1 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:12:52.33 xLXilDkA0 1/25

「……以上が、私の志望動機です」

面接官「ふ~ん」ニヤニヤ

「?」

面接官「君ってさぁ、これまであまり苦労せず生きてきたでしょ?」

「はい?」

面接官「顔つきが幼いし、頬がたるんでるし、目つきも真剣さ必死さが足りない」

面接官「苦労してない人間ってのはさ、顔見れば分かるんだよねぇ~」ニヤニヤ

面接官「そんな奴を採用するほど、うちは人手に困ってないんだよねぇ~」

面接官「ってわけで、退室して結構! キツイこといっておいて採用なんてオチはないから安心してね!」

元スレ
面接官「苦労してない人間ってのはさ、顔見れば分かるんだよねぇ~」ニヤニヤ 男「ち、ちくしょう……!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1527703972/

5 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:14:36.83 xLXilDkA0 2/25

「ち、ちくしょう……!」

「落とすだけならまだしも、あんなこといわれるなんて……!」


面接官『苦労してない人間ってのはさ、顔見れば分かるんだよねぇ~』ニヤニヤ


(だけど、図星でもあるんだよな……)

(親は俺に甘かったし、貧乏だったとかいじめられたとかそういう経験もないし……)

(今の面接も落ちたけど、正直そこまで危機感は抱いてないし……)

(どうせ何とかなるだろ、と思っちゃってるんだよなぁ……)

6 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:16:21.53 xLXilDkA0 3/25

「あーあ、苦労したいなぁ……」

黒マント「苦労したいか?」バサッ

「は?」

(なんだ、この不気味な男は……)

黒マント「苦労したいのか?」

「ああ……したいね! このままじゃ仕事にありつけないし!」

黒マント「どんなにきつくてもか?」

「もちろん! きつくなきゃ苦労じゃないだろ!」

黒マント「なら苦労させてやろう……私についてこい」スタスタ

「よ、よし!」スタスタ

12 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:19:04.16 xLXilDkA0 4/25

(なんか殺風景な部屋に来ちまったぞ)キョロキョロ

「ここは?」

黒マント「どこでもいいだろう」

黒マント「では、さっそく苦労させてやろう」

(いったいどんな苦労を味わわされるんだ……!?)ワクワク

15 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:21:54.42 xLXilDkA0 5/25

黒マント「まずは腕立て伏せだ」

「腕立て伏せ?」

黒マント「腕立て伏せを……とりあえず百回! 始めっ!」

「は、はいっ!」

「くっ、くっ……!」グッグッ…

黒マント「インチキフォームをするな! ちゃんと腕を曲げろ!」

17 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:23:04.92 xLXilDkA0 6/25

「はぁ、はぁ、はぁ……」

黒マント「次は腹筋だ」

黒マント「腹は体の中心。腹を鍛えることは全身を鍛えることにつながる」

黒マント「始めっ!」

「うんしょ、うんしょ!」グイッグイッ

黒マント「反動をつけるな! 腹の力だけで持ち上げろ!」

19 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:24:06.60 xLXilDkA0 7/25

黒マント「次はスクワットだ」

黒マント「膝を曲げるというより、尻を落とすようなつもりでやるがよい」

「は、はいっ!」

黒マント「始めっ!」

「ふんっ、ふんっ!」グッグッ…

(ふ、太ももが熱い……!)

22 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:25:19.43 xLXilDkA0 8/25

黒マント「メシだ、食え」

ドッサリ…

「多いですね……」

黒マント「苦労してたくさん食えば、そのエネルギーでより苦労できるということだ」

「分かりました、食べます!」ガツガツムシャムシャ

黒マント「……」

26 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:27:39.37 xLXilDkA0 9/25

しばらくして――

黒マント「だいぶ体が出来上がってきたな」

「おかげさまで」

黒マント「では、いよいよ私との格闘術の訓練だ。かかってくるがいい」

「いきます!」ダッ

黒マント「甘い!」シュッ

バシッ!

「……ぐっ!」

27 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:29:51.22 xLXilDkA0 10/25

黒マント「だいぶ格闘術も身についてきたので、ナイフ術を教える」

「ナイフ術……」

「あの……」

黒マント「なんだ?」

「なんかおかしくないですか?」

「たしかに俺、苦労はさせられてますけど、なんか想像してた苦労と違うというか」

「まるで、“戦闘”だとか“殺し”の訓練をさせられてるような……」

黒マント「やっと気づいたか」

「え」

28 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:32:09.81 xLXilDkA0 11/25

「どういうことです?」

黒マント「ようやく気づくとは、さすが苦労してこなかっただけのことはある。勘が鈍い」

「だからどういうことなんだよ!?」

黒マント「私はな、殺しを生業にしている人間だ」

「な……!」

黒マント「しかし、このところ仕事がきつくなってきてな。適当な手駒が欲しかったんだ」

黒マント「そんな時、街中で苦労したいとぼやいているお前を見かけた、というわけだ」

「俺はお前の道具にさせられるために、こんなとこまで連れてこられたってことか!」

29 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:34:21.11 xLXilDkA0 12/25

「ふざけんな! 俺をここから出せ!」

黒マント「そういわれて出すと思うか?」

「だったら勝手に出る!」

黒マント「逃げようとするなら、死んでもらう」

「……!」ゾクッ

黒マント「お前がここを生きて出る方法はただ一つ、私より強くなることだけだ!」

「くっ……!」

「いいだろう、やってやる!」

「お前よりも強くなってやるよ! 絶対に!」

35 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:38:09.30 xLXilDkA0 13/25

黒マント「今日は人体の急所について教えよう」

黒マント「急所と聞いて思いつくのは心臓だが、骨や筋肉で守られており狙いにくい」

黒マント「となると、狙うのはやはり首が望ましい。重要な神経や血管が集まっているからな」

「なるほど……」



黒マント「今日は射撃訓練を行う」

黒マント「妙な真似をしたら、即座にこちらから撃ち抜くからそのつもりでな」

「……分かってるよ!」

(くそっ、まるでスキがない……)

37 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:39:51.63 xLXilDkA0 14/25

黒マント「効率的に殺しをするには、体術や武器術だけでなく、あらゆる知識が必要だ」

黒マント「知識はあればあるほどいい」

黒マント「よって、今日からは勉強もさせるから覚悟するように!」

「うえ~……マジかよ」



ドカッ! バキッ! ガッ!

