ヴィーネ「春から東京の大学ね……」
ガヴ「だな」
ヴィーネ(ガヴと出会った高校生活も終わり、私たちは春から大学生になる)
ガヴ「まぁ、無事に受かるかはわからないけどな」
ヴィーネ「合格できるわ」
ガヴ「推薦ですでに決まっている奴に言われても」
ヴィーネ「もう、それじゃ勉強教えてあげないわよ?それにお夜食作ってあげたり、家事してあげたりしないわよ?」
ガヴ「ごめん、私が悪かったヴィーネママ」
ヴィーネ「こんな子産んだ覚えありません!」
元スレ
【ガヴドロ】ヴィーネ「え、一緒に住む?」
http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1539415313/
ヴィーネ「大丈夫、今のガヴはちゃんと頑張っているから。お天道様も見ているわ」
ガヴ「天使の私に言う台詞か?」
ヴィーネ「ううん、それね、違う。私がわかっているから。私がガヴの頑張りを知っているから」
ガヴ「うん、ありがと」
ヴィーネ「それに私も楽しみだから」
ガヴ「私が同じ大学を合格することが?」
ヴィーネ「ううん、その先。ガヴと大学生活を送ることが楽しみなの」
ガヴ「……そうか」
ヴィーネ「そうよ」
ガヴ「じゃあ、頑張んないとな」
ヴィーネ「うんっ!」
ヴィーネ(季節は1月。もう少しで入学試験が始まる)
ヴィーネ(ガヴは私と同じ大学を目指して、必死になって勉強している)
ヴィーネ(その頑張りが、一緒にいたいという気持ちが、とても嬉しくてたまらない)
ヴィーネ(だから、頑張るガヴのために少しでも力になりたい)
ガヴ「……あの」
ヴィーネ「ん?」
ガヴ「もし同じ大学に受かったらさ」
ヴィーネ「もしじゃないわ」
ガヴ「わかったよ。絶対受かるからさ」
ヴィーネ「うん」
ガヴ「そしたら一緒に住もうか」
ヴィーネ「え、一緒に住む?」
ガヴ「うん」
ヴィーネ「え、ええええええ」
ガヴ「だって、東京の家賃高いじゃん。二人ならいい所に住める!」
ヴィーネ「そ、そうかもだけど」
ガヴ「それに洗濯や掃除をヴィーネがやってくれる」
ヴィーネ「それが目的か!」
ガヴ「まぁ、考えといてくれ」
ヴィーネ(考えるまでもない)
ヴィーネ(もちろんOKに決まっている)
ヴィーネ「いいの?」
ガヴ「何がだよ」
ヴィーネ(ガヴと一緒に住む)
ヴィーネ(それってガヴと同棲!?)
ヴィーネ(あれ、もしかして私、今告白されていたの?)
ヴィーネ「ガ、ガヴ!」
ガヴ「な、何だよ、大きな声出して」
ヴィーネ「もしかして、今、私」
ヴィーネ(違う)
ヴィーネ(落ち着け)
ヴィーネ(今じゃない、入試前に大事なことを聞いて、ガヴを動揺させてはいけない)
ヴィーネ(聞きたい。でも今は心を悪魔にしなくちゃ)
ガヴ「黙ってどうしたんだよ?」
ヴィーネ「楽しみね、大学生活」
ガヴ「ああ、そうなるといいな」
ヴィーネ「そうなるようにするの!」
ガヴ「へいへい」
ヴィーネ(無事、受かったらいつでも聞けることだ、今じゃなくていい)
ヴィーネ(その時の私はそう思っていたんだ)
---都内・マンション---
ヴィーネ(鍋からお味噌汁を掬い、口にする)
ヴィーネ「うん、ちょうどいい味ね」
ヴィーネ(我ながら、どんどん料理の腕は上がっている)
ヴィーネ(さて、そろそろガヴを起こさないとね)
