1 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 16:06:42.21 5Wx+rhu20 1/26

師匠「甘いッ!」ブンッ

勇者「はっ!」キィン

師匠「ぬ、こやつわざと隙を!」

カァン

勇者「へへ……初めて、当たりましたね」

師匠「フウ……剣技は、合格じゃな」

勇者「魔法も、習得しましたよ。例の『影』を」ニッ

師匠「なっ!」

元スレ
勇者「ラストバトルが長すぎる」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1528960002/

3 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 16:13:57.68 5Wx+rhu20 2/26

師匠「……『影』は最も初歩の魔法、魔法使いとなるための門といえる」

師匠「だが、決して容易にできるものではない。人間が、魔法使いになるための儀式でもある……」

勇者「見ててください」スッ

勇者「瞑想し、マナを生み出す魂の力、オドを自身の影に投影する」ズズズ

勇者(そうすることで、自身の相棒である影に自我を与える、一種の降霊術(タルパ)……)

勇者(影の自分は、より俯瞰的に、より広く自分を見ており、的確な助言をくれる……と、同時に、魔法の発動を補助してくれる

『呼んだかな、もう一人の僕』ズズズ

勇者「……これで、合格ですね」ニッ

師匠「ううむ……ワシは『影』を会得するのに、十四年掛かったというのに」

勇者(元王国の重鎮の大賢者が、十四年……俺ってすごいんだな)ニヤッ

師匠「己惚れるでないぞ、今後も精進するのだ」

勇者「は、はい!」

4 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 16:21:47.65 5Wx+rhu20 3/26

師匠「では、今日からお前は本当の勇者となるわけだ」

師匠「明日にでも、魔王を討つ旅に出るのだ。お前にはこの剣を授けよう」

勇者「これは……」

師匠「千年前の七賢者様が残した聖剣だ」

師匠「七賢者様のオドが封じられた、七つの塔がある。塔を巡り、聖剣に七賢者様のオドを宿すのだ」

師匠「さすれば聖剣の輝きが、魔王の力を弱めるであろう」

勇者「……はい」ゴクッ

6 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 16:23:40.02 5Wx+rhu20 4/26

師匠「……それから、同じく魔王討伐に出たという、帝国の王子には気を付けるのだぞ」

師匠「囚われた我が国の姫様を助け出したことをプロパダンガにし、そのまま政略結婚を目論んでおる」

師匠「ゆくゆくは、我が国を支配する足掛けにする腹積もりであろう。あの帝国は昔からそうなのだ」

勇者「……姫様は、俺の幼馴染でもあります。そんなことには決して利用させません」

師匠「うむ、よい」

8 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 16:32:03.41 5Wx+rhu20 5/26

勇者「では、村の者達に別れの挨拶をしてきます」

師匠「もう一つ、老婆心から忠告してもよいかの?」

勇者「えっ」

師匠「お前、白狼の娘を捜すつもりだろう?」

勇者「……」

勇者(俺が幼少の頃、白狼という魔族の親子が人に化け、怪我の療養のために村に訪れた)

勇者(俺はその子供の方と親友になったが、強いオドを持つ俺は偶然、親の変化を見抜いてしまい、動揺の中、矢で撃って致命傷を与えてしまったのだ)

勇者(あの子は、泣きながら逃げて行った)

勇者(魔族と人間が戦争を繰り広げている以上、当たり前のことだ、騙して村に押し入った奴が悪いと、誰もが言った)

勇者(しかし、俺はひと目会って、あの子に謝りたいのだ)

師匠「魔族と人間は決して相容れぬ、不幸を招くだけだ。絶対に捜してはならんぞ」

勇者「はい……わかっています」

『嘘吐き』ボソッ

9 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 16:42:47.98 5Wx+rhu20 6/26

