1 : 以下、?... - 2018/12/10 21:35:06.599 +yVaRhaH0 1/32

アドバイザー「では、こちらの書類に相手に求める条件をお書き下さい」

アドバイザー「その条件に見合う男性を、我々がご紹介いたします」

(条件といったら、やっぱり年収よね)

(年収……1000万円以上のザコはお断りっと!)カキカキ

アドバイザー「では預からせていただきます」

「頼んだわよ」



「……」

「あーっ!!!」

「以上と以下間違えちゃった!」

元スレ
女「婚活しよっと! 年収1000万円以上のザコはお断り!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1544445306/

4 : 以下、?... - 2018/12/10 21:39:12.085 +yVaRhaH0 2/32

――

アドバイザー「条件に合った方をご紹介します」

「どうも」

(うわぁ~……パッとしないのが来ちゃった)

「ちなみに年収は?」

「10万円です」

(10万!? 逆にすげえわ! どうやって生活してんのよ!)

6 : 以下、?... - 2018/12/10 21:42:20.469 +yVaRhaH0 3/32

アドバイザー「とりあえず、一回デートなさってみたらいかがでしょう?」

「お願いします」

(う~ん……さすがに年収10万と結婚はないわ……)

(だけど、以上と以下を間違えたのは、私のミスだし……)

「分かりました! 一回デートしてみましょう!」

「ありがとうございます!」

(もちろん二回目はないけどね!)

7 : 以下、?... - 2018/12/10 21:45:09.078 +yVaRhaH0 4/32

デート当日――

「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ」

「じゃあ歩きましょう」

「ええ」

スタスタスタ…

「あの……」

「はい?」

「どこかお店とか入らないんですか?」

「一切入りません。金がかかりますからね」

スタスタスタ…

9 : 以下、?... - 2018/12/10 21:47:18.070 +yVaRhaH0 5/32

スタスタスタ…

「はぁ、はぁ、はぁ……」

(もう三時間ぐらい歩いてるんだけど)

「歩くっていいですよね。金はかからないし、健康にもいいし、景色を楽しめるし」

「……ええ、そうですね」

「疲れましたか? じゃあそろそろご飯にしましょうか」

(やった!)

10 : 以下、?... - 2018/12/10 21:51:11.851 +yVaRhaH0 6/32

―公園―

「ここの草はおいしいんですよ~」ブチッブチッ

「……」

「……」モシャモシャ

「よかったら、いかがです?」サッ

「……どうも」モシャモシャ

モシャモシャ… モシャモシャ…

(これがホントの草食系男子ってやつなのかしら)

14 : 以下、?... - 2018/12/10 21:54:44.703 +yVaRhaH0 7/32

―図書館―

「お腹一杯になったら、ここで休みましょう」

「図書館……」

「無料で好きなだけ本を読めますからね。暇潰しには最高ですよ」

「夜8時で閉まっちゃうのが残念ですけどねえ」

「ええ……」

「喉が渇いたら、あっちに水飲み場がありますよ」

「ど、どうも……」

16 : 以下、?... - 2018/12/10 21:56:49.820 +yVaRhaH0 8/32

「じゃあ、今日はこれで!」

「ええ、さよなら!」



(何時間も歩いて、草食って、図書館でずっと本読んで……前代未聞のデートだったわ!)

(こんな奴、もう二度と会うもんですか!)

19 : 以下、?... - 2018/12/10 22:00:43.259 +yVaRhaH0 9/32

―自宅―

「ふぅ……」ゴロン…

「足いってえ……マメできなきゃいいけど」ズキズキ…

(あーあ、ひどい目にあったわ……)

(だけど、つまんなかったっていうと、そんなことないのよね)

(あの純朴な感じがクセになるというか――)

(噛めば噛むほど味が出るというか――)

22 : 以下、?... - 2018/12/10 22:04:06.108 +yVaRhaH0 10/32

「いやぁ、嬉しいなぁ! また会って頂けるなんて!」

「アハハ……」

(なにやってんだろ、私)

「正直いって信じられないですよ! 絶対二回目はないな、と思ってました!」

(私も信じられないわ)

「じゃあ、今日もとっておきのデートコースをご紹介しますよ!」

23 : 以下、?... - 2018/12/10 22:06:25.150 +yVaRhaH0 11/32

―河原―

「ここの草もおいしいんですよ~」ブチッブチッ

「……」

「……」モシャモシャ

「よかったら、いかがです?」

「……どうも」モシャモシャ

モシャモシャ… モシャモシャ…

「食べたら俺のアパートに案内しますよ」

(あ、一応住む家はあったんだ。てっきりホームレスかと……)

27 : 以下、?... - 2018/12/10 22:09:49.221 +yVaRhaH0 12/32

―アパート―

ギシッ… ギシッ…

(うわぁ、すごいボロアパート。ほとんど廃墟だわ)

「ここ……家賃はいくら?」

「1000円です」

「大きい地震が来たらすぐ崩れちゃいそうね」

「それが意外と、よく揺れるから逆に安全なんですよ~」

(なにその理論……)

