1 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:22:05.69 ESMwfhX+0 1/25

―薬局―

薬剤師「お薬手帳はお持ちですか?」

患者「あ、すみません……実は忘れてしまって……」

薬剤師「……」ビキッ

助手娘「!」ビクッ

薬剤師「お薬手帳を忘れただとォ~!?」ビキビキッ

患者「は、はい……」

薬剤師「申し訳ありませんが、こちらの部屋へどうぞ」

患者「な、なんで!?」

薬剤師「いいからこっちへ来い!!!」グイッ

元スレ
薬剤師「お薬手帳を忘れただとォ~!?」患者「は、はい……」薬剤師「こっちへ来い!!!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1529940125/

5 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:24:09.46 ESMwfhX+0 2/25

ドカッ! バキッ! ガッ! ガスッ! ゴッ!

患者「う、うう……」

薬剤師「吐け! 本当に忘れたのか!?」

患者「は、はい……家に忘れました……」

薬剤師「ウソつけェ!!!」

ドゴォッ!



助手娘(む、むごい……!)

8 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:26:21.75 ESMwfhX+0 3/25

薬剤師「電極をつけて、と」

バチバチバチバチバチッ

患者「うぎゃああああああああああああっ!!!」

薬剤師「さぁ、思い出せ! 本当に忘れたのか!?」

バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ

患者「あぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」



助手娘「えええええ……!」

10 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:28:28.14 ESMwfhX+0 4/25

バチバチバチバチバチッ

薬剤師「思い出せ! 掘り起こせ! 埋もれた記憶を!」

助手娘「薬剤師さん、いくらなんでもやりすぎですよ!」ガシッ

薬剤師「やりすぎなものか……」

助手娘「でも!」

薬剤師「これぐらいしなければ……操作された記憶は矯正できん」

助手娘「えっ、それはどういう――」

12 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:30:32.96 ESMwfhX+0 5/25

患者「あっ……」ビクン

助手娘「ど、どうしました!?」

患者「思い出しました!」

患者「僕、この薬局に来る寸前、黒服の男に襲われて……」

患者「妙な薬を嗅がされて、お薬手帳を奪われたんです!」

薬剤師「やはりな……“お薬手帳狩り”か!」

助手娘「忘れたんじゃなく、奪われてたんですか!」

15 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:32:32.95 ESMwfhX+0 6/25

薬剤師「じゃあこれ、新しいお薬手帳です」

患者「ありがとうございます! 記憶を取り戻したおかげで心が軽くなりました!」

患者「あれ? なんだか体も軽くなったみたいだ……」

薬剤師「あなたにやった殴打はマッサージ、電気ショックは体をほぐす作用があるんでね」

患者「そうだったんですか! いやー、体が何歳か若返ったようですよ!」

助手娘(すごい……拷問してるようでいて、ちゃんと治療してたんだ……!)

18 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:35:29.80 ESMwfhX+0 7/25

助手娘「さっきはすみませんでした! やりすぎだなんていって……」

薬剤師「いや、ちゃんと説明しなかった俺も悪かった」

助手娘「でもあの人どうして、お薬手帳を奪われるなんて重要なことを忘れてたんでしょう?」

薬剤師「彼は記憶を操作されていたんだ」

助手娘「記憶操作!?」

薬剤師「おそらく嗅がされた妙な薬とやらに、記憶を操作する作用があったんだろう」

薬剤師「それで、彼は『お薬手帳を奪われた』という記憶を」

薬剤師「『お薬手帳を忘れた』という記憶に上書きされてしまったんだ」

19 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:37:32.09 ESMwfhX+0 8/25

助手娘「でも、どうしてわざわざそんなことを?」

助手娘「お薬手帳を狩るだけなら、わざわざ記憶操作なんてしなくても……」

薬剤師「『お薬手帳を奪われた』と『お薬手帳を忘れた』だとまったく事情が変わる」

薬剤師「前者だったら薬剤師は新しいお薬手帳を渡すだろうが」

薬剤師「後者なら薬剤師は、次回はちゃんとお持ち下さい、で済ませる可能性が高い」

助手娘「なるほど! 新しいお薬手帳を渡させないためですか!」

22 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:39:20.58 ESMwfhX+0 9/25

助手娘「それにしても、どうして“お薬手帳狩り”なんかを……?」

助手娘「犯人はいったい何者なんですか!?」

薬剤師「なんとなく察しはつくが……推測を重ねてもしょうがない」

薬剤師「犯人から直接聞き出さなきゃな……」

助手娘「どうやって?」

薬剤師「いい作戦がある」

26 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:42:42.12 ESMwfhX+0 10/25

