AcGYyT7Co 360/872


まほ「いや、さすがにダメだろ……」

まほ「病人の、その、股間に、指……って……///」 カァァ

小梅(可愛い……)

直下(シコれる……)

まほ「だ、大体、そういうのは愛し合う2人が、告白やキスを経て合意の上でだな……」

小梅「逸見さんなら大丈夫ですよ、多分」

小梅「おそらく問題なく完璧にことが運びますよ」

直下「そうですよ、75%パーフェクトです」

まほ「それ完璧って言わないだろ」

小梅「それに逸見さん、陵辱されて堕ちそうな顔してますから」

まほ「とんでもないこと言ってるうえに堕ちたらダメだしそもそも陵辱したらダメだろ」

562 : 以下、名... - 2016/12/09 03:24:32.04 AcGYyT7Co 361/872


まほ「だ、大体なんで私が挿れる前提に……」

直下「いやいや、それは隊長しか居ませんって」

小梅「そうですよ!」

小梅「それに、隊長が相手なら、逸見さんは拒みませんって!」

小梅「っていうか多分むしろウェルカムですから!」

直下「ソースは逸見の森の第四回アンケート結果です」

まほ「何を言ってるんだお前ら」

まほ「そんなの拒むに決まっているだろ」

まほ「……」

まほ「ウェルカムされたら、それはそれで少し引くし……」

小梅(あ、隊長マジトーンで困ってそう……不憫な逸見さん……)

直下(隊長こういう話ダメなのか……)

563 : 以下、名... - 2016/12/09 03:28:11.79 AcGYyT7Co 362/872


直下「いやでも意外ですね、隊長こういうのダメなタイプなんですね」

まほ「当たり前だろ……」

まほ「そういうのは、オトナになるまでやったらダメなんだぞ」 マッタク

小梅(処女なんだ……)

直下(最悪彼氏もいないぞこれ……)

まほ「そもそも、こういうのが得意なわけがないだろう」

小梅「え、そーですか?」

小梅「何か隊長、みほさんでそういうの慣れてそうというか……」

直下「家族の日課で毎晩お風呂で子宮の中まで洗いっ子してそうというか……」

小梅「みほさんが初潮を迎えてから毎回タンポン挿入してそうというか……」

まほ「待ってくれ、お前達の中の私のイメージどうなってるんだ?」

まほ「そりゃ一時期怖い扱いされて改善したいとは思っていたが、何か別の意味で怖すぎることになってないか、おい」

564 : 以下、名... - 2016/12/09 03:32:31.41 AcGYyT7Co 363/872


小梅「まあ、確かに、隊長が本当にウブなら、怖がるのも無理はありません」

まほ「いや、怖いとかじゃなくてだな……」

小梅「でもそんな深く考えずに、タンポンとか、徹甲弾とか、そういうのを挿れる感覚で気軽にやれば大丈夫です」

まほ「え、ちょ、徹甲だ……え?」

まほ「おかしくないか?」

小梅「?」

直下「?」

まほ「え、それとも私がちょっとおかしいのか?」

まほ「確かにお母様は厳しくてそういう知識は……」

まほ「いや、でも……えええ……?」

565 : 以下、名... - 2016/12/09 03:40:01.53 AcGYyT7Co 364/872


小梅「撃てば必中」

まほ「……?」

小梅「守りは固く」

小梅「進む姿は乱れなし」

小梅「……西住流を表す言葉です」

小梅「なのに、今の隊長はどうですか?」

まほ「……っ!」

小梅「乱れっぱしの心で、そもそも撃とうともしていないじゃないですか!」

まほ「だ、だが、ここで撃つのは、心にも風紀にも乱れが……」

小梅「そうやって、変なところだけ固いのは、隊長が脱却しようとしていた部分なんじゃないですか!?」

まほ「……っ!」

小梅「去年の隊長、元祖である西住流を受け継ぐご自身と、柔軟なみほさんとをかけ合わせて、新たな黒森峰を作ろうとしていたじゃないですか!」

小梅「年功序列に逆らって、敵を作ってでも、みほさんやエリカさんを重要視して……」

小梅「そんな隊長が、こんなことで日和るんですか!?」

566 : 以下、名... - 2016/12/09 03:44:16.47 AcGYyT7Co 365/872


小梅「隊長にとって、鉄の掟って、なんですか……?」

小梅「……」

小梅「逸見さんにとって、守るべき掟とは、隊長のお言葉なんだと思います」

小梅「私も逸見さんと同じで、自分の戦車道と呼べるほど立派な信念を持てていないから分かります」

小梅「今はまだ、誰かの道をなぞるだけかもしれないけど……」

小梅「それでも、誰より真摯に道をなぞってきたのは、他ならぬ逸見さんです!」

小梅「逸見さんは、隊長の鋼の心に惹かれて、その道をなぞろうとしたんですよ!」

小梅「なのに……なのに隊長が、弱い心で逃げてどうするんですか!」

小梅「逸見さんのためにも……」

小梅「逸見さんが憧れた姿で、堂々と、前に進んでください……!」

小梅「逃げないで、どうか……」

小梅「真っ直ぐに、逸見さんの膣実さんにパンツァー・フォーしてあげてください……!」

まほ「赤星……」

まほ(……)

まほ(どうしよう……何言ってるのか全然理解できない……)

567 : 以下、名... - 2016/12/09 03:46:53.62 AcGYyT7Co 366/872


小梅「……っ」 ハッ

小梅「すみません……出過ぎた真似を……」

まほ「……いや、いい」

まほ「気持ちが、十分伝わった

まほ(内容はいまいちわからなかったが……)

まほ「……嬉しいよ」

まほ「エリカのことを、そこまで見てくれていたんだな」

小梅「……はい」

小梅「私と一緒で、逸見さんも、去年に縛られている人ですから……」

まほ「……」

まほ(縛られている、か……)

まほ(私も、その一人なのかもしれないな……)

まほ「……わかった。やろう」

小梅「!」

まほ「指を清めてくる。準備を、進めておいてくれ」

568 : 以下、名... - 2016/12/09 03:52:35.19 AcGYyT7Co 367/872


まほ(……あの日……) 

まほ(みほのため、西住流に全てを捧げると決めた日、誓ったじゃないか)

まほ(私は私の大切な人のため、西住流に生命を捧げると)

まほ(そして、全身全霊で、西住流を体現し、そしてその根底を覆さぬままより良いものに変えていこうと……)

まほ(その結果、例え周りから、嫌われることになったとしても――)

まほ「……準備完了だ」

小梅「こっちも、しっかり脱がしておきました」

直下「時間も大分使っちゃいましたし、あまり長くは時間をかけられません」

直下「ローション、使いますか?」

まほ「……いや、大丈夫だ」

まほ「戦車は火砕流の中だって突き進むんだ」

まほ「ひたすら前へと向かう西住流の体現者たる私も、同様だ」

まほ(エリカ……)

まほ(許してくれとは言わない)

まほ(私は、お前と共にこの大会を制するためなら、鬼にだってなれる)

まほ(恨んでくれてもいい)

まほ(だから――)

まほ(私の隣で、私の西住流を見届けてくれ)

まほ(そして、縛られた私では見い出せないであろう新たな西住流のあり方を、お前が――――)

まほ「パンツァー・フォー!!」

ズップゥ!!

569 : 以下、名... - 2016/12/09 03:55:36.25 AcGYyT7Co 368/872


エリカ「~~~~~~~っ」 ビビクン

エリカ「な、なにこの感覚ぅ!?」

沙織「う~、寒い寒い……」

みほ「こうやって足踏みをすると、少しは温まりますよ」 トントン

優花里「短期決戦予定ですから、すぐにそれどころじゃなくなるかもしれませんけどね」 フミフミ

沙織「うう、でもちょっとでもやる!」 パタパタ

エリカ「ちょっ、らめっ、どこリズミカルに踏みつけてるのよっ……ひゃうん!」

エリカ「ううううう」

エリカ「久々に自分の全神経が戦車にあることを痛感――ひゃあんっ!」

エリカ「ああああああもう!」

エリカ「こんな疑似セッ○スみたいなことで感じるわけないし、こんなのノーカンよノーカン!」

エリカ「私の初めては夜景の見えるホテルのスイートで、心地よい痛みと相手の愛を感じながら散らすってもう決まってるんだから!」

エリカ「こんなギャグみたいな疑似的なのはノーカ……ちょっ、ほんとそこはっ……」 ビクンビクン

580 : 以下、名... - 2016/12/14 01:12:02.42 d6PCKhywo 369/872


アキ「遅いね、黒森峰の人達」

ミッコ「巌流島ってか」

ミカ「開始時間……」

ミカ「それは本当に大切なことなのかな?」

アキ「大切すぎて超過しすぎると負けになるんだよ」

アキ「……そりゃあ、黒森峰には勝ちたいけど……」

アキ「こんな勝ち方で勝っても嬉しくないよ」

ミカ「過程や方法……」

ミカ「それは勝利に本当に必要なものなのかな?」 ポロロン

アキ「必要だよ!」

アキ「そこはせめて『勝つことだけが全てなのかな?』とかにしてよ!」

アキ「一瞬にしてゲス系の敵みたいになっちゃってるよ!?」

581 : 以下、名... - 2016/12/14 01:29:57.70 d6PCKhywo 370/872


ブロロロロロロ

まほ「お、遅れてすまない……」

ミッコ「お、間に合っ――」

エリカ「ブロロロロロロ」

アキ「な、なんかオンブでやってきてるーーーーーーっ」 ガビーン

ミッコ「しかも何か変な音出してる……」

まほ「何とか間に合ったようでよかったよ」 モミモミ

アキ「何か揉んでる……」

まほ「少し、トラブルがあってな……」 キュッ

アキ「服に手を突っ込んでるぅぅ!?」

ミッコ「い、今、つまんだよな……!?」 ゴクリ

ミカ「ふっ……」

ミカ「人の目――それはそんなに」

アキ「大切だよ!!!」


582 : 以下、名... - 2016/12/14 02:27:59.09 d6PCKhywo 371/872


小梅「結局駄目でしたね……」

直下「子宮は電源スイッチじゃないということか……」

小梅「よく考えたらそれだと色々不便ですもんね」

まほ「冷静に考えるべきだったな……」

直下「あ、でも、子宮の右がオンのスイッチで左がオフとかいう分かれ方なのかも……」

小梅「隊長、左右両方に指を」

まほ「していないしもうやらんぞ!」

まほ「さすがに中をほじくるのは人としてだな……!」

直下「……と、なると、もう諦めるしかありませんよね……」

小梅「もういっそ堂々と乗っていけばいいのでは?」

まほ「え」

小梅「ほら、さも当然のように堂々としていれば意外と皆そういうものと思い込むって、よくありますし……」

直下「確かに、堂々されれば違和感ないかもしれない……」

まほ「なるほど」

まほ「確かに、堂々たる態度は立派なブラフになるな」

まほ「あまり黒森峰のやり口ではないが――そうも言ってられまい」

まほ「黒森峰におけるブラフの歴史をここから刻もう」

まほ「行くぞ、エリカ!」 キュッ

エリカ「ブロロロロロロン!!」










まほ(――なんて勢いで出てきたが……)

アキ「……」 ウワァ

ミッコ「……」 ウヘェ

まほ「……」

まほ(やはり付け焼き刃のブラフなんてするものではなかったか……)

583 : 以下、名... - 2016/12/14 02:36:35.24 d6PCKhywo 372/872


ミカ「ふふ……」

ミカ「どうやら伝統に縛られた王者かと思っていたけど……認識を改めた方がいいかもしれないね」 ポロロン

アキ「なんでそんなに嬉しそうなの」

ミカ「去年まではありえなかった行い」

ミカ「それが、敗戦から学んだことなのかな?」

まほ「……」

まほ(全然違うけど、どう反論したらいいか分からないし、とりあえず真顔でいよう)

ミカ「戦車道には人生の大切なものが詰まっている」

ミカ「……何が大切なものなのか、果たして定義が出来るものなのかな?」

まほ「……」

ミカ「まるでバイクかのように乗ってきたけど、言うならば君の副官は戦車というところかな」

ミカ「自分自身を戦車にしている、か――」

ミカ「果たしてどんな戦車道の末にその形に行き着いたのか、楽しみにしているよ」 フフ

まほ「…………ああ」

まほ(勝手に納得してくれそう……)

