627 : VIPに... - 2012/07/21 03:52:40.48 dgK00FrE0 1/14初投下です。アイテムと浜面の初顔合わせIf。
『もし浜面がレベル5だったら』という妄想を下に展開します。
オリジナル能力注意です。
元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-37冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1334385245/
浜面仕上。
元スキルアウトのリーダー(引継ぎ)。
学園都市上層部の依頼を受け、『超電磁砲』御坂美琴の母を殺害すべく行動。
だがとある乱入者の妨害によって依頼は失敗に終わる。
その身は暗部の世界に匿われ、以後闇の労働力として生きる事を余儀無くされた。
雇われ先は『アイテム』。
下部組織の雑用役として所属し、正規構成員に尽くしサポートする立場となる。
なんて事は無い。表でイキがっていたチンピラがいい様に扱われ、『ホンモノ』に飼われた、それだけの話。
では無いのだ。
即ちこれは異端の歴史。
そこには本来の筋道とは異なる、特別な事情が存在していた。
「資料の時点でサッシはついていたけど、さえねーチンピラにしか見えないわね」
集合先に指定された場所には、美人でありつつも近寄りがたい雰囲気を醸し出す『アイテム』のリーダー、麦野沈利の姿があった。
「悪かったな…。てか、こんなところでレベル5とハチ合わせるとか夢にも思わねえよ」
「こっちの台詞よ。雑用一人寄越すとか言うからどんな奴かと思いきゃ…」
「まさかレベル5、しかも第6位って、何の冗談よ一体」
最弱のレベル5。
学園都市が必要としなくなったレベル5。
浜面仕上。元スキルアウトのレベル5だった男。
これは、おちこぼれたレベル5のお話。
「おまたせ。例の雑用連れてきたわ」
案内されたファミレスの一角には、三人の少女の姿があった。
一見してただの中高生の集まりにしか見えないが、彼女らは立派な暗部の一員である。
「おかえりーって麦野、もしかしてそいつが例の…?」
「そ、レベル5のざ・つ・よ・う」
その時、フレンダ=セイヴェルンの心中に緊張走る。
レベル5の恐ろしさは痛いほど知っている。それはフレンダの目の前に悠然と立つ『原子崩し』麦野沈利の持つ恐ろしさでもあり、かつての任務で交戦した『超電磁砲』御坂美琴が見せた恐ろしさでもあった。学園都市が定めた序列、その頂点に立つモノ。
麦野が引っ張ってきたこの冴えないチンピラは、その序列の中にカウントされた異質な存在だと言うのだ。
同様の思いはフレンダの正面に座る少女、絹旗最愛の中にもあった。
彼女もまたレベル5に関わる者。その存在の特異性は良く知るところだ。
その表情にはいつも以上の警戒の意が見て取れた。
そしてもう一人、滝壺理后は特に警戒した様子を見せなかった。
興味を持っていないようで、注意深く観察されているかのような、何ともいえない表情で浜面を見つめている。
レベル5だと言うだけでこの緊張。
久しく味わっていないこの優越感が、浜面にはほんの少し懐かしかった。
だがそれも今一時だけ、そんな幻想は目の前の第四位(格上)がぶち殺してしまう。
「あーはいはい緊張してんじゃないわよ。雑用だって言ってんでしょ雑用。
浜面も新入りの分際で調子のってんじゃねえニヤニヤすんな」
「ぐっ…の、のってねえししてねえよ」
「どーだか。女四人前にしてハナ伸ばしてんじゃないの」
「え、どういう事ですか?てか何でレベル5が超雑用の超下部組織なんですか?」
「そ、そうだよ麦野。結局こっちはゼンゼン理解出来てない訳よ。説明してよ説明」
「南南西から信号が来てる…」
三者三様各自それぞれが困惑。
そんなの御構い無しと言わんばかりに麦野。
フレンダを押し退けさっさと定位置に戻ってしまった。
仁王立ちを続ける浜面に対し、上座から麦野はからかう様に話しかけた。
「まあ自己紹介なんておいおい適当でいいわ。さ、さっそくだけどドリンクバー言ってきて。
四人分のドリンク、きっちり好みのヤツ。わかるでしょ?」
「マジかよ…。雑用ってかパシリじゃねーか」
ほらさっさと行けよ。怖いお姉さんは目で訴えています。
逆らう事を止め、浜面はドリンクバーへと足早に向かった。
一瞬ポカンとしつつもフレンダは即座に麦野の方を向き直して言った。
「え?何の説明も無しにいきなりパシリ?結局ますますワケが解らない訳よ…」
「いいから見てなさいよ。ていうかアンタら気負いすぎ。アイツ別に大した事ねーから」
「大した事…ってレベル5ですよ?麦野より超格下ですが」
「そ、格下。ぶっちゃけ絹旗の方が強いんじゃない?」
驚愕。愕然。困惑交じりの落胆。そんなリアクションを麦野は楽しんでいた。
「いやいやいや麦野、レベル5でしょ?結局軍隊と互角のレベル5でしょお?
