--唯我家
成幸「ふわあ~あ。おはよう、母さん」
花枝「おはよう成幸。あんたまた徹夜してたの?」
成幸「はは、大丈夫だって。しっかり3時間は寝たからさ」
花枝「しっかりって言わないわよそれは。はあ…わかった。じゃあ、これを持っていきなさい」
成幸「なんだこれ…ボウリングの無料券?」
花枝「職場で貰っちゃったのよ。明日は休日だし、これでりっちゃん、ふみちゃんを誘って目いっぱい羽を伸ばしてきなさい」キラキラ
成幸「いや、それより勉強が…」
花枝「い・い・わ・ね?」
成幸「(母さん目がマジだ!)は、はい…」
元スレ
【ぼく勉】成幸 「桐須先生と結婚か…」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1544096645/
水希「ダ、ダメよそんなの! お兄ちゃんとボウリングに行くのは私しかいないってもう私の中で決めて--」
花枝「葉月、和樹」
葉月「はーい」
和樹「ほらほら水希姉ちゃん、この揺れる5円玉を見て見て」
水希「なあんだ。お兄ちゃんは図書館に勉強に行くんだ。ソレナラアンシンダネ…」
成幸「……」
--放課後、教室
成幸「--てことで明日は昼から締め出しをくらうことになってな…」
理珠「何というか…」
文乃「流石はおばさま…ことの持っていきかたが豪快だね」
成幸「しかも夜まで帰って来るなって言われてな…そういう訳で、よかったら明日付き合ってくれないか? あ、もちろん用事があれば断ってくれて構わないぞ」
理珠「わかりました。球技はあまり得意ではないですが協力したいと思います」
文乃「りっちゃん…うん、わかった。私もついて行っていいかな? 成幸くん」
成幸「え? い、いいのか?」
理珠「ええ。成幸さんにはいつも世話になっていますし」
文乃「うん。それにおばさまの言う通り、たまには息抜きも大切じゃないかな」
成幸「すまん緒方、古橋。恩に着る。じゃあ明日昼の2時に集合ってことで」
うるか「ごめーん遅くなっちゃった。ねーねーいま何の話してたの?」
文乃「あ、うるかちゃん」
理珠「お疲れ様ですうるかさん。先ほど成幸さんから(ボウリングに)付き合ってと言われたので承諾したところです」
うるか「つ、付きっ…!?」ガーン!
成幸「あー…うるか?」
うるか「ソ、ソウ…ヨカッタネ。ウン、成幸モリズリンモオ幸セニ。ソ、ソレジャ、今カラ部活ニ行クカラ!」
成幸「ちょっと待て」ムンズッ
うるか「離してー! 部活、部活がー!!」ジタバタ
成幸「お前こないだも同じこと言って逃げただろーが! どこに行くんだよ」
うるか「だ、だって…成幸がリズりんに告白したってことだよね。うんわかってる。私に構わず二人でブルースプリングをエンジョイしてきたらいいよ。応援してるから」グスン
成幸「いいから話を聞け! あと青春はブルースプリングじゃなくてyouthだ」
文乃「とりあえず説明するね…うるかちゃん」
--説明後
うるか「なーんだ。そーだったんだ! もう、人が悪いなリズりんも。ちゃんと説明してよー」パアアッ
理珠「確かに主語を明確にしなかった点については謝りますが…早合点したうるかさんも大概では?」ジロリ
うるか「まー細かいことは言いっこなし。ねえねえ成幸。私も行っていいかな?」
成幸「そりゃもちろん構わんが…うるかは母さんと家で面識がなかっただろ。悪いがチケットはもう無いぞ」
うるか「大丈夫大丈夫。だってそのチケットあたしも持ってるから」ゴソゴソ
成幸「は?」
うるか「ほら、二枚。ママからもらってさ。その…つ、使わないのも勿体ないし、せっかくだから成幸を誘おうかな~と…思って」カァア
成幸「そ、そうか…」テレッ
文乃(乙女だねえ、うるかちゃん)(=v=.)
