剣豪「ゆくぞ、魔王ッ!」
剣豪「どぅりゃああああああああっ!!!」
パキィンッ!
剣豪「な……!? 我が剣が――」
魔王「そんな攻撃は、我が鎧には通用せん」
魔王「燃え尽きるがいい!」
ゴォワァァァァァッ!!!
剣豪「うぐわぁぁぁぁぁっ!!!」
元スレ
勇者「いかなる攻撃も受け付けない最強の鎧を装備した魔王を倒す方法」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1545553860/
大賢者「受けなさい、魔王!」
大賢者「我が雷を! 我が竜巻を! 我が業火を!」
ズガァン! ビュオアッ! グオワァァッ!
魔王「ふん、どれも“かゆい”というほどにすら感じぬぞ」
大賢者「なんですって!?」
魔王「貴様は殴り殺してやろう!」
ドゴォッ!
大賢者「ぶげえぇえっ!」
隊長「点火ァ!」シュボッ
シュボボボボボ…
隊長「発射ァ!!!」
ドゴォンッ!
ズガァァァァァンッ!!!
隊長「や、やった! この大砲を喰らったら、いかに魔王といえどひとたまりも……!」
魔王「大砲? 石ころでも飛んできたのかと思ったぞ」シュゥゥゥゥゥ…
隊長「う、うわああああああっ!!!」
大臣「陛下……報告が入りました」
国王「聞くまでもない。また我が軍が敗北したのだろう」
大臣「はい……」
国王「くっ、これで我が国の優れた戦士や精鋭はほとんど失われてしまった……」
国王「どうすればいい!? どうすれば魔王を倒せるのだ!?」
国王「どうすれば魔王のあの強固な鎧を打ち砕けるのだ!?」
大臣「陛下……」
国王「今度はなんだ?」
大臣「陛下と謁見したいという若者がおりまして……」
国王「謁見?」
大臣「なんでも“自分ならば魔王を倒せるかもしれない”と――」
国王「なんだと? どうせハッタリに――」
大臣「あながちハッタリともいえぬ雰囲気をまとっているそうで……」
国王「……よかろう。会うだけ会ってみよう」
国王「大臣から話は聞いておる。おぬしは魔王を倒す自信があるようだな」
若者「はい」
国王「なぜだ? その自信はどこからくる?」
若者「私は先日、ある古文書を読み解くことに成功しました」
若者「その古文書に書かれていたことを生かせばもしかしたら……と思いまして」
国王「ふうむ……」
国王「よかろう、おぬしに魔王討伐を託してみよう」
若者「ありがとうございます」
若者「しかし、そのためにはこの王国の大勢の人手をお借りしたいのですが」
若者「それと、多額のお金も必要です」
国王「……」
国王「ならば、おぬしには“勇者”の称号を与える」
国王「“勇者”の称号さえあれば、この国でできぬことはほとんどないはずだ」
勇者「この国のために力を尽くします!」
大臣「陛下、よろしいので?」
大臣「あんな若者に“勇者”の称号など与えてしまって……」
国王「どのみち、今のままではこの国は遠からず魔王によって滅ぼされる」
国王「それに直接会ってみて、あの若者が単なる大ボラ吹きではないことは感じられた」
国王「彼が何をするつもりか知らんが、それに賭けてみたくなった」
大臣「彼が真の勇者ならば、よいのですが……」
国王「もちろん、彼の動きは逐一報告するように」
大臣「かしこまりました」
――
国王「あの勇者は何をしている? そろそろ出発したか?」
大臣「それが……城下町に土地を購入したようで」
国王「土地を? そんなもの、どうするのだ? 冒険の拠点にでもするつもりか?」
大臣「さあ……それに人手を集めているようです」
国王「勇者の考えていることはさっぱり分からん……」
大工「この通りに、建物を作ればいいんだな?」
勇者「はい」
勇者「中に置くものについても、どんどん発注していきます」
勇者「私は“勇者”です。他のどの仕事に優先しても、この工事を進めて下さい」
大工「おう、分かったぜ!」
トンテンカン… トンテンカン…
ジャーン!