―最初の都市・アノレット―

勇者「初めての都会だ! すごい! 香辛料がいっぱいある! これなら食糧が魔豚ばっかだって困らないぞ!」

店主「兄ちゃんアノレットの街は初めてかい?」

勇者「はい!これとこれとこれをください」

『んー、所持金が足りないよ』

勇者「……あ、本当だ。計算速いんだな、お前」

『フフン』

―一番目の塔―

勇者「くそ、ヘルムを買ったのに塔の亡霊にまた負けた……」ハァハァ

『武器は装備しないと意味がないよ』

勇者「あ、本当だ」

『まずはメニュー画面を……』

勇者「何の話?」

―二番目の塔―

王子「聖杖を持つ俺こそが、真の勇者に相応しいのだ! お前の持つ聖剣の輝きを寄越せ!」ジャキンッ

勇者「誰がお前みたいな奴に! やるぞ、影! 『ファイアボール』」ジャキン

『あいよ相棒、任せといて』ドゴォッ

王子「平民風情がぁ! アイスガード!」キンッ

勇者「だが、距離は詰めたぞ」ザンッ

王子「う、うぐ……今回のところは、引き上げてやる。だが、次はこうはいかないぞ平民め……」

勇者(あいつが帝国の、王子。姫様を狙っている……)ゼェゼェ

『イケメンだったね』

勇者「かっ、関係ないだろぉ!」アセアセ

11 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 16:54:32.16 5Wx+rhu20 7/26

―中頃の辺境街・ハキュロ―

勇者「……これで、七賢者のオドも既に、三つ集まった。ここで四つ目だな」

『魔族領に近づいて来た、油断は禁物だよ』

女剣士「……」チラッ、チラッ

『…………』

『あの子、向こうからじっと君を見てるけど、一目ぼれされたんじゃ?』

勇者「ま、まさか、僻地で外からあまり人が来ないから、珍しいんだよ俺みたいなのが」チラッ

女剣士「ッ!」ダッ

『顔赤くして逃げて行ったね』

勇者「……」

―四番目の塔・入口―

女剣士「でで、では、私が! 村長の命で、勇者様を、七賢者像まで案内することになりましたので!」グッ

勇者(……大丈夫かな、この子)

『…………』

―四番目の塔・最上階―

王子「ちっ! これで貴様と鉢合わせは三回目か、平民!」ジャギン

女剣士「お、お知合いですか勇者様ぁ!」

勇者「……腐れ縁だよ」

王子「貴様、姫様姫様と言っておきながら、女を侍らせていたのか!軽薄者め!」

勇者「いや、この子は村長の命できた、ただの案内人で!」

王子「俺のときは付き添いなどいなかったぞ!」カァン

勇者「態度が悪いから嫌われたんだよ‥‥‥」グググ

13 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 17:01:46.84 5Wx+rhu20 8/26

―国境の地・ガノッサ―

勇者「ふう……ここは、砂漠か」

『この辺りは、治安が悪いから気を付けて。ひったくりも多いかもしれないよ』

女剣士「勇者様、安全な宿を調べておきました! 私、役に立ちましたか!」

勇者(なんでこの子、ついてきたんだ……?)

―五番目の塔―

王子「チッ、まさか、賢者様の塔が、盗賊団のアジトにされているとはな。なんという奴らだ」

勇者「クソ、街の娘が牢に囚われているなんて。だが、助けるには敵の数が多すぎる……」

王子「……仕方ない、一時停戦して、協力してやろう」チッ

勇者「不本意だが、そうするしかない、か」チッ

女剣士「実はお二方、仲良しなのでは?」

王子勇者「「あん?」」

女剣士「なな、なんでもないです……」

15 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 17:11:40.53 5Wx+rhu20 9/26

―六番目の塔―

勇者「まさか、塔が改築されて闘技場にされてるなんて、な……」

女剣士「さすがにびっくりですね……」

女剣士「おまけに優勝トロフィー、アレ、七賢者の像を加工して作ってるらしいですよ」

勇者「……あれ、賢者のオド残ってるんだろうなぁ」ハァ

勇者「信仰もクソもあったもんじゃないじゃない」

女剣士「五番目の盗賊団より不敬ですよこれは」

―六番目の塔・三回戦―

勇者「くっ、強い!」カァンカァン

謎の老人「……」キィンキィン

勇者「ルーモア!」

『そうれ、お見舞いだ!』パァァン

勇者「はぁああ!」ゴスッ

謎の老人「うぐっ!」ドサッ

勇者「ふ、ふう、三回戦ともなると、侮れないな」

謎の老人「ふふ、久々に様子を見に来たが、強くなったの。心配はいらんかったようだ」

勇者「しっ、ししょおおおお!」

―六番目の塔・決勝戦―

王子「まーーーたお前かああああああ!」キィンキィンキィン

勇者「うるせぇええ!いい加減、諦めて国に帰りやがれええええええ!」シュンッ

女剣士(仲良さそうだなぁ……)ニコニコ

16 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 17:24:33.41 5Wx+rhu20 10/26

