1 : 以下、\... - 2017/03/27 21:14:57.984 UrvE9e4k0 1/36

―海岸―

浦島太郎「位置について!」

「……」サッ

アキレス「……」サッ

浦島太郎「よーい、ドン!」

「はああっ!」ダダダッ

アキレス「うおおおおおっ!」ダダダッ

アキレス(くっ……速い!)

元スレ
アキレス「なぜだ……なぜ私は亀に追いつけんのだッ!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1490616897/

4 : 以下、\... - 2017/03/27 21:18:03.428 UrvE9e4k0 2/36

「だああああっ!」タタタタタッ

アキレス「ダメだっ……追いつけない……!」タタタタタッ


浦島太郎「ゴォール!」

浦島太郎「一着、亀! 二着、アキレス!」


アキレス「く、くそっ……」ハァハァ…

「……」

5 : 以下、\... - 2017/03/27 21:20:42.935 UrvE9e4k0 3/36

乙姫「亀、相変わらず見事な走りじゃったぞ」パチパチパチ…

「乙姫様、来てらっしゃったのですか」

乙姫「うむ、近頃は地上と交流することも多くなってのう」

乙姫「せがむので、水槽に入れてタイとヒラメも連れてきとるぞ」

タイ「さすが亀さんタイ!」

ヒラメ「ヒヒヒ、いい走りっぷりでしたよ」

浦島太郎「その節は、若返らせてもらってありがとうございます」

乙姫「あれだけ開けるな、といったのに何をやっとるのじゃ、おぬしは」

浦島太郎「人間は開けるなといわれると開けたくなり、押すなといわれると押したくなる生き物なので」

乙姫「人間とは分からぬ……」

乙姫「アキレスとやらも、人間にしては速いのう。素晴らしかったぞ」

アキレス「……どうも」

9 : 以下、\... - 2017/03/27 21:23:22.951 UrvE9e4k0 4/36

アキレス「……くそっ! あれだけトレーニングしているのに!」

アキレス「なぜだ……なぜ私は亀に追いつけんのだッ!」

「……アキレスよ」

アキレス「!」

「お前は一体、なんのために走っているのだ?」

アキレス「知れたことよ! 自分のためだ!」

アキレス「私が世界一速いということを、全世界に知らしめるためだ!」

「……」

12 : 以下、\... - 2017/03/27 21:26:06.107 UrvE9e4k0 5/36

「それじゃあ、我には勝てないな」

アキレス「な、なんだと!?」

アキレス「じゃあどうすればいいというんだ!」

「自分のため以外に走る、ということを知ることだ」

アキレス(自分のため以外に……!?)

アキレス(下らん! しょせん徒競走というのは脚力を競う行為!)

アキレス(自分のため以外に走ったって、足かせになるだけ! 速くなるわけがない!)

