1 : 以下、?... - 2018/08/17 18:21:37.593 6oP9wbwqD 1/17

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    土屋耕作(48) 農家

    【レタス長者】

    ホーッホッホッホ……。」

元スレ
喪黒福造「あなたのレタス、海外で売れるようにしましょうか」 レタス農家「何ですって!?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1534497697/

2 : 以下、?... - 2018/08/17 18:23:15.395 6oP9wbwqD 2/17

テロップ「長野県、東信州市――」

昼。農場の入り口には、「土屋ファーム」の立て札が立っている。

広大な畑に実る無数のレタス。まるで、地面が緑色に塗りつぶされたように見える。

畑では、中年男性とともに、アジア系の外国人の若者たちがレタスの収穫を行っている。

テロップ「土屋耕作(48) 農場経営者」

今年はレタス畑は豊作のようだが、土屋はなぜか浮かない表情をしている。

夕方。小屋の中で、椅子に座り、休みを取る土屋。彼は疲れ切った顔をしている。

土屋の元に、アジア系の外国人たちが数人寄ってくる。

外国人A「あの、土屋サン……」

土屋「どうしたんだ?君たち……」

外国人A「実は私たち、今月いっぱいでここを辞めようと思っています……」

外国人B「土屋サン、今までありがとうございました……」

外国人研修生たちの集団退職の表明に、驚いた表情になる土屋。

3 : 以下、?... - 2018/08/17 18:25:11.885 6oP9wbwqD 3/17

数日後。

テロップ「東信州市、鬼綱温泉――」

温泉街の中を歩く喪黒福造。喪黒は、鬼綱温泉の国民宿舎の建物の中に入る。

脱衣場の中は、老人の姿が多い。老人の客たちの中に、中年っぽい2人――土屋と喪黒が混じっている。

大浴場。温泉につかる土屋。彼の隣には喪黒がいる。

喪黒「温泉は気持ちいですなぁ」

土屋「ええ、まあ……」

喪黒「たまには、こうやって田舎の温泉地へ旅行に訪れるのも悪くないですよ……」

土屋「そうですか……。優雅な身分ですねぇ、あなた……」

喪黒「それを言うなら、あなたもそうでしょう。こうやって、平日に温泉に訪れているのだから……」

土屋「私の場合はですね、仕事が行き詰まって疲れているんですよ……」

喪黒「それは大変ですなぁ……、何なら、私が相談に乗りましょうか?」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

