少年エルフ「人間の娘を育てたら魔王を探しにいくことになりました」【#1】

222 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 22:49:35.63 ME9Bqf3T0 197/838

○廊下

娘友「というわけでアタシは行くけど エルフさんの活動を後で報告してね バレずに」ボソボソ

召使「かしこまりました ……見ているだけでよいのですか?」

娘友「そーねー ギリギリまでフォローしないでね」フヒヒヒ

召使「心得ました ではいってらっしゃいませお嬢様」

娘友「ふふふ(エルフさんピュアだわ~あんなに信じちゃって 報告が楽しみ)って時間ヤバッ」

バタバタバタ

223 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 22:50:15.29 ME9Bqf3T0 198/838

○数時間後 王都大通り

少年エルフが一人で歩いている。

少年エルフ「……(娘は朝からお城に行ってるから 今日買うしかないけど)」

テクテク

少年エルフ「……(でもパンツを買うなんて……あのお店だよね)」

テクテク

224 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:01:09.80 ME9Bqf3T0 199/838

○ランジェリーショップ前

少年エルフ「……」ドキドキ

スタスタ

少年エルフは店前を通り過ぎてしまった。

少年エルフ「しまった つい……(今度こそ)」

スタスタスタタタ

少年エルフは店前を足早に通り過ぎてしまった。

少年エルフ「あぅ もう!(何をしているんだ僕は 娘のプレゼントを買いにきたの! 僕は! よし勢いで行こう勢いで)」ドキドキドキ

タタタタタタタタタ

少年エルフは店前を駆け抜けた。

少年エルフ「あぁダメだぁ……っ!(やっぱり無理ぃ あんなトコロ一人じゃ無理だよ)」ぜーはーぜーはー

少年エルフ「うう ちょっと頭を冷やそう」

225 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:02:30.82 ME9Bqf3T0 200/838

○近くのカフェテラス

少年エルフは注文を終えて席で思案に暮れる。

少年エルフ「うーん(よーしまずイメージトレーニングだ イメージ大事)」

――少年エルフのイメージ

店員「いらっしゃいませ」

紳士「やぁ すまないムスメの誕生日祝いにひとつ贈りたいのだがいくつか見繕ってくれないかね? なにぶんこういう店は初めてなので」

店員「それでしたらこちらはいかがでしょう きっと喜ばれますよ」

紳士「よし それを包んでくれたまえ」

店員「ありがとうございます」

――少年エルフのイメージ終了

少年エルフ「よしっ……(大丈夫 娘のプレゼントを買うだけ ヘンじゃないヘンじゃない)」

店員「ミックスジュースのお客さま~」

少年エルフ「あ 僕です」

226 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:03:37.68 ME9Bqf3T0 201/838


店員「はい ボク気をつけて飲んでね」

少年エルフ「あ はい……(ボク……)」

店員はジュースを少年エルフの前に置いていく。

――少年エルフのイメージ

少年エルフ「あの ムスメにプレゼントしたいのですが」

店員「え? ムスメ?」

少年エルフ「いえっそのっ 姉です お姉さんにです」

店員「あらー お姉さんにプレゼントするのボク? オマセさんね~」

少年エルフ「あの それでおススメがあったら」カアア

店員「おススメ? お姉さんはどんなのが好きなの?」

少年エルフ「わ わかりません」カアア

店員「じゃあ キミはどんなのが好きなのかな~ こんなの? それともコレ?」フフフ

少年エルフ「あのっあのっ」カアアアアアア

――少年エルフのイメージ終了

少年エルフ「……」プシュ―

少年エルフ「うー もっと身長があったらいいのに」うぐうぐ

少年エルフ「……どうしようプレゼント」

227 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:05:04.71 ME9Bqf3T0 202/838

○王城 酒倉

娘は酒倉の扉を開ける。

ギィイ

「白竜はいるわよー」

ドタドタドタドタ

\オタスケー/

王城の兵士が中から飛び出してきた。

白竜「あーあ 逃げられちゃったわ」

「ちょっと貴方 何やってるのよ」

白竜「何ってお酒をとりにきた兵士の中に中々のイケメンがいたからつい……パクッて」

「貴方ねぇ……シャレにならないわよ」

白竜「やーね 甘噛みよ甘噛み たまにはイケメン成分を補給しないと死んじゃうのよ」

228 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:08:19.22 ME9Bqf3T0 203/838


「よく言うわ それにパパから貴方は雄って聞いてるけど」

白竜「あらやだ でもドラゴンの性別なんて飾りみたいなものよ」

「本当かしら?」

白竜「まぁまぁ それで今日は何の用? ただ雑談に来てくれただけでも嬉しいけど 女子トークする? ぶっちゃけちゃう?」

「じゃあぶっちゃけてもらおうかしら コレについてね」パアア

娘が集中すると手が光に包まれる。

白竜「あら……キレイねー 何? 新しい魔法?」

「……白々しいわね コレは魔法じゃないの」

白竜「……へぇ そうなの 初めて見たわ」

「”雷撃”」

229 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:12:08.67 ME9Bqf3T0 204/838


バリバリバリ

白竜「いったぁ ちょっとぉ シミになったらどうするのよ!」

「嘘をつくからよ 私には『わかる』のよ……それも知ってたんじゃない?」

白竜「……さあ」

「白竜 貴方この力について何か知ってるでしょ?」

白竜「んー知ってるような知らないような」

「”重雷……”」 白竜「タンマタンマ! 本当に言えないんだって」

「言えない…… 知ってるけど言えないのね」

白竜「だって その……色々と制約があるのよドラゴンにも」

「300年も寝てたくせに制約とか関係あるの?」

白竜「あら 人間は一晩寝たら昨日の約束は忘れていいの?」

「……そう スケールが違うわけね」

230 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:14:21.22 ME9Bqf3T0 205/838


白竜「……娘はその力いつから使えるの?」

「……(質問はするのね)初めて使ったのは半年ほど前でこないだの戦いでも使えたわ」

白竜「自分の意思で出来るの?」

「自分で出来るようになったのは最近よ それにこれが限界」

娘が光に包まれた拳を振ると光の飛沫が酒樽の汚れを落とした。

「これじゃ掃除くらいにしか使えないわ……」

白竜「どうやって発動させてるの?」

「それは……パパの事を考えると出来るのよ」

白竜「あぁ それで」

「でも半年前もこの前ももっとパワーがあったわ」

白竜「ふぅむ」

「これをコントロールできないと倒せない魔物がいる…… そうでしょ?」

231 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:19:31.39 ME9Bqf3T0 206/838


白竜「……そうね」

「だったらこれのコントロール方法を」

白竜「ダメよ! まだダメ」



「……『まだ』ね いつになったらいいの? グズグズ出来ないと思うけど」

白竜「そうだけど……」

\娘ー/ 

タタタタタ ドン

「うわっと 王女!?」

第七王女が娘に抱き付いてきた。

第七王女「娘~白竜に会いに来たならわらわにも顔を出してくれてもよかろう? なかなか来ないからわらわから出向いたのじゃ」

「ごめんなさいね ちょっと話し込んでたから」

第七王女「何を話しておったのじゃ?」

「えっとね」

232 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:20:55.59 ME9Bqf3T0 207/838


白竜「美白の秘訣についてよ」

第七王女「そうか確かに白竜は白いからのう 参考になるじゃろうの」

「まぁ 確かに白いけど……」

白竜「ついでだからコレ塗ってくれない?」

白竜は美容クリームの樽を開けた。

第七王女「うむ まかせるのじゃ」

第七王女はクリームをすくって白竜の背に登る。

「ちょっと白竜 王女にそんなことさせてるの!?」

白竜「だって 他の人は怖がってしてくれないもの」

第七王女「一応 白竜はわらわが管理することになっておるからのこれも勤めじゃて」ヌリヌリ

「……仕方ないわね 私も手伝うわ」

娘も袖をまくって美容クリームをすくった。

「あ……(コレ 友の所の商品だ)」

233 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:25:28.63 ME9Bqf3T0 208/838

○大通り カフェテリア

少年エルフ「うーん(本当にパンツとか贈るのが最近の流行りなのかな? 誰かほかにこんなこと相談できるのは……)」

少年エルフの脳裏に妹弟子の事がよぎる。

少年エルフ「……(薬師おきてるかな?)」

少年エルフは公衆電話を探し始めた。

○南の町 女薬師の店

ジリリリリリリン

女薬師「はいはい 何よ二日酔いなのに」

ガチャ

女薬師「本日は臨時休……てエルフ? どしたの?」

少年エルフ「ちょっと相談したいんだけど」

少年エルフは事情を説明した。


234 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:28:31.38 ME9Bqf3T0 209/838


女薬師「パンツプレゼント!?」

少年エルフ「やっぱりヘンだよねぇ パンツを贈るなんて」

女薬師「あーでも最近の若いコの流行りかー どうだろ」

少年エルフ「あぁ 薬師は33だったよね わからないか」

女薬師「えぇえぇ どーせ三十路ですよ」ピキピキ

少年エルフ「やっぱり友ちゃんにからかわれたのかなー?」

女薬師「あ でもわたしはショーツとかは贈られるのはアリかな いくらあっても困らないし」

少年エルフ「そうなんだ でもどんなのがいいのか分からないよ」

女薬師「Tよ」

少年エルフ「てぃ?」

女薬師「だからTバックよ オンナ勝負下着はTバックに決まってるでしょ セクシーだしドレスにパンティライン出さないためにも必須よ」※個人的な見解です

少年エルフ「そうなの本当に? じゃあ色は? やっぱり白やピンクがいいかな?」

235 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:31:50.53 ME9Bqf3T0 210/838


女薬師「はー分かってないわね 白なんて汚れやすいしピンクなんて子供っぽいじゃない」

少年エルフ「そうなの? じゃあ何色だったら」

女薬師「赤ね」

少年エルフ「あ 赤」カアア

女薬師「黒もいいよね」

少年エルフ「黒ってそんな 娘はまだ16だよ」カアア

女薬師「17になるんでしょ……その年頃なら下着だってもう大人よ エルフは娘のショーツとか見ないの?」

少年エルフ「み 見てないよ」カアア

女薬師「そんなこといって~ こっそり見たりしてないの? こっそり」ニシシ

少年エルフ「見ない! 僕はパパだよ! もーっ からかわないで!」

ガチャン ツーツー

女薬師「ふふ エルフもお年頃になったのねぇ……昔はわたしのパンツも平然と洗ってたのに」

女薬師「それはオンナとして……まぁいいや 考えないでおこ」

女薬師は二度寝しにベットに戻った。

236 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:34:55.34 ME9Bqf3T0 211/838

○王都 大通り・公衆電話

少年エルフ「もう 薬師は~」カアア

少年エルフ「うーん(他にこういうことに詳しそうなのは……)」

少年エルフの脳裏にナイスミドルの幼馴染が浮かぶ。

少年エルフ「男……まぁ経験は豊富だよねぇ」

ジーコジーコ



少年エルフ「え? こっちに来てるの?」

兵士A「分隊長は朝から城に用事があるって……女兵士も一緒だし今頃その辺にいるんじゃない? バッタリ会うかも」はっはっはっ

少年エルフ「はあ……わかりました失礼します」

ガチャン

少年エルフ「こっちに来てるっていってもバッタリ会えるわけ……」

「お? エルフか? どうしたこんな所で」

女兵士「ホントだエルフさん久しぶり~」

少年エルフ「会えたー~!?」

少年エルフは男と女兵士とバッタリ会った。

237 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:37:56.83 ME9Bqf3T0 212/838

○再びカフェテラス

「パンツ!? 誕生日にか?」

少年エルフ「やっぱりそんなの贈らないよね」

\スペシャルロイヤルパフェです/ \うわースゴーイ/

「いやー 無くは無いかな」

少年エルフ「え!? あるの?」

\スプリングベリーソースのパンケーキ5段です/ \わーい美味しそー/

「まぁ嫁とか……そういや女騎士にもやった事あるぞネタで」

少年エルフ「それ女騎士さん怒ったでしょ」

「確かに殴られた でも真っ赤になったアイツ面白かったぞ メッチャ動揺してた」クックックッ

少年エルフ「もう女騎士さん真面目なんだからからかっちゃダメだよ」

238 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:40:28.90 ME9Bqf3T0 213/838


「でも一応受け取ってたから満更でもないんじゃないか?」

少年エルフ「知らないよそんなの」

女兵士「モグモグ あたし貰ってないですよ たいちょー パクパク」

「ちょっ 食うか喋るかどっちかにしろ ってお前どんだけ食ってるんだ!?」

店員「トリプルフルーツサンデーです」ゴトッ

少年エルフ「まだ食べれるの」

女兵士「少したべます? たいちょーのおごりですし」

「分かってるなら 少しは遠慮しろよ」

女兵士「エルフさんもどうです? 美味しいですよ」

少年エルフ「いえ 見てるだけでお腹いっぱい」

女兵士「それよりたいちょーあたしは貰ってませんよ~パンツ~」

「えぇ!? お前が欲しいのか?」

少年エルフ「あの……そんなに贈られたいものなの?」

女兵士「そうですよ~ かわいいのって結構高いですし~動いてると直ぐいたんじゃうし~普段頑張ってるあたしにも下さいよ~ たいちょ~」

少年エルフ「そうなんだ(若いコには普通なのかな?)」

\たいちょ~ たいちょ~/

「は~仕方ないな 行くかエルフ」

少年エルフ「行くって?」

239 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:42:45.18 ME9Bqf3T0 214/838

○ランジェリーショップ

\いらっしゃいませー/

「ここだ」

少年エルフ「だよね 一緒だと助かるよ」カアア

女兵士「わーカワイイのがいっぱい~いくつまでいいですか? たいちょー」ルンルン

「一着だけだ!」

女兵士「え~? しょうがないな~たいちょーは~」

「はぁ……どっちがしょうがないんだよマッタク」

少年エルフ「ねぇ 男って女兵士さんと付き合ってるの?」ボソ

「はぁ? それは無い」

240 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:47:40.96 ME9Bqf3T0 215/838


少年エルフ「でも女兵士さんて男にスゴイ甘えてるよね」

「たかられてるだけだ…… まぁ親父がわりなんだろうな」

少年エルフ「オヤジガワリ?」

「あいつは親父がいなかったらしいからな それでだろう」

少年エルフ「そういうものなの?」

「あとは俺が入隊させたからその責任かな」

少年エルフ「そうなんだ」

「周りはオンナだからって反対したんだがアイツは力もあるし筋もいいんだ……性格がアレだがな」

少年エルフ「そこまでいう程? 元気でいい子じゃない」

ダダダダ

女兵士「たいちょー どうですか? セクシーでしょー」

下着姿の女兵士が現れた。

241 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:49:16.50 ME9Bqf3T0 216/838


少年エルフ「ちょっと!?」カアアア

「そうだないいんじゃないか 馬子にも衣装だな」ボウヨミ

女兵士「わーい マゴニモイショーだって褒められたー」ニコニコ

店員「お客様! 試着したまま動き回らないでください」

女兵士「はーい ごめんなさい」

トコトコ

少年エルフ「……確かになんていうか天然だね」

「だろう」しみじみ

242 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/19 23:52:55.17 ME9Bqf3T0 217/838


少年エルフ「えっと(僕も娘のを買わないと)あ あの!」

店員「はい」

少年エルフ「あの娘の……その姉に パン……ッを買っていきたいのですが……その」カアア

店員「あら(おつかいかしら?)……はいどのような物をお探しですか?」

少年エルフ「えと……普通に可愛いくて喜びそうなのでいいです」カアアア

店員「はい サイズはご存知ですか?」

少年エルフ「え? サイズ」

店員「はいヒップサイズです」

少年エルフ「えっとえっと(どうしよう……知らない)」


245 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:30:26.84 C4bpCJy50 218/838

#10【少年エルフの『P』についての冒険2】

246 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:32:39.52 C4bpCJy50 219/838

○翌朝 宿屋・少年エルフの部屋

少年エルフ「ふぁ(……昨日はサイズがわからなかったから結局買えなかったな)」

少年エルフ「んー(サイズか……服ならとにかくパンツのサイズなんて直接聞く分けには)」

コンコン

召使「エルフさま御召し物をお届けにきました」

少年エルフ「はーい」

ガチャ

召使「こちらです」

召使は洗濯した着替えを少年エルフに渡す。

少年エルフ「おっとと いつもありがとう」ニコ

召使「いえ お気遣いなく」ニコ

247 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:33:44.99 C4bpCJy50 220/838



バタン

少年エルフ「洗濯ぐらい自分でできたらいいんだけど……ここ(王都)じゃ仕方ないよね」

少年エルフは着替えを畳んでいく。

パタパタ

少年エルフ「あれ? これ娘のだ まざっちゃったかな?」

娘の着替えがまざっている。

少年エルフ「……コレ!?」ドキッ

少年エルフは娘のパンツを見つけた。

248 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:34:49.54 C4bpCJy50 221/838

○娘の部屋

「っと はいった」

娘は着替えている最中。

「またキツクなってる……太ったのかな いやねぇ」

娘はブラをつけようとするが。

「……やっぱりこっちも届かないなぁ」ウーン

あと少しというところで手で回らずにホックかかけれない。

「どうしよう」

トントン

\娘ー 起きてる?/

「パパ? 丁度よかった」

ガチャ

249 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:35:49.13 C4bpCJy50 222/838


少年エルフ「これ着替えが混じって――うわぁ!? ゴメン」カアア

バタバタ

下着姿の娘を見て慌てて出ようとする少年エルフ。

「まってまって ちょっと手伝ってよ」

少年エルフ「てつだう!?」ドキドキ

「後ろ留めてくれない? 届かなくて」

娘は踵を返してブラのホックを見せる。

少年エルフ「これ!?」

「うん……ちょっとキツクなっちゃってて」

少年エルフ「わ わかった」カアア

少年エルフは娘のブラのホックを留めた。

「ありがとパパ」

シャツを着る娘を見ないようにして少年エルフは尋ねる。

少年エルフ「いつも誰かに留めてもらってるの?」ドキドキ

「うーん? 最近サイズが合わなくなっちゃって……少し前に買ったばかりなのに」

少年エルフ「そ そう育ちざかりだしね 新しいの買わないとね」ドキドキ

「……そうね パパ今日は買い物行こうか 一緒に?」

少年エルフ「え? 一緒に?」

250 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:38:04.19 C4bpCJy50 223/838

○ランジェリーショップ

少年エルフ「うぅ……(二日続けてこの店くるなんて)」カアア

店員にサイズを測ってもらった娘は商品を物色している。

「あのサイズだとこの辺りか うーん どっちがいいかなパ……エルフ」

少年エルフ「え! 僕に聞くの!? 娘の好きに決めなよ」カアアア

「迷ってるから聞いてるのよ どっちがいいかなこの細い方? それとも薄いやつ? ん?」

少年エルフ「こ こんなの着るの!?」アタフタ

「フフ ゴメンゴメンこんなの履かないって でもどうしてここまで一緒に来たの? 表で待ってるかとおもったのに」

少年エルフ「それは……その」

「誕生日ね プレゼントに何か買ってくれるつもりなんでしょう」

少年エルフ「べつにプレゼントはまだ早いよ 来週なんだし」ドキドキ

「あらそう? (パパ分かりやすい)」フフフ

251 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:39:13.44 C4bpCJy50 224/838


