1 : 以下、?... - 2018/08/31 23:32:29.863 TEehud3ZD 1/17

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    高杉哲人(22) 大学4年生

    【就職活動】

    ホーッホッホッホ……。」

元スレ
喪黒福造「この紹介状さえあれば、あなたの就活は何とかなりますよ」 大学4年生「そ、そんなことが現実に……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1535725949/

2 : 以下、?... - 2018/08/31 23:34:21.946 aLMlHh50D 2/17

昼。東京、ビジネス街。とある企業の本社。リクルートスーツを着た男子大学生がパイプ椅子に座っている。

テロップ「高杉哲人(22) 房総大学4年」

緊張した様子の高杉。それに対し、数人の中年男性社員たちが、彼に威圧的な態度で何かを言っている。

どうやら、この会社の就職面接のようだ。圧迫面接を受けて、蛇に睨まれた蛙のようになる高杉。


ビジネス街。会社を出た高杉が道を歩いている。落ち込んだ表情の高杉。

高杉(この会社も不採用……。今回の面接もダメだった……)

横断歩道に立つ高杉。彼は考えことをしていて、赤信号に気付かない。そのまま横断歩道を渡る高杉。

高杉(僕は来年に大学卒業を控えているのに、まだ就職が決まらない。僕の人生はお先真っ暗……)

高杉の目の前に大型トラックが近づく。慌てて横断歩道を渡る高杉。

高杉(何てこった……。僕はあと一歩でトラックにひかれるところだった……)

歩道を歩き続ける高杉。

高杉(もしも、このまま就職が決まらない状態が続くのならば……)

高杉(さっき、トラックにひかれて死んでいた方がむしろ良かったのかもしれない……)

3 : 以下、?... - 2018/08/31 23:36:09.223 aLMlHh50D 3/17

とある公園。ベンチに座り、一休みする高杉。彼の顔は浮かないままだ。

高杉は、公園にいる一般人たちを見つめる。母と一緒に公園を歩く幼児の姿が目に入る。笑顔の幼児。

高杉(この子は悩みなんて全くないだろうな……。子供のころの僕もそうだった……)

高杉(でも……。この子もやがて大きくなればなるほど、間違いなく悩みを抱えるようになるはずだろうな……)