―魔族領・ヴァルティア―

勇者「ここは、かつては人の地だったが、魔王の侵攻によって魔族領と化したところ、か」

女剣士「しかし元々、土地に誰かのものだっていう主張は間違っているのではないですか?」

女剣士「人間が台頭する前の混沌の世では、世界中に魔獣が蔓延っていたといいます」

勇者「珍しく哲学的なことを言うな」

女剣士「うへへぇー勇者様に褒められちゃいましたー!」ギュッ

勇者「こらこら引っ付くな」

『あ、僕、ひょっとしてお邪魔虫ですか?』

―ヴォレント村―

魔物「帰りな、ここは人間の来るところじゃない!」ダッ

勇者「クソッ! 変装がばれた!」

女剣士「やっぱり無理があったんですよお!」

女剣士「塔だけいって、さっと返ってきましょうよお!」

勇者「ひょ、ひょっとしたら、白狼のことが聞けるかなって……」

女剣士「ハクロォ? なんですか、それ」クビカシゲッ

勇者「な、なんでもない……塔に行くか」グスン

『…………』

勇者「影を操って魔物型にして情報収集作戦、思いの外上手く行ったな」

女剣士「そうですね……塔の情報も聞けましたし、買い物もできましたし、ハクロオさんの事も聞けましたし」

勇者「昔この地に来たことがあったとは」

勇者(……昔は優しい奴だったんだが……この村では、スイッチが入ったかのように突然暴れ出す、危ない奴だと言われていた)

勇者(魔王領、人間領にある、創世代の石板を確かめるため、この村を出たという。どこかで、会えるのだろうか……?)

勇者(俺の旅も、もう終わりが近づいているというのに)

18 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 17:30:58.61 5Wx+rhu20 11/26

―七番目の塔―

勇者「……お前、噂程、悪い奴じゃなかったな」ジャキン

王子「今回は、殺し合いだ」

勇者「は? そ、そこまでしなくても」

王子「使命を果たせない帝国王子など、父上は必要としていない」

王子「王子といっても、しょせんは帝王候補の一人……俺はどの道、帝王になれなければ何処かで暗殺される」

勇者「……」

王子「手を抜こう、なんて考えるな。これはお前と俺との決着で、俺にとっての試練だ。来い、平民風情……」

女剣士「……そ、そんな」ハラハラ

王子「……やはり、勝てなかった、か」ドサッ

勇者「……行くぞ、女剣士」タッ

女剣士「は、はい」

王子「待てよ、トドメを刺していけ! おい!」

王子「戻ってこい平民! 俺の名を穢すつもりか!」

王子「この、下賤なクソ平民がああっ!」

勇者「…………」

『……殺してあげたら?』

勇者「俺には、できないよ。あいつは、俺の、親友なんだ」

『……そう』

19 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 17:38:32.02 5Wx+rhu20 12/26

―魔族領・魔王城―

女剣士「ようやく、ここまで来ましたね」

『七賢者のオドの輝きが聖剣に灯った』

『君が世界を変えるときが来たんだ』

勇者「ああ」

女剣士「私、勇者様が魔王に負けるわけないって、信じていますから!」グッ

勇者「扉を開けるぞ」ギィッ

魔王「…………」

魔王「よく、我が四天王を退けた、勇者よ」

勇者「観念しろ、魔王、貴様もここまでだ」

魔王「だが貴様は、この我に触れることさえ敵わぬ」

魔王「見よ、これがかつて闇の世界を作った、七魔人のオドの力よ」シュウウ

魔王「この力で、我は魔族領を築き上げた……」

勇者「――ふん」シュッ

魔王「や、闇の盾が!」

魔王「そ、その剣は……そうか」

魔王「これは我も、本気を出さねばならんようだな」ジャキン

20 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 17:44:34.24 5Wx+rhu20 13/26