14 : 以下、\... - 2017/03/27 21:29:54.458 UrvE9e4k0 6/36

かぐや姫「オーッホッホッホッホ! なかなかいい海岸じゃない」

ウサギ「ええ、こりゃあいい穴場ですぜ!」



「……ん、彼らは?」

浦島太郎「月からやって来てる『ムーン・コーポレーション』とかいう企業の奴らさ」

浦島太郎「帝の寵愛を得たのをいいことに、えらく荒稼ぎしてるらしい」

乙姫「いけ好かん奴らじゃのう……」

15 : 以下、\... - 2017/03/27 21:33:41.137 UrvE9e4k0 7/36

かぐや姫「そこの亀さん。ここの責任者はだぁれ?」

「……我だが」

かぐや姫「あらそう。じゃ、さっそくだけど、ここの海岸はウチに売却してもらうわ」

「――なんだと?」

「購入して、どうするつもりだ?」

かぐや姫「決まってるでしょ。大型リゾート地を建設するのよ!」

かぐや姫「海岸は全部コンクリートで埋め立てて、ホテルを一杯建てて、人工島を造って……」

かぐや姫「こんな素晴らしい場所を、自然のままにしてちゃ勿体ないもの」

「……あまりいい使い道とはいえないな」

浦島太郎「ふざけるな! ここはみんなの遊び場だ! 自然のままにしとくべきだ!」

乙姫「そうじゃそうじゃ! なんの権利があってそんなことを!」

17 : 以下、\... - 2017/03/27 21:37:09.382 UrvE9e4k0 8/36

かぐや姫「すでに帝から許可はもらってるのよ。これが許可証ね」

「ぐ……!」

乙姫「なんじゃと……?」



ザワザワ……

タイ「とんでもないことになっタイ!」

ヒラメ「ヒ~ヒヒ、こりゃ困った。リゾート地なんかになったらボクらも遊べなくなっちゃう」

浦島太郎「子供たちだって、ここで遊べなくなってしまう!」

18 : 以下、\... - 2017/03/27 21:40:21.731 UrvE9e4k0 9/36

かぐや姫「だけど、私も鬼じゃない。チャンスをあげるわ」

かぐや姫「実は私の隣にいるウサギ、メチャクチャ足が速いの」

かぐや姫「もし、ウサギにかけっこで勝てたら……この話は白紙にしてあげてもいいわ」

ウサギ「ここで一番速いのはオメーなんだろ? 勝負しようぜ」ピョンピョン

「……」

(このウサギ……かなり速いな。おそらくは我と互角……)

「よかろう」

ウサギ「決まったな。勝負は一週間後だ」

かぐや姫「もしかけっこで負けたら、いさぎよくここを売り渡すのよ! 分かったわね!」

「約束は守る」

20 : 以下、\... - 2017/03/27 21:44:28.566 UrvE9e4k0 10/36

ワイワイ…… ガヤガヤ……

浦島太郎「亀……大丈夫か?」

「案ずるな。必ず勝つ」

乙姫「フフフ、かぐや姫とやらもバカなマネをしたものじゃ。亀にかけっこを挑むとは!」

浦島太郎「きっとウサギをスプリンターとして宣伝したいっていう狙いもあるんでしょうね」

タイ「だけど、亀さんがかけっこで負けるなんてありえんタイ!」

ヒラメ「ヒヒヒ、亀さんは世界最速だもんねえ」



「アキレス、特訓に付き合ってくれるか」

アキレス「……ああ」

22 : 以下、\... - 2017/03/27 21:47:46.195 UrvE9e4k0 11/36

アキレス「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」

アキレス「……くそっ! やはり追いつけない! 勝てない……!」

アキレス「なぜだ! なぜなんだぁ……!」

「……アキレスよ」

「もし壁を越えたくば……メロス殿に会いに行くといい」

アキレス「メロス……?」

「メロス殿は元々ある村で暮らしていたが、妹さんが結婚したのを機に村を出て」

「今はこの近くで一人暮らしをしているらしい」

「これが地図だ」

アキレス(私はすでに限界までトレーニングをしているのだ!)

アキレス(今さら誰かに会っただけで、どうにかなるわけない……)

アキレス(なるわけないが……騙されたと思って訪ねてみるか)

25 : 以下、\... - 2017/03/27 21:52:14.348 UrvE9e4k0 12/36

―メロスの家―

アキレス「……あなたがメロスか」

メロス「うむ」

アキレス「私は世界一速い男を目指しているのだが、どうしても亀に勝てない」

アキレス「すると亀から、壁を越えたいのならあなたに会え、と忠告された」

アキレス「あなたは一体何をしたというのだ?」

メロス「……少し長い話になるが、聞いてもらえるかな」

26 : 以下、\... - 2017/03/27 21:55:44.322 UrvE9e4k0 13/36

メロス「――というわけだ」

メロス「以来、ディオニス王は名君となり、妹と友もそれぞれ元気にやっている」

メロス「それから私は見聞を広めるため旅に出て、今はここで暮らしている」

アキレス「……!」

アキレス(バカな……妹のために、友のために、走り続けただと!?)

アキレス(私だったら友のことなど見捨てている)

アキレス(このメロスを信じていたセリヌンティウスとやらも阿呆だ!)

アキレス(必ず戻ってくるから人質になってくれ、などといわれて信じる奴があるか!)

アキレス(まったくもって理解できんッ!)

27 : 以下、\... - 2017/03/27 21:58:23.097 UrvE9e4k0 14/36

メロス「私は友のため、と思うことで人ならぬ速度で走ることができたのだ」

アキレス「……ふん、信じられんな」

アキレス「走る速さというのは、いかに足を鍛えるか、足を動かすか、にかかっている!」

アキレス「誰かのために、と思っただけで速く走れるようになるなら苦労せんわ!」

アキレス「私はこれからもずっと、自分のためだけに走り続けてやる!」

メロス「私は激怒した」

バキィッ!

