1 : 以下、?... - 2018/07/15 00:09:16.099 pxbrVFyDD 1/17

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    筑王 武(31) 元三役力士

    【美しき肉弾戦】

    ホーッホッホッホ……。」

元スレ
喪黒福造「もう一度、肉弾戦の世界で活躍したいでしょう!?」 元三役力士「もちろんだ……!!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1531580956/

2 : 以下、?... - 2018/07/15 00:10:52.145 pxbrVFyDD 2/17

昼。東京都内のある競艇場。競艇場の中では、ボートレースが行われている。

水面では色とりどりの6艇のボートが走っており、黒色のユニフォームを着た選手のボートが先頭にいる。

観客席で、熱心に応援をする客たち。

はげ頭でしょぼくれた初老の男、茶髪にピアスの中年の男、帽子をかぶっていて前歯が抜けた顔の男、

金髪でホステス風の女性、半そでの下から刺青が見える丸刈りの髪形の男……などなど。

ここにいる客たちは、ガラの悪そうな人間ばかり。

その中で、特に目立つ男がいる。太った身体で背が高く、人並み外れた巨体の男だ。

彼は右手に缶ビールを、左手に今日のボートレースの出走表を持っている。

テロップ「元小結 筑王武(31) 本名は猪熊武」

筑王「オラーーッ!!!そこだーーっ!!いけーーーっ!!!」

黒色のユニフォームを着た選手のボートが、独走態勢にいる。

筑王「いいぞーーーーっ!!!」

4 : 以下、?... - 2018/07/15 00:12:23.127 pxbrVFyDD 3/17

レースの終盤。先頭にいる黒色のユニフォームを着た選手がコーナーを曲がろうとする。

しかし、彼のボートはカーブを曲がり切れないまま、勢いよくひっくり返る。

トップにいた選手に思わぬアクシデントが起こり、驚く観客たち。 筑王「あああ!!!」

赤色のユニフォームを着た選手のボートが1着でゴールする。彼は右腕を高く掲げ、破顔一笑している。

それに続くのが、青色のユニフォームを着た選手のボートだ。

筑王「ううう……」 筑王は右手にある空の缶ビールを握り潰し、大声で叫ぶ。

筑王「チクショーーーーーッ!!!」 周りにいる客たちの視線が、悔しがる巨体の男・筑王に集まる。


ボートレース場を去ろうとする元力士・筑王武の後ろ姿を見ながら、観客たちはささやく。

観客A「まさかあいつ……!」

観客B「その『まさか』だよ!ほら、大相撲の元小結・筑王……!あいつだよ!!」

観客C「へえ、あの太った大男が……!あいつ、こんなところにいたのか……!」

観客D「それにしても、ずいぶん落ちぶれたな!!あいつ……!」

5 : 以下、?... - 2018/07/15 00:14:03.626 pxbrVFyDD 4/17

夕方。パチンコ屋。パチンコ台の前に座り、一生懸命にハンドルを握る筑王。

彼が打っているパチンコの機種は「CR新人魚物語」のようだ。

パチンコ屋に入り、筑王の隣の席に座る喪黒福造。

喪黒はパチンコをしようとせず、隣にいる筑王の様子を横目で見ている。


筑王がいるパチンコ台の下皿の出玉が遂に空になる。

パチンコ台の液晶の笑顔のアニメキャラとは対照的に、筑王の表情は険しくなる。

筑王「くそお!!!何で玉が出ねえんだ!!!」

思わず右腕の拳を振り上げ、パチンコ台を殴ろうとする筑王。 喪黒「待ちなさい!!」

喪黒は筑王の右腕を押さえつけ、ものに当たろうとする彼を制止しようとする。

喪黒「まあまあ……!!少しは落ち着いたらどうです!!」

筑王「こら……!!離せよ、おっさん!!」

喪黒「台を壊して弁償することになったら、あなたの懐がさらに痛みますよ!!」

筑王「くっ……」 ひるんだ様子になる筑王。筑王を見つめる喪黒。

7 : 以下、?... - 2018/07/15 00:15:56.918 pxbrVFyDD 5/17

夜。居酒屋で食事をする筑王と喪黒。

筑王「それにしてもおっさん、あんたには感謝するよ」

筑王「あのまま止めてくれなかったら、俺はパチンコ台を壊して弁償する羽目になったろうな」

喪黒「分かってくれて何よりです」

筑王「しかも、飯までおごって貰うなんて……。本当にすまねぇ。」

喪黒「今日のあなたはギャンブルで負け続けて、お金に困っているようでしたからね……」