590 : 以下、名... - 2016/12/18 00:28:48.05 5GJuDjM0o 373/872


沙織「冷える……」 カタカタ

エリカ「しっかり防寒しないからでしょ」

エリカ「雪原エリアでの戦いは毛糸のパンツに何重もヒートテックのタイツを履いておくべきよ」

エリカ「どうせ戦車の中にはカメラは入らないんだから、暑くなったら脱げばいいんだから」

「一気に決着をつけるのは、正解かもしれませんね」

優花里「黒森峰では、どうやって対策してたんですか?」

優花里「プラウダは雪上戦を得意としてますし、対策、取ってなかったわけじゃないんですよね」

みほ「うん、演習とか、様々な条件でやったから……」

みほ「黒森峰では、カイロたくさん貼ったり、重ね着をしたりが主流だったけど……」

みほ「基本は、各々の裁量に任せる、って感じだったかな」

「意外ですね」

沙織「てっきりそういうのにも、何かしら決まりがあるのかと思ったよー」

みほ「うん……昔は、黒森峰も西住流も、重ね着で対策してたんだけど……」

みほ「当時はホッカイロみたいに気軽に手に入る道具がなかったってこともあるし、自由になったの」

みほ「それに、激しい戦闘で暑くなったら脱げばいいのはメリットだけど……」

みほ「外に捨てるのは問題になるし、中に捨てると、その……」

みほ「汗まみれの服がたくさん打ち捨てられて臭いの問題とかが……」

優花里「あー……」

沙織「いくら華の女子高生の汗の臭いっていっても、女子高生にはクサいだけだもんねー」

「確かに、前戦車喫茶でお会いした方、腋臭臭そうなお顔をされてましたしね……」

エリカ「はァァァ~~~~~~~~!?」

エリカ「隊長の体臭は臭くありませんーーーーーーーー!!」

エリカ「むしろちょっぴりフローラルな香りですぅーーーーーーーーーーーーー!!!!」

591 : 以下、名... - 2016/12/18 01:00:13.23 5GJuDjM0o 374/872


みほ「あと、重ね着は他にも問題があって……」

みほ「車内が集団ストリップショーみたいになって、絵面がちょっと酷いっていう……」

「ああ……」

優花里「戦車によっては、普通にしていても車長のスカートの中が見えそうになりますもんねえ……」

麻子「……見ているんだな」

優花里「べ、別に私は西住殿の下着を見てなんて……///!!」 アワワワワ

みほ「とにかく、セクハラやパワハラになりかねないから、やめようってなったの」

みほ「……」

みほ「あくまで噂話なんだけど、脱ぎ散らかしたタイツを寒くなってもう一回履こうとして、他の人のを履いちゃうって事件があって」

沙織「確かに、適当に置いたらそうなるかも」

「そこまでは広くないですもんね」

みほ「敢えて他人のタイツを履いて欲情する生徒が出たり、その、おまたの病気を移される生徒が出たんだって」

優花里「うわあ……どうりで西住殿は雪上戦の経験があるのに生足なわけですね……」

優花里「パンツもいつもと変わらない綿のやつですし……」

みほ「え?」

優花里「あー! まあ、あれです、そういうの、確かにあるかもしれませんからねっ!」

沙織「あ、あはは……そうだねえ」

「確かに、以前戦車喫茶でお会いした黒森峰の方なんか、他人のタイツに欲情したり病気持ったりしてそうですもんね……」

エリカ「ちょっとアンタ達いい加減にしなさいよ!」

エリカ「隊長は欲情なんてしないの!」

エリカ「ユニコーンだってキツツキ走法し始めるくらい清らかさの塊なんだから!」

優花里「確かに、あれは想い人のタイツを履いたら我慢出来ずに指とか挿れて発情するタイプと見ましたね」

みほ「ええ……///」

沙織「もー、みぽりん困ってるじゃーん、シモネタはよくないってー」

「そういう割には楽しそうですね」

沙織「わかる?」

沙織「女の子だって、そーいう話したいもーん」

エリカ「もーん、じゃないわよ脳味噌ゆるふわ女!」

エリカ「隊長はそんなことしないったらしないの!!」

エリカ「隊長の指は綺麗だし、その指はどんな穴にも挿れられたことのない神聖なものなんだから!」

エリカ「勝手なイメージで隊長を語るんじゃないわよ!!」

麻子「……」

沙織「どうしたの?」

麻子「いや、なんだろうな……何だか無性にツッコミたい気持ちに……」

沙織「???」

麻子「すまない、忘れてくれ……自分でもよくわからないんだ」

麻子(お前のことじゃないのか、なんて言葉、咄嗟に呟きたくなるものじゃないのにな……)

592 : 以下、名... - 2016/12/18 01:21:08.90 5GJuDjM0o 375/872


チョロチョロチョロ

麻子「何の音だ……」

麻子「誰か寒さのあまりに失禁でもしたのか」

沙織「ええ!?」

優花里「ちがっ……違います!」

優花里「ポットにココアを入れてきました!」

優花里「よかったら、どうぞ」

みほ「ありがとう……」

「じゃあ私もアイスココアを……」

優花里「ありませんよ!?」

優花里「この状況でホットじゃないものを持ってくる人間なんていませんからね!?」

みほ「……」

みほ「前の学校で、エリ……逸見さんが、温めるの忘れて冷たいお茶を持ってきてたことがあったなあ」

エリカ「なっ!?」

沙織「それって、あの戦車喫茶の感じ悪い子?」

みほ「うん……」

エリカ「ちょっと! 肯定してないでフォローしなさいよ!」

みほ「寒いだろうから、私が持ってきたホットレモネードをあげようとしたら……」

みほ「ふん! アンタの施しなんてウケないわよ! それに私は自分が飲みたくて冷たくしてきたの!」

みほ「なんて言って、ガチガチ震えながら冷たいお茶を……」

優花里「いやー。見栄っ張りなんですねぇ」

エリカ「だあああああ! もう! なんでそんなどうでもいいことを覚えているのよアンタは!」

593 : 以下、名... - 2016/12/18 02:02:40.67 5GJuDjM0o 376/872


優花里「でも、覚えているものなんですねえ、そんな細かいことまで」

みほ「え?」

優花里「何だかんだで、黒森峰の日々も思い出深いものなんですねえ」

みほ「……!」

エリカ「……!」

沙織「ちょ、ゆかりん!」

優花里「あっ、もしかして失言でしたか!?」

優花里「す、すみません西住殿ぉ!」

みほ「……ううん、いいの」

みほ「確かに……こっちに来てすぐの時は、思い出したくもなかったけど……」

みほ「今でも、思い出したくないことはいっぱいあるけど……」

エリカ「……」

みほ「でも……」

みほ「楽しかった時間も、少しだけど、あったことは事実だから」

優花里「西住殿……」

エリカ「……」

みほ「っと、カモさんチームが……」

みほ「カモさんチーム、一旦交代して下さい!」

エリカ「……」

エリカ(私だって……ムカつくことは多かったけど、楽しくなかったわけじゃ……)

594 : 以下、名... - 2016/12/18 02:31:04.11 5GJuDjM0o 377/872


エリカ「……」

エリカ「素人丸出しの新戦車の面々……」

エリカ「本ッ当に層が薄いのね……」

エリカ「榴弾で雪なんて撃たなくても黒森峰の精鋭なら」 ブツブツ

エリカ「っていうか、呑気にリスなんて愛でてるし、不吉な言葉もインカムで配信されてるし」

エリカ「本当に、なんなのよこの子達は……」

エリカ「……」

エリカ「慣れてきて、そこまで激しく叫ばなくなったのが悲しいわね……」

みほ「11時に敵戦車、各車警戒!」

エリカ「ほら、おでましよ」

みほ「三輌だけ……外郭防衛戦かな?」

ドーン

みほ「気付かれた……!」

みほ「長砲身になったのを活かすのは今かも……」

エリカ「さ、私のこのニューボディのお披露目みたいね」

エリカ「……」

エリカ「私の、って自然に口にしてしまうのが頭痛の種ね」

みほ「砲撃用意して下さい! カバさんチーム、射撃!」

ズドーン

みほ「あんこうチームも砲撃します!」

エリカ「ふん!」

エリカ「さっさと終わらせるわよ!」

ズドーン

優花里「命中しました!」

沙織「すごーい、一気に二輌も!」

エリカ「このくらい普通よ」 フン

600 : 以下、名... - 2016/12/29 05:29:38.40 3Pv/xXoIo 378/872


みほ「……」

沙織「どうしたの?」

みほ「上手く行き過ぎる……」

エリカ「出たわね、アンタの心配性……」

エリカ「隊長の慎重さと比べても、アンタは過剰すぎるのよ」

エリカ「まあ、黒森峰と違って、上手くいくわけなんてない戦力だから仕方ないと言えば仕方がないけど」

エリカ「戦車道ってのは、射撃の腕や操縦の腕だけでなく、戦略が大きく影響するのよ」

エリカ「だからこそ隊長や車長が大事なわけ」

エリカ「……アンタは腐っても元黒森峰の副隊長」

エリカ「策がカチッとハマって、あとは他の連中が無能晒さなきゃ、上手くいくことくらいあるわよ」

エリカ「アンツィオなんて、何かこう、何が起きたか分からないくらい瞬殺だったじゃない」

みほ「……」

601 : 以下、名... - 2016/12/29 05:34:52.81 3Pv/xXoIo 379/872


ズドン

みほ「……!」

エリカ「ちょっと、無駄にネガティブになってる間に逃げるわよ!」

みほ「全車輌前進、追撃します!」

沙織「何で逃げてるの?」

優花里「こっちが全車輌で追いかけてるからじゃないですか?」

エリカ「基本的に数は正義なのよ」

エリカ「この物量差で足を止めて撃つ阿呆はいないわ」

沙織「そうだよねえ」

沙織「何故か追うと逃げるよねえ、男って」

エリカ「!?」

エリカ「何この脳味噌ゆるふわ女……まだそんな股緩そうなこと言って……」

エリカ「そーやって色濃いに現を抜かしておいて準決勝まで来てるのは腹立たしいわ……」

エリカ「私達なんてクリスマスもバレンタインも時間外練習だったのに……」 ギリ

エリカ「……」

エリカ「まあ、隊長達と過ごすのは、悪くはなかったけれど……」

602 : 以下、名... - 2016/12/29 06:04:11.54 3Pv/xXoIo 380/872


『フラッグ車、発見しました!』

エリカ「ホントはさっさと負けてもらうつもりだったけど、どうやらさっさと勝って終わりそうね」

「千載一遇のチャンス……よし、突撃!」

エリカ「何でアンタが指示してんのよ!」

イケエエエエエエ

アターーーーック!

エリカ「ほら、下にナメられてるからこーなるのよ」

エリカ「隊長だって最初は上級生に歯向かわれたけど、実力を見せてきっちり統率できるようにしたっていうのに」

エリカ「……その過程で辞めた人もいるけど、でもおかげで統率の取れた強いチームになった」

エリカ「アンタにはそれが足りてないのよ」

エリカ「少なくとのあの頭の中にカニ味噌しか入ってなさそうな片眼鏡は何喋っても否定して口きけなくするくらいじゃないと駄目よ」

エリカ「余計なことを喋る指揮したがりの無能なんて生かしておくメリット0なんだから」

麻子「……」

ガン!

沙織「ちょ、いきなりどうしたの!? キックなんかして……」

麻子「いや、なんとなく」

沙織「もー! 麻子は上手いからそういう余裕あるのかもしれないけど、今すっごく大事なとこなんだからね!」

603 : 以下、名... - 2016/12/29 06:42:58.16 3Pv/xXoIo 381/872


イケー!

ブッコロセー!

ストレートガチシテヤル!

みほ「ちょっと待って下さい……!」

エリカ「アンタが悠長にしすぎなんでしょ」

エリカ「置いていかれるわよ」

みほ「……追ってください」

麻子「……ああ」

ズドンズドン

「フラッグ車さえ倒せば……」

左衛門佐「勝てるっ……!」

みほ「……っ!」

エリカ「ちっ、ここまで追い込んだならしっかりと当てなs――――」

エリカ「!?」

みほ「東に移動してください、急いで!」

エリカ「囲まれている――ッ!?」

エリカ(チームのレベルの低さを侮ったッ)

エリカ(これが黒森峰ならば、こんなズルズル誘き出されずに撃墜していたっていうのに……!)

604 : 以下、名... - 2016/12/29 08:04:25.20 3Pv/xXoIo 382/872


みほ「南南西に方向転換ッ」

キュラキュラキュラ

みほ「っ!」

エリカ「くっ……!」

みほ「囲まれてる……」

沙織「周り全部敵だよ!?」

「罠だったのか……」

「ええ!?」

エリカ「くっ……」

エリカ(速攻すると決めてたのにそれに失敗、そしてプラウダ得意の形……)

エリカ(雪上戦だし、これは、もう――)

606 : 以下、名... - 2016/12/31 03:19:01.65 RbrxHnUpo 383/872


みほ「全車、南西の大きな建物に移動してください!」

みほ「あそこに立てこもります!」

エリカ「あそこに行くのも想定内だろうけど、他に手はなし、か……」

エリカ「投了するのが潔いのか、最後まで抵抗するのがいいのか、難しいところだけど……」

エリカ「ま、いずれにせよ、これまでのようね」

『履帯と前輪をやられました!』

『砲塔故障!!』

エリカ「見事なまでの集中砲火ね……」

エリカ「……」

エリカ(そういえば、そのわりに全然痛くないわね……)

麻子「……」

エリカ(こいつ……もしかして相当の操縦技術なんじゃあ……)

エリカ「……」

エリカ「はっ、そんなわけないわよね」

エリカ「私が無意識に避けようとしてるからってことかしら」

エリカ「無意識にコイツらに力を貸しているかと思うと腹立たしいわ~」

607 : 以下、名... - 2016/12/31 05:12:26.39 RbrxHnUpo 384/872


エリカ「……ん?」

みほ「砲撃が止んだ……?」

ザッザッザッ

沙織「見て、あれ……!」

優花里「あの制服、プラウダの……」

「脱走兵、でしょうか……?」

エリカ「んなわけないでしょ」

「撃った方がよろしいでしょうか?」

みほ「よろしくないです落ち着いてください」

エリカ「相当テンパってるわね……ったく……」

プラウダ大使「カチューシャ隊長の伝令を持って参りました」

プラウダ大使「降伏しなさい。全員土下座すれば許してやる」

プラウダ大使「……だそうです」

みほ「え……」

「なんだと」

エリカ「ちっ……ナメきってるわね……」

エリカ「格下相手にしかイキれないあたり小者なのに、自覚ないのかしら」

麻子「……」

沙織「麻子?」

麻子「……いや、なんでもない」

608 : 以下、名... - 2016/12/31 05:14:22.84 RbrxHnUpo 385/872


プラウダ大使「隊長は心が広いので3時間は待ってやる、とおっしゃっています」

プラウダ大使「……では」

エリカ「……はぁぁぁぁぁぁ!?」

エリカ「3時間!?」

エリカ「そんなの待ってたら黒森峰の試合が終わっちゃうじゃない!」

エリカ「冗談じゃないわよ、さっさとトドメをさしにきなさい!」

エリカ「あ、こら、行くな! ちょっと聞いてるの!?」

エリカ「……あ、聞こえてないのか」

エリカ「ほら誰かあのナメまくった連中を止めなさい!」

エリカ「そんで宣戦布告の一発でもカマしてさっさと負けなさい!」

609 : 以下、名... - 2016/12/31 05:55:24.39 RbrxHnUpo 386/872


まほ「くっ……」

まほ「戦力の差のおかげで、なんとか競ってはいるが……」

まほ「やはり貴重な戦力の一角が機能していないのは辛いな……」

小梅『本来なら軽くはねのけられる奇策が、全部逸見さんの穴を突かれて成功させられちゃってますもんね……』

まほ「見た目にはこちらが圧勝しているし、戦力差を考えればそれは事実だろうが――」

まほ「内容としては後手に回らされているし、決して良いとは言い難いな」

まほ(一人欠けても問題ないチームづくりをしていたはずだが……)

