1 : 以下、?... - 2018/09/29 01:27:40.829 txSD63Fh0 1/33

眼鏡娘「…………」ペラ…

ギャル「ん?」

ギャル「あっ、コイツ本なんか読んでるー!」

眼鏡娘「え……」

ギャル「休み時間なのに一人で本とか超キモーイ!」

眼鏡娘「ううっ……」



不良「やめろよ」

元スレ
ギャル「コイツ本なんか読んでるー! キモーイ!」眼鏡娘「ううっ……」不良「やめろよ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1538152060/

5 : 以下、?... - 2018/09/29 01:30:10.504 txSD63Fh0 2/33

ギャル「なによー!」

不良「オメェもたまにはファッション雑誌以外のもん読まねーと、ますますバカになっちまうぞ」

ギャル「ふ、ふーんだ!」



眼鏡娘「あ、ありがとう……」

不良「別に……」

6 : 以下、?... - 2018/09/29 01:33:27.097 txSD63Fh0 3/33

放課後――

眼鏡娘(改めて不良君にお礼を言いたいな……)


不良「タイマンだって呼び出しといて三人たぁ、ずいぶんな歓迎だな」

ヤンキーA「うるせえ! 今日こそお前を黙らせてやる!」

ヤンキーB「覚悟しやがれ!」

ヤンキーC「テメーにゃ前からムカついてたんだ!」

不良「……かかってこいよ」


眼鏡娘(無茶だよ……三人相手だなんて!)

7 : 以下、?... - 2018/09/29 01:36:08.509 txSD63Fh0 4/33

ドカッ! バキッ! ガッ!

ヤンキーA「ぐがっ……!」

不良「はぁ、はぁ……この程度か?」

ヤンキーA「ち、ちくしょう……番長さんに報告してやる!」

ヤンキーA「そうしたら、お前なんざひとひねりだ!」

不良「番長だろうがガチョウだろうが、いつでも相手になってやるよ」



眼鏡娘(すごい……一人で三人をやっつけちゃった!)

8 : 以下、?... - 2018/09/29 01:39:19.019 txSD63Fh0 5/33

不良「いてて……。ちっ、何発かもらっちまった」

眼鏡娘「大丈夫!?」

不良「あれ? なんでお前がここに……」

眼鏡娘「どうしてもお礼をいいたくて……追いかけてたら……」

不良「ハハ、そんなことのために校舎裏まで来たのかよ、変な奴」

眼鏡娘「ふふっ……」

不良「あ、そうだ。今度、本貸してくれないか。俺もたまには本を読んでみたいんだ」

眼鏡娘「いいよ!」

眼鏡娘(不良君、見た目は怖いけどとてもいい人だわ……。私、不良君の力になりたい!)

10 : 以下、?... - 2018/09/29 01:41:29.787 txSD63Fh0 6/33

数日後――

番長「おう、こないだはオレの舎弟どもが世話になったそうだな」

番長「放課後、校舎裏に来い。根性叩き直してやっからよ」

不良「望むところだ……」



眼鏡娘(あの人、強そう……! 不良君……!)

14 : 以下、?... - 2018/09/29 01:44:30.028 txSD63Fh0 7/33

――バキィッ!

不良「……ぐはぁっ!」ドザッ

番長「どうしたァ、こんなもんか!?」


ヤンキーA「さっすが番長! 一方的だ!」

ヤンキーB「番長は本格的にボクシングやってんだ! 敵うわけねえ!」

ヤンキーC「ボッコボコにして下さい!」


番長「右ストレートでトドメ刺してやんよォ!」グオッ

不良「ぐっ……!」

15 : 以下、?... - 2018/09/29 01:47:30.787 txSD63Fh0 8/33

眼鏡娘「ま、待って!」

番長「!?」ピタッ

不良「お前……!」

眼鏡娘「番長さん、私が相手よ!」サッ

番長「ヒュ~、なんだこのメガネ、お前の女かよ?」

不良「ちげえよ……! ただのクラスメイトだ!」

不良「この間、からかわれてるのを助けてやったから、きっとそれで……」

番長「ふうん、こんな真面目そうな女がお前みたいなクズに恩返しに来たってか。泣かせるじゃねえか」

番長「よぉし、最初にこいつを可愛がってやるよ!」ダッ

不良「に、逃げろ……逃げろぉっ!!!」

18 : 以下、?... - 2018/09/29 01:49:41.981 txSD63Fh0 9/33

眼鏡娘「大丈夫、昨日関節技の本を読んだから!」

番長「え?」

ガシッ!