ガヴ「はぁーおはようヴィーネ」
ヴィーネ「あっ、ガヴおはよう。一人で起きれて偉いわね」
ガヴ「私は子供か」
ヴィーネ「まだお酒を飲める歳じゃないじゃない」
ガヴ「成人しても私は飲まないよ」
ヴィーネ「そうね、それがいいわ」
ヴィーネ(ガヴがお酒を飲んだら、ひどいことになる)
ヴィーネ(クラスの飲み会に渋々出席して、間違えてお酒を口にしたガヴが、ラッパを吹きそうになったの必死に止めたこともあったけ……)
ヴィーネ(危うく人類が滅びるところだったわ)
ガヴ「今日もいい匂い」
ヴィーネ「お魚も焼けたから早く顔を洗ってきなさい」
ガヴ「うん」
ヴィーネ(素直に従い、洗面所に向かうガヴ)
ヴィーネ(ネット廃人時代のガヴに比べるとだいぶまともになったものだ)
ヴィーネ(今でもゲームイベントがあると朝までやっていることはあるが)
ヴィーネ(私の作った朝食を食べないことはない)
ガヴ「ヴィーネ、化粧水どこにあったっけ?」
ヴィーネ「もう切れたの?」
ガヴ「うん、空っぽだよ」
ヴィーネ「ちょっと待って」
ヴィーネ(えーっと棚にしまっていたっけ。あったあった)
ヴィーネ「あったわよ」
ガヴ「おー、サンキュサンキュ」
ヴィーネ「ちょっと待って」
ガヴ「うん?」
ヴィーネ(化粧水を下にし、手に出し、薄く広げる)
ヴィーネ「こっち向いて」
ガヴ「ん」
ヴィーネ(ガヴの顔に化粧水を塗る)
ヴィーネ(相変わらず、もちもちの綺麗な肌だわ、羨ましい)
ヴィーネ「はい、ちゃんと塗ったわよ」
ガヴ「あんがと、じゃあご飯ご飯」
ガヴ「ヴィーネは今日2限からだっけ?」
ヴィーネ「うん、でも図書館で調べものしたいから一緒にいくわ。ガヴは1限でしょ?」
ガヴ「その通りで。よく覚えているな」
ヴィーネ「留年はさせないわよ」
ガヴ「わー、ヴィーネママ怖い!」
ヴィーネ「手のかかる子供ですこと」
ヴィーネ(ガヴは無事に私と同じ大学に合格した)
ヴィーネ(学部は違うものの、同じキャンパスだ。行き帰りはもちろん、お昼休みなども一緒に過ごすことが多い)
ヴィーネ(そして、私たちは)
ガヴ「そろそろ一緒に住んで半年ぐらいだな」
ヴィーネ「そうね、案外慣れるものね」
ガヴ「だな」
ヴィーネ(ガヴの宣言通り、東京で一緒の家に住んでいる)
ヴィーネ(そして、いつの間にか半年が経つというわけだ)
ガヴ「ごちそうさまー、美味しかった」
ヴィーネ「どうも」
ガヴ「毎日おいしいご飯を食べられるって、ヴィーネと結婚する人は幸せだな、はは」
ヴィーネ「!?」
ガヴ「まぁ、行き遅れしそうなイメージだけどな」
ヴィーネ「し、失礼ね!」
ヴィーネ(私の気も知らずに、本当に失礼なガヴ)
---夕方---
ガヴ・ヴィーネ「ごちそうさま」
ヴィーネ(今日もいつも通り大学に行き、勉強し、ガヴと一緒に帰宅)
ヴィーネ(そして、朝食同様、いつも通りガヴが私の夕食を食べてくれた)
ヴィーネ(自分が作ったものを美味しく食べてくれるのは嬉しい)
ヴィーネ(でも、それも日常になってしまった)
ガヴ「ちょっとゲームやるから先に風呂どうぞ」
ヴィーネ「はいはい、お先いただきます」
ちゃぽん
ヴィーネ(湯船につかりながら、ぼけーっと考える)
ヴィーネ(そう、慣れすぎてしまったのだ、良くも悪くも)
ヴィーネ(どうしてこうなってしまったんだろう)
