みほ「…………」ペラペラ
沙織「あれ?みぽりん何読んでるの?」
みほ「ん?これはね、アンチョビさんに借りた……」
沙織「借りた?」
みほ「れ、恋愛小説……」テレテレ
沙織「あはは、そんなので照れることないじゃん。私だって読むし」
みほ「そ、そう?」
沙織「うん!むしろイマドキ、女子でそういう携帯小説の類読んでない子のが珍しい気がするけど」
みほ「そうなんだ……」
沙織「あははは。みぽりんの家厳しそうだしねえ」
元スレ
【ガルパン】沙織「手を引いてたつもりが、いつの間にか手を引かれてたお話」
http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1537451552/
みほ「(ふと、子供のころにお母さんが買ってくれた本があったことを思い出した))」
みほ「(当時流行っていた魔法使いの冒険小説を買ってとねだったら、『これにしときなさい』とお母さんは宮沢賢治の"銀河鉄道の夜"を差し出したのだ)」
みほ「(私はそんな教科書に載るような本が読みたいわけじゃなかったのに)」
みほ「(いやいや言ってるうちにお母さんは呆れて、どっか行っちゃったっけ)」
みほ「はは……、確かに家でこういうの読んでたら怒られたかも」
沙織「まあ、でもそんなもんだよね。大人はすぐ私達のこと批判するからさー」
みほ「そうかも。すぐに廃校だーなんて言い出すし。あはは」
沙織「あはははは」
みほ「(あの後、お母さんが買ってくれた"銀河鉄道"と、お姉ちゃんがこっそり買ってくれた"魔法使いの小説"が机に並んでた)」
みほ「(お姉ちゃんは、こっちは私が読むよって銀河鉄道を持っていったっけ)」
みほ「(それから、ずいぶんお姉ちゃんが面白そうに本を読んでたから、魔法使いの小説をほっぽって『一緒に読む!』なんて言って……)」
みほ「(お姉ちゃんは少し困ったような顔してたけど、お母さんはやけに嬉しそうだったなあ……。むぅ)」
みほ「沙織さんは銀河鉄道の夜って読んだことある?」
沙織「へ?」
みほ「宮沢賢治の、知らない?」
沙織「いやいや、知ってるよ。突然だったから驚いただけ」
沙織「読んだこともあるよ。中学校の頃だったかな?読書感想文書かされてさー」
みほ「そっか」
沙織「それで?銀河鉄道がどうかしたの?」
みほ「なんとなく沙織さんはカムパネルラに似てるかなって」
沙織「んー?」
みほ「(まだ何も知らなかったあの時、私が生徒会に呼び出されて戦車道をやれって脅された)」
みほ「(私は怖くって何も言えなかった)」
みほ「(でも沙織さんと華さんがが手を握ってくれて、私の気持ちを伝えてくれた)」
みほ「(沙織さんも怖くないはずが無いのに。それでも、手を取ってくれた)」
みほ「(明るくて、勇気があって、人気者で、そんな沙織さんに憧れた)」
沙織「(みほはなんだか危なっかしくて、ほっとけなかった)」
沙織「(教科書拾おうとして、筆箱をぶちまけるぐらいにはぶきっちょさんだし)」
沙織「(だから、みほに声をかけた。みほの手を取った)」
沙織「(私が手を引いてあげないと、転んでしまいそうだったから)」
みほ「みんなから頼りになって、優しくて、勇気があって、沙織さんはいつだって私の憧れだったよ」
沙織「ありがとう。でも、そんな……お別れみたいな言い方やめてよ」
みほ「うん。ごめんね。でも、これだけは言いたくて」
沙織「…………」
沙織「(明日が怖くて眠れなかった)」
沙織「(明日の大学選抜チームが恐ろしくって、寝ていられなかった)」
沙織「(だからこんな夜中にウロウロとしてたら、みほが居た)」
沙織「(みほも眠れないのか小説なんか読んで、お茶をすすってた)]