ベンチに座ったまま、眠り込む高杉。


公園の中にいる喪黒福造。喪黒は、遠くの方のベンチに高杉が一人で居眠りしているのを見つける。

高杉の方へ近づき、彼の隣に座る喪黒。

喪黒「もしもし、もしもし……」

高杉の肩を叩く喪黒。喪黒の気配に気づき、高杉はゆっくりと目覚める。

高杉「おっ……」

喪黒「気がつきましたか……!?」

高杉「あなた、いつの間にこんなところに座っていたんですか……」

喪黒「おや……。あなた、リクルートスーツを着ていますね。もしかして、就活中の大学生ですか?」

4 : 以下、?... - 2018/08/31 23:38:17.009 aLMlHh50D 4/17

高杉「はい……。でも、僕は今のところ、まだ一社も就職が決まっていなくて……」

高杉「さっき、面接を受けた会社でも不採用を言い渡されたんですよ……」

喪黒「そうですか……。それはお気の毒に……。とりあえず、これでも食べて元気を出してくださいよ」

喪黒は鞄から、膨らんだ紙袋を取り出す。袋の中には、アンパンがいくつも入っている。

喪黒「さっき、駅のパン屋で買ってきたんですよ」

高杉「ど、どうも……。じゃあ、お言葉に甘えて……」

ベンチに座りながら、アンパンを食べる喪黒と高杉。

喪黒「ほう……。高杉さんは房総大学の学生さんですか。有名な国立大学に通っていて、なかなか賢いですねぇ」

高杉「でも、大学には僕より頭がよくて優秀な人がたくさんいますし……。僕は周りに埋もれて全然目立たない存在ですよ」

喪黒「もう少し、自信を持ってくださいよ。そんなあなたにも、認めてくれる友達が一人くらいは……」

高杉「それが、全くいないんですよ……。中学や高校でも友達がいませんでしたし……」

高杉「友達を作るべく、大学ではサークルにも入ったんですけど……。結局、友達は一人もできませんでした」

喪黒「それじゃあ、寂しいでしょう」

5 : 以下、?... - 2018/08/31 23:40:18.241 aLMlHh50D 5/17

高杉「孤独にはもう慣れましたよ。でも、人付き合いをろくにしてこなかった影響で……」

高杉「コミュニケーション力が欠如してしまって……。それが就活に響いていますね……」

喪黒「あなたの人生はこれからです。高杉さんはまだ若いから、やり直しがききます」

高杉「……だといいんですけどね」

喪黒「あなたのような若い世代の人たちが、これからの日本を支えていくのですよ」

喪黒「そんな高杉さんのお力に、少しでもなれたらいいのですが……」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