番長(あっ、右腕を極められ――)


パキッ


番長「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

22 : 以下、?... - 2018/09/29 01:53:04.516 txSD63Fh0 10/33

番長「折れたぁ! 折れたぁぁぁぁぁっ!!!」

番長「いでえ……いでえよぉぉぉっ!」タタタタタッ

ヤンキーABC「ひえええええっ!」タタタタタッ



眼鏡娘「ふぅ、初めてにしてはうまくいったわ!」

不良「す、すげえなお前……本読んだだけで……。あの番長を……」

眼鏡娘「これからは私、不良君の力になるからね! いっぱい頼って!」

不良「お、おう」

26 : 以下、?... - 2018/09/29 01:56:08.120 txSD63Fh0 11/33

隣町――

パキッ ペキッ ボキッ

金髪「あがぁぁぁぁぁっ!!!」

DQN「いでえええええ!!!」

学ラン「足がっ! 足がぁぁぁぁぁ!!!」

眼鏡娘「ふう、いっちょあがり」

不良(隣町のトップ3といわれる三人を、10秒足らずで片付けやがった……!)

29 : 以下、?... - 2018/09/29 01:59:22.499 txSD63Fh0 12/33

巨漢「かかってきやがれ!」

眼鏡娘「この間空手の本を読んだから試したい技、色々あるんだ!」

眼鏡娘「正拳突き! セイッ!」

ドズッ!

巨漢「ぐぼぉっ! ま、参っ……」ドサッ…

眼鏡娘「セイッ! セイッ! セイイッ!」

ドゴッ! ズドッ! ドゴォッ!



不良「ちょっ……!」

30 : 以下、?... - 2018/09/29 02:02:10.506 txSD63Fh0 13/33

不良「おい、やりすぎだ! やりすぎ!」ガシッ

眼鏡娘「え、どうして?」

不良「もうダウンしてる相手をさらにボコボコにしてどうすんだよ!」

眼鏡娘「だってダウンはしたけど、まだ意識あったよ?」

不良「お前が貸してくれた孫子の本にあったぞ! “勝ってもやりすぎるのはよくない”って!」

眼鏡娘「でも、徹底的に叩かないと歯向かってくる可能性あるし……」

不良(こいつ……!)