理珠「ではうるかさんも参加ですね。この4人で全員でしょうか?」
成幸「とりあえずそうなるかな。じゃあ明日2時に現地集合ってことで」
理珠「はい」
文乃「うんっ」
うるか「オッケー!」
--唯我家
カリカリカリカリ
カリカリ… ~♪♪
成幸(電話か。誰だろう…って先輩?)ピッ
成幸「もしもし」
あすみ「もしもし。悪いな勉強中に」
成幸「(何でわかるんだ…)あ、いえ大丈夫です。何かあったんですか?」
あすみ「あーまあ、な……ちょっと親父の奴がまた余計な世話を焼きやがって」
成幸「はあ」
あすみ「ボウリングの無料券を貰ったから彼氏と明日行って来いって言うんだわ。すまんが後輩、明日どうにか時間作れねーかな?」
成幸「(凄い偶然だな…)あ、大丈夫です。ていうか実はですね--」
--ボウリング場
成幸「…というわけで先輩も来ることになったんだ」
あすみ「ようお前ら。全員で会うのは文化祭以来だな」ニッ
理珠「こんにちは小美浪先輩」
文乃「お久しぶりです」
うるか「今日はよろしくお願いします」
あすみ「ああ、今日は気晴らしも兼ねて楽しむことにするよ。あ、でも」チラッ
成幸「?」
あすみ「1番楽しめるのは後輩かもな。女4人囲ってボウリングデートとか、どこのハーレムだ?」ニマ~
成幸「せ、先輩! 人聞きが悪いですよ!」
あすみ「ひっひっひ、冗談だよ。本気にしてる奴もいるみたいだけどな」チラッ
理珠(……か、考えてみればそうかもしれません)アセアセ
うるか(そ、そうだよね。これだってデートの一種で…ひゃああ~)カァアア
文乃(………意識しない、意識しない)ブツブツ…
成幸(初っぱなからこの人は…)ハア…
あすみ「ま、冗談は置いとくとして、これで全員か? まだチケットが一枚余ってるんだが…」
成幸「そういやうるかも一枚余ってなかったか?」
うるか「あ、私のはママに返しておいたから。せっかくだし誰かいないか探してみようか?」スマホスマホ…
文乃「あ、じゃあその間に皆の飲み物買ってくるね」スタスタ
理珠「では私も文乃を手伝ってきます」スタスタ
成幸「ああ、よろしく…ん?」
真冬「--ご迷惑をお掛けしました……ええ、それでは」
成幸「桐須先生?」
あすみ「ん? ああ、まふゆセンセだな。こんにちは、まふゆセンセ」
真冬「ゆ、唯我くんに小美浪さん? どうしてここに?」
あすみ「ボウリングの無料券を貰ったんで一緒に来たんですよ。まふゆセンセの方こそ、こんな場所に来るなんて珍しいじゃないですか」
成幸「何かあったんですか?」
真冬「不祥事。うちの学園の生徒が夜遅くまでここに入り浸っていたそうだから、話を聞きに…」ハア…
成幸「そうだったんですか」
真冬「ええ、もう済んだから帰るけど、君たちもあまり遅くならないように--」
うるか「駄目だー海っちも川っちも捕まらなかったよ、成幸も誰かーーって、桐須先生?」
真冬「え、ええ。こんにちは武元さん。その…武元さんも唯我くんたちと?」
うるか「はい、たまには息抜きにってみんなで。あ、もしかして桐須先生もボウリングしに来たんですか?」
あすみ「!!(その手があったか!)」
成幸「!!(あいつらと先生の仲を改善させるチャンスかも!)」
真冬「そ、そんなわけないでしょう。私は--」
あすみ(いくぞ、後輩!)キュピーン
成幸(はい、先輩!)キュピーン
あすみ「いやいや、せっかくここまで来たんだし、ボウリングしていきましょうよ。まふゆセーンセ」ニコッ
成幸「ちょうど先輩が無料チケットを一枚持ってるんです」