ヴィーネ(今の生活は幸せで楽しい)
ヴィーネ(何も不満はないはずなのだが、)
ヴィーネ(どこか物足りない)
ヴィーネ「はあー」
ヴィーネ(物足りないのは、『ガヴ』のせいだ)
ヴィーネ(一緒に住むと言ってくれた時は、本当にうれしかった)
ヴィーネ(だって、それは『告白』だと思ったから。私を本気で好きでいるのだと思った)
ヴィーネ(好意は持っているだろう、しかしそれは家族へ向ける気持ちのそれ)
ヴィーネ(良くしてくれるメイド、優しいお姉さんぐらいの立ち位置になってしまった)
ヴィーネ(すっぽりと収まってしまった)
ヴィーネ(違う、私が望んでいるのは違うのだ。私はそれじゃ満足できないんだ)
ヴィーネ「ガヴが、好き……」
ヴィーネ(私は気持ちを伝えきれずに、落ちついた距離にいるだけ)
ヴィーネ(いつも通りの幸せを繰り返すだけ)
ヴィーネ「ねえ、どうしたらいいの?」
ヴィーネ(答えなんて返ってくるはずなかった)
ヴィーネ「上がったわ」
ガヴ「ふぁーい」
ヴィーネ(お風呂から上がるとガヴが歯ブラシをくわえながら携帯を見ていた)
ヴィーネ(ちゃんと歯を磨くなんて偉い偉い。って、おい)
ヴィーネ「ガヴ、それ私の歯ブラシ!!」
ガヴ「へ?」
ヴィーネ「水色は私の!ガヴはピンク色でしょ!」
ガヴ「あー、そうだっけ?ごめんごめん、減るもんじゃないしいいだろ?」
ヴィーネ「減るもんじゃないけど……気にするでしょ」
ガヴ「そう、私は気にしないよ?」
ヴィーネ(こういう奴だ。私のことを意識してやしない)
ヴィーネ(ちくりちくりと胸が痛む)
ガヴ「そうだ、言ってなかったけど明日からバイトすることになったから」
ヴィーネ「……え?」
ガヴ「喫茶店受かったんだ。前も働いていたといったら即採用。ちょろいぜ」
ヴィーネ「え、バイト?どうして?」
ガヴ「社会勉強だよ、社会勉強。それにお金も必要だろ?」
ヴィーネ「暮らしていくには仕送りで十分じゃない?」
ガヴ「まぁ色々と使えるお金も必要なんだよ」
ヴィーネ(使えるお金?何に必要なの?ねえ、今のままでは駄目なの?)
ヴィーネ(聞いてはいけない気がした)
ガヴ「だから、明日から一緒に帰れない日もあるし、帰りが遅くなることもあるからごめんな」
ヴィーネ(望んでいた、いつも通りからの変化)
ヴィーネ(いつも通りだったのが変わる)
ヴィーネ(でも、その変化は私を不安にさせた)
ヴィーネ(いつも通りだった日常の崩壊)
---次の日---
ヴィーネ(遅い)
ヴィーネ(ガヴがバイトから帰って来ない)
ヴィーネ(時計を見ると、21時)
ヴィーネ(もうバイトは終わっているはずだ)
ヴィーネ(作った料理もラップをかけているが、とっくに冷めてしまった)
ヴィーネ(電話しようかと思った、メールしようかと思った)
ヴィーネ(でもまだバイトを始めて3日目)
ヴィーネ(めんどくさい女と思われたくなかった)
ヴィーネ(束縛したくなかった)
ヴィーネ(でも、心は締め付けられる)
ガチャリ
ヴィーネ(扉の開く音がした)
ヴィーネ「ガヴだ」
ヴィーネ(慌てて玄関に駆け寄る)
ヴィーネ「ガヴ!」
ガヴ「ただいま。どうした、そんなに慌てて?」
ヴィーネ「どうしたって」
ヴィーネ(こんな時間までバイトだったの?帰りが遅くなるなら連絡入れて欲しかったよ。……ねえ、何でバイトをする必要があるの?)