少年エルフ「もう……それとは別に買ってあげるから今日は好きなの選んだら」

「本当? でもこれでいいのよ お店の再建だってあるんだし無駄遣い出来ないでしょ」

少年エルフ「そうだけど……」

「とりあえず選んでくるわ」

少年エルフ「うーん(娘の言う通りだし今回の買い物をプレゼントに…… ダメ! やっぱりちゃんとしたプレゼントを誕生日にあげたい けどなぁ……」

「コレとコレと……うわぁコレ素敵」

娘は展示されている白いフリルの付いたパンツを見つけた。

少年エルフ「アレがいいの?」

「え? ううん素敵だなって思っただけ アレは私には似合わないわ可愛すぎるし高いわ」

少年エルフ「高いっていったって下着でしょ えっと……えぇ!?」

少年エルフは値札を見て驚く。

「コレはウェディング用のアンダーよ 買わなくていいの……あとはコレでいいから」

少年エルフ「そう? そっか……うん」

252 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:40:35.22 C4bpCJy50 225/838

○大通り

少年エルフは悩みながら歩く。

少年エルフ「……(娘は絶対アレを欲しがってた けど高すぎるなぁ でも娘が欲しがるのってめったにないし かといって無理に買っても娘は喜ばないなぁ……今の状況だと……」

「……(もう いらないって言ったのにアレのこと気にしてるわね 気分を返させて忘れさせないと)」

テクテク

「ねぇ そういえば男子の入院してるトコ ここから近いよねお見舞いにいこっか」

少年エルフ「うん? 男子くん? そうだね行こうか」

253 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:42:07.89 C4bpCJy50 226/838

○王都中央教会付属病院 男子の個室

ガチャ

「具合はどう男子?」

少年エルフ「お見舞いにきたよー」

男子「娘 エルフさんも来てくれたんだ」

男子は体を曲げれないように固定されている。

少年エルフ「動けないと退屈でしょう? 大丈夫?」

男子「確かに退屈です 手は動かせるんですけど」

少年エルフ「そう 元気そうでよかった 今度本か何かもってくるよ」

男子「ありがとうございます」

「で 具合はどうなの? 手術は終わってるでしょ」

男子「ああ 終わった けどエルフさんが言った通りに肋骨もいくつか折れてたみたいで 治るのに時間がかかるって」

少年エルフ「内臓までやられなくてよかったよ 本当に運がよかったんだよ」

254 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:42:48.40 C4bpCJy50 227/838


男子「心配させてスイマセン エルフさん」

「王女や友も心配してたけど 見舞いには来た?」

男子「いや まだ来てないけど……王女は無理だろう城を抜け出てこないと行けないし」

バーン

第七王女「それがどうしたのじゃ」

第七王女が現れた。

男子「王女!? どうやってここに?」

娘友「男子君げんきー?」

少年エルフ「友ちゃんも」

「友が案内したのね? いいの? 女騎士さんが困ってるわよ」

第七王女「心配ない 女騎士もそのうちに……」

255 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:43:45.81 C4bpCJy50 228/838


ダダダダ

女騎士「ぜーぜー 王女~また勝手に~」

第七王女「ほら来たのじゃ」



女騎士「お見舞いなら私から兄王様に相談して許可をとれますのに勝手に抜け出て……」ガミガミ

第七王女「それが面倒なのじゃ まぁもう来てしまったのじゃから女騎士も見舞いをするのじゃ」

女騎士「まぁ そうですね」

男子「その…… なんかスミマセン」

???「誰だ? 病院でダッシュしてたのは」

女騎士「な゛!?」

男子「父上」

男があらわれた。

256 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:44:52.77 C4bpCJy50 229/838



「さて男子 具合はどうだ?」

男子「手術は終わりました 肋骨が折れてるのでしばらくかかります」

「そうか……まぁ よくやったな 王女をかばったんだろう」

男子「はい」

「そうかそうか……うん」



娘友「ぎこちないわねぇ」ボソボソ

「昔からこうよ」ボソボソ

少年エルフ「男は近衛兵やってた頃は家に居なかったから」ボソボソ

第七王女「わらわのせいかのう」シュン

女騎士「そんなことはありませんよ王女」

257 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:46:52.06 C4bpCJy50 230/838



第七王女「そうじゃ忘れておった お見舞いを持ってきたのじゃ」

第七王女は怪しい瓶を取り出した。

娘友「何それ?」

第七王女「王宮魔術師の連中が隠してた秘薬じゃ コレを飲めば元気一発じゃ」

女騎士「いつの間にそんなものを」

ポン

第七王女がふたを開けるとえもしれぬ臭いが漂う。

少年エルフ「うわ臭い」

「ちょっとそれ大丈夫?」

第七王女「もちろんじゃ ホレ」

「……(この臭いは)」

娘友「……(たまに親父が飲んでるわね)」

男子「はい(こ……これを飲むのか)」

258 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:48:39.89 C4bpCJy50 231/838


グイ

男子「ぐ……ッホ ウググ」ゴクンゴクン

「うっわ」

少年エルフ「……(きつそう)」

女騎士「……(すまない男子君)」

男子「ケホケホ かっらいですよこれ」

第七王女「良薬は口に苦しじゃ 耐えるのじゃ」

男子「はい……すいません水を下さい……」

娘友「はいコレを……うわっと」

娘友は何かにつまづいてしまい水差しが宙を舞う。

第七王女「あ」

ゴン

男子「あが!?」

バシャアア

水差しが男子の頭に落下して辺りを水浸しにした。

259 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:49:18.16 C4bpCJy50 232/838

○廊下

看護師「見舞いに来て怪我を増やさないでください もう!」

バタン

「着替えとシーツの交換かしばらくかかるな」

娘友「ねぇ売店でもいこっか」

第七王女「ほうなんぞあるかの」

「私もいくわ パパ何かいる?」

少年エルフ「ううん いらないよ」

「はーい」

娘達は売店に向かった。

260 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:50:43.19 C4bpCJy50 233/838



女騎士「しかしこのままだと男子君は次の旅は無理そうだな」

「まぁ そうだな」

少年エルフ「ねぇ女騎士さん オンナの人ってどんなものプレゼントされると嬉しい?」

女騎士「プレゼントか? 私か?」

「勘違いするなって 娘が来週誕生日なんだよ」

女騎士「勘違いなんてするか! まぁそうだな……心のこもった手作りの品とかかな」

「ふっるいし重いよそれは……今時そんなの」

女騎士「うるさいなぁ! お前だって……」

ガチャ

看護師「お静かに! どこだと思ってるんですか」

バタン

女騎士「すいません……」

261 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:52:58.54 C4bpCJy50 234/838


「……あーあ しかられたー」

女騎士「貴様はぁ……」

少年エルフ「落ち着いて今言われたばかりだよ……もう男もそんな言い方しないの」

「へーい」

女騎士「何度もすまない それにしても娘君は新春祭が誕生日か」

少年エルフ「うん 本当はわからないけどオババが決めたの おめでたい日にしようって」

「そういえばそうだったな」

ガチャ

看護師「終わりましたよ くれぐれもお静かにお願いします」

「娘達はまだか」

少年エルフ「先に入っていようよ」

262 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:55:33.45 C4bpCJy50 235/838

○男子の個室

ガチャ

少年エルフ「男子君大丈夫?」

男子「はい……あのエルフさん お願いがあります」

少年エルフ「何?」

男子「あの娘の誕生日なんですが今回はこの有様なので行けません すいません」

少年エルフ「そんなの気にしなくてもいいよ」

男子「代わりにプレゼントを渡して貰えませんか そこの引き出しに引換券があります」

女騎士「……(だいぶ前から用意してたのか真面目な子だ)」

「……(このマメさは誰に似たんだろうな)」

少年エルフ「これだね……ぬいぐるみかな? もうお店には届いてるの?」

男子「はい 店で受け取って当日に渡してください…… かさばるものでお手数ですが」

少年エルフ「これぐらいいいよ いつもありがとうね」

263 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:56:05.94 C4bpCJy50 236/838


ガヤガヤ

「娘たちが戻ってきたぞ」

男子「エルフさん 頼みますね」

少年エルフ「うん」

ガチャ

娘友「あ 終わってる」

第七王女「ただいまなのじゃ ここの売店はすごいのう色々あったのじゃ」

「はいパパお土産 男子も」

264 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:57:48.14 C4bpCJy50 237/838

○数十分後

娘達はすっかりおしゃべりに夢中になっている。

「よくもまぁ 長々と喋ることがあるもんだな」

少年エルフ「本当だね」

男子「あのエルフさん すいません」ボソボソ

少年エルフ「どうしたの?」

男子「その…… もよおして来たので看護師を それと娘達を……」

少年エルフ「ああ そうだね 丁度いいしそろそろ帰るよ」

「どうしたのパパ?」

少年エルフ「そろそろ戻ろうか 男子くんも疲れたようだし」

「あらそう」

娘友「そうね あんまり長居してもアレだし」

女騎士「王女も戻りますよ」

第七王女「仕方ないの 早く良くなるのじゃぞ」

男子「はい」

「その……明日までは王都にいるし ちょいちょい来るから そのなんだ……必要な物があれば言えよ」

男子「はい 父上」

265 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 20:59:21.18 C4bpCJy50 238/838

○廊下

少年エルフ「あ 娘は男と先にいってて看護師さんに挨拶しておくから」

「わかった頼む」

娘友「エルフさんは気が利くわね」

「そりゃパパですもの」

「なんだそれ」



少年エルフ「あ 看護師さん」

看護師「はい どうしました」

少年エルフ「あの男子くんが その……もよおして来たって」

看護師「わかりました直ぐ行きます」

タタタ バタン

看護師はシビンをもって部屋に入っていった。

少年エルフ「……(あの年頃でシビンは恥ずかしいだろうな)」

\はい下げますよ/ \すいません/

少年エルフ「……(さて戻ろ)」

\なに大きくしてるんですか/ \す すいません何か急に/

少年エルフ「……(えっと)」

\まったく入れずらいでしょうが/ \ちょっと!? そんな無理やり/

少年エルフ「……」

バリ―ン

\あ/ \ギャアアアア/

少年エルフは耳を塞いで足早に立ち去った。

266 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:03:39.46 C4bpCJy50 239/838

○更に翌日

少年エルフ「……(ようし 今日こそ)」

「パパ どこ行くの?」

少年エルフ「え!? ちょっとそこまでね」

「私も行くわ」

少年エルフ「ダメ 娘は待ってて 勉強もあるでしょ」

「ふーん」

少年エルフ「……(諦めてくれるかな)」ドキドキ

「プレゼント……」ボソ

少年エルフ「!?」ドキッ

「そっか……」

少年エルフ「うー(バレてるし~)」カアア

267 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:12:31.91 C4bpCJy50 240/838


「パパ…… 私は昨日買ってもらった分でいいのよ 本当に」

少年エルフ「そうだけど……その…… 男子くんに頼まれた分を取りにいくんだよ」

「あら……(ウソじゃ……ないわね) だったらいいけど」

少年エルフ「じゃあ行ってくるね 見に来ちゃダメだよ」

「はーい」

バタン

○大通り

テクテク

少年エルフ「……(確かにパンツは買ってあげたけど あれでいいのかな)」

テクテク

少年エルフ「……(でもやっぱりちゃんとプレゼントしたいなぁ でも一人であのお店は)」

テクテク

少年エルフ「……(とりあえず男子くんのプレゼントを受け取りにいかないと)」

268 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:14:10.06 C4bpCJy50 241/838

○ファンシーショップ

店員「こちらですどうぞ」

少年エルフ「ありがとう」

少年エルフは大きな包みを受け取る。

店員「こちらで以上ですか?」

少年エルフ「えっと……(この際 何かプレゼントになるような物ないかな)」

少年エルフは棚にあるソレを見つけた。

少年エルフ「あ」

――パンツよ

――これ素敵ね

――手作りの品とか

少年エルフ「コレ! これ下さい」

269 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:15:59.53 C4bpCJy50 242/838

○新春祭当日 王都の宿屋

娘の誕生日会が行われている。

娘友「おめでとう はいコレ」

娘友がプレゼントを渡す。

「ありがと こんなに盛大にされたわなんだか恥ずかしいわ」フフフ

娘友「ま 新春祭も兼ねてるからパーッとね」

第七王女「わらわからもおめでとうなのじゃ」

「ありがとう これはネコかしら?」

娘は渡された片手を上げた猫の置物を眺める。

第七王女「東洋のラッキーアイテムなのじゃ ご利益があるぞよ」

「そうなんだ でも当たり前のように来てるけど…… いいの? お城は?」

第七王女「どうせ三日はやってるんじゃ 今日ぐらい大丈夫じゃ」

「そういうものなの?」

270 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:17:32.04 C4bpCJy50 243/838


女騎士「ダメですよ プレゼントを渡しにきただけでしょ 王女」

第七王女「もー 女騎士も今日ぐらいハメを外したらどうじゃ」

女騎士「この後の行事くらい真面目にやってくださいよ 王女」

第七王女「むぅ~」

「いいのよ 来てくれただけで嬉しいわ」

第七王女「そうか ならよかったのじゃ」にぱー

「ふふ」

女騎士「いつもすまないな…… あと私からも 官製品ですまないが」

女騎士は王宮騎士の剣を渡した。

「これが王宮の…… ありがとう 使いやすそうね」

「やれやれ年頃のコにそんなの贈るなよ」

271 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:18:19.50 C4bpCJy50 244/838


女騎士「男! 貴様また来てたのか」

「まぁな 男子の事もあるからな ほら娘」

男は小奇麗な小箱を渡した。

「ありがと でもコレ……髪留め?」

「あぁ 娘はロングにしても似合うと思うぞ」

「それは男の好みでしょ まったく 一応もらっておくわ」

「あと男子からもあるんだ だよなエルフ」

少年エルフ「うん はいコレ男子くんから」

少年エルフは大きな包みを渡した。

「まったくあのバカは律儀なんだから それに何よコレ」

プレゼントはウサギのぬいぐるみだった。

「もう17だってのに ホント……センスないわねいつも」フフフ

少年エルフ「僕からも はい」

少年エルフもラッピングした紙袋を渡す。

272 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:21:55.77 C4bpCJy50 245/838


「パパ……今年はいいって言ったのに ありがとう」

少年エルフ「えへへ でも気に入ってくれるかな 自分で作ったから……」

ガサガサ

「あら これは手作りの……マフラー? じゃないわね」

娘は少年エルフのプレゼントを広げた。

「うお マジか」

女騎士「エルフ君が編んだのか!?」

娘友「あらー そうなっちゃった」

「これって……」

第七王女「ほう キレイな毛糸のパンツじゃのう」

娘は純白の毛糸のパンツを手に入れた。

273 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:23:34.82 C4bpCJy50 246/838


少年エルフ「や やっぱりヘンだったかな」

「そんなこと無いわ ありがとうパパ」フフフ

少年エルフ「ホント!? よかった」ニコニコ

娘友「でもこれすごいわね フリルみたいなのもついてる…… それに結構エロイ」

少年エルフ「え エロイってそれはその お店のを真似てつくったから その」アタフタ

「わかってるわパパ 友もヘンな言い方しないの」

第七王女「いいのう わしもそういうの欲しいのう エルフわらわには無いのか?」

女騎士「王女 そんなワガママいってもエルフ君が困るだけで……」

少年エルフ「ああ それなら練習につくったのがあるけど欲しい? ちょっとサイズが小さくなっちゃったんだ」

「え!?」

娘友「ちょっと!」

274 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:30:14.74 C4bpCJy50 247/838


少年エルフは一回り小さい毛糸のパンツを渡すと第七王女は服の上からそれを履いてみせた。

スパーン

第七王女「うむ ぴったりじゃ ありがとうエルフ 娘もこれでお揃いじゃな」ニコニコ

「……」

「うわちゃー」

女騎士「その…… なんだ…… 本当にすまない」

少年エルフ「ん? そうだ余った糸でみんなにもマフラー作ったからよかったら……」

「もうっ パパのバカっ!!」

少年エルフ「ええー!?」

「わかってないなエルフは……」

娘友「ちゃんちゃん」

275 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/03/26 21:31:36.23 C4bpCJy50 248/838

○後日

少年エルフ「うぅ……やっぱりパンツがいけなかったかな」ぐすぐす

「……いやお前 それ以前の問題だぞ」



娘友「あーらら でもそれどうするの履くの?」

「当たり前じゃない パパがくれたのよ」

娘友「でも毛パンになるなんてアタシも想像してなかったわ~」

「あらだったら何になる予定だったの?」

娘友「そりゃあエロエロのウッヒッヒなパンツにって…… ちょっとまって 何その手は」

「そりゃあ 誰かがパパに何か言わないとこうはならなでしょう? でしょ友?」

娘友「えーと そりゃ相談には乗ったけど決めたのはエルフさんだし」

「召使さんか誰かに尾行させてたでしょ」

娘友「えっとその……はい 痛くしないでね」

ガッ

娘のアイアンクローが娘友の頭を締め上げる。

\ギャアアアア/


278 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:20:37.92 RNa4UsCX0 249/838

#11 甦るキンパラ伝説 ~砂漠の遊球~

279 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:22:37.99 RNa4UsCX0 250/838

○砂漠の遺跡

砂嵐が吹きすさぶ砂漠の遺跡で調査員達が発掘を行っている。

ザッザッ ガチン!

