1 : 以下、?... - 2018/08/27 16:54:57.787 ZVsTgm+yD 1/17

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    小野田真智(19) アイドル

    【拒食症の正体】

    ホーッホッホッホ……。」

元スレ
喪黒福造「この特効薬で、あなたの拒食症は完治できますよ」 女性アイドル「それはすごい……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1535356497/

2 : 以下、?... - 2018/08/27 16:57:12.553 ZVsTgm+yD 2/17

ある書店。雑誌コーナーでは、少年漫画誌が並んでいる。

その中の一つの『週刊少年サタデー』の表紙には、アイドル・小野田真智の水着姿の写真が写っている。

テロップ「小野田真智(19) アイドル」

『少年サタデー』の表紙での、真智のキャッチコピーは「500年に1度の美少女」だ。


あるイベント会場。コスチュームを着て熱唱する真智。握手会で、ファンと握手をする真智。

ある家電量販店。店内にある大型テレビには、トマトジュースのCMに出演する真智の姿が映っている。

ツイッターユーザーたち「まさに500年に1度の美少女」「まーちゃんは地上に降りた天使」


ある日。とあるアリーナ。控室で、マネージャーと真智が会話している。

マネージャー「なあ真智。お前、ちゃんと食事を取っているのか?」

真智「も、もちろんですよ……」

マネージャー「それにしちゃあ顔色が悪いし、以前よりも少し痩せたような気がするんだけどな……」

真智「き……、気のせいですよ」

5 : 以下、?... - 2018/08/27 16:59:19.177 ZVsTgm+yD 3/17

マネージャー「まさか、怪しい薬とかやってるんじゃないだろうな?」

真智「それだけは絶対にやっていません」

マネージャー「まあ、いい。お前は健康的でさわやかなイメージで売り出しているんだ。このことを忘れるな」

真智「分かっていますよ……」

マネージャーが去り、控室で一人になる真智。

真智(確かに、私は食事をろくに取っていない。いや、ほとんどと言っていいほど食事をしていない)

真智(なぜなら私は、ご飯を食べたくても食べられないから……。身体が食事や料理を受け付けてくれないから……)

回想する真智。

真智(この間、私は無理をして食事を取ろうとした。ファミレスに入り、苦しみに耐えながら料理を何とか食べた)

真智(でも、食後に猛烈な気持ち悪さが襲い……。私はコンビニのトイレで、食べたものを全て吐き出してしまった……)


アリーナ。ステージの上で熱唱する真智。観客席にいるファンたちがサイリウムを振りながら、彼女に声援を送る。

心なしか、疲れていて辛そうな表情の真智。歌い終わった直後、真智はマイクを持ったまま崩れるように倒れる。

6 : 以下、?... - 2018/08/27 17:01:29.629 ZVsTgm+yD 4/17

ある病院。病室のベッドに横たわる真智と、彼女を見守るマネージャー。

マネージャー「医者によるお前の診断は、貧血だった。今のお前の身体の状態からして、おそらく栄養失調だろう」

マネージャー「なあ、もう少し食事を取った方がいいぞ。ダイエットに極度にのめり込むのは危険だぞ」

マネージャーが去り、真智は病室で一人だけになる。

真智(違う……。私はダイエットらしいことは一切していない。それなのに、私の身体は……)

その時、病室の扉が開き、部屋の中に怪しい男が入る。そう、彼こそが……喪黒福造だ。

喪黒「ずいぶん、お困りのようですねぇ……。小野田真智さん」

真智「あ、あなたは何者なんですか!?私に何をする気ですか!?警察を呼びますよ!!」

喪黒「いやぁ、私は怪しい者ではありませんよ。実は私、こういう者ですから……」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」

