ボリス「はっ」
バラライカ「それが何だと言うのだ」
ボリス「この男、最近になってアメリカから来たのですが、どうも不審な点が多いもので」
バラライカ「不審だと?」
ボリス「アメリカからわざわざロアナプラに訪れたこの男について調べたのですが、ある年を境に経歴が抹消されているんです」
バラライカ「ふむ・・・名前は?」
ボリス「ケイシー・ライバックです」
元スレ
バラライカ「・・・コックだと?」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1233507482/
バラライカ「コックだと・・・?」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1233680172/
バラライカ「ケイシー・ライバック・・・」
ボリス「どうかされましたか?」
バラライカ「いや、どこかで聞いたような名前なのだが・・・・」
ボリス「いかがいたしましょう」
バラライカ「確かに気になるな・・・・
しばらく動向を見ながら、奴の過去と経歴を調べろ」
ボリス「はっ」
~ロアナプラ・三合会タイ支部~
張「経歴不明の男、ケイシー・ライバック・・・」
ビウ「アメリカからこんな街に来たというのが引っかかって調べてみたのですが・・・」
張「こんなクソ溜めの街に単身で観光・・・というわけじゃなさそうだな」
ビウ「どうしますか、アニキ?」
張「アメリカ絡みだとまた面倒になるぜ。
・・・・まだ行動をおこすべきじゃないな」
張「コックだっていうが、まさかタイ料理を勉強しに来たわけじゃないだろう。
ここは出所不明の半分腐った肉をそのまま人様に出すような所だぜ。」
ビウ「腐りかけは美味いらしいんですがね」
張「黙ってろ馬鹿。
・・・・何か起こらない限りは様子見だな」
ビウ「わかりました」
~イエロー・フラッグ~
バオ「・・・・あんた見ない顔だな」
ライバック「ちょっと探し物があってな」
バオ「先に忠告しておくが、ここはよそ者はあまり歓迎されない。
この街の唯一といっていい中立地帯も例外じゃないぜ」
ライバック「それはおだやかな話じゃあないな」
チンピラA「おい見ろよ、あそこで酒飲んでるのは新顔か?
飲んでるのは馬の小便か、ポニーテール?」
バオ「ほおら、いわんこっちゃない・・・・
おい!喧嘩なら裏でやれよ!」
ライバック「面白いジョークだな。
笑えるよ」
チンピラA「がはははは!
笑えるだとよ!」
バオ「あんた、温厚なんだな。
この街じゃ珍しい人種だ----」
チンピラA「そのデカイ図体は飾りか?
はははははははは!!」
ライバック「お前の薬漬けの頭よりは役に立つと思うがな」
チンピラA「あ?何だって?」
チンピラB「やるのかデカブツ!!」
ライバック「いや、やめとくよ。
そんな気分じゃない」
バオ「あんたがイエスに見えるぜ。
あのクソ女にも見習って欲しいもんだぜ」
チンピラA「おい!ホモ野郎!!」
ガタッ!!!
バオ「お、おい、あんた、やめた方がいいぜ・・・」
チンピラB「お?やる気になったか?」
ライバック「お前達みたいな口先だけのアル中を相手にしても疲れるだけだが・・・運動したいっていうなら相手してやるよ」
チンピラA「ンだとゴラァ!!!!」
チンピラD「いい度胸だ!!!!」
ガタッ!!ガタッ!!ガタッ!!
バオ「ああくそ、結局これかよ・・・・」
男の一人が拳を振り上げ、ライバックに向かって突進していく。
理不尽な怒りとアルコールに任せて乱暴に振られたパンチを横に一歩引いてかわし、相手の体勢が崩れかけた所をライバックが腹部に蹴りを見舞う。
チンピラC「おええええええ!!」
チンピラB「野郎ゥ!!!」
続いてビール瓶を持った男がライバックめがけ、その得物を振り下ろす。
そのビール瓶が完全に振り下ろされる前に、ビール瓶を持った手首を握り、勢いを止める。
それから反撃の猶予も与えずに手首をぐるりと回す。
チンピラB「ギャアアアア!!!!」
完全に手首を極められ、のけぞったまま汚い悲鳴をあげるチンピラの顔面に向かって、ライバックは上から体重を乗せた肘を浴びせた。
チンピラC「クソッタレがああああ!!!!」
恐怖に押されつつも、チンピラCが身近にあったイスで殴りかかる。
ライバックはあわてるでもなく、チンピラCの前足に体重の乗った瞬間を狙って足を刈る。
そして、思わず膝をついたチンピラCの顔に廻し蹴りを放った。
グシャアア!!
チンピラCの体が吹っ飛び、付近の机やイスを倒しながら動かなくなる。
チンピラA「そ、そ、そ、そこまでだァ!!!!」
バオ「おい、今すぐ銃をしまえ!!!」
チンピラA「うるせぇ、バオ!
頭に風穴開けられて店を乗っ取られるよりはマシだろう!!!!」
チンピラA「何笑ってやがる!!!!」
ライバック「お前に銃が使えるとは思えなくてね。
照準は合わせられるか、坊や?」
チンピラA「それ以上近づくんじゃねえ!」
ライバック「安全装置は確認したか?
かかったままだぞ」
チンピラA「え?」
その瞬間、ライバックは身長190cmを超えている巨体とは思えないような俊敏な動きで男の銃を掴み、銃口を正反対の方向にチンピラの手首ごとひねって向ける。
同時に安全装置を解除した銃の引き金を、チンピラAは勢い余って引いてしまう。
バン!!!
チンピラA「ガアアアアアア!!!!」
腕を撃ち抜かれ、わめき散らすチンピラを一度手前に引いて体勢を崩すライバック。
そして前によろめいた瞬間に、男の首に腕をまきつけた。
チンピラの体が一瞬浮いた次の瞬間、そのまま頭から床にたたきつける。
~10分後~
ダッチ「仕事の終わりに来てみりゃあ・・・。
こいつぁ、また派手に模様替えしたもんだ。
コンセプトは{大乱闘}だろうな。」
バオ「こいつが模様替えに見えるってんのか?
ああ、クソ・・・・。」
ロック「何があったんだ、バオ?」
バオ「どーしたもこーしたもあるかよ・・・・。
酒場での乱闘だ----いや、乱闘というよりも一方的な制圧だ。
あれを見たらジョン・ウェインだって泣きながら謝るぜ。」
ロック「乱闘?」
バオ「つい最近、この街に来たっていう男がチンピラに絡まれて、この様だ。」
レヴィ「一人相手でこの惨状か?