喪黒「さっきのパチンコだけでなく、昼間のボートレース……」

筑王「ど、どうしてそれを!?」

喪黒「相撲を引退した後のあなたの評判は、至るところで耳にしていますよ」

筑王「そうか……。角界を追放された後も、俺の悪評はまだ残っていたんだな」

喪黒「良かったら、私が相談に乗りましょうか?」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

8 : 以下、?... - 2018/07/15 00:17:38.116 pxbrVFyDD 6/17

BAR「魔の巣」。喪黒と筑王が席に腰掛けている。

筑王「今日は俺のみっともねぇ姿をあんたに見せてしまったな」

喪黒「力士を引退して1年……、あなたもいろいろ心に鬱憤が貯まっているのでしょう」

筑王「たぶんなぁ……」

喪黒「現役のころのあなたは小結まで出世し、将来は横綱を狙えるとも期待されていましたねぇ」

筑王「力士の頃は、今と違って俺も輝いていたなぁ」

喪黒「確か、あなたの四股名の『筑王』は、『筑豊の王』という意味がありますね」

筑王「そうだよ。福岡県北九州市生まれの俺にあやかって、親方が名付けてくれたんだ」

喪黒「あなたは少年時代、地元では結構ヤンチャでしたよね」

筑王「ああ。あの頃の俺は手のつけられない不良だったよ」

筑王「でも、ガキの頃から相撲を習っていたおかげで、高校を卒業した後は山籠部屋に弟子入りすることができた」

9 : 以下、?... - 2018/07/15 00:20:13.722 pxbrVFyDD 7/17

喪黒「あなたも相撲取りを続けていれば、よかったでしょうに……」

筑王「まったくだ。でも、『あの事件』のせいで俺は力士を引退することになった」

喪黒「六本木のクラブで、お酒に酔ったあなたは客に暴力をふるったんですよね?」

筑王「ああ、そうだよ。でも、これだけは聞いてくれ!」

筑王「あの客は、マスコミで報道されていたような『一般男性』なんかではない!!」

筑王「あいつが先に俺に因縁を吹っ掛けてきたんだ!!全身に刺青を入れたあの男がなぁ!!」

喪黒「つまり、その客は暴力団の関係者だったというわけですね?」

筑王「その通りだ!!俺は嵌められたんだ!!」

喪黒「あなたは素行不良でマスコミに叩かれていましたけど……。八百長とは無縁のガチンコ力士でしたからね」

筑王「だから……、こうなったんだよ!!!」

筑王「俺はな……!!八百長をやっている力士たちや、そのケツ持ちの暴力団から目の敵にされちまったんだよ……!!」

喪黒「そこで、例の事件が仕組まれた……というわけですか」

筑王「……そういうことだよ!!!」

喪黒「なるほど。あなたも、気の毒な事情があったものですなぁ……」

10 : 以下、?... - 2018/07/15 00:22:29.904 pxbrVFyDD 8/17

筑王「俺は大好きだった相撲への道を奪われた上に、名誉も地位も失った!!」

筑王「だけどな……、五体満足でピンピンした肉体だけは残ってやがるんだ!!」

筑王「それにな……、この肉体が叫んでるんだよ!!!もっと喧嘩がしたい!!もっと闘いたい!!……とな」

喪黒「勝負に対する欲求が、ギャンブルに向かっているのでしょうな……」

筑王「おそらく……。言われて見ればそうだよな……」

喪黒「ですが……、ギャンブルでは欲求不満は解消されないでしょう」

筑王「その通りだよ。なぜなら、ちっとも勝てないからな……」

喪黒「それだけではありません。ギャンブルは、あなたの身体を動かした勝負じゃありませんからね」

喪黒「あなたが望んでいるのは、ズバリ……肉弾戦でしょう!!自分の身体を使った、肉体と肉体のぶつかり合いの……!!」

筑王「そうだ!!あんたが言う肉弾戦って奴を望んでいるんだよ……!!俺は……!!」

喪黒「もう一度、肉弾戦の世界で活躍したいでしょう!?」

筑王「もちろんだ……!!」

喪黒「よかったら、私があなたのお望みをかなえてあげましょうか?」

筑王「本当にそんなことができるのか!?」

喪黒「できますよ」

11 : 以下、?... - 2018/07/15 00:24:14.758 pxbrVFyDD 9/17

筑王「だがな……。俺は不祥事を起こして相撲界を追放された身でもあるしな……。今さら力士の道には戻れねぇんだよな」

喪黒「相撲以外の世界でも、肉弾戦はできますよ」

喪黒「例えば、プロレスや格闘技……。あなたの巨体と強さを生かすことができる世界であり、まさに打ってつけでしょう」