それがこの絹旗とタメ以上ってどういう訳よお?」
「フレンダ超舐め腐ってません?殴りますよ?」
「あーもううるせえよ。アレが戻ったら色々教えるから大人しくしてな」
「結局、そのレベル5を顎で使いつつ、初っ端新人イビリしちゃうのは流石麦野と言わざるを得ない訳よ…」
「そういや好みの飲み物持って来いとか超無茶振りしてましたね。
ハズしたらその場でミックスジュース超一気飲みとかさせる気ですか麦野?」
「たぶんその心配は無いわ。ホラ戻ってきた」
ドリンクバーより雑用は帰還した。
その両手一杯には四人分のドリンクが四種四様納まっている。
四人の前に配置されたドリンクを見て、四人中二人はあからさまに驚いていた。
今現在の好みドンピシャリ。新人イジメとは何だったのか。
「くそう、スキルアウトのリーダーがやる仕事じゃねえよなあ…」
「だから何だってのよ雑用。とりあえず性能テストも兼ねた訳だけど、
腐ってもレベル5って事か。全員飲み物に不満が無いようね」
「え?これが超超能力なんですか麦野?パシリが能力ですか?」
そうよと麦野は返答すれば、そいつは違うと浜面は言った。
「絶対違うからな?こんな使い方は不本意だからな?」
「焦んな早漏。とりあえず自己紹介と行きますかー浜面ボケて」
「早漏じゃねえ!」
「男はすぐ突っ込みたがるんだからやーねえー」
「結局漫才はいいから自己紹介して欲しい訳よ…」
「全くです。もったいぶらずに超さっさと教えやがって下さい……えーと、ハ、バカ面」
「ぜってえワザとだよなそれ?あえて間違えたよなそれ?」
「北北西から信号が来てる…」
さっさとしやがれ。怖いお姉さんは目と手で訴えています。
突っ込む事を止め、浜面は改めて口を開いた。
「あー、色々あって暗部の方に突っ込まれる事となった、浜面仕上っつー者だ。
元はスキルアウトのリーダーで」
「身の上話なんざ興味ないからアンタのアイデンティティーを話せっての遅漏」
「遅漏でもねえよ…。あーさっきから言われてる通り……俺はレベル5だ」
ファミレスの一角がしんと静まった。
第6位に位置するレベル5。その正体は誰も知らない。
脳裏に思い描くあの頃の記憶。
学園都市。超能力を夢見たあの日。
目隠しポーカーをさせれば、他を寄せ付けないほどに圧勝した。
コロンブスの卵をさせれば、一発で卵は完璧に立たせられた。
テストの問題は適当に書いてしまえば正解だった。
車の運転も苦とは思わなかった。道に迷う事も無かった。
明日の天気も、携帯電話の着信も、背後から這い寄る友人の悪ふざけも。
全ては勘。直感の導きに従った結果だった。
『第六感(シックスセンス)』
全ての物事を勘と直感で判断し、正解を導き出すまぐれの王様。
運命に干渉しているのではと思わんばかりの正確無比さは、まさに超能力者。
「精神系の能力だったか。…出来る事は」
言いかけたその瞬間、麦野がニヤリと意地悪な顔を向けた。
『原子崩し』だ。
その電子線、白く輝く極細な一本筋。盾を貫く悪意の矛。
不意打ち、騙まし討ち、悪戯心。
それは浜面の顔面目掛け、真っ直ぐ、真っ直ぐ、真っ直ぐ。
フレンダが気づき、絹旗が察し、滝壺はよくわからないままのその時。
その確定一発を、浜面はわかっていたかのように、横っ飛びで回避していた。
一瞬の間。
「チッ、かわしたか」
「ビックリしたじゃねえかよ!!出会って早々殺す気かあ!?」
「あれーこの雑用クンは出会い求めてこんなところに来ちゃってた訳かにゃーん?