調査員A「むっ…… これは? まさかこれが」

ピロリ―ン ピロピロピロ

調査員A「こいつ動くぞ!?」

謎の音と光の明滅が放たれる。

調査員B「なんの音ですかコレ!? ヤバいんじゃ……」

ジャラララ……

\うわーオタスケー/

調査員Bは逃げ出した。

調査員A「まったくあいつは それよりもこれが都を滅ぼした幻の」

ジャラララ ジャラララ

\なんだ!? うわああああ/

280 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:25:01.19 RNa4UsCX0 251/838

○王都新聞

『第七王女一行 温泉地で火山見物』 魔王調査隊こと第七王女とその愉快な仲間たちは温泉で有名な谷の国を遊行してきたもよう。 ちょうど数百年に一度の大噴火を見れたためか第七王女は実に満足した様子で先日凱旋された。

○王城・第七王女の部屋

バサッ

女騎士「また小さくなってますね」

第七王女「なんじゃとお! わらわ達があの火山爆発の危機を救ったのいうのになんじゃこの扱いわ!?」

第七王女は悔しさのあまり地団駄を踏む。

娘友「かなり詳細に書いたんだけどねー 信じてもらえなかったかな? 溶岩のバケモノなんて」

「そうね そんなの聞いたことないしにわかには信じてもらえないでしょうね」

第七王女「ぬうう……ぬ? なんじゃこの記事は?」

女騎士「こっちですか? えっと『幻の都の調査隊が行方不明。 一人戻ってきた調査員によると行方不明になる直前に謎の石版を発掘していたとのこと。 ヒドイ興奮状態のため真偽のほどは不明。 この調査隊には高名な学者が参加しており……』

第七王女「それじゃ!」

281 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:27:20.53 RNa4UsCX0 252/838


女騎士「え?」

第七王女「幻の都の謎を解くのじゃ」

「でもそれ魔王と関係あるの?」

第七王女「ある!」

少年エルフ「なんでわかるの?」

第七王女「カンじゃ!」

女騎士「あぁ もう またそういう思いつきで」

第七王女「しかし現に行方不明者がおるではないか おそらく魔物の仕業じゃ」

娘友「まー ないとは言い切れなわね」

第七王女「じゃろう? それに幻の都ならわらわも文献を読んだことはある 300年程まえに砂漠で滅びたという都じゃ……300年前なら魔王のいた時代じゃなんらかの関係があるのやもしれぬ」

女騎士「さすがにそれはこじつけでは…… 第一にどうやって砂漠までいくつもりですか?」

第七王女「それは……」

282 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:29:57.07 RNa4UsCX0 253/838

○王城・酒倉 ホワイトドラゴンの部屋

第七王女「と いうわけで調査員が消息をたった砂漠の遺跡に行きたいのじゃが乗せてっておくれ」

白竜「いーやーよ! 砂漠なんて紫外線だらけじゃない 絶対行かない」

「いうと思った」

少年エルフ「普通に行けないの?」

娘友「普通にいくとなったら大森林に山脈越えでしょ? 迂回してたら1ヵ月はかかるわね」

女騎士「そんな長期間の調査は兄王でも流石に許して貰えないな」

第七王女「お願いじゃー山を越えるところまででもいいからー」

第七王女がホワイトドラゴンの顔面にしがみついて頼み込む。

白竜「だーめ いくら王女の頼みでも砂漠は無理よ 最近は乾燥にも気を使ってるの 行くメリットが私にはないわ」

\たーのーむー/ \だーめーよー/

283 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:32:43.97 RNa4UsCX0 254/838


「無理そうね プランの練り直しが必要なんじゃない?」

娘友「フッ 仕方ないわね アタシにいい考えがあるわ」

少年エルフ「どうするの?」

娘友「乾燥にお悩みのようね それなら最近売り出したコレ知ってる?」

娘友は小さなカップを取り出す。

白竜「あら それは?」

娘友「最新の美容泥パックよ 使ってみる?」

白竜「本当? ちょっとつけてよ」

娘友「肌ケアと美白が出来て保湿成分もたっぷり お肌に必要な栄養も入ってるわ」ぬりぬり

娘友は説明しながら白竜の指先に泥パックを塗り広げる。

284 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:34:40.83 RNa4UsCX0 255/838


白竜「すごいじゃない これもケアメニューに入れなきゃ」

娘友「でもねーこれは原料がとっ……ても少なくて大量生産できないのよ」

白竜「そんな!?」

娘友「そうよねー でもその原料の泥っていうのは…… オアシスの泥なのよ」

白竜「オアシス…… 砂漠の?」

娘友「そうよ そろそろいいかな」ぺリぺリっ

娘友は泥パックをはがした。

白竜「……」

ホワイトドラゴンは指先で肌の感触を確かめる。

つやつやしっとり

白竜「……(いい)」

娘友「そこまでいったら泥パックし放題なんだけど まぁ白竜は砂漠とか行かないからムリよね~」

285 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:36:40.75 RNa4UsCX0 256/838

○夜間・大森林上空

びゅごおおおお

白竜「ま 夜明けまでに着けば問題はないわよね~」

一行を乗せた馬車を掴んだホワイトドラゴンが飛んでいる。 背中にも数名が乗っている。

○白竜の背中

第七王女「しかしこう暗くては景色が見えんのう」

「残念だな」

女騎士「見えん方がいいわい」ガタガタ

「お前 高いところダメなクセになんでここに居るんだ?」

女騎士「それは私は王女の近衛兵だからって どうして今回はお前が一緒なんだ!?」

286 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:38:30.68 RNa4UsCX0 257/838


「まぁ 男子は養生中だしなその代わりだ こないだ呼ばれたのはそのこともあったんだぞ」

第七王女「そうじゃったか しかし男といっしょは久しぶりじゃのう」

「そうだな 昔はよくこうして馬に乗せてたな…… それが今じゃドラゴンに乗ってるなんてな はっはっは」

第七王女「はっはっは そうじゃろうそうじゃろう」

女騎士「ぬぬぬ」

びゅおおお

グラッ

第七王女「ひゃっほー」

女騎士「きゃああああああああああ」

グギギギ

女騎士は男の首に抱き付くが強すぎて男の首が絞まる。

「ちょっ お前 首が」

白竜「ごっめーん ちょっとゆれたわ」

第七王女「かまわぬ それよりただ飛ぶのはツマランのじゃ 一回転とかできんのか?」

白竜「出来るわよ~ 挑戦する? 5連続とかバレルロールも出来るわよ」

女騎士「待て待て待て! やめろムリだお願いだからー!!」

ギュウウウ

「」ぱくぱく

287 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:40:13.52 RNa4UsCX0 258/838

○白竜が掴んでいる馬車の中

「上が騒がしいわねー」

少年エルフ「王女がまたワガママ言ったみたいだよ」

娘友「むしろ女騎士さんの叫びが聞こえたんだけど」

「もうすぐ夜明けね……」

地平線から太陽が昇ってくる。

少年エルフ「うわっ すごいキレイ」

娘友「ホント すごいわー」

白竜「もう日の出!? ちょっと飛ばすわよー」

少年エルフ「え ちょっと」

「つかまって!」

娘友「うほおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

白竜は急激に速度を上げて降下しはじめた。

\きゃあああああああああああああああああああああああああああ/

288 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:41:37.54 RNa4UsCX0 259/838

○オアシス

ざぶーん

ホワイトドラゴンはオアシスの泉に飛び込む。

白竜「じゃ この中にしばらくいるから 帰る時は言ってね」

白竜はオアシスの泉に潜っていった。

第七王女「最後はオモシロかったのう」

「そう言ってるのは王女くらいよ」

娘友「娘もしっかりしてるじゃない…… まったく」

少年エルフ「帰りは安全第一にしようよ」ガクガク

女騎士「まったくだ しぬかと思った」ガクガク

「それはこっちのセリフだ 絞め殺されるところだったぞ どこぞのゴリラに」

女騎士「貴様ァッ! 誰がゴリラだ!! くっ 腰が……ぬけた」ガクガクブルブル

289 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:42:57.58 RNa4UsCX0 260/838


「……すまん 生まれたてのゴリラだったか ぶふっ」

女騎士「このっ!」

ブオン!

女騎士は手近にあった樽を投げつけた。

「ぐげっ」

ドボーン

女騎士が投げつけた樽は油断した男を泉にぶち込んだ。

「ぶわあああああ がばっ お前俺が ごぼごぼ 泳げな ゲボゲボ 知って ブクブク」

女騎士「しばらくそうしていろ」

第七王女「まぁ ぬけた腰が戻るまでじゃな」

女騎士「王女!」カアア

第七王女「かっかっか」

290 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:44:19.18 RNa4UsCX0 261/838


少年エルフ「もう 男はいつまでたっても子供なんだから」

「……」

妙な沈黙が流れる。

少年エルフ「なに? ヘンなこといった?」

第七王女「なんでもないのじゃ 気にするでない」

少年エルフ「なに? なんなの?」

「それでここからどうするの? 馬車で来たけど馬はいないわよ?」

娘友「馬車はここに置いておくわ ここからはキャラバンよ」

少年エルフ「キャラバン?」

娘友「砂漠の隊商よ 紹介状があるから同行させてもらえるはずよ」

第七王女「こんな異国までに知り合いがいるのか? 友は本当に顔が広いのう」

娘友「ま 親父のツテだけどね 『立ってる物は親でも使え』っていうのよ」

291 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:45:26.98 RNa4UsCX0 262/838

○砂漠の遺跡

第七王女「あっついし 何もないのう」

娘友「ほんとー 砂ばっかりだし どこに何があるのよ」

「うーむ 調査員って単純に遭難しただけなんじゃないか?」

女騎士「……ありうるな」

「パパは何か感じる?」

少年エルフ「うん……なんだろ? このへんかな?」

少年エルフはそう言いつつ辺りの砂を掘る。

サッサッ

第七王女「何かあるのか?」

少年エルフ「なんていうのか…… 何かあったような感じはあるっていうのか 何だろコレ?」

292 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:46:51.67 RNa4UsCX0 263/838

少年エルフは砂の中から小さな銀玉を見つけた。

娘友「なにこれ? 真珠じゃなさそうね」

少年エルフ「ただの金属の玉みたいなんだけど 微かに魔力を感じるよ」

「……本当ね 何かの部品かしら?」

女騎士「これだけでは何があったのかはわからないな」

「仕方ないな 暗くなって来たしそろそろ宿営の準備をするか」

少年エルフ「どうして? あっちに町があるでしょ?」

「おいおいエルフ こんな砂漠の真ん中に町なんてあるわけないだろ」

少年エルフ「だって音がするし ほら明かりも」

少年エルフが指さす方には夕闇の向こうにいくつもの明かりが見えた。

第七王女「なんじゃ? どういうことじゃ」

娘友「うーん もしかしたら……」

293 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:47:57.16 RNa4UsCX0 264/838

○砂漠の市場

「ここは」

娘友「砂漠の市場ねバザールでござーる」

少年エルフ「すごーい店がいっぱいある」

第七王女「おおお 色々珍しいものもあるのう なんじゃこれは」

女騎士「ちょっと! 勝手にウロウロしないでくださいよ」

「こんな所で市場があるとはラッキーだなしばらくはここに滞在できるぞ」

娘友「そうね アタシが手続きしてくるわ」

女騎士「私も行こう 王女を頼むぞ」

「まかせろ」

娘友と女騎士は市場の関係者を探しにいった。

294 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:50:17.63 RNa4UsCX0 265/838

少年エルフ「人もいっぱいだね ここなら何か情報があるかも」

「そうね でもパパ気をつけてよ ここは抜け目ない商売人ばかりなんだからエルフ族ってばれないようにしてね」

少年エルフ「もう わかってるよ」

「そうだな バレたら耳をちょん切られるぞ エルフ族の耳は高値で売れるらしいじゃないか」

少年エルフ「ちょっとコワイ事言わないでよ」プルプル

「エルフ族は貴重だからな耳どころが人さらいにさらわれてもの好きに売ら」

「男いい加減にして ”帯電”」

バリバリバリ

「はばぁ!?」

娘の電撃魔法で男は感電した。

「パパを怖がらせないでよ」

「ったー スマンスマン でも実際そんなことがあってもおかしくないから気をつけろよ」

少年エルフ「わかった」ぎゅ

少年エルフは帽子を深くかぶり直して耳を隠す。

295 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/09 16:51:39.40 RNa4UsCX0 266/838


第七王女「のう あの大きなテントはなんじゃ?」

「あれは? サーカスか何かかな?」

少年エルフ「サーカス! すごい見たい」

第七王女「わらわもじゃ!」

娘友「残念だけどあれはサーカスがじゃないわ」

娘友たちが手続きを終えて戻ってきた。

少年エルフ「え~」

「じゃあ何なの?」

女騎士「あれは移動カジノだそうだ」

第七王女「カジノ!!」

「本当か!!」


298 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 22:18:34.16 gCXOCJVJ0 267/838

#12 旧知との遭遇

299 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 22:27:40.12 gCXOCJVJ0 268/838

○カジノ

第七王女「カジノじゃー」

女騎士「走らないでください」

少年エルフ「ここがカジノ?」

「その割には……」

娘友「全然人がいないわね」

店内は客もまばらで活気がない。

「なぁ 兄ちゃんどうなってるんだ?」

店員「今はあちらのコーナーが流行りです こっちはさっぱりでさ」

「みんなあっちに行ってるのか?」

店員「はい 古代遺跡から発掘されたという伝説のゲームだそうで」

少年エルフ「発掘されたゲーム?」

「まさか そういう売り文句なんだろう」

店員「まぁ 本当かどうかわかりませんが今の技術では作れないマシンだそうです 古代人かドワーフが作ったとかなんとか」

娘友「ホントかしら?」

「見ればわかるわ」

「行ってみるか」

300 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 22:44:10.42 gCXOCJVJ0 269/838



ジャラララ ピーン ピロピロピロピロ

「はー」

少年エルフ「っー ナニコレ凄いうるさい」

少年エルフは耳を抑えて顔をしかめている。

娘友「これがスロット? ピンボールとスロットが合体してるじゃない!? なんて斬新な」

第七王女「これが発掘されたゲームなんじゃな」

「王女もきたのか」

第七王女「人がおらんとツマランのじゃ」

「だよな」

女騎士「しかしこれがカジノか?」

ピロピロピロピロ ジャジャーン オオアタリ― ヤッタネ

\よっしゃあああ/ \43番台のお客様スタートです/ \あーちくしょう/

ずらりと並んだ古代マシンと人の列の中は大音量の機械音と歓声や罵倒を絶えず流し続けている。

「こんな所いられないわ 出ましょうよ」

娘は少年エルフの耳を抑えながら言う。

???「おやおや 慣れれば大丈夫ですし面白いのは補償しますよ」

女騎士「あなたは?」

支配人「わたしはこの古代スロットの支配人です」

301 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 22:47:01.31 gCXOCJVJ0 270/838



支配人「この古代スロットはパチンコスロットというマシンでして私が遺跡から掘り出しました。 言葉どおりの掘り出し物でしたよ ほっほっほ」

女騎士「掘り出した? 貴方が?」

支配人「ええ 私は以前学者でしてね これを見つけたときにこの仕事に転職しました」

女騎士「では行方不明の発掘員というのは貴方では?」

支配人「おや? そんなことになってますか? 後で連絡をしないといけませんかね」

「なぜ急にカジノの仕事を?」

支配人「そりゃあこのマシンを有効利用するためですよ」

「このゲームはどうやって遊ぶんだ?」

支配人「お教えしますよ こちらにゴールドを入れると玉を借りられますのでこれを弾いて途中のゲートに入れて下さい」

第七王女「こうじゃな」ピロリ―ン

302 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 22:50:52.00 gCXOCJVJ0 271/838


女騎士「ちょっと王女」

第七王女「少しくらいいいじゃろ? のう男」

「仕方ないな 大目にみてやれよ」

女騎士「少しだけですよ」

第七王女はパチスロをプレイしはじめた。

ピーン ジャラララ ポポーン

第七王女「おお スロットがまわったのじゃ」

支配人「はい 真ん中のゲートに玉が入るとスロットの抽選が始まりますあとは普通のスロットと大体同じですが奇数になると確変といって連続で当たりがでますよ」

娘友「そんなんじゃPB率高くならないの?」

支配人「それはどうでしょうね 台によって確立は違いますし釘…… この盤面の突起ですがこれの角度もそれぞれ違いますので」

「ふーん でもこれって楽しいの?」

支配人「そりゃあ当たった時の爽快感が魅力ですよ ぜひ体験してみてください」

第七王女「よーし あててやるのじゃ…… ありゃ玉が無くなったのじゃ」

女騎士「はい おしまいですよ」

303 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 22:55:56.74 gCXOCJVJ0 272/838


第七王女「女騎士― 当てるまでじゃー」

女騎士「そんないつまでかかるかわかりません ダメです」

第七王女「男ー」

「んー じゃあこれを使い切ったら終わりにするんだぞ」

男は第七王女にいくらか渡した。

女騎士「こら 貴様がそうやって王女を甘やかすからわがままになったんじゃないか?」

「だからといって何もかもダメにしていいってもんなじゃないだろう 加減ってものが……」

\アーダコーダ/

娘友「あらーなんだが夫婦ケンカみたいねぇ」

女騎士「ふ!? ふぅうふ!!」カアアア

「おいおい 勘弁してくれどうしてこんな前世がゴリラみたいなや」

女騎士「貴様ぁ!!」

ドゴォン

304 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 23:03:36.56 gCXOCJVJ0 273/838


「ウボァッ!」

女騎士の右ストレートが男の顔面をとらえた。

女騎士「不愉快だ! しばらく王女を任せたぞ」スタスタスタ

女騎士は歩いていってしまった。

娘友「あちゃー 男さん大丈夫?」

「あたた 効いたなぁ エルフ回復魔法をって エルフはどこいった?」

娘友「娘とどっかいったわ」

「そうか 仕方ない耐えるか」

\アッタリ― ヤッタァ/

第七王女「おおおおおおおおお やったのじゃ 大当りじゃ!」

ジャラジャラ

娘友「当たったの? スゴイじゃない!」

305 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 23:06:42.34 gCXOCJVJ0 274/838

○別の列 娘と少年エルフ

「エルフ大丈夫?」

少年エルフ「うん だいぶ慣れてきたよ」

「この辺りは空いてるわね」

娘と少年エルフは空いている席に座る。

少年エルフ「ふーんこれが古代スロットかぁ」

少年エルフはパチスロをしげしげと眺める。

「これが発掘品なら 今回はただの観光になりそうね」

少年エルフ「うーん でもこれ機械と魔力の半々で動いてるね こんな複雑な構成初めてみるよ」

「そうなんだ ヘンな感じはしないの?」 

少年エルフ「……あるようなないような ヘンな音はしてるけど」

「音? イヤな感じはしない?」

少年エルフ「……ないと思う」

「じゃあ本当にただのゲームなのかしら」

306 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 23:07:49.31 gCXOCJVJ0 275/838


少年エルフ「そういえば拾った玉ってここの玉だよねぇ」

少年エルフは拾った銀玉を取り出した。

「やってみる? ここに入れるみたいよ」

少年エルフ「こうかな えい」ピーン

ピロン ピロピロピロ

少年エルフ「あ はいった」

「そうね」

ピコーン ジャジャジャジャーン

\オオアタリー ヤッタネ/

少年エルフ「え?」

「あら当たったみたいね」

ジャラジャラジャラ

少年エルフ「うわわわ」

店員「おめでとうございます 95番台のお客様スタートです」

少年エルフ「え?え?」

307 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 23:08:51.04 gCXOCJVJ0 276/838


オッサン「すげーな ボーズ」

オバチャン「やるじゃない」

ガヤガヤガヤ

周りに人垣ができる。

「ちょっと 何よ?」

少年エルフ「え?え? あの……どうぞ」

少年エルフは逃げ出した。

オッサン「いいのか!? おおおお」

オバチャン「ちょっとアタシにかわったのよおおお」

ドヤドヤ

当たり台の取り合いがはじまった。

少年エルフ「うわー悪い事したかな?」

「いいんじゃない そろそろ王女たちの所へ戻りましょ」

少年エルフ「そうだね」

308 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 23:16:07.74 gCXOCJVJ0 277/838