まほ(やはり一朝一夕でどうにかなるものではなかったか……)

小梅『大変です隊長!』

小梅『逸見さんの不在を気取られないようにいつもどおり上半身だけ戦車から出させていた逸見さんですけど……』

小梅『木に引っかかって車外に転落したそうです!』

小梅『大幅に遅れてます!』

直下『戦車に押し込めるのも操縦苦労したし、復帰かなりかかるんじゃ……』

まほ「……やむをえまい」

まほ「一旦別行動という形を取る」

まほ「逸見車は後から追ってきて、後に履帯損傷で戦列を離れた者の補佐などを頼む」

逸見車通信手『で、ですが……』

逸見車通信手『逸見さんを乗せたあとだと、出入り口を逸見さんが塞ぐから、後方支援は難しいかと』

まほ「…………」

まほ(こういう場面、欠片も想定していなかったもんな……)

まほ(やはり応用力が課題か……)

610 : 以下、名... - 2016/12/31 06:45:54.49 RbrxHnUpo 387/872


典子「誰が土下座なんか!」

「全員自分より身長低くしたいんだな」

エリカ「嫉妬で無駄なことするなんて、まったく戦車道を何だと思ってるのかしら」

エルヴィン「徹底抗戦だ!」

「戦い抜きましょう!」

エリカ「ま、そうね」

エリカ「ただでさえこんな弱小校で大会に出て暗黙のルールをぶち壊したっていうのに」

エリカ「案の定一方的にやられた挙句土下座してリタイアしました、なんてしてみなさい」

エリカ「戦車道大会そのものに傷がつくし、 西住流の名だって地に落ちる恐れがあるわ」

エリカ「せめて少ない希望に縋った顔をして突撃してパーッと死になさい!」

エリカ「出場してここまで来られた以上、知波単レベルにはなってもらっておかないと周りにも迷惑がかかるのよ!」

みほ「でも……」

エリカ「デモもストもない!」

みほ「こんなに囲まれていては……」

エリカ「勝ち目なんて当然ないわよ」

エリカ「ならさっさと実力で負けるしかないしょうが!」

エリカ「そもそも降伏したところでフラッグ車は落とされるのよ!?」

エリカ「土下座して一体何を許されようって言うのよ!」

611 : 以下、名... - 2016/12/31 07:28:32.97 RbrxHnUpo 388/872


みほ「怪我人が出るかも……」

エリカ「はァ!?」

エリカ「そんなの当然じゃない」

エリカ「カーボンで守られてるとは言え、戦車に乗って実弾撃ち合っているのよ!?」

エリカ「大体アンタだって、怪我する可能性を理解して戦車に乗って、上半身を車外に出したりしてるじゃない」

エリカ「何今更そんな――」

「みほさんの指示に従います」

エリカ「なっ……!」

沙織「私もっ……」

沙織「土下座くらいしたっていいよ!?」

優花里「私もですっ」

エリカ「ちょっ……本気で言ってるの!?」

エリカ「腐っても準決勝で、かなりの人が見ているのよ!?」

エリカ「戦車道大会の歴史でも見かけないとんでもない行為なのよ!?」

エリカ「アンタ達が思ってるより、ずっと無様でみっともないのよ!?」

麻子「準決勝まで来ただけでも上出来だ、無理はするな」

エリカ「そりゃアンタら程度で準決勝まで来たら上出来よ」

エリカ「だからって、無様に土下座することないじゃない」

エリカ「……怪我するかも、なんてリスク気にしないで、さっさとやられればいいだけなのに」

エリカ「たかが、その子の感情的な理由に、どうしてそこまで従えるのよ……」

612 : 以下、名... - 2016/12/31 07:35:10.27 RbrxHnUpo 389/872


「駄目だ!」

「絶対に……」

「絶対に負けるわけにはいかん!」

「徹底抗戦だ!」

エリカ「今回ばかりは賛同だけど……」

エリカ「相変わらず偉そうなのが癪に障るわね」

エリカ「黒森峰なら――」 ハッ

エリカ「……」

エリカ「黒森峰なら、隊長の意見に逆らうような子はいない……」

エリカ「隊長を、信じているから」

エリカ「……隊長の言葉には間違いがないから……」

エリカ「……」

エリカ(隊長の考えは正しいと思っているし、共感もしていた……)

エリカ(だから、それとは違う意見を持ってるアンタのことが信じられなかった……)

エリカ(才能があるだけに、隊長みたいに考えを改めて、西住流後継者にして黒森峰の将来の隊長に相応しくなってほしかったのに……)

エリカ「……とうとうムカつくくらいに甘っちょろいまま、アンタは“隊長”になったのよね……」

エリカ「見なさいよ、みんな、片眼鏡じゃなくてアンタの味方って顔してるわよ」

エリカ「……私には、アンタを信じるなんて信じがたいけど……」

エリカ「……隊長みたいに、チームから、信用されてるのね……」

エリカ「……」

エリカ(私は……)

エリカ(隊長やこの子みたいに、信じてもらえるような選手に、なれてるのかしら……)

エリカ「…………」

613 : 以下、名... - 2016/12/31 07:46:55.98 RbrxHnUpo 390/872


逸見車砲手「あった、逸見さんの体!」

逸見車装填手「うわっ、血が出てる……」

逸見車通信手「え、大丈夫?」

逸見車通信手「どうしよう……」

逸見車通信手「このままじゃどうせ役に立てないし、リタイアした方がいいのかな……」

逸見車砲手「なんだかんだで、逸見さんの指示が正確だから、上手くやれてたんだもんね……」

逸見車装填手「逸見さん抜きで統率取れずに動いて、フレンドリーファイアーなんてことになったら不味いもんね」

逸見車操縦手「……」

逸見車操縦手「ちょっと怖いけど、やっぱり、逸見さんがいないと、私達は成り立たないのよね」

逸見車通信手「……だね」

逸見車砲手「この戦いが終わったら、もう少し逸見さんと、いろいろな話をして、もうちょっと仲良くなってみようかな……」

逸見車砲手「私達、逸見さんがこうなったのも、よく分からない病気としか教えてもらえてないし」

逸見車操縦手「うん、そうだね。そうしよう!」

逸見車装填手「あ、私逸見さんについて語らうライングループ知ってるよ、入る?」

逸見車砲手「あ、うん。最近スマホにしたし、折角だし招待してよ」

逸見車装填手「そうだ、どうせ私達リタイアするんだろうし、逸見の森で何かこういう時の対策載ってないか見てみよっと」

逸見車砲手「逸見の森?」

逸見車装填手「そうそう、ライングループの名前で――」

逸見車通信手「わっ、危ない!」

614 : 以下、名... - 2016/12/31 07:54:06.27 RbrxHnUpo 391/872


ガシッ

逸見車通信手「セーフ……!」

逸見車装填手「ご、ごめん、大丈夫だった!?」

逸見車操縦手「もう、気をつけてよ! 逸見さん、この体格で結構重いんだから!」

逸見車装填手「そういえばボクササイズで痩せたはいいけど本格的なトレーニングしたら筋肉ついて重たくなっちゃったんだっけ……」

逸見車砲手「え、そうなの」

逸見車装填手「逸見の森情報だから、本人が教えてくれたわけじゃないんだけどね」

逸見車操縦手「……あっ、ちょ!」

逸見車通信手「え?」

フヨン

逸見車通信手「わわ、ごめん逸見さん!」

逸見車砲手「なるほどこれがラッキースケベ……」

逸見車通信手「と、とりあえず支え続けなきゃいけないけど、手は胸から離さないとだし……」

逸見車通信手「このまま手をゆっくりスライドさせて、胸から腰のあたりに……」 ススス

逸見車砲手(私達が支えたらなんとかなると思うけど、面白いから黙っていよう)

ポチ

逸見車通信手「あ、やば、変なとこ触っちゃった」

逸見車装填手「もう、お硬い副隊長様だし、あんま変なことすると怒られるよ?」

エリカ「ドゥルン」

逸見車通信手「!?」

エリカ「ドゥルルルルルルルル」

615 : 以下、名... - 2016/12/31 08:21:56.62 RbrxHnUpo 392/872


逸見車通信手「ど、どうしたの逸見さん!?」

エリカ「ドゥルルルルルルルル」

逸見車砲手「突然どうかしたの!?」

逸見車装填手「も、もしかして、打ちどころが悪かったんじゃあ……」

逸見車通信手「ええ!?」

逸見車砲手「ど、どどどうしよう、とりあえず試合を中断して貰って――」

逸見車操縦手「……待って!」

逸見車操縦手「あの逸見さんが、そんなことを望むとは思えない」

逸見車通信手「そ、そりゃあそうだけど……」

逸見車操縦手「それに――」

逸見車操縦手「あの戦車道に対しては面倒なくらいこだわりを持ってた逸見さんが、こんな場面でふざけると思う?」

逸見車砲手「た、確かに……」

逸見車通信手「言われてみれば、病気で意識がないとかはともかく、病気でドゥルンドゥルン言い出すわけないもんね……」

逸見車操縦手「うん……」

逸見車操縦手「きっとこの言動にも、何か意味があるんだよ……!」

616 : 以下、名... - 2016/12/31 08:27:48.20 RbrxHnUpo 393/872


逸見車砲手「そうだよね……」

逸見車砲手「昔から逸見さん、言葉足らずだし、嫌な奴って思うくらい口も悪かったけど……」

逸見車砲手「でも、いつだってそこには意味があった」

逸見車装填手「素直になればこじれないのに、なんて思うこともあったけど……」

逸見車装填手「逸見さんなりの戦車道愛が、いつだって根底にはあったんだよね……」

逸見車操縦手「逸見さんは、こんな私達を、ずっと同じ戦車の仲間に選んでくれた」

逸見車操縦手「このままだと、私達が、来年は隊長車を支えるメンバーになる」

逸見車操縦手「今、逸見さんを信じられなくてどうするの!」

逸見車通信手「そうだよね……」

逸見車通信手「気持ちと意図を組んであげるのが、仲間である私達の役目……」

逸見車砲手「昔は、あまりに嫌な子だからって筆記具全部チョークにすり替えたりしたこともあったけど……」

逸見車砲手「でも、色々あって、今は逸見さんを信じてる……」

逸見車装填手「逸見さんの意図を理解し、私達の車長が望むことを、私達で成し遂げよう!」

逸見車メンバー「「「おおーーーっ!!」」」

エリカ「ドゥルン」

617 : 以下、名... - 2016/12/31 08:57:43.91 RbrxHnUpo 394/872


エリカ「……」

エリカ(やっぱり、私なんかじゃ誰もついてきてないわよね……)

エリカ(余裕がないことが多いってくらい、自分でも分かってる)

エリカ(隊長になってから、最低限の人望を得るしかないと思ってた)

エリカ(……隊長がいる以上、隊長以上に人望を得られるわけがないもの)

エリカ「……」

エリカ(隊長には、実力も人望も遠く及ばないのは分かってる)

エリカ(でも……)

エリカ「アンタにだけは……」 ギリッ

618 : 以下、名... - 2016/12/31 09:01:08.22 RbrxHnUpo 395/872


「勝つんだ、絶対勝つんだ!」

「勝たないと駄目なんだ!」

エリカ「……」

エリカ「勝たないと駄目、か……」

エリカ「そこに関してだけは同意だわ」

エリカ「……」

エリカ「実力も策もなく喚くだけだとこうなる、って例ね……」

エリカ「……」

エリカ「私も、明日は我が身にならないようにしないと……」

みほ「どうしてそんなに……」

みほ「初めて出場してここまで来ただけでも凄いと思います」

みほ「戦車道は戦争じゃありません」

沙織(あ、サンダースの人が言ってたやつだ)

(しれっとパクりましたね)

優花里(影響を受けたんですねえ……)

みほ「勝ち負けより大事なものがあるはずです」

エリカ「……フン」

エリカ「勝つ以外の――」

「勝つ以外の何が大事なんだ!!」

エリカ「……」

619 : 以下、名... - 2016/12/31 09:18:38.50 RbrxHnUpo 396/872


みほ「私……この学校にきて皆と出会って、はじめて戦車道の楽しさを知りました」

エリカ「ッ!」

みほ「この学校も、戦車道も大好きになりました!」

エリカ「……」

エリカ「なによ……」

エリカ「分かっちゃいたわよ、アンタがこのヌルい環境とアホ面下げた連中に、入れ込んできてるってことくらい」

エリカ「分かっちゃいたわよ……」

エリカ「アンタの居場所は、もう、ここなんだってことくらい……」

エリカ「でも……」

みほ「だからその気持ちを大事にしたまま、この大会を終わりたいんです」

エリカ「黒森峰の日々だって、少しくらいは、アンタの中にあると思っていたのにっ……」

エリカ「去年私が大事にしていた気持ちをアンタのせいで台無しにされて、それでもっ……」

エリカ「毒づきながらでも、それでも仲間がしたことだからって、過去のことにしようとしてたのに……!」

620 : 以下、名... - 2016/12/31 09:31:02.33 RbrxHnUpo 397/872


「何を言っている……」

麻子(こっちの台詞だろ……)