ヴィーネ「……どうもしない」
ガヴ「そっか」
ヴィーネ(ガヴが私の隣を通り過ぎ、リビングに向かう)
ヴィーネ(何も言えなかった。言ったら壊れてしまう)
ヴィーネ(せめて今の日常だけは守りたかったから)
ガヴ「あっ、ごめん。料理用意してくれたんだ」
ヴィーネ「うん、もしかして食べてきたの?」
ガヴ「うん、バイト先で歓迎してもらってさ」
ヴィーネ「そうなんだ、じゃあ捨てるね」
ガヴ「いやいや、もったいないだろ。明日の朝食べるからさ」
ヴィーネ「ううん、いいの。料理悪くなっちゃうから」
ヴィーネ(ゴミ箱に料理を捨てる)
ヴィーネ(私の暗い気持ちも簡単に捨てられたらいいのに)
***
ヴィーネ(シャワーを浴びても気持ちは晴れなかった)
ヴィーネ(寝室に行くと、ガヴはすでにベッドで寝ていた)
ガヴ「すぅすぅ」
ヴィーネ(私の気も知らずに穏やかな顔で眠っている)
ヴィーネ(隣の私のベッドに腰かけ、ガヴの顔を見つめる)
ヴィーネ(大学生になって、ガヴは綺麗になった)
ヴィーネ(女子大に通っており、サークルも入っていないので、男の心配はしていなかったが)
ヴィーネ(バイト先にはさすがに男はいるだろう)
ヴィーネ(こんな可愛いガヴを好きにならないはずがない)
ヴィーネ(そして、ガヴの気持ちがいつ離れていってしまうか)
ヴィーネ(この家から出ていってしまうか)
ヴィーネ「私だけを見て」
ヴィーネ(黒い独占欲)
ヴィーネ(このカワイイ寝顔を見れるのは私だけ)
ヴィーネ(ガヴにおはようと言ってあげるのは私だけ)
ヴィーネ(ガヴにただいまと言うのは私だけでいいのだ)
ヴィーネ(こんなに近いのに、どうしようもなく寂しい)
ヴィーネ(だから)
ヴィーネ(これはつい出来心)
ヴィーネ「よいしょっと」
ヴィーネ(静かに、ガヴのベッドに忍び込む)
ヴィーネ(目の前にガヴの顔)
ヴィーネ(ガヴの吐息が聞こえる)
ヴィーネ(触れるガヴの体温が胸の鼓動を早くさせる)
ヴィーネ(気づかないガヴが悪い)
ヴィーネ(私をわかってくれないガヴが悪い)
ヴィーネ(寂しくさせるガヴが悪い)
ヴィーネ「ごめんね」
ヴィーネ(ガヴの頬に迫り、そっと口づけする)
ヴィーネ「……」
ヴィーネ(時間にして数秒で、私の黒い気持ちは一瞬で浄化される)
ヴィーネ(安心した私はそのまま眠りにつき、朝慌てて起きるのであった)
ヴィーネ(ガヴより早く起きたので、忍び込んだことはバレなかった)
ヴィーネ(だから、私は調子に乗ってしまった)
ヴィーネ(この刺激をまた、またと毎日求めるようになってしまったのだ)
---喫茶店---
ガヴ「お疲れ様ですー」
店主「今日もありがとうね。これ今月分の給料」
ガヴ「ありがとうございます!」
ガヴ(都会なのに、こじんまりとした喫茶店)
ガヴ(腰を悪くした、おばあちゃん店主さんのお手伝いで私はここでバイトをしている)
店主「毎日入ってくれて、天真さんは働き者ですね」
ガヴ「ええ、欲しいものがあるんです。これでやっと買えます」
店主「プレゼントですか?」
ガヴ「はい、いつもお世話になっている人に」
店主「そうなんですね、天真さんは大好きな人のために頑張っているんですね」
ガヴ「そうですね、アイツの喜んだ顔が見たいんです」
店主「上手く行くといいですね、天真さんの恋」
ガヴ「恋?」
店主「違うんですか」
ガヴ「うーん、どうなんですかね」
店主「ふふ、自分では気づかないものですよ」
ガヴ(恋、か……)
ガヴ(バイトも終わり、買い物を済ませ、暗くなった道を歩く)
ガヴ(ヴィーネと住んで半年)
ガヴ(アイツとの暮らしは楽しく、ヴィーネには感謝してもしきれない)
ガヴ(けど、それは恋なのだろうか)
ガヴ(ヴィーネのことは好きだ)
ガヴ(ただ、その好きは恋なのだろうか)
ガヴ(それに、ヴィーネは私のことを恋愛対象に見ていないだろう)
ガヴ(私を女として見ているなら、逆に一緒に住めるはずがない)
ガヴ「でも、最近のヴィーネ変だしな」
ガヴ(そう、落ち込んでいて、なかなか笑ってくれない)
ガヴ(それに何だか、最近違和感がある)
ガヴ(……ヴィーネの夢ばかりを見るのだ)
ガヴ(ヴィーネにキスされる夢)
ガヴ(そういう夢を見るってことは、私は恋をしているのだろうか)
ガヴ(あーわからない。大学でそんなこと教えてくれやしない)
ガヴ(悩みも晴れぬうちにお家についてしまった)
ガヴ「ただいま」
ヴィーネ「おかえり、ガヴ」
ガヴ(いつものヴィーネの気がした)
ガヴ(私の気のせいか、そう思った)
ガヴ(それが気のせいでないと気づくのは、その日の夜だった)
~~~
ヴィーネ「ガヴ、好き」
ガヴ「そ、そうなのか」
ヴィーネ「うん、何で気づいてくれないの?」
ガヴ「何でって」
ヴィーネ「私のこと、好きじゃない?」
ガヴ「それは」
ガヴ「待って、顔を近づけるな」
ガヴ「待てって」
~~~
ガヴ(思わず、目を開く)
ガヴ(またこの夢だ)
ガヴ「……え!?」
ガヴ(目の前にヴィーネの顔があった)
ガヴ(何だこの状況!?)
