とけいがなります ボンボンボン
こんなじかんにおきてるのはだれだ?
ふくろうにみみずく
くろねこ どらねこ
いたずらねずみ
それともどろぼう
いえいえ よなか は おばけ の じかん
だったのに……
元スレ
おばけ「ねないこ だれだ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1484580843/
いまでは、すっかり 夜でも 明るい。
「眠れない、眠れない……」
不眠症のお姉さん
「朝一で帰れるかわからない……」
朝まで 残業の サラリーマン
夜勤の人も たくさん 増えた。
もう、夜も 人間のものになってしまった。
子供も 夜まで起きている。
もう おばけの時間じゃなくなった
「あっ、ねないこのおばけだ!」
げっ、まただ
「お願いだ! 俺はねないこだから、俺をおばけにして連れて行ってくれー!」
お前はもう 子 じゃないだろう
「そんなこというなよ! もう疲れたよ! 全然眠れてないのはほんとうなんだよ! お願いだよー!」
最近 こういう 大人が増えた。
おれが みえる 大人は みんな 逃げる俺を 追いかける
「助けてくれよー!」
まだ 追ってくる。この アパートの部屋に にげよう
どっか へ いったかな?
「誰?」
しまった 見られた
「おばけさんだ」
子供か
「おばけさんってほんとにいるんだ」
そうだ ねないこは おばけにして つれっていってしまうぞ
「嫌だ!!!」
……ごめん
おれも もう 疲れた。
「おばけさんも疲れるの?」
そうさ 人間たち は 眠らなくなってしまった。
眠れない 大人には 追いかけまわされるし
「じゃあ、しばらく僕と友達にならない?」
ともだち?
「うん、僕、友達いなくてつまんないんだ。ここにいるなら逃げなくていいでしょ。ここにいていいから、友達になってよ」
お前 頭の良い子供 だな いいよ
「じゃあ、ゲームしてあそぼうよ!」
ゲーム?
「そうだよ、テレビゲーム!」
なんだ、ファミコンか
「ファミコン? プレイステーションだよ」
ぷれい すてーしょん?
「知らないの?」
しらない
「レースゲームやろうよ」
うーん、わかった
「どう? 面白いでしょ?」
つまんないや
「えー!」
メンコとかやらないのか?
「メンコ?」
知らないのか
じゃあババ抜き
「じゃあババ抜きやろう」
いいぜ
……
「おばけさん、弱いね」
うるさい!
誰か 帰ってきたみたいだ
「ぼくのお母さんだよ」
今 帰ってきたのか
「うん、仕事に帰るのはいつもこの時間なんだ」
オイ!
「ひっ!」
なんだ?
コッチ ヘ キナサイ!
「……ちょっと、おばけさん待っててね」
ナンデ アライモノ モ シネーンダヨ!
「お母さん ごめんなさい!」
アンタッテ ヤツ ハ!
あんなに殴ったり けったり。
ひどい 母親だ。
止めなきゃ
「おばけさん 来ないで!」
!?
オバケッテ ナンダヨ! オマエ アタマ オカシインジャネエノカ!
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
……
ひどい けが だ
「いつものことだよ……」
おまえ ろくに ごはんも 食べていないのだろう
「……うん。お母さんも僕のこと、ゆうれいって呼ぶよ」
……
「ゆうれいってことは、おばけさんと仲間だね」
……ちがうよ
「ごめん……」
だれか 大人に 伝えよう
「やめてよ!」
どうして?
「お母さんは、前に付き合っていたおじさんにひどいことをされたんだ。それからおかしくなっちゃったんだ!」
……
「でも お母さんはたまに泣きながら僕も抱きしめてくれるんだ。お母さんは僕のことを本当は好きだし、それに僕がいないとお母さんはだめになっちゃう」
「変なおじさんたちがきて、ぼくを『ほご』するとかいっているけど、お母さんが追い払ってる」
「お願い、何もしないで」
……
おれは あいつのいうことを きかないで 俺の姿が 見える 大人たちに 話した
でも
「えっ、いや、ごめん。知らない……」
「いや、どうもあそこはこわくて……」
「役所としても 児童相談所と話して対応はしたよ……でも、法律ではあれが限界なんだ」
大人って 役立たずだ
あいつは もっと 痩せていった。
お母さんは どうした?
「……ずっと帰ってきていない……」
……なんか食べないのか?
「うちには なにもない。もう げんきもないよ」
……
あいつは もう 動かなくなった
あいつは とうとう おばけになった
「おばけさん! ぼく 元気になったよ! 体も軽いんだ!」
違うよ。元気になったんじゃないよ
「……え?」
おまえは おばけに なっちゃったんだよ
「……おばけ?」
これから おれと 一緒に おばけのせかい に いくんだ
「いやだよ」
お前が 嫌だといっても おばけのせかい に 行くしかないんだよ
「……なんでそんないじわるを言うの?」
いじわる なんか じゃないよ さあ いこう
「いやだ! 僕はお母さんと一緒じゃなきゃ嫌なんだ!」
「いやだ! いやだ!」
泣かないでくれ。お願いだから
「お母さん! お母さん!」
やめてくれ
「おかーさん! おかーさん!」
「あっ、ねないこのおばけだ!」
「ほんとだ、お願いだ。俺はもうこんな世の中、嫌なんだよ!」
「私を連れて行って!」
「おばけさーん! うちへ帰してよー! お母さんに会いたいよー!」
おわり