喪黒「私なら、あなたの拒食症を確実に治せますから……。まあ、気が向いたら私の元を訪ねてください」

真智がいる病室から立ち去る喪黒。喪黒から貰った名刺を見る真智。

真智「ココロのスキマ、お埋めします……か」

彼女が喪黒から貰った名刺の裏の白地には、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。

7 : 以下、?... - 2018/08/27 17:03:39.690 ZVsTgm+yD 5/17

数日後。BAR「魔の巣」に入店する真智。店の席には、真智を待つ喪黒が座っている。

喪黒「お待ちしていましたよ。小野田真智さん」

真智が喪黒の隣の席に腰掛ける。

真智「あの……。トマトジュースを頼みたいんですが……」

喪黒「マスター、この子にトマトジュースを!」

真智の前にトマトジュースが置かれる。

喪黒「小野田さんは拒食症に悩んでいますが、どうやらトマトジュースは飲めるようですねぇ」

真智「ええ……。私は拒食症が深刻ですけど、トマトジュースやトマトはなぜか食べることができるんですよ」

真智「それに私は、昔からトマトが好きでしたし……」

喪黒「もしかすると、今のあなたはトマトジュースやトマトの栄養で辛うじて身体が持っているのかもしれませんねぇ」

真智「たぶん、そうだと思いますよ……。でも、こんな生活が続いたなら私は……」

喪黒「このまま拒食症を放置したならば、痩せ衰えてガリガリになった上……。最悪の場合は死が待っているでしょうなぁ」

真智「おそらく、そうなるでしょうね……。1年以上もまともに食事ができない状態が続くってのは、本当に辛いですよ」

喪黒「1年以上!?どういうことなんです!?」

8 : 以下、?... - 2018/08/27 17:05:46.596 ZVsTgm+yD 6/17

真智「昨年、18歳の誕生日を迎えて以降……。私はなぜか日増しに食が細くなっていきました」

真智「それでも体重が減ることはなかったですし、身体の具合がおかしくなることもありませんでした」

真智「そして、19歳の誕生日を迎えた後、私はほとんどと言っていいほど食事ができなくなったのです」

喪黒「18歳のころから拒食症の予兆があり……、19歳になって本格的な拒食症になったというわけですね」

真智「はい。しかも、私の拒食症は原因不明なんです。原因も分からないのに突然やってきた症状なんですよ」

真智「19歳になってからの拒食症は本当に深刻で……、私は体調不良さえも覚えるようになりました」

真智「身体が辛うじて受け付けるのは、好物のトマトジュースやトマトくらいで……」

喪黒「周りの人たちに、今の自分の症状を相談したことはありますか!?」

真智「今のところ、ありません。マネージャーの人にさえ話していないんです」

真智「この店で喪黒さんに話したのが、初めてなんですから」

喪黒「分かりました。こうやって、小野田さんが藁にもすがる思いで私を頼ったのですから……」

喪黒「私の手で何とかしてあげましょう」

真智「えっ、それじゃあ……」

喪黒「小野田さん、私に着いて来てください」


喪黒に誘われ、外に出る真智。タクシーに乗る2人。

喪黒と真智が乗ったタクシーは、城南大学医学部附属病院の敷地内に入っていく。

9 : 以下、?... - 2018/08/27 17:08:00.312 ZVsTgm+yD 7/17

内科の診療室。医者を前に、椅子に座って話を聞く喪黒と真智。

テロップ「百目鬼太郎 城南大学医学部教授」

百目鬼「分かりました。私が何とかしましょう。喪黒さんの頼みとあれば……」

喪黒「待っていましたよ、百目鬼先生。例のものの効果がさっそく発揮されるのですね」

真智「例のものというのは……」

喪黒「拒食症の特効薬ですよ!」

真智「えーーーーーっ!!」

喪黒「この特効薬の発明者は、ここにいる百目鬼先生です」

百目鬼「ただし、まだ公には出回ってはいませんけどね……」

真智「こ、この話が本当なら……。まさにノーベル賞級の発明……」

喪黒「そうです。そのノーベル賞級の発明を、今回は特別にあなたに使うのです。治療費は私が全額負担しますよ」

真智「じゃあ、私の拒食症は……」

喪黒「もちろん治ります。この特効薬で、あなたの拒食症は完治できますよ」

真智「それはすごい……」

11 : 以下、?... - 2018/08/27 17:10:20.351 ZVsTgm+yD 8/17

ベッドの上に横たわる真智。百目鬼は注射器を持っている。

百目鬼「それじゃあ、いきますよー。ちょっとチクッとしますけどねー」

真智の右腕に、百目鬼によって注射が打たれる。

真智「くっ……!!」

注射を終え、ベッドで横になったままの真智。彼女の側には喪黒と百目鬼がいる。

喪黒「小野田さん、これであなたの拒食症は100パーセント確実に治りますよ」

真智「あ、ありがとうございます……!!」

真智は目に涙を浮かべる。

百目鬼「だけど気になるのは……。彼女の拒食症が原因は分からないままということなんです」

百目鬼「私は一応、医学部の教授だから……。この点だけは納得できないんですよ……」

真智「でも……。辛い拒食症が治れば、私にとっては御の字ですから……!!」

喪黒「まあ、それに万一の場合は……。拒食症が治った後になってから、原因が分かる可能性もあり得ますよ」

喪黒「もしも原因があるとすれば、本当に意外すぎるものかもしれませんねぇ……」

喪黒「小野田さんが500年に1度の美少女と呼ばれているように、拒食症の原因も500年に1度のものかもしれませんよ」

真智「キャハッ、面白いジョークですね。喪黒さん」

12 : 以下、?... - 2018/08/27 17:12:48.075 ZVsTgm+yD 9/17

1週間後。あるステーキ屋。店の中で、豪華なステーキセットを食べる真智。

真智(このステーキ、おいしい……。脂身がついていて、血の滴る肉の味がとっても香ばしい……)

真智(私、前のように普通に食事ができるようになった……。しかも、食べた後も食事を吐かないで済んでいる……)

真智(普通に料理を食べることができるのが、こんなにありがたいなんて……)


