男「付き合って下さい!」
女「……っ!」
男「俺と一緒にゲームをやりましょう!」
女「うん、私もゲームが趣味で……」
男(よっしゃ、イケる!)
男「ファイファンを一緒にやりましょう!」
女「え、ファイファン?」
男「え?」
元スレ
女「ごめんなさい……FFを“ファイファン”って略す人はちょっと……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1537188918/
女「ごめんなさい……」
男「え、なんでいきなり?」
女「私、FFを“ファイファン”って略す人はちょっと……」
男「えええ!?」
女「さよなら! もう顔も見たくない!」タタタッ
男「そこまでいうか!」
男「……なんでだ」
男「なんでだぁぁぁぁぁ……!!!」
―BAR―
男「……もう一杯!」サッ
マスター「飲み過ぎですよ、お客さん」
男「これが飲まずにいられますかってんだ……」ヒック…
男「ちくしょう、女なんて……」
マスター「女なんて星の数ほどいますよ。あまり気にしないことです」
男「だけどさ、あんな振り方はあんまりだよ!」
マスター「おやおや、どんな振り方をされたんです?」
男「ファイナルファンタジーを“ファイファン”って略したら、とたんに嫌われたんだよ!」
マスター「!」ピクッ
バシャッ
男「ぶっ!?」
男「い、いきなり何すんだ! 水をぶっかけるなんて!」
マスター「出て行け……」
男「なんだと!? 客に向かって……」
マスター「FFを“ファイファン”と略す奴はお客じゃない。今すぐ出てけ!」
男「ひ、ひいっ!」
男「ウ~イ……」ヨロヨロ…
男「いきなり態度変えやがって……どうなってんだマジで……」ヨロヨロ…
ドンッ!
男「いてっ!」
チンピラ「いってぇな……」ギロッ
男(ゲ、やべっ……一発殴られるかも)
チンピラ「ってなんだよ、酔っ払いかよ。大丈夫か? 家まで送ってやろうか?」
男(あれ、案外優しい……)
男「ありがとう、女にフラれて、悪酔いしちゃってね……」
チンピラ「しょうがねえ奴だな。どうしてフラれちまったんだ?」
男「ファイナルファンタジーを“ファイファン”って略しただけで――」
チンピラ「あ?」
男「え」
チンピラ「てめえ、ぶっ殺してやるよ!」ガシッ
男「ちょっ、なんでえ!?」
ドカッ! バキッ! ドゴッ! グシャッ!
―病院―
男「うう……」
医者「おや、目が覚めましたか」
男「ここは……?」
医者「病院です。あなたは暴行を受けて、路上で倒れていたんですよ」
男(ああ……思い出してきた……。ケガの痛みと二日酔いの痛みが……)ズキッ
男「治療して下さって、ありがとうございます」
医者「いえいえ、医者として当然の務めをしたまでです」
医者「しかし、あそこまで手ひどく殴られるとは……何があったのです?」
男「ファイナルファンタジーをファイファンっていったら――」
ドカッ!
男「いだっ! ……何をするんだ! ケガ人に!」
医者「ファイファンだとぉ~?」
医者「治療費はいらないから、今すぐ退院してもらおう!」
―会社―
課長「……君」
男「はい」
課長「風の便りで聞いたのだが、君はFFをファイファンというのかね?」
男「ええ、そうですが。それが何か?」
課長「……今日限りで君はクビだ。荷物をまとめて退社してもらおう」
男「えっ、なんで!?」
課長「早くしたまえ! 退職金はもちろん出ない!」
―面接―
面接官「ほう、なかなかの学歴と経歴ですな……」
男「ありがとうございます!」
面接官「ウチは人手不足ですし、ぜひ採用させて下さい」
男「よろしくお願いします!」
面接官「しかしなぜ、前職をお辞めになったのですか?」
男「ファイナルファンタジーをファイファンといったら、クビになってしまって……」
面接官「申し訳ありませんが、先程の話はなかったことにして下さい。不採用です」
男「そ、そんな……!」
男「ちくしょう……ファイファンの何が悪いんだ!」
男「ドラゴンクエストはドラクエじゃねえか! ポケットモンスターはポケモンじゃねえか!」
男「なのになんでファイナルファンタジーはファイファンじゃ駄目なんだよ!」
男「ていうかFFだと、ファイナルファイトかもしれないじゃん!」
男「ファイファンの何がいけないってんだぁぁぁぁぁっ!!!」
―公園―
男「はぁ……これからどうしよ」
ホームレス「お前さん……」
男「はい?」
ホームレス「もしかして、お前さんもファイナルファンタジーをファイファンって略しちまったクチかい?」
男「なぜ、それを……!」
ホームレス「ハハ、やっぱりな」
男「まさか、あなたも……」
ホームレス「ああ、そうさ。おかげで家庭も職も住む場所も、なにもかもを失った……」
男「……!」
ホームレス「お前さんはまだ若い。まだ間に合う」
ホームレス「今からでも遅くはない。ファイファンでなくFFというんだ」
ホームレス「そうすればきっと、社会復帰できるさ」
男「……いいや、諦めない!」
男「世の中に、ファイファン派はきっと大勢いるはずだ!」
男「俺はそいつらを集めて、この腐った世の中を変えてみせる!」
男「死んでもFF派になんてなるもんか!」
男「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」タタタタタッ
ホームレス「あれが若さというものか……愚かだが、羨ましくもあるな」
男「……」カタカタ…
男(そうさ、ファイファン派はきっとたくさんいる!)