うるか「えー何それ!? 先生が混ざってくれるなんてチョー面白そう! 一緒にやろーよ! 桐須先生!」
真冬「え? え?」
成幸「誰かもう一人いないか探していたところなんです。せっかくなので先生に参加してもらませんか?」ツカツカ
成幸「今度部屋に行ったら徹底的に掃除させてもらいますから」ボソッ
真冬「~~~~っ!」
--レーン後方。待機スペース
真冬(何でこんなことに…)ムスッ
理珠(何でこんなことに…)ガクガクブルブル
文乃(何でこんなことに、だよ)ガクガクブルブル
あすみ「お前らな…いい加減後輩の背中から出てこいよ」ハア
うるか「おーっし、シューズも履いたし 次はボールボールっと! 桐須先生も一緒に行きましょう!」グイグイ
真冬「ちょ、ちょっと武元さん」
あすみ「…武元の奴すげーな」
成幸「はは…なんか前に先生から水泳でアドバイスを受けたのがきっかけみたいで」
あすみ「ま、センセにとっちゃ良いかもな。二人とも武元の言う通りだ。とっととボール取りにいこーぜ」
成幸「大丈夫だって。今日は遊びなんだし先生だって厳しくしたりしないと思うぞ」
理珠「そ、そうですね…ほら文乃。うどんでも食べて元気を出しましょう」サッ
文乃「うう、さっきお昼ご飯食べたとこなのに…けどおいしい」ズルズルッ
成幸・あすみ((食うんかい))
--ボール置き場
文乃「うわ、りっちゃんのボール12ポンドって、結構重くない?」
理珠「大丈夫です。重い方が倒れやすいと聞きましたので。そういう文乃は5ポンド…随分軽いのを使いますね」
文乃「あはは、あんまり力が無いから。この方が取り回しが楽だし」
あすみ「おー、お前ら選んだかー?」
成幸「あ、はい決まりました。先輩は7ポンドですか?」
あすみ「ああ。アタシの体格じゃこれくらいがベストだな」
うるか「あ、成幸たちも決まった?」
成幸「ああ。うるかたちは?」
うるか「桐須先生にアドバイス貰ったからねー。もうばっちり!」
成幸「うるかが9ポンドで…先生が10ポンドか」
真冬「適度。重い方が当たったときに物は倒れやすいけれど、あまり重くても身体のバランスが崩れてしまうから」
うるか「そうそう。だから実際にボールを持ってチェックし合ってさ。先生すっごい真剣に選んでくれるからびっくりしちゃったなー」
真冬「た、武元さん…!」
成幸「へー。ボール一つとっても重要なんだな、古橋」
文乃「……(えっと…うん。整理すると、だよ)」
文乃…5ポンド
小美浪先輩…7ポンド
うるかちゃん…9ポンド
桐須先生…10ポンド
りっちゃん…12ポンド
理珠「文乃。どうしました…?」
文乃「う、うん! 先生のいう通り、やっぱり体格に合ったボールを使うのは大事だよね。あー最近力がついちゃって。今なら10ポンド! いや12ポンドくらいいけちゃうかなー」ブンブン
あすみ「古橋のやつ、いきなりどうしたんだ?」
成幸「そっとしておいてやりましょう…」
--レーンにて
パッカーン!!
あすみ「いえーい! ストライクでしゅみー!」サッ
うるか「さっすが小美浪先輩! 完全にガーターと思ったのにすっごいカーブですね」パシン
あすみ「ま、学園にいた頃は部活の仲間とよく通ってたしな。昔取った杵柄って奴だ。そういう武元もやるじゃねーか」
うるか「あはは、私も部活帰りにたまに来てたんで。えーっと次は」
真冬「……」スッ
うるか「あ、桐須先生か。が、頑張って下さいね(すっごい真剣)」
真冬「………!」ゴロゴロゴロ
パッカーン!!
