1 : 以下、?... - 2018/11/06 18:36:09.257 0E2h+2bT0 1/15

昼休み中にふと屋上へ行ってみた。

別に深い意味はなかった。1人で黄昏れたかったのである。俺はサッカー部で比較的陽キャだったがチームのボス格に嫌われ浮いてしまった。よくある話である。

そんな感じで少しセンチメンタルな俺は屋上へ行ってみたのである。


そこには1人の女子がいた。後ろからじゃ顔も見れなかったがサラリと流れるショートカットがその子が可愛い事を予言していた。

しかしチキンボーイな俺は声をかけるなんてことはせず近くのベンチに腰掛けてぼーっとしていた。いつの間にか寝てしまった。さっきの子が俺の隣に座っている。なんでやねんと思う同時にやっぱり可愛い。当たったぜ!とも思った。オラびっくりすっぞ。

「お、起きたな。おはよう。」

「アッアッ…」答えられなかった。童貞だから仕方がないと思う。童貞なら皆そう。

「飴でも食べる?」

「な、何味?」

「スイカ味」もう秋なんだけどなんでスイカ?と思ったが貰うことにした。

「あざっす」少し話せるようになってきた。

「何かあったの?」美少女が顔を覗き込んできた。不思議な美しさを持つ目が気になった。やけに澄んでる…みたいな。

しかしなんだこの美少女は。エスパーか?エスパーなのか?まずあんた誰だ。

「別に何にも無いですよ。」

「今お前誰だよっておもったでしょ」やっぱりエスパーだった

元スレ
美少女「飴でも食べる?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1541496969/

4 : 以下、?... - 2018/11/06 18:44:09.249 0E2h+2bT0 2/15

名前も知らない人だからこそ色んなことを話してしまった。浮いてしまった事やボス格の悪口とか。


「貴方名前なんて言うんですか?」

「人に聞く時は先にお前が名乗りなさい」ごもっともである。俺が名乗ったら教えてくれた。奥上(おくがみ)さんと言うらしい。年は教えてくれなかった。でも年上っぽい。敬語を抜けない。

「屋上さんって呼んでもいいっすか?」

「…まぁいいよ」歯切れが悪かったもののok貰えた。ちなみに俺のクラスでのあだ名は苗字が稲葉だからイナバウアーである。婿に入りたいものだ。

昼休みも終わるので先に帰る事にした。今日はついてるなと思ったらカメムシを踏んだ。ついてなかった。

5 : 以下、?... - 2018/11/06 18:51:44.637 0E2h+2bT0 3/15

次の日も俺は屋上に行ってみた。屋上さんに会えるかもと思ったからである。こーゆー所が自分悪いというかイヤな所である。ちょっと女子と関わるとすぐ舞い上がる。気持ち悪い。でも屋上へ向かった。童貞だから仕方がないね。

「こんちは。」

「今日もきたの?友達居ないの?」うぁ辛い。

「友達なってくださいよ。」懇親の返しである。

「無理。」現実はキビシーものである。

昨日は気づかなかったが屋上さんは手に絆創膏を貼っていた。

「手。どーしたんすか?」

「下駄箱の木のトゲが刺さったの。」

「あー舐めてあげましょうか?」ふざけてみた。

「死ねば?」照れすらしなかった。死にたい。

今日も時間までスイカ味の雨を食べて、くだらないことを話していた。楽しかった。

6 : 以下、?... - 2018/11/06 19:00:40.773 0E2h+2bT0 4/15

そんな感じで過ごして1ヶ月たった。もうすぐ冬休みなのもあり屋上は寒かった。しかし屋上さんと話したいがためだけに屋上へ行っていた。

「もうすぐ冬休みッスね。」

「…そうだね。」

「なんか予定ありますか?クリスマスとか。」

正直、俺はもう屋上さんが好きだった。屋上さんにならなんでも話せるし、もしかして相手も俺の事が…とか気持ち悪い妄想をしていた。だから誘ってみた。

「予定なんてないけど無理。死ねば?」そこまで言うか?絶対脈ないわ。死にたい。そんな嫌?

少し落ち込みながらもまたスイカ味の飴を食べ話していた。

「昨日のダウンタ⚫ン見ました?」

「見てない。テレビとか見ない。」浮世離れした子だったようだ。


「俺、屋上さんのことが好きっス。」ふ、と出てしまった。本心だったからかすんなり言ってしまった。なぜだか緊張しなかった。

「…は?」そりゃそうだろう。あまりに唐突な告白だった。でも屋上さんは赤面してた。カッワイイ。正直付き合えると思った。ほとんど毎日あってるし。でも、現実はそんな甘くなかった。