だったらよっぽどエグいショーだったろうな。
その男にとっちゃ生涯の悪夢間違い無しだ。」
バオ「レヴィ、{制圧された}のはそのチンピラ共の方だぜ。
外で転がってんのを見なかったんなら、きっと今頃病院のベッドで悪夢見てンのはあいつらだ。」
ダッチ「なに?」
~翌日~
張「乱闘騒ぎか・・・・。」
ビウ「バオから聞いた特徴からして、例のコックだと思われます。」
張「たった一人で、それも素手で10秒足らずでチンピラ共を病院送りか・・・・。」
ビウ「バオの話によると、なんでも{探し物}があるとか・・・。
去り際に女の写真を取り出して所在を聞かれたそうです」
張「女のケツを追いかけてこの街に来たってのか?
全てを失った自殺志願者でももうちょっとマシな死に方を選ぶぜ」
ビウ「どうしますか、アニキ。
接触しますか?」
張「まだ動くな、この騒ぎはフライフェイスの耳にも入ってるだろう。
近いうちにまた{お茶会}でも開くさ」
-----
バラライカ「・・・・どうやら物事はあまり穏やかに進みそうもないな」
ボリス「少なくとも、ただのコックではなさそうですね」
バラライカ「同士軍曹、奴についての調査を現在の最優先事項とする。
あの男が探していたという女についても、出来るだけ調べ上げろ」
ボリス「はっ」
バラライカ「ライバック・・・・やはりどこかで聞いたような・・・・」
~ロアナプラ・市場~
ロック「それにしても凄いじゃなか。
たった一人で複数を圧倒するなんて」
レヴィ「は、バオの野郎は自分の店が壊されるときには大袈裟に話す癖があるんだよ。
一種のパニック障害なのかもな」
ロック「バオがパニック障害なら、とっくの前に廃人だろうさ。
可哀想に・・・・」
レヴィ「それに、よそ者がこんな騒ぎを起こしちゃあ、姐御も張の旦那も、もちろん他のどの連中だって黙っちゃいないさ」
ロック「・・・・まあ、俺達が関わらないことを祈るよ」
レヴィ「なあに、どうせすぐに{冷たく}なって出てくるさ。
ここはそういう歓迎の仕方しか出来ないんだからな」
レヴィ「ひょっとしたら今アタシ達が食ってるこの肉が、その{超人}さんかもしれないぜ」
ロック「文字通り食ってる最中にやめてくれよ・・・・。
・・・・ん?」
レヴィ「?
なんだよ」
ロック「あそこの魚市場に入っていった男、後ろで縛った髪型といい、バオの言っていた男に似ていたような・・・・」
レヴィ「あン?」
ライバック「この娘を知らないか?」
「・・・・知らないね」
ライバック「この娘をどこかで見なかったか?」
「・・・・見たことないな」
ライバック「そうか・・・」
「おい!待ちなデカブツ!!」
ライバック「俺の事か?」
イタ公「ああ、そうだ!
てめエが昨日、仲間に手を出した張本人だろ!!」
ライバック「あのチンピラ共の仲間か・・・・」
イタ公「病院送りじゃすまないぜ!
この街のベッドにはもう空きがないんでな。
そのまま棺桶にでも突っ込んでやるよ」
ライバック「そうか、それが一度に10人もいるんじゃ、商売繁盛だな」
イタ公「なめやがって・・・・!
お前ら、やっちまえ!」
レヴィ「どうやらビンゴみたいだぜ、ロック。
あの野郎、イタリアンに喧嘩売ったのか」
ロック「だけど、悪いのはあいつらだろうに・・・」
レヴィ「ロック、この街はそういう連中で構成されてることぐらい、もう理解してるだろう?
まあ、こいつらがどう料理するか見てやろうぜ。
ピザを焼くよりかは手間取るかもしれないけどな」
ナイフをちらつかせるイタリア人達が襲いかかるのが先だったにも関わらず、吹っ飛ばされたのも同じくイタリア人だった。
ナイフを振り回す腕を掴み、軽く捻るような動作でイタリア人はことごとく宙を舞わされていく。
イタ公「グアアアア!!!」
露店や凍った魚が陳列されている棚に次々とほうり投げられていった。
捨て身のタックルで攻撃するも、ライバックの膝蹴りでそのまま真後ろにはじき飛ばされたり、掌での突きで戦闘不能になっていく。
イタ公「来い、オラアア!!」
ボクシングの構えを見せた最後の一人が、ライバックに対して徒手格闘戦を挑む。
ただただパンチのラッシュを放っていくイタリアのチンピラ。
しかし、その全てを上から叩き落とされ、撃墜されていった。
そして一瞬の隙をついてライバックが男の膝を蹴る。
それから流れるような動きで、男の体に目にも止まらぬ速さで連撃を叩きこんでいった。
もう意識の飛んだ男を前蹴りで果物の詰まったカゴに突っ込み、フィニッシュ----と思われた。
「クソが!!!」
まだかろうじて動く力があったチンピラの一人が立ち上がり、至近距離で銃を向けていた。
引き金はもうあと1ミリ引けば、鉛玉が発射される状態だった。
そして引かれる引き金、鼓膜を直接刺激するような発砲音。
しかし、ライバックには当たらず、代わりにその先にあったスイカを砕いただけだった。
その場で側転に似た動きで銃弾をかわしたライバックが、同時に宙にいる体勢からチンピラの頭に蹴りを浴びせていた。
その場でチンピラが崩れ落ちたことで、またひとつの{ショー}が終演となる。
レヴィ「・・・・見たかい、ロック。
アイツ、弾を避けたぜ」
ロック「ああ、見たさ・・・・。
どうやら彼はマトリックスから解放された人間らしい」
レヴィ「なあロック、アイツが使ってたのは{ブジュツ}ってやつかい?」
ロック「・・・・ああ、そうだ。
知らないものもあるが、{合気道}を使っていた。
あんな本物は初めてだけどな・・・・」
レヴィ「{アイキドー}ねェ・・・・」
ロック「おい、どうする気だよ・・・」
レヴィ「ここまで{魅せられ}たら我慢できねェさ・・・・」
レヴィ「おい、待ちなそこの{ブジュツマスター}」
ライバック「どうしたんだい、お嬢さん。
こいつらを病院に連れて行きたいなら勝手にすればいいさ。
病院が空いてたらの話だがな」
レヴィ「それはアタシの仕事じゃあないな。
それよりももっと{楽しい}ことがしたいな」
ライバック「どういうことかな?」
レヴィ「こういうことさ」
チャギッ!!