「負けたら我が校はなくなるんだぞ!」

みほ「え……?」

エリカ「……は?」

みほ「学校が……なくなる……?」

「河嶋の言うとおりだ」

「この全国大会で優勝しなければ――」

「我が校は、廃校となる」

みほ「――っ!」

エリカ「……っ」

627 : 以下、名... - 2017/01/12 03:19:57.40 wUVEYWE7o 398/872


優花里「な、ななななななななな……!?」

「い、今、なんて……」

エルヴィン「ほら、あれだろう、より強くすべく、色々なものを我が校に混ぜ合わせてより良い物を……」

「それは配合だ」

そど子「きっと、それでも果敢に戦った功績を認められて、何かのルールの大本になったりするのよ!」

「えーっと、それは大綱だな」

おりょう「幾度か辛酸を経て、志初めて堅し――」

「…………」

「……あっ、西郷?」

おりょう「うむ、それだ!」

「お前ら現実逃避をするんじゃないっ、本当に廃校なんだァ!」 ウワァーン

628 : 以下、名... - 2017/01/12 03:49:37.85 wUVEYWE7o 399/872


エリカ「廃校……」

エリカ「なによそれ……」

あや「あれだよ、負けたら野良仕事をやらされるんだよ」

優季「しっごーとがっすっきー」

あゆみ「てれてんてんてんてれてんてんてん」

桂利奈「ハイホーハイホーハイホー」

「廃校!!」

エリカ「……」

エリカ「もし、ここが廃校になったら……」

麻子「……ぽぅ」

「マイコーじゃない! 廃校だ!!」

「やる気ないなら無理矢理入ってこないで聞いてくれる方が有り難いんだけどな」

エリカ「……」

エリカ「このまま負ければ……」

エリカ「……あの子は、また、黒森峰に……?」

典子「きっと敗戦のショックで3日くらい失踪を……」

「失踪……一体何が……」

妙子「実は温泉旅行とか……」

あけび「温泉にならいいけど、ロッテには行きたくありません」

「ええいそんな1勝もしない投手なんて関係ない! 廃校なんだよ!!」

エリカ「……」

エリカ「実質部外者の私じゃなくてアンタらがもっと焦りなさいよ!」

エリカ「おちおち頭を悩ませれもしないじゃない!!」

630 : 以下、名... - 2017/01/12 04:15:39.63 wUVEYWE7o 400/872


沙織「き、きっと負けたら戦車を売られちゃうんだよ……」

沙織「しかも二束三文で、よりにもよって中古戦車のお店でなく中古バイクのお店に……」

「バイク王でもない! どんどん離れていくな!」

カエサル「超感動した」

「圧倒的な世界観」

ゴモヨ「もう三回見ました」

左衛門佐「絶対泣ける」

パゾ美「友情っていいなあ、って思いますよね」

優花里「せーのっ」

「「「「ほにゃらら(お好きな映画タイトルをお入れください。例:実写咲-Saki-)、サイコーーーーー!」」」」

「ハイコーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

「あんまり現実逃避されても困るし、勝手に回想入っちゃうよ?」

エリカ「私の意思一つで発砲できたらこいつら全員粉微塵にしてやるのに」

631 : 以下、名... - 2017/01/12 04:20:28.03 wUVEYWE7o 401/872


エリカ「……はぁ……」

エリカ「ま、空元気も已む無し、か」

エリカ「相手はプラウダ」

エリカ「こう囲まれたら勝機はないわ」

エリカ「ここから逆転できたら、全裸でパンを尻にはさんで右手の指を鼻の穴に入れて左手でボクササイズをしながら「いぼぢをだいじに」と叫んでもいいわ」

エリカ「そのくらい、廃校は明白」

エリカ「……」

エリカ「つまり……」

エリカ「おそらく、あの子は……」

エリカ「いえ、黒森峰を拒否して、もしや他校に……?」

エリカ「……」

エリカ(何よ、このもやもやは……)

エリカ(私は一体、あの子にどうなってほしいの……?)

632 : 以下、名... - 2017/01/12 04:28:51.31 wUVEYWE7o 402/872


エリカ「……」

エリカ「それにしても……」

エリカ「早く諦めてもらわないと、もう試合は間に合いそうもないわね……」

エリカ「私の手で、継続相手に勝利したかったのに……」

エリカ「今頃、隊長達は相手を包囲し圧勝し終えたところかしら……」

エリカ「はあ……」

エリカ「そりゃそうよね……」

エリカ「なにせ隊長は優秀なうえ、あのチビと違って変な油断も傲りもない」

エリカ「遊ばずに終わっているはず……」

エリカ「……」

エリカ「私なんていなくても、きっと、問題なく、勝ってるのよね……」

633 : 以下、名... - 2017/01/12 04:48:43.88 wUVEYWE7o 403/872


小梅『……以上が、こちらの被害状況ですっ……』

まほ「そうか……」

直下『すみません、私達のせいで……』

まほ「いや、気にするな」

まほ「向こうが一枚上手だったんだ」

まほ「……包囲したあとの、フラッグ車の動き」

まほ「あの車輌だけ、頭ひとつどころでなく飛び抜けていた」

まほ「自らが逃走すべく奇策に徹されたのも、こちらとしては苦しかったな」

まほ(アクシデントで指揮系統が麻痺した時のため、ある程度各自で考え臨機応変に対応するよう指導していたが……)

まほ(それが完全に裏目に出たな)

まほ(まだ始めたばかりの方針であるため、各々が最適解を分からぬまま好き勝手に動き自滅してしまった)

まほ(……とはいえ、仕方のないことだ)

まほ(何のリスクもないのなら、とうの昔から取り入れている)

まほ(これらのリスクを踏まえたうえで、去年のようなことを繰り返さぬために、決めた方針だ)

まほ(来年・再来年のメンバーの底上げのためと考えれば、そこはもう割り切るしか無い)

まほ(それより、今は――)

まほ「この歯抜けになった軍団で、どうするか、だな……」

634 : 以下、名... - 2017/01/12 04:57:49.00 wUVEYWE7o 404/872


まほ(向こうは、基本的に奇襲をしかけてくる)

まほ(厄介なのは、フラッグ車を狙ってこない点)

まほ(削れる周囲を確実に削り取り、また逃走していく)

まほ(サシでの勝負で負けるつもりはないが…・…)

まほ(この段階で一人を相手に撃墜され続ければ、後のメンタル面に大きく影響する)

まほ(ここは早期に決着をつけねばなるまい)

まほ(とはいえ、この歯抜け状態で西住流の王道を行ってもさほど脅威たり得ない)

まほ(されど、西住流に泥を塗るような奇襲も出来ない

まほ「…………」

まほ(みほ……)

まほ(この局面、お前ならどう切り抜ける……?)

まほ(それに……)

まほ「……」

まほ「エリカ……」

まほ(エリカ、お前なら、どうするんだろうな……)