ガヴ(私のベッドだよな?何でヴィーネが同じベッドの中にいる)
ガヴ(私が間違えた?違う、ヴィーネが忍び込んだ?)
ガヴ(どうしてそんなことって、そうなのか)
ガヴ(夢だけど、夢じゃなかったのか)
ガヴ(そして、目を閉じたままのヴィーネが確信に変える一言を述べる)
ヴィーネ「ガヴ、愛しているわ」
ガヴ「そ、それはどうも……」
ヴィーネ「へ」
ガヴ(ぱちりと目を開けたヴィーネと目が合う)
ヴィーネ「……」
ガヴ「……おう」
ヴィーネ「聞いた?」
ガヴ「うん、愛して、いるって」
ヴィーネ「そうなんだ」
ガヴ「どうして同じベッドに?」
ガヴ(ヴィーネが勢いよく立ち上がり)
ガヴ(そして、背を向け、部屋から逃げ出した)
ガヴ「おいっ、ちょっと待てって!」
ガヴ(そして、裸足のまま外へ駆け出してしまったのだ)
ガヴ「ああ、もう!」
ヴィーネ「終わった、終わった」
ヴィーネ(ガヴにバレてしまった)
ヴィーネ(私の度を過ぎた好きの感情が知られてしまった)
ヴィーネ(終わりだ、この家にはもういられない)
ヴィーネ(もういつも通りでいられない)
ヴィーネ(わかっていた、わかっていたのだ)
ヴィーネ(夜、ベッドに忍び込むことは一時的な逃避で)
ヴィーネ(結局、何も解決できてやしない)
ヴィーネ(いつかは終わりを迎える運命だったのだ)
ヴィーネ(それが遅いか、早いかだけ)
ヴィーネ「うぅっ…う…」
ヴィーネ(目からあふれ出す涙が止まらず、視界はぼやける)
ヴィーネ(行く先なんてない)
ヴィーネ(ただガヴから離れる、ガヴのいない世界へ逃げる)
ヴィーネ(そうか、いなくなればいいんだ)
ヴィーネ「さよなら、ガヴ」
ガヴ「させるか!」
ヴィーネ「!?」
ヴィーネ(いきなりガヴが目の前に現れる)
ヴィーネ「うぐ」
ヴィーネ(そしてガヴに抱きしめられる)
ガヴ「もう逃がさないぞ」
ヴィーネ「どうして」
ガヴ「天使なめるんじゃねーぞ、神足通でどこに行っても追いついてやるから」
ヴィーネ「やめてよ、私を逃がしてよ」
ガヴ「嫌だ」
ヴィーネ「私を軽蔑したでしょ!?同居人があんなこと思っていたんだって気持ち悪いでしょ!?」
ガヴ「そんなことない」
ヴィーネ「嘘!}
ガヴ「嘘なもんか」
ヴィーネ(ガヴの抱きしめる力が弱まり、私の顔をじっと見る)
ガヴ「そりゃ、驚いたけどさ。いきなりあんなこと言われて」
ガヴ「でも悪い気はしなかった。いやそれどころか」
ヴィーネ(ガヴが私の手を掴み、自分の胸に押し当てる)
ヴィーネ「へ?」
ガヴ「どうだ」
ヴィーネ「柔らかい?」
ガヴ「おい、そういうことじゃない!」
ヴィーネ(鼓動が早い。私ではなく押し当てた手が)
ヴィーネ「すっごくドキドキしている」
ガヴ「言葉にされるとめっちゃハズイ」
ヴィーネ「ぷっ」
ヴィーネ(思わず吹き出してしまう)
ヴィーネ(もう逃げる気を失った私とガヴは階段に座る)
ヴィーネ(そして、握られる手)
ヴィーネ「もう逃げないから」
ガヴ「そういうこと言って、逃げるんだろ?信じないから」
ヴィーネ(私としては得した気分だからいいのだけど)
ガヴ「いつから私のベッドに忍び込むようになったんだよ」
ヴィーネ「……」
ガヴ「初めてじゃないんだろ?」
ヴィーネ「……ええ、バイトを始めてから」