沙織「(私が声をかけるとみほは笑顔になった。毎日遅くまで必死に作戦を考えてできたクマだらけ顔で)」
沙織「(不安に押しつぶされそうな青い顔で、それでも微笑んだのだった)」
みほ「私が今、こうして楽しく居られるは沙織さんのおかげだから」
みほ「他人のために一生懸命になれる、あなたのおかげだから」
沙織「…………」
沙織「みぽりんってさ……鏡見たことある?」
みほ「へ?」ワタワタ
沙織「(みほは慌てて寝癖を確かめていた)」
沙織「あはは、そういう意味じゃなくって」
沙織「みぽりんの方がカムパネルラだって話」
沙織「プラウダと戦ったとき、私達はみぽりんの言うことも聞かずに無謀に戦ってピンチになっちゃってさ」
みほ「え?」
沙織「それで降伏勧告なんかされちゃって、そこに廃校の話まで出たからもー大変」
みほ「…………」
沙織「私達みんなパニックでさ」
沙織「戦わなくちゃって分かってても、それが出来なかった」
沙織「私、何もできなかった」
沙織「でも、みぽりんは違ってさ、あんこう踊りなんかして……私達を引っ張ってくれた」
みほ「うん……」
沙織「決勝戦で、うさぎさんチームが川で止まっちゃったときも同じ」
沙織「みほだけが、みんなのために戦ってた」
沙織「"ほんとうの幸福"を掴むためにひとり懸命でさ。私は頑張れって応援することしかできなかった」
沙織「いつか、引っ張っていこうと思ったみほの手は、本当はいつだって前にあって」
沙織「私はずっとみほに手を引いてもらってた」
沙織「今だってそう」
沙織「折れそうな心を、くじけそうな気持ちを、みほが引っ張ってくれてる」
沙織「私はずっとみほに憧れてた」
みほ「!」
沙織「みほみたいに強くなりたかった」
沙織「みほみたいな勇気が欲しかった」
沙織「みほの優しさが眩しかった」
沙織「ずっとみほと一緒に居たかった!」
みほ「うん」グスッ
みほ「うん……。私も、ずっと、ずっとずっと沙織さんたちと一緒に居たい」
沙織「(もう私達の顔は涙でぐちゃぐちゃで、もの凄くみっとなくって、明日の恐怖で泣いてしまいそうだったけど、それでも笑顔で、満面の笑顔で)」
沙織「みぽりん、大好きだよっ!」
夏の夜に叫んだのだった
………………
………
…
なんだか、声をかけるのが恥ずかしかった
あの夜、色々と恥ずかしいことを沢山言った気がする
だから、どうにもむず痒くって、彼女の名前を呼ぶのが照れくさくって、冗談めかさないと赤面してしまいそうで
「ヘイ彼女、一緒にーー」
そんな風に声をかけたのだった
完
15 : >>1 - 2018/09/20 23:17:39 hQ4 15/17時系列的には劇場版の試合前日です
基本的にはみほ総受けSSが大好きなんですが、みほさおだけは何か特別で……
ずっと書いてみたいと思ってたので、沙織はみほに、みほは沙織に救われてるって話を書きました
ちなみに銀河鉄道がやけにプッシュされてるのはボツ案のせいです
『ジョバンニ、カムパネルラが川へ入ったよ』
目の前にフラッグ車が見えていた
全速力で駆けて、背後から奇襲を狙う
『ザネリがね、水へ落っこったろう』
あと数分で全てが決する
戦車道大会決勝戦ーー
緊張で少しだけ顔がこわばる
『するとカムパネルラがすぐに飛び込んだんだ』
突如、慌てた様子で通信が入った
通信手は泣き喚くような金切り声で、何事かを叫び続けていた
「ーーーーーーーー」
視界が歪む、何も聞こえなくなる
ただ、敵の砲塔がこちらへゆっくりと旋回するのだけが分かった
『もう駄目です落ちてから四十五分がたちましたから』
17 : >>1 - 2018/09/20 23:26:40 hQ4 17/17という、みほまほボツ案
>>3ぐらいからの派生でした
終