「お薬手帳持って、薬局に処方せん持っていこうぜ~」

「行こう行こう~!」

「お薬手帳があれば、お医者さんや薬剤師さんに自分が今なにを服用してるか、すぐ伝えられるから」

「組み合わせたらダメな薬を飲んでしまうリスクを減らせるし」

「災害時に、自分に必要な薬をよりスムーズに受け取ることもできるね!」

「お薬手帳があれば、いいこと尽くめだ!」



黒服「ちょっと待った」ザッ

27 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:44:45.02 ESMwfhX+0 11/25

「なんですかあなたは?」

黒服「お前たちのお薬手帳……奪わせてもらう」

「どうしてです!?」

黒服「理由は話せん……とにかくお前たちは罠にかかった獲物というわけだ」

「あいにくだが、罠にかかったのはお前の方だよ」

「作戦がうまくいきましたね!」

黒服「……!?」

バサッ

薬剤師「やっと会えたな、“お薬手帳狩り”!」

助手娘「あたしたちは薬局の人間なんです!」

黒服「な、なんだと!?」

30 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:46:42.63 ESMwfhX+0 12/25

黒服「おのれっ、この俺をおびき出すために変装したか!」

黒服「ひとまず退散――」

薬剤師「錠剤投げ!」ビュババババッ

ビシシシシッ!

黒服「ぐああっ……!」ドザッ



助手娘「やったぁ! 銭形平次みたい!」

32 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:48:30.21 ESMwfhX+0 13/25

薬剤師「なぜこんなことをした? 黒幕は誰だ?」

助手娘「教えて下さい!」

黒服「誰が吐くものか……!」プイッ

助手娘「むう、強情なんだから……」

薬剤師「……まともに吐かせようとしたら、日が暮れてしまいそうだな」

薬剤師「だったら……これを使う」サッ

助手娘「出た! 黄金のお薬手帳!」

助手娘(国から特に認められた優秀な薬剤師さんだけが持てる、最上級のお薬手帳!)

34 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:50:24.41 ESMwfhX+0 14/25

黒服「なんだそれは……!?」

薬剤師「通常のお薬手帳は、持ち主の服用した薬を記録するだけだが」

薬剤師「このお薬手帳はそうではない」

薬剤師「文字で記録されている薬を実際に取り出し……使用することができる!」

黒服「なにぃぃぃ!?」

薬剤師「お前にはこの……CIAも愛用してるという自白剤を使わせてもらう」サッ

黒服「や、やめ……」





黒服「ああ~~~~~~~~っ!!!」

37 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:53:33.22 ESMwfhX+0 15/25

―悪徳製薬会社―

社長「クックック……」

社長「“お薬手帳狩り”は順調に進んでいるようだな……」

社長「お薬手帳がなくなれば、医師や薬剤師どもは適切な処方や調剤ができなくなり」

社長「飲ませてはいけない薬を飲ませてしまうなど、ミスを連発する!」

社長「やがて、市民たちは従来の薬剤師たちを信頼しなくなる!」

社長「そこで、我が社の特別薬剤師チームの出番だ!」

38 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:55:47.67 ESMwfhX+0 16/25

社長「我が社の薬剤師チームが、我が社の薬によって、適切な治療を施す!」

社長「その結果、病に苦しむ市民たちはみんな我が社に頼るようになる!」

社長「そうなれば、我が社の名声と業績はうなぎ登り! 土用の丑の日!」

社長「製薬業界及び医療業界を、我らが席巻するというわけだ!」

社長「ハーッハッハッハッハッハ!!!」





薬剤師「やはり、こういうことだったか……」

39 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 00:58:17.53 ESMwfhX+0 17/25

社長「む!?」

社長「貴様……さては薬剤師か!」

薬剤師「お前の部下が全て吐いてくれたよ。黒幕も、お前の目的もな……」

社長「……!」

助手娘「お薬手帳を奪って、間違った処方をさせるなんて、絶対許せません!」

薬剤師「悪徳社長……あんたの野望は、ここで粉薬のように粉砕させてもらう!」

社長「ふん、滅びゆく運命の旧式薬剤師の分際で……」

社長「この私を舐めるなよ!!!」

40 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 01:00:14.89 ESMwfhX+0 18/25