○第七王女たちが遊んでいる列

第七王女「なんで出ないのじゃー」ドンドン

\台をたたかないでください/

「ほら 機械にも怒られてるぞやめるぞ王女」

ピロピロピロ……ピロン

娘友「ああ~~外れた~ くっそー」

「友までやってるの?」

娘と少年エルフが戻ってきた。

娘友「娘 いいところにちょっと貸」「ダメ」

娘友「ここまでやって負けらんないのよ~」

少年エルフ「もう二人とも止めておいたら?」

「あれ 女騎士は一緒じゃないのか?」

「あら 居ないの?」

「そうだが…… エルフ少しいいか?」

少年エルフ「いいよ ちゃんと謝っておいで」

「うーむ できたらな」

309 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 23:19:58.91 gCXOCJVJ0 278/838

○数分前 別の列

女騎士「まったく……男はいつもいつも」ブツブツ

女騎士は王女たちとは別の台の通路を歩いている。

女騎士「王女も第二王女や第三王子と居た時は素直だったのにアイツのせいで……」ブツブツ

ピーンピロピロピロン

第三王子「……あぁ またダメか」

女騎士「せめて旅に出た第三王子が戻って下されば……って 第三王子!?!?」

第三王子「……あれ女騎士かい? どうしたのこんな所で」

女騎士「どうしたもなにも 第三王子こそ何してるんですかこんな所で!?」

女騎士は放浪の第三王子を見つけた。

第三王子「うーんなんていうか なんだろうねぇ」

女騎士「でも見つかってよかった王国に帰りましょう 第七王女と一緒に」

第三王子「ナナちゃんも来てるのかい? そうかー 困ったなぁ」

「どうした知り合いか?」

男がやってきた。

310 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 23:22:41.71 gCXOCJVJ0 279/838


「第三王子!?」

第三王子「男もきてたんだ」

「久しぶりじゃないか 王国には戻らないのか?」

第三王子「うーん そろそろ顔をだしたいとは思うんだけどねぇ」

「どうした? 何か問題か?」

第三王子「そうだね~ お金貸してくれない?」


311 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/16 23:26:05.53 gCXOCJVJ0 280/838


女騎士「借金!?」

「500万もか?」

第三王子「うーんそういうことになってるみたい」

女騎士「そんな金額いったいどうやって?」

「酒を飲みながらカジノで遊んだんじゃないか?」

第三王子「なんで分かったの? 男はすごいね」

「マジか…… 困ったな」

第三王子「でしょう」

女騎士「それなら王国に連絡して……」

「やめろ 兄王が本気で第三と縁をきっちまうぞ」

女騎士「う……」

第三王子「だよねぇ…… それでここで働いてるんだけど金額が金額だからね」

「それでスロットで当てて返そうってか」

第三王子「そう! だけどそれが上手くいかないんだコレが」

「だろうな……しかしそんな大金本当にどうしたら」

女騎士「……わかりました 私にお任せください」

第三王子「ホント? 助けてくれるの」

「おい どうするつもりだ?」


314 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:02:27.92 DErFfb7H0 281/838

#13 貯金よさらば

315 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:05:06.46 DErFfb7H0 282/838

○翌日・娘達のテント

女騎士「済まない…… 支度金を使いこんでしまった」

女騎士が真っ青になって報告をした。

娘友「ええ! 女騎士さんも!?」

「『も』ってお前達まさか……」

第七王女「わらわもじゃ」

「オイオイオイ じゃあ今いくらあるんだ」

娘友「ハーイ アタシもスッカンピンですー」

「明るくいわないでよ 私とパパは使ってないわ」

「俺もいくらかあるが…… 女騎士の支度金が大半だったよな 厳しいよな」

女騎士「うぅ すまない……」

316 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:07:49.28 DErFfb7H0 283/838


少年エルフ「終わったことだし仕方ないよ それより女騎士さん鎧はどうしたの?」

女騎士「はう」

第七王女「そういえば剣もないのう どうしたのじゃ?」

女騎士「ぎゃふ」

「……質に入れたんだ 表ざたになるとマズイから他に言うなよ」

「現役の近衛兵がカジノで使い込みの上に装備を担保にしていたなんて……」

娘友「バレたら大問題ね」

女騎士「」ぱくぱく

「おいおいそんなにいじめるな 無駄に真面目だからな 大丈夫か女騎士?」

女騎士「ぉ……ぉぅ」

317 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:10:09.39 DErFfb7H0 284/838


「で どうして女騎士さんがそこまで負けこんだの? 訳があるでしょ」

「……言わないでおこうとも思ったが仕方ない おーい王子」

第三王子「やっぱ言わなきゃだめか~」

第三王子があらわれた。

第七王女「三兄ぃ! 三兄ぃなのじゃ!」

ダダダ ガシッ!

第七王女は第三王子に飛びつく。

第三王子「あっはっは 七ちゃん久しぶり~大きくなったねぇ」

少年エルフ「王子って王女のお兄さんなの?」

娘友「第三王子ってあの第三王子!?」

「そうだな 各国を遊学中の第三王子だ」

第三王子「はっはっは 遊学だなんて 兄貴とケンカしてそのまま出てきただけだよ」

少年エルフ「そうなの?」

「とにかく王家で一番フリーダムな方だ」

第三王子「そんなに褒めないでよ 照れる」

女騎士「褒めてません」

318 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:13:34.31 DErFfb7H0 285/838



男と第三王子はいきさつを説明した。

「というわけで王子には借金がある」

第三王子「それを返し終わらないと市場から離れられないんだよね~」

第七王女「よーし みんな三兄ぃを救い出すのじゃ」

「とはいっても」

娘友「お金絡みだし いつものように魔法でドーンとはいかないわよねぇ」

「だよなぁ」

少年エルフ「具体的にどうするの? お城にバレずに500万なんて大金どうやって」

「「「うーん」」」

娘友「お困りのようね皆さん」

「友?」

「何か方法があるのか?」

娘友「こういう格言を知ってる『目には目を歯には歯を』」

319 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:15:32.46 DErFfb7H0 286/838


少年エルフ「えっと?」

娘友「やられたら同じモノでやりかえすってことよ」ボソ

少年エルフ「そうなんだ」

女騎士「しかし今回の事ではそれは……」

娘友「そうよギャンブルにはギャンブルで……あのパチスロを完全攻略してやろうじゃない!」

第七王女「おお! そうじゃ攻略してやるのじゃ 負けっぱなしでは気がスマンのじゃ!」

女騎士「そうか! よーしやるぞ!! 剣を取り返すぞ!」

「「おおー」」

第三王子「うわー 頼もしなぁ」

少年エルフ「……これでいいの?」

「攻略って簡単にいうけど そんなの出来るものなの?」

「……ワカラン」

320 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:16:53.74 DErFfb7H0 287/838

○三日後

娘友「今日は5万勝ったわよー」

第七王女「やったのじゃー」

「少し勝率があがったな」

女騎士「友君が常連から打ち方を教わったらしい」

少年エルフ「へー やり方があるんだ」

――貯金15万G

321 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:18:48.64 DErFfb7H0 288/838

○一週間後

「9万近く負けたぁ!?」

女騎士「うう 面目ない……」

少年エルフ「えー 攻略法を見つけたんじゃなかったの?」

娘友「……ただ効率よく打つだけじゃダメね 台の見極めが出来ないと」

第七王女「まだまだ修練が必要ということじゃな」

「しかしこの分だと稼がないとやっていけないぞ」

少年エルフ「うーん 明日からどこかのお店で働こうか?」

第三王子「だったらウチの店なら紹介できるよ 僕も働いてるし」

「仕方ないわね 私とパパで働くわ」

「俺も何か出来る仕事を探すわ」

第七王女「ぬう スマンのう……必ずや攻略法を見つけるからの」

――貯金2万G

322 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:20:32.31 DErFfb7H0 289/838

○10日後

女騎士「やったー大勝利よー」

第七王女「安売りしてるから買い物にいこうぞ」

第三王子「行こう行こう!」

「コラコラコラ 勝ってるからって無駄使いするんじゃない」

女騎士「いいじゃないかたまには息抜きも必要だ」

「どうした女騎士まで!? 最近おかしくないか?」

女騎士「フフフ そうか? まぁ私も新境地に達したということだ」

「どんな境地だよ まったくまだまだ400万近く必要なんだぞ」

第三王子「いいじゃん 明日また勝てばいいんだから 順調順調」

娘友「そうよ だから今日は買い物よー」

第七王女「おおー」

女騎士たちは買い物へ出かけていった。

少年エルフ「あーあ いいの?」

「一体どうしたんだアイツら」

「王女や友はとにかく 女騎士さんは異常ね…… やっぱり何かあるわね」

少年エルフ「そうだとしたらどうするの?」

「しかしなぁ 貯蓄は順調だし…… まだ様子をみるか」

「男がそういうなら」

――貯金89万G

323 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:22:13.90 DErFfb7H0 290/838

○2週間後

女騎士「うああーよこせー! 今日こそ勝つんだー!」

「バカ野郎 これは晩飯代だろうが」

女騎士が男にすがりついている。

娘友「うわーヒドイことになったわね」

第七王女「負けこんだからのう」

第三王子「いやー 困ったねぇ」

「アナタ達ねぇ…… まったく」

少年エルフ「それにしても女騎士さんがやっぱりヘンだよね」

娘友「依存? マジメな人ほどなるんだっけ?」

「とにかく落ち着け! 娘なんとかしてくれー」

「仕方ない…… ”睡眠”」

ポワン

女騎士「次は勝て……りゅ……」スピースピー

女騎士は眠ってしまった。

「まったく」

――貯金160G

324 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:23:28.78 DErFfb7H0 291/838



「すまん助かった」

女騎士を寝床に寝かした男が戻ってきた。

少年エルフ「あの真面目な女騎士さんが……ギャンブルってコワイね」

「それでどうするの? このまま続けるの?」

「うーむ 考え直した方がいいな」

第七王女「考え直すとしてもどうやってじゃ? 兄上に頼るのか?」

第三王子「え~」

娘友「それにもうすぐ市場の移動が始まるわよ カジノもそれに合わせて最後のイベントやるらしいし」

少年エルフ「イベントって?」

娘友「パチスロ王決定戦よ」

少年エルフ「パチスロ王?」

第三王子「制限時間内で出玉勝負をするんだよ」

325 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:24:32.48 DErFfb7H0 292/838


第七王女「優勝賞金として100万Gあるのじゃ」

「それでも500万には足らないぞ」

第七王女「だったら400万分打ち勝てばいいんじゃ」

「そんな都合よく勝てる見込みがないのはこないだ負けたのでわかってるだろ」

第七王女「むうう」

「第一に参加するにも元手がないじゃないかどうするんだ」

娘友「じゃあさ この無駄に買ったアイテムの数々を売っぱらいましょ」

「やっと片付ける気になったのねソレ」

娘友「よく考えたらいらないし てへぺろ」

「元手はそれでいいとして…… バックアップが必要だな」

少年エルフ「負けたら王子さんも連れてかれちゃうしね」

326 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/23 23:26:35.96 DErFfb7H0 293/838



「ねぇパパ 私たちも今から行ってみない?」

少年エルフ「僕が?」

「娘も挑戦するのか?」

「いえ…… それより確認したいことがあるの パパとね」

「そうかお前達なら大丈夫だろうし…… エルフも何か異変に気付くかも知れないな 頼んだ」

娘友「じゃあアタシは売ってくるついでに何か情報ないか調べるわ」

「おう」

第三王子「僕らはどうしよっか」

第七王女「三兄ぃわらわ達も調べに行かぬか わらわなりの方法で」

第三王子「そうだねぇ 怪しいかなーと思ってたところもあるし 行ってみようか」

「王子何するつもりだ? 無茶はしないよな」

第三王子「しないよ~ 七ちゃんとちょ~っと見て回ってくるだけだよ」

「……わかった じゃあ俺は」

少年エルフ「女騎士さんを見ててね」

「……そうかそうなるか」

「そうよ じゃ準備が出来たら行きましょ」


329 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:40:18.57 1f0vPP/w0 294/838

#14 そして無一文へ

330 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:41:27.36 1f0vPP/w0 295/838

○夜・カジノ

ジャラジャラジャラ

少年エルフ「こんな時間なのに人が結構いるね……」

\ううー あうー/

店内の客は生気なく銀玉を弾いている。

「女騎士も最近はこんな感じよね」

少年エルフ「そうなの?」

「少し前に迎えに行った時にこんな感じでやってたわ」

少年エルフ「そうなんだ……なんていうか楽しいのかな あれで?」

「そうは見えないわね」

ピロピロピロピロ―ン

ジャラジャラジャラ

「ぐふっぐふふふ」

少年エルフ達は当たり台の客の前まできた

331 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:42:39.71 1f0vPP/w0 296/838


「ここは当たってるわね」

少年エルフ「……なんだか怖いんだけど」

「ねぇエルフ……ボソボソ」

少年エルフ「え? まぁやって見るけど……」

少年エルフは当たり台に近づく。

娘友「何かあった? 娘」

娘友がやってきた。

「友 もう売って来たの? 早かったわね」

娘友「まぁ若干買いたたかれたけどね…… それで情報を仕入れてきたけどやっぱりここ変だわ」ボソボソ

「というと?」

娘友「ここ数日ほとんどの客が負けっぱなしなのよ それなのに客足は増えてるの」

「それはギャンブル依存なんじゃないの?」

娘友「それともう一つはアレよ」

332 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:43:54.33 1f0vPP/w0 297/838

娘友が指さすホールの中央にはクリスタル制の透明な箱が設置され、警備兵が四方を固めている。 箱の中には金貨が大量に積みあがっているのが見えた。

「なにあれ 金庫?」

娘友「このパチスロの売り上げは全部あそこに転送される仕組みだって 数日前からあんな風に設置されてるとか」

「趣味わるいわね」

娘友「まぁ派手だし客の射幸心を煽ってるらしいわ」

「それにしてもスゴイ量ね」

娘友「それよ なんでも他のカジノがどんどん店を畳んでるんだって」

「他のカジノが?」

娘友「ここに客を全部取られてるから……とも考えられるけど 他のカジノの従業員までこのパチスロをプレイしにくるんだって」

「……異常なまでの人気なのね」

娘友「人気だけならいいけど 破産する人も出てきたし市場のほとんどの人が働かずにここに通ってるって」

「まってまって それじゃあこのカジノに市場の人やお金が集まっての?」

娘友「そ あの金庫にね」

「それであんなに……」

333 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:44:53.00 1f0vPP/w0 298/838

少年エルフ「友ちゃんも来たの?」

少年エルフが戻ってきた。

娘友「ええ ところで娘もエルフさんもやらないの?」

少年エルフ「うーん どうしよ」

「友やるの?」

娘友「まぁちょっとだけね」

「ちょっとねぇ……(友も若干依存なのかしら)」

娘友「じゃあこの台で……」

「まって友」

娘友「ん? 何?」

「エルフ どう?」ボソボソ

少年エルフ「んー あれかな」ボソボソ

娘友「なになに?」

「ねえ友」

334 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:45:48.03 1f0vPP/w0 299/838



ピロピロピロ―ン

娘友「よっしゃー確変きたああああ」

「まったく……元気ねぇ」

少年エルフ「そろそろ戻らないと」

支配人「おやおや アナタ達はやらないのですか?」

少年エルフ「ヒャ!?」ビクッ

支配人があらわれた。

「あら支配人さん 私達はオババ……保護者から賭け事はするなって厳しく言われていたので」

支配人「そうですか ですがたまにはいいものですよ」

「でもそろそろ閉店なんじゃないですか?」

335 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:46:31.12 1f0vPP/w0 300/838

支配人「そうなんです…… なのでお客さま 確変のところ申し訳ありませんが……」

娘友「ええ!? まだこれからなのよ! 最後までいいじゃない」

支配人「しかし規則ですのでこれ以上は……ねぇ」

支配人は手を娘友にかざした。

ホワワワ

「!?……ッ (今なにか妙な気配が)」

少年エルフ「!!」ブルブル

娘友「うぁ~ そうね仕方ないわね」

娘友は手を止めて玉箱をもってカウンターへ歩いていく、どことなくうつろである。

「……(友があんなにすんなりと……妙ね)」

支配人「それでは本日はこれまでですので」

336 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:47:03.65 1f0vPP/w0 301/838


「そうね 帰りましょエルフ……? エルフ?」

少年エルフは真っ青になっている。

少年エルフ「え!? あぁうん帰ろっか」

少年エルフは娘をひっぱって走りだす。

「ちょっと?」

タタタ

337 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:48:02.80 1f0vPP/w0 302/838

○少年エルフ達のテント

「支配人が魔物!?」

少年エルフ「最初あった時には感じなかったんだけど…… 魔物みたいな魔力を感じたんだ」

「魔物がなりすましているのか魔物に憑りつかれているのかどっちかか」

少年エルフ「たぶん憑りついてるかな? 体は人間みたいだったし」

「友はさっきなにかされてたけど大丈夫なの?」

娘友「さっき? ん~よくわからないわ」

「大丈夫みたいだけど もう友はアレをやらない方がいいかもしれないわね」

娘友「えーそんな」

「そうだな それにしても支配人が憑りつかれているとなると王子達は大丈夫かな?」

少年エルフ「王女たちまだ戻ってないの? 何処に行ってるの?」

「お前達と同じくカジノさ」

少年エルフ「でもいなかったよ?」

「まぁいうなればカジノの裏だな」

少年エルフ「それって……」

338 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:49:05.92 1f0vPP/w0 303/838

○閉店後のカジノ

支配人「では保管庫に戻しておきなさい 私は少し出ます」

警護兵「了解です」

ガラガラガラ

支配人と警備兵が金庫を動かして出て行った。

ゴトッ

第七王女「よーしいったの」

第三王子「暗いから気をつけるんだよ」

シュタ

天井裏から第三王子と第七王女が降り立った。

第七王女「潜入成功じゃな」

339 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:49:42.56 1f0vPP/w0 304/838


第三王子「ふふっ 昔もこんな風だったねぇ」

第七王女「そうじゃのう三兄ぃ よく一緒に城を抜け出したのう」

第三王子「七ちゃんがここまで出来るようになるなんて思ってなかったけど」

第七王女「それは三兄ぃの教え方がよかったのじゃよ」

第三王子「教えていたわけじゃないけど…… まあいいか」

第七王女「にしてもあの金庫は移動式じゃったんじゃな」

第三王子「そうだね どこに行ったのか見に行こうか」

340 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:50:13.44 1f0vPP/w0 305/838

○カジノ裏 保管庫テント

カジノから出た別のテントに金庫の保管庫が設置されており見張りが立っている。

第七王女「ひいふうみい……四人も見張りがおるのう」

第三王子「見張りが多いのは単純だけど効果的な措置だね あれじゃあ近寄れないや」

第七王女「ふーむ ならば次は支配人を調べるのじゃ」

341 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:50:59.33 1f0vPP/w0 306/838

○支配人の部屋

第三王子「誰も居ないね どこ行ったんだろ」

第七王女「むしろチャンスじゃ 悪事の証拠を探すのじゃ」

第三王子「別に悪事をしてるって決まったわけじゃ」

第七王女「あんなに金をため込んでおるのは悪事をしておるに決まっておる 時代劇ではだいたいそうじゃ」

第三王子「時代劇って…… 今は現代だよ七ちゃん」

第七王女「時代は続いておるのじゃ…… とこれは帳簿ではないな日記かの?」

第三王子「んー日記というより調査記録だね」

第七王女達は古代遺跡の調査記録を手に入れた。

342 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:52:02.84 1f0vPP/w0 307/838

○古代遺跡の調査記録

XX月X日
 ついに現地に到着した。 すぐに調査をして発掘箇所を選定せねば、幻の都の痕跡がこの砂の下にあると思うと興奮して疲れなど気にしていられない。

XX月△日
 発掘をすすめる、遺物がぞくぞくと出てくるが目当ての物が出てこない……都を堕落させて滅亡に追い込んだという遊戯板だ。 遊戯で町が滅ぶなど突飛な話に聞こえるだろうが数々の文献が残っている。 実物を発見して証明したい。

XX月□日
 とうとう発見した古代の遊戯板だ、なんと30枚も見つけたがまだまだ埋まっている。
 なぜか助手がいなくなってしまったので作業には時間がかかる。 そういえば今朝の記憶があいまいだが何をしていたのだろう? そんなことより早くこの遊戯板を全部掘り出さねば。

○○月XX日
 おかしい最近の記憶が途切れている。 私はいつカジノに来たんだ? ここで何を? あの音は一体なんだ? 動いているのか?