ロック「レ、レヴィ、何してるんだ!!」
ライバック「なるほど、そういうことか」
レヴィ「理解が早くて助かるよ、カウボーイ。
血が煮えたぎって仕方ないンだ。
ここのところ、色々とご無沙汰なもンでね」
ロック「レヴィ、銃を下ろせよ----え?」
レヴィ「あン?」
ドシャア!!!
~ラグーン商会・事務所~
ダッチ「----で、それでそのまま気を失ってロックに運ばれてきたわけか・・・。
なんとも間抜けな話だな」
ベニー「しばらくは街で話のネタにされるぞ。
・・・・射殺された死体も増えそうだ」
レヴィ「ファック!!
そりゃあクソ面白いだろうよ!!!
てめェからふっかけておいて、何も出来ないで失神するなんて話はな!!!
クソったれが!!!」
ガンッ!
ロック「頼むからこれ以上ゴミ箱を蹴らないでくれ・・・・。
散らかったゴミとゴミ箱の破片を片付けるのは結局俺なんだ・・・・」
ダッチ「それで、ロック。
その男はどんな感じだったんだ?」
ロック「バオの言った通り、かなりの巨体で後ろに髷を作った男だ。
そして、バオの言ってた通りとにかく強い。
10人の男を素手で無傷のままポイッ、だ」
レヴィ「銃弾を真っ二つに斬る奴だって見た・・・。
だが、あいつは後ろからの銃撃をそのまま避けて、そのまま相手を倒した。
只者じゃないのははっきりしてるぜ」
ダッチ「そんな奴がこの街に何の用だってんだ。
第二のキリングマシーンのお出ましか?
シュワルツェネッガーだってこんな頻度でキリングマシーンを送り込まれたらあっという間にスクラップだ」
ロック「そういえば、その男に女の写真を見せられたよ。
普通に話すときは温厚な感じだったけど・・・・」
レヴィ「ヘイ、ロック。
お前はアタシが{アイキドー}でノビてる隣で仲良く相談会を開催か?」
カチッ・・・・。
ロック「銃をおろしてくれ、レヴィ。
チビりそうだ・・・・」
レヴィ「そうかい、なんなら小便しやすいように膀胱に穴空けてやろうか?」
ダッチ「まあ落ち着けよレヴィ。
本当に漏らされる前に話を聞こうじゃないか」
ベニー「それで、何を聞かれたんだい?」
ロック「{この写真の女を知らないか?}って聞かれたよ。
多分、バオのときと同じだけど、一枚は若い女の、もう一枚は子供を抱えた女性だった。」
ダッチ「・・・・失踪か何かか?
この街じゃ日常茶飯事だからな。
下手したら俺達にも火の粉が降りかかるぞ」
レヴィ「火砕流だって構いやしねェよ。
何がなんでも借りは返してやる!!」
ベニー「まあ、この街の{影の首脳達}も動き出したらしい。
調べによると、その男は凄腕のコックらしい。
名前はケイシー・ライバックだ」
ダッチ「・・・・・」
ロック「どうしたんだい、ダッチ?」
ダッチ「昔どこかで聞いたことがある名前だ・・・・。
軍にいたときか・・・・はっきり思い出せないが・・・・」
レヴィ「ああ、ファック!!!!
アタシはコックにやられたってのか!!!」
ロック「とにかく、しばらくレヴィを一人で街を歩かせるのは危険だな・・・」
~集会所~
バラライカ「あら、イタ公。
今日は静かね。
どういう風の吹き回しかしら?」
ロニー「・・・・・」
アブレーゴ「勘弁してやんな、セニョリータ。
これ以上苛めるといじけちまう。」
バラライカ「ふふ、部下をコテンパンにやられてよくも顔を出せたものだな」
張「まあ負い目を感じるのは勝手だが、名誉挽回といってこれ以上騒ぎを大きくするなよ。
ただの恥さらしだ」
アブレーゴ「それで、セニョール・張。
その男な何者なんだい?」
張「奴はケイシー・ライバック。
現役のコックだ」
アブレーゴ「コックだって?」
アブレーゴ「おいおい。
あんたのセンスは知ってるが、いくらジョークでももうちょっとマシなのがあっただろう」
バラライカ「・・・・プッ」
パリーン!!
張「残念だがな、こいつはジョークでもなんでもない。
奴はコックなんだよ。
だが、それは現在の話だ。
問題は奴の{過去}にある。
そうだろう、フライフェイス?」
バラライカ「そうね、ベイヴ。
かなり手間取ったけれど、それなりの情報は手に入った。
それはお前も同じようだな」
張「奴はステイツの元軍人だ。
それもかなり{特別}な部隊のな。」
ロニー「なに?」
バラライカ「正確に言えば、元海軍特殊部隊{SEALs}の対テロ部隊の指揮官だった。
それから戦艦{ミズーリ}のコック長として活躍していた。
その数々の戦績と表彰は、我々{エクスミリタリー}にとっては羨望を覚えるものばかりだ」
張「そして、この男の目的は{女}だ。
だが、詐欺や夜逃げをされてわざわざ追いかけて来たわけじゃないだろう。
恐らく失踪、あるいは誘拐に関係している」
アブレーゴ「それで、何が言いたいんだ?」
張「この男には出来るだけ関わるな。
あのネジがひとつ残らず吹っ飛んだメイドとは違って、この街を壊滅させるわけじゃないだろう」
ロニー「ただ黙って見守ってろっていうのか?」
バラライカ「なんだ、イタ公。
まだ減らず口が叩けるのか?
見てるこっちが恥ずかしい」
アブレーゴ「酷く惨めな遠吠えにしか聞こえないぜ、ロニー。
今回ばかりは大人しくした方がいいんじゃなえか?」
張「これ以上、恥をさらして泥を上塗りするのはやめろ。
そのままじゃ、一生ピザ屋で釜を見つめる羽目になるぜ」
ロニー「・・・・・うっ・・うっ・・」
アブレーゴ「おいおい、泣いちまったぜ」
バラライカ「ここまで情けないと何だか私たちが悪いことしたみたいね」
張「口達者かと思えばお次はお涙頂戴か、面倒くさい。
いちいち癪に障る奴だな。
とにかく、今日の集会は以上だ。
この男にはせいぜい関わらないことだ。
ピザ屋勤めは嫌だろう」
ロニー「あの男のせいで・・・俺の面子が・・・威厳が・・・人生が・・・」
~バラライカ所有者・車内~
バラライカ「ふふ、今日でイタ公のくだらない漫談を聴かなくて済むかもしれんな。
実に愉快だった」
ボリス「ケイシー・ライバックがもたらしたメリットのひとつかもしれないですね」
バラライカ「ふふふ、悪い方は起こって欲しくないがな」
ピリリリリリッ・・
ボリス「大尉、失礼します」
ボリス「・・・・本当か?