7 : 以下、?... - 2018/11/06 19:04:12.505 0E2h+2bT0 5/15

「…無理。絶対無理。ダメだよ。」えぇ…。そんな言う?ダメなの?マジかよ死にたい…。

「毎日あって、話して、屋上さんともっと一緒にいたいと思ったんス。付き合ってくれませんか?」粘ってみた。

「…ありがとう。けど、ごめん。」



俺は屋上から走って出た。

明日から、冬休みが始まる。

9 : 以下、?... - 2018/11/06 19:09:34.329 0E2h+2bT0 6/15

次の日、冬休みなのに屋上に行ってみた。

このまましばらく会えないのは嫌だし、付き合うとか置いといてLINEくらい交換したい。

でもその日屋上さんが来ることは無かった。

その日俺はLINEで数少ない女友達に「奥上さんって人知ってる?先輩の。」と聞いてみたが「知らない」としか帰ってこなかった。

サッカーの練習は高校のグランドでやるのだが、その時ふと屋上を見ても誰もいなかった。まぁ冬休みなのにわざわざ学校来ないよね。と思った。気づくのが遅すぎである。


もうすぐ、クリスマスだ。

11 : 以下、?... - 2018/11/06 19:19:04.276 0E2h+2bT0 7/15

クリスマスに女の子と遊んだことなんてないし、彼女もいた事がない俺はクリスマスなんて全く興味なかった。ホントだぞ?

でも、今年のクリスマスは屋上さんと会いたいな。と思った。そこで俺は担任の先生に屋上さんのことを聞いてみようと思った。

担任は体育の先生で、女子を受け持ってる。だから屋上さんのことを知ってると思った。我ながら名案だ。

そうと決まれば善は急げ。学校に電話してみることにした。最初は事務員の人だったと思うがすぐに担任がでてきた。クリスマスだと言うのに残念な人だ。あ、ブーメランだった。

「先生こんにちは。急にすみません。先生、奥上さんって人知ってます?女子でショートカットの可愛い子。」

「なんで冬休み始まって生徒からの最初の電話が君でしかもなんで俺は女子生徒のこと聞かれてるのかな?」何か悪口言われた気がする。

「まぁいいじゃないすか。先生は女子体育受け持ってますよね?知りません?」

「奥上…か。知らないな…。ちょっと待ってろ。」名簿を見てくれるらしい。いい教師だ。

12 : 以下、?... - 2018/11/06 19:23:11.572 0E2h+2bT0 8/15

「奥上なんて子はこの学校に居ない。」


何を言ってるか分からなかった。いないわけないだろと。何を言ってるんですかと。

とりあえずお礼を言い俺は学校へ向かった。何か良い考えがあったわけじゃない。しかし学校にチャリで向かった。

玄関前にチャリを雑に置き上履きを履こうと金属製のロッカーを開けた。冷たいし静電気が痛かった。チャリが倒れる音がした。

13 : 以下、?... - 2018/11/06 19:26:16.272 0E2h+2bT0 9/15

下駄箱のロッカーも閉めずに階段を登って屋上へ向かった。

やはり、誰もいなかった。

俺はしばらく立ちつくしていた。息が落ち着いてきた。頭が冷えてきた。

そして冷静になった頭にある違和感が引っかかる。

15 : 以下、?... - 2018/11/06 19:33:09.640 0E2h+2bT0 10/15

『 下駄箱の木のトゲが刺さったの。』

『奥上なんて子はこの学校に居ない 。』

『不思議な美しさを持つ目が気になった。』

『…ありがとう。けど、ごめん。』

『見てない。テレビとか見ない。』

違和感を感じる言葉が沢山あった。まず1回も学校で会わないなんてことがあるか?

下駄箱のロッカーは3年前に木から金属製のロッカーに変えられている。


つまり…

17 : 以下、?... - 2018/11/06 19:37:02.968 0E2h+2bT0 11/15

「屋上さんは存在しない…?」有り得ない。だって俺と話してた。笑ってもいた。馬鹿な。そんなはずない。冷静な自分が言う。「触れたことはあったか?彼女が寒がったことがあったか?飴を食べてるところを見た事があったか?」信じたくない反面納得してる自分がいる。



嘘だ。

20 : 以下、?... - 2018/11/06 19:41:04.921 0E2h+2bT0 12/15

ふ、とスイカ味の飴を思い出した。何故そうしたかはわからない。でも覚えてる限りの情報を打ってスマホで調べた。想像通りだった。信じたくない情報が現れた。

「BULLY社が販売していたスイカ味の飴は2015年に販売中止。」

21 : 以下、?... - 2018/11/06 19:48:00.770 0E2h+2bT0 13/15

「やっぱり…バレちゃった?」いつの間にか後ろに屋上さんがいた。

「屋上さん…貴方は……何…?」

「……実は私は」


屋上さんは何かを言おうとした。時間がスローで流れていく。言葉を紡ぐ数秒が何時間にも感じる。


「あなt」


彼女はそこで霧散した。

22 : 以下、?... - 2018/11/06 19:53:42.550 0E2h+2bT0 14/15

あの時彼女は何を言おうとしたのか。

恐らく彼女は霊の類だろう。きっと調べてみれば何かしらの事件があるはずだ。


彼女は俺をどう思ってくれたのだろう。

なんで俺に声をかけてくれたのだろう。


もう一生わかることの無いであろう考えを今日もまた繰り返して想い、過ごしてしまう。


これは


もう何年もたった今でも忘れられない少し不思議な恋の話だ。

23 : 以下、?... - 2018/11/06 19:54:54.678 0E2h+2bT0 15/15

おわり。
嘘ってそっちの意味じゃねーよw
まぁ初なのでクソみたいな話でしたが見てくれたり突っ込んでくれた方々ありがとうございました。

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