31 : 以下、?... - 2018/09/29 02:06:36.184 txSD63Fh0 14/33

眼鏡娘「やったぁ! 不良君、チーマーを潰してまた縄張り(シマ)を広げたよ!」

不良「…………」

眼鏡娘「どうしたの?」

不良「なぁ、もう終わりにしねえか、こんなこと」

眼鏡娘「なにいってるの!? せっかくここまで勢力広げたのに、いよいよこれからじゃない!」

不良「止まるつもりはねえのか」

眼鏡娘「ないわ!」

不良「だったら……俺たち、もう終わりにしよう」

眼鏡娘「え?」

不良「俺、もうお前についていけねえよ」

眼鏡娘「ふうん……あっそう」

34 : 以下、?... - 2018/09/29 02:10:32.830 txSD63Fh0 15/33

眼鏡娘「分かったわ。不良性の違いで解散ってやつね」

不良「……ああ」

眼鏡娘「じゃあ、お別れにこれあげる」サッ

不良「これ……お前のメガネじゃねえか」

眼鏡娘「もう私には必要ないから。これからはコンタクトにするつもり」

不良「分かった……もらっとく」

不良「それともう一つ」

眼鏡娘「ん?」

不良「こんなこといっても無駄かもしれねえけど……せめてクリーンな悪でいてくれよ」

眼鏡娘「クリーンな悪ってなに?」クスッ

眼鏡娘「でもま、記憶にとどめておくわ」

不良「じゃあな……」

眼鏡娘「じゃあね」

37 : 以下、?... - 2018/09/29 02:12:46.480 txSD63Fh0 16/33

ガラッ

不良「……先生」

教師「な、なんだ!? また何かやらかしたのか!? それともこれから何かやらかすつもりか!?」

不良「頼む、俺に勉強を教えてくれ!」

教師「……へ?」

不良「俺……警察官になりたいんだ!」

教師「…………」

38 : 以下、?... - 2018/09/29 02:15:15.431 txSD63Fh0 17/33

教師「札付きのワルのお前がどうやら本気のようだな。いいだろう」

不良「ホントか!?」

教師「ただし、警察官は公務員だ。そう簡単になれると思うなよ!」

不良「俺……頑張るよ! いや、頑張ります!」

教師「じゃあさっそく勉強を始めるか! 資料室に採用試験の問題集があったはずだ」

不良「はいっ!」

39 : 以下、?... - 2018/09/29 02:17:12.016 txSD63Fh0 18/33

不良「うへぇ~、筆記試験苦手なんだよなぁ……」

不良「こんなパズルみてえなのを解かなきゃならないのか……」

不良(だけど、警察官になるためだ! 頑張るぞ!)

カリカリカリカリカリカリカリカリ…





こうして俺は猛勉強の末、警察官になった。

40 : 以下、?... - 2018/09/29 02:19:16.500 txSD63Fh0 19/33

警察官になってからも、持ち前の体力と根性で手柄を立てまくって――

俺は刑事になった。



刑事「今日から配属になりました! よろしくお願いします!」

警部「期待しているよ。バンバン悪を検挙してくれたまえ!」

43 : 以下、?... - 2018/09/29 02:23:26.697 txSD63Fh0 20/33

場末のバーにて

ギィィ…

刑事「…………」ザッ

大男「おめえ、刑事だな? 目つきで分かる。こんなところになんの用だ」

刑事「“女帝”に会いたい。奴について知ってることを教えてくれ」

大男「女帝だと? やめとけ、ヤケドじゃすまねえぞ」

刑事「……俺は女帝に会わなきゃならないんだ」

大男「命なんざとうに捨ててるってツラだな……いいだろう」

45 : 以下、?... - 2018/09/29 02:26:48.619 txSD63Fh0 21/33

大男「女帝は文字通り、今やここら一帯の裏社会の頂点に君臨する女だ」

大男「どんな名うてのワルですら、女帝の名を聞いたとたん子犬同然に怯えちまう」

大男「このままいけば日本の暗黒街を制覇しちまうんじゃねえか」

刑事「……続けてくれ」

大男「あの女は今時珍しい、知恵と腕っぷしだけで成り上がったクリーンな悪党でな」

大男「なんでか知らないが、妙に義理がたいところもあったりする」

刑事「…………」

大男「ただし、敵対者には容赦ねえがな。いったいいくつの組織があの女に潰されたことか」

大男「どんな事情があるかは知らんが、悪いことはいわねえ。あの女には関わらない方がいい」

刑事「……ありがとう。参考になったよ。これで飲み直してくれ」スッ

大男「あんたにゃ五体無事でいてもらいたいねえ。刑事さん」

46 : 以下、?... - 2018/09/29 02:29:05.857 txSD63Fh0 22/33

女帝の豪邸

側近「女帝様、ワインです」トクトク…

女帝「ありがとう」

女帝「…………」

側近(なぜだ……女帝様はここまで勢力を広げられ、まさに敵無しといってよい)

側近(なのになぜ常に、あのように満たされない表情をされているのだ……)

47 : 以下、?... - 2018/09/29 02:31:08.110 txSD63Fh0 23/33

バキッ… ドカッ… ドゴッ… ワァァァ…


側近「む?」

女帝「なんだい? 屋敷内が騒がしいね……」

側近「まさか、侵入者!? 一体どこの命知らずが――」





バァンッ!!!

48 : 以下、?... - 2018/09/29 02:33:25.521 txSD63Fh0 24/33

刑事「……よぉ」

側近「なんだ貴様!? ヒットマンか!?」

女帝「!」

女帝「あっ、お前は……!」

側近「えっ、お知り合いですか!?」

刑事「久しぶりだな……」

女帝「……今さらなんの用だ?」

49 : 以下、?... - 2018/09/29 02:36:45.500 txSD63Fh0 25/33

刑事「俺は今、こういう仕事をしている」サッ

女帝「ほう、不良だったお前が警察手帳をな……こいつは傑作だ!」

側近(警察には十分金を渡し、圧力をかけているのに、なぜこいつは単身飛び込んできた!?)