大阪城公園。ステージの上で踊りながら熱唱する小野田真智。声援を送るファンたち。

夜。ライブを終えた真智は、マネージャーとともに大阪市内のある料亭の中にいる。

マネージャー「真智のために、今日は有名な店を頼んでおいたぞ」

真智「ありがとうございます!」

マネージャー「なぁ、それにしても……。まさか、お前がスッポン料理にハマっているとはな……」

真智「ええ、そうですよ……。特に、スッポンの生き血を飲むのは最高です」

ふすまの戸が開き、着物を着た女将が2人の前に料理を持って来る。


ある日。真智は、一人で街の郊外の道を歩いている。誰も人通りのいない並木道の中に入る真智。

彼女は、目の前に一匹の野良猫が歩いているのを目にする。一瞬、真智の目つきが変わったように見える……。

さらにある日。とある小学校の校舎。校舎の裏門の前に立つ真智。彼女は、何かをやりそうな気配に見えなくもない……。

13 : 以下、?... - 2018/08/27 17:15:12.287 ZVsTgm+yD 10/17

高速道路。真智とマネージャーは、電気自動車の後部座席に乗っている。真智に週刊誌の見開きを渡すマネージャー。

マネージャー「これを見てみろ。面白い記事が載っているぞ」

真智「どれどれ……。なっ……!!」

週刊誌の記事を見て、驚愕した表情になる真智。彼女は動揺した様子になっている。

マネージャー「最近、東京都内の各地で動物の怪死が相次いでいる。道端の野良犬や野良猫……」

マネージャー「それと、民家のペットの犬や猫……。さらには、小学校の鳥小屋で飼っているニワトリ……」

マネージャー「これらの動物の怪死には共通点がある。それは……」

真智「…………」

マネージャー「全身から血を抜き取られて死んでいたということだ。どの動物もそうだ」

マネージャー「今のところ、原因は不明。警視庁が捜査をしているけど、手がかりは全くない……」

真智「ふ、不思議な事件ですね……」

マネージャー「ああ。実に意味不明な事件だ。まるで、宇宙人か吸血鬼にでもやられたような感じにも見える……」

真智「!!!」

マネージャー「でもな……。宇宙人や吸血鬼なんているわけないからなぁ」

マネージャー「おそらく……。頭のいかれた変質者による、たちの悪いいたずらだろう……」

14 : 以下、?... - 2018/08/27 17:17:15.967 ZVsTgm+yD 11/17

真智「…………」

汗だくとなり、動揺した様子になる真智。

マネージャー「そうか……。一連の事件がそんなに怖いのか……。まあ、無理もあるまい」


BAR「魔の巣」。喪黒と真智が席に腰掛けている。 机の上には週刊誌が置かれている。

喪黒「小野田さん、拒食症は治りましたか」

真智「ええ。例の薬のおかげで、私の拒食症はすっかり完治しました」

喪黒「料理をおいしく食べられるようになって、本当に楽しいでしょうなぁ」

真智「はい。拒食症が治ってからの私は、大人としての味覚が身についたような気がするんです」

真智「最近では、スッポン料理にハマるようになりました」

喪黒「スッポンの生き血はおいしいですからねぇ」

真智「ええ、そうですよ!」

喪黒「生き血といえば……。最近、気になることがあるんですけどねぇ……」

週刊誌を開く喪黒。週刊誌の見開きの内容は……。そう、動物の連続怪死事件を扱った例の記事だ。

真智「こ、これは……」

15 : 以下、?... - 2018/08/27 17:19:21.262 ZVsTgm+yD 12/17

喪黒「小野田さんなら、思い当たりがあるでしょう……」

真智「な、何のことですか!?」

喪黒「もしかすると……。あなたが拒食症になった原因とも関係しているんじゃあ……、ないですかねぇ……!?」

真智「くっ……!!」

喪黒「やはり……。思い当るところがあるようですねぇ、小野田さん。私と一緒に城南大学附属病院に行きましょう」


