ガイド「こちらが一億年以上も昔から存在する氷山です」
男「へぇ~」
男「一億年ってことは、恐竜がいた時代から存在したってこと?」
ガイド「そうなりますね」
男「すごいなぁ……」
ドロ…
男「――ん?」
元スレ
男「溶けた氷の中に恐竜がいたから玉乗り仕込むことにしたわ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1541419807/
ドロドロ…
男「!?」
男「ガイドさん、氷が……溶けてる!」
ガイド「え!?」
ガイド「ひいいっ! きっと地球温暖化の影響で! うわぁぁぁぁぁ!!!」タタタタタッ
男「あっ、ちょっと置いてかないで!」
ドロドロドロドロドロ…
男「やべえ、すごい勢いで溶けてきた!」
男「……ん!?」
ドロドロドロドロドロ…
男「氷の中になんかいるぞ……!?」
モゾモゾ…
男「しかも動いてる! 生きた状態で凍って、コールドスリープみたいになってたのか!?」
恐竜「ギャオォォォォォォンッ!!!」
男「あれは……恐竜!? 恐竜の子供か!?」
恐竜「ギャオオオオオオンッ!!!」
男(く、食われる……!)
恐竜「グオオオオオオオオッ!!!」
男(腰が抜けて動けない……)
恐竜「ギャァァァァァァス!!!」
男(もうダメだ――!)
恐竜「ギャウッ!」
男「……?」
恐竜「ギャウ、ギャウッ」
男(なんでか知らんけど……俺に懐いてる?)
恐竜「ギャオォ~ン」ペロペロ
男「よせよ、くすぐったい」
男「決めた! お前のこと……飼ってやるよ!」
恐竜「ギャオンッ!」
男「ほら、肉だ」ドサッ
恐竜「ガウッ、ガウッ!」ガツガツ
男「ハハハ、うまいか」
男(さて、飼い始めたはいいけど、食事代がバカにならないな……)
男(俺の収入だけじゃとても養いきれない……)
男(なにか芸でも身につけさせて、ひと儲けしたいなぁ)
男「お?」
恐竜「ギャウッ!」コロコロ…
男「お前……ボールが好きなのか?」
恐竜「ギャオンッ!」
男「……」
男「そうだ! だったら玉乗りを仕込もう!」
男「世にも珍しい玉乗りする恐竜……絶対流行るぞ!」
男「おい、恐竜」
恐竜「ギャウ?」
男「このでかいボールの上に乗ってみろ」
恐竜「ギャオォォンッ!」ヒョイッ
コロコロ…
男「お、いいぞ! うまいうまい!」
恐竜「ギャウンッ!」ドテンッ
男「あっ!」
恐竜「ギャウゥ……」
男「大丈夫か? 今思い切り頭打っただろ……」
恐竜「ギャウウ!」
男「なに? もう一回? お前根性あるな……よーしもう一回だ!」
恐竜「ギャウ、ギャウ……」コロコロ…
男「いいぞ!」
恐竜「ギャウンッ!」ドテンッ
男「ああっ!」
男「残念……だけど今は一分近くできてた! もう一回だ!」
恐竜「ギャオス!」
やがて――
恐竜「ギャオォォォォォンッ!!!」コロコロ…
男「おおっ……!」
男(完璧だ……! まるでサーカスを見てるようだ……! これならイケる!)
男「よーし、玉乗り恐竜としてデビューするぞ!」
恐竜「ギャオンッ!」
男「さあさあ、皆さんご覧になって下さい!」
男「世界初! いえいえ史上初! 玉乗り恐竜でございまーす!」
恐竜「ギャウッ! ギャウッ!」コロコロ…
ワァァァァ……!
「すげー!」 「玉に乗る恐竜なんて初めて見た!」 「てか恐竜自体初めて見た!」
男「すごいぞ! 玉に乗ってただけなのに、こんなにおひねりをもらえた!」
恐竜「ギャウッ!」
男「この調子でもっともっと稼ぐぞ!」
恐竜「ギャオォン!」
男「そしてゆくゆくはテレビ出演して……大スターになるんだ!」
恐竜「ギャオォォォォォォォン!!!」
~TV番組~
司会者「さぁ、本日のゲストは――今話題沸騰中の玉乗り恐竜です!」
ワァァ……! ワァァ……!
男「どうもー!」
恐竜「ギャオオー!」コロコロ…
パチパチパチパチパチ…
男「さ、皆さんにご挨拶して」
恐竜「ギャオ!」ペコッ
司会者「おおっ、すごい! とても賢いですね!」
男「ええ、恐竜は理性がないなんてよくいわれますが、彼はとても頭がいいんです」
男「じゃあさっそく芸を披露しましょう」
男「玉に乗った状態で……バク宙!」
恐竜「ギャウンッ!」グルンッ
司会者「なんと! あの巨体でバク宙を!」
オオォ~……!