あすみ「またストライク…予想はしてたけど、すっげーなまふゆセンセ」タラ-
成幸「……」スッ
あすみ「どうした? 後輩」
真冬「……ふう」スタスタ
成幸「先生」
真冬「唯我くん? まだ君の出番ではないようだけど?」
成幸「先生はボウリングの経験はありますか?」
真冬「皆無。テレビでプロの試合が映っているのを見た程度ね。それが?」
成幸「ちょっと両手を出して、手のひらをこっちに向けて貰えますか?」
真冬「こうかしら?」
成幸「はい。では」パシン
真冬「キャッ! な、何故手を叩くの…!?」アセアセ
成幸「ストライクおめでとうございます」ニッコリ
真冬「…え?」
成幸「その、今は競技じゃなくて、レジャーですから。こういうときは誰かが良い結果を出したら喜び合うんですよ」
真冬「そ、そういうものなの?」ポカーン
あすみ(…ああ、そういうことか。つい気迫に呑まれちまってたけど、そういやセンセってこういう人だったな)ニヤッ
あすみ「セーンセ、やるじゃないですか連続ストライクなんて」パシン
うるか「初めてなのにストライク連発とか、マジですごいです。先生!」パシン
真冬「え、ええ…」
理珠「桐須先生」スタスタ
真冬「緒方さん…?」
理珠「…成幸さんの言う通り、今はみんなでボウリングを楽しむべきかと思いましたので。その…おめでとうございます」パシン
文乃「わ、私もそう思います。ナイスストライクでした」パシン
真冬「……」
理珠・文乃「「で、では…」」
真冬「緒方さん、古橋さん」
理珠・文乃「「は、はい」」
真冬「その、ありがとう……二人とも次の投球、頑張って」ボソッ
理珠・文乃「「--はいっ」」パアアッ
あすみ「…何笑ってんだよ? 後輩」ニヤニヤ
成幸「いえ、気のせいですよ」クスッ
パッカーン!!
文乃「あー、これは…」
うるか「文乃っちスプリットかー。しかも端と端だし、こりゃ難しいかも」
理珠「こういうときはどうするのですか?」
成幸「まーどっちか片方を狙うしかないだろうな」
文乃「どっちか、片方か…」チラッ
文乃(りっちゃんもうるかちゃんも、やっぱり成幸くんと話してる時は良い顔してるんだよね…私はどっちを応援すれば…ううん)
--お前が本当にやりたいこと、俺が全力で応援してるからな。
文乃(あの時から…成幸くんを見る目が少しずつ変わってしまってる気がする。りっちゃんうるかちゃんのこともあって、意識しないようにしてるけど…でも)ズキン
文乃(わからない…どうしたいのか、でも、いずれ選ぶときが来るのかも。このピンみたいに)
成幸「古橋のやつ…凄く集中してるみたいだな」ゴクリ…
文乃(うん…委ねてみよう。私の思いを乗せて、この一投に!)ゴロゴロゴロ
パッカーン!!
成幸「おお! 当たった」
文乃(うん! …え?)
コンッ! コンッ、コン…カンッ! コロン
うるか「す、凄いよ文乃っち! まさか両方倒すなんて」
理珠「片方のピンが転がってもう片方も倒れたのですね。凄いです! 流石は文乃!」
文乃(あああああ! ホッとしたけど、ホッとしたけど! 私は一体どうすればいいのーー!)ズーン
成幸(古橋のやつ、なんで倒したのに落ち込んでるんだ?)
真冬「えっと、この場合手を叩きに行くべきなのよね…」ソワソワ
あすみ「あー、今は止めといた方が良いですよ。センセ」ニヤニヤ
あすみ「…で、次は後輩だな。頑張れよ。もしストライク取れたらハグしてやるからな」ニヤニヤ
うるか・理珠「「!!」」
成幸「せ、先輩! 何を」
うるか「な、成幸! あああああたしもね。ストライク取ったらハグしてあげるから!」カァアア
理珠「成幸さん…私の身体でよかったらどうぞ!」フンス!
成幸「その言い方は誤解を生むから止めろおお!」
文乃「(そ、そこかしこにフラグが…)な、なんか凄いことになってきちゃいましたね」ハワワワ…
真冬「そうね…全く。くだらないわ」ツンッ
文乃(よかった。さすがに先生はまともみたい)ホッ
真冬「………」
真冬(…そういえば、カレエゴにもボウリングの話があったわね)
--俺がストライクを取ったら、クリスセンセーは俺にハグしてくれるかい?
--だ、だめよそんなの! でも…結人くんがどうしてもと言うのなら…
真冬「………」ポワーン
--俺がストライクを取ったら、桐須先生は俺にハグしてくれるんですよね?