高杉「ココロのスキマ、お埋めします!?」

喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」

高杉「は、はあ……。そうですか……」

喪黒「見たところ……。今の高杉さんにも、心のスキマがおありなようですねぇ……」

高杉「ええ、もちろんですよ……」

喪黒「私に着いて来てください、高杉さん」

7 : 以下、?... - 2018/08/31 23:42:53.606 aLMlHh50D 6/17

ビジネス街を歩く喪黒と高杉。

高杉「どこへ行くんですか!?」

喪黒「いいところですよ。今のあなたの望みをかなえるために……ね」

駅。タクシー乗り場。

喪黒「さあ、高杉さん。私と一緒にこの車に乗ってください。タクシー代は私が負担します」

タクシーに乗る喪黒と高杉。タクシーはビル街の中を走る。

喪黒「運転手さん、天翔電器の本社まで」

運転手「はい」

高杉「一体、どういうことなんですか!?」

喪黒「これから、あなたは天翔電器の本社へ行きます。そこで面接を受けるのです」

高杉「え!?でも、僕は天翔電器に何も連絡をしていませんよ」

喪黒「大丈夫です。これがあれば、何とかなりますよ」

喪黒は鞄から、大型の茶封筒を取り出し高杉に渡す。

8 : 以下、?... - 2018/08/31 23:45:09.343 aLMlHh50D 7/17

高杉「これは……」

喪黒「私による高杉さんの紹介状ですよ。実は私、天翔電器の経営陣とコネがあるんですよ」

高杉「えーーーっ!?」

喪黒「私からの紹介と知れば、天翔電器は二つ返事であなたを採用するでしょう」

喪黒「つまりです……。この紹介状さえあれば、あなたの就活は何とかなりますよ」

高杉「そ、そんなことが現実に……」

タクシーが天翔電器の本社ビル前に停車する。タクシーを出る高杉。

喪黒「高杉さん。あなたの面接がうまくいくことを信じていますよ」

高杉「ありがとうございます、喪黒さん」

喪黒「あと、これも……。こうやってあなたと知り合った縁ですから……。私はこの店にいつもいますよ」

喪黒が高杉に渡したメモには、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。

タクシーが去っていく。天翔電器の本社の中に入る高杉。

高杉「もう……。こうなったら、乗り掛かった船だ。やるしかない!」

9 : 以下、?... - 2018/08/31 23:47:21.987 aLMlHh50D 8/17

数日後。BAR「魔の巣」に入店する高杉。店の席には、高杉を待つ喪黒が座っている。

喪黒「お待ちしていましたよ。高杉さん」

高杉が喪黒の隣の席に腰掛ける。

喪黒「高杉さん、この間の面接はうまくいきましたか!?」

高杉「はい。この僕も、晴れて天翔電器への採用が決まりました。喪黒さんによる紹介状のおかげです」

喪黒「よかったですなぁ、高杉さん」

高杉「でも、来年からは会社員として、本格的な社会人の人生が待っているから……。内心では緊張しているんですよ」

喪黒「大丈夫です。高杉さんならきっとうまくいきます。何しろ、あなたは芯のしっかりした人ですから……」

高杉「は、はあ……」

喪黒「大人として人生を送ることによって、人間は世の中の仕組みについていろいろ理解を深めていくのですよ」

喪黒「高杉さんも、ここの世界がどういう形で成り立っているかをいずれ知ることになるでしょうから……」

高杉「そ、そうですか……」

喪黒「とりあえず……。来年の10月8日午後20時13分、西多摩駅の東口で会いましょう」

喪黒「その時に、ゆっくり話し合えればいいのですがねぇ」

高杉「はい……」

11 : 以下、?... - 2018/08/31 23:49:40.928 aLMlHh50D 9/17

喪黒「いいですね、約束ですよ!?」

高杉「わ、分かりました……。喪黒さん」


BAR「魔の巣」を出て、道を歩く高杉。彼が街の中を歩いていると……。

横断歩道を歩く就活中の女子大生。彼女はリクルートスーツを着ている。

女子大生に自動車が迫りくる光景を目にする高杉。

高杉「危ない!!」

道路へ飛び出し、身を呈して女子大生が自動車にひかれるのを阻止する高杉。自動車が急ブレーキをかけて停車する。

歩道にいる通行人たちが高杉と女子大生を見つめる。自動車から、慌てて降りる運転手。


病院。待合室のソファーに座る高杉と女子大生。

テロップ「幸田凛子(22) 房総大学4年」

高杉「精密検査の結果……。君の身体には、どこにも異常がなかったそうです。本当によかったですよ」

凛子「あの……。さっきは本当にありがとうございます」

高杉「いやぁ……」

12 : 以下、?... - 2018/08/31 23:51:55.382 aLMlHh50D 10/17

ある喫茶店。席に座りながら、コーヒーを飲む高杉と凛子。

凛子「へえ……。高杉さんって私と同級生なんだ。しかも、同じ房総大学……」

高杉「ああ……、君と僕は学年だけでなく大学も同じ。偶然の一致だよな」

店内にあるテレビが国会中継を流している。総理大臣が答弁をしているようだ。


2週間後。千葉市、房総大学。大学の学生食堂で、食事をする高杉と凛子。

凛子「実は、私も天翔電器に採用されたよ」

高杉「本当か……。それはよかったな」


ある日、映画館。映画を観賞する竹中と凛子。物語が終わり、主題歌が流れ出す。

高杉(ん……?この歌手は……)


冬。ある日の夜。袖ヶ浦市、東京ドイツ村。施設内のイルミネーションを眺めながら、手をつなぐ高杉と凛子。

翌年、3月。房総大学で卒業式が行われる。講堂で学長の話を聞く高杉ら卒業生。

14 : 以下、?... - 2018/08/31 23:54:34.526 aLMlHh50D 11/17

4月。天翔電器、本社。入社式に参加する高杉ら新入社員。社長が新入社員たちに挨拶している。

夕方。新入社員の高杉・凛子・もう一人の男性が、居酒屋で乾杯している。

一同「カンパーーイ!!」

テロップ「池井戸遼(22) 天翔電器新入社員・房総大学卒」

高杉「驚いたなぁ。君も、僕と同じく房総大学出身か」

池井戸「じゃあ、ちょうどいいところだ。ここにいる3人、同じ母校のよしみということで……」

池井戸「これから何かと連絡したり、協力したりしよう!俺たちはそういう関係だ!」

店内にあるテレビがバラエティ番組を流している。何かを話す司会者。


5月。天翔電器、本社。社員食堂で食事をする高杉。

テレビ「今年のカンヌ映画祭で……。主演女優賞に選ばれたのは……」

顔立ちの整った年配の日本人女優が、レッドカーペットの上で微笑んでいる。彼女は着物を着ている。

テレビを見つめる高杉。

16 : 以下、?... - 2018/08/31 23:57:08.329 aLMlHh50D 12/17

6月。雨の中、駅の前で募金活動を行うボランティア団体。ある若い女性が持つ箱の中に、高杉は募金をする。

7月。大型書店。ベストセラーになっている大物作家の小説を手にする高杉。新幹線の中で、高杉はその本を読む。

8月。日本料理店で、高杉は叔父と食事をしている。ういろうの入った箱を渡す叔父。

叔父「哲ちゃん、これはお土産だよ」

高杉「ありがとうございます」


9月。ビジネス街の中を歩く高杉。彼は、リクルートスーツを着た大学生を何人か見つめる。

高杉(1年前、僕も彼らのように就活で苦しんでいた……。でも、ある人物と出会ったのがきっかけで……)