・・・・わかった、こちらでお伝えする」
ピッ
バラライカ「どうした、同志軍曹?」
ボリス「・・・・それが、調査隊からの連絡だったのですが・・・・」
バラライカ「続けろ」
ボリス「・・・・我々の傘下の組織が小さな揉め合いで誘拐をした人間の中に・・・・ライバックの姪がいたそうです・・・・」
バラライカ「・・・今、その姪はどこだ?」
ボリス「昨日、{見せしめ}として処刑を・・・・」
バラライカ「・・・・軍曹」
ボリス「はっ」
バラライカ「ヴ、遊撃隊を召集しろ、急げ!!」
ボリス「はっ」
~張の個人オフィス~
張「くくく、イタリアン・マフィアはもう骨が抜かれた猿のように立て直しもきかないだろうな」
タッタッタッ・・バン!!
ビウ「アニキ?」
張「なんだ騒々しい。
扉ぐらいスマートに開けろよ。
また壁にドアノブの跡がついただろうが」
ビウ「そ、それが・・・・今入った情報なんですが・・・」
張「なんだ?」
ビウ「つい先日、揉め事を起こした観光目的の子連れの女を誘拐したじゃないですか」
張「俺は覚えてないが、それがなんだ?」
ビウ「あれ、ライバックの子供と妻だそうです」
張「・・・・今その二人は?」
ビウ「・・・・すでにソーヤーが生きたままバラとミンチに・・・・」
張「・・・・・」
ビウ「どうしますか、アニキ!?」
張「・・・・ビウ」
ビウ「はい」
張「メンバー全員に武装させて、急いでこの建物に集めろ。
シェンホアも呼べ!
今すぐだ!!」
ビウ「・・・・はい」
~アブレーゴ私邸~
リリリリリリン・・・ガチャ
アブレーゴ「なんだ?」
部下「今そっちにメイドが血眼になって・・・ギャアアアアア・・・・」
アブレーゴ「誰かテキーラ持って来い!!」
~ロアナプラ・{暴力}教会~
エダ「お待ちしておりました、ミスター・ライバック」
ヨランダ「久しぶりだね、ケイシー」
ライバック「ご無沙汰しています、ミス・ヨランダ。
大きくなったな、エダ」
ヨランダ「ゆっくりしていきな、と言いたい所だが、事態はそんな悠長でもなくてね。
頼まれてた情報を探ってみたが・・・ビンゴだ」
ライバック「やはり、この街に・・・・」
ヨランダ「あんたの姪はホテル・モスクワに、妻と子供は三合会に囚われていたいたよ・・・」
ライバック「{いた}というのは・・・?」
ヨランダ「お気の毒だが、三人ともみんな・・・・」
ライバック「・・・・・」
ヨランダ「本当に気の毒だよ」
ライバック「・・・・その二つの組織の所在を教えて欲しい」
ヨランダ「それはアメリカの首都がどこかを調べるよりも簡単な情報だが・・・やめといた方がいいと思うがね」
ライバック「許すことなど出来ない。
奴らには血の代償を払わせる」
ヨランダ「そうかい・・・・。
今のあんたには老婆心なんてただの障害だろうね」
カリカリ・・・・。
ヨランダ「このメモに記した住所にそれぞれの建物がある。
せいぜい頑張んな。
それから、あんたのための武器がある。
あんたは昔からコルトに愛着があるからねぇ。
エダ、持って来てやんな」
エダ「ヤー、シスター」
ヨランダ「あの娘も今じゃ立派なステイツの札ツキさ・・・。
昔はよく、あんたと遊んでたねぇ・・・・」
エダ「どうぞ、ミスター・ライバック」
ライバック「恩に着る」
ヨランダ「それじゃあな、ケイシー。
またいつか」
ライバック「必ずお会いしましょう」
バタン
ヨランダ「あの男は本当に戻ってくるからおそろしいわな。
ふっふっふ」
~二日後、三合会タイ支部ビル~
張「クソッ・・・・。
いや、クソの方がまだマシだぜ」
ビウ「この建物の警備は万全です」
張「ああ、油断するなよ。
なんたって相手は虎の皮を被った悪魔だからな」
ビウ「はい」
張「それにしても、誘拐して生かしていればまだしも、殺したとなっちゃあ後戻りは出来ないからな。
酷だが・・・奴も家族のもとへ{送って}やるしかない」
ビウ「そうですね----」
ボン!!!!
張「おいおい、嫌な音がしたぞ。
何だ、今のは?」
ビウ「わかりません・・・・爆発のようですが----」
ボン!!!!ボン!!!!!
バアン!!!!!
「何だ今のは!?」
「爆弾だあああ!!」
バアン!!!!
次々と起こる爆発。
それに伴う強い爆破音と激しい衝撃。
ビルの中では警報装置が悲鳴のようにけたたましく鳴り響いていた。
ビルの各所に取り付けられたC4が人を紙切れのように木っ端微塵にし、ビルを大きく削っていく。
ライバック「・・・・」
そんな騒がしい状況のなか、ライバックはただ来たるべき時を待っていた。
そして、その来たるべき時を研ぎ澄まされた感覚で感じ取った瞬間、行動を起こす。
「・・・・!!