--だ、だめよ唯我くん。私たちはあくまで教師と生徒! で、でも……
真冬(…………)カァアア
文乃(…? 桐須先生なんだか嬉しそう。声かけない方がいいのかも)
あすみ「…で、あれだけ盛り上げたのに結局ガーターかよ。しっかりしろよ後輩」ハア…
成幸「あんだけプレッシャー与えといてそれを言いますか!? あんたは」
うるか(いや取れや)ギロリ
理珠「……」プクプクゥ
成幸「(む、無言のプレッシャーを感じる…)で、次は?」
文乃「次はりっちゃんだね」
理珠「はい。頑張ります。ガーター続きの成幸さんには負けません」
成幸「いや、そういう緒方だってさっきガーターだったが…」
理珠「認識が甘いですね成幸さん。先ほどの反省を活かし、うるかさんたちの投球フォームを隅々まで観察していました。もう失敗はしません」
うるか「マジで? リズりんすごい!」
文乃「さすがだね。りっちゃん」
理珠「ではいきます。えいっ!」ゴロゴロ--ゴトン
理珠「……」
成幸「……」
理珠「紙一重といったところでしたね」キリッ
成幸「いやガーターまっしぐらだっただろーが!」
理珠「しかし困りました。これではゲームになりません」
成幸「確かに。転がすだけなのに、なんでか真っ直ぐ行かないんだよな。みんな一体どうやって投げてるんだ?」
うるか「んっと…バッと振りかぶってホイって投げたらパカーンって感じかな」
理珠「なるほど。了解しました」
成幸「わかったのか!?」
理珠「ええ、うるかさんが致命的に教えるのが下手だということは」
うるか「ひどっ!」ガーン!
成幸「古橋は?」
文乃「え? ど、どうかな…多分あんまり考えてないと思う」
あすみ「あたしも感覚で何となくだなー。まふゆセンセは?」
真冬「特に意識はしていないけど…でも」
成幸「でも?」
真冬「指摘。どこがおかしいのかは見ていてわかったわ。ボウリングは再現性を高めるのが肝要。にも関わらず唯我くんはさっきと違う位置から投げているし、緒方さんはボールを投げる直前に手元が狂ってしまっている」
成幸「は、はい(よく見てるんだな、先生)」
理珠「わ、わかりました。とはいえどうすれば…」
真冬「掌をピンに向けたまま投げるよう意識することね。武元さん、二人の前でフォームを見せてあげてもらえるかしら?」
うるか「あ、はい。わっかりましたー!」
ワイワイガヤガヤ
文乃「……」
あすみ「どうしたんだ? 古橋」
文乃「あ、いえ…桐須先生って学校以外じゃ随分イメージが違うんだなって」
あすみ「ああ…ま、学校でのインパクトが強烈だからな。あたしもああいう一面があるって知ったのはつい最近だ」
文乃「それまではどんな印象だったんですか?」
あすみ「お前や緒方と一緒だよ。ビビるまではいかないけど、口うるさい先生だなって思ってた。人が決めた進路に最後の最後まで反対してきたしな」
文乃(う…目に浮かんできそう)
あすみ「で、結果は不合格。どん底の気分で報告に行ったら、ほら見たことかとまた小言だ。さすがにムカついてきてな。何か言い返してやろうと前を向いたら--先生の顔…すげー悲しそうにしてたんだ」
文乃「…え?」
あすみ「あの時の先生が何を思ってたのかはわからねー。けど先生があれだけ最後まで反対してたのは、あたしの事を真剣に心配していたんだってことは理解できたよ」
文乃「そうですか……」
文乃(…うん)スクッ
あすみ「なんだ、トイレか?」
文乃「違います! 私も桐須先生に教えてもらおうかなと思って…あの、桐須先生!」スタスタ
あすみ「………」ニッ
文乃「こ、こうですか?」
真冬「ええ。振り子の動きをイメージしながら腕を前に出していくの」
文乃「(わかりやすいし丁寧に教えてくれる。成幸くんやうるかちゃんが言ってたように、ただ冷たいだけの人じゃないのか…な)こ、こんな感じでいいですか?」
真冬「ええそうね。もう少し脇を締めて--」
うるか「ほらリズりん、また脇が空いてるよ」
理珠「は、はい。しかしあまり脇を締めると胸が腕にぶつかってしまって」
うるか「そんな極端にしなくても大丈夫だって。てかそんなに締めたらあたしだって当たっちゃうよ」ハハハッ
文乃「……」スカッ…スカッ…
真冬「そ、そこまできつく締めなくても大丈夫よ古橋さん。ところで何故涙を?」
文乃「気にしないで下さい。無抵抗な自分の身体に、ほんの少しだけ、憂いを覚えただけですので…」キラリ
パッカーン!!