大工「ついにできたぜ!」
勇者「うん……私が描いた設計図通りです」
勇者「ありがとうございました。あなたを始め、力を貸してくれた人達には謝礼をたっぷりと」
大工「へへへ、毎度!」
勇者(さて、次は陛下のお力を借りなくてはな……)
国王「おお、勇者よ。余になんの用かな」
勇者「陛下に、魔王に手紙を書いて欲しいのです」
国王「手紙?」
勇者「ええ、魔王をこの城に招待して頂きたいのです」
国王「魔王を招待しろだと?」
勇者「はい、理由は何でもかまいません」
国王「分かった……やってみよう」
魔王「側近よ、人間の国王がワシに招待状を送ってきたが……これをどう見る」
側近「間違いなく罠です」
魔王「まあ、そうだろうな」
魔王「もはや正攻法ではワシに勝てぬと分かり、奇策に打って出たのであろう」
側近「ええ、もはや人間側に戦力といえる戦力はほとんど残っていないはず」
側近「しかし、魔王様さえ倒せば、一発逆転の可能性が出てきますからね」
魔王「とはいえ、せっかく招待してくれているのだ」
魔王「労せずして敵の懐に入れる機会をむざむざ捨てることもあるまい」
魔王「この鎧ある限り、どうせ奴らにワシを倒すことは不可能なのだからな」
側近「たしかにその通りではありますが……」
魔王「決めたぞ、側近。ワシはこの誘いに乗ってやる」
魔王「奴らの企みを粉砕した上で、一気にあの王国を滅ぼしてやる!」
大臣「魔王殿、よくぞ参られました」
魔王「うむ、トップ同士で会食をしたいと聞いている」
大臣「はい。ぜひとも、和解に向けてあなたとお話しを、と」
魔王「降伏の間違いじゃないのか?」
魔王「あるいは食事に毒でも盛るつもりなのかね?」
大臣「いえ、決してそんなことは……」
魔王「まぁいい、全ては明日になれば嫌でも分かる」
大臣「はい、今日のところは私どもが用意した宿にご宿泊下さい」
魔王「ここか」
魔王「魔王の名で部屋を取ってあるはずなんだが」
従業員「427号室です。こちらがキーとなります」
従業員「お出かけの際は、フロントにキーをお預け下さい」
魔王「うむ」チャリ…
魔王「これが、427号室か」
魔王「薄暗いし、質素なベッドが一つ、風呂と洗面所が一緒、あまりいい部屋とはいえんな」
魔王「こんな宿しか建てられぬほど、この国は衰退したというわけか。素晴らしいことだ」
魔王(しかし、なぜだろうか)
魔王(ある衝動がワシをかき立てる……!)
魔王「……」ウズウズ
魔王「なぜか分からんが……」
魔王「脱ぎたくてたまらん!」ヌギヌギッ
魔王「脱がずにはおられないッ!」ヌギィッ
魔王「フハハハハハハッ! 全部脱いじゃったもんねーっ!!!」スッポンポーンッ
勇者「今だあああああああああああっ!!!」バッ
魔王「え、なに!?」
兵士A「はいっ!」バッ
兵士B「うおりゃ!」バッ
兵士C「魔王、覚悟ォォォォォ!」バッ
魔王「しまった! 鎧を――」
勇者「427(死にな)……魔王ッ!」
ザシュッ ドシュッ ザクッ ザクッ ズバッ ザンッ ドスッ ザンッ ビシュッ ズバッ ザクッ …
国王「よくやってくれた!」
国王「魔王が倒れたおかげで、魔王軍は総崩れとなり、我が軍が勝利することができた」
国王「ところで、おぬしが解読した古文書にはなんと書かれておったのだ?」
勇者「はい、建物の絵と共に、こう書かれておりました」
勇者「“ビジネスホテル……その部屋に足を踏み入れし者、必ずや全裸になるであろう”と」
おわり