男「……ふぅ」
男「有名になったのはいいが、すっかり忙しくなっちゃったな」
男「大丈夫か?」
恐竜「ギャウ!」
男「さすが氷漬けでも生きてただけある……体力は俺よりずっと上だな」
男「よーし、今日は新しい芸“玉に乗りながら卵を割る”に挑戦するぞ!」
恐竜「ギャオンッ!」
そして――
男「こ、これは……!」
『あなた方を≪世界玉乗り選手権≫にご招待します』
男「まさか、招待されるなんて……!」
男「この大会で優勝すれば、お前は名実ともに最高の玉乗り恐竜になれる!」
男「絶対優勝するぞ!」
恐竜「ギャウン!」
大会当日――
ワイワイ… ガヤガヤ…
審判「まずは予選を行います!」
審判「予選の内容は……一時間玉に乗り続けることです!」
審判「クリアできた選手のみが本戦に出場できます!」
男「なーんだ、この程度なら楽勝だな」
恐竜「ギャウギャウ」
審判「……一時間経過!」
審判「玉に乗っている選手のみが、本戦に出場できます!」
男「どうだ? 疲れたか?」
恐竜「ギャウン」フルフル
男「だろうな……だが、ここからが本番だ! 最後まで玉には乗っても図には乗らないようにな!」
恐竜「ギャウ!」
その後、男と恐竜は次々と勝ち進み――
男「いけっ! 必殺“玉乗りしながらトリプルアクセル”!」
恐竜「ギャウゥゥン!」ギュルルルルッ
審判「す、素晴らしい! 文句なしの満点です!」
恐竜「ギャゥゥゥゥゥゥ!」コロコロコロ…
男「よっしゃ、玉乗りレースも一位だ!」
実況『さあ、≪世界玉乗り選手権≫……いよいよ決勝戦!』
実況『優勝の栄冠はご覧のメンバーで競われます!』
ワァァァァ……!
恐竜「ギャウッ!」
クマ「ベアッ!」
フンコロガシ「フンッ!」
ウサギ「ピョンッ!」
男(さすが決勝戦、どのメンツも俺の恐竜に劣らない……)
男(だが勝つ!)
実況『決勝戦は地獄の耐久マッチ! 一番最後まで玉に乗っていた選手が優勝です!』
実況『なお、玉から降りなければ玉の交換は認められます!』
審判「始めっ!!!」
恐竜「ギャウウ……」コロコロ…
クマ「ベアアッ!」コロコロ…
フンコロガシ「フンッ!」コロコロ…
ウサギ「ピョピョピョ……」コロコロ…
三時間経過――
恐竜「ギャウ……」コロコロ…
実況『さすがです! 未だに四選手とも安定しています!』
男(こうして見てるだけしかできないのが歯がゆい……)
六時間経過――
ウサギ「ピョッ!?」ドテッ
飼い主「ああっ、ピョン助!」
実況『あーっと、ここでウサギが脱落ゥ!』
九時間経過――
フンコロガシ「フンッ!?」ドテッ
少年「うわぁぁぁぁん! ぼくのフンコロガシがぁ!」
実況『フンコロガシもここで無念のリタイア!』
男(これで、あとはあのクマとの一騎打ちか!)
十二時間経過――
恐竜「ギャォォ……」コロコロ…
クマ「ベアッ!」コロコロ…
実況『両者、安定していますが――』
恐竜「ギャウ!?」
ミシッ…
実況『おっとここで、恐竜が乗っている玉にヒビが!?』
実況『このままボールが壊れてしまえば、恐竜は脱落です!』
男(まずい、予備の玉なんて持ってきてなかった!)
ミシミシミシ…
恐竜「ギャウゥゥゥ……」
実況『みるみるボールが恐竜の体重で潰れていく! このまま脱落かァッ!』
男(ボールはあと数十秒ももたない!)
男「こうなったら!」
男「俺が玉になる!」マルンッ
恐竜「ギャウ!?」
男「さあ、俺の上に乗れ! 頭の上に乗れ!」
恐竜「ギャゥゥ……」
男「ためらうな! 俺だってたまには体を張りたいんだ! 乗ってくれぇっ!!!」
恐竜「ギャオォォンッ!」ドスンッ
男「ぐっ!?」メキッ…
メキメキメキ…
男(お、重い……!)
男(だが、嬉しいぜ……だって俺は……愛する恐竜に……)
男(乗ってもらえてるんだから……!)
実況『これは凄まじい光景だ! 恐竜に乗られているというのに、なんと主人は笑っている!』
実況『笑顔ウルトラZだァ~~~~~~~~~~!!!!!』
クマ「ベアァ……」ドサッ
実況『ここでついにクマもバランスを崩したァッ!!!』
男「や、やった……!」
恐竜「ギャオォォン!」
審判「勝者、男&恐竜コンビ!」バッ
実況『優勝は男選手と恐竜選手のコンビだァ~~~~~!!!』
男「よく、やった……」ガクッ
恐竜「ギャウ!?」
審判「いかん! すぐ病院へ搬送するんだ!」
ピーポーピーポー… ピーポーピーポー…
…………
……
医者「目が覚めましたか」
男「……うう」
医者「奇跡です。あのまま目覚めない可能性の方が高かったですからね」
医者「自分の何倍も大きい恐竜を頭に乗せるなんて、まったく無茶をなさる」
男「そうしなきゃ、勝てなかったですから……」
恐竜「ギャオオオオオン!」ペロペロ
男「心配してくれてたのか……ありがとう」
医者「しかし、脳の損傷が激しく、大部分を切除してしまいました」
医者「さいわい、残りの部分が機能を補ってくれているようで、日常生活に支障はありませんが」
医者「今後、どのような影響が出てくるか……」
男「なに、大丈夫ですよ」
男「だって……頭からっぽの方が夢詰め込めますからね!」
恐竜「ギャオォン!」
―おわり―