おい、何だお前は----」
三合会の憎むべきメンバーの一人がこちらに気付いた。
しかし、その男が言葉を言い切らないうちにM1911A1を発砲し、45口径の銃弾をぶちこんだ。
その銃声を聞きつけ、他の人間もこちらに向かって駆けつけ、銃を取り出す。
そこから、途切れることなく銃声が続く。
----
果てしなく続くかのように思われた銃撃戦はあっけなく終焉する。
ライバックが最上階にたどり着いた頃には、銃を握って生きている人間はライバックを除いてもういなかった。
ガチャ・・・・。
ライバックが静かに扉を開く。
ビウ「遅かったな、ライバック」
そこにいたのはビウ一人だった。
その手には鋭い刃に鈍い光を放つ青龍刀が握られている。
ビウ「ガッカリさせて悪いが、お前が1番会いたい人間はもうここにはいない」
青龍刀を顔の高さまで上げ、ゆっくりと構えに入った。
ビウ「代わりと言っちゃあなんだが、俺が相手をしよう」
ライバック「勘違いしてるようだから教えてやる。
俺が会いたいのは張維新だけじゃない。
・・・・俺の家族を・・人生を奪った奴は全員地獄に送るんだよ、クソ野郎。
一人残らずな」
ビウ「ウオオオオオ!!!」
ビウが怒声を上げながら青龍刀を振りかざし、ライバックに向かっていく。
ビウの雄叫びを一瞬だけ背にして、壁に飾られていた青龍刀を手にする。
そして、振り向き様にビウの空気を切り裂く剣撃をすんでのところで防御する。
一度引いたビウが剣を振りかぶり、今度は上から振り下ろすように攻撃を繰り出す。
その攻撃を剣を斜め下にして、力の方向に逆らわないように受け流す。
上半身が前のめりになるビウを、ライバックが下から斬り上げる。
しかし、ビウがなんとか体をよじって逆袈裟斬りをかわした。
そのままビウはバックステップでライバックと距離をとる。
彪「はぁはぁ・・・・。
家族が大事か?
もう無くなったものを求めるようにして闘うことほど虚しいものはない」
ライバック「・・・・・」
彪「お前の妻と子供がどんな死に方をしたか教えてやろうか?」
ライバック「・・・・・」
彪「お前の妻は生きたままバラしたよ。
指から腕、肩、脚から順にな」
ライバック「・・・・・」
彪「ガキも{活け造り}さ。
足先から少しづつ、ゆっくりとな」
ライバック「オマエカアアアアア!!!!!!!!!」
ライバックの地獄からの咆哮に、彪の体が一瞬震える。
ライバック「タタキコロシテヤル!!!!!!!!!」
ライバックが青龍刀の柄を半回転させてから握りなおした。
彪「え、ちょっと待って俺じゃなくてソーy」
グシャアアアアア!!!!!
刃の部分ではなく、峰の部分で彪の頭を叩き割る湿った音が辺りに響いた。
彪「だから俺じゃn」
ゴシャアアアアア!!!!!
彪「違うっt」
ブシャアアアアア!!!!!
彪「ごめんなs」
グチャ!!!!!
血にまみれ、形が歪み始めた青龍刀を捨てる。
壁に寄りかかった彪の体がそのまま床にずり落ち、動かなくなる。
少しその頭の{割れた}死体を見つめたあと、残っている目的を思い出す。
ライバック「逃げられないからな・・・・」
顔に付着した返り血をぬぐい、その場を後にする。
バラライカ「状況を報告しろ」
~ロアナプラ・市街地~
バラライカ「軍曹、状況はどうだ?」
ボリス「遊撃隊のそれぞれのグループは既に配置につき待機中です」
バラライカ「そうか。
気を抜くな、三合会はもう{陥落}した」
ボリス「はっ」
バラライカ「地の利は我等にある。
奴をポイント・Аに追い込めば、勝機が見える」
-----
「大尉!!」
バラライカ「なんだ」
「支部で待機中の遊撃隊からの連絡が・・・途切れました」
バラライカ「呼びかけを続けろ」
「はっ」
・・・・ガガッ
「大尉、応答がありました!」
『逃げられるとでも思ってるのか?』
バラライカ「英語・・この声・・・・仲間ではないな」
『お前達は俺の人生を毟り取った』
バラライカ「まさか・・・・!」
ライバック『お前達には代償を支払ってもらう。
地の果ての先まで追い詰めてでもな』
ガガッ・・・・
バラライカ「・・・・・」
「・・・・・」
バラライカ「・・・・ボリス」
ボリス「はっ」
バラライカ「予想される状況を説明しろ」
ボリス「・・・・支部にいる同志達は・・・遊撃隊のグループАも含めて壊滅させられたものと思われます」
バラライカ「選択肢はなんだ」
ボリス「敵の撃滅、あるいは・・撤退です」
バラライカ「・・・・・」
バラライカ「・・・・我々はアフガンから帰還したときからもはや敗走兵だった」
「・・・・・」
バラライカ「これ以上どうして退けようか・・・・」
「・・・・・」
バラライカ「全員よく聞け」
「・・・・・」
バラライカ「これより、作戦を変更する」
「・・・・!」
バラライカ「各地に配置させた残りの遊撃隊をひとつの区域に集め、合流する。
ターゲットを誘い、ポイントБにて撃滅する。
わかったら行動を起こせ!」
「はっ!」
バラライカ「無線兵、各隊に連絡をとってエリアВに結集させろ」
無線兵「はっ!」
無線兵「各2隊、至急エリアВに集合せよ。
繰り返す、至急エリアВに集合せよ」
・・・・ガガッ
『了解』
・・・・ガガッ
ライバック『こっち側はどうやら無理そうだ』
「・・・・!!?」
ライバック『代わりに俺が行ってやるよ』
ガガッ・・・・
バラライカ「くそ・・・・」
「ですが、奴はエリアВがどこなのかわからないのでは・・・・」
バラライカ「各隊には情報を記した地図を持たせてある。
奴が少しでもロシア語を知っているのならば、簡単に辿り着く」
「・・・・・」
バラライカ「うろたえるな。
結論から言えば、こちらから奴を誘い出す手間が省ける。
全員、エリアВへと向かうぞ」
「はっ!!」
~廃ビル屋上(エリアВ内)~
ボリス「来ますか・・・・」
バラライカ「わからん。
だが、地の利はこちらにある。
特にこのエリアВのように入り組んだ場所なら尚更だ」
・・・・ドシャ
「ニコライ・・・・!」
・・・・ォオオン
バラライカ「何事だ!!」
「ニコライが頭部に狙撃を受けました!
・・・・50口径です!」
バラライカ「方角は!」
「被弾した部位の損傷が酷いため、検討がつきません!
着弾と銃声の時差から、距離は推定1000メートル以上だと思われます!」
バラライカ「くそ!」
ドシャ・・・・ドシャ・・・・
・・・・ォオオン・・・・ォオオン・・・・
「少しずつ近づいています!」
バラライカ「一体どこから・・・・!」
・・・・ォオオン!
「大尉、半分近くがすでに狙撃を----」
パン・・・ドシャ・・・・。
・・・・ォオオオン!