魔王「ぐうっ! 我が、この我が……」

勇者「はあああっ!」シュンッ

魔王「う、うぐ……」

勇者「そこだっ、『ホーリーシュート』」

『安易に間合いから離れたね!』ドガァアアン

魔王「この程度……!」

勇者「これで、終わりだ!」スッ

魔王「既に、こんなに近くに……!」

魔王「馬鹿な、バカなぁあああ!」シュウウ

勇者「魔王が、身に纏っていた者を残して消滅した……」ハァハァ

女剣士「や、やった! 勇者様が勝った!」グッ

勇者「後は姫様を助けるだけだ!」

21 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 17:52:39.46 5Wx+rhu20 14/26

―魔王城・牢獄―

勇者「姫様、助けに参りました!」

「勇者様っ!」

女剣士「……なんだか、複雑だなぁ」クスッ

『…………』

『……ねぇ、もう一人の僕』

勇者「なんだ?」

『まだ、終わってないみたいだよ』

勇者「え?」

王子「……よう、平民」スッ

勇者「お、王子!? その剣、魔王の……なぜ、なぜここに!」

『だ、ダメだ、あの剣は……魔王の力の、源が宿っている!』

王子「何のためかって? ククク、お前との決着をつけるためだ」ジャキン

王子「あの場で俺を殺さなかったこと、後悔させてやるよ」

勇者「…………」

22 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 17:58:10.94 5Wx+rhu20 15/26

王子「一つ教えておいてやる」

勇者「……」

王子「お前が初期に俺に言っていた、帝国が王国を支配するための足掛かりとして、魔王討伐と姫を政治に利用するつもりだという言いがかりな……」

王子「あれ、実のところ、そんなに言いがかりでもないんだ」ニィ

勇者「なっ!」

王子「俺は帝国の領地増大のきっかけ作りを担うことで、初めて父上から本物の継承者、息子であると認められる」

王子「それが俺の故郷、帝国のやり方だ」

王子「姫のことも、お前のご指摘通り、便利な道具としか考えちゃあいない」ニヤッ

「王子……」

勇者「……」

王子「来いよ勇者、お前を殺し、俺は魔王殺しの成果を奪い、姫を犯し」

王子「貴様の王国の全てを手に入れる!」ゴオッ

『これが、本当に最後の戦いだ! 気を抜かないで!』

勇者「ああっ!」

24 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 18:03:39.39 5Wx+rhu20 16/26

王子(魔人化第三形態)「…………」シュウウウ

勇者「……これで、終わった」

『まさか、魔王の剣の力が暴走するなんて、ね』

王子「クク……見事、ダ。ソレデコソ、俺ノ、好敵手……」

勇者「王子……」

王子「俺は、一ツダケ、嘘ヲ吐イタ」

王子「姫のコトハ、本当に、愛シテイタ……」

「…………」

勇者「じゃあ、な」ドスッ

王子「…………」ガクッ

26 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 18:09:00.98 5Wx+rhu20 17/26

黒衣の男「……これが魔王の剣、七魔人のオドが秘められた邪剣、か」フッ

勇者「なっ! お、お前、何処に隠れていた」

女剣士「な、何者なの!」

黒衣の男「フフフ、ずっとつけておったのに」

勇者「いつから……城の、前からか?」

黒衣の男「いつからだと思う?」

『……最初の街、アノレットの、前からだね』

勇者女剣士「「「!?」」」

黒衣の男「フフフ、やはり、タルパの影はよく見ておるの。だが、言われねば気付かぬ、その愚鈍さが災いよ、本人に似たな」パサッ

勇者「あ、ああ、あ……」

師匠「いつでも警戒を怠るなと、そう教えたのだがな……」

27 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 18:20:40.64 5Wx+rhu20 18/26