29 : 以下、?... - 2018/12/10 22:16:17.722 +yVaRhaH0 13/32

「雨水を貯めて、砂糖を混ぜたジュースです。おいしいですよ」

「ありがとう」ゴクッ

「あら、おいしい!」

「でしょう!」

「こっちは色んな草や葉っぱを混ぜて作ったサラダです」

「あら、これもおいしい!」ムシャムシャ

「でしょう!」

(おかしい……。あれよあれよとこいつのペースに……)

31 : 以下、?... - 2018/12/10 22:19:44.401 +yVaRhaH0 14/32

「女さん!」

「は、はい!」

「俺、この通り、貧乏で甲斐性なんて全くないけど……」

「こんな俺でよかったら……結婚して下さい!」

「……はい」

(あーあ、OKしちゃった)

32 : 以下、?... - 2018/12/10 22:22:43.603 +yVaRhaH0 15/32

……

「今日も草を食べよう」

「うん!」

モシャモシャ… モシャモシャ…

「おいしいね!」

「そうだね」

「……」

(こんな俺に、よくついてきてくれている……)

(俺もいつまでもこんな生活してられない……)

(彼女のためにも、なんとか浮かび上がらなきゃ……!)

33 : 以下、?... - 2018/12/10 22:25:22.873 +yVaRhaH0 16/32

「俺には貧乏生活しながら考えてたビジネスプランがあってね!」

「やっと形になってきたから、ベンチャー企業を立ち上げたよ!」

「必ず大金持ちになってみせる!」

「まあ、まったく期待してないけど……頑張ってね」

「失敗しても今までの暮らしに戻るだけと思うと気楽だしね」

「いや……絶対成功させるよ!」

36 : 以下、?... - 2018/12/10 22:29:30.034 +yVaRhaH0 17/32

―会社―

「やったぁ、一億の商談が成立した!」

「おめでとう!」

「よぉーし、俺の目に狂いはなかった! やっぱりこのビジネスは需要がある!」

「今はまさに商機! どんどん会社をでかくしてやるッ!」

「頑張って!」

「ああ、任せとけ! このまま貧乏脱出どころかセレブになってやるさ!」

39 : 以下、?... - 2018/12/10 22:32:44.594 +yVaRhaH0 18/32

「ふぅ~、人を雇って、会社がますます軌道に乗ってきた……」

「ねえ、たまには公園に草食べに行かない?」

「草ぁ? ハハッ、なにいってんだい! 俺たちはもうそんなもん食う身分じゃないだろ!」

「草どころか、森や山だって買い占められるほど貯金もできたんだしさ!」

「さ、二人で高級レストランに行こう! 今夜は北京ダックなんかどうだい?」

「うん……」

41 : 以下、?... - 2018/12/10 22:34:42.878 +yVaRhaH0 19/32

部下「も、申し訳ありませんっ……!」

「なにやってんだテメェ! まんまと競合に出し抜かれやがってぇ!」

「だからお前はボンクラだってんだよ! この役立たずがぁ!」

「いいか、お前の代わりなんざこの世にいくらでもいるんだぞ! 死ぬ気で働けぇ!」

部下「はっ、はいぃ……!」



「……」

44 : 以下、?... - 2018/12/10 22:38:32.728 +yVaRhaH0 20/32

「ねえ」

「なんだよ?」

「このところ、あなた……性格すさんできてない?」

「よく怒鳴るようになったし、目つきも前より吊りあがって……」

「そりゃなぁ、この世界で生きてりゃどうしてもそうなる」

「たまには息抜きした方が……」

「息抜きィ? そんなことしてるヒマなんかあるかよッ!」

「お前だって俺のおかげでいい暮らしできてんだろがッ! 俺のやることに口出しすんな!」

「……ごめんなさい」

46 : 以下、?... - 2018/12/10 22:41:02.842 +yVaRhaH0 21/32

―公園―

「ふぅ……」

イケメン「あの……このところ毎日ここに来られてますよね」

「えっ……」ドキッ

イケメン「よろしかったら、一緒に草を食べませんか?」

イケメン「この公園の草は、とてもおいしいんですよ」

「は、はいっ……」

50 : 以下、?... - 2018/12/10 22:43:07.702 +yVaRhaH0 22/32

イケメン「おいしいでしょう?」モシャモシャ

「ええ、懐かしい味……」モシャモシャ

(この人……まるでかつてのあの人を見ているみたい)



イケメン「また……会えますか」

「ええ……またこの公園で……」

53 : 以下、?... - 2018/12/10 22:46:18.759 +yVaRhaH0 23/32

―会社―

部下「社長」

「なんだ?」

部下「実は奥様が……」ゴニョゴニョ…

「なにィ~!?」

部下「いかがいたしましょう?」

「……知るか! ほっとけあんな女!」

「最近やかましくなったしちょうどいい! 本当に不倫してるなら別れるいい口実になる!」

56 : 以下、?... - 2018/12/10 22:49:32.790 +yVaRhaH0 24/32

―図書館―

イケメン「おや、今日は絵本ですか」

「ええ、たまには童心にかえって、と思って」

イケメン「これは……欲張りな金持ちがどんどん荒んでいく、という話ですね」

(まるであの人みたい……)