■■■■

う■さい■■んだこの音は これはわた■■(これ以上は判別できない)

343 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:53:16.21 1f0vPP/w0 308/838

○少年エルフ達のテント

第七王女「ということらしいのじゃ」

「これは支配人さんの最後の記録ね」

「この日付だと俺たちが初めて会った時にはもう憑りつかれていたようだな」

第三王子「へー あのオジサン魔物だったの? なんだか急にカジノに来たと思ったらアレヨアレヨと支配人になってたけど」

「王子 支配人がカジノに来た時を知ってるのか?」

第三王子「知ってるよその頃にはすでに借金あったから」

「まったく…… それでどんな様子だった?」

第三王子「スゴクお金が必要だってことであの古代スロットを売り込みにきて自分も雇ってくれって来たんだ。 オーナー達はためしに遊んだらすぐにのめりこんでたよ」

娘友「それであの地位に上り詰めたのね この短期間に」

第七王女「そんなにも人を虜にするとは 魔性のゲームじゃのう」

344 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:54:03.18 1f0vPP/w0 309/838

「魔物に魔性のゲーム それにしても目的は何かしら? 人をギャンブル中毒にすること?」

「ギャンブル中毒に? それで何の得があるんだ?」

娘友「お金を巻き上げてはいるみたいだけど」

「お金稼ぎする魔物…… 魔物がねぇ?」

「うーむ」

少年エルフ「……ねぇ友ちゃんはさっきさ途中で止められちゃったけど それはどうして?」

娘友「さっき? それは……閉店だったし」

「でも普段ならあんな簡単に諦めないわよね? 大当りの最中だったのに」

娘友「そうね あんなチャンスだったのに…… なんだか急にやる気がなくなったというか」

少年エルフ「”欲しくなくなった”んじゃない?」

娘友「そうね……そうかも でもなんで」

少年エルフ「『欲』だよ 『欲』を取られたんだよ」

345 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:55:11.96 1f0vPP/w0 310/838



「支配人に憑いてる魔物は『欲』を吸い取るのか」

少年エルフ「たぶん スロットゲームはその媒体なんだよ」

「欲を引き出した上で吸い取ってるわけね」

娘友「それで客に生気がなかったのかな みんな目がウツロだったしね」

第三王子「たしかにのめりこんでる人ほど楽しくなさそうだったね」

第七王女「そうじゃな女騎士も最後はなにかに追われるかのようだったしの」

「しかし正体が見えてきたとしても どうするんだ? 借金があるのは事実だしな」

第七王女「なにをいっとる 女騎士や他のものがこんな状態になっておるではないか あのカジノは危険じゃ なんとかするのじゃ!」

346 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/04/30 13:58:15.16 1f0vPP/w0 311/838

「なんとかするといってもな 追い詰められてるのはこっちだぞ 金がないしな」

第七王女「むうぅ」

娘友「お金がない…… そうよ! それよ」

第七王女「何か思いついたのかの?」

娘友「無一文になったら困るのよね」

「そりゃ誰だってそうだろ」

娘友「だったら…… みんな無一文になればいい」ニヤリ


349 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:37:06.28 d/Y516WV0 312/838

#15 古代カジノをぶっつぶせ

350 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:37:43.83 d/Y516WV0 313/838

○最終日・カジノ

支配人「それではこれよりパチスロキング決定戦を行います これが今季のラストゲームですので存分にお楽しみください」

\ウオオオオ/

客がなだれ込み座席がどんどん埋まっていく。

「始まったな のんびりしてていいのか?」

「大丈夫よ パパも居るし」

「王女と王子は?」

娘友「二人ともクタクタで休んでるわ」

「そうか後は娘が優勝するだけだが……」

「そうね そろそろ行くわ」

女騎士「ああうー 私もやるんだーああ」

女騎士は興奮している。

「こらお前は 止めておけ」

351 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:38:11.43 d/Y516WV0 314/838


「最後だしいいんじゃない? 何かあったら男が止めたらいいし」

女騎士「そうだよな いいよな? ほら放せ」

「……これが終わったら戻ってくれるんだろうな? ほら」

男が女騎士を離すと手近の台で遊びはじめた。

女騎士「うふふ うふふ」

「……本当に頼むぞ 娘」



「さてどれにしようかな」

娘はゆっくりと歩く。

少年エルフ「やーめた あっちのが良さそう」

少年エルフが遊んでた台を切り上げて移動する。

「じゃあここでやるわ あまりものには福があるのよ……えーとこうかしら?」

隣の客「なんだい姉ちゃん初めてかい? 最終日なのに」

「そうね ビギナーズラックって奴をとっておいたのよ」

隣の客「はっはっは そんなの当てにするのかい」


352 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:38:43.42 d/Y516WV0 315/838


ピロピロピロ―ンジャジャジャーン

店員「17番台のお客様スタートしました」

ジャラジャラジャラ

「あら箱を交換するのも大変ね よいしょ」

支配人「おめでとうございます こちらに積んでおきますね こちらのお客様の対応を」

店員が玉箱を交換して積んでいく、すでに10箱は積まれていた。

隣の客「すげぇな ホントに当てやがった」

支配人「……(ビギナーズラックか まぁ長くは続くまい)」

第七王女「娘ー どうじゃ?」

少年エルフ「うわー すごいことになってるね」

第七王女と王女がやってきた。

「まぁ見てのとおりよ エルフは移動するの?」

少年エルフ「そうだねここの王様目指してがんばるよ」

「あらそう……私も移動しようかしら」

353 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:39:12.83 d/Y516WV0 316/838



「やっぱり角はよく出るわねー」

ジャラジャラジャラジャラ

角の台に移動した娘は再び確変を当てていた。

支配人「おめでとうございます あちらに置きますので――(こ こいつは出し過ぎだなんとかしないと)」

娘友「いいながめねー 玉箱のピラミッドよ」

娘の玉箱は20箱以上になっていた。

○数時間後

支配人「お おめでとうございます(なぜだ!? 何が起こっている!?)」

ジャラジャラジャラジャラピロピロピロ―ン

「ふわぁ また当たったわね」

「すげぇ どこまで出すんだ?」「クイーンだパチスロクイーンじゃ」「あれはいくらになるんだ?数百万にはなるんじゃないか?」

娘の周りには人だかりができて成り行きを見守っている。

「みんな疲れてきてるだろうし これでコーヒーをお願い 全員にね」

店員「かしこまりました」

娘は玉箱をひとつ渡して全員分のコーヒーを注文した。

支配人「(おかしい絶対なにかしている?) あのお客様すこしこちらへ」

「あら? まあいいわ少し休憩がてらに」

354 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:39:44.06 d/Y516WV0 317/838



女性店員「特に怪しいところはありませんでした」

支配人「なに!? 本当か?」

「じゃあ 問題ないわね じゃあ続けるわ…… そうそうお金ちゃんと用意しておいてね そこそこの額になると思うから」

支配人「ぬううううう」

ジャラジャラジャラジャラジャラ

店員「15番のお客さまスタートでーす」

引きつりながらも娘の確変を知らせる店員の声が響く。

支配人「バカな」



店員「そこまで 時間終了となりますー」

「あら 終わり? 仕方ないわね」

確変中の台を後にして娘が宣言する。

「どう見ても 私の優勝ね? 賞金と換金をお願いできるかしら?」

支配人「ぬううう そ それではこちらへ」

脂汗を流しながらも営業スマイルを浮かべて金庫へ向かう支配人。

355 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:40:10.97 d/Y516WV0 318/838


支配人「いくらだ?」

店員「計上中ですが300万以上はあります」

支配人「その程度ならば……少ない額ではないが」ぐぬぬ

ガチャ

支配人が金庫を開ける。

少年エルフ「やったね あれ全部もらえるの?」

「そうじゃないわ……下ごしらえは出来てるのよね?」

第七王女「もちろんじゃ 見ものじゃぞ」



支配人「よし 運びだせ」

ボゥ

支配人「ん?」

ボオオオオオオオオオオオォン

支配人「か 金があああああああ」

356 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:41:11.70 d/Y516WV0 319/838


なんと金庫の中の金貨が燃えだした。

\うわあああああ/

支配人「金 俺の金が!!」

あっというまに火は消えカードが一枚残された。

カード『悪徳にまみれた金を頂戴したのじゃ byセブンガール』

支配人「な!? バカな…… ふざけやがって」

空になった金庫の中支配人は怒りに震える。

「それで 換金と賞金はどうなるのかしら?」

支配人「そ それは」

「お金なくなっちゃったみたいね~ だったらこのカジノを商品にもらおうかしら」

支配人「何!? カジノを」

娘友「それとここのカジノが持ってる債権もね」

支配人「なんだと!? そんな」

第七王女「さあ観念するのじゃ」

支配人「ぐぬぬぬぬ」

357 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:41:55.65 d/Y516WV0 320/838



店員「支配人」

女性店員「支配人どうしますか?」

支配人「……やらん」

店員「え?」

支配人「やらんやらんやらんやらんぞおおおおおおおおおぼぼああぁぁ!!」

支配人が叫ぶと口から銀色の煙が、いや銀玉が吐き出された。

\キャアア/

「なんだ!?」

「正体を現したわね」

銀玉の塊「ここはワシのカジノだワシの金だワシがゲームだああ」

娘友「きゃああ!」

少年エルフ「危ない 伏せて」

パチスロ台が飛び交い銀玉デーモンに吸い寄せらせていく。

358 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/08 22:42:47.17 d/Y516WV0 321/838


ガコンガコンガコンガコン

なんとパチスロ台が合体してその巨体がテントを突き破った。

 \うわああああ/

「みんな逃げろ 崩れるぞ」

ドドドドド



\グオオオオオ/

パチスロゴーレムが現れた。

361 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:07:47.77 fFF01Ozk0 322/838

#16 誰がために金はふる

362 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:08:57.39 fFF01Ozk0 323/838

正体をあらわした欲望の銀玉デーモンはパチスロゴーレムを操り娘たちに襲い掛かった!

パチスロゴーレム「ヤッタネ オオアタリィイ!!」

ジャラジャラジャラ

一抱えもある大型の銀玉が辺りに降り注ぐ。

ドドドドドン

\うわあああ/ \キャアアア/

少年エルフ「うわあああ」

「パパあぶない」

ガキン

女騎士「大丈夫かエルフ君」

「女騎士」

少年エルフ「ありがと もう大丈夫なの?」

女騎士「ああ憑き物が落ちたようだ 迷惑をかけて済まなかった」

「ホント迷惑だったぜ 泣き叫んでねだるお前は……」

ドゴン

363 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:10:31.38 fFF01Ozk0 324/838


女騎士「いや 本当にすまなかったな うん」

「ごふっ…… ま゛ぁ終っだごどだ それよりあの親玉をどうするかだ」

女騎士「さっきのはとんでもない攻撃だが あんな大技連続では出せまい 今がチャンスだ」

「おい むやみに突っ込むな」

女騎士はパチスロゴーレムに向かって駆け出す。

女騎士「醜態をさらされた恨み晴らさせてもらうぞ」

ダダダ

ジャラララ

女騎士「い?」

吐き出された銀玉がパチスロゴーレムに戻っていく。

女騎士「うおお? なんだなんだ」

大量の銀玉に流されて女騎士はパチスロゴーレムに吸い込まれてしまった。

\うわあああ/

「あーあ」

「大丈夫かしら」

再びパチスロゴーレムが激しい光と音と共に銀玉を吐き出す。

パチスロゴーレム「フィイバアアアアア!!」

364 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:11:15.80 fFF01Ozk0 325/838

ジャラジャラジャラ

女騎士「――いやああああああああああ」

女騎士も銀玉と一緒に吐き出され空高く舞い上がった。

第七王女「すごい高いのう」

娘友「ホントねー」

「のんきなこと言ってる場合!?」

キンキン

「やばいな」

ガキンガキン

娘と男が銀玉を防ぎながら言う。

少年エルフ「あのままじゃ落ちちゃうよ」

「本当に世話のやける」

ダダダダダ

男が落下地点へ駆け出す。

365 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:13:52.51 fFF01Ozk0 326/838

女騎士「ひゃああ しぬうううううう」

「うおおお」

ドドォン ゴロゴロゴロゴロ

男は女騎士を受け止め転がり衝撃を相殺した。

ガバっ

女騎士「わわ 生きてる助かった」

「当たり前だ はやくどいてくれ重いぞお前 筋肉ばっかりつけてるから余計におも――」

ドゴン

女騎士「ババカヤロー 誰のせいでこうなったと 誰のせいでっ」カアアアア

ドゴンドゴン

マウントポジションで拳を振るう女騎士。


366 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:14:52.36 fFF01Ozk0 327/838

少年エルフ「助かったみたいだね」

娘友「男さんやるわね~」

第七王女「女騎士には怒られてばっかりじゃがのう」

「そうでもないんじゃない」

少年エルフ「そうなの? あ 戻ってきた」

女騎士と男が戻ってきた。

女騎士「重ね重ね迷惑をかけた」しょんぼり

少年エルフ「怪我しなくてよかったよ」

「あたたた しかしあれでは近づけないぞ」

「だったら魔法ね ”重雷撃”」

カッ ドンガラガッシャーン!!

パチスロゴーレム「ビビビビビビ!!」

第七王女「やったのかえ?」

パチスロゴーレム「ダイヲユラサナイデクダサーイ」

ジャラジャラジャラ

367 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:15:50.56 fFF01Ozk0 328/838

少年エルフ「うわぁ!」

娘友「きゃあ!」

「これくらい跳ね返して」

ガキン

バチバチバチ

「あばばばばばばっ!」

男は感電してしまった。

「あちゃー」

少年エルフ「帯電しちゃってるね」


368 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:16:36.74 fFF01Ozk0 329/838

パチスロゴーレム「フィイイバアアアアア!!」

ジャラジャラジャラジャラ

確変モードになったパチスロゴーレムから激しく銀玉が飛び出す。

女騎士「くっ」

ガキンガキン

「おらおらおら」

ガキンガキン

「ちょっと コレ」

ガキンガキン

降り注ぐ銀玉を防ぐので手一杯である。

「いつまで続くのよコレ」

第七王女「なにか打開策はないかのう」

少年エルフ「市場にも被害がでてるよ」

\わーーー/ \ぬわーー/

ガシャン どこーん パリーん

あちこちで悲鳴と破壊音が響く。

娘友「ああ~ もったいない」

369 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:17:56.45 fFF01Ozk0 330/838

ガシャン ドカァン

女騎士「王女たちは下がっててください」

第七王女「この程度に当たるわらわでないわ」ひょいひょい

軽々と回避する第七王女。

娘友「きゃあ!」コケ

易々と転倒する娘友。

第七王女「友!」ビュビュッ

カカン

投げナイフを放って銀玉をそらした。

娘友「ありがと王女」

第七王女「うむ 早く立つのじゃ」

娘友「って 危ない!」

第七王女の後ろから銀玉が飛んできた。

370 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:19:08.34 fFF01Ozk0 331/838


娘友「えいっ!」

娘友はとっさに金貨袋を投げつけた。

ガシャァン バラバラ

第七王女「む!?」

銀玉「マネマネマネ……」

しゅしゅしゅ

娘友「消えた……?」

第七王女「ふむ? いや元の銀玉に戻ったようじゃ」

第七王女は砂の中から元の大きさになった銀玉を拾いあげた。

第七王女「物欲が満たされると元に戻るのかもしれんの」

娘友「そう……だったら」

371 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:20:17.50 fFF01Ozk0 332/838



少年エルフ「”風防波”」ギュルル

バシュ バシュシュン

「エルフ後ろ!」

少年エルフの背後から銀玉が飛んでくる。

少年エルフ「うわぁ」

「”炸裂”」

ドドォン

銀玉「キェァー」

銀玉は魔法に弾かれてどこかへ飛んで行った。

少年エルフ「ありがと助かったよ」

「危ないから離れないでよ パパ」ぎゅう

少年エルフ「ちょっとちょっとくっつき過ぎ はなれて」カアア

「しかしキリがないな どうする?」

「わたしの雷魔法で……」

少年エルフ「でも効いてないかも……」

「そうなのよね」

372 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:21:18.11 fFF01Ozk0 333/838

第七王女「ここで真打じゃ」

「王女?」

娘友「よーし 皆さんいいですかー」

交易商たち「「おおー」」

第七王女と娘友が商人たちを引き連れてきた。

少年エルフ「何するの?」

女騎士「あの銀玉の弱点を見つけたそうだ」

ガラガラガラ

第七王女と娘友が交易商たちを指示して大砲を持ってきた。

少年エルフ「うわぁ 大砲だ」

「しかしそれなら娘の魔法の方が……」

娘友「まぁ見ててよ 用意はいい?」

\よっしゃー/

第七王女「よーし うてぇー!!」

ドドーン

373 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:24:18.68 fFF01Ozk0 334/838

○パチスロゴーレム・コックピット

ヒュ―ン ドドン

銀玉デーモン「む 大砲か? そんなもので」

バラバラバラ ガシャンガシャン

着弾したあたりからパチスロゴーレムが崩れている。

銀玉デーモン「なんだ!? なぜパチスロ台が? あの弾は……カネか!?」

○砂漠

第七王女「よーし効果は抜群じゃー どんどん撃つのじゃー」

ドドォン ドドォン

交易商たちが次々と金貨袋を大砲に詰めては撃ち出していく。

「これはすごいな」

少年エルフ「うわー キラキラだー」

娘友「ゴールドシャワーよー」

「派手ねー」

キラキラキラ

パチスロゴーレム「ウオオオオオン」

ガラガラガラ

動力源の銀玉が次々と魔力を失い、体を構成するパチンコ台が崩れ落ちる。

374 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:26:32.01 fFF01Ozk0 335/838