師匠「ワシじゃよシンイチ……」

女剣士「う、嘘、あの人、闘技場で見た、勇者の師匠様……!」

「あ、貴方は!? 元王国の大賢者、バウズ!」

女剣士「し、知っているんですか!?」

師匠「フフフ、勇者よ、お前には、なぜこの偉大なる大賢者とまで称されたワシが、王国の重鎮から外されて田舎村で隠れ住んでおったのか、ついに話さんかったからな」

勇者「な……な……」

師匠「ワシは前王の命令により、不死の命を得るための魔物化の研究をしておってな。だが、間に合わずに前王が死ぬや否や、王家はワシの偉大なる研究を、ワシごと消し去ろうとしたのじゃ!」

師匠「ワシは王家の弱みを記した書類を持ち出し、命からがら逃げだした」

師匠「よって王家はワシを表向きには引退したことにして、捜し回っていたのじゃ」

師匠「そしてこの魔人化の秘法が、この魔王の剣によって完成する……帝国の小僧の様な、不完全なものではなく、な!」

「……う、うう」

女剣士「王家が、そんな醜聞を隠していたなんて……」

『いつの権力者も、同じことを考えるものだね』

勇者「……な、な」

師匠「どうだ勇者、衝撃の事実の前に言葉も出ぬか?」

勇者「長いよ!? いや、いい加減長いよ!」

師匠「なんだと!?」

28 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 18:27:45.19 5Wx+rhu20 19/26

勇者「魔王倒しました、でもライバルが最後に立ち塞がりました……」

勇者「一回だけなんだよ、こういうことしていいのはさぁ!」ドンッ

師匠「なんじゃとぉ!?」

勇者「こっちだっていい加減疲れてるんだよ!」

師匠「わ、訳の分からんことを言うな! これはワシの、すべてを賭けた復讐劇なんじゃ!」

師匠「ワシの研究により、ワシが新たな魔王となり、世界を恐怖で覆い尽す……!」

勇者「伏線あったら何やっても許されるってもんじゃないんだよ、諄いんだよ!」ドンッドンッ

「……確かに、王子と役割が被ってますね」

女剣士「最近の魔王がオーソドックスを通り越して、それへのアンチテーゼとしてメタファンタジーや大魔王が用意されていることもありますが、二回連続はちょっと……」ゴニョゴニョ

師匠(魔人化)「黙っておれ! ワシは、ワシはこの力によって、世界ヲ、世界ヲ支配スル……復讐ハ、ナル……!」ゴゴゴゴゴ

31 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 18:37:00.92 5Wx+rhu20 20/26

師匠(魔竜化)「バカナァァァアアアッ!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

『なんとか、勝てた、ね……』

「……思えば、我が祖父の身勝手が発端なのですね。大賢者様に、どう償えば……」ボロボロ

『……仕方なかったんだよ。それに、君の気に病むことじゃあないさ』

勇者「まさか、竜になってから七回もタイプチェンジするとはな」ゼェゼェ

『あ、ちょ、ちょっと、それはないんじゃない!?』

勇者「えっ」

「し、師匠、なのでしょう? 大賢者様はっ! どうしてそんな、平然とした顔ができるんですか!」

勇者「だ、だって、苦労したの、俺だもん! 王子のときは、ちゃんと余韻持ってたよ!」

勇者「今は、そういう気持ちにはなれないっていうか」

「人は、誰かの代わりになるようなものではないのです! どうして勇者様にはそれがわからないんですか!」ボロボロ

勇者「だって、だって……!」

33 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 18:44:56.09 5Wx+rhu20 21/26

「わからない、私、勇者様の心が理解できません!」ボロボロ

勇者「ちょ、ちょっと待って! 俺の気持ちも考えて! だって、延長戦が二連続だよ!?」

女剣士「…………」ヒョイッ

勇者「か、影、俺ならお前の気持ちもわかるだろ? な?」

『う、う~ん、そこで振られても……』

勇者「女剣士っ! 俺を、俺をフォローしてくれ」

女剣士「…………」グィッ

勇者「痛っ! お、女剣士、なぜ、俺の聖剣を、奪おうとするんだ? それに、いつの間に魔王の剣を……」

女剣士「…………」ググググッ

勇者「ち、力比べじゃ、女には負けない! 早まるな、女剣士!」

『!! まずい、女剣士に絶対に剣を渡さないで!』

勇者「わかっている、俺も凄く嫌な予感がしている!」グググ

女剣士「ガァァァァッ!」ドガッ

勇者「ぐわぁっ!」ドサッ

35 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 18:57:01.11 5Wx+rhu20 22/26