アキレス「ぶげっ!」

28 : 以下、\... - 2017/03/27 22:02:26.977 UrvE9e4k0 15/36

アキレス「な、なにをするか!」

メロス「実は君が来ることは、前もって亀から知らされていた。見どころのある男だと」

メロス「だが、亀の目は曇っていたようだ」

メロス「断言しよう。君では一生亀には勝てん」

アキレス「くっ……!」

アキレス「結局あんたも説教するだけか。とんだ時間の無駄だったよ」

アキレス「帰らせてもらう!」

バタンッ!

メロス「……」

30 : 以下、\... - 2017/03/27 22:05:32.048 UrvE9e4k0 16/36

―海岸―

アキレス(案の定、なにも得られるものはなかったな……)

アキレス(いや、それどころかパンチをもらってしまった。思い切り殴りやがって……)ジンジン

アキレス「……ん?」


ザワザワ…… ドヨドヨ……


アキレス(みんな集まって……どうしたっていうんだ?)

31 : 以下、\... - 2017/03/27 22:10:21.490 UrvE9e4k0 17/36

「ぐううっ……!」

浦島太郎「大丈夫か!?」

乙姫「動いてはならぬ! じっとしているのじゃ!」

アキレス「何があったんだ!?」

浦島太郎「実は亀が、トレーニング中に足をくじいちゃって……!」

アキレス(足を……!)

浦島太郎「こりゃウサギとのかけっこは諦めた方がいい!」

「いや……我は走る! 走らせてくれ!」

乙姫「骨が折れてるかもしれぬのじゃぞ!」

「これぐらいどうってことはないッ!」



アキレス(足をケガしたというのに、なんて気迫だ……!)

アキレス(これが亀やメロスにはあって、私にはないものだというのか……?)

ドクンッ…

32 : 以下、\... - 2017/03/27 22:13:23.886 UrvE9e4k0 18/36

アキレス(足をくじいた亀が、かけっこでウサギに勝てるとは思えない)

アキレス(それどころか、あの状態の亀をかけっこに出場させてしまったら……)

アキレス(亀は再起不能になるかもしれない)

アキレス(海岸も『ムーン・コーポレーション』の連中に奪われてしまう)

アキレス(ならば――)

アキレス「亀よ」

「ん……?」

アキレス「お前の代わりに、私を走らせてくれないか」

「!」

34 : 以下、\... - 2017/03/27 22:18:15.588 UrvE9e4k0 19/36

「いいのか……?」

アキレス「いいのか、はこちらのセリフだ」

アキレス「みんな、私がこの海岸の運命を背負っていいのか?」


乙姫「……もちろんじゃ!」

浦島太郎「もし負けたとしても、恨みはしないよ!」

タイ「かまわんタイ!」

ヒラメ「ヒヒヒ、ケガしてる亀さん走らすわけにはいかないしね」


アキレス「みんな……!」

アキレス(あのウサギはおそらく亀と同じぐらい速い……勝算の薄いかけっこだ)

アキレス(なのになぜだ……なぜこうも心が燃えたぎってるのだろう)

アキレス(これがメロスのいっていた、他人のために走る、ということなのか)

アキレス(負けられないッ!)