バラライカ「全員、建物の中に戻れ!
急ぐんだ!」
-----
バラライカ「なんとことだ・・・・。
我が遊撃隊がたった一人相手に圧倒されるとは・・・・。
奴は一体・・・・」
ボリス「・・・・大尉殿」
バラライカ「なんだ、同志軍曹」
ボリス「作戦があります。
どうか下に来て下さい」
バラライカ「下だと?」
~二階・非常口前~
バラライカ「こんな所に何があるというのだ」
ボリス「少しお待ちを・・・・」
・・・・ブウウゥン
バラライカ「・・・・車だと?」
ボリス「・・・来たか」
バラライカ「・・・・!?
あれはラグーン商会の車ではないか!」
ボリス「すでに手配しております。
どうかここからお退き下さい。
我々が奴を食い止めます」
バラライカ「駄目だ!
私はここで指揮官として死ぬまで戦う義務がある!」
ボリス「大尉、失礼します」
ドン!(バラライカを押す)
バラライカ「軍曹!!!」
ダッチ「レヴィ!
力づくでも車に引きずり込め!!」
レヴィ「簡単に言うんじゃねえよ、クソ!!」
バラライカ「軍曹ォ!!!!」
ダッチ「オーケー、出すぞ!」
ボリス「よし・・・・」
「軍曹、奴の姿を確認!」
ボリス「全員、屋内戦闘の陣形をとれ。
なんとしてでも、ここで時間を稼ぐ」
「ターゲットがこの建物に入ります!!」
ボリス「総員、撃滅をはかれ。
行くぞ!」
「オオオオオオ!!!!」
バラライカ「・・・・・」
ダッチ「軍曹からはすでに報酬を頂いている。
仕事はきっちりこなさせてもらうぞ」
バラライカ「あの男・・・・」
ダッチ「ああ、俺もたったさっき思い出したぜ。
ケイシー・ライバック、あの伝説の兵士だ・・・・」
~ブラックラグーン号船内~
張「ケイシーライバック・・・・。
確か中国の巨大組織のひとつがある男の手で壊滅させられていたな。
その男の名前もケイシー・ライバックだった。
今思い出したぜ」
ダッチ「俺達もまずいぞ・・・・」
ロック「どういうことだ?」
ダッチ「少し前に、バンコクからロアナプラへの経由として女を運んできただろ」
ロック「ああ・・・・」
ダッチ「あれはパンドラの箱の中身だったってことだ」
ロック「・・・・えーと、つまり----」
ベニー「彼女はライバックの姪だったってことさ」
レヴィ「で、その姪は姐御達がもうカチンコチンに凍らせてからバラバラにしちまった」
張「つまり、おたくらも一枚噛んでるってことだ」
ロック「降ろしてくれダッチ」
シェンホア「大丈夫よ、私いれば他に死ぬる奴は敵さんだけね」
レヴィ「ヘイ、あいつは私の獲物だ。
変に手を出すんじゃねえよ{ですだよ}」
シェンホア「お前そんなこと言える口か?
銃構えてまた{転んで}頭打つますよ?」
レヴィ「あ?
そのガバガバの穴をもっと広げてやろうか?」
張「やめろ、シェンホア。
俺達が言えた様じゃない」
ダッチ「核弾頭よりもおっかねえこの二人がここまでやられるとはな・・・・。
ライバックはフレシェット弾だって全部はじいて、水爆だって素手で止めちまうだろうよ」
バラライカ「有り得そうで笑えないわね、ふふ」
ダッチ「それで、どこに向かえばいいんだ?
俺達も身を隠さなくちゃな」
張「香港に行ってくれ。
あそこに行けばどうにかなる。
{忍者}もいるしな」
バラライカ「私も香港でいい。
ツテがある」
ダッチ「わかった。
なるべく慎重に進まないとな」
~ブラックラグーン号の上空・特殊兵装へり内~
ライバック「協力感謝する」
「いえいえ、ヨランダさんはお得意さんですからね。
また何かあったらいつでもどうぞ。
バルメ、状態はどう?」
「オールグリーン、いつでも大丈夫です」
「よし、ハッチ解除ォ!」
「それではミスター・ライバック、いつでもどうぞ」
ライバック「もうひとつ頼まれてくれないか。
C4を少しでいい、用意しておいてくれ」
「フフーフ、お買い上げありがとうございます」
ライバック「ああ、それではまた」
バッ!
ココ「こんな上空から小さな、それも動いてる船にパラシュート降下なんて凄いよね。
フフーフ。
よし、引き返すよ!
次は船だ」
バルメ「わかりました、ココ!」
ロック「・・・・何か今音がしなかったか?」
ダッチ「海のど真ん中で聞くような音じゃねえな・・・・」
張「シェンホア、甲板を見てきてくれ」
シェンホア「はい」
キィ・・・・
シェンホア「・・・・・」
ライバック「・・・・・」
シェンホア「(・・・・気配は感じられないが・・・・何かがいる)」
チャッ
ライバック「動くな」
シェンホア「・・・・!」
ライバック「その柳葉刀を捨てるんだ」
カラン・・・・。
ライバック「答えろ。
張維新はこの中だな」
シェンホア「そう聞いてまともに答えた人間いますたか?」
ライバック「なら嫌でも喋ってもらおうか」
シェンホア「どうしますか?
口説きますか?
それとも・・・・」
シャ・・・!