639 : 以下、名... - 2017/01/17 03:36:05.18 cXv/ICuRo 405/872


エリカ「よーやく種明かしが終わったわね」

エリカ「まあ、私は所々しか関わってないから、そんなに思う所はないんだけど」

エリカ(……思うところがあるとしたら、やっぱり、この子が廃校になった時どうするか、よね……) チラリ

みほ「……それで戦車道を復活させたんですか」

「戦車道やれば助成金も出るって聞いてたし」

「それに学園運営費にも回せるしね」

麻子「その割に戦車の購入どころかパーツの購入すら出来てないじゃないか……」

「極力使わず、生徒会室に空気清浄機と全自動卵割り機を導入するのに使わせて貰った」

麻子「この建物、カメラ入らないんじゃないか?」

「なるほど、いつでも撃てますよ」

「まあ待て」

みほ「皆さん気持ちはわかりますけど落ち着いて!」

640 : 以下、名... - 2017/01/17 03:40:47.05 cXv/ICuRo 406/872


「じゃあ、世界大会というのは嘘だったんですか!?」

「それは本当だ」

エリカ「いきなり優勝なんて無理だし、世界大会なんてもってのほかよ」 ケッ

「いやー昔盛んだったならもっといい戦車が眠っているかと思ったんだけど……」

麻子「いい戦車抱えこんでたら辞めるわけないだろ」

エリカ「アホね」

エルヴィン「浅慮だな……」

「うわーボロクソ」

「ちなみにここにあるのは全部売れ残ったやつ」

麻子「で、その売上金は」

「先輩たちが運営費に当て、そして切り詰めて生徒会室の設備充実に当てた」

優花里「装填完了です、五十鈴殿!」

「みほさん、いつでも撃てます」

みほ「……気持ちはわかりますが、冷静になりましょう」

「あれ、ちょっと擁護まで間がなかった?」

641 : 以下、名... - 2017/01/17 03:48:33.15 cXv/ICuRo 407/872


「……他に考えつかなかったんだ」

「古いだけで何も特徴のない学校が生き残るには……」

優花里「あんこう踊りがあるのでは」

カエサル「確かにアレは強烈だな……」

「思わず記憶しちゃうインパクトですよね……」

おりょう「となると、あんこう踊りで町おこし……?」

あや「それが出来るなら、とっくに栄えてるんじゃあ」

典子「そこは、根性で!」

麻子「衣装をあのピッチリしたスーツ義務にすればいいんじゃないか」

エルヴィン「なるほど、それを雇った美人にやらせて人目を引くと言うわけだな」

「……無謀だったかもしれないけどさあ」

「あと1年、泣いて学校生活を送るより――希望を持ちたかったんだよ」

みほ「会長……」

エリカ「いい話っぽくしてるけど、あいつらあんまり聞いてないわよ」

642 : 以下、名... - 2017/01/17 04:13:31.71 cXv/ICuRo 408/872


柚子「黙っていて、ごめんなさい……」

優花里「で、でもまだ、あんこう踊りで何とかなりますよ!」

あや「そうですよ、セクスィースーツで踊るイベントで、観光客がウッハウハです!」

「あんこう踊りじゃ無理だ」

「大体セクスィーなスーツ云々で客を釣り始めたら、恐らく禁止処分を受ける」

「大洗としても、あんこう踊りまで失うわけにはいかないんだよねー」

「大体、誰が着たがるんだあんなもん!」

「た、確かに……」

典子「根性があっても、あればっかりは……」

カエサル「と、いうことは……」

みほ「本当に、廃校……!?」

「だからそう言っているだろう!!」

典子「バレー部復活どころか、学校がなくなるなんて……」

おりょう「無条件降伏……」

優花里「そんな事情があったなんて……」

「この学校がなくなったら、皆バラバラになるんでしょうか……」

沙織「そんなのやだよお!」

エリカ「……」

643 : 以下、名... - 2017/01/17 04:16:40.26 cXv/ICuRo 409/872


麻子「単位習得は、夢のまた夢か……」

うさぎさんチーム「うううううう……」

エリカ「……すっかり葬式ムードね」

エリカ「……」

エリカ「同情は、してあげないわよ……」

みほ「……」

みほ「まだ試合は終わってません」

エリカ「……!?」

みほ「まだ、負けたわけじゃありませんから」

優花里「西住殿……」

「西住ちゃん……?」

エリカ「ちょっ……あんた本気で言ってるわけ!?」

みほ「……頑張るしかないんです」

みほ「だって――」

みほ「来年もこの学校で、戦車道をやりたいから……」

644 : 以下、名... - 2017/01/17 04:28:44.85 cXv/ICuRo 410/872


みほ「……みんなと」

エリカ「……」

エリカ「なーによ、たった数ヶ月がいいとこの奴ら相手に、そこまで……」

優花里「私も、西住殿と同じ気持ちです!」

エリカ「なっ、ちょ、どんだけ単純なのよアンタは!」

沙織「そうだよ、とことんやろうよ!!」

沙織「諦めたら終わりじゃん、戦車も恋も!」

「まだ戦えます……!」

麻子「……」 コクリ

エリカ「何よ……こいつら揃いも揃って感化されすぎじゃないの……」

みほ「降伏はしません」

みほ「最後まで戦い抜きます」

エリカ「……」

みほ「ただし、皆が怪我しないように、冷静に判断しながら」

エリカ「……」

エリカ「相変わらず、クソ甘いままなのね」

エリカ「立派に隊長として支持を出してるけど……そんなんじゃ、黒森峰では通用しないわよ」

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「アンタの居場所は、もう、黒森峰にはないんだから」

エリカ「別に、寂しくなんてないし――」

エリカ「――いいわ、私も、手ぇくらい貸してあげる」

エリカ「精々、圧倒的戦力差と現実を知って、あのクソ生意気なちびっ子に一矢報いてから死になさい」

645 : 以下、名... - 2017/01/17 04:37:45.98 cXv/ICuRo 411/872


エリカ「……整備も、気付いたら手慣れてきてるじゃない」

エリカ「当然、私達黒森峰の方が上として――」

エリカ「この上達スピード……」

エリカ「ポッと出のわりには、努力してるんじゃない」

エリカ「……ま、このくらいは当然だけど」

「問題は、この包囲網をどうやって突破するのかだな」

エリカ「そう」

エリカ「闇蜘蛛に突っ込んでも、待っているのは知波単のような総玉砕」

エリカ「さりとて黒森峰のように乗り手も戦車も地力不足」

エリカ「さあ、どう指揮をとるつもりなのか、見せてもらうわ」

654 : 以下、名... - 2017/01/24 02:05:00.09 uUEBVOt9o 412/872


「問題は、この包囲網をどう突破するかだが……」

柚子「敵の正確な配置が分かればいいんだけど……」

みほ「偵察を出しましょう」

エリカ「ま、それしかないでしょうね」

エリカ「戦車戦は情報がものを言う」

エリカ「それを元に作戦指揮を執る隊長の能力も求められるし、目まぐるしく移り変わる戦況を把握できる手足もが王者には求められるものよ」

沙織「それにしても、なんで麻子達なの?」

沙織「寒がって引きこもりそうなイメージすらあるのに」

みほ「冷泉さん達のコンビは、視力がいいから……」

みほ「二人一組が基本になりますし……」

カエサル「では、エルヴィン達のコンビは……?」

みほ「……二人共、行きたいって志願を……」

沙織「うええ、元気すぎでしょ二人共……」

左衛門佐「庭駆け回る……」

エリカ「アホなんでしょ」



655 : 以下、名... - 2017/01/24 02:17:03.74 uUEBVOt9o 413/872


エリカ「しかしまあ、二人一組で人間を偵察に出す、ねえ」

エリカ「黒森峰じゃありえないスタイルだわ」

エリカ「偵察で情報収集は当然必要とはいえ、戦車を降りてコソコソやるなんて弱者のやる邪道そのもの」

エリカ「偵察隊を戦車チームで組み、威力偵察をすることこそ、戦車道の本懐」

エリカ「……試合中に戦車から降りることすら、西住流では恥とされているというのに」

エリカ「ほんっと、そーいうのに全然縛られなくなっちゃって」

エリカ「……昔は、もうちょっと、ビクビクしながらだったくせに」

エリカ「……」

エリカ「黒森峰でそんなことしようものなら切腹よ切腹」

656 : 以下、名... - 2017/01/24 02:23:20.13 uUEBVOt9o 414/872


逸見車操縦手「きゃああああ!?」

逸見車通信手「ちょ、どうしたの逸見さん!?」

逸見車砲手「突然走り出すなんて!!」

逸見車装填手「人一人背負ってあの速さ……ボクササイズの成果?」

逸見車通信手「やっぱり、『おっぱい触ったら喋ってくれたし、もっと揉めばいいんじゃ』なんてすべきじゃなかったんだよ!」

逸見車砲手「いや、だって、あまりに気持ちよさそうだったから……」

逸見車砲手「揉ミュニケーション……」

逸見車操縦手「そ、それより止めてえ! っていうか止まってえ!」

逸見車通信手「そ、そうだよ逸見さん! そのまま行くと戦場に――」

逸見車砲手「はっ……!」

逸見車砲手「まさか逸見さん、このまま生身で乗り込もうっていうの!?」

逸見車操縦手「え!?」

エリカ「ドルルルルルルン」

657 : 以下、名... - 2017/01/24 02:35:24.44 uUEBVOt9o 415/872


逸見車装填手「でもそれ、逸見さんの敬愛する西住流の精神に反するんじゃ……」

逸見車砲手「確かにそうかもしれない」

逸見車砲手「普段なら、私だってそう思っていた」

逸見車砲手「でも、今こうして、生身で突っ込もうとしているのは、動かせない事実なんだよ」

逸見車操縦手「うっ、た、確かに……」

逸見車砲手「それに、逸見さんは、隊長だけでなく、元副隊長の西住さんのことも、ずっと意識してる風だった」

逸見車砲手「西住さんは、自分が守りたい者のためなら、規律だって捨てられる強さを持っていた……」

逸見車操縦手「……それは、確かに」

逸見車砲手「私たちは今、追い込まれている」

逸見車砲手「敵隊長の予想以上の無双を前に、下手をしたらこんなところで姿を消すはめになるわ」

逸見車通信手「ふ、ふたりとも、よく走りながら喋れるね……」 ゼヒーッ

逸見車砲手「作戦を立てよう」

逸見車砲手「逸見さんの意思を尊重した、生身の偵察を活かした作戦を」

逸見車砲手「王道じゃないかもしれない。怒られるかもしれない。それでも!」

逸見車砲手「私達の大好きなチームと、車長のために……!」

エリカ「ドゥルン……」

658 : 以下、名... - 2017/01/24 02:50:36.51 uUEBVOt9o 416/872


みほ「戦車が冷えるので、素手で」

あや「わあ、ほんとだー」 ヒヤ

みほ「最後まで聞いてほしかったかな……」

あや「あれ!? 張り付いた……!?」

「悲劇を繰り返さないためにも、西住、言ってやれ」

みほ「え、あ、はい……」

みほ「ええと、戦車が冷えるので、素手で触らないようにしてください」

おりょう「となると、素足で……」

みほ「ええと、それもちょっと……」

あけび「ほっぺスリスリとか……」

みほ「ほっぺ持って行かれますよ……?」

「もういっそ生乳で触って話題にだけでもなってみるか」

エリカ「やれるもんならやってみなさいよ乳首もげるわよ」

659 : 以下、名... - 2017/01/24 03:00:46.47 uUEBVOt9o 417/872


「手の空いたものは暖を取れ」

柚子「スープ配りまーす!」

「干し芋たっぷりで美味いぞー」

みほ「こんなに天気が荒れていたら、偵察に出た皆は……」

エリカ「割りと洒落にならない可能性はあるけど、でも――」

優花里エルヴィン「「どーおせ生きては帰らぬつもりー」」

エリカ「不吉な歌を口ずさみながら帰ってきたわよ」

優花里「ただいま帰還しました」

そど子「こちらも偵察終わりました!」

沙織「ちょ、どうしたの、そこかしこ濡れて……!」

麻子「途中でそど子のせいで敵に見付かってな」

麻子「さすがに特殊カーボンで守られていない生身の人間を撃つのは気が引けるらしくてな」

麻子「砲弾の代わりに雪玉が飛んできた」

エリカ「そりゃそうよ、そんな一生消えない十字架を誰が高校生の選択授業ごときで背負いたっつーのよ」

エリカ「でもそれを逆手に取るようなのは邪道だし、人間流の面汚しって感じだし、私は絶対やらないけど」 フフン

660 : 以下、名... - 2017/01/24 03:09:22.44 uUEBVOt9o 418/872


ガサガサッ

ミカ「!」

ミカ「アキ、ミッコ」

アキ「うん」

逸見車操縦手「さっきの偵察で、敵の隊長がここに潜伏しているのは知っている!」

逸見車操縦手「うおおおおおおお!」

バッ

逸見車操縦手「ってえええええええええええ!!」

ズドム

ミッコ「はっずれー!」

ミッコ「つっても、ドリフトしなくても全然当たってなさそうだけどな!」

アキ「黒森峰なのに、そんなことってあるのかな……」

ミカ「アキ。迷いという名の森の中に入りこむのは、あとでいいんじゃないかな?」

ミカ「今はただ、風に身を委ねるだけさ」 ポロロン

ミカ「――トゥータ」

ズドム

ヒョコッ

逸見車装填手「ぎゃあ、やられたー!」

661 : 以下、名... - 2017/01/24 03:11:44.29 uUEBVOt9o 419/872


逸見車通信手「!」

逸見車通信手(白旗が上がった……!)

逸見車通信手「今!!」

ガサッ

ミカ「!」

ミッコ「そっちか!?」

アキ「ま、待って! あれただの人だよ! 偵察っぽい!」

ガサッ

ミカ「本命は、後ろ、だね」

ミカ「予想外とは、常に背後からやってくるものなのさ」

ミカ「トゥー――――」

アキ「駄目!」

アキ「こ、こっちも生身の人間だよ!」

ミカ「!?」

エリカ「ドゥルン!!」

662 : 逸見車○○は名前と置き換えてお楽しみください - 2017/01/24 03:19:22.52 uUEBVOt9o 420/872


逸見車砲手(逸見車操縦手が、逸見さんの体の仕組みを幾つか解明してくれた……)

逸見車砲手(料理上手な逸見車装填手が、さっとありあわせの材料でハンバーグを作ってくれた)

逸見車砲手(その二人が、戦車を操縦し、敵の隙を作ってくれた)

逸見車砲手(そして、逸見車通信手が、二段階の不意打ちの中で最も危険な一の矢になって、タイミングを教えてくれたんだ!)

逸見車砲手(これは、逸見車全員の力が合わさった、初めての邪道っ)

逸見車砲手(邪道に落ちてでも、落とせない星を取るという決意の現れッッ)

逸見車砲手「こいつは――――」

ミカ「アキ!」

アキ「……!」

ミカ(まいったな……さすがに、戦車を囮に生身で挑んでくるだなんて……)

ミカ(なんて……自由……!)

逸見車砲手「外さないッッ」 ギュムッ

エリカ「ボシュッ」 ハンバァァァァァァグ

663 : 以下、名... - 2017/01/24 03:25:47.69 uUEBVOt9o 421/872


ビチャッ

アキ「ひゃっ」

ボムギッ

アキ「ええっ、そんな……!」

ミッコ「くそっ、まさか口から何か出てきて砲身に詰まるだなんて……」

ミカ「砲身がやられたら、高確率で白旗が上がる」

ミカ「もちろん、口から吐き出せる物質である以上、整備すれば何とかなったはずさ」

ミカ「でも――」

アキ「あ……私が、つい反射的に撃っちゃったから……」

シュポッ

アキ「砲身が暴発して、旗が……」

ミカ「……そうじゃない」

ミカ「戦車道には、人の心が詰まっている」

ミカ「何より風を感じ、空気を読むのは戦車自身さ」

ミカ「そして――白旗を出さないと、と戦車に思わせる空気を、向こうが作っただけのことさ」

シアイシュウリョウ! クロモリミネジョガクエンノショウリ!!

まほ「えっ」

しほ「…………???????????」

671 : 以下、名... - 2017/01/29 02:12:22.01 f0+GGPaso 422/872


エリカ「それにしても、さすがにもう試合は終わっちゃってるわよね……」

エリカ「以前の練習試合では、相手の隊長車が強敵だったけど……」

エリカ「それでも黒森峰と、西住流は王道にして最強」

エリカ「真っ向から小細工なんて叩き潰してるわよね」

エリカ「……はあ」

エリカ「まあ、いいわ」

エリカ「今回は――あのチビに、リベンジを果たしてやる」

エリカ「もし、万が一、大洗の試合に合わせて入れ替わりが起こるのだとしても――」

エリカ「もう準決勝を終える大洗の試合と、次が準決勝のうちはバッティングしないはず」

エリカ「次で鬱憤を晴らすようにいけ好かないグロリアーナを倒してやるわ」
















しほ「…………」

しほ(……あの子は切腹ね)

672 : 以下、名... - 2017/01/29 02:22:54.87 f0+GGPaso 423/872


エリカ「…………」

「びゅおおおおおおおおおおおwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

エリカ「さっむ……」

エリカ「めちゃくちゃ吹雪いてきたわね……」

エリカ「……いっそ、中止になればいいんだけど……」

エリカ「……でも、これだけ優位を取ってるプラウダが、それをすんなり受け入れるわけがないし……」

エリカ「学校の貢献度とかから鑑みても、まあ、まずプラウダ側に媚びるように、中止しない方向で検討されてるでしょうね」

エリカ「そうなると、士気の維持が問題だけど……」

エリカ「……」

エリカ「いや中止になられたら困るんだった、再試合の時入れ替わりで聖グロ戦出られないなんて絶対ごめんよ」

エリカ「えーい、やみなさい吹雪!」

エリカ「ほら、さっさとしなさいよ!!」

673 : 以下、名... - 2017/01/29 02:40:25.09 f0+GGPaso 424/872


エリカ「ちっ……もう完全にお通夜ムードね」

優花里「さっき偵察中、プラウダ高校はボルシチとか食べてました……」

エリカ「いっそウォッカでも飲んでたら、辞退に追い込めたものを……」

麻子「美味しそうだな……」

「それに、暖かそうです……」

優花里「やっぱり、あれだけの戦車を揃えている学校ですからね」

沙織「……」

沙織「学校、なくなっちゃうのかな」

エリカ「なくなるわよ」

エリカ「ここで勝っても、私は容赦なくアンタ達を叩き潰すんだから」

優花里「そんなの、嫌です……」

優花里「私は、ずっとこの学校にいたい!」

優花里「皆と一緒にいたいです!!」

エリカ「……ふん」

エリカ「いつまでもこのままでいられたらいい、なんて……」

エリカ「卒業だってするんだから、叶うわけないじゃない」

エリカ「……」

エリカ(でも……)

エリカ(叶うはずもないのに、心のどこかで、私も……)