イケメン「お金は人の心を汚します。手元にあればあるだけ、精神を濁らせる」

イケメン「頭に浮かべて下さい。世の中のいわゆる富豪と呼ばれる人物たちを」

イケメン「みんな……欲望に歪んだ醜い顔をしている。実際に不祥事を起こすこともある」

イケメン「それに比べて、日々を精一杯生きる貧しい人達はみんな顔も心も清らかだ」

「ええ、その通り……」

イケメン「さ、また公園に草を食べに行きましょうか」

「……はい」

60 : 以下、?... - 2018/12/10 22:53:25.179 +yVaRhaH0 25/32

―公園―

モシャモシャ… モシャモシャ…

イケメン「誰もいない夜の公園で食べる草は格別ですね」

「ええ、ホント」

イケメン「女さん」

「はい?」

イケメン「ボクと……結婚して下さいませんか」

「えっ……。あの実は、私には夫が……」

イケメン「知ってます。そして、あなたのような清らかな方には、ボクの方が相応しいことも」

イケメン「どうか、ボクと一緒になって下さい」

「……」

65 : 以下、?... - 2018/12/10 22:56:14.003 +yVaRhaH0 26/32

「……」

「やっぱりダメです!」

イケメン「!」

「私……まだ心の中では、あの人が好き!」

「あなたに惹かれたのも、かつてのあの人を見てるようだったからなの」

「だから……あなたと結婚できません! ごめんなさい……」

イケメン「……そうですか」

68 : 以下、?... - 2018/12/10 22:59:55.463 +yVaRhaH0 27/32

イケメン「――ふざけてんじゃねぇぞォ!!!」

「え!?」

イケメン「せっかく金持ちの妻たらし込んで、金も体もがっぽがっぽだと思ったらよォ……」

イケメン「直前で冷めることいってくれちゃってよォ……」

「あ、あなた……騙してたの!?」

「あなたは貧乏だから、心が清いはずじゃ……」

イケメン「ギャハハハハハハッ! 貧乏人は心が清い? バーッカじゃねえの?」

イケメン「『貧すれば鈍する』ってことわざ知らねえのかァ!?」

イケメン「『衣食足りて礼節を知る』って言葉知らねぇのかァァァ!?」

イケメン「貧乏なら心が清いとか、どんだけ頭お花畑なんだヴァァァァァカ!!!」

「あ……あああ……」

71 : 以下、?... - 2018/12/10 23:03:49.522 +yVaRhaH0 28/32

イケメン「オレ、貧乏だからさぁ~、娯楽なんてほとんどねェのよ」

イケメン「だから今晩は……あんたに“娯楽”になってもらうッ!」

イケメン「漫画ゴラクにも掲載できないような目に合わせてやるぜッ!」

「ひっ!」

イケメン「いくらオレがイケメンでも貧乏だと女も寄ってこねえから、女は久しぶりだァ……!」ジュルリ…

「だ、誰かっ……!」

イケメン「叫んだって無駄だ、さっき誰もいねェっていったろ!」

イケメン「朝まで生で楽しもうぜェェェェェ!!!!!」

74 : 以下、?... - 2018/12/10 23:06:15.401 +yVaRhaH0 29/32

「やめろッ!!!」


「えっ……」

イケメン「なんだァ~?」

「どうしてここに……」


「俺はもう、君のことなんかどうでもいいと思ってた……はずだった」

「だが、やはり、心の奥底では君のことを忘れることはできなかった……」

「……戻ってきてくれ」

77 : 以下、?... - 2018/12/10 23:09:19.206 +yVaRhaH0 30/32

イケメン「オレを無視してんじゃねーぞッ!」

イケメン「いっとくが、オレはテメェのような青ビョウタンにやられるほどヤワじゃねえ」

イケメン「一人でのこのこやってきたこと後悔させてやんぜェ!」

「一人? なにいってんだ?」

イケメン「え?」

「俺は金持ちだぞ? ……人を雇ってるに決まってんだろ」

怪力「社長の奥さんに手を出すとは……クズ野郎が」

マッチョ「たっぷりおしおきしてやんなきゃな」パキポキ

豪傑「覚悟してもらおう」

イケメン「あ……」

78 : 以下、?... - 2018/12/10 23:12:36.390 +yVaRhaH0 31/32

「……無事でよかった」

「ごめんなさい……」

「いや……俺の方こそ悪かった……」

「ただし俺はもう、貧乏に戻るつもりはない。会社や部下を抱える身だからな……」

「あいつらを路頭に迷わせるわけにはいかない」

「うん、分かってる……」

「私の無い物ねだりだってことは分かってたの……」

80 : 以下、?... - 2018/12/10 23:14:13.570 +yVaRhaH0 32/32

「だけど、君と出会った頃のあの気持ちだけは……取り戻したいと思う」

「だから……一緒に草を食べよう!」

「うんっ!」

モシャモシャ… モシャモシャ…

「あ、久しぶりに食うとうまいな」

「でしょ~」





おわり

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