シェンホアが太ももから取り出したもう一対の柳葉刀を背後にいるライバックに振るった。
それを一歩引いてかわすライバック。
シェンホア「踊るますか?」
張「・・・・あまり言いたくないが、嫌な予感がビンビンするぜ」
ダッチ「奇遇だな張の旦那、俺なんかさっきから悪寒が{突き刺さる}ぜ」
バラライカ「・・・・・」
レヴィ「{ですだよ}姉ちゃんの手伝いは気が進まないが、アタシも見に行って来る」
バラライカ「いや、お前はここにいろ」
レヴィ「姐御・・・?」
バラライカ「私が行く」
キィ・・・・・
バラライカ「・・・・・(これはあの女の得物の・・・)」
ライバック「探し物か?」
バラライカ「!?」
バラライカ「お前がライバックか」
ライバック「バラライカか」
バラライカ「あの女はどうした」
ライバック「今頃{人魚に連れてかれた}さ」
バラライカ「お前がライバックか」
ライバック「バラライカか」
バラライカ「あの女はどうした」
ライバック「今頃{人魚に連れてかれた}さ」
バラライカ「私の部下達は・・・どうした」
ライバック「かなり手こずったよ。
かなり訓練された特殊部隊だな。
だが、俺の家族に手を出したのが運の尽きだったな」
バラライカ「・・・・そうか。
では幕を下ろそう・・・。」
スラッ・・・・・
バラライカ「お前もナイフを抜け」
バラライカの言葉に表情ひとつ変えずにライバックはサバイバルナイフを抜いた。
バラライカ「・・・・フィリピンのナイフ格闘術か」
ライバック「さあ来な、大尉」
バラライカのナイフがライバックに向かって鋭い突きを出した。
その突きを逆手持ちのナイフで応戦する。
耳を劈くような甲高い金属音が何度も響く。
バラライカ「・・・くっ」
ライバック「!」
バラライカがライバックの足を踏んで動きを止めた。
無理やり足を封じられたライバックがわずかにバランスを崩す。
その崩れた所を狙い、バラライカがライバックの首筋めがけてナイフを切り込む。
そのナイフの軌道をギリギリで避けたライバックだが、あまりに素早いナイフ捌きのために首筋には小さなミミズ腫れのようなものが出来る。
すぐさま反撃とばかりに水平にナイフを振り、バラライカの軍服とその下の皮膚を切り裂いた。
バラライカ「ちっ・・・・!」
体を回し、迅速に距離をとる。
それと同時に後ろ廻し蹴りでライバックのナイフを蹴り飛ばす。
海の底へと消えていくライバックのナイフ。
しかし、ライバックはうろたえることなく素手のまま構え直した。
体勢を立て直したバラライカが再び突きを放った。
ライバックはその軌道を完全に見切り、体を器用に動かしてかわす。
バラライカ「シッ!」
バラライカの凄まじいナイフによるラッシュを全て避け切り、最後に伸びきったバラライカの腕を掴んだ。
バラライカがその手を振り切ろうとした瞬間、バラライカの体が回転して宙を舞う。
バラライカ「グッ・・・!」
はずみで落としてしまったナイフはライバックに蹴られ、手の届かない位置まで滑っていった。
すぐに起き上がり、膝蹴りを出すが、今度は膝ごと抱えられ、再び地面に叩きつけられる。
受身をとって体を起こし、続いて肘打ちを繰り出した。
その肘をライバックに掴まれ、ぐるりとそのまま腕をまわされ関節を極められてしまう。
それにつられて体も嫌が応なしにライバックに背を向けて膝をつく体勢をとらされるバラライカ。
ベキッ!
くぐもった破壊音が耳を突き、強烈な痛みがバラライカを襲う。
バラライカ「あぅ!・・・ぐっ・・・」
不利な体勢のまま、もう片方の手で拳を作り、上に振るってライバックに向けて放った。
しかしその拳も掴まれ、腕を内側巻き込まれた。
ボキン!
続いて手首と肩からの重々しい痛みが、バラライカの表情を苦痛で支配する。
それからライバックがバラライカの首元に自分の両腕をまわす。
バラライカ「今帰還するぞ・・・同志達よ・・・・」
ゴキン!!
バラライカの体が甲板の上で力を失い、倒れこむ。
ロック「遅いな、あの二人・・・・」
レヴィ「・・・・・。」
張「・・・・・。」
ダッチ「・・・・口にしたくないが、この船にはもう{人型兵器}がいるのははっきりしてきたな」
張「仕方ない、俺も行こう」
レヴィ「アタシも行くぜ、旦那」
張「いや、お前はここに残れ」
レヴィ「何言ってンだ旦那----」
張「頼むぜ{二挺拳銃}・・・。
お前はこいつらを守るんだ」
レヴィ「・・・・・」
キィ・・・・・
張「出てきな、ミスター・ライバック」
ライバック「・・・・・」
張「ようやくご対面出来たな。
お会いできて光栄だ」
ライバック「お前は俺の触れてはならない領域にブルトーザーで踏み込んだ。」
張「・・・・・」
ライバック「死んで償ってもらう」
張「悪いが俺にも今まで修羅場をくぐってきた{プライド}がある」
張「死んだ仲間のためにもただでは死ねない」
ライバック「随分勝手な言い分だな」
張「それがあの街に住む人間の作法さ。
{生き残った者が正義}さ」
張「理不尽なのは重々承知だ。
・・・・さあ」
背中のダブルホルダーから愛銃{天帝双龍}を抜き放つ。
張「御託は抜きにして{正義}をもぎ取れ」
ベレッタM76とコルトガバメントが同時に火を吹き出す。
二人の男はタイミングも違わずにそれぞれ反対方向に飛びのき、それぞれの方向にある遮蔽物に身を隠す。
張「誰が何をしたか、何て英雄でもない限り誰も気にしない。
死んだらただの無機物になっちまうからさ」
バン!バン!バン!
張「結局は力で勝つしかない」
ライバック「・・・・・」
聞こえるのは船が海を切って進む水の音に耳障りな銃声、甲板ではじける銃弾の激突音。
今の二人にはそれ以外に必要なかった。
その状況下で、ライバックが手榴弾のピンを抜く場違いめいた音がかすかに上がる。
ヒュッ・・・・・
バン!
ライバックが手榴弾を張に向けて放り投げたとき、張が銃を撃った。
その銃弾がライバックの肩を射抜く。
張「おっと・・・」
臆することなく手榴弾に狙いをつけ、発砲する。
バアアン!!
激しい爆風と爆音が張を襲う。
張「つぅ・・・・、まあ直撃よりはマシか・・・・」
張がはっきりとした状況を確認するために起き上がろうとしたときだった。
バン・・・・。
45口径の銃弾が張の胸を捉えた。
いつの間にか場所を移っていたライバックが銃を両腕でしっかりと握り、狙いをつけていたのだ。
張「・・・・驚いたな・・・・左肩は撃ち抜いたと思ったが・・・・」
ライバック「弾は貫通してるから撃たれた内に入らない」
張「くくく・・あんたらしいな・・・。
俺はもう・・・痛みも感じなくなってきたよ・・・」
ライバック「・・・・」
張「待っててくれ・・・兄弟たち・・・。
もう俺も・・・・」
サングラスの奥の張の目がゆっくりと閉じられていく
張「今いくぜ・・フライフェイス・・・。
ふふ・・・そんな怖い顔する・・な・・よ・・・・」
ロック「最後に聞こえた銃声は・・・・」
ダッチ「俺が今まで戦争で嫌と言うほど聞いてきた{コルトガバメント}だっていうのは冗談じゃねえよな・・・」
レヴィ「旦那・・・・」
ロック「・・・・・」
・・・・・カチャ
ロック「・・・・今のは?」
ベニー「キッチンからみたいだ・・・・」
ダッチ「レヴィ、見に行くぞ」
レヴィ「あいよ」
ダッチ「ベニー、ロック、ここは頼んだぞ」
ロック「気をつけてな・・・・」
レヴィ「こっちは何もないぜ」
ダッチ「こっちもだ・・・ん?」
レヴィ「なんだよ」
ダッチ「電子レンジなんかつけてたか?」
レヴィ「まさか。
使っちゃいないよ」
ダッチ「たくっ・・・何だってんだ」
チン!