刑事「お前が道を踏み外したのは、俺の責任だ……」

女帝「道を踏み外した? 違うな、私は私に相応しい道を選んだだけのことだ」

刑事「俺にはお前を止める責務がある」

女帝「責務ときたか。お勉強の成果か、洒落た言葉を使うようになったじゃないか」

刑事「お前は……俺が逮捕する!」

50 : 以下、?... - 2018/09/29 02:39:51.127 txSD63Fh0 26/33

女帝「私を逮捕? ふふ、笑わせてくれる」

女帝「あれから私はあらゆる本を読み、あらゆる格闘技を身に付け、あらゆる敵を倒してきた」

女帝「決別する前からすでに私に劣っていたお前如きに、私を倒せると思うか!」

側近「そうだ! 女帝様はピストルやマシンガン相手にも勝利を収めてきたのだ!」

刑事「だとしても、俺はやらなきゃならない」

女帝「いくら勉強して刑事になっても、しょせん不良(バカ)はバカのままか……」

女帝「いくぞっ!」ダンッ

刑事「!」

側近(速いッ! 下半身を爆発的に駆動させ、一瞬で間合いを詰める女帝様の歩法!)

51 : 以下、?... - 2018/09/29 02:41:32.842 txSD63Fh0 27/33

ガッ! ドガッ! バキッ! ドゴッ! ガゴォッ!

刑事「がはっ!」

女帝「どうだッ! あらゆる格闘技の要素をミックスさせた私の打撃はッ!」

刑事(奥歯が折れた……)ペッ

女帝「さらにィ!」ガシッ


ボグッ


刑事「ぐ……!」ブラーン…

側近「やったぁ! 刑事の右腕をヘシ折った!」

53 : 以下、?... - 2018/09/29 02:43:55.806 txSD63Fh0 28/33

女帝「もうやめておけ。お前では無理だ」

刑事「やめないさ……お前を逮捕するまでな!」

女帝「……どうしても、二階級特進したいようだな!」グオオッ

刑事(お前はずっと色んな格闘技を使って、色んな敵を倒してきたんだろう)

刑事(だが、俺は――ずっとお前を倒すためだけに)ガシッ

女帝「こいつ! 折れた腕で組んできただと!?」

刑事「柔道をやってきたんだ!!!」

ブオンッ!

――ズドォンッ!!!



側近「い、一本ッ!」

54 : 以下、?... - 2018/09/29 02:46:44.827 txSD63Fh0 29/33

女帝「ガハッ……! 強く、なったな……」

刑事「違うな……お前が弱くなっただけさ」

女帝「そうかも……しれんな……」

刑事「このままお前を署まで連行……といいたいところだが」

刑事「お前の影響力は絶大だ。警察組織にも司法にも、お前を裁こうなんて気概のある奴はいないだろう」

刑事「たとえお前自身が望んでも、な」

側近「そうだ! その通りだ! 女帝様は無敵なのだッ!」

56 : 以下、?... - 2018/09/29 02:49:26.882 txSD63Fh0 30/33

刑事「逆にいえば、お前はまだクリーンな状態にあるってことになる」

刑事「なぁ……お前、足を洗え」

女帝「!」

刑事「足を洗って……人生をやり直そう」

女帝「バカな……そんなことできるわけがない」

女帝「私はもう、すっかり変わってしまったのだ。やり直すことなど、不可能だ……」

刑事「そんなことはないさ……」スッ

女帝「こ、これは!」

57 : 以下、?... - 2018/09/29 02:51:34.997 txSD63Fh0 31/33

女帝「あの時渡したメガネ!」

刑事「これ、かけてみろ」

女帝「…………!」スチャッ

刑事「ほら、あの頃のまんまだ。お前は何も変わっちゃいない」

女帝「うぅっ……」


眼鏡娘「不良君……」グスッ

不良「おいおい泣くなよ、メガネが曇っちまうぞ」



側近「…………!?」

側近(今一瞬、二人が高校生ぐらいに見えて……)ゴシゴシ

58 : 以下、?... - 2018/09/29 02:53:05.660 txSD63Fh0 32/33

女帝「側近」

側近「は……はっ!」

女帝「悔しいが、私はもうお前たちのリーダーでいられそうにない……」

女帝「お前なら引き継げよう。後を頼む」

側近「はいっ……!」

側近(どんなに勝利を収めても、敵を潰しても決して満たされなかった女帝様のお顔がついに――)

側近(誰が引き止めることができようか……!)

59 : 以下、?... - 2018/09/29 02:55:09.507 txSD63Fh0 33/33

刑事「お前を……逮捕する」

女帝「……うん」

刑事「お前はこれから罪を償うんだ……俺という刑務所でな」







― END ―

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