ガヴ「もう1カ月もしていたのかよ!」
ヴィーネ「そうよ、悪い!?」
ガヴ「開き直るなよ!?」
ヴィーネ「だって同棲して半年よ!?なんで何もないの!?」
ガヴ「何もって!?」
ヴィーネ「私はガヴと暮らしてずっとドキドキしていたわ」
ヴィーネ「寝起きのガヴは反則的に可愛いし」
ヴィーネ「風呂上がりのガヴは扇情的で、直視できなかった」
ヴィーネ「そして、ご飯を美味しく食べてくれるガヴは愛おしかった」
ヴィーネ「何で、何でガヴは何も思ってくれないの?」
ヴィーネ「私のことなんて眼中にないんでしょ?」
ヴィーネ「バイト先で彼氏つくって、私のことなんか置いて出ていっちゃうんだ」
ヴィーネ「いや、追い出させるのは私ね」
ガヴ「落ち着けよ」
ヴィーネ「嫌だ」
ガヴ「私が何も思わないわけないだろ」
ヴィーネ「嘘」
ガヴ「お前こそ、何だよ夏になって派手な下着履きだして」
ヴィーネ「下着みたの!?」
ガヴ「干しているのみれば嫌でも見るわ!何だよ黒いのや、細い紐のって」
ガヴ「目のやり場に困るわ!たまにちらちら見えちゃうし……」」
ヴィーネ「じゃあ何で襲ってくれないの!?」
ガヴ「襲うかバカ!」
ヴィーネ「ガヴは私のことを意識してくれていたの?」
ガヴ「ああ、そうだよ」
ヴィーネ「じゃあ、私のこと」
ヴィーネ(ガヴの瞳を真っ直ぐに見る)
ヴィーネ「す、きなの?」
ガヴ「わからない」
ヴィーネ(高揚した気持ちが一気に落ちる)
ヴィーネ「そ、そう」
ガヴ「違う、わからなかった」
ガヴ「私にはわからなかったんだ」
ガヴ「でも、わかった」
ヴィーネ「わかった?」
ガヴ「ヴィーネに愛しているって言われて、好きだとわかった」
ヴィーネ「え」
ガヴ「ああ、私も好きだよ、お前のこと」
ヴィーネ(瞳から一筋の水が流れる)
ヴィーネ(さっきとは違う、温かい涙)
ガヴ「泣くなよ」
ヴィーネ「だって、だって」
ヴィーネ(ガヴも私のことを好きだなんて嬉しすぎてたまらない)
ガヴ「不安にしてごめんな」
ヴィーネ(ガヴにまた抱きしめられる)
ヴィーネ「私こそごめんなさい」
ガヴ「ちょっとじっとして」
ヴィーネ「え」
ヴィーネ(ガヴが私を抱きしめながら、背中の方で手をごそごそとしている)
ヴィーネ(こ、こそばゆい)
ガヴ「できた、いいよ」
ヴィーネ(ガヴが私から離れる)
ヴィーネ(首に重さを感じ、手にとる)
ヴィーネ「これは」
ガヴ「プレゼント」
ヴィーネ(綺麗な水色の宝石のネックレス)
ヴィーネ「プレゼント?」
ガヴ「おい、気づけよ」
ヴィーネ「へ」
ガヴ「誕生日おめでとう、ヴィーネ」
ヴィーネ「あっ」
ヴィーネ(そうだ、同棲して半年過ぎ、つまり季節は秋で、いつの間にか10月になっていた)
ヴィーネ(そして今日は10月9日の夜を超え、10日)
ヴィーネ(私の誕生日だった)
ガヴ「本当は起きてから渡そうと思ったのに、こんなことになったから」
ヴィーネ(すっかり忘れていた。気持ちがそれどころではなくて、自分のことなんか考えていなかった)
ヴィーネ「もしかして」
ガヴ「ん?」
ヴィーネ「バイトを始めたのって」
ガヴ「そう、ヴィーネにプレゼントをあげるためだよ。さすがに仕送りだけじゃ足りん」
ヴィーネ(そうか私のためにガヴが頑張ってくれていたんだ)