城南大学医学部附属病院。内科の診療室には、百目鬼教授、喪黒、真智がいる。

百目鬼「原因不明だった小野田様の拒食症の正体が、こんな形で明らかになるとは……」

百目鬼「医学の世界には、様々な未発見の神秘があるものですが……。さすがにこれは、私も想像していませんでしたよ」

真智「要するに私は……。人間ではなかったということですね」

百目鬼「そう判断せざるを得ません。あえて言うならば、小野田様は……。『吸血鬼』ですよ」

真智「やはり……」

喪黒「『500年に1度の美少女』と呼ばれる小野田さんの美貌も、おそらく吸血鬼特有の遺伝からくるもの……」

喪黒「それと……、小野田さんには本当の両親がいません。赤ん坊のころの彼女は……」

喪黒「駅のコインロッカーに捨てられた状態で実業家に拾われ、こうやって育てられてきました」

喪黒「だから……。小野田さんの育ての両親は、彼女の特異な体質について全く知らないでしょう」

16 : 以下、?... - 2018/08/27 17:21:51.465 ZVsTgm+yD 13/17

百目鬼「小野田様は、18歳のころから徐々に食事の量が減り……。19歳になって全く食事ができなくなりました」

百目鬼「しかしながら……。あなたはトマトジュースとトマトだけは、なぜか食べることができました」

喪黒「それどころか、小野田さんは小さいころからトマトが大好物でした」

百目鬼「おそらく……。拒食症になった小野田様は、トマトジュースやトマトの他に……」

百目鬼「身体が受け付けることが可能なものがあったはずです。本人は気付いていなかったでしょうけど。それが……」

真智「動物の血なんですね」

百目鬼「はい。18歳から19歳の間に、小野田様の身体は吸血鬼としてのものに完全に移行したんです」

真智「私が食事を全くできなくなった原因は、そういうことだったのですね……」

百目鬼「とはいえ……。私が発明した例の薬を使うことにより、あなたの拒食症を無理やり治療しました」

喪黒「そのおかげで……。小野田さんは動物の血を吸うことだけで生きていく旧来の吸血鬼から……」

喪黒「人間らしく食事もできる新型の吸血鬼になることができた、というわけです」

真智「はい。例の薬のおかげで、料理をおいしく食べることができるようになりました。でも、私は……」

真智「料理を食べるよりも、動物の血液をすする方がおいしく感じられるんです」

喪黒「そんな小野田さんに、いいものをあげますよ。そのために、大学病院にあなたを連れてきたのですから……」

17 : 以下、?... - 2018/08/27 17:24:12.382 ZVsTgm+yD 14/17

しばらく時間が経ったころ……。ゴム手袋をした真智は、百目鬼からあるものを受け取る。

真智が受け取ったものは、パックに入った輸血用の血液だ。輸血用の血液をすする真智。

真智「これが……、人間の血……。なんて、おいしいんだろう……。こんなにうまいものを口にしたの、初めて……」

百目鬼「今の小野田様には、こうするしかありません。吸血鬼が小動物の血を幾度も吸い続けたならば……」

百目鬼「その次は、生きた人間の血に好奇心が向かうのは確実ですから……」

喪黒「そうなると、おおごとですからね……。だから、小野田さんは、大学病院で輸血用の血を定期的に吸うのですよ」

喪黒「それならば……。あなたは動物を襲うこともなくなりますし、人を襲う事態も避けられるでしょうから……」

真智「なるほど、考えましたね……」

喪黒「ですが、小野田さん……。人間の血を吸うのは1週間に1回にしておいてください」

喪黒「しかも、あなたが人間の血を吸うのは、あくまでもこの大学病院のみ。いいですね、約束ですよ!」

真智「わ、分かりました……」


テロップ「数か月後――」

城南大学医学部附属病院。いつもの如く、医者から輸血用の血液を貰い、血をすする真智。

真智(確かに、人間の血はおいしいけど……。私が口にしているのは輸血用の血……)