その第六感であたしらを品定めしてゆくゆくは…ってかぁ?」
「そんな疚しいキモチは表に放り投げてきたわ!
あってもいきなし殺しにかかる女性は正直ゴメンナサイ!」
「超フツーに回避してましたね今。フレンダなら今頃真っ二つでしたね」
「そこまでうかつじゃない訳よ!って今のがコイツの能力なの麦野?」
「そ。これが第六感。滅茶苦茶ってか、変態ってレベルで勘が良い能力だって」
ビビリも極めればこうなるって感じ。言い換えればそれだけねー。
ケラケラ笑いながら麦野は痛い所を付く。
ようやく合点がいったのか、フレンダと絹旗は冷静さが戻ったようだ。
「なるほど。超一々指示しなくてもドリンクバーからお好みを超運んできてくれる能力ですね」
「結局、私が唐突に鯖缶が欲しくなってきたら買ってきてくれる能力って訳ね」
「その認識で終わるなよ…!これはな?この能力は…」
「じゃあ私は今何が欲しいか当ててみなさい浜面」
「………(演算中)………弁当…?」
「ね?いいレベル5じゃない?」
「レベル5超凄いですね」
「結局レベル5様々な訳よ」
「何でだ?レベル5って栄光の証じゃねえの?何でこんなに情けない扱いなの俺?」
「いえいえ超凄いじゃないですかレベル5(笑)」
「そうそう結局もっと誇っていい訳よレベル5(笑)」
「笑ってんじゃねえかよおおお!!あーくそっ!!レベル5舐めんなよ!?第六感舐めんなよ!?その気になりゃあお前らのスリーサイズとか言い当てられっからな!?」
「超キモイですレベル5」
「結局レベル5にあるまじきキモさな訳よ」
「大丈夫だよ、レベル5。わたしはそんなレベル5を応援してる」
「…はーまづらぁ。自分の立場をワキまえてねーって事かぁ?」
演算は即座に完了する。
その第六感は身の危険を即察知し、
その脚は即地面へと膝を付かせ、
その両の手は即地へと吸いつけられ、
その背は即丸みを帯び、
その頭は即大地に伏して、
今ここに土下座、完遂する。
「いえスミマセンでした麦野サン私はただの格下です」
「死にたくなかったらさっさとパシッてきやがれ負け犬」
「ハッハー!!負け犬上等ォォォォォ!!」
まるで神速。パシリの権化と化して浜面はファミレスを後にした。
学園都市の能力者達。彼らに求められるのは能力そのものではない。
あくまで研究者達が求めるのは、能力の応用が生み出す利益だった。
最も価値が無いとされたレベル5。
それは研究者達の期待を大きく裏切った事に起因していた。
浜面の示す勘と直感は、基本的に浜面仕上の頭の中で自己完結してしまっていた。
彼の脳からその第六感のシステムを引き出す事は出来ない。
正確に言うなら、引き出した所でそれは
「探求の末の答え」を早出ししているに過ぎなかったからである。
更に言うなら、浜面の知識外の問い掛けについては、正確な答えを求められない。
という大きな弱点も存在し、浜面仕上の知識量と照らし合わせても、その数値に絶望するばかりだった。
通常の能力者は頭の中の「自分だけの現実」を持って、世界に超常現象を起こす。
浜面仕上は頭の中の「自分だけの現実」を持って、世界の仕組みを考察する。