筑王「プロレスや格闘技……。そうか、その方面が残っていたのか!!」



数日後。JR目黒駅近くのビル。エレベーターの中に喪黒と筑王がいる。

エレベーターが16階に着く。 喪黒「ここですよ」

喪黒と筑王が向かった先の事務所の看板には、こう書かれている。「超大和プロレス本部」。


事務所の中に入り、ソファに座っている喪黒と筑王。彼らを一人の男が出迎える。

その男は、がっちりとした身体にスーツをまとい、スキンヘッドにひげという風変わりな姿だ。

「君が、元筑王こと……猪熊武くんか」

筑王「はい」

12 : 以下、?... - 2018/07/15 00:26:07.874 pxbrVFyDD 10/17

超大和プロレスに入門した筑王が、練習に明け暮れる。

ジョギングをする筑王。腕立て伏せや、腹筋をする筑王。バーベルを持ち上げる筑王。

サンドバッグに蹴りを入れる筑王。


プロレスデビューに向け、記者会見をする筑王。

スポーツ紙「元小結筑王 リングデビューへ」「筑王 プロレス界に転身」


そして、プロレスデビュー当日。

日本武道館の中では、観客たちがリングに向けて声援を送っている。

赤コーナーには紫色の覆面をかぶったレスラーがおり、青コーナーには筑王がいる。

実況「青コーナー、筑王武!!」

ゴングの響きとともに、相手に向かっていく筑王。 筑王「ウオオオッ!!!」

観客席の中にいる喪黒が筑王の試合を見守る。

筑王によるチョップが相手のレスラーの腹に決まる。

13 : 以下、?... - 2018/07/15 00:28:12.800 pxbrVFyDD 11/17

BAR「魔の巣」。喪黒と筑王が席に腰掛けている。

喪黒「それにしても……。新人ながらこの数試合で、あなたは鮮烈なレビューを飾りましたなぁ」

筑王「いやぁ……。これも喪黒さんが俺にプロレスの世界を紹介したおかげだよ」

喪黒と筑王がいる席の机には、プロレス系週刊誌やスポーツ紙が並べられている。

雑誌やスポーツ紙には、筑王の活躍を伝える記事がいくつも掲載されている。

筑王「もう一度、肉弾戦の世界で活躍することができて……。毎日が夢のようだ!」

喪黒「あなたのお役に立てて実に何より……。ですがね……。ちょっと忠告をしておきたいことがあるのですよ」

喪黒「あなたの欠点は、怒りっぽくて向こう見ずなところです。力士だった頃は、その性格も災いしましたね」

筑王「言われて見れば……な。あの時、ヤクザの男の挑発に乗っていなければ、俺は暴力沙汰を起こさずに済んだ……」

喪黒「土俵の上やリングの上だからこそ……。血気にはやる性格も……。並はずれた巨体も……。腕力も……」

喪黒「いい意味で生かされているということを忘れないでください」

筑王「ああ」

喪黒「約束です。リングの外で、カッとなって暴力沙汰を起こすような真似をしてはいけませんよ」

筑王「わ、分かったよ……。喪黒さん」

15 : 以下、?... - 2018/07/15 00:30:21.652 pxbrVFyDD 12/17

さらに日々が過ぎていく。

プロレスの試合で、相手のレスラーにチョークスリーパーを決める筑王。

他の試合。2人のペア同士のタッグマッチ戦。リングの上には筑王を含め4人のレスラーがいる。


ある夜。新宿・歌舞伎町。

キャバクラで、筑王はキャバ嬢に囲まれながら酒を飲んでいる。

キャバ嬢A「うわあ~!!実物をこうやって見ると、筑王さんって本当に身体も腕も大きいよねぇ!!」

筑王「ガハハハ!!」

キャバ嬢B「私、相撲取りの頃の筑王さんのファンだったんだよぉ!!」

筑王「相撲取りの俺と、プロレスラーの俺……、どっちがいいかい!?」

キャバ嬢B「どっちも好き!!」

筑王「こりゃあ、いい!!」

16 : 以下、?... - 2018/07/15 00:32:18.099 pxbrVFyDD 13/17

筑王が店内でふと目をやると、他の席で、素行の悪い客がキャバ嬢に絡んでいるのを見つける。

キャバ嬢に向かってコップの水をぶっかけ、ドレスの胸ぐらを掴みかかる客の男。

その男は、オールバックの髪形で額に傷跡がある。

年齢は40代くらいで、ずんぐりした体形であり、グレーのスーツに黒のシャツでノーネクタイだ。


筑王(あいつは……!!)

筑王の頭の中に、例の事件の光景が思い浮かぶ。

1年前。クラブの中で、力士だった筑王とあの男がにらみ合っている。


光景は、新宿・歌舞伎町のキャバクラに戻る。

筑王(俺を罠に嵌めて角界追放へ追いやったあの男が……!!こんな所にいるなんて……!!)