4 : 以下、?... - 2018/08/17 18:27:09.880 6oP9wbwqD 4/17

土屋「ウォータープルーフの名刺ですか……。それにしても『ココロのスキマ、お埋めします』とは……!?」

喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」

喪黒「まあ、ボランティアみたいなものですよ」

土屋「へぇ、今時そんな仕事があるのですか……」

土屋「何しろ……。私は10年以上も田舎暮らしをしているから、世間のことに疎くなってしまって……」


国民宿舎。風呂からあがり、ソファーの上で牛乳を飲む2人。

喪黒「そうですか……。土屋さんは10年前、東京でサラリーマンをしていたのですか……」

土屋「ええ……。10年前の私は、東京の総合商社で係長をしていました……」

土屋「ですが……。長野県へ旅行したことをきっかけに、田舎暮らしに憧れるようになりました」

喪黒「あのころのあなたは、都会での生活に疲れていたのでしょうねぇ」

土屋「はい、そうですよ。東京での企業戦士としての生活に疲弊した私は……」

土屋「田舎に住んで農業生活をすることを決心し、会社を辞めました」

喪黒「ずいぶん思い切った決断でしたなぁ……」

土屋「ええ……。田舎暮らしを決心したあのころの私は……」

土屋「当時、会社で働いていた社員たちからは呆れられましたし……」

土屋「一緒に暮らしていた妻とも離婚する羽目になりましたよ……」

5 : 以下、?... - 2018/08/17 18:29:18.982 6oP9wbwqD 5/17

喪黒「後悔していますか!?」

土屋「後悔はしていません……。ただ、最近になって私の農業生活は行き詰まりを迎えているんです……」

喪黒「土屋さんは、何を栽培する農家なのですか?」

土屋「私はレタス農家です。この街の郊外で、農場を経営しています……」

喪黒「この街の郊外……。かつては『村』だった所ですよね?」

喪黒「ほら、東信州市は平成の大合併でいくつかの町や村が統合してできた自治体ですから……」

土屋「あなたのおっしゃる通りです」

喪黒「長野県在住でレタス農家なら、収入はそれなりにあるでしょうに……」

土屋「それが、そうでもないんですよ……」

喪黒「何やら、複雑な事情がおありのようですなぁ……」

土屋「はい。私はレタス農家として年収は低いですから……」

土屋「年収が足りなくて給料の支払いが滞りがちになりやすいんです」

喪黒「しかも、農場経営は重労働ですからねぇ……」

土屋「ええ。そのせいで……、この農園で働いていた外国人研修生たちがいっせいに退職しました」

6 : 以下、?... - 2018/08/17 18:31:22.274 6oP9wbwqD 6/17

喪黒「土屋さんにとっては痛手ですよねぇ」

土屋「はい。でも、私にとって痛手なのはそれだけではありません……」

土屋「野菜の買い取り先が減り、農場経営の収益がますます落ち込んだのは非常にきついですね……」

喪黒「一体、どういうことです!?」

土屋「実は……。私の農場は、いくつかの外食チェーン店と買い取り契約を結んでいたんです」

土屋「ですが、今年になってから外食チェーン店が相次いで買い取り契約の解除を言い渡してきました」

土屋「低価格で安定供給できる野菜の方が、外食チェーン店にとってはコストが安くて都合がいいですから……」

喪黒「それは裏を返せば……、土屋さんが質の高いレタスを栽培していることの証明でもありますよね」