高杉(天翔電器に就職できた……。今の仕事にはやりがいを感じているし、僕は本当に幸せだ……)

横断歩道。青信号となり、高杉は歩道を渡る。

高杉(就職面接で不採用となったあの日、もしも僕がトラックにひかれて死んでいれば……)

高杉(今の人生は間違いなく、なかった……。この横断歩道だ……。あの日……。トラック……)

高杉は何かに気づいたようだ。

高杉(そういうことか……!!じゃあ、今の僕は……!!)

19 : 以下、?... - 2018/08/31 23:59:18.129 aLMlHh50D 13/17

10月1日。ある喫茶店。席には、高杉と凛子がいる。

凛子「この店で、私たちは初めて出会ったんだよね……」

高杉「ああ……」

凛子「あなたと出会ってから、私、本当に毎日が楽しいと思っている。この世界にいることができて、よかった……と」

高杉「凛子……。本当に、この世界に満足しているのか……?」

凛子「ええ、そうよ……。あなたは?」

高杉「僕も今の生活には満足しているが……。なぁ、君も気づいているんだろう?例の事実に……」

凛子「もちろんよ……」

高杉の頭の中に、喪黒の例の忠告が思い浮かぶ。

喪黒「とりあえず……。来年の10月8日午後20時13分、西多摩駅の東口で会いましょう」 )