理珠「わ、わわ!? また倒れました。しかもたくさん」
うるか「7本だね。やるじゃんリズりん。成幸も普通に倒れるようになったし、十分ゲームになってたよ」グッ
あすみ「とりあえずこれでこのゲームは終わりだな。スコア見てみようぜ」ピッ
うるか 157
あすみ 182
まふゆ 205
ふみの 118
なりゆき 93
りず 71
あすみ「まあ順当なところだな。確かあと1ゲーム無料でできるんだっけか?」
成幸「そうですね」
あすみ「じゃー次はペアを組んでやってみようぜ。1位と6位、2位と5位、3位と4位が組んで、それぞれの成績を合計する。1番スコアが高かったペアが優勝だ」
成幸「面白そうですね。やりましょう」
あすみ「(掛かったな)で、もちろん優勝ペアには賞品を付けないとな。そうだな…後輩に何かお願いできる権利とかってのはどうだ?」ニヤリ
うるか・文乃・理珠・真冬「「「「!!」」」」
成幸「ちょ、ちょっと! いきなり何言ってんですか!? 先輩!」
あすみ「そりゃ、アタシも含めて、ここにいる女は全員後輩と関わりが深いんだし、賞品としては妥当じゃねーか? あ、ちなみにアタシが勝ったときはお店のオプションをフルコースで振る舞ってやるから、張り切って投げろよ」ニヤニヤ
うるか・文乃・理珠「「「!!」」」
成幸「い、いやそんなこと言われても…俺が賞品とかみんなに却って迷惑ですよ。だよな? うるか」
うるか「……」ゴゴゴゴ
成幸「……うるか?」
うるか「し、仕方ないなー! 先輩が決めたルールだし、従わないわけにはいかないもんね! よーし文乃っち、本気出して、絶対勝とう!」
文乃「あ、う、うん」
理珠「わ、私も。お二人には負けません!」フンス
成幸「えええええ!?」
あすみ「みんな乗り気みたいだな」ニヤニヤ
真冬「……」
成幸(い、いやまだだ。先生…先生なら!)
成幸「せ、先生。生徒を賞品に差し出すなんて行為、先生は許さないですよね?」
真冬(……)ポワワン
--いつも悪いわね、唯我くん
--いえ、ボウリングで負けてしまいましたから仕方ありません。でもエアコンのフィルター掃除なら俺が
--このくらいなら問題無いわ。いいから君は椅子を支え--きゃっ!
--危ない、先生!
--あ、唯我…くん
--良かった。今度は無事に受け止めることができましたね。全く。俺がいないと危なっかしい先生なんですから
真冬「……唯我くん」コホン
成幸「先生…」
真冬「許容。あくまでゲームの一環であるならば問題は無いわ」キリッ
成幸(ええーーー!?)ガーン
あすみ「決まりだな。じゃあセンセは緒方と。武元は古橋と。でアタシは後輩とだな。わかりやすいように投げる順番もペア同士にしておくからな」ピッピッ
ふみの
うるか
あすみ
なりゆき
まふゆ
りず
あすみ「これでOKと。じゃあ頑張ろーぜ後輩。もし手抜きしやがったらきっついお仕置きが待ってるからな」
成幸「ああああ…」プルプル…
--1時間後
成幸「それっ!」ゴロゴロゴロ
パッカーン!