土屋「ええ。私は高品質な野菜を作ることを心がけてきましたよ。有機質肥料を使い、農薬は極力使うことを控える……」

土屋「でも……。値段が高くて質のいい野菜ってのは、どうしても一般人には売れませんからね……」

土屋「それに……。大規模農場で作られた低価格の野菜との競争では何かと不利になりがちですから……」

喪黒「じゃあ、農協に頼んで買い取り先を探して貰ったらどうです!?」

土屋「私は農協に加入していないんですよ。こうやって、個人で独自の農業を追及してきたおかげで……」

土屋「農協とは不仲になり、地元ではすっかり孤立してしまいましたから……」

喪黒「いやはや……。あなたの苦労、察するに余りあります。私が何とかしてあげたいところですが……」

土屋「お気持ちはありがたいんですが、それができれば苦労しませんよ」

7 : 以下、?... - 2018/08/17 18:34:28.478 6oP9wbwqD 7/17

喪黒「土屋さんが作っているレタス、私が販路を見つけますよ」

土屋「えっ!?国内のどこに買い取り先があるんですか!?」

喪黒「買い取り先は何も、国内とは限りませんよ」

土屋「……ということは」

喪黒「あなたのレタス、海外で売れるようにしましょうか」

土屋「何ですって!?いきなり何を言うかと思えば……」

喪黒「私は正気です。要するに、今流行りの『攻めの農業』って奴ですよ」

土屋「…………」 喪黒の話を聞き、土屋は驚きと呆れで言葉が出ない。


土屋が運転するトラックに乗る喪黒。2人が乗るトラックは山道の中を走る。

喪黒「雄大で美しい大自然……。素晴らしいですなぁ……」

土屋「私もここにやって来た初めのころは、ここの大自然に感動しましたけど……」

土屋「今ではすっかり慣れてしまいましたよ。田舎とか自然への憧れってのは……」

土屋「それらとは無縁の都会暮らしだから感じることができたんでしょうねぇ……」

土屋ファーム。喪黒と土屋は広大なレタス畑の中にいる。

8 : 以下、?... - 2018/08/17 18:37:07.257 6oP9wbwqD 8/17

レタス畑は、収穫が終わったわずかな部分と、まだ収穫が終わっていない大半の部分にくっきり分かれている。

喪黒「いやぁ……、ここまで規模の大きいレタス畑は初めて見ましたよ。壮観ですなぁ」

土屋「でも、今の私は……。レタスの買い取り先が少ないし、パートも減って人手不足の状態……」

喪黒「これから、買い取り先ができるんですよ」

喪黒「販路が見つかって野菜が売れるようになれば、農場の収益は上がります……」

喪黒「土屋ファームが高収入であることが評判になれば、ここで働きたいという人たちも増えますし……」

喪黒「当然、パートの人たちへの給料も払えるようになります」

小屋の中に入る土屋と喪黒。土屋はレタスを大きめの買い物袋に入れる。レタスの入った買い物袋が3つ並ぶ。

土屋「じゃあ、こんな感じでどうでしょうか……」

喪黒「上出来です。これを外国のレストランへ持って行って、売り込みに行きますよ」

喪黒「何しろ、私には特別な知り合いがいるのですから……」

土屋「本当に、うまくいくんですかね!?」

喪黒「もちろんです。おそらく、土屋ファームはこれから先……」

喪黒「海外へのレタスの販売を中心に成り立っていくことになるでしょうなぁ……」

レタスの入った買い物袋を3つ持ちながら、喪黒は農場を後にする。喪黒の後姿を眺める土屋。

土屋(それにしても、相当な変わり者だったなぁ……。この人……)