674 : 以下、名... - 2017/01/29 02:56:49.80 f0+GGPaso 425/872


「どうして廃校になってしまうんでしょうね……」

エリカ「知らないわよ」

エリカ「アンタラのとこの無能運営にでも聞きなさいよ」

エリカ「あのアンツィオや継続だって解体されてないんだし、あんたらよっぽど採算取れてないのよ」

エリカ「なんだっけ、あんこう踊りとかいう、伝統芸能的なのあるんでしょ?」

エリカ「そっちでなんとか人を呼ぶほうが現実的だったのよ」

エリカ「戦車道をナメたのが敗因よ」

「ここでしか咲けない花もあるのに……」

エリカ「……」

エリカ「ここじゃ咲けない花もあるでしょ」

エリカ「……そこでしか咲けないと思っていた花が、違う場所で、もっと生き生きと咲くなんてことも、あるのよ」

675 : 以下、名... - 2017/01/29 03:20:13.09 f0+GGPaso 426/872


みほ「みんなどうしたの!?」

みほ「元気出していきましょう!」

エリカ「……無理よ」

エリカ「元々絶望しかけてた心を、無理やり奮い立たせてたのよ」

エリカ「それが吹雪で冷水をかけられたらこんなもん、よ」

みほ「さっきみんなで決めたじゃないですか、降伏しないで最後まで頑張ろって!」

一同「「「はーい……」」」

エリカ「わかってまーす、なんてのも、嘘じゃあないでしょうね」

エリカ「分かってても、一度冷めた熱は簡単には戻らない」

エリカ「窮鼠が猫を噛むのも、追い込まれて生まれた熱が生きてるから」

エリカ「……反撃に出るための熱量を殺すつもりで、こんな時間を設けたのかしら?」

「お、おい! もっと士気を高めないと!」

エリカ「元々、おどおどしてて士気高揚には向いてなかったのよね、アンタ」

エリカ「……この場面で、そんなアンタがどうするのか、見させてもらうわよ」

676 : 以下、名... - 2017/01/29 03:27:41.81 f0+GGPaso 427/872


「このままじゃ戦えんだろ」

みほ「え……」

「なんとかしろ、隊長だろ!?」

みほ「は、はい……」

みほ「……」

みほ「っ!」 キリッ

みほ「あああんあん!」 ヒョイッ

みほ「あああんあん!」 ピョコピョコ

エリカ「!?!?!?!」

沙織「みぽりん!?」

「どうしたんですか……?」

エリカ「え、なに、あまりの絶望にネジでも飛んだの?」


677 : 以下、名... - 2017/01/29 03:32:17.68 f0+GGPaso 428/872


みほ「みんなも歌ってください!」

エリカ「!?」

みほ「私が踊りますから!!」

エリカ「ほんとどうしたのよあんた……」

エリカ「さすがに驚きすぎて引くし、みんなも歌って、他の連中もこの意味の分からない曲を歌える前提なわけ……?」

「あの恥ずかしがりのみほさんが……」

優花里「皆を盛り上げようと……」

麻子「微妙に間違ってるけどな」

エリカ「微妙で済まないレベルで間違ってるんじゃないこれ???」

優花里「私も踊ります!」

エリカ「はあ!?」

「やりましょう」

沙織「みんな、いくよー!」

麻子「仕方あるまい」

エリカ「え、なに、私なの? 私だけがおかしいの?」

678 : 以下、名... - 2017/01/29 03:37:42.89 f0+GGPaso 429/872


ピーッカピカー

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「あっ、これがあんこう踊りってやつ!?」

エリカ「いや、そりゃだめだわ……そりゃこれ前面に押すのはないわ……」

エリカ「上級者向けすぎでしょ……」

エリカ「まだ戦車道をナメて参戦してくる方が理解できるレベルの踊りね……」

エリカ「ソレを試合中にやるなんて、家元が見たら卒倒するわよ」

エリカ「しかもこの人数でそんな狂気の洗脳ダンスを踊るなんて……」

エリカ「戦車道の歴史においても指折りの恥さらし」

エリカ「ボジョレーヌーボーと違って、本物の近年トップクラスの恥さらしね……」

エリカ「まったく、うちの試合と重なっていて家元が見に来てないことを感謝しなさいよね」

679 : 以下、名... - 2017/01/29 03:47:22.79 f0+GGPaso 430/872


しほ「……」

まほ「あの……」

しほ「切腹用の刃はこれでいいかしら」

まほ「エリカのことを、許して頂けは……」

しほ「戦車道とは、心を育てるもの」

しほ「あれほどまでに心がやましく、西住流にも反する者を、手元に置いておく必要はありません」

しほ「ボジョレーヌーボーと違って、本物の近年トップクラスの恥さらし」

しほ「試合中ハンバーグを食べてそれを吐き出して勝利するなど、あまりにも言語道断」

しほ「戦車道の歴史においても指折りの害悪です」

しほ「それならまだ試合中に奇妙な踊りでも踊られる方が奥倍マシ」

まほ「それは、まあ、そうでしょうが……」

まほ「さすがに切腹というのは、些か時代錯誤かと……」

まほ「西住誕生直後の文化をそのまま現代にも適用するのでなく、そのあたりはフレキシブルに……」

しほ「分かっています。冗談です」

まほ「ほっ……」

しほ「今の時代、切腹はあまりに非人道的」

しほ「今の時代は無痛ですぐ終わる電気椅子です」

まほ「!?!?!?!?」

しほ「何でも揃うアマゾンとやらで注文したから、近日中に届くでしょう」

まほ「何でも揃うにも限度というものがあります」

まほ(頼むからKONOZAMAになってくれ……)

685 : 以下、名... - 2017/02/11 00:56:57.83 hwY4W5lco 431/872


プラウダの使者「あの!」

エリカ「うわ、見てたんだ……」

プラウダの使者「もうすぐタイムリミットです」

プラウダの使者「降伏は?」

みほ「しません」 スッパリ

みほ「最後まで戦います」

プラウダの使者「……」

プラウダの使者(まあ、あの踊りを全員で踊った挙句降伏しますと言われてもちょっと困るもんね……)

プラウダの使者(人の心を壊すくらい追い込んでしまった、ってトラウマにならないように、抵抗してもらわなきゃ……)

686 : 以下、名... - 2017/02/11 01:00:29.00 hwY4W5lco 432/872


「小山、行くぞ」

柚子「はいっ……!」

「突撃!」

エリカ「……」

エリカ「確かに、あの薄さは罠の匂いがするけど……」

エリカ「西住流は、真正面から多少の困難をねじ伏せるパワーだってあるけれども!」

カチューシャ「はあ!? こっちぃ!?」

エリカ「何でわざわざあんな分厚い所を……!」

「西住ちゃん、いいから展開して」

みほ「気をつけて……!」

エリカ「ちっ、あいつらムカつくからやられてほしいけど、そうも言ってられないわね」

エリカ「ただでさえ人数が不利なのに敢えて茨の道を行こうっていうアンタの手腕、見せてもらうわ」

687 : 以下、名... - 2017/02/11 01:13:10.71 hwY4W5lco 433/872


『いやー、ごめーん』

『2輌しかやっつけられてないのにやられちゃった』

『……あと、よろしくね』

みほ「わかりました」

みほ「ありがとうございます」

『頼んだぞ、西住っ!』

柚子『お願いねっ!』

エリカ「……」

みほ「この窪地を脱出します!」

みほ「全車あんこうについてきてください!!」

エリカ「……アンタが黒森峰よりこっちを取ったことは、まあ、こう、受け入れるとしてもよ」

エリカ「明らかに悪役だったはずのアイツら相手に、なんでそんな表情出来るのよ」

エリカ「……アンタ、そんな風に想いを背負ってくれたこと、黒森峰ではなかったじゃない」

エリカ「……」

エリカ(それとも……私に見えてなかっただけとでもいいたいの……?)

エリカ「……ちっ」

エリカ「やっぱり、この環境はいらつくわね」

エリカ「さっさと終わらせるわよ!」

688 : 以下、名... - 2017/02/11 01:23:50.26 hwY4W5lco 434/872


エリカ「ああ、もうっ!」

エリカ「フェイント入るしブンブン振られるし、最悪の気分だわっ!」

麻子「……」

エリカ「……」

エリカ(でも、いつの間にか、私が助力して慣性に抵抗しなくてもフェイントを完全に使いこなすようになってる……)

エリカ(それに、他の連中も、全員ついてきてる……)

エリカ(才能? 士気の高さ? それとも、あの子の指導が上手いっていうの……?)

バババババババ

エリカ「……」

エリカ「人の怪我には人一倍五月蝿いくせに、自分は機銃が飛び交ってても平然と上半身を出す所は変わらないのね」

みほ「この暗さに紛れるため、出来るだけ撃ち返さないで!」

エリカ「西住流にあるまじき邪道な奇手を思いつくのも変わらず、か」

エリカ(……違うとすれば、その奇手を周りが受け入れるかどうか、か……)

689 : 以下、名... - 2017/02/11 02:01:09.26 hwY4W5lco 435/872


沙織「それにしても、予想以上にあっさりと抜け出せたね」

沙織「まるで両思いの合コンみたい……」

エリカ「あのチビッ子、戦術家としては有能だけど、前線に立つのに向いてないのよ」

エリカ「圧倒的優位ですぐに慢心するわ、ツメが甘く得物を前に舌舐めずりするわ、現場に出るには二流と言わざるを得ないわね」

エリカ「一流というのは、隊長のように常に油断せず、驕らず、勝利が決定する瞬間まで勝利を確信し気を緩めない人のことを言うのよ」 フフン

麻子「……」

優花里「さっき偵察に行っていて知ったんですけど、どうやら今年のプラウダには優秀な偵察兵がいるようでして……」

優花里「こちらの人数や場所を的確に把握し、隊長達に伝達していたらしいんです」

沙織「そっか、だからさっきもあんなに的確に追い込まれてたんだ……」

「でも、それならば、何故今はこうも容易く……?」

優花里「どうやらファインディング・コンピューターの異名を持つその人は、高度な計算の末に相手の居場所を割り出すため……」

優花里「30分以上試合をすると知恵熱を出しポンコツ化するんだそうです」

エリカ「なによそのMe以下の低スペックコンピューターは」

沙織「でも大丈夫なのかなー、こんな寒いのに熱まで出すなんて」

優花里「まあ、元々車外活動メインだったから彼女がいなくても戦車の運用は出来るんでしょうし、大人しく医務室に行ってると思いますよ」

優花里「おかげでこうして戦線を離れてフラッグ車を叩きにいけますし、今は同情ばかりしていられませんっ」

エリカ「しかしまあ、そんなやつを抱えてるのに猶予与えるとか、いよいよ持って舐めプの極地ね……」

エリカ「後悔させてやらなくちゃいけなんじゃないの?」

みほ「……」

みほ「相手の居場所、か……」

みほ「……」

みほ「ゆかりさん、もう一度偵察に出てくれる?」

優花里「……!」

優花里「はいっ喜んで!」

優花里「はあーーーーっ!」 シュバッ

エリカ「うおっ、いつもの2倍のジャンプと3倍の回転ッッ」

優花里「どこか高い所は……っと」 トテトテ

690 : 以下、名... - 2017/02/11 02:19:17.75 hwY4W5lco 436/872


優花里「あっ!」

優花里「発見しました!」

優花里「あちらの角で、冬のナマズのようにおとなしくしています!」

エリカ「わかってるとは思うけど……」

エリカ「問題はここからよ」

エリカ「あのチビっ子大好きなスナイパーをはじめ、向こうは伊達で四強をしてるわけじゃあない」

エリカ「腐っても黒森峰にラッキーパンチを当てるだけの戦車と技量を持っている」

エリカ「そんな相手に、こっちはとっくにフラッグ車を見付かってるのよ」

エリカ「……こっからが正念場ね」

691 : 以下、名... - 2017/02/11 02:30:42.62 hwY4W5lco 437/872


『うさぎチーム、走行不能!』

エリカ「!」

みほ「!」

沙織「みんな大丈夫!?」

ウサギさんチーム『大丈夫でーす』

あや『メガネ割れちゃったけど大丈夫でーす』

『カモさん、アヒルさんをお願いします!!』

そど子『了解!』

エリカ「……」

エリカ「最初はあれだけ戦車道をナメてるとしか思えなかった、あの連中が……」

エリカ「この短期間で、人は変わるものね……」

エリカ「……」

エリカ(もしかしたら、私も――――)