○パチスロゴーレム・コックピット

\物欲パワー低下 物欲パワー低下/

警報が鳴り響くなかで銀玉デーモンは悪態をつく。

銀玉デーモン「くそ! こんな」

ガラガラガラガラ

\物欲パワー低下 両腕崩壊シマシタ/

銀玉デーモン「ああ ちくしょう」

\飛翔体接近 飛翔体接近/

銀玉デーモン「なんだ!? うお!!」

ガラガラガラ

モニターを覗き込もうとしたとたんにモニターが崩壊してコックピットが露出、娘が飛んで来るのが見えた。

銀玉デーモン「おのれえええ」

「これで店仕舞いよ ”重雷撃斬”」

ガガガ ジャシャアアアン バリバリバリバリ

銀玉デーモン「ぐああああ カネが 俺のカネェエエエエエエ!!」

真っ二つにされた銀玉デーモンにさらに金貨が降り注いでいく。

半壊したパチスロゴーレムがよろめき砂漠に倒れていく。

ズドドドォオオン

銀玉デーモンとパチスロゴーレムを倒した。

375 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:27:25.40 fFF01Ozk0 336/838



少年エルフ「娘ー」

タタタ

「パパ」

ひゅるるる

落下する娘を少年エルフが受け止めようと駆け付ける。

少年エルフ「えーい ”旋風”」シュルル

バホォン

風をクッションにして娘を受け止める少年エルフ。

少年エルフ「うわぷぷっ砂かんじゃった」

「ふふふ パパの魔法効いてるから着地できたのに」

少年エルフ「あ…… そうだったね」カアア

「でもありがと パーパ」ギュウウ

少年エルフ「ちょっとはなれて あーつーいー」カアアアアア

376 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:28:14.54 fFF01Ozk0 337/838



「よーし 娘も無事のようだな」

第七王女「うむ これで一件落着じゃな かっかっかっか」

第三王子「ふわぁあ 終わった?」

あくびしながら第三王子がやってきた。

女騎士「王子!? 何処にいたんですか?」

第三王子「んー? 寝てた」

女騎士「あの騒ぎの中で……」

「まぁ第三王子だしな」

第七王女「さすが三兄ぃじゃ」

娘友「誉めてるのそれ?」

第三王子「ちょっと見ない間にすごいことになったねー 金貨だらけだ」

砂漠に金貨が散らばっており交易商たちが総出で拾い集めている。

377 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/15 21:29:32.16 fFF01Ozk0 338/838

「商売人はたくましいな……あんなの気が遠くなるぜ」

女騎士「そういえばこの金貨の出どころは何処なんですか? まさかまた借金が……」

第七王女「それは大丈夫じゃよ のう三兄ぃ」

第三王子「そうだね それよりお腹すかない? ご飯にしようよ」

「そうだな 動きっぱなしで腹ペコだ」

娘友「娘たち読んでくるわ」

タッタッタ

女騎士「ちょっと!? なんか話をそらしてない?」

「そんなに怒るな余計に腹が減るだろう? それともあれか? まさかお前あのh」

ドゴォン

女騎士の正拳突きが男を吹っとばした。

女騎士「違うわ! バカ」


381 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:19:04.86 nAPh1dIk0 339/838

#17 グランド・アビエーション

382 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:22:55.98 nAPh1dIk0 340/838

○夜・少年エルフ達のテント

食事をしながら女騎士が事の顛末を聞いた。

女騎士「当たり台がわかってたぁ!?」

「まー そういうことね」

女騎士「どうやって?」

少年エルフ「んとね 音がね聞こえてて」

女騎士「音ぉ?」

「つまり当たり設定の台の音がエルフには聞こえたんだと」

女騎士「えぇ!?」

娘友「わかったのは少し前なんだけどね もっと早くに解っていれば……」ニタリ

「友 顔があくどいわよ」

娘友「ホント? てへぺろ」

「かわいくないから」

娘友「ぎゃふ」

383 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:26:52.75 nAPh1dIk0 341/838

女騎士「でも実際に勝ってたのは娘君じゃないか それはどうして?」

「私はパパから当たり台を教えてもらってたのよ」

少年エルフ「そう いろいろ雑談みたいにしてね」

「だから台移動した後に当たってたでしょう 私自身には何もないからカジノ側も見抜けなかったのよ」

女騎士「ううむ言われてみれば…… それで娘君が勝てたのは分かるとして 最後にあの大砲の金貨? どこからあんな大金が」

第三王子「そりゃあ あるところから借りたんだよ」

女騎士「あるところって…… そういえば金庫のお金が無くなりましたがまさか盗んで――」

第七王女「違う違う 盗んでなどおらん 隠して偽物と『すり替えた』だけじゃ」

女騎士「それは盗んだっていうんですよ! なんですか二人とも王族としてのっ……」

第三王子「いやいや 本当に盗んではいないよ 保管庫にずっとあったんだもの」

女騎士「はぁ!?」

384 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:30:49.38 nAPh1dIk0 342/838


 第三王子は説明する。
 金庫は昼間はカジノに夜は保管庫に警備と共に移動しており近寄れなかったが、警備のいない昼の保管庫に侵入してテントの下に穴を掘って偽金と共に待機。 金庫が戻ってきたら金貨を偽物と入れ替えて朝をまって脱出したという、金貨はそのまま床下に隠したままに。

女騎士「じゃあ金貨が燃えだしたのはなんなんです?」

第七王女「あれはフラッシュペーパーで出来ておったんじゃ パッと燃上がって煙もほとんどでない優れものじゃ。 ああしておけばまるで盗まれたように見えるじゃろう」

女騎士「そんな都合のいいモノがどこで」

娘友「ここは天下のバザールよ たいていの物は手に入るわ」

女騎士「じゃあ最後に撃ち出した金貨は」

第七王女「そうじゃ 娘が優勝して本来得るはずの金貨を保管庫から引っ張りだしたのじゃ だから問題はないのじゃ」

第三王子「セーフだよセーフ」

女騎士「ううむ……それなら いや……なんだろう納得が」

「まぁ ゆっくり考えろ。 お前は長い事憑りつかれていたわけだし」

女騎士「うっ 言うな……」

385 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:35:50.31 nAPh1dIk0 343/838



第七王女「それにしても今回は 魔王の手がかりもなかったのう」

娘友「そうねー 結果としては掘り返した魔物に憑りつかれたってことだしね」

少年エルフ「いいんじゃない? ボク達がなにかしなかったらもっと被害があったかもしれないし」

「そうね パパのおかげで化けの皮をはがせたわけだし」

第七王女「まっことそのとおりじゃな 事が大きくなる前に食い止めれたのじゃ それも勇者に勤めじゃて」

第三王子「ゆうしゃ? 最近そういうの流行ってるの?」

「流行ってるって……」

第七王子「それははどういうことじゃ? わらわが二代目勇者を襲名したのはまだ先月じゃぞ」

第三王子「ふーん たしかねー東の町で勇者を募集してるって……」

女騎士「王子! それ以上はいけな」 第七王子「なんじゃとそれはなんとしても行かねば!!」

「遅かったな……」

386 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:51:41.38 nAPh1dIk0 344/838

女騎士「ぬぅ…… ダメですよ王女 今回は既に調査期間がありませ」 第七王女「イヤじゃ!!」

第三王子「お はじまったねぇ」

第七王女「行くのじゃ! 行かねば二代目勇者の名がすたるのじゃ!」

女騎士「あーもー すたってくださいそんなモノ! わざわざ王女が自ら行く必要があるんですか」

第七王女「あるに決まっておろうわらわは勇者じゃぞ 助けを必要としてるならば行くのが義務じゃ! のう 男 言ってもいいじゃろう」

女騎士「あ! コラ 男に甘えないでください」

「んー 王女 流石に今回はこれ以上はムリだろ 一旦王都に戻ってから出直さないとな」

第七王女「むー 男までーー 三兄ぃー」

第三王子「えー? うーん 女騎士もそんなに言わなくても少しくらい寄り道したって」

女騎士「王子は何年寄り道してるんですか! 今回は絶対に王都に連れ帰りますよ」

第三王子「あ ハイ」

387 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:53:06.98 nAPh1dIk0 345/838


第七王女「うー なんじゃなんじゃ女騎士も男も反対しよって」

娘友「王女 一旦王都にもどってもドラゴンにまた乗せてもらえばいいじゃない どこでもひとっ飛びだし」

「そうね」」

第七王女「しかしのう勇者募集じゃぞ わらわはすぐ行きたいのじゃ す・ぐ・に・じゃ!」

少年エルフ「そんなに焦らなくてもきっと募集はまだ終わってないよ…… 多分」

第七王女「そうかのう……エルフはどう思うのじゃ? 困った者を救いに行くのが勇者じゃと思わぬか? の? の?」

少年エルフ「えぇ? そりゃ困ってたら助けなきゃいけないと思うけど……その」

女騎士「エルフ君 王女のわがままに付き合わなくていいんだぞ ほら王女 無理を言わないでください」

第七王女「うぬぬぅ~~ わかったのじゃ わらわはもう寝るのじゃ!!」

ドスドス

第七王女は寝室へ行ってしまった。

388 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:55:42.83 nAPh1dIk0 346/838

女騎士「……まったく いつまでたってもわががまなんだから」

「あーあ 知らねーぞ あれはしばらく尾をひくぞ」

女騎士「だいたい お前が王女付の時の教育がだな……」ガミガミ

「うお 俺にくるのか? 俺なのか!?」

第三王子「うーん 皆あっちに行こう 長くなるから」

娘友「そうね そうしましょ」

男に説教を続ける女騎士を残して第三王子たちは席を外した。

「まて 俺を一人にしないでくれー」

女騎士「何が一人にだ私だってお前のせいでなぁ」

「なんだ 俺のせいでどうしたってんだ!?」

女騎士「お前のせいで……その…… うっさいなだいたい騎士見習いの頃からお前は……」

「見習いって どこまで遡るんだお前!?」

\ガミガミグチグチ/

\タスケテ/

389 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:57:17.06 nAPh1dIk0 347/838



娘友「ご愁傷さまね」

第三王子「いやまったく」

「私 王女の様子をみてくるわ」

娘友「そうね アタシも」

娘達は第七王女の様子を見に行った。

第三王子「いやー しかし今回は助かったよ ずいぶんとここのカジノで足止めされたからね 飽き飽きしてたんだ」

少年エルフ「そうなんだ 他にもあちこち旅をしてきたのですか?」

第三王子「そうだね 北方や帝国に行って来て 飽きたからこっちに戻って東の町からここまで来たんだ」

少年エルフ「さっきも言ってましたけど 東の町ってどんなところなんです?」

第三王子「知らないかい?」

390 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 21:59:45.48 nAPh1dIk0 348/838


少年エルフ「ええ 僕は南の町からほとんど出たことないので……」

第三王子「そうかい 東の町は港町だよ 湾の中にあるんだ」

少年エルフ「湾…… 海沿いなんですね 海ってどんな感じですか」

第三王子「ん……(本当に出たことないのか) そうだね海はね……」

少年エルフ「はい……はい……」わくわく

少年エルフは第三王子の旅の話を聞いた。



「あら 盛り上がってるわね」

娘達が戻ってきた。

少年エルフ「あ おかえり どうだった?」

娘友「王女 ホントに寝ちゃってたわ」

第三王子「そっか なら大丈夫だよ 本当に機嫌がわるかったら寝ないから」

「そうなのね 私達ももう寝ましょ 今日は疲れたわ」

少年エルフ「そうだねー」

そういう事になった。

391 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 22:03:02.17 nAPh1dIk0 349/838

○深夜・娘達のテント

カキカキ

娘友「今回はコレがあるからイケるわ ふふふ」

娘友は書き物をしている。

娘友「さて そろそろ寝ようかな…………(その前にお手洗いに)」

娘友はテントを出て手洗いに行こうとした。

バッサバッサ バリバリバリ バサァーッ

突風と大きな影と共にテントが倒壊した。

娘友「きゃああ!? 何?」

女騎士「なんだこれはー」

倒壊したテントから女騎士が叫んだ。

「何事だ!」

男性用のテントからも叫びが上がった。 見れば男たちのテントも倒壊している。

392 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 22:09:29.48 nAPh1dIk0 350/838


娘友「うわー 何今の? 女騎士さん大丈夫? 娘ー 王女ー? アレ?」

女騎士「……いない 娘君も……」

「女騎士…… 空から手紙が降ってきたぞ」

女騎士「まさか……」

手紙『ちょっと東の町まで行ってくるのじゃ ちょっと様子を見るだけじゃから女騎士たちはそのまま王都へ帰るのじゃ by 二代目勇者 第七王女』

○上空

バッサバッサ

少年エルフ「うん?」

少年エルフは目を覚ました。

少年エルフ「うわぁあ!? 何? どうなってるの!?」

「パパァッ 大丈夫!? これは一体どういうこと!!」

娘と少年エルフはホワイトドラゴンに掴まれて夜空を飛んでいる。

白竜「コワイ顔しないでよ えっとねー」

第七王女「わらわが頼んだのじゃ」

393 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 22:19:25.27 nAPh1dIk0 351/838



娘と少年エルフは第七王女と共にホワイトドラゴンの背に乗っている。

第七王女「ちょっと東の町まで行くのじゃ 白竜ならひとっ飛びじゃからな」

少年エルフ「そうだけど 後で女騎士さんに怒られない?」

第七王女「それは覚悟の上じゃ それに特に問題が無ければすぐ戻ればいいのじゃ」

「まぁ そうね どうするかは東の町を見てからでもいいんじゃない」

第七王女「ホントは友も連れて行きたかったんじゃがの」

白竜「あのコは寝床に居なかったから掴み損ねたわ」

第七王女「仕方ないの このまま東の町まで直行じゃ」

394 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 22:20:25.39 nAPh1dIk0 352/838

○砂漠・テント

「あーあお前がかたくなに反対するから」

女騎士「お前だって渋ったじゃないか」

「うっ 頭がいたい記憶喪失だ」

女騎士「だったらコレでどうだ ショック療法だ!」

バゴン

「ぶはっ」

娘友「エルフさんと娘は連れてかれたのね…… さてどうしますかね」

第三王子「んー 何かあった?」

あくびをしながら第三王子が起きてきた。

「王子……(毎度のことながらホントよく寝てたな) 実は王女がドラゴンに乗って東の町に行ってしまったんだ」

女騎士「ああ!? すっかり王女の荷物も無くなってる フテ寝してると思ったのにいつの間に!?」

第三王子「さすがナナちゃんだね さて僕達はどうするの?」

「そうだな いくらなんでもほっとくわけにはいかないしな」

395 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 22:21:59.32 nAPh1dIk0 353/838

娘友「東の町なら ここから向かうキャラバンがあったはずよ 交渉したら同行させてもらえるわ」

女騎士「そうか それは助かる」

「じゃあ俺が馬を借りて王都まで行ってくる 馬なら大森林を突っ切れる」

女騎士「わかった任せた あと王子も連れてってくれないか」

第三王子「ええー!? やっぱり戻らなきゃダメ? 別に王都にもどるのはもう少し……」

女騎士「ダメです 実は兄王がひそかに捜索されてるのをご存知ですか? 心配されてるんですよ」

第三王子「ううーん でもなぁ」

「俺も一緒にいくから な?」

第三王子「うーん わかった王都に戻るよ 頼むよ男」

「任せろ」

娘友「あ 実はアタシも王都に届けて欲しい物があるんだけど いい?」

「おう すぐ用意できるか? 準備が出来たら出発するからな」

娘友「ええすぐに…… これとコレでハイ 王都のアタシんちまでお願いします」

娘友は書類の束を渡した。

「よし分かった」

女騎士「我々もキャラバンに相談に行かねば…… 友君交渉に付き合ってもらえるか」

娘友「ええ もちろん 忙しくなってきたわね~」

396 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/05/22 22:23:55.24 nAPh1dIk0 354/838

○上空・ホワイトドラゴンの背中

「なんてことになってるわよ多分」

第七王女「そうか 友はそのうちに来るかの」

「多分ね あのコなんだかんだで結局楽しんでるから」

少年エルフ「そう? 僕も楽しいよ初めて見るものいっぱいだから」

第七王女「そうか それはよかったのじゃ」

白竜「そろそろ海が見えるわ」

少年エルフ「うわぁ あれがそう!? 本当に水だらけだ 娘見える?」

「フフフ こう暗いと私にはまだ見えないわ」

少年エルフ「あ そっか」

第七王女「見よ もうすぐ日の出じゃ」

「ホント 明るくなってきたわね」

少年エルフ「え!? それじゃあ」 白竜「マジでぇ!? 下りるわ掴まって」

ギュウウウウウウウウン

少年エルフ「わああああああああああ」

「ちょとおおおおおおおおおおお」

第七王女「やっほおおおおおおおおお」

ホワイトドラゴンと娘達は急降下していった。


400 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:01:30.83 N1jdlEHA0 355/838

#18 大漁豊漁勇者祭! ~不気味な岬の物語~

401 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:03:23.36 N1jdlEHA0 356/838

○東の町・港

カーンカーンカーン

警鐘が打ち鳴らされている。

見張り番「カニだ―ッ! カニだ―ッ!」

巨大カニ「ブクブクブク」ガチーンガチーン

海から巨大なカニが上がってきて暴れている。

若人A「っしゃー! 一番モリいくぞー」

若人B・C「「うおおー」」

実況者「おっと! 真っ先に向かっていくのは地元の若い衆で結成された漁師チーム 大物ゲットとなるか!?」

若人達の攻撃。

カキンカキン

若人A「かってぇー!?」

若人B「眼をねらえー!」

若人C「届かねぇよ!?」

402 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:04:36.19 N1jdlEHA0 357/838


巨大カニ「ブブ?」ブオンブオン

若人達「「グワーっ!!」」

\ワ―ワー/

人々は遠巻きにこの戦いを見物している、露店も開かれお祭りムードだ。

実況者「残念! 巨大なハサミでなぎ払われてしまいました! 続いて突撃していくのは……」

次々とチームが巨大なカニを攻撃するが分厚い殻のために攻撃が効かない。

実況者「このままではここも危なくなります どうしますか町長」

町長「ううむ しかた無い王国兵の皆さんお願いします」

兵士長「よーし いくぞ突撃」

○物陰

???「いいんですか? 倒されちゃいますよ」

???「なあにアレでは武器では倒せないさ」

???「だったら坊がさっさと魔法で……」

???「勇者は最後に登場するものさ まあもうすぐだ……」

403 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:05:35.29 N1jdlEHA0 358/838

○港

兵士たちが巨大カニを攻撃するもやはり倒せない。

兵士A「隊長! 槍が折れました硬すぎます」

兵士B「やべぇぞ どうすんだコレ」

兵士C「もう帰っていい?」

兵士長「うむむ 仕方ない勇者丸へ伝令! 砲撃準備」

兵士A「こんなところで大砲使うんですか!?」

兵士長「やむをえん」

兵士C「りょうかーい 伝令いきまーす」

ダダダダ

兵士B「はやっ!?」

実況者「なんと大砲で狙うようです 危険ですので見物の方はおさがりください」

町長「おいおい 町に被害がでるじゃないかヤメロ」

兵士長「アレを放っておくほうが被害でるわい 下がって! よーし撃て―!!」

町長「ちょおまっ」

404 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:06:51.04 N1jdlEHA0 359/838