うるか「うええっ!? 成幸が最後にストライク取った 」
文乃「すごいよ成幸くん!」
あすみ「やるじゃねーか後輩」
成幸「はは…緊張しました。これで逆転。どうにかうるかたちには勝ったな」ピース
文乃「残念だったね。うるかちゃん」
うるか「ううっ…悔しい(でもカッコイイ成幸が見られたから幸せかも…)」
あすみ「後輩が思ってた以上に活躍してくれて助かったな。ったく…そんなにあしゅみぃちゃんのオプションフルコースを堪能したかったのか? このスケベ」ニヤニヤ
成幸「どっちにしてもからかう気なんですね、アンタは…」グッタリ…
あすみ「ひっひっひ。冗談だよ。けどまあ…最後の真剣だった姿はちょっと、カッコ良かったぞ」ボソッ
成幸「え?」
あすみ「何でもねー。ま、これでとりあえずアタシたちが暫定1位だな。けど…」
パッカーン!!
理珠「ま、またストライク! すごいです先生」サッ
真冬「当然。同じ課程を再現すれば良いだけのことだもの」パシン
うるか「桐須先生すっごいですよね。ほぼスペアかストライクだし」
あすみ「緒方が調子を崩してるから拮抗してるけど…まずいな。センセがこれ連続で取ったら1位確定じゃねーか」
文乃「今のもストライクだったし、波に乗ってるって感じですよね。このままじゃりっちゃんが投げる前に終わっちゃうかも…」
成幸「そうなってもおかしくないかもな。先生だけ全然乱れないし」
文乃「うん。まさに氷の女王って感じだね…そういえば、もし1位になったら先生は成幸くんに何をお願いするつもりなのかな?」
あすみ「あんまり想像つかねーなー。勉強を教えたりとか?」
うるか「それじゃ学園でやってることと変わらないですよね…あ、じゃあ先生の家に成幸が掃除しに行くっていうのはどうですか?」
成幸「ブッフォッ!」
真冬「ブッフォッ!」ゴトン
理珠「せ、先生? どうしましたか?」
真冬「い、いえ…なんでもないわ、緒方さん。少し手を滑らせてしまっただけで」ソワソワ
あすみ「さすがにそれはやり過ぎじゃねーか? 武元。いくら何でも、教師が生徒をそんな目的で家に連れ込むなんざ問題だらけだろ?」
うるか「あはは、そうなったら面白いかなーとか思っちゃいましたけど、常識的に考えればそうですよね」
文乃「そうだようるかちゃん。もし誰かに見つかりでもしたら、二人とも処罰されちゃうかも」
うるか「あれ? 成幸どうしたの? 顔色が優れないけど」
成幸「い、いや…何でも」ビクビク
理珠「せ、先生。何だか顔色が優れないようですが…」
真冬「も、問題無いわ緒方さん…この通りいつもと変わらぬ集中力で…って、ああっ!」ゴロゴロ…ガタン
文乃「わっ! 先生がミスしちゃった」
うるか「先生でもさすがにこういう場面はキンチョーするんだねー」
成幸「……」ドキドキ
理珠「正真正銘、これが最後の一投ですね」
真冬「も、申し訳ないわ。緒方さん…」ズーン
理珠「いえ、先生は十分に活躍してくれました。あとは私が頑張れば」
あすみ「とはいえどうだろうな…逆転するには9本以上倒す必要があるが、緒方の最高記録は8本。しかも一投目はガーターで、すっかり悪いイメージがついちまってる。果たして上手くいくかどうか…」
理珠(小美浪先輩の言う通りです。一投目のガーターは気負い過ぎてしまったことによるもの。ならば…以前の私に戻ればいい。心の機微に疎い、機械仕掛けの私を、今は--)
うるか「! リズりんが動いた」
理珠「(ボウリングは再現する球技。8本倒した時の足運び、腕の振り方をよく思い出して。あとは--集中力!)えいっ!」ゴロゴロゴロ…
全員「------!」
--緒方うどん、店内
あすみ「では1位になった緒方、真冬センセペアを祝して! かんぱーい!」
うるか・文乃・成幸「「「かんぱーい!」」」
うるか「…ふう、楽しかったなー。今日のボウリング」
文乃「1投目のガーターから、まさかのスペアだもんね。すごかったよ、りっちゃん」