真智(魚でたとえるなら、養殖物を食べているようなもの……。私は天然の物を口にしたい……)

19 : 以下、?... - 2018/08/27 17:26:11.759 ZVsTgm+yD 15/17

夜。ある若い女性が、鼻歌を歌いながら一人で道を歩いている。

通行人の目の前に現れる真智。真智は深刻そうな、どこか一点を見つめている目つきをしている。


警視庁。喪黒は、ソファーに座りながら警察関係者に写真を見せている。

警察関係者「こ、この顔はまさか……!!」

喪黒「私も目を疑いましたよ。でも……、間違いなく本人でしょう」


とあるホール。ステージの上で笑顔で熱唱をする真智。観客席から声援を送るファンたち。

ライブを終え、ホールの廊下を歩く真智。

真智「フーーーッ……」

真智が控室のドアを開けると、部屋の中には喪黒がいる。

真智「も、喪黒さん……!!」

喪黒「小野田真智さん……。あなた約束を破りましたね」

真智「わ、私はやましいことは一切やっていません!!」

21 : 以下、?... - 2018/08/27 17:29:48.386 ZVsTgm+yD 16/17

喪黒「とぼけないでください。……最近、都内では通り魔による通行人の不審死が相次いでいます」

喪黒「女子大生、主婦と幼稚園児、それと中学生男子……。この3件の事件で4人が亡くなりましたが、共通しているのは……」

喪黒「4人とも全身から血を抜き取られているということです。こんなことができるのは、一人しかいません。そうですよね!?」

真智「あ、あああ……」

喪黒「どうやら、図星ですか……。小野田さん。私はあなたに忠告したはずですよ」

喪黒「人間の血を吸うのは、城南大学附属病院で1週間に1回のみにしておけ……と」

真智「だ、だって喪黒さん……!!私は輸血用の血を吸い続けているうちに……」

真智「どうしても生きた状態の人間の血が吸いたくなったんです!!我慢できなくなったんです!!」

喪黒「その結果が、一連の連続殺人ですか……。最初の女子大生の死亡事件ですが、あなたが彼女の血を吸う様子……」

喪黒「私は偶然現場に居合わせていましてねぇ……」

真智「うっ……!!」

喪黒「あなたが犯行を行う様子をデジカメで撮影して、警視庁に写真を送ったんですよ。警察は、今のあなたを泳がせている状態なんです」

真智「そ、そんな……!!」

喪黒「なぁに……。今のあなたは、まだトップアイドルのままですよ。この後の握手会……、うまくいくといいですよねぇ」

喪黒は真智に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」

真智「キャアアアアアアアアア!!!」

22 : 以下、?... - 2018/08/27 17:33:23.043 ZVsTgm+yD 17/17

握手会を控え、列を作る大勢のファンたち。真智の身体は、心なしかどことなく震えている。

一番前にいる若い男性ファンが、真智と握手をするために右手を差し出したその時……。真智の目がギラリと光る。

そして、次の瞬間……。真智は男性ファンの身体に飛びかかり、彼の首筋へ勢いよく噛みつく。

男性ファン「ギャアアアアアアアアッ!!!」

唖然とした表情で、真智を見つめるファンたち。一心不乱でファンの生き血を吸う真智。彼女の口元が赤く染まる。


警視庁。取調室の中にいる真智。机の上にある写真は、喪黒が撮影した彼女の犯行現場の様子が映っている。

真智「この写真に写っているのは、私に間違いありません。帰宅中の女子大生を殺害したのは私です」

真智「それと……。残りの2件の3人の殺人も、私がやりました……」


警視庁の前にいる喪黒。

喪黒「そもそも……。人間もまた生き物である以上、食事を取らないと生きていくことができない存在です」

喪黒「食事には、人間の生存のための意味合いだけでなく、料理のおいしさを味わう楽しさも含まれています」

喪黒「だから……。人間にとって拒食症はこの上なく辛い病気ですし、最悪の場合は命にも関わるものです」

喪黒「普通にものを食べて、おいしさを味わう機能は、生き物にとっては天性の賜物なのかもしれません」

喪黒「小野田真智さん。あなたが人生で最後に味わった人間の血は、さぞかしおいしかったでしょうねぇ……」

喪黒「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―

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