エリカ「……」

エリカ「ふん、くだらないことを考えたわ」

エリカ「ほら、加速するわよ!」

エリカ「あと盾は一枚だけ」

エリカ「さっさと落として終わらせるわ!」

692 : 以下、名... - 2017/02/11 02:48:17.01 hwY4W5lco 438/872


Ⅳ号戦車になったことで、見えてきたことがある。

……ずっとあの子にムカついてて、隊長に並び立てる存在だと分かっていたけど受け入れることが出来なかった。

はっきり言って、今のあの子を見下してる。

でも――

見下すようになって、初めて分かったことがある。

見上げていると認めたくなくて、目を背けていたから気付けなかったことが。

エリカ「やっぱり――――アンタは強いし、上手いわよ。癪だけど」

でもそれは、“黒森峰の強さ”でも、“西住流の強さ”でも無い。

優花里『近付いてきます!』

見下せるようになった今だから言える。

アンタは確かに黒森峰に必要だったし、隊長の右腕に相応しかったんだと思う。

でも、それは、アンタが黒森峰や西住流とは違う強さを持っていたから。

隊長が体現する強い西住流は、100の力を持つ選手を束ね、そして100の力を発揮できるよう纏め上げて指示を出す。

でもあの子は、そうじゃない。

10のポテンシャルの子を、20や30に引き上げるのを得意としている。

だからこそ、隊長の右腕だったんだ。

隊長にないスキルを持っていたから。

足りない所を補い合える相棒だったから。

隊長と同じ道を選び、そしてまだ背中に追いつけていない私では、敵わないのも当然だろう。

693 : 以下、名... - 2017/02/11 03:03:33.88 hwY4W5lco 439/872


だが――――

エリカ「それがどうしたっていうのよッッ」

ああ、ああ、認めるさ。認めてやるとも。

あの子は強い。私にはなく、隊長にすら無い力を持っている。

認めたくない事実だけど。認めたくない力だけど。

でも確実に、彼女には理解しがたいほどのカリスマ性があるのだ。

優花里『来ました!』

さっき、KV2を撃破する直前、砲手に声をかけたように。

粘って負けた車輌の面々と交わした言葉のように。

あんな優しく気遣いのためのやり取りは、私には無理だ。

いや、きっと、黒森峰の全員に無理だ。

出来て当たり前のことなんて、失敗したら責めこそすれど、それをやるためのアドバイスなんてないし、失敗してもフォローなんてしない。

脱落者を労うくらいなら眼の前の敵を叩き潰すことに集中する。

あの子の行動では、黒森峰の副隊長も西住流の後継者も務まるまい。

みほ「撃ち方用意!」

それに、勝利の瞬間を自らの引き金で、というエゴがないのも強い。

そうなれるとは、思わないけど。

でも、もしその生っちょろいスタイルで、プラウダに勝つようなことがあれば。

あのエゴ丸出しで、全て一人で仕切り、圧倒的なパワーを誇る連中を上手く使役するカチューシャが、真逆の存在であるあの子に敗れるようなら。

あの子が――西住流の対局の存在として、決勝の場に、現れてくれるなら。

エリカ「……変ね、まったく」

エリカ「あの子は嫌いだし、ナメてるところなんて嫌悪すらしているはずなのに」

ズドォォォォォォン

エリカ「どうしてこんなに――――胸が高鳴るのよ」

700 : 以下、名... - 2017/02/28 01:32:00.92 9daAtvKxo 440/872


エリカ「着弾は……同時?」

エリカ「勝敗は――――」

『……大洗女学園の勝利!』

ワァァァァァァァァ

エリカ「……よっし」 グッ

エリカ「……」

エリカ「……いやいやいや、そんな大喜びするもんじゃあないっての」


701 : 以下、名... - 2017/02/28 02:02:15.89 9daAtvKxo 441/872


「やりましたね!」

沙織「すごーい!」

エリカ「まったく、いちいち大はしゃぎしちゃって」

エリカ「ま、常勝である私達は優勝の瞬間までもあくまでクールに振る舞うのだけれど」 フフン

優花里「すごいです西住殿!」

沙織「やったあ!」 ガバッ

エリカ「ちょ、ば、何抱きついてるのよ!」

エリカ「戦車道は淑女の嗜みなのよ!?」

エリカ「な、なにをそんなベタベタと!!!」

「よくやったぞ!」

エリカ「アンタは何なのよもう!」

エリカ「あーいらいらするわ」

702 : 以下、名... - 2017/02/28 02:55:43.42 9daAtvKxo 442/872


カチューシャ「折角方位の一部を薄くして、そこに惹きつけてぶっ叩くつもりだったのに」

カチューシャ「まさか突破できるなんて思わなかったわ」

みほ「私もです」

カチューシャ「は?」

エリカ「ま、あの素人集団で出来るなんて思わなかったでしょうよ」

エリカ「……そのくせに平然と仲間を信じて突破しようとするなんてね……」

エリカ「邪道だけど――認めるわ」

エリカ「あんたのそういうとこを、きっと、隊長は評価していた」

エリカ「あの人は誰より真面目で誰より西住流に忠実に生きているけど、それでも他流派を客観的に評価できる人だったから」

エリカ「多分、見てたら、アンタのことを評価してたと想うわ」

エリカ「でも――」

エリカ「アンタの腕は認めてあげても、絶対に、アンタのことは認めない」

エリカ「私は――――否! 黒森峰は、西住流派は、そんなの絶対認めないッ」

エリカ「決勝戦で、私がアンタを否定してあげるわ」

エリカ「認めたくないから逃げるように払いのけるんじゃあない」

エリカ「認めたうえで、上をいくために、あんたを叩き潰すのよッ」

703 : 以下、名... - 2017/02/28 03:00:49.97 9daAtvKxo 443/872


エリカ「……受け入れちゃえば少しだけスッキリするけど、でもやっぱりまだモヤモヤはするわね」

エリカ「それでもいいわ」

エリカ「やりたいことが出来たんですもの」

エリカ「隊長という背中に追いつきたい」

エリカ「その道程に、越えなきゃいけない大きな壁として、あんたがいるって認めたくなかった」

エリカ「でも、今は」

エリカ「敵に回ってくれたおかげで、認めることが出来る」

エリカ「……楽しみだわ」

エリカ「アンタを、決勝戦で叩き潰すのが」

エリカ「そのために、あのいけ好かない聖グロの連中を叩き潰すのが!」

704 : 以下、名... - 2017/02/28 03:05:34.93 9daAtvKxo 444/872


みほ「たまたま上手くいっただけにすぎません」

みほ「次にやったら――多分勝てません」

カチューシャ「?」

エリカ「そうやって、無自覚に煽るところも、ムカつくだけの謙遜も、相変わらずみたいね」

エリカ「ほんと、心の底から嫌いだわ、あんたのことが」

エリカ「……」

エリカ(だけど、それ以上に――)

エリカ「……」

エリカ「あんたのこと、好きだったのかもしれないわね……」

705 : 以下、名... - 2017/02/28 03:11:52.26 9daAtvKxo 445/872


エリカ「私に無いものを持っていて」

エリカ「隊長の横が誰よりも相応しくて」

エリカ「……アンタがもうちょっと、私の敬愛する西住流の後継者に相応しいヤツだったら、きっと仲良くなれてたでしょうね」

エリカ「いや……」

エリカ「ひょっとすると、少しは、仲が良かったのかもね」

エリカ「私がアンタに、似合ってもいない理想を求めてさえいなければ、今頃は、まだ――」

エリカ「……」

エリカ「さようなら。私が敬愛した隊長の妹さん」

エリカ「さようなら。私が目指した隊長のパートナー」

エリカ「さようなら。親友になれたかもしれなかった人」

エリカ「……さようなら」

エリカ「アンタはもう、この世には実在しない」

エリカ「受け入れたわ」

エリカ「居るのは、認めたくない才能に満ち溢れ、共に歩みたかった道に唾を吐きかけた最大の敵」

エリカ「ナメてかかれるような雑魚なんかじゃない、本気で倒さねばならない宿敵ッ」

エリカ「それでも私は、アンタを認めてなおも認めたくない」

エリカ「私は私の信念のために、アンタを、アンタ達を、見下し続けてやるわッ……」

エリカ「そのためにも――」

エリカ「決勝戦では、圧倒的戦車のスペック差を用いて、情け容赦なく磨り潰すッ」

エリカ「誰より強いアンタを見下すためにッ!」

エリカ「決勝の舞台を、西住みほの公開処刑の場に変えてやるわッ!!」

706 : 以下、名... - 2017/02/28 03:12:53.96 9daAtvKxo 446/872







 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

708 : 以下、名... - 2017/02/28 03:18:10.51 9daAtvKxo 447/872


しほ「これより、逸見エリカの公開処刑を始める」

エリカ「えっ」

ワァァァァァァァァ

エリカ「えっ」

しほ「何か、言い残すことはある?」

エリカ「待ってくださ……えっ」

エリカ「何か起きて動かないと思ったら後手に縛られ正座させられ……え???」

しほ「そうね、腹を切るにはロープを切らないといけないわよね」

エリカ「いやその」

しほ「安心しなさい、上手く斬れなくても、きちんと介錯してあげます」

エリカ「お願いします待ってくだs」

しほ「学校中の生徒が観客席から見ているんですよ」

しほ「せめて恥ずかしくのない最期を迎えることを期待しています」

エリカ「話を聞いて」

719 : 以下、名... - 2017/03/07 01:33:25.78 rtyIBDIMo 448/872


エリカ「あ、あの!」

エリカ「本当に何でこんなことになるか分からないんですけど」

しほ「この期に及んで、何がいけないのかすらわからないとは……」 ハァ

エリカ「ていうか、現代日本で切腹に至ることなんてほぼほぼ0ですよ!?」

しほ「戦車道は、古来より伝わる乙女の道」

しほ「その道には当然、由緒正しき責任のとり方というものがあるのです」

エリカ(くっ……なんて時代錯誤な……)

エリカ(まあ、時代錯誤なほどの伝統が好きで入学したんだけど……)

エリカ(……だから、簡単に伝統を覆せないのは分かっている)

エリカ(それならば!)

エリカ「確かに戦車道という観点から見ればそうかもしれません」

エリカ「ですが!」

エリカ「偉大なる黒森峰にはゲルマンの魂が宿っています!」

エリカ「我が校に眠る魂に背き、日本の伝統にのみ従ってもよいものでしょうか!」

エリカ「ここはドイツの戦車道の文化を参考に……」

しほ「逸見エリカ副隊長」 ギロリ

エリカ「ひっ」 ビクッ

エリカ「は、はい……」

しほ「ここは日本であって、ドイツではありませんよ」

エリカ「分かってますよド畜生」

720 : 以下、名... - 2017/03/07 01:37:16.03 rtyIBDIMo 449/872


しほ「ド畜生……?」

エリカ「しまっ……!」

エリカ「ち、ちがうんですこれは……」 アワアワ

エリカ(戦車の時に独り言喋るくせがついちゃったせいで……!)

しほ「……まあいいでしょう」

しほ「我が黒森峰がドイツの文化を取り入れているのは確かです」

しほ「マナーや文化も、一部を取り入れる動きが、過去にもありました」

エリカ「そ、それじゃあ……!」

エリカ(士道不覚悟だかで切腹なんてのは、当時の狂った日本でしかやってなかったはず……!)

しほ「切腹を廃止する流れにも、30年ほど前になったと聞きます」

エリカ(よしッ生き残ったッ)

しほ「代わりにガス室が作られるも、国際大会を出入り禁止にされかけて、慌てて切腹に戻したと聞きます」

エリカ「OG連中アホなんですか?」

721 : 以下、名... - 2017/03/07 02:06:52.37 rtyIBDIMo 450/872


しほ「兎に角、そんな理由で切腹に戻ったのです」

しほ「きちんとガス室とかカラーのベンチとかを撤廃しましたアピールのためにバンバン切腹を推奨したともされています」

エリカ「知りたくなかったそんな暗部……」

しほ「本当ならば、貴方には切腹すら生ぬるい」

しほ「それでもこれまでの貢献度を評価して、切腹させてやろうというのです」

しほ「黒森峰の伝統や作法に唾をはきかけ、そして対戦校のフラッグ車にハンバーグをはきかけるような貴女には、本来なら打ち首が――」

エリカ「知りたくなかったそんな暗部」

エリカ「暗部っていうか恥部……」

エリカ(薄々嫌な予感はしてたけど……)

エリカ(この私が……全国大会の場で、そんな失態を……) クラァ

しほ「恥部で言うなら、試合中に胸を始めとする恥部を散々弄ばれていたことも、はっきり言って死に値する蛮行です」

エリカ「うわあなにそれ死にたい」

722 : 以下、名... - 2017/03/07 02:20:49.96 rtyIBDIMo 451/872


しほ「普通の神経なら首をつってもおかしくないことをしたと、ようやく自覚したようですね」

エリカ「穴があったら入りたいです……」

しほ「安心しなさい。せめてもの情け」

しほ「肯定に、貴女が入る大きな穴と、名前を刻める石を用意してあります」

しほ「そして、死にたいという願いを叶えられる道具も」

エリカ「……ありがとうございます」

エリカ「割りと本当に、死にたい気分です」

エリカ「こんな戦車道関係者に生き恥を振りまいて……」

エリカ「……プライドが高い方だという自覚もあります」

しほ「……」

しほ(高い“方”程度の認識なのか……)

エリカ「それでもやっぱり――死ねません」

しほ「……死ぬのが怖いのですか?」

エリカ「違います」

エリカ「死ぬのは、そりゃあ、怖くないわけじゃないですけど……」

エリカ「でも」

エリカ「死ぬことなんかより――このまま終わることの方が、ずっと怖い」

しほ「……」

エリカ「私は……」

エリカ「私はまだ、あの子と決着をつけていないッ……!」

723 : 以下、名... - 2017/03/07 02:41:30.67 rtyIBDIMo 452/872


しほ「……」

しほ「みほ、ですか」

エリカ「……はい」

エリカ「あの子が逃げ出したからこそ、今私は副隊長の座にいます」

エリカ「……決して実力で就けた地位じゃない」

エリカ「だから、私は勝ちたいんです」

エリカ「一度でいい」

エリカ「あの子に、勝ちたい」

しほ「……」

しほ「その想いの行き着く先が、ハンバーグ嘔吐砲と?」

エリカ「眉間の皺がとんでもないことになってますし全然違います」

724 : 以下、名... - 2017/03/07 02:52:52.96 rtyIBDIMo 453/872


しほ「そもそも、いつの間にか戦車道に復帰し、あの子を認めるわけではありません」

しほ「むしろ、あの西住流と掛け離れた試合運びには、失望すらします」

しほ「そんなあの子の影響を受けたというのなら、破門お已む無しでしょう」

エリカ「……ッ」

エリカ(普段の厳格で恐ろしい師範とは違う……)

エリカ(時折見せる、厳しい中にも優しさがある師範とも違う……)

エリカ(愛する門下生に、身内に向けるものとは違う、余所行きの顔……)

エリカ(冷徹で他人行儀な、縁を切るべき相手に向けられる言葉……)

エリカ(見も毛もよだつ。ぞっとする。吐きそうだわ)

エリカ(でも)

エリカ「お言葉ですが……」

エリカ「あの子に負けたくない、という意味では、確かに意識をしています」

エリカ「きっと、出会った時からそうだと思います」

エリカ「でも……」

エリカ「私が西住流を捨て、邪道に走ることなんてありません」

エリカ(ああ。そうよ)

エリカ(実力じゃあ、遠く及ばなくても9

エリカ(血がつながっていなくとも)

エリカ(例え、周りになんと言われようとも)

エリカ「私は、黒森峰の副隊長にして、誇り高き西住流の門下生」

エリカ「私の道は、後にも先にも、この道だけですッ……!」

725 : 以下、名... - 2017/03/07 03:34:53.05 rtyIBDIMo 454/872


しほ「……」

しほ「西住流の看板を背負い、黒森峰のパンツァージャケットを着る以上、伝統からは逃れられない」

しほ「腹を切らずに終わりにはなりません」

しほ「……しかし」

しほ「もしも、パンツァージャケットを脱ぎ捨て、黒森峰の戦車道と関わりを絶つというのなら、特別に許すつもりでした」

エリカ「……」

しほ「腹を切るか、黒森峰の戦車道を諦めるか」

しほ「2つに1つ」

エリカ「……」

エリカ「……腹を切るか、戦車道をやめるかすれば、許していただけるんですね?」

しほ「ええ」

しほ「戦車乗りに二言なし」

しほ「素直に戦車を降りるのなら、醜態を全て水に流し、学内で会っても微笑みくらい浮かべましょう」

エリカ「分かりました」

エリカ「……このお腹、切らせて頂きます」

726 : 以下、名... - 2017/03/07 03:38:11.61 rtyIBDIMo 455/872


しほ「なっ……!」

エリカ「よかったです……“腹を切って死ぬ”ことが条件じゃなくて」

エリカ「腹を切りさえすれば、許してもらえるんですよね」

しほ「……」

しほ「これだけの観客がいるのです、軽く先端を刺す程度では、収まりませんょ」

エリカ「……でしょうね」

エリカ「それでも――」

エリカ「お腹を切っても、生き残る可能性はあります」

しほ「……戦車を降りれば、その確率は100%」

しほ「それでもなお、腹を切ると?」

エリカ「……死にますよ」

エリカ「西住流を追い出され、戦車に乗れなくなった日には、“逸見エリカ”は死んでしまいます」

エリカ「西住流も戦車道も、そして黒森峰も、“逸見エリカ”が生きていくのには必要不可欠なんです」

エリカ「だから――切ります」

エリカ「“生きる”ためにッ」

728 : 以下、名... - 2017/03/07 04:21:54.19 rtyIBDIMo 456/872


マッターーー!!