女剣士「……ようやく二本の剣が手に入りました」

女剣士「正確には、創世の七賢者と七魔人、合わせて十四の半神の魂のオドが……」

勇者「お、女剣士……?」

女剣士「まだ、気づかないのですか、勇者様」

女剣士「私ですよ、貴方に母親を殺された、魔族の娘です」ニィ

勇者「は、白狼、白狼なのか!?」

女剣士「フフフ、そうです。勇者様、お変わりはないようで」ニマァ

『……そうか、最初から、敵討ちが狙いで……!』

女剣士「いえいえ、とんでもない。勇者様が優しいお人だっていうことは、私、知っているんです」ニコニコ

女剣士「……悪いのは、人間と魔族が争い続けなければいけない、こんな世界の方ですねよ?」ギロッ

女剣士「だから私は! 創世の神々の力を用いて、この世界を滅ぼすんです! フフフフ、アハハハハハ!」

36 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 19:02:13.12 5Wx+rhu20 23/26

勇者「や、やめてくれ女剣士、こんなことは!」

女剣士「この期に及んで、優しい事ですね。安心してください、勇者様はクリスタル付けにして、ずぅっと私の物にしてあげますから」

勇者「これ三回目だから!」

女剣士「は?」

勇者「もう、元の話忘れちゃったよ俺!」

勇者「二回やったら諄いだけだけど、三回やったら斬新だって?」

勇者「そんなわけないだろうが!」ドンッ

女剣士「……最期まで、人を喰ったような態度でしたね、貴方は」

女剣士「そんなところも、愛していましたよ。そして、これからも」ズズズズズ

勇者「チクショオオオオオオオオオ! やるしかないのかあああああああああ!」

『……行こう相棒、これが、本当に最後の戦いだよ』

『終わらせるんだ、悲しみを……』

勇者「お前ももっと疑問を持てええええええええええええええええ!」

38 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 19:06:30.57 5Wx+rhu20 24/26

―五十年後・王城―

青年(なんで俺なんかが、こんな目に……)

「かつて世界を救った英雄でもある国王様から、直々に勇者と見込まれるとはな」

「決して失礼のないようにな!」

青年「……で、でも俺、何の才能もない、ただの村人なんですが……なんでこんな、普通の俺が……」

「思慮深いお考えあってのことだ! 早く謁見に向かわれよ!」

青年「は、はい」

39 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 19:14:00.30 5Wx+rhu20 25/26

―王の間―

「頭を上げよ」

青年「は、はい……」

「…………」

青年(このお方が、かつて世界を魔族のものにしようとした魔王を討伐し……)

青年(そして、魔人の力を得て狂った王子を討伐し、帝国の野望を阻止し……)

青年(王国に恨みを持ち、次の魔王になろうとした大賢者を討伐し……)

青年(創世の力を使って世界を無に帰そうとした魔族を討伐し……)

青年(王国の姫として転生し、世界を影で操って魔族と人間を対立させていた邪神を討伐し、世界を救ったお方……!)

41 : 以下、5... - 2018/06/14(木) 19:22:05.93 5Wx+rhu20 26/26

青年「その……失礼は承知なのですが、二つ、お尋ねしてもよろしいでしょうか……?」

「申せ」

青年「なぜ、こんな何のとりえもない、ただの村人の私を、勇者に……」

「お前の出自、血筋を、祖父の祖父の代に渡るまで調べさせてもらった」

青年「……わ、私には何か、隠された秘密が……」

「お前には、本当にびっくりするくらい何もなかった」

青年「えっ」

「何の因縁もない、何世代遡っても凡凡凡……これほど素晴らしい逸材はない。おまけに日頃は家から出ないごく潰しで、どことの関りも薄いと来た」

青年「あの、バカにしていますか?」

「ふざけてなどいない! これがどれだけ素晴らしいことか!」ドン

青年「ええ……」

「さあ、話は終わった! 余計な因縁ができる前に旅立つのだ!」

青年「ま、待ってください、最後にもう一つ、尋ねさせてください!」

「……む?」

青年「なぜ、王様は影がないのです……?」

《完》

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