猫が入っている箱を見つける事は出来ても、箱の中に猫を仕込む事は出来ない。
浜面仕上一個人で自己完結した勘と直感。
如何に正確無比と言えども、そこに創造性は存在しなかった。
在り物から答えを導き出すだけなら時間の問題だ。
馬鹿でも何十年掛ければ傑作小説が書けるとは誰の台詞だったか。
そして現実、学園都市は超高性能並列コンピュータである『樹形図の設計者』を持って、
浜面の導き出す答えの価値を大きく上回っていた。
ある意味ファイブオーバーの前進とも言えるかも知れない発明の存在。
こうして、浜面仕上、第六感の価値は大きく暴落した。
最弱のレベル5。おちこぼれたレベル5。
学園都市が必要としなくなったレベル5。
求められず、得られず、それでもその素養は間違いなくレベル5。
大人達の身勝手な落胆。子供達の身勝手な嫉妬。
自然と居場所は無くなり、彼はスキルアウトへと身を落としていった。
ここは『アイテム』。どうやら彼の新しい居場所となるようだ。
今の浜面仕上は雑用レベル5。
なんだかんだでこの能力は役に立っているらしい。
「はーまづらぁ」
「鮭弁だろ。ほら」
「超浜面ー」
「ああパンフか?ほれ」
「浜面浜面」
「この鯖缶見つけるのやたら面倒臭かったんだけど。ほい」
「はまづら」
「あー…えっと…隣座れって?」
雑用レベル5の本領発揮。最早熟年夫婦の如し以心伝心。
セバスチャンもかくやと言わんばかりのお察し能力は、
我が侭放題の女三人衆+一人に中々どうして気に入られた様子。
暗部組織の身の上ながら、良好な関係が構築されていった。
「……はーまづらぁ、滝壺の横で鼻の下伸ばしてんじゃねえよ」
「してねえよ!してねえからな滝壺?」
「大丈夫だよ、問題ない」
「滝壺さんが超満足した顔をしています。対して麦野は超不満足な顔をしていますね」
「ではそこのレベル5に質問な訳よ。この二人の表情、結局その心は?」
「………(演算中)……………え?わかんねえよ?」
「超バカ面」
「結局レベル5の器じゃないバカ面な訳よ」
「……そんなバカ面は応援出来ない」
「いやいや勘弁してくれよそんな読心能力に長けてるわけじゃないからな?
あくまで俺の知ってる範囲でしか答えは導き出せなヒィッッ!?」
「ぶ・ち・こ・ろ・し・か・く・て・い・ね」
「待て話せば分かる麦野サンビームあぶねええええええ!!」
「超器用に避けやがります。私の窒素パンチもあんな感じに避けますし、
浜面の分際で何か腹正しいです」
「結局何だかんだで麦野のストレス解消になってる訳よ」
「北北東から信号が来てる…」
「助けてェェェェェェェェェェ!!」
彼は第6位。雑用レベル5。
パシリの中で研がれる演算。暗部の抗争の中で芽生える第六感の真髄。
その他レベル5達との遭遇。それらはまた、別のお話。
了。
640 : VIPに... - 2012/07/21 04:30:07.01 dgK00FrE0 14/14以上です。
浜面らしいレベル5の能力って何かを色々妄想して、結果生まれた物を元に書きました。
この能力を使ったバトルもいつか書ければいいかな。
妄想度高くて失礼しました。