筑王は身体と拳をふるわせる。彼の顔は、みるみる憤怒の形相に変わっていく。

17 : 以下、?... - 2018/07/15 00:35:02.372 pxbrVFyDD 14/17

筑王は、あのヤクザの男がいる席へ急いで向かう。

筑王「てめえ……!!さっさとお嬢さんから手を離せ!!」

ヤクザ「おう、お前か……!!1年ぶりだな……!!」

筑王「聞こえなかったのか、てめえ!!手を離せっつってんだよ!!」

ヤクザ「何だよぉ、やるのかコラァ!!」

ヤクザの男は、机の上にあるブランデーの瓶の底を割り、右手で振り回す。

キャバ嬢「キャア!!」

ヤクザは、キャバ嬢や筑王に割れた瓶を突き付ける。

ヤクザ「やれるならやってみろよォ!!俺には組の代紋があるんだ!!」

筑王「その代紋がなんだァ!!!」

筑王はヤクザの男を袋叩きにし、これでもかと拳で殴りつける。

ヤクザの男は顔が真っ赤に腫れて血だらけになり、口元はいくつも歯が折れた状態になる。

ヤクザ「ひ、ひい!!ゆ、許ひてくれえ!!」

筑王「何がヤクザだ!!」 筑王は床に倒れているヤクザの顔に向かって唾を吐く。

19 : 以下、?... - 2018/07/15 00:38:14.178 pxbrVFyDD 15/17

キャバクラを出て、繁華街の裏通りを行く筑王。彼の前に、喪黒福造が現れる。

喪黒「筑王武さん……。どうやらあなた……、私との約束を破ったようですね!」

筑王「も、喪黒さん……」

喪黒「私はあなたと約束したはずです」

喪黒「リングの外で、カッとなって暴力沙汰を起こすような真似をしてはいけない……と」

喪黒「それなのに、あなたはキャバクラの中で客に暴力をふるい、大怪我をさせてしまった……」

筑王「仕方ねぇだろ!!そいつが酒に酔ってキャバ嬢の女の子に絡んでいたから……」

筑王「女の子を助けるために、そうするしかなかったんだよ!!」

喪黒「それだけじゃあ……ないでしょう。その客が、あなたを角界追放へ追いやったヤクザだったから……」

喪黒「どうしてもあなたは怒りを抑えることができなくなった……。違いますか……!?」

筑王「あああ……!!!」

喪黒「図星のようですねぇ……」

喪黒「約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません……!!」

喪黒は、筑王に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」

筑王「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」

20 : 以下、?... - 2018/07/15 00:41:15.299 pxbrVFyDD 16/17

ある日の夜。東京、後楽園ホール。

リングの上でプロレスの試合が行われている。

筑王の対戦相手は、アフロヘアーにひげを生やしたプロレスラーだ。

アフロヘアーのレスラーが、筑王にバックドロップをかける。

ドゴォ!!!筑王がマットの上に倒れる瞬間、轟音とともに何かが砕け散る鈍い音が同時に響く。

ゴキリ……!!どうやら、筑王の首の骨が折れたようだ。彼はそのまま意識を失う。

実況「おや、何があったのでしょうか!?一体何があったのでしょうか!?」

リングの上で倒れている筑王の元へ、レスラーたちが次々と向かう。

実況「大変です!!筑王選手が……!!」


翌朝。病院。

ベッドの上に横たわる筑王を見守る医者、看護師、2人のレスラー。

筑王の首にはギブスが付いている。

21 : 以下、?... - 2018/07/15 00:44:30.158 pxbrVFyDD 17/17

ベッドの上で目を覚まし、意識を取り戻す筑王。 筑王「ここは……」

看護師「気がつきましたか……」

医者「命が無事で本当に良かった……。しかしながら……あなたは……。あなたは、もう……」

筑王を見守る医者、看護師、レスラーたちの表情は険しい。

医者から詳しい事情を知らされ、驚愕した表情になる筑王。

筑王「そんな……!!俺は……!!俺はもう……!!手を動かすことも……、歩くこともできないのか……!!」

筑王「嘘だ……!!嫌だ……!!ううう……!!!」

病室の中で、筑王は泣きながら大声で叫ぶ。

筑王「うおおおおおおっ!!!動いてくれえええええっ!!!俺のからだああああああああっ!!!」


筑王が入院する病院の前にいる喪黒。

喪黒「肉体と肉体がぶつかり合う勝負の世界……。有史以来、それは様々な形で多くのドラマを生み出してきました」

喪黒「人間もまた生き物であり、動物的な本能が残っているからこそ、肉弾戦への憧れが無意識の中にあるのでしょう」

喪黒「ですが、力と力のぶつかり合いは時に悲劇をもたらしますし……。暴力はより強い暴力に負け、強いものも最後は滅ぶのです」

喪黒「だから、結局のところ……。肉弾戦に耐え得る鋼のような肉体を持つことよりも……」

喪黒「むしろ、裸一貫でも普段通りの生活を送れることの方が、私たちにとっては重要なのではないでしょうか」

喪黒「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―

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