身体が震えた様子になり、迷った表情になる高杉。次の瞬間、凛子が叫ぶ。

凛子「ダメ!!10月8日に西多摩駅に行かなければ、あなたは今の幸せな生活が続くから……」

凛子「それに……。私はあなたと離れ離れになりたくない……!」

20 : 以下、?... - 2018/09/01 00:01:26.222 KUfvUkQeD 14/17

テロップ「10月8日――」

夜。西多摩駅東口。高杉は腕時計を眺めている。腕時計は20時10分を過ぎている。そして、しばらくした後――。

午後20時13分。高杉の前に喪黒が現れる。

喪黒「こんばんは、高杉さん」

高杉「も、喪黒さん……。いやぁ、お久しぶり……」

喪黒「高杉さんは、ここへ来ないのではないかと思っていましたが……。いやぁ、意外でしたねぇ……」

高杉「喪黒さんには、いろいろ話したいことがありますから……」

喪黒「高杉さん。あなたはどうやら、この世界の仕組みについて理解できたようですなぁ」

高杉「はい。僕も大体理解できましたよ。だってここにいる人間たちは皆、この世の人間ではないんでしょう!?」

高杉「夭折した歌手が映画の主題歌を歌い……。若いころ、自殺した政治家が総理大臣になっている……」

高杉「がんで死んだアナウンサーが大物司会者になり……。白血病で死んだ女優がカンヌで賞をとっている……」

高杉「飛行機事故で死んだ小説家が今も執筆活動をしていて……。あと、ずっと前に通り魔に殺された女子大生……」

高杉「ボランティア志望のあの子が、この世界ではNPOの人間として募金活動をしている……」

高杉「しかも、僕が勤めている天翔電器は……。元の世界では、松芝電器に吸収合併されて、すでに消滅している会社ですよ!」

喪黒「よく覚えていますねぇ……」

高杉「あることをきっかけに、思い出したんですよ!!僕は1年前、本当はトラックにひかれていたんです!!」

高杉「それに、僕の名古屋の叔父は……。元の世界では、20年前に自殺してこの世にいないはずですよ!!」

21 : 以下、?... - 2018/09/01 00:04:51.903 KUfvUkQeD 15/17

喪黒「何もかもあなたの言う通りです」

喪黒「ここの他の住人たちも、この世界に来てある時期になって……。今いる世界の仕組みを知ってしまうんですよ」

高杉「……でしょうね。何しろ、ここは死後の世界なんでしょ。で、この世界の住人は皆、死んで肉体を失った人間なんでしょう!」

高杉「……どうやら、僕だけを除いて」

喪黒「その通りですよ」

高杉「しかも……。元の世界で志半ばで挫折して、無念の死を遂げた人間ばかりが集まっている……」

高杉「だから、この世界は……。俗に言われている天国とも地獄とも違う……。いわゆる『怨霊』が集まる空間ですよね!?」

喪黒「まあ、そういうことですよねぇ」

高杉「とはいえ……。僕はまだ、元の世界に戻れる可能性がありますから……」

高杉「このまま、ここにいたら僕は元の世界へ永久に戻れなくなる……」

喪黒「でも……。ここにいれば元の世界と違って、あなたは望みが思うままにかないますよ……」

高杉「それは分かっています。元の世界に帰るべきかどうか、僕は悩み抜きましたよ……」

高杉「でも、僕はまだまだ……。元の世界でやり残したことが、たくさんありますから……」

喪黒「元の世界は……。今いる世界よりも、はるかに辛いところですよ。それでもいいのですか?」

高杉「仕方ありませんよ……。人間であるのなら、現実と向かい合うしかないじゃないですか……」

喪黒「どうしても、元の世界へ帰るのですね?」

22 : 以下、?... - 2018/09/01 00:07:18.613 KUfvUkQeD 16/17

高杉「……そうします。僕の決意は固いですから……」

西多摩駅、タクシー乗り場。タクシーに乗り、喪黒に別れを告げる高杉。

高杉「本当にありがとうございました、喪黒さん……」

喪黒「お気をつけて……」

タクシーが発車する。手を振る喪黒。

夜のネオン街を走りぬけるタクシー。後部座席で回想する高杉。

高杉の頭の中に、喪黒、凛子、池井戸、名古屋の叔父の顔が思い浮かぶ。

高杉(みんな、ありがとう……。そして、本当にさようなら……)

一筋の涙を流す高杉。高杉の乗ったタクシーが、光の中へ吸い込まれていく。


とある病院。病室では、人工呼吸器と点滴を付けた高杉が、意識不明のままベッドに寝ている。

高杉を見守る医者、看護師。さらには、父、母、妹。親戚の人間たち。

高杉が、うっすらと目を開ける。一同がどよめく。涙を流す高杉の家族と親戚の人間たち。

高杉の母「哲人……!!」

24 : 以下、?... - 2018/09/01 00:10:27.297 KUfvUkQeD 17/17

高杉(僕は……、生きている……!!元の世界へ帰って来れたんだ……!!)

高杉(あの交通事故に遭って以来、僕は意識不明の中で長い夢を見て……。ん……!?)

高杉は、右手に何か紙切れを握っているような感触を覚える。彼がゆっくりと右手を上に上げると……。

右手にはどうやら、あの世界で喪黒から貰った名刺が握られているようだ。

高杉が右手に持った名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

高杉(さっきまでいたあの世界は……。夢の中の出来事じゃなかったのか……)

目に涙を浮かべる高杉。

高杉(病院から退院したら、僕は……。仕事と友達を必ず見つけるんだ……。ここにいる世界で……)


病院の前にいる喪黒。

喪黒「若い人たちにとって就職活動は……、自らの人生に影響を与える大事な時期であり、これ以上なく過酷な期間でもあります」

喪黒「昔と違って就活が困難を伴うようになった現在……。若者たちは先行き不透明な時代の中で、手探りの状態で生きています」

喪黒「世の中は矛盾だらけですし、現実は厳しいですが……。生きてさえいれば、活路を見出すことは可能なのかもしれません」

喪黒「特に、若いうちは可能性に恵まれているのですから……。人間、諦めさえしなければ、可能性や活路がなくなることはありません」

喪黒「高杉さんは現実と向き合うことを選択したようですが……。今後、彼がどのような人生を送るかは、ある意味未知数でしょう」

喪黒「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―

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