理珠「い、いえ…たまたまです。もう一度やれと言われてもおそらく無理でしょう」
あすみ「ま、気合いでもぎ取った勝利ってとこか。でも良かったのか? せっかく後輩を好きにできたのに、『みんなでうどんを食べたい』なんて言って」
成幸「そういやそうだな。俺としてはホッとしたのは事実だけど…賛成してたときの態度と随分違わないか」
理珠「そうですね。正直、最初は成幸さんに色々としてもらいたいことがあったのですが……」
成幸(あったのかよ)タラー
理珠「--ですが、途中からはそれがどうでもよくなるくらいに楽しくなってしまいました。だからその…この雰囲気や時間を、少しでも長く皆さんと共有したいと思ったんです。わがままを言ってしまってすみません…」
文乃「りっちゃん…」
うるか「リズりん…」
あすみ「緒方…」
成幸「…ばかだなあ、理珠は」
理珠「は、はい…すみま--え?」ナデナデ
成幸「そんな誰でも賛成するようなことをわざわざ願いごとにするなんてさ。お前は本当に良いやつだよ。理珠」ニコッ
理珠「(な、名前で…っ!)~~~っ!」カァアア
うるか「成幸の言う通りだよ。リズりんの家のうどんは美味しいからね。一言誘ってくれたら勝敗関係なくみんな食べに来てたと思うよ」
文乃「うん、私もうるかちゃんの意見に賛成だな。ちょうどお腹も減ってきてた頃だったから」
理珠「うるかさん、文乃…ありがとうございます」
真冬「…じゃあ、私からも一つお願いしていいかしら?」
成幸「せ…先生?」
理珠・文乃・うるか・あすみ((((すっかり忘れてた。い、一体どんな願いごとを?))))
真冬「…短い時間でいいわ。全員、帰ったら必ず机に向かうこと。それが願いごとよ」
成幸「え?」
真冬「楽しかった時間や思い出というのは強く記憶に残りやすいの。今日勉強することでうまく紐付けることができれば、必ず君達の力になるわ」
成幸「は、はい! ありがとうございます」
あすみ「センセらしい願いごとですね。でも、『楽しかった時間』とか。そんな言葉が出てくるってことは、まふゆセンセも今日はそんな風に思ってたってことですかね?」ニヤニヤ
真冬「そんなわけがないでしょう。でも、そうね……私がいることで君達が楽しい時間を過ごせたのであれば…無意味ではなかったかもしれないわね」
成幸「…ありがとうございます。先生」クスッ
理珠「それではうどんを取ってきます。おかわりもありますからどんどん食べて下さい」
文乃「ありがとうりっちゃん。けど、うう…また体重が増えちゃうよ」ズーン
うるか「文乃っち細いから気にすることないって」
あすみ「あ、そーいやセンセも始めたんでしたっけ? ダイエット」ニヤリ
真冬「な、なぜ貴女がそれを知っているのかしら!? 小美浪さん」アセアセ
ワイワイガヤガヤ
成幸(さ、騒がしいな。でも、はは……)
--面白かったな。本当に
--唯我家
葉月「あれ? 兄ちゃんがいない?」
和樹「風呂から上がったら遊ぶ約束してたのに」
水希「だめよ。今日はお兄ちゃん図書館で勉強してきて疲れてるんだから」
花枝「珍しく先に寝たわよ。あんたたち、悪いけど二人で遊んでなさい」
和樹「ちぇー、まあしょーがないか」
葉月「兄ちゃんいつも頑張ってるもんね。たまにはゆっくり休まないと」
水希「そうよ。今日はぐっすり寝かせてあげなさい」
葉月・和樹「「はーい」」
花枝(それにしても、今日はよっぽど楽しかったんだろうねえ)ニヤニヤ
水希「ここのところ無理してるみたいだったけど…今日は安らかな寝顔で良かった。お休みなさい。お兄ちゃん」バタン
成幸「zzzz」
了
112 : 以下、名... - 2019/01/01 10:29:38 5NBlKidM 45/45以上です。ネタ元はゴルフコラボのカラー絵から。
あんな感じで成幸も含め全員参加できそうなスポーツを考えたところボウリングがあてはまりました。
見て下さってありがとうございます。気ままなペースになりそうですが、今年もこのスレをよろしくお願いします。