ドォオン ひゅるるる

港に停泊していた船から砲弾が飛んできた。

\おおー/

歓声があがり次いで着弾。

ガキィン

巨大カニ「!!」

ドゴン ドボォン

町長「……」

兵士長「……」

実況者「なんと……弾いてしまいました……」

兵士長「だ……第二射!」

ドォオン ひゅるるる

405 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:07:59.41 N1jdlEHA0 360/838


巨大カニ「ギ」ブン

ガギン

実況者「なんと! カニが砲弾を受け止めた! そして振りかぶり……投げた!!」

ブオン どひゅーん

バコォン バキバキ

\うひゃー/

実況者「おおっと王国が誇る勇者丸が吹っ飛んだ! 燃えます傾きます沈んでいきます!」

兵士長「……えーと」

兵士A「逃げろ――っ!」

\ワアアアアア/

港はパニックに陥った。

○物陰

???「よーしお膳立ては上々だ 出るぞ」

???「え!? こっちに人が」

???「どわあああ」

ドタドタドタドタ

406 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:09:05.96 N1jdlEHA0 361/838

○港

実況者「カニ一匹がこの町の歴史を終わらせてしまうのでしょうか なんという悲劇でしょうか」

娘達が港に着いた

「やっと着いたけど 一体なによコレ? 祭?」

少年エルフ「いやなんか大きなカニが…… 魔物みたいだよ」

第七王女「よーし わらわの出番じゃ!」

シュタタタタ

第七王女が巨大カニに突進していく。

兵士A「おい! 何処にいく危ないぞ」

「あーもう パ……エルフ 王女をお願い」

少年エルフ「わかった」

少年エルフも第七王女を追いかける。

407 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:16:30.03 N1jdlEHA0 362/838



巨大カニ「ブクブクブク」

ドカン バキン

第七王女「なんじゃ デカいだけで遅いのじゃ」

ひょいひょい

第七王女は身軽に攻撃を避けている。

実況者「突如あらわれた女の子が果敢にもカニに立むかった! なんという身のこなしでしょう」

第七王女「せいっ」

第七王女の投げナイフ。

カッ

巨大カニ「!? キュイイイ」

実況者「刺さったぁ! スローインダガ―が目玉にシューッ!」

408 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:17:39.82 N1jdlEHA0 363/838


眼にナイフが刺さった巨大カニは暴れ出した。

バタンドカンバキン

第七王女「おうおう てをつけられんの」

少年エルフ「王女 危ないからこっちに ”風防波”」シュルル

風の防壁が第七王女と少年エルフを包み込む。

「行くわよ ”落雷”」

カッ ドンガラガッシャーン

巨大カニ「ギギィ!!」バリバリバリバリ

落雷が巨大カニを貫く。

シュバババ

風の防壁が雷をそらす。

第七王女「ほっほー いつ見ても大迫力じゃな」

少年エルフ「王女 危ないから一人で攻撃しちゃダメだよ 約束したでしょ?」

第七王女「そうであったな しかし体が先に動いてしまったのじゃ許せ」

少年エルフ「もう」

409 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:18:28.53 N1jdlEHA0 364/838


巨大カニ「ギギギ」

巨大カニは立ったまま黒焦げになっている。

第七王女「とどめじゃ とうっ」

げしっ

第七王女の飛び蹴りが巨大カニの眼の間に決まり巨大カニは倒れこんでいく。

ドドォン

第七王女「よーし今夜はカニ鍋じゃ!」

「もう火は通ってるわよ」

\ワアアアア/

人々は喝采を上げて巨大カニへ殺到する。

実況者「なんと巨大カニを倒したのは飛び入りのお嬢さん達だ!」

410 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:19:25.87 N1jdlEHA0 365/838


少年エルフ「うわぁ押さないで んぎゅ」

「パパこっちに もう何なのよ」

娘は少年エルフを抱き込んで人混みから守る。

少年エルフ「うぐぐ(やわらかい)」カアアア

第七王女「かっかっかっかっか 一件落着じゃな」

第七王女は焦げた巨大カニの上で快活に笑っている。

411 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/05 22:20:39.04 N1jdlEHA0 366/838

○物陰

???「あーあ 先を越されちゃいましたよ」

???「おのれ……あのちんちくりんめ それにしてもあの雷魔法の使い手……」

???「ご存じですか?」

???「いや知らん…… しかし実に美しいな」

???「あぁ…… また坊の悪いクセが」

???「クセというよりもうビョーキよビョーキ」

???「うっさいいくぞ」

???「どこへ」

???「着替えだ」

???「はぁ……恰好ばかり気にして……」

???「見た目だけじゃダメですよー」

???「うっさい 早く来い」

???「はーい」


415 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 18:51:40.93 4IBbcXjc0 367/838

#19 その勇者、バカにつき

416 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 18:53:32.27 4IBbcXjc0 368/838

○町長の家

町長「わたしが町長です」

第七王女「わらわは第七王女じゃ」

町長「いやはや まさか第七王女本人がこんなところにお越しとは…… それに魔物まで退治していただけるとは」

第七王女「なに苦しゅうない それにしても先ほどの魔物はなんじゃ?」

町長「そうですなどこから話したものか…… 最初はたしか一月ほどまえに灯台の明かりが消えたことですな」

第七王女「ほう 灯台とな」

町長「この湾の出口はやたら霧の多い場所でしてそのため岬には古くから灯台があり昼でも灯りをともしてましたがそれが消えたのです」

少年エルフ「単に燃料が無くなったとかじゃないの?」

町長「魔力灯ですしそれは無いでしょう 灯台守もいますし」

第七王女「灯台守はどうしたんじゃ?」

町長「それがわかっておりません 様子を見に行った者が戻って来なかったので王国兵が船で調査に向かうところだったのですが……」

「船は燃えて沈んだわね」

町長「ええ 修理に時間がかかるのでそれまで調査は延期になるそうで」

417 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 18:56:09.11 4IBbcXjc0 369/838


第七王女「灯台が使えないのでは不便じゃろう」

町長「おっしゃるとおりで 実はこの町は300年程前に勇者が出航したという由緒ある港で漁や旅の安全を祈願する海上の祭『勇者祭』を行っていたのですが出来なくなってしまいました」

第七王女「ほうそれは見たかったのう」

少年エルフ「でもさっきのもお祭りみたいだったよね?」

町長「ええ 魔物は出るわ海に出れないわなのでいっそのこと魔物退治を祭にしたらこれがなかなかの評判で今では10ばかりの勇者チームが参加してます」

「でもさっきのカニは危なかったんじゃない? パニックになってたじゃない」

町長「そうですな あのように王国兵にも手を負えない魔物まで出てくると今後をどうするか……」

第七王女「祭はいつまでの予定じゃったんじゃ?」

町長「そうですな 灯台の調査も含めてだったので灯台の灯りを灯したチームを優勝として終えるつもりでした…… それに成功したチームがまだいないので結局今まで続いておりますが」

第七王女「あいわかった それならばわらわも祭に参加して灯台を再び灯すのじゃ」

町長「本当ですか!? 貴方がたのように強い方が参加していただけると助かります」

第七王女「そうじゃろうそうじゃろう」

町長「だったら王女様たちはカニを倒されたので『カニさんチーム』ということで」

第七王女「うむ わかった」

418 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 18:59:09.30 4IBbcXjc0 370/838


「まって王女『カニさんチーム』てそれでいいの!?」

第七王女「うん? わらわは好きじゃぞカニ」

「そう 王女がいいならそれで……」

少年エルフ「カニ嫌いだった?」

「そういうわけじゃないけど……(パパも天然ね)」

町長「では決定ですな この申し込み書に署名を いやぁ期待してますよ」

第七王女「うむ任せるのじゃ」

第七王女は『勇者カニさんチーム』を結成した。

419 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:01:57.72 4IBbcXjc0 371/838



???「なるほど王女様ね 魔王を探しに旅立ったと噂を聞いたがまさかアンタ達だったとは」

第七王女「何者じゃ」

魔法勇者があらわれた。

魔法勇者「俺は魔法勇者! いずれ世界を救うものだ」ばーん

町長「ああ『お馬さんチーム』の方ですね 風邪はもうよろしいので」

「『お馬さんチーム』」

少年エルフ「風邪ってこの時期に?」

爺僧侶「この町に着くときに坊は馬ごと海に落ちましてな それは盛大に見事な落ちっぷりで……それで『お馬さんチーム』に」

孫僧侶「バカよね~かっこつけようとするから 結局3日間寝込んでいたんですよ ぶふっ」

お伴の老僧侶と孫僧侶があらわれた。

魔法勇者「お前達勝手にでてきて全部言うんじゃねぇ!」

第七王女「それで何の用なんじゃ? 馬勇者よ」

魔法勇者「馬じゃねぇ! とにかく…… お初にお目にかかる美しい姫よ」

魔法勇者はそういってうやうやしく娘の手をとった。

420 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:03:53.88 4IBbcXjc0 372/838


「私じゃないわよ」

魔法勇者「へ?」

第七王女「わらわが第七王女じゃ」

魔法勇者「え!? このちんちくりんがか ウソだろ!?」

第七王女「誰がちんちくりんじゃ!」

ゲシッ

第七王女の蹴りが魔法勇者のみぞおちに食い込んだ。

魔法勇者「ぐっほお!!」

第七王女「間違えた上にウソだろとはなんじゃ!」

\ぐごご……/

魔法勇者はうずくまっている。

爺僧侶「いやはや坊がご無礼を……」

孫僧侶「ゴメンナサイ 坊っちゃんバカだから」

第七王女「うむ バカならば致し方あるまい」

「そうね」

孫僧侶「そうそう」

少年エルフ「そうなの?」

421 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:05:40.25 4IBbcXjc0 373/838


魔法勇者「じゃねーよこのヤロ―」ガバっ

第七王女「それでなんの用なんじゃ」

魔法勇者「ああ コホン……そうだな お前たち灯台に行くんだろう危ないから俺が一緒にいってやろう」

第七王女「無用じゃ」

「いらないわよ」

少年エルフ「病み上がりだったら無理しないほうが……」

魔法勇者「全員一致かちくしょう!」

孫僧侶「ほら 無理だった」

爺僧侶「まず頼み方がなってませんぞ まったく不甲斐ない」

魔法勇者「お前らもフォローしろよ!」

第七王女「用がそれだけなら失礼するのじゃ」

「そうね 明日出発するとして今夜はどうすれば?」

町長「こちらの宿をお使いください今はどこも満室でしょうが これを見せればなんとか部屋を用意してくれるでしょう」

町長の紹介状を手に入れた。

422 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:09:42.34 4IBbcXjc0 374/838


第七王女「かたじけない」

「じゃ 行きましょ」

娘達は町長の家から出ようとする。

魔法勇者「まて せめて姫……じゃなくて君の名は?」

魔法勇者は娘に問いかける。

「……(教えたくないなぁ)娘よ」

魔法勇者「そうか娘君 よかったら今夜食事にでもどうだ」ぐいぐい

「ちょっと」イラ

魔法勇者「宿もどうせ同じだろう いいじゃないか ひと晩語り明かそうじゃないか なぁなぁ」

少年エルフ「ん……しょ」ぐい

少年エルフは娘と魔法勇者の間に割って入る。

少年エルフ「だーめ 明日は早いんだから」

魔法勇者「なんだこのガキ」

ドン

423 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:11:30.29 4IBbcXjc0 375/838


少年エルフ「あ」

少年エルフは小突かれて帽子が落ちて耳があらわになった。

魔法勇者「あ! お前エルフぞk……」

シュッ

「そこまでよ」

魔法勇者「ふがッ!?」

娘は魔法勇者の口にナイフを突っ込んだ、笑顔だが殺気が出ている。

少年エルフ「娘!? 僕は大丈夫だから ちょっと」アセアセ

「……エルフは早く帽子をかぶって」

少年エルフ「う うん」

「さてと貴方はこの子がエルフ族と思ったかもしれないけど そう見えただけで違うから…… そうよね? ただの耳が長めの男の子よね?」

魔法勇者「ふがっしかっ」

魔法勇者の舌先をナイフがかすめる、口の端も少し切れた。

「わかったら頷いて」

424 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:12:46.90 4IBbcXjc0 376/838


魔法勇者「」ぶんぶん

魔法勇者はうなづいた。

「わかったら行って」

娘は魔法勇者の口からナイフを引き抜いて言い放つ。

魔法勇者「お おう」バタバタ

爺僧侶「……失礼した まったく不甲斐ない」

孫僧侶「娘さんカッコイー じゃねー」

魔法勇者たちは立ち去った。



町長「王女 エルフ族を飼っているのですか!?」

「なんですって!!」

娘は憤慨した。

少年エルフ「娘!」

少年エルフがしがみついて娘を引き止める。

425 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:14:43.62 4IBbcXjc0 377/838


第七王女「エルフはわらわの弟分じゃ 何ぞ問題があるかのう」

町長「弟分 まぁそういうことでしたらそういうことで……」

少年エルフ「……(弟分)」トオイメ

「……」イライラ

町長「ただ この町は魔法国出自の家も多いのです 町ではエルフ族が居るコトは内密に」

「言われなくてもそうするわ」

町長「それはよかった」

「っ! 行きましょ王女! エルフ!」

娘は少年エルフを引っ張って歩いていく。

少年エルフ「何!? どうしたの?」

第七王女「……ふむやっかいなことにならぬといいが」

426 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:17:14.36 4IBbcXjc0 378/838

○夜・酒場

夕食をとりながら少年エルフは魔法国について第七王女から聞いている。

第七王女「魔法国は昔エルフ族狩りを行ったためエルフ族に滅ぼされた国じゃ」

少年エルフ「エルフ族狩り!?」

第七王女「さよう 古来魔法国はエルフ族から魔法を習って発展したのじゃが いつしかエルフ族の魔力特性を利用しようとしたのじゃ」

少年エルフ「そんな……」

「エルフ大丈夫? 無理に知らなくてもいいのよ」

少年エルフ「ううん 知っておきたいんだ 王女つづけて」

第七王女「うむ エルフ族は魔法国との戦争に勝ったのじゃが その後帝国が介入して再び戦争になり負けておる 今では魔法国は帝国の一部じゃ」

少年エルフ「そうなんだエルフ族と人が戦争を」

第七王女「ざっと100年程前のことじゃ その時の魔法国の民は周辺国にちらばり魔法使いの家元となったのじゃ 魔法の普及にもつながっておる」

少年エルフ「100年前なのにエルフ族を嫌う人がいるの?」

第七王女「それは……」

「エルフ……」

427 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:21:00.53 4IBbcXjc0 379/838


第七王女「戦いにおいてエルフ族は圧倒的な魔法を振るったという それゆえ恐怖の対象として伝承されておるんじゃ」

少年エルフ「そうなんだ…… そうだよねこんなに魔力があるんだし……」

「大丈夫よ エルフは攻撃魔法は使わないし嫌いでしょ?」

少年エルフ「そうだけど」

第七王女「それにしてもあのバカ勇者がいいふらなさければいいがのう」

「そうね アレと一緒の宿はイヤだし別の宿にしましょうよ」

娘は町長の紹介状を振りながら言う。

第七王女「わらわもそう思うがのう 今は祭ゆえにどこも満室なんじゃそうじゃ」

「困ったわね」

少年エルフ「ごめんね僕のせいで……」

「そんなことないわ あのバカ勇者が余計なことしたせいよ」

第七王女「そうじゃ あのバカがのう」

少年エルフ「でも本当にどうするの?」

「うーん」

第七王女「ここらに詳しい者がおればのう」

428 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:23:34.89 4IBbcXjc0 380/838


神官「安心してください この町に詳しい旅の僧侶がここにいますよ」二カッ

少年エルフ「あっ 神官さん」

神官があらわれた。

神官「どーもお久しぶりですエルフさん 娘さんに王女サマも」ニコニコ

第七王女「久しぶりじゃのう 魔王温泉いらいじゃの息災であったか」

神官「はい 王女サマもお元気で何より」

「それより貴方なんでここに」

神官「いや~ この先の知り合いに顔をだそうと思いまして まぁ船が出てないので足止めを食らってる次第です」

第七王女「それよりここらに詳しいのか? こっそり泊まれる宿を探しておるのじゃが」

神官「ははあ それなら安心安全秘密厳守のステキなお店がありますよ」ニコニコ

少年エルフ「ホント!? どこ?」

429 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/12 19:24:34.96 4IBbcXjc0 381/838

○町はずれの酒場?

神官「ここですよー」

ガチャ

姉・妹サキュバス「「いらっしゃいませー」」

たゆんたゆん

扉を開けると双子のサキュバスが豊満な胸を揺らして出迎えてきた。

少年エルフ「あ!」

「んな!?」

第七王女「お?」

そこは双子のサキュバスの店だった。


434 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/19 23:08:51.44 SbeOzU/y0 382/838

#20 シェアハウス・ウィズ・ツインサキュバス

435 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/19 23:09:57.64 SbeOzU/y0 383/838

○双子サキュバスの店

ガチャ

姉サキュバス妹サキュバス「「いらっしゃいませー」」

神官「今日もきちゃいましたー」

妹サキュバス「なんだ神官さんか あの話ならお断りよ」

神官「いえいえ今日はステキなお客様も一緒ですよ」

第七王女「なんじゃここは?」

少年エルフ「あの……」

姉サキュバス「きゃーー もしかしてエルフちゃん!?」

少年エルフ「やっぱりお姉さん!?」

神官「おや? お知り合いでしたか」

少年エルフ「ええ ちょっと交流会で……」

姉サキュバス「嬉しいわー わざわざ来てくれたの」

436 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/19 23:11:12.05 SbeOzU/y0 384/838


シュッ

姉サキュバスは少年エルフにかけよろうとすると前を遮る者があらわれた。

「いいえ タダの偶然よグウゼン」ゴゴゴゴゴゴ

姉サキュバス「あら!? アナタ」

少年エルフ「え? 知り合い?」

「いーいーえ 知らないわ 初対面よね」ゴゴゴゴ

姉サキュバス「え? ええそうね」

少年エルフ「そうだよね お姉さんは以前交流会で知り合ったの……ご飯食べてそれから……えっと(寝ちゃったんだっけ?)」

437 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/19 23:12:29.25 SbeOzU/y0 385/838

○???

