~教会~
神父「ご覧下さい……あれが我が教会に伝わる≪神の像≫です」
オオッ……
「神様……!」
「癒やされる……」
「涙が出てくるわ!」
男(うーむ、いつ見ても素晴らしい……)
元スレ
男「美術品を修復しようとしたらどんどん取り返しのつかないことになっていく」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1536768013/
男(神々しく、凛々しく、美しい男性の像……まさに≪神の像≫という名に相応しい)
男(こうして眺めているだけで、心が洗われるようだ……)
男(しかし……物足りない)
男(できればもっと近くで見たいし、一度でいいからこの手で触ってみたい!)
男(だけど、そんなことできるのは教会の関係者だけ……)
男(ああ……あの像にもっと近づくことのできるチャンスはないだろうか……)
ある日のこと……
神父「……ん!?」
ピシッ…
神父「おおっ、なんということだ! ≪神の像≫にヒビが入っている!」
神父(このままにしておけば、天罰が下ってしまうかもしれん!)
神父(誰かに修復を依頼しなければ……)
神父「というわけなのです」
神父「どなたか修復していただけませんか?」
ザワザワ… ガヤガヤ…
男「やらせて下さい!」サッ
神父「おおっ、やって下さいますか! しかし、美術の心得はありますか?」
男「あります! 美術品の修復は得意中の得意です!」
男(真っ赤な嘘です!)
男「やったーっ!」
男「いやぁ~、嬉しいなぁ。まさか≪神の像≫を家に持ち帰れるなんて……」
男「たしかにヒビが入ってるけど、相変わらず美しい……」
男「満足するまで眺めたら、接着剤でヒビを埋めれば何とかなるだろ」
男(特にこの右腕ときたら……)サワッ
ボキッ
男「え」
男「折れちゃった……右腕」
男(やべええええ! どうしよう!?)
男(弁償しなきゃまずいよな……ってか、弁償できるようなもんなのか!?)
男(あああ、どうしよう、どうしよう……なんとかしなきゃ)
男(とにかくバランスを取らなきゃ!)
男(そうだ! だったら左腕も!)
ボキッ
男(よし! これでバランスがいい! ……って)
男(やっちまった……)
男(何やってんの!? 何やってんの俺!?)
男(両腕とも折っちゃってどうすんだよ! 片腕ならまだ許してもらえたかもしれないのに!)
男(元に戻しても絶対違和感出るよなぁ……)
男(こうなったら……腕を増やそう! それしかない!)
ペタペタ…
男「……よし」
男(腕を六本に増やしたぞ! 二本折っちゃっても、六本に増やせば問題ないだろ!)
男(とりあえず、一休みするか……)
男(コーヒーでも飲もう……)
ゴトッ バシャッ…
男「あーっ!!!」
男(やばい、コーヒーがかかっちゃった……)
男(拭かなきゃ!)フキフキ…
男「うーん……」
男(イマイチ色が落ちない……どうしよう……)
男(仕方ない、茶色に塗ろう!)
ヌリヌリ… ペタペタ…
男(コーヒーはごまかせたけど、なんだか神々しさがなくなってしまった)
男(やっぱり茶色は地味だからな……どうしよう)
男(そうだ! こうなったらいっそ七色に塗ろう!)ペタペタ…
男(おおっ、レインボー! どうせだったらもっと派手にしちゃおう!)
男(ついでにLEDもつけて……)
ピカピカ… キラキラ…
男「おおお~……」
男(キラキラ光ってる……光ってる……アハハ……。なにやってんだ、俺……)
娘「パパー、何やってんの? あ、キレーイ!」
男「あっ、その像にさわっちゃダメ――」
ボキッ
男「あっ」
男(折れて、上半身と下半身が分離しちゃった!)
娘「ごめんなさい……」
男「ハハハ、いいよいいよ」
男(俺も散々壊した後だから、娘を叱れねえ……)
男「そうだ! 下半身にはキノコをつけちゃおう!」
娘「キャハハ、おもしろーい!」
アハハハ… ハハハ…
男「もっと神々しくするにはどうしたらいいだろう?」
娘「翼をつけたら?」
男「お、いいねー! 天使みたいな――」
娘「コウモリさんみたいな翼をつけよう!」
男(え、そういうやつ!?)
娘「口紅ぬるー!」ヌリヌリ…
男「ハッハッハ、いいともいいとも!」
娘「スカートもはかせてあげるー!」
男「ハッハッハ、どんどんやりなさい!」
男(もう……どうにでもなれ……)
~教会~
神父「お待ちしておりました」ニッコリ
男「……」
神父「修復は……やって頂けたのでしょうか?」
男「はい……やりました」
神父「おおっ、ありがとうございます」
神父「では見せて下さい!」
男「……はい」
男「これ……です」ゴトッ
神父「は!?」
神父「なんだこりゃ!?」
神父「腕が六本生えてて、全体的にピカピカ光って、悪魔みたいな羽根が生えてて……」
神父「上半身と下半身が分かれて、下半身には卑猥なものがくっついて……」
神父「どうなってんだよこれ!? 原型とどめてねーじゃん! 別物になってんじゃん!」
男「あの……」
男「修復してるうちにどんどんおかしくなっちゃって……」
神父「何やってんだてめええええええ!!!」
神父「どうすんだよ、どうしてくれるんだよ、これ!?」
男「本当に……すみません!」
神父「謝って済んだら教会はいらねーっつうの!」
男「は、はい……」
男「なんとか弁償を……」
神父「弁償できる代物じゃねーっての! 世界に一つしかないんだからさ!」
神父「こんなの……神への侮辱以外の何物でもないッ! バチ当たりがぁぁぁ!」
男「ううっ……!」
ピッシャァンッ! バリバリバリッ!
男「なんだ!? いきなり天から雷が降ってきた!?」
神父「ほらぁ、きっと神様が怒ったんだよ!」
男「ひ、ひいいっ!」
神父「神様、こいつです! 全てこいつが悪いんです! どうかこいつに天罰を――」
「≪神の像≫を修復した者よ……」
男「あわわわ……申し訳ありませんっ! 悪気はなかったんですっ! ごめんなさいっ!」
神「なんでこんなに私そっくりに作れたんだ!? エスパーか、お前!?」
神「あまりに驚いたんで、つい下界に降りてきてしまったよ!」
神「ほら、そっくりだろ!?」ピカピカーッ
男&神父「えええええ~~~~~~!!!???」
― 完 ―
一致するのはそれこそ天文学的な確率だろうけどwww