ダッチ「おいおい、なんか入ってるぜ----」
バーン!!!!
レヴィ「いってエ・・・・・。
おいダッチ、大丈夫か?」
「・・・・・」
レヴィ「おい、ダッチ返事してく・・・れ・・・」
ライバック「また会ったな、お嬢ちゃん」
レヴィ「てめェ・・・会いたくて仕方なかったぜ、{ケイシーおじさん}。
抜けよ、ブルっちまったのか?」
ライバック「先に抜きな、お嬢ちゃん」
レヴィ「そうかよ!!」
チャキン!!
レヴィがソード・カトラスを引き抜く。
だが、それらを構え終わる前にライバックが拳を振り回し、レヴィの両手から銃をはじいた。
おまけとばかりにレヴィの腹部にも掌が叩き込まれる。
ガシャン!
吹っ飛ばされたレヴィが食器棚に突っ込んだ。
レヴィ「野郎----」
ライバックは相変わらずの無表情でレヴィの頭をつかんで引っ張り起こす。
レヴィ「てめェ、いい加減にしろよ!!!」
レヴィが渾身の力を込めて蹴りを出す。
しかし、ライバックがそれを右斜め前に一歩踏み出してかわす。
同時に{合気}で固めた腕をレヴィの首に打ち込んだ。
レヴィ「ぐえ・・・」
自分の蹴りの勢いも相まって床に叩きつけられる。
そんなレヴィを、髪をつかんでまな板の上に引っ張りあげるライバック。
その手には包丁が握られていた。
レヴィ「あれなんで包丁なんt」
ドスン!!!!
ライバックがしっかりと体重を乗せて包丁を振り下ろした。
後頭部に包丁を突き立てられたレヴィの足がぐらつき、倒れる。
こうして、キッチンには{二つ}の死体がコックによってこしらえられた。
ロック「・・・・・」
ベニー「・・・・・」
ロック「・・・・やっぱり見てくる!」
ベニー「あ、おいロック!!」
ロック「・・・ん?
なんだこれ?」
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
ロック「やけにでかいけど・・・・」
ピッ・・ピッ・・ピッ・・
ロック「これって前にダッチが仕入れた・・・・」
ピッ・ピッ・ピッ・
ロック「TNT爆薬じゃn」
ドカーーーーーン!!!!!!!!!!!
ココ「お、いたいた。
おーい、ライバックさーん!
ヨナ、トージョとレームとで救命ボートで拾ってきて」
ヨナ「わかった・・・・」
ココ「それにしても、まさか本当にやり遂げちゃうなんておっかないね。
フフーフ。」
ライバック「感謝する」
ココ「いえいえ。
よし、ロアナプラに戻るよ!」
~二日後、ロアナプラ・暴力教会~
ヨランダ「エダ、あんた宛の小包だ」
エダ「アタシに?」
ヨランダ「{ケイシー}からだよ。
『再会を喜んで、君に捧ぐ』だとさ」
エダ「へー、なんだろ」
ビリビリ
ヨランダ「それにしてもこの街も綺麗になったもんだねえ。
あんた達にとっちゃあかなり動きやすくなっただろうね」
エダ「・・・・・」
ヨランダ「それもこれもライバックのお陰だが・・・あんたの仕業じゃないのかい?」
エダ「・・・・・」
ビリビリ
ヨランダ「ライバックの家族らに手紙を送ってタイに連れてきたり、三合会やホテル・モスクワと強引に因縁をふっかけさせたのはお前だろう?」
エダ「・・・・・」
ヨランダ「いけない子だねえ、相変わらず。
ライバックも昔はよくお前に手を焼いたもんだ。
ふふふふふ」
エダ「・・・・・」
ビリビリ
ヨランダ「だけどねえ、その度に彼はお前にしつけをしてたよ。
それもうんときつくね」
エダ「・・・・」
ビリビリ・・・・
ヨランダ「昔はお前も悪い子だったが、それは今も同じみたいだねえ」
エダ「・・・・・」
パカッ・・・・
ヨランダ「けどね、あいつもそうさ」
ピーーーーー
エダ「・・・!?」
ヨランダ「あいつの{しつけ}は今もとびっきりさ。
ケイシー・ライバックはそういう男だよ」
エダ「これってC4-----」
ドカーーーーーン!!!!!
パラ・・パラ・・・
ヨランダ「やれやれ・・・・思えば、あいつが散らかしたものを片付けるのはいつも私だったね。
ふふふ
今度はどこで暴れる気だい、あの男は・・・・」
THE END
153 : 以下、名... - 2009/02/04(水) 06:35:31.13 gqf/HkBO0 169/171
読んでくれてありがとう。
二日ルールになったとは思わなかったから焦ったけど、思い通りの結末を迎えられてよかった。
またよろしく
おまけ
~ガルシア邸~
ガルシア「うう・・・・」
ファビオラ「どうです、降参しますか!?」
ガルシア「相変わらずチェスが強いね。
たまには手加減してよ!」
ファビオラ「ハッハー」
ロベルタ「・・・・・」
~ロベルタ私室~
ロベルタ「何故あなたは若様の気持ちを考えないで・・・・」
ファビオラ「あの何でわたし縛られてr」
ロベルタ「お仕置きです」
ファビオラ「あ、待って痛い痛いいt」
~翌日~
ファビオラ「わたしの負けでございます、若様・・・」
ガルシア「うーん・・・。
結果的には勝ったけど途中までは完全に負けてたからなあ・・・・。
やっぱり僕の負けだよ!!」
ファビオラ「え、ちょっとあの若さm」
ロベルタ「ファビオラ、ちょっと私の部屋まで」
ファビオラ「あ、手が痛いです婦長様痛い痛いいt」