ワアァァァァァ……!
実況『ついに始まりました、世界最強トーナメント!』
実況『トーナメントを勝ち抜き、世界最強の称号を手に入れるのはいったい誰だ!?』
実況『今回覇を競うのは、厳しい予選を勝ち抜いた、ご覧の八名となります!』
大男「ガハハハハ! どいつもこいつも叩き潰してやる!」
殺人鬼「俺は戦いに来たんじゃねェ……殺しに来たのさァ!」
少年剣士「この剣で優勝してみせる!」
女騎士「騎士の剣技、味わわせてくれる!」
魔術師「魔法こそが最強であることを証明してみせましょう」
フード「……」
老人「ほっほっほ、戦いの場に出るのは久しぶりじゃのう」
剣士「もちろん、連覇を狙っていますよ」
元スレ
大男「ガハハ、一回戦の相手はガキかよ! 楽勝だな!」少年剣士「甘く見るなよ……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1545233660/
実況『厳正なる抽選の結果、組み合わせは以下のように決まったァ!』
┌─ 大男
┌─┤
│ └─ 少年剣士
┌─┤
│ │ ┌─ 老人
│ └─┤
│ └─ 女騎士
─┤
│ ┌─ フード
│ ┌─┤
│ │ └─ 剣士
└─┤
│ ┌─ 殺人鬼
└─┤
└─ 魔術師
控え室――
少年剣士「ふんっ、ふんっ」ブンッブンッ
大男「ガハハハハ!」ズイッ
少年剣士「!」
大男「おいおい、一回戦の相手はこんなガキかよ! 楽勝だな! 五秒で終わっちまいそうだ!」
少年剣士「ボクを甘く見るなよ……」
大男「甘く見る? 違うな、的確な戦力分析ってやつだ! ガハハハハハッ!」
少年剣士「……でくのぼう」ボソッ
大男「ンだとコラァ!」
大男「この場で殺してやろうか、ガキ! あぁん!?」ガシッ
少年剣士「……やってみろ!」
女騎士「やめろ、大人げないぞ!」
魔術師「その通り、勝負は試合場でつければよいのです」
大男「……ちっ!」パッ
殺人鬼「なんでえ! やらねェのかよ、つまんねえ!」
老人「ほっほっほ、楽しい大会になりそうじゃわい」
剣士(フン、今のうちにせいぜいはしゃいでろ。お前たちの見せ場は今だけなのだから)
フード「……」
試合場――
ワアァァァァァ……!
実況『一回戦第一試合を開始します! 対戦カードは大男vs少年剣士!』
実況『ご覧のように体格差は歴然! 果たして少年はこの体格差を埋められるのか!?』
審判「両者、構えて!」
大男「へっへっへ」ザッ
少年剣士「……」チャキッ
審判「始めっ!!!」
ギュンッ!
大男(は、速っ――!?)
少年剣士「だっ!」シュバッ
ギィンッ!
大男「ぐっ!?」
実況『少年剣士、鋭い斬り込み! これを大男、なんと腕でガードォ! なんという豪腕!』
大男「ぬおおおおっ!」
ブオンッ!
少年剣士「……くっ!」サッ
実況『返しの右ストレートォ! これを少年剣士、かろうじてかわしたァ! 素晴らしい反応です!』
大男「……」バッ
少年剣士「……」バッ
大男「……すまなかったな」
大男「さっきの“ガキ”だの“楽勝”だのって言葉は取り消す……失言だった」
少年剣士「こっちこそ、“でくのぼう”だなんていってごめんなさい」
大男「……」ニヤッ
少年剣士「……」ニコッ
実況『笑っています! 二人とも笑っている!』
実況『さぁ、ここから――あっ、大男が動いたァ! 右拳を振り上げ――』
大男「ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ドゴォォォォォンッ!!!
ズゴゴゴゴゴ……!
実況『試合場に、直径10メートルはあろうかというクレーターが……!』
実況『しかし、少年剣士、これもかわしております!』
大男「……よくかわしたな」
少年剣士「……!」
少年剣士(この人相手に……接近戦は危険すぎる!)
女騎士「あの……すまないが、棄権したいのだが……」
老人「ワシもやっぱり死ぬなら畳の上がええわい」
少年剣士「だったらァ!」
少年剣士「だあああああっ!」
ビュンッ! ビュンッ! ビュンッ!
実況『少年が剣を振るって、真空の刃を次々飛ばすゥ! こんな技はじめて見ましたァ!』
実況『これが伝説といわれる“飛ぶ斬撃”なのか!』
ギンッ! ギンッ! ギンッ!
大男「……接近戦じゃなきゃ、俺は倒せないぜ」シュゥゥゥ…
少年剣士「だよね……」
実況『大男、仁王立ちィ! 全くのノーダメージッ!』
少年剣士「それなら……闘気斬ッ!」ダッ
ガキィンッ!