しほ「!?」

観客「あれは……」

まほ「黒森峰戦車道チーム、西住まほ」

小梅「同じく、赤星小梅!」

まほ「逸見エリカの助命の単願に参りました」

しほ「……」

まほ「本当は分かっていらっしゃるのでしょう?」

まほ「エリカが、誰よりも――」

まほ「下手をすれば、すでに指導の立場にいるような西住流の者よりも、西住流を体現しようとしていることを」

まほ「そして、彼女の力が、黒森峰の捲土重来には必要であるということを」

しほ「……」

しほ「物事には、責任が生じるものよ」

しほ「そして、それは誰かが取らねばならない」

しほ「……副隊長を失うのが痛手だからと、隊長を失うような愚行を犯させるつもりはないわ」

まほ「……そうでしょうね」

まほ「誰かが責任を取らねばならない」

まほ「とはいえ、私が責任を取るわけにもいかないでしょう」

まほ「かといって、誰かに責任を取れと言うことは、出来ませんでした」

まほ「だから、到着が遅れました」

小梅「……私でよければ、いつでも身代わりになります」

小梅「元より、最初に黒森峰に泥を塗ったのは私ですから」

小梅「それと――」

逸見車装填手「逸見さん!」

逸見車通信手「こうなったのは、私達のせいだもの……」

逸見車砲手「貴女一人に責任をおっかぶせるわけにはいかないわよね!」

逸見車操縦手「責任なら、私達が」

エリカ「貴女達……」

まほ「それに、これには已むを得ない事情があります」

まほ「本来なら、隠したかったかもしれないが――全員揃って戦うためだ」

まほ「……話してしまってもいいか?」

エリカ「……」

エリカ「はい」

まほ「……すまないな」

しほ「……その事情とやらを、一応、聞いてあげましょう」

まほ「ありがとうございます」

まほ「聞いて下さい。エリカの、病気についてを――」

734 : 以下、名... - 2017/03/10 02:11:56.73 lkpprBuNo 457/872


まほ「……と、いうことなのです」

しほ「なるほど」

しほ「何かの病気なのか、ある日突然、意識を失ってしまうことがあると」

まほ「はい」

しほ「その際は呼吸も止まり、自らの意思では動けなくなると」

まほ「はい」

しほ「そして、そのときに体を弄られると、それに沿って行動してしまう……と」

まほ「はい」

まほ「恐らく体に刺激が加わることで、特定の反射行動に至るものかと」

しほ「……」

しほ「正気……?」

エリカ(かつて見たことがないくらい困ったような顔をしているし、素で困ってる……)

735 : 以下、名... - 2017/03/10 02:29:05.49 lkpprBuNo 458/872


まほ「ええ、我々は本気です」

まほ「……私が、こんな場面でくだらない嘘を吐いたりはしないことを、ご存知でしょう」

しほ「……そうね」

しほ「そもそもこんな意味の分からないことを言い出すようでもなかったのだけれど……」

エリカ(未だかつて見たことないくらい弱々しくなってる……)

まほ「それに、嘘をつくならもう少しマシな嘘をつきます」

まほ「それこそが、この信じがたい話が本当だという根拠です」

しほ「なるほ……うーん…………?」

エリカ(めちゃくちゃ困ってる……)

736 : 以下、名... - 2017/03/10 03:17:40.27 lkpprBuNo 459/872


まほ「……それでも信用出来ないというのなら、時間を下さい」

まほ「また発症したときに、その姿をお見せいたします」

エリカ「えっ」

しほ「……」

しほ(見せられても困る……)

しほ「まあいいでしょう」

しほ「切腹は文化とはいえ、大事な準決勝前に流血を見て気分を悪くする選手に出られても困る」

しほ「電気椅子が届かなかったが故に、何らかの処分が必要と考え切腹と戦車道をやめるとで二択を迫るつもりでしたが……」

しほ「真偽が分かるまでの謹慎とします」

まほ「よかった……」

エリカ「……」

エリカ「隊長、ありがとうございます」

エリカ「……」

エリカ「ですが――」

エリカ「謹慎を食らうくらいならば、やっぱり、腹を切ります」

まほ「なっ!?」

しほ「!?」

エリカ「私はまだ、泥を塗った汚名を挽回していません」

エリカ「何も、この大会で役に立てていない」

エリカ「次の聖グロリアーナとの戦いは、私にとって、隊長の横で戦うためには避けては通れないんですッ……」

エリカ「意地でも、その試合から降ろされるわけにはいきませんッ」

しほ「……」

737 : 以下、名... - 2017/03/10 04:35:17.83 lkpprBuNo 460/872


逸見車砲手「き、謹慎なら、代わりに私達が!」

逸見車操縦手「そうですよ!」

逸見車操縦手「結果的に邪道をしてしまったのは、私達のせいなんですし……」

エリカ「あ、あんたたち……」

逸見車通信手「私達が乳首のイグニッションを入れなければこんなことにはなってなかったんです……」

逸見車装填手「責任をおうべきは、乳首ッションを入れた私達です!」

逸見車砲手「乳首を攻められた逸見さんは、むしろ被害者なんです!」

逸見車操縦手「乳首ッションの責任は、私達が!」

エリカ「あ、あんたたち……」

まほ「一瞬にして同じ言葉に込められるニュアンスが変わったな……」

しほ(頭が痛くなってきた……)

738 : 以下、名... - 2017/03/10 04:44:55.24 lkpprBuNo 461/872


小梅「そういうことなら、責任は私にもあります」

小梅「情報を隠していました」

まほ「それに、エリカ抜きで早々に決着をつけられなかったことも、恥という点では同じ」

エリカ「赤星……隊長……」

逸見車砲手「謹慎が必要なら、私がやります」

逸見車操縦手「足りないなら、車の他のメンバーが謹慎をします!!」

逸見車通信手「私達だって、同じ戦車に乗って、命を預けあってるんです」

逸見車通信手「このくらいは……!」

逸見車装填手「その代わり、逸見さんは、試合に出してあげてください」

逸見車装填手「人間性は最低だけど、その指示の的確さは誰もが認めるところです」

逸見車装填手「きっと、他の戦車で指示を出すだけでも、役に立ってご覧に入れます!」

エリカ「みんな……」

しほ「……」

小梅「折角だし、一緒に乗る?」

黒星「うちならいつでも歓迎しますよ」

ブロッケン「お前らばかりにいい格好させるかよ」

まほ「これが友情パワーか……」

739 : 以下、名... - 2017/03/10 04:50:32.14 lkpprBuNo 462/872


まほ「何もしない、というわけにはいかないことは分かります」

まほ「ですが、彼女達はこう言っています」

まほ「それならば、黒森峰のためにも、提案を受け入れるべきではないでしょうか」

しほ「……」

しほ「分かりました」

しほ「その代わり、次の聖グロリアーナ戦で無様を晒した日には――」

エリカ「……分かっています」

エリカ「そのときには、戦車道であろうと命であろうと、棄てられるもの全てを棄てて償います……!」

まほ「エリカ……」

740 : 以下、名... - 2017/03/10 04:54:10.21 lkpprBuNo 463/872


小梅「よかったね、逸見さん」

直下「同乗メンバーが処分を受けたことで、観客たちもさほど文句や野次を飛ばしてこなかったしね」

エリカ「ええ」

エリカ「……」

エリカ(あまり普段口を効かない連中だけど……)

エリカ(いい子たち、なのかもしれないわね……)

まほ「しかし……大丈夫なのか?」

エリカ「あれほど大口を叩いて……ということですか?」

エリカ「大丈夫です」

エリカ「……勿論、100%の保証なんてありません」

エリカ「でも私は、120%役に立てると豪語できる私でありたい」

エリカ「安定して勝利する、強い黒森峰の一員でありたいッ」

まほ「エリカ……」

エリカ「だから隊長も、見ていて下さい!」

エリカ「普段と違うチームの戦車に混ざっても、絶対、役に立って見せますから!」

まほ「……」

まほ「そうじゃなくて、病気が発症しないのか?ということなんだが……」

エリカ「…………」

エリカ「!!!!!」

まほ「失念していたのか……」

746 : 以下、名... - 2017/03/18 01:47:35.51 72N+ATTNo 464/872


エリカ「そ、それは、その、だ、大丈夫ですよ!」

エリカ「ほら、その、なんていうか……」

エリカ「絶対にならないぞー的な、そういう、気合的なやつで、こう、ほら!!」

小梅「わぁ、ふわっふわした対策」

まほ「それだと今までは病気にならないように気合を入れてなかったように聞こえるが……」

エリカ「そ、そんなことは……」 アタフタ

エリカ「と、とにかく、なんとかします」

エリカ「それだけは……絶対に」

エリカ「命にかえてもッ……」

ブロッケンJr「はっはー、よく言った!」 バシバシ

直下「最近アレだったけど、やっぱり副隊長様は根拠がなくても偉そうに自信満々じゃないと調子でないもんねぇ」

小梅「うん、みんなでサポートするし、聖グロ戦、絶対に勝とうね!!」

747 : 以下、名... - 2017/03/18 02:49:04.13 72N+ATTNo 465/872


エリカ「」

小梅「……?」

小梅「逸見さん?」

エリカ「……った」

まほ「ん?」

エリカ「刺さった……」

まほ「????????」

エリカ「どこかのアホが背中叩いた時に、さ、刺さったあああああああああナイフぁああああああああああ!!!」

小梅「うえええええええええええええええええええ!!???」

まほ「な、なんでずっと腹につきつけてたんだ!!!」

エリカ「だ、だだだだって、覚悟示す場面だし、こう、見栄えっていうか見えっていうか……」

直下「痛くないの、それ……?」

エリカ「ちょ、言われたら痛くなってきたじゃないの!!」

まほ「ああ待てエリカ、抜くな、抜いたら血が出るかもしれない!」

まほ「ど、どうすればいいのか、ここはこういう場に慣れているであろう責任者に指示を――」

しほ「……」

まほ「うわぁマジで刺すのかよ引くわみたいな顔してるーーーーーーーーーーーっ」 ガビーン

748 : 以下、名... - 2017/03/18 03:11:25.24 72N+ATTNo 466/872


エリカ「うおおおおおお……」

エリカ「あ、あの、お腹ちょっと切れたし、やっぱりさっきの処分はなしには……」

しほ「……」

しほ「もうちょっと潔かったならともかく、そこまで喚かれたうえに自ら無様に嘆願をされても……」

エリカ「ううううう……」

エリカ(こ、こんな理不尽な痛みに襲われるなら、いっそ草や木に生まれたかった……!)

エリカ(特殊カーボンのコーティングが恋しいっ……!)

749 : 以下、名... - 2017/03/18 03:12:13.82 72N+ATTNo 467/872







 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

750 : 以下、名... - 2017/03/18 03:15:26.59 72N+ATTNo 468/872


エリカ「……確かに、ナイフじゃ傷つかない特殊カーボンを羨んだけど……」

エリカ「別にまた入れ替わりたいってわけじゃなかったのに……」

エリカ「……はあ」

エリカ「当然試合なんてあるわけないし、授業か放課後まで暇そうね……」

エリカ「朝練とかしてるのかしら……」

エリカ「……」

エリカ「うう、今は傷なんてない体なのに、お腹がじんじんする気がする……」

ガラガラガラガラ

エリカ「……っと、自動車部の連中かしら?」

みほ「……おはようございます」

エリカ「……っ!」

沙織「ほんとに毎朝挨拶してるんだ!」

みほ「うん……そうすれば、またお話出来るかもって」

エリカ「……」

エリカ(あれ……アンツィオん時に使ってた盗聴用の……)

751 : 以下、名... - 2017/03/18 03:51:12.64 72N+ATTNo 469/872


優花里「うう、私もⅣ号とお喋りしてみたかったです……」

エリカ(願い下げだわ)

みほ「……」

みほ「本当は、ちょとだけ、自分一人の秘密にしようかな、なんて思っちゃったりもしたんだ」

みほ「だけど……」

みほ「私にとって戦車は、嫌いになったはずなのにやっぱりどこか傍にいると安心しちゃう、大切な存在だから……」

みほ「同じくらい大切な友達にも、紹介したいなって」

麻子「いい話風にしてるけど、字面だけ聞くとホラーだな」

沙織「もう、麻子!」

麻子「……まあ、聞こえないだけで、何か喋っていてもおかしくはないと思うけどな」

麻子「無性に蹴りを入れたくことがあるしな」

沙織「なにそれこわい」

752 : 以下、名... - 2017/03/18 04:07:53.27 72N+ATTNo 470/872


みほ「……これからもきっと、戦車に語りかけちゃったりするんだろうな、なんて思うんだけど、でも……」

みほ「前を向くために、一旦お別れ」

みほ「うつむいて、戦車を見ることしかできなかった昔とは違うから……」

みほ「顔をあげて、みんなのことを見ながら、お姉ちゃんたちに、勝たなくちゃいけないから……」

みほ「もう、聞こえるかも分からない声に固執したりしない」

みほ「そんなことで、あれこれ考えて泥沼にハマったりもしない」

みほ「聞こえなくたって、傍にいてくれるだから」

みほ「だから――」

みほ「集中して、決勝戦――そこに、全てを賭けますッ」

沙織「……うん! そうだね、みぽりん!」

「お話に拘らなくても、絆は深まっていきますしね」

麻子「……寝るか、今から。全員戦車で」

沙織「もー麻子!」

優花里「戦車を愛する気持ち、よくわかります!!」

優花里「でもだからこそ、愛しているからこそ、少し距離を取ることも大事ですもんねえ」


続き
エリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」【4】

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