黒マント「ふむ、だいぶよくなってきたぞ」

「ホ、ホントか!」

黒マント「まだまだ私には及ばんがな」

39 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:41:49.52 xLXilDkA0 15/25

そして――

黒マント「明日、最終試験を行う」

「!」

「もし、それをパスできれば……俺はここから出られるってことか?」

黒マント「そういうことだ」

黒マント「今までの苦労の成果……見せてみるがいい」

「明日だな! よーし、今夜はぐっすり寝て、試験を絶対パスしてやる!」

黒マント「……」

41 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:44:21.82 xLXilDkA0 16/25

AM0:00――

「すぅ、すぅ……」





黒マント「……」ザッ

黒マント(もう……“明日”になったぞ)

43 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:46:13.76 xLXilDkA0 17/25

黒マント(この襲撃をかわせなければ、それまでの男だったということ!)


シュバァッ! ガキンッ! ――ザクッ!


「ハァ、ハァ、ハァ……」

黒マント「ぐふっ……見事だ……」ニヤッ

ドサッ…

「お、おいっ! しっかりしろ!」

45 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:48:19.08 xLXilDkA0 18/25

「これが最終試験だったのか……!?」

「血が止まらねえ! なんでこんなことに……!」

黒マント「気にするな……どのみち私は長くなかった……」

「え!?」

黒マント「病気と……長年の無理がたたってな……」

黒マント「そして、自分の死期を悟った私は……」

黒マント「誰かに……私の持ってるものを伝えたくなった……」

「そうか、それで……!」

黒マント「ああ……苦労したがっていたお前を選んだ、というわけだ……」

47 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:50:14.70 xLXilDkA0 19/25

黒マント「お前は……見事に私を超えた……」

黒マント「だが、殺し屋になる、必要はない……自由に生きろ……」

黒マント「ここで苦労して、体を鍛え、知識を蓄えた、お前なら……」

黒マント「どんな仕事でも……やっていける……」

黒マント「とんだワガママに付き合わせちまって……すまない……」

「しっかりしろ!」

黒マント「……」ガクッ

「うわああああああああああああああああああああっ!!!」

49 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:52:15.52 xLXilDkA0 20/25

「ふざけんなよ……」グスッ

「人を散々苦労させといて、最期に自由に生きろ、だと?」

「だったら俺は自由に生きてやるさ」

「俺はあんたの黒マントを受け継ぐ……」バサァッ

「あんたを超える殺し屋になってやる!」



…………

……

52 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:55:04.71 xLXilDkA0 21/25

……



仲介人「まさか、あの黒マントの後をあんたみたいな若者が継ぐとはね」

「なにか問題があるのか?」

仲介人「いや……」

仲介人(この殺気、この風格、この威圧、なにもかも黒マント以上だ……!)

仲介人「じゃあ、依頼人を紹介するよ」

依頼人「こ、こんにちは」

「さっそく仕事の話に入ろう。誰を始末すればいいんだ?」

53 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:57:12.99 xLXilDkA0 22/25

依頼人「始末して欲しいのは、ある面接官です」

「理由は?」

依頼人「ヤツは圧迫面接が大好きで、これまで何十万人もの人間を廃人に追い込んできました」

依頼人「そして、私の娘も……今は精神病院に……。回復は絶望的だとか……」

依頼人「お願いします! あの鬼畜をあの世に送って下さい! 娘の仇を討って下さい!」

「分かった……引き受けよう」

依頼人「あ、ありがとうございます!」

(面接官、か……)

55 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 03:59:28.90 xLXilDkA0 23/25

面接官「ククク……今日もいっぱい廃人に追い込んだぞ」

面接官「廃人になった奴の履歴書を、こうしてコレクションするのが私の趣味なんだよなぁ~」

面接官「個人情報保護法なんて知ったことか!」





「やはり、お前だったか……」バサッ

57 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 04:03:12.68 xLXilDkA0 24/25

面接官「な……泥棒!?」

「泥棒ではない……殺し屋だ」

「お前に圧迫された後、散々苦労して……ここに帰ってきたよ」

面接官「な、なにをいってる? 私はお前なんか知らないぞ!」

面接官「お前ほど苦労してそうな人間を見たことがない! なんなんだ、その異常な目つきは!」

「……仕事をさせてもらう」

ザシュッ!

面接官「ぐおおぉっ……!」

「即死する急所は外したが、絶対に助からない傷をつけた……」

「大勢の求職者を苦労させた分、せめて死ぬ時ぐらいは苦労して死んでいけ……」

62 : 以下、5... - 2018/05/31(木) 04:06:07.85 xLXilDkA0 25/25

面接官「い、痛い……ぐ、ぐるじい……!」

面接官「お、お前は……な、何者、だ……!?」

「……」バサッ

「俺は闇夜に羽ばたく黒き鴉……狩りの玄人――殺し屋“クロウ”だ」







―END―

記事をツイートする 記事をはてブする