大男「ぬ……!」ブシュッ…
実況『防御に使った鋼鉄の豪腕から出血が! さしもの大男も顔をしかめたァ!』
大男「がああああっ!」ブンッ
ドゴォッ!
少年剣士「うげっ――」
ズガァンッ!
実況『しかし、すかさず大男がボディブロー! 少年剣士、観客席まで吹っ飛んだァ!』
実況『勝負は決まってしまったかァ!』
少年剣士「まだだ……!」ヨロッ…
実況『な!? 立ち上がりました! あの小さな体でなんというタフネス!』
大男「俺が殴る瞬間、わざと後ろに飛んで衝撃を逃がしたな?」
少年剣士「うん……横にかわしてたら、脇腹をえぐり取られるところだった」
ワアァァァァァ……!
実況『一回戦第一試合から、なんというハイレベルな攻防でしょうか!』
実況『まさに、最強トーナメントに相応しい戦いッ!』
少年剣士「どうやら、全開でいかなきゃ勝てないみたい」
大男「ああ……俺もそうさせてもらう」
少年剣士「はああああああああああああ……!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……!
大男「ぬおおおおおおおおおおお……!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……!
実況『両者、闘気を高め合っている! 会場全体が揺れるほどの凄まじい気だ!』
魔術師「……」
殺人鬼「……」
魔術師「帰ります」
殺人鬼「自首します」
少年剣士「でえりゃあああああああああっ!!!」
ビュオオオオンッ!
実況『少年剣士が剣を振るうたび、巨大な竜巻が唸りを上げるゥ!』
大男「ぬがあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ドゴォォォォォンッ!
実況『大男が拳を振るうたび、大地に亀裂が走るゥ!』
実況『天才同士の戦い! 否、天災同士の戦いだァッ!!!』
ワアァァァァァ……!
ビュオォォォォォンッ! ザバァァァァァンッ! ドゴォォォォォン!
実況『嵐!』
実況『津波!!』
実況『大噴火ァ!!!』
実況『観客の皆さまは、すみやかに避難なさって下さいィィィィィ!!!』
剣士「ひいいいっ! こんな戦いにこれ以上付き合ってられるかっ!」タタタッ
フード「魔界に戻り魔王様にお伝えしよう……人間界征服は諦めるべきだと」シュンッ
大男「……」チラッ
大男「どうやら、この試合場は俺たちには狭すぎる」
大男「ついてこい、小僧!」
少年剣士「うんっ!」
ギュンッ! ギュンッ!
実況『両者、凄まじい脚力で上空へと飛んだァ!』
実況『二つの光が、まるで流星のように地上から遠ざかっていきます!』
実況『ついに二人は宇宙空間に到達しました!』
大男「どりゃあぁぁぁぁぁっ!!!」
バガァンッ!
少年剣士「たあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
スバンッ!
ドゴォォォォォン! ズガァァァァァン!
実況『星を次々に破壊しながら、宇宙を駆け巡っていく両者!』
実況『膨張を続け、無限の広さを誇るといわれる宇宙も、この二人には狭すぎるのかァ!?』
少年剣士「このままじゃ、いつまでたっても勝負つかないね……」
少年剣士「こうなったらパワー全開ッ!」
カッ!!!
実況『少年の体が巨大恒星のように燃え上がっていく!』
大男「俺も……本気の本気でやらせてもらうぜ!」
大男「俺の筋肉よ……盛り上がれぇ!」
ムキムキィ!!!
実況『あまりの巨大質量に大男の肉体がブラックホール化していく!』
実況『天災同士の戦いは、天体同士の戦いへと更なる高みへ!』
少年剣士「だああああああああああああああああああああっ!!!!!」
大男「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
ドッグワァァァァァァァァン!!!!!
実況『二人の激突は、まさにビッグバンにも匹敵する衝撃ィィィィィ!!!』
実況『私は宇宙が誕生する瞬間を目撃してしまったのかァァァァァ!!!』
試合場――
ヒュルルルルルル…
ドサッ… ドサッ…
実況『大男と少年剣士が、二人とも試合場へと墜落いたしました!』
実況『両者……倒れたまま動きません!』
実況『この場合、先に立ち上がった方が勝者となりますが……!?』
ガバッ ムクッ
大男「ガハハハハハッ!」
少年剣士「えへへへへへっ!」
実況『二人とも全く同時に立ち上がったァ! しかもピンピンしているぞ!』
大男「よーし、やっとこさ準備運動が終わったってとこだな」コキッ
少年剣士「うん! 体が温まった!」
実況『えええええ……!?』
大男「こっからはフィールドを異次元に移そうぜ!」
少年剣士「そうだね! じゃあボクが次元を切り裂くよ!」チャキッ
実況『お前ら、少しは実況する身にもなりやがれェッ!!!』
バキッ! ドカッ!
大男「ぐえっ」ドサッ
少年剣士「あうっ」ドサッ
実況『あ……』
審判「最強トーナメント優勝は……実況!」
ワアァァァァァ……!
― 完 ―