社長「風邪薬から抗がん剤まで幅広く手掛けている我が社……」

社長「むろん、ドーピング剤も開発しておるのだぁ!」チクッ

社長「ぬおおおおおおおおっ!!!」ムキムキムキッ



助手娘「きゃあああああっ! 筋肉が盛り上がって……ボディビルダーみたいに!」

薬剤師「心配するな……」

薬剤師「こっちにもドーピング剤はある!」

41 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 01:02:44.50 ESMwfhX+0 19/25

薬剤師「黄金のお薬手帳!」ペラララッ

薬剤師「俺が飲むのは……プロテインだ!」

薬剤師「牛乳に溶かして……いただきます!」ゴキュゴキュゴキュ

助手娘「出たプロテイン! 世界中のアスリートが愛飲する最強のドーピング剤だわ!」

薬剤師「はああああああああ……! こんにちは、タンパク質!」メキメキメキッ



社長「ほう、ココア味とは……さては通だな!?」

社長「我がステロイドと貴様のプロテイン! どちらが上か決めようではないかぁ!!!」

43 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 01:04:30.56 ESMwfhX+0 20/25

薬剤師「錠剤投げ!」ビュババババッ

社長「この鋼鉄の肉体に、そんなものは通用せんわぁ!」キキキンッ

薬剤師「ならば鍛え抜いた薬指で、体を突く!」ビュオッ

ガキンッ!

薬剤師「!?」

社長「ぬるい攻撃だ……」

社長「貴様の体で我が攻撃力を試してやろう……“臨床死拳”!!!」ブオンッ

ボゴォッ!!!

薬剤師「ぐごあぁっ!」ドザッ

45 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 01:06:26.20 ESMwfhX+0 21/25

社長「旧式が……このまま押し潰してくれる!」グググッ

薬剤師「が、がはっ……!」メキメキ…

薬剤師(なんという圧力……! プロテインパワーが、負ける……!)メキメキメキ…



助手娘「あああっ……!」

助手娘(薬剤師さんが……死んじゃう! なんとかしないと!)

47 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 01:08:40.90 ESMwfhX+0 22/25

助手娘「薬剤師さん、負けないでーっ!」

助手娘「日本の製薬業界を救ってぇーっ!」

助手娘「それにあたし、まだまだ薬剤師さんと一緒に働きたい! 調剤したいのーっ!!!」



薬剤師「……!」

薬剤師(そうだ……俺はこんなところでくたばるわけにはいかない!)

薬剤師「うおおおおおっ!!!」グググッ…

社長「こいつ……まだ動けるのか!?」

51 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 01:11:11.71 ESMwfhX+0 23/25

薬剤師「今こそ発動させる!」

薬剤師「究極奥義、“赤十字(ブラッディクロス)”!!!」ギュオッ


ズバシュッ!!!


社長「ぐああっ! 私の胸に、十字の傷がぁぁぁ……!」

社長「おのれぇ、赤十字ぃ……!」ドサッ…




薬剤師「ハァ、ハァ、ハァ……終わった……」

54 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 01:13:57.31 ESMwfhX+0 24/25

―薬局―

助手娘「見て下さい! “お薬手帳狩り事件”の記事が、こんなに大きく!」

薬剤師「社長は逮捕され、あの製薬会社も重いペナルティは免れない」

薬剤師「これでもう、お薬手帳を薬局に持ってこない人もいなくなるだろう……」

助手娘「そうですね!」

助手娘「それにしても、薬剤師さんの黄金のお薬手帳はすごいですねえ」

助手娘「手帳のおかげで悪徳社長を倒せましたし、薬剤師さんの怪我もすぐ治療できました!」

助手娘「まさに、薬剤師さんにとって最高のお薬ですね!」

薬剤師「いや……」

55 : 以下、5... - 2018/06/26(火) 01:16:55.09 ESMwfhX+0 25/25

薬剤師「もし、あの時……お前の『俺と調剤したい』という言葉がなかったら、俺はおそらく負けていた」

助手娘「薬剤師さん……」

薬剤師「俺にとっての“最高のお薬”はお前の声援だったよ」







―END―

記事をツイートする 記事をはてブする