35 : 以下、\... - 2017/03/27 22:22:31.828 UrvE9e4k0 20/36

かけっこ当日――

―海岸―

かぐや姫「オーッホッホッホ! とうとう待ちに待ったこの日が来たわ!」

かぐや姫「ウサギ、あの亀にあなたのスピードを思い知らせてやりなさい! いいわね!」

ウサギ「はいっ!」

「……そのことなのだが」

「実は我は、このとおり足を骨折してしまい、代走を頼むことになった」

ウサギ「代走ゥ?」

「代走を務めるのは……彼だ」

アキレス「アキレスと申す。よろしく頼む」

ウサギ「……へえ」

36 : 以下、\... - 2017/03/27 22:26:11.700 UrvE9e4k0 21/36

ウサギ「プッ……ハッハッハッハッハ!」

ウサギ「こいつ如きがオレの相手をするってか! こりゃおもしれぇ!」

ウサギ「――って、ナメてんじゃねえぞ!!!」

ウサギ「一週間かけて、そっちのデータは調べたが……」

ウサギ「亀に及ばねえてめえが、オレに勝てるわけねーだろ!」

ウサギ「アキレス如きに勝ったって、なんの自慢にもならねーよ! 呆れちまうぜ!」

「ナメているのはそちらだ。今のアキレスは……一味違う」

ウサギ「……ッ!」

ウサギ「いいだろう……ぶっちぎりで勝利して、この海岸はオレと姫様がいただくッ!」

アキレス「渡すものか!」

アキレス(海岸や竜宮城のみんなには今まで世話になってきた……無様なかけっこは出来ない!)

38 : 以下、\... - 2017/03/27 22:30:20.118 UrvE9e4k0 22/36

かぐや姫「コースを説明するわ」

かぐや姫「この海岸をスタートして、森を抜けて、あの山の頂上がゴールよ」

かぐや姫「なお、スタート後、ギャラリーの皆さんはみんなゴール地点へ送らせてもらうわ」

かぐや姫「みんなにウサギ勝利の瞬間を見てもらうためにね!」

ウサギ「へっへっへ、さすが姫様……準備がいい」

かぐや姫「それじゃ両者、位置について!」



ウサギ「……」サッ

アキレス「……」サッ

39 : 以下、\... - 2017/03/27 22:33:32.132 UrvE9e4k0 23/36

かぐや姫「よーい……ドン!!!」


ウサギ「オラァァァァァ!!!」ドヒュンッ!

アキレス「うおおおっ!」ドヒュンッ!

ズドドドドドドドドド…



浦島太郎「どっちも速っ!」

乙姫「スタートは互角じゃ!」

(行けっ、アキレス……! お前のポテンシャルは決して我に劣らない!)

40 : 以下、\... - 2017/03/27 22:36:25.051 UrvE9e4k0 24/36

ウサギ「なにぃぃぃぃぃ!?」タタタタタッ

アキレス「ぬうううう!」タタタタタッ

ウサギ(バカな……こいつ、オレと五分だと!?)

ウサギ(これまでのデータじゃ、オレの敵じゃなかったはずなのに!)

ウサギ(たった一週間で一体なにがあった!?)

アキレス(みんなのために……走るッ!)

ドドドドドドドドドドド…

41 : 以下、\... - 2017/03/27 22:39:20.543 UrvE9e4k0 25/36

―森―

ドドドドドドドドドドド…

アキレス「くっ……!」

ウサギ「……」ニヤ…

ウサギ(だんだん差が開いてきた!)

ウサギ(やはり地力ではオレのが上だ! このまま引き離してやる!)

アキレス「うおおおお……!」

42 : 以下、\... - 2017/03/27 22:43:25.663 UrvE9e4k0 26/36

アキレス(亀、乙姫、浦島、タイ、ヒラメ……)

アキレス(私は勝つ!)


「ゆけい、アキレスッ! 仲間のために!」


アキレス(今の声ッ!?)

アキレス(……ありがとう、力をもらった!)

ウサギ「クソがっ……引き離せねえ……!」

ドドドドドドドドドドド…



メロス「いい顔になったな……アキレス」

44 : 以下、\... - 2017/03/27 22:46:36.971 UrvE9e4k0 27/36

―山―

タイ「そろそろ二人が見えてくる頃タイ……」

ヒラメ「海岸を出るところまでは全くの横並びだったけど……」

浦島太郎「おっ、二人が見えてきたぞ!」

乙姫「トップはどっちじゃ!?」

「……アキレスだ」

かぐや姫「なんですってええええええええ!!?」

45 : 以下、\... - 2017/03/27 22:50:26.727 UrvE9e4k0 28/36

ドドドドドドドドドドド…

アキレス(息が苦しい……!)

アキレス(だがいける! ペースを落としたり、転んだりしない限り、私が勝てる!)


ウサギ(くそっ……!)

ウサギ(このままじゃ負けちまう! 姫様の開発プロジェクトが台無しになっちまう!)

ウサギ(こうなったら……秘密兵器を使うしかねえ!)