9 : 以下、?... - 2018/08/17 18:39:19.457 6oP9wbwqD 9/17

数日後。上空を飛ぶ旅客機。飛行機の客席の中には喪黒がいる。

南米のある国。炎天下の都会の中を、現地の通行人たちが歩いている。

街の中に、レストランの建物が見える。店内で食事をする客たち。

店の奥では、ラテン系外国人のコックがレタス料理を試食している。彼がいる席には喪黒の姿もある。


さらに1週間後。土屋ファームの前にタクシーが止まる。

タクシーの中から現れたのは、喪黒福造、日系人、ラテン系外国人の3人だ。

喪黒「こんにちは、土屋さん」

土屋「やぁ、喪黒さん」

浅川「私の名はパウロ浅川。日系人です。サンパウロ市で複数のレストランのオーナーをしています」

浅川「私の隣にいるのは、レストランのシェフのラモスです」

ラモス「●▲■★◆○▽☆……」

ラモスはポルトガル語で何か挨拶をする。

10 : 以下、?... - 2018/08/17 18:41:19.353 6oP9wbwqD 10/17

土屋「サンパウロというのは……。つまり、あなたたちはブラジルの方ですか……」

浅川「そうです。私たちは、日本の喪黒さんと知り合いなんです」


小屋の中にいる喪黒、土屋、浅川、ラモス。

ラモス「●▲■★◆○、●▲■。●▲■★◆○▽☆●、●▲■★」

浅川「『土屋さんの作ったレタスは、素晴らしい。自分が今まで生きてきた人生で、一番おいしいレタスだった』」

浅川「……とラモスは言っています」

土屋「ど、どうも……」

浅川「そこでですよ。土屋さん……。よろしかったら、私が経営する店と契約してください」

土屋「えっ!?」

浅川「これほど質の高いレタスが、このまま世間で埋もれるのは惜しいですからね……」

土屋「わ、私のために……。わざわざそこまでしてくださって……」

浅川「あとですね……。私は知り合いの経営者に、土屋さんのレタスのことを話しました」

浅川「そしたら彼は……。土屋さんのレタスを使って、新商品の開発もしたいと言っていましたよ……」

11 : 以下、?... - 2018/08/17 18:43:18.743 6oP9wbwqD 11/17

土屋「それは本当ですか!?」

浅川「本当です」

喪黒「よかったですなぁ、土屋さん」

土屋「ゆ、夢のようだ……!」


テロップ「1年後、春――」

東信州市、土屋ファーム。広い畑の上で、土屋とパートたちはデッキブラシで葉落としをしている。

土屋ファームで働いているパートの人間は、ラテン系外国人や日系人ばかりだ。


土屋の農場を訪れる喪黒。

喪黒「お久しぶりです、土屋さん」

土屋「こんにちは、喪黒さん」


小屋の中で話をする喪黒と土屋。

喪黒「どうです、土屋さん?農場経営はうまくいっていますか?」

12 : 以下、?... - 2018/08/17 18:45:18.407 6oP9wbwqD 12/17

土屋「ええ……。喪黒さんがブラジルのレストランオーナーの方を紹介して以来……」

土屋「私の生活は激変しました……」

喪黒「あなたの生活は、間違いなくいい方に変わったでしょうなぁ……」

土屋「もちろんですよ!おかげさまで、土屋ファームのレタスは……」

土屋「ブラジル国内から、次々と注文の電話やメールが相次いでいるんです」

喪黒「私の言った通り、土屋ファームは海外へのレタスの販売が中心になりましたねぇ」

土屋「まさか、喪黒さんの言ったことが現実になるとは夢にも思いませんでした」

土屋「いやぁ、あなたは本当にすごいお方だ……」

喪黒「見たところ、ここで働いているパートの人たちもブラジル人が多いですねぇ」

土屋「どうやら、彼らによると……。土屋ファームのレタスの評判を聞いて……」

土屋「わざわざ日本まで出稼ぎにやってきたようなんですよ……」

喪黒「農場の収益は大幅にアップしましたから、パートの人たちも高給で待遇できますよねぇ」

土屋「そりゃあ、もう……。でも……。うまくいきすぎて、内心には不安もあるんですよ」

喪黒「大丈夫です。ですが土屋さん。あなたは私と、ある約束をしていただきたいんですがね……」

土屋「約束!?」

13 : 以下、?... - 2018/08/17 18:47:19.057 6oP9wbwqD 13/17

喪黒「そうです。土屋さんは、ブラジルに行ってパウロ浅川さんと会わないようにして欲しいのです」

土屋「これが、喪黒さんと私との約束ですか……。変わった約束ですね……」

喪黒「パウロ浅川さんには、いろいろ複雑な事情があるんです。だからなのですよ……」

土屋「まあ、いいでしょう。私はこのまま田舎暮らしを続けるわけだから……」

土屋「まさか外国に行くなんてあり得ないでしょうし……」

喪黒「だといいのですがねぇ……。とにかく約束はきちんと守ってください。いいですね!?」

土屋「わ、分かりました……。喪黒さん……」


テロップ「3カ月後、夏――」

土屋ファーム。昼。畑で、ブラジル人たちとレタスの収穫をする土屋。

夕方。小屋の中で、土屋は椅子に座り、手紙を読んでいる。

手紙「拝啓、土屋耕作さん。私はパウロ浅川です」

土屋「浅川さんは、ずいぶん日本語がうまくて達筆なんだな……」

土屋「しかも、こんなに心のこもった文章を書いてくれるなんて……」

浅川の書いた手紙を読みながら、目に涙を浮かべる土屋。

浅川の手紙「今までのお礼に、あなたをブラジルへ招待しようと思っています」

14 : 以下、?... - 2018/08/17 18:49:23.767 6oP9wbwqD 14/17

次の瞬間、土屋の頭の中に喪黒の忠告が思い浮かぶ。

(喪黒「土屋さんは、ブラジルに行ってパウロ浅川さんと会わないようにして欲しいのです」)

土屋(まあ……。喪黒さんがあの時、何でこんなことを言い出したのかは、よく分からないが……)