娘友「……(聞こえますか 今アナタの心へ直接かたりかけています)」

娘友「……(異種族交流会 それはアタシの親父が開催した異種族交流をお題目にした異種族婚活パーティでした)」

娘友「……(そこでエルフさんに目を付けたのがエルフ族を騙った双子サキュバスだったのです)」

娘友「……(あわやエルフさんがその毒牙にかかるその時 乱入した娘は双子サキュバスに鉄拳制裁を加えてエルフさんを救い出しました)」

娘友「……(ちなみにエルフさんはその時の記憶はエナジードレインの影響であやふやになってます)」

娘友「……(それでは続きをお楽しみください)」


438 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/19 23:13:32.11 SbeOzU/y0 386/838


少年エルフ「えっと?」

「あら それはそれはエルフが世話になったわね」ゴゴゴゴ

姉サキュバス「……(コワイ)いえいえこちらも結構なモノを」ドキドキ

第七王女「浅からぬ因縁を感じるのう」

妹サキュバス「とりあえず何しに来たの ホント?」



姉サキュバス「へー それでお姫様と一緒に旅をしてるの」

第七王女「そうじゃ それでこの町に来たのじゃがエルフの耳がばれてしまってのう」

姉サキュバス「そうね 私はエルフちゃんを先に知ってたからそうでもないんだけど…… ヘンな噂話でエルフ族を嫌ってる人はいるわね」

少年エルフ「噂……どんなの?」

姉サキュバス「そうね…… 洪水を起こしたとか竜巻を起こしたとか」

「たしかにエルフ族の魔法ならそれくらい出来るわよね」

439 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/19 23:15:11.65 SbeOzU/y0 387/838


妹サキュバス「巨大化して手が六本で眼から光線をだしたとか」

少年エルフ「ええ!?」

神官「他にも年末に山からおりてきて悪い子供をさらって食べてしまうとか 泳いでる子供の尻からエナジードレインをするとか……」

第七王女「それは違うじゃろ」

神官「まぁ結局はただの噂ですよ 尾ひれがつくのはよくあることです」

少年エルフ「エルフ族ってなんなんだろう」うーん

少年エルフは混乱している。

「ただの噂よ 気にしないで」

姉サキュバス「何か飲む? 落ち着くわよ」

姉サキュバスはそういってメニューを渡した。

少年エルフ「ありがとう…… 飲み物いっぱいあるね」

「ほとんどお酒よ 私たちが飲めるのはこっちよ」

第七王女「ほうほう……この『ぱふぱふ』とはなんじゃ?」

440 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/19 23:16:46.50 SbeOzU/y0 388/838


神官「あらら 気づいちゃいましたソレ」

少年エルフ「どんな飲み物なの?」

妹サキュバス「それはね飲み物じゃなくてサービスよ」うふふ

姉サキュバス「試す? 気持ちいいわよ~」うふふ

少年エルフ「えっと?」

姉サキュバス「特別にエルフちゃんは二人でしてあげましょうか」

妹サキュバス「お代は魔力払いでいいから ね?」

少年エルフ「えっとえっと?」

「あーら だったら私からして貰おうかしら」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ガシッ

姉サキュバス「え!? ちょっと」

妹サキュバス「まって またアレですか!? ヒィ!!」

娘は双子サキュバスを掴んで隣室へひきづっていく。

441 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/19 23:17:41.27 SbeOzU/y0 389/838


少年エルフ「娘? えっと……どうしたの」

「エルフちょっとまっててね」

バタン

娘は双子サキュバスと共に隣室へいってしまった。


\魔力払いね じゃあコレで/

\まってそれだけはご勘弁を/

\タスケ……/

バリバリバリバリ

\オムネガー!!/

\エリクトリカルパレードー!!/

シュー

ガチャ

娘が隣室から戻ってきた。

442 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/06/19 23:18:16.64 SbeOzU/y0 390/838


娘が隣室から戻ってきた。

「エルフ 今夜の宿代も払っておいたから」ニッコリ

少年エルフ「……お姉さんたちは?」

「もう寝たわ」ニッコリ

少年エルフ「……」

第七王女「わらわ達ももう寝るかの」

神官「そうですね 二階で寝れますよ」


445 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:01:37.67 nJiWXy1h0 391/838

#21 シェアハウス・ウィズ・サキュバス2

446 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:04:44.19 nJiWXy1h0 392/838

○双子サキュバスの店・二階の部屋

ガチャ

第七王女「ここかの」

少年エルフ「いいのかな勝手に入って」

「話はついてるわよ」

神官「ここなら安全ですよ 秘密厳守ですから」

「って なんでアナタまで入ってくるのよ」

神官「ええ~ だって部屋はここだけですし」

「だからって一緒じゃなくてもいいじゃない」

少年エルフ「娘 そんな言い方しなくても だいたいここを紹介してくれたのは神官さんでしょ?」

「うっ」

神官「そうですよね さすがエルフさん 話が分かりますね」

第七王女「それよりシャワーを浴びたいのじゃが?」

「そうね…… 潮風でベタベタだしさっぱりしたいわ」

神官「それでしたらあちらに……」

447 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:06:51.30 nJiWXy1h0 393/838


神官が指さす方にガラス張りのシャワールームが設置されている。

「……」

少年エルフ「なにあれ? あれじゃあ見えちゃうじゃない」

第七王女「ふむ モダンな造りじゃのう」ぬぎぬぎ

第七王女は服を脱ぎ始める。

「ちょっと 王女……」

○廊下

ドゲシッ

「しばらく待ってなさい!」

神官「ぎゃふ」

神官は廊下に蹴り出された。

神官「やれやれ…… オトコは辛いとろこですね」

少年エルフ「ごめんね なんだか気が立ってるみたいで……」

448 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:08:24.43 nJiWXy1h0 394/838


神官「おや エルフさんも追い出されましたか?」

少年エルフ「だって娘もシャワーするんだし出てなきゃ……」

\エルフ? エルフは出なくてもいいのに/

\エルフも一緒に入らぬか/

神官「エルフさんは良かったみたいですよ」

少年エルフ「もう…… 娘も王女さまも子供扱いしないでよ!」

\親子だから別にじゃない/

\子供あつかいなんぞしとらんぞ…… 弟扱いじゃ/

少年エルフ「も~ とにかくダメ 早く済ませて」

\\はーい//

神官「……エルフさんも苦労されてますね」

449 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:10:02.12 nJiWXy1h0 395/838



神官と少年エルフが廊下で娘達のシャワーが終わるのをまっている。

少年エルフ「ねぇ 神官さん」

神官「はい 何ですか?」

少年エルフ「その…… 約束覚えてる?」

神官「約束…… 何だったでしょうか?」

少年エルフ「魔王温泉でわかれる時にしたじゃない また会ったら教えてくれるんでしょ?」

神官「あぁ 思い出しました 私の魔力についてでしたよね」

少年エルフ「うん 神官さん普通の人の魔力じゃないよね どうして?」

神官「そうですねー……(どう話したものか) 確かに私は他の方と違います」

少年エルフ「うん……」

神官「そういえば少年エルフさんはサキュバスさん達とお知り合いでしたね?」

少年エルフ「え? うんそうだけど」

450 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:12:54.28 nJiWXy1h0 396/838


神官「彼女達の生い立ちは聞いていますか?」

少年エルフ「えっと? この町の出身だったよね」

神官「はい 彼女たちはこの町生まれの普通の人間の姉妹でした」

少年エルフ「普通の人間? でもお姉さんたちって……」

神官「はいサキュバスです 彼女達は成長途中で魔族の血が発現したのです」

少年エルフ「魔族の血?」

神官「はい たまに居るのです混血児の末裔が……その古い血が発現した者がこの数十年で増えています」

少年エルフ「そうなんだ……知らなかった」

神官「無理もありません大抵は人目を避けますから 彼女たちのように町中で暮らしているのは珍しいです」

少年エルフ「そうなんだ でもそれが神官さんとどう関係するの?」

神官「私も彼女たちと一緒ということです」

少年エルフ「え゛っ!? 神官さんもサキュバスなの」

少年エルフは思わず後ずさった。

神官「いやいや違います 私はシャドウ族です」

451 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:15:22.69 nJiWXy1h0 397/838


少年エルフ「シャドウ族?」

神官「実体が希薄な影の魔族ですよ 魔力に秀でていたそうで私もその性質が強く現れました」

少年エルフ「そうなんだ」

神官「おかげで聖職者が魔族の末裔なんて! ってことで破門されちゃいましたけど」

少年エルフ「え そうなの!?」

神官「それで途方にくれていたところをある方に拾われまして 同じような魔族の末裔を探してお互いに助け合おうと組合を作ろうとしている最中なのです」

少年エルフ「組合って そんなに沢山いるの?」

神官「いや~ なかなかいませんしサキュバスさん達みたいになかなか賛同してくれない方もいますので」

少年エルフ「そうだったんだ」

神官「どうです? よろしければエルフさんも組合に入りますか?」

少年エルフ「僕が?」

神官「ええ エルフさんは魔族の末裔というわけではありませんが少数派なのは変わりませんし」

少年エルフ「少数派…… それはそうだけど」

神官「どうですかお困り事などありませんか~? 力になりますよ~」

452 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:17:11.22 nJiWXy1h0 398/838


少年エルフ「困り事……」

ギィイ

「あーら 一体何の勧誘でしょうかね」ゴゴゴゴゴ

神官「ふはっ」

娘が扉を開けて現れた。

「エルフ ダメよこんな怪しい奴の話を信じちゃ」

神官「怪しいだなんてそんな これでもレッキとした僧侶ですよ~ やだな~」ハハハ

「……まあいいわ 私と王女は済ませたからエルフも済ませてきて 待ってるから」

少年エルフ「うん わかった」

少年エルフは娘たちと入れ替わり部屋にはいる。

神官「エルフさん考えておいてくださいね 急がなくていいので」

少年エルフ「え? うんわかった」

453 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:19:23.75 nJiWXy1h0 399/838


○部屋

第七王女「さて寝るのじゃ 岬は歩いては結構かかるそうじゃからの早くに発たねば」

少年エルフ「でも……大きいベットが一つだけだよ どうしよう」

「……このサイズなら一緒でも問題はないわね」

神官「そうですね 今夜はみんな仲良く一緒に寝ましょう」ニコニコ

○廊下

ドゲシッ

神官「ぎゃひん」

「アンタはそこ!」

バタンッ!

布団でスマキにされた神官が廊下に蹴り出された。

○部屋

「まったく……遠慮ってものを知らないのかしら」

少年エルフ「えっと……じゃあ僕も向こうで寝るから」

第七王女「ダメじゃ エルフはここでわらわと寝るのじゃ」ぽんぽん

少年エルフ「イヤです」トオイメ

454 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:25:30.09 nJiWXy1h0 400/838


第七王女「むぅ 娘よエルフが反抗期なのじゃ」

少年エルフ「いやそうじゃなくって……」

「そうね…… パパ?」

少年エルフ「なに?」

「”睡眠”」ポワワーン

少年エルフ「ぅあ……」カクン

第七王女「おっと」

眠ってしまった少年エルフを第七王女が受け止めた。

「王女 パパと一緒にそっちで寝てくれる?」

第七王女「うむ わかったのじゃ…… それにしても簡単に魔法にかかったのう」

「パパは感受性が高いから…… それじゃあ私はこっちで寝るね」

第七王女「うむ おやすみなのじゃ」

娘はベットの扉側で横になり扉を見つめる。

「おやすみ……(パパは私が守る)」

455 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:27:42.47 nJiWXy1h0 401/838

○深夜・階段

ミシミシ……

姉サキュバス「この時間ならみんな寝てるわよね」

妹サキュバス「姉さん あれだけやられてるのにまだ狙うの?」

姉サキュバス「もちろんよエルフちゃんのエナジーは極上なんだから 妹ちゃんにも味わさせてあげたいわ」

妹サキュバス「そうなの? まぁ姉さんがいうなら」

○二階廊下

姉サキュバス「あら神官さんが寝てるわ」

神官「スピースピー」

スマキになった神官が廊下で寝ている。

妹サキュバス「メンドクサイからほっときましょ」

姉サキュバス「そうね」

456 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:29:51.11 nJiWXy1h0 402/838

○部屋前

双子サキュバスはエルフ達が寝ている部屋の前に来た。

姉サキュバス「よーしここね エルフちゃんの濃厚でありながら若々しさを感じる新鮮なノド越し そして悶える姿~ フフフ あの味をもう一度」じゅるり

妹サキュバス「姉さん大丈夫?」

姉サキュバス「大丈夫よ 二人で吸ってもお腹いっぱいまで吸えるわよ~ 桁外れの魔力なんだから」

妹サキュバス「そうじゃなくて……まあいいわ でもバレたら今度こそ黒焦げにされるわよあの電撃ムスメに その点わかってる?」

姉サキュバス「大丈夫よ いくら狂暴でも人間だもの こんな時間に起きてるわけないわ」

ガチャ……ギィ

姉サキュバス「さて極上エルフちゃんはどこかしら?」

姉サキュバスは扉を細くあけて室内を伺う。 室内で横になっている3人が見える

第七王女「むにゃむにゃ……」

少年エルフ「すーすー」

「……」キラン

姉サキュバス「ヒィ!」

バタン

妹サキュバス「姉さん?」

457 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:40:28.38 nJiWXy1h0 403/838


姉サキュバス「今 娘さんと目が! 目が合ったわ逃げましょう」アタフタ

妹サキュバス「寝てるっていったのは姉さんでしょ?」

ガチャ

妹サキュバス「半眼あけて寝てるとかじゃ……」

「……」ジー

妹サキュバスが覗くと扉越しに娘が凝視している!!

姉・妹サキュバス「「ヒィ!?」」

「誰が電撃ムスメですって?」ゴゴゴゴゴゴ

妹サキュバス「あああ そんな滅相も……」ガクガクブルブル

姉サキュバス「そうですす す……”睡眠”」ポワワーン

しかし娘には効かなかった。

妹サキュバス「ウソぉ!? ”誘惑”」ミョミョーン

しかし娘には効かなかった。

「……私にその手の魔法は効かないわよ 知ってるでしょ」ゴゴゴゴ

458 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:42:24.34 nJiWXy1h0 404/838


姉サキュバス「そんな!? ”幻惑”」シュワワワ

しかし娘には効かなかった。

妹サキュバス「お願い! ”魔封じ”」シュピン

娘は魔法が封じられた!

「あ」

妹サキュバス「やったわ!」

姉サキュバス「すごいわ妹ちゃん 魔法が無ければアナタなんて怖く……」

ガッ! ガッ!

娘のアイアンクロー! 娘が双子サキュバスの頭を締め上げる。

ギリギリギリギリッ

姉・妹サキュバス「「ヒイイイイイイイイ」」

「静かに…… 下に行きましょうパパが起きちゃうから」ゴゴゴゴ

459 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:46:51.99 nJiWXy1h0 405/838



\ヒィ……ゴメンナサイ……/

バタバタズルズル

神官「……んん? おや娘さんこんな時間にどちらへ」

スマキの神官は双子サキュバスを引きずって歩いていく娘に気付いた。

「あら? 起きたの」

\タスケ……/

「ウルサイっていってるでしょ」

\ハゥ……/

神官は悲壮な双子のサキュバスを見て悟る。

神官「ははあ お姉さんたちが何かやらかしましたか しかし娘さんもそんな事をしてるなんてエルフさんが知ったらどう思うでしょうかね?」

「……」

\ヤッタキイテル……/

\イイワモットイッテヤッテ/

460 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:48:22.76 nJiWXy1h0 406/838


神官「エルフさん優しい方ですから貴方の行いを知ったらきっと悲しむのでは……」

「……大丈夫よ 知られなけばいいから」

神官「え? それはどういう……まって まってください」

娘はスマキの神官をふんずけた。

神官「ぐげぇっ」

神官は気絶した。

○階段

「さ 行きましょうか(後で記憶消しておかないと)」

姉サキュバス「あの 下で何を……」ガクガク

「そうね 魔法が使えないから…… オババ直伝の”交渉”よ」ニタリ

妹サキュバス「ヒイイ」ガクガク

姉サキュバス「許して……」ブルブル

「……それか”しつけ”かな 下で決めるわ」

トントン

姉サキュバス「誰か……」

妹サキュバス「助けて……」

ズルズルズル

双子サキュバスが階段にしがみついて抵抗するが無慈悲に引きずりおろされる。

「……自業自得でしょ まったく」

娘はオババの言葉を思い出す。

―― オババ『素早く そして徹底的に』

461 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:50:44.45 nJiWXy1h0 407/838

○朝・双子エルフの店 一階

少年エルフと台七王女が二階から降りてくる。

第七王女「ふわー よく寝れたのじゃ」

少年エルフ「娘ー? 起きてるの?」

「パパ おはよう 先にいただいてるわ」

娘は朝食を食べている。

第七王女「早いのう わらわもいただくのじゃ」

第七王女も席に着く。

少年エルフ「こんな朝ごはんまでありがとうね お姉さん」

姉サキュバス「はひぃっ! エルフちゃんと娘サマのタメでしたらぁ」ビクビク

少年エルフ「え!? どうしたの? 何かあった?」

妹サキュバス「いいえ 何もアリマセン大丈夫です」ビクビク

第七王女「何をそんなに怯えておるんじゃ?」

姉サキュバス「いえ そんな」

462 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:55:58.78 nJiWXy1h0 408/838


「……そうよ いつも通りよね?」

妹サキュバス「ハイイィ 娘サマの仰る通りです」

少年エルフ「……娘……サマ?」

「ほら 早く食べないと 灯台まで結構かかるって話よね」

第七王女「うむ そうじゃったな早く発つ手はずじゃな」

少年エルフ「うん そうだね……?」

モグモグ

少年エルフ「……お姉さんたちは食べないの?」

妹サキュバス「いえ 私達はそんな……」ビクビク

「後で食べるって だから早く」

少年エルフ「う うん」

姉サキュバス「そうです早くっ…… うぅダメ戻しそうだわ」ガク

妹サキュバス「姉さんしっかり! 娘サマの前で粗相なんてしたら」ガクガクガクガク

463 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 20:57:03.00 nJiWXy1h0 409/838


少年エルフ「あの……お姉さん大丈夫?」

姉サキュバス「えぇ大丈夫よ(あぁなんて天使なのかしら)」

「……」ギロリ

姉サキュバス「はぅ!! ぅぐ……」

バタバタバタ

姉サキュバスは逃げ出した。

妹サキュバス「まって一人にしないで」

バタバタバタ

妹サキュバスは逃げ出した。

少年エルフ「娘 夜中になにしてたのホントに?」

「そんな別に……ちょっと”お話し”てただけよ ほらもう時間よ先に支度するわ」

バタバタ

娘も逃げるように二階へ上がっていった。

少年エルフ「……」

第七王女「とりあえず食事を済ませるのじゃ」

少年エルフ「……うん」

464 : ◆VEKixXsFvlSQ - 2016/07/03 21:00:26.85 nJiWXy1h0 410/838



第七王女「よーし皆の者準備できたの?」

少年エルフ「結構時間かかったねぇ」

「誰かさんが遅かったから」

神官「あの? 結局ほどいてくれたのエルフさんでしたよね? ですよね?」

「なんで貴方まで来るのよ」

神官「灯台までは道が細いし霧も出ますよ案内が無いと迷いますよ それに灯台守が私の友人でして……」

第七王女「ふむ 知り合いなのか?」

神官「どうせ船で寄るつもりでしたし 貴方たちが歩いて行くならご一緒した方が早いと思いまして」

少年エルフ「そうだったんだ 無事でいるかな? 心配だね」

神官「……そうですね 心配です」

第七王女「ならば急ぐのじゃ しゅぱっーつ」

第七王女たちは岬の灯台へ向かう。



続き
少年エルフ「人間の娘を育てたら魔王を探しにいくことになりました」【#3】

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