ヴィーネ(それを私は勘違いしてしまった)
ヴィーネ(ガヴはしっかりと私のことを見ていてくれた)
ヴィーネ(全ては私のためだったのだ。嬉しすぎて、愛おしすぎて)
ヴィーネ(思いが溢れてしまう)
ヴィーネ「ありがと、ガヴ。大好きよ、大好き」
ガヴ「そ、それはどうも」
ヴィーネ(ガヴが恥ずかしさからか、視線を外す)
ヴィーネ「ガヴ」
ガヴ「何だよ?」
ヴィーネ(そっと顔を近づける)
ガヴ「っつ……!?」
ヴィーネ(ガヴも勘付いたのか、身を固くする)
ヴィーネ(ガヴの息遣いが聞こえる)
ヴィーネ(そっと触れた瞬間は、時間が止まったようで)
ヴィーネ(大好きの気持ちはさらに加速した)
ヴィーネ(首にかけた『幸福』を象徴するオパールがきらりと光る)
ヴィーネ「ガヴ」
ガヴ「……見るなよ、恥ずかしい」
ヴィーネ「来年は、指輪がいいわ」
ガヴ「我儘なお姫様を好きになってしまったもんだな……」
ヴィーネ「ごめんね、我儘で」
ガヴ「まぁ、考えとく」
ヴィーネ(私と、ガヴの一緒の生活はづづく)
ヴィーネ(でも、今日からその意味は少し変わり、)
ヴィーネ(―もっと大好きな毎日になっていく)
---アメリカ---
サターニャ「ここのホットドッグ美味しいわね」
ラフィ「ええ、そうですねサターニャさん。でもお金はあまり無いので食べ過ぎないでくださいね」
ラフィ(高校を卒業し、私とサターニャさんは各地を転々とする旅に出ている)
ラフィ(アジアから出発し、ヨーロッパを通り、2年目の今はアメリカの広大な大地を横断している)
サターニャ「もうラフィエルのけち」
ラフィ「お水だけの生活に戻りたいですか?」
サターニャ「うっ」
ラフィ(ここまで大変なこともあった旅だった)
ラフィ(世界は優しさで満ちていないし、救えないこともある)
ラフィ(それでも)
サターニャ「何よ、こっち見て」
ラフィ(それでもサターニャさんと過ごした旅路はかけがえのない思い出だ)
ラフィ「何でもないですよ、サターニャさん」
女性「すみません、白羽さんですか」
ラフィ(見知らぬ女性に話しかけられ、警戒レベルを一気に引き上げる)
ラフィ「ええ、そうですが」
女性「良かった、やっと会えました。あなた宛のお便りを預かっていたんです」
ラフィ「お便り?」
女性「ええ、こちらです」
ラフィ(手紙にしては高い紙で、分厚いお便りだった)
サターニャ「手紙、誰から?」
ラフィ(裏返し、送り主を見る)
ラフィ「月乃瀬…ヴィーネさん!!」
ラフィ(懐かしい名前に、気持ちがはやる。急いで封を破り、手紙の中身を見る)
ラフィ「ふふ」
サターニャ「どうしたの笑って」
ラフィ「一度日本に戻らないといけなくなりましたね」
サターニャ「えー」
ラフィ「友の喜びの日を祝ってあげないとですね」
ラフィ(良かったですね、ガヴちゃん、ヴィーネさん)
サターニャ「どういうこと?」
ラフィ「行けばわかりますよ、綺麗な二人が待っています」
サターニャ「??」
ラフィ「さあ、今すぐ行きましょ。二人の友の元へ」
サターニャ「待って、まだホットドッグ食べ終えていないんだけど!」
36 : 名無しさ... - 2018/10/13 17:01:48 gsb 36/36終わりです!
ヴィーネの誕生日から大遅刻…!