テロップ「秋。東京都、羽田空港――」

ショルダーバッグを担ぎ、スーツケースを運ぶ土屋。彼は、空港の中を歩いている。

土屋はトイレの中に入る。広い室内には誰もいない。彼が用を足し、手を洗って外に出ようとしたその時――。

トイレの中に喪黒が入る。

喪黒「土屋耕作さん……。あなた約束を破りましたね」

土屋「も、喪黒さん……!!」

喪黒「私は忠告しました。ブラジルに行ってパウロ浅川さんと会わないようにすべきだ……と」

喪黒「それなのにあなたは、私との約束を破り……。今からブラジルへ行こうとしていますね」

土屋「だ、だって……!浅川さんがわざわざ私に手紙をよこして、招待してくれたんですよ」

土屋「私は浅川さんには恩がありますし……、浅川さんも私に恩があります……」

土屋「彼の頼みをむげに断るなんて、申し訳ないじゃないですか!!」

喪黒「どうしても、ブラジルへ行って浅川さんとお会いになるのですね」

15 : 以下、?... - 2018/08/17 18:51:27.009 6oP9wbwqD 15/17

土屋「もちろんですよ!!」

喪黒「分かりました……。そこまで言うのなら、私はあなたを止めません」

喪黒「ですが……、どのようなことになっても私は知りませんよ!!」

喪黒は土屋に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」

土屋「ギャアアアアアアアアア!!!」


テロップ「ブラジル連邦共和国、サンパウロ市――」

現地の空港で、浅川が土屋を出迎える。 

浅川「お待ちしていました。土屋さん」

運転手つきの黒塗りの車に乗る土屋と浅川。2人は現地の高級レストランに入る。

レストランで、レタス料理を食べる土屋と浅川。

浅川「この店では、土屋さんが作ったレタスを食材にしています」

食事を終え、レストランを出る土屋と浅川。2人は車でさらに別の目的地へ向かう。

浅川「土屋さんには、特別に見ていただきたいものがあるんですよ」

17 : 以下、?... - 2018/08/17 18:54:33.222 6oP9wbwqD 16/17

ある大型の工場。案内役の人間に先導され、浅川と土屋は建物の廊下の中にいる。

窓ガラスから見える室内。部屋の中では、白衣を着た研究員が何かの薬品を作っているように見える。

浅川「土屋さんのレタスを原料に、ある特別なものを作っているんですよ……」

土屋「こりゃあ、すごい……」

浅川は右手の指を「パチンッ」と鳴らす。次の瞬間、土屋は両脇を屈強な男たちに掴まれる。

運転手つきの車が道路を走る。社内の後部座席には、黒服を着た屈強な男に土屋が挟まれている。助手席には浅川がいる。


サンパウロ市街地、高層ビル。エレベーターに乗る土屋、浅川、屈強な男たち。

神妙そうな表情になる土屋と、傲慢で偉そうな表情になる浅川。エレベーターはビルの上の階につく。

土屋たちが入った部屋は執務室のようだ。高級そうな机に向かって、ある男が椅子に腰かけている。

太った身体でひげを生やしたこの男は、一般人にはあり得ない独特な威厳を醸し出している。

浅川「彼は、私の組織の大幹部です。私は彼の部下ですが、一応、組織の下っ端の幹部の一人ですよ」

土屋「『組織』!?一体どういうことなんですか!?」

浅川「実はですね……、私たちはサンパウロに本拠地を持つマフィアなのですよ」

浅川「当然、私が経営する複数のレストランも……。マフィアのシノギでやっているんです」

18 : 以下、?... - 2018/08/17 18:58:10.533 6oP9wbwqD 17/17

土屋「じゃあ、さっきの工場は……」

浅川「新型麻薬を作るための施設ですよ。新型麻薬を作る材料に最も適していたのが、土屋ファームのレタスなんです」

浅川「土屋さんのレタスは質が高いですから、新型麻薬の中では純度の高い製品を作ることができるんですよ……」

土屋「そ、そんな秘密があったのか……」

浅川「土屋さんはいろいろ知ってしまいました……。だからもう、我々の組織のために働き続けるしかありません」

浅川「断った場合、当然、死が待っていますよ。あなたの農場で働いているブラジル人のパートの正体も実は……」

浅川「我々の組織の構成員なんですよ……。土屋さんを監視するためのね……」

土屋「おおっ……!!何ということだ……!!」

浅川「土屋さんの農場は、今後、我々の組織の監視下に置かれます。ですが、このまま従順に働き続けたならば……」

浅川「あなたは一生涯、裕福な暮らしを送ることができますよ。さあ、我々の申し出を受け入れてください……」

浅川に返答を迫られ、汗だくで蒼白な顔つきになる土屋。土屋は恐怖心のあまり、身体を震わせている。


羽田空港の前にいる喪黒。

喪黒「人類は古くから農業とともにありましたし、農業が存在しなかったなら、人間は生きていくことができません」

喪黒「だから……。農業は人間にとって、最も身近な仕事の一つであるとも、ある意味言えるかもしれません」

喪黒「今後……、科学技術や文明が進歩しても農業は残り続けるでしょうし、何かの形で人の役に立つでしょう」

喪黒「土屋さんが作るレタスも、結果的に、誰かのために役に立つことができて良かったですねぇ……」

喪黒「もっとも……。今後、彼は死ぬまで心が休まることはないでしょうけど……」

喪黒「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―

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