男(ネットで同志を集めるんだ……!)
男(ただし、FF派に見つかると弾圧されるおそれがあるから、くれぐれも慎重に――)
そして、数ヵ月後……
ズラッ…
男「よくぞ集まってくれた、同志たちよ!」
男「俺たちはファイナルファンタジーをFFだなんて軟弱な略し方はしない! ファイファンと略す!」
男「長年俺たちを弾圧してきたFF派の奴らに一矢報いてやるんだ!」
男「いや……革命を起こすんだ!」
男「みんな、協力してくれ!」
オオオーッ!!!
男「革命を起こすには武力が必要だ!」
男「みんな、ファイファンの主人公になったつもりで訓練してくれ!」
男「EXPを貯めるんだぁぁぁぁぁ!」
「てりゃぁぁぁっ!」 「うおおおおっ!」 「だあああっ!」
キンッ! ガキンッ! ザシッ! キィンッ! カキンッ!
やがて――
男「ファイファン軍団、完成だ!」
ワァァァ……!
男「これより我が軍は国会議事堂に攻め込む!」
男「よくぞ長い訓練に耐えてきた、同志諸君! 今こそ立ち上がる時だ!」
男「日本を乗っ取り、我らの理想郷を築き上げるのだ!」
ワアァァァァァッ!!!
―国会議事堂―
男「いくぞーっ!!!」
ウオオオオオオッ!!!
警備員「な、なんだお前たちは!?」
男「ファイファンの力、受けてみよ!」ザシュッ
警備員「ぐ、ぐわぁっ!」
男「一気に占拠するんだ! スピードが勝負だぞ!」
男「ハァ、ハァ、ハァ……!」
側近「やりましたね! 国会議事堂は完全に我らが占拠しました!」
側近「他の主要施設も占拠したと、別働隊から連絡が入りました!」
男「ああ……俺たちの勝利だ!」
パパパパーパーパーパッパパー
男「これより我らファイファン派は……“ファイファン帝国”建国を宣言する!」
男「皇帝はもちろん、この俺だ!」
ウオォォォォォ……!
男「そして、日本国憲法に代わり、ファイファン帝国憲法を制定する!」
男「第一条はもちろん――」
第一条 ファイナルファンタジーは“ファイファン”と略すべし!
男「FF派は徹底的に弾圧せよ!」
部下A「はっ!」
男「ファイファン呼びをバカにした者、FFと略した者からは罰金1000万ギルを徴収せよ!」
部下B「はっ!」
男「スクウェア・エニックスを国営企業にせよ!」
部下C「はっ!」
男「天野喜孝氏に肖像画でも描いてもらうか……氏を宮殿へ招くのだ!」
部下D「はっ!」
ところが――
ワァァァ……! ワァァァ……!
男「何事だ?」
側近「反乱軍です! FF派が蜂起して、反乱を起こしました!」
側近「我らも懸命に戦っていますが、なにしろ戦力差が大きすぎ……」
側近「とにかくお逃げ下さい! あなたが捕まれば、ファイファン派は総崩れになります!」
男「うう……ファイファン的な展開だけど、こんなことになるなんてぇ!」
ザシュッ!
側近「ぐあっ!」
男「側近!」
反乱兵A「いたぞ! 帝国の皇帝だ!」タタタッ
反乱兵B「捕まえろ!」タタタッ
ガシィッ!
男「ぐうう……!」
反乱兵A「宮殿に火をつけろ!」
反乱兵B「おうっ!」
男(我が帝国も……ここまでか……。短い天下であった……)
ボォォォォ……! ボォォォォォ……!
男「燃えていく……。俺の帝国が崩れ去っていく……」
男「フッ、そうか……。ようやく分かった……」
男「このファイファン帝国こそが――」
男「俺の最後の幻想(ファイナルファンタジー)だったんだ……」
― THE END ―