46 : 以下、\... - 2017/03/27 22:55:03.198 UrvE9e4k0 29/36

ウサギ(足に仕込んだ火薬……こいつを炸裂させれば)

ウサギ(驚異的なロケットダッシュをすることができ、アキレスを抜き去れる!)

ウサギ(本来使いたくなかった仕込みだが……姫様のためだ! 手段を選んでいられねえ!)

ウサギ「いくぜ!」シュボッ…

パァンッ!!!

ウサギ「うおおおおおおおおおおお!」ドヒュゥゥゥゥンッ

ギュオオオオオオオオオオッ!



アキレス「な、なんだと!?(まずい、抜かれてしまう!)」

47 : 以下、\... - 2017/03/27 22:58:25.598 UrvE9e4k0 30/36

ギュオオオオオオオオオオッ!


ウサギ「!!?」


ウサギ(進行方向に切り株が!?)

ウサギ(やべえ! このスピードであれにぶつかったら死ぬ!!!)

ウサギ(避けらんねえ……!)

49 : 以下、\... - 2017/03/27 23:02:49.869 UrvE9e4k0 31/36

アキレス(ウサギが切り株にぶつかる!?)

アキレス(やった! もしぶつかれば、ウサギは間違いなくリタイア……私の勝ちは確定する!)

アキレス(だけど……)

アキレス(だけど……ッ!)

アキレス(本当にそれでいいのか? ウサギを見捨てていいのか?)

アキレス(亀、メロス……もしお前たちだったら、こうするはずだよなァ!)


ウサギ(姫様……すんません……)ギュオオオオオッ



ドゴォンッ!!!

50 : 以下、\... - 2017/03/27 23:05:43.960 UrvE9e4k0 32/36

ウサギ「う……?」

アキレス「ぐっ……」ブチッ

ウサギ「お前……自分のふくらはぎをクッションにすることで、オレを守ったのか……!」

アキレス「……」

ウサギ「へ、へへ……バカなヤツだ」

ウサギ「オレはほぼ無傷だが、お前は右足のアキレス腱をやっちまったらしいな」

ウサギ「これでオレの勝利は確定したわけだァァァ!!!」

アキレス(みんな……すまん……)

51 : 以下、\... - 2017/03/27 23:09:20.700 UrvE9e4k0 33/36

ウサギ「あーあ……つまんねえ」

ウサギ「勝つって確信したとたん、油断して眠くなってきちまった」

ウサギ「昼寝でもすっかなぁ~」ゴロン…

アキレス「ウサギ……!?」

ウサギ「……行けよ」

アキレス「……ありがとう」ヒョコッヒョコッ



ウサギ(……ふん、イカサマして、命助けられて、挙げ句勝ちまでもらうほど、落ちちゃいねえや)

54 : 以下、\... - 2017/03/27 23:13:24.187 UrvE9e4k0 34/36

ワァァァ…… ワァァァ……


アキレス「あと……少し……!」ヒョコヒョコッ



「アキレス!」

乙姫「ようやった! ようやったぞ!」

浦島太郎「今、アキレスが一着でゴールだぁぁぁ!」

かぐや姫「……ふふっ」


ワアァァァァァ……!

55 : 以下、\... - 2017/03/27 23:16:23.790 UrvE9e4k0 35/36

ウサギ「……」

かぐや姫「……」

ウサギ「姫様……すんません」

かぐや姫「なにを謝るの? あなたが無事でなによりだわ」

かぐや姫「それに勝利よりも貴い敗北ってものを見せてもらったわ」

ウサギ「姫様……!」

かぐや姫「一から出直しね、私たち」

ウサギ「はいっ!」

56 : 以下、\... - 2017/03/27 23:20:32.317 UrvE9e4k0 36/36

乙姫「アキレス、見事な走りっぷりじゃった! わらわは感動したぞ!」

浦島太郎「こんなすごいかけっこを見られるなんて思わなかったよ!」

タイ「竜宮城の医者なら、切れたアキレス腱をくっつけられるタイ!」

ヒラメ「ヒヒヒ、かっこよかったよ~」

アキレス「ありがとう、みんな」

アキレス「みんなのために走れて……私もとても幸せだよ!」


(アキレス……お前はついに我に追いつき――)

(いや……追い越してくれたのかもしれないな)ニコッ





―おわり―

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