男「今日の昼ごはんはそばにしよっか」
女「え~? 私パスタがいいな」
男「俺は朝からずっと、そばの気分だったんだよ」
女「私だって朝からパスタな気分だったわ」
男「よーし、分かった。ジャンケンで決めよう」
女「いいよ!」
男「ジャーンケン」
女「ポンッ!」
男「よし勝った! じゃあ、そばに決定――」
女「ゲボォォォォォォォォォッ!!!」
元スレ
男「俺の彼女は都合が悪くなるとすぐ吐血する」女「ゲボォォォォォォォォォッ!!!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1526321162/
男「お、おい……」
女「ゲボァァァァァァァァァッ!!!」
女「ゴボォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
通行人A「おい、あそこの女、吐血してるぜ! すごい量だ!」
通行人B「前にいるあの男が何かしたのよ、きっと……」
男(ま、まずい!)
男「わ、分かった分かった!」
女「ゲボォォォォォッ!?」
男「パスタにしよう、パスタに!」
女「ホント?」
男「ホントだとも! ペペロンチーノでもカルボナーラでもどんとこい!」
女「やったーっ!」
男(ふぅ、やれやれ……)
――
男「今日は映画でも見に行こうか」
女「あ、だったら『君の学歴は』にしようよ! あのアニメ、見たかったんだ~」
男「えぇ~? あんなのつまらないよ。俺はドンパチが見たいし『ホシウォーズ』にしようよ」
女「やだ! 『君の学歴は』がいい!」
男「これは譲らないぞ! 絶対に『ホシウォーズ』だ!」
女「ゲヴォォォォォォォォォォォッ!!!」
女「ヴォエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」
女「グボォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
ビチャビチャ…
男「わわ……また吐血か!」
ザワザワ… ガヤガヤ…
男「分かった、分かったよ! 『君の学歴は』にしよう!」
女「ありがとう!」ニコッ
――
女「ルンル~ン」
男(女の洋服選びは時間かかるなぁ……)
男(俺なんてサイズさえ合えば、フィーリングでパーッと選んじゃうけど)
女「ねえねえ、これどう?」
男(微妙……)
男「う~ん、あんまり似合ってないかも……」
女「グボァァァァァァァァァァッ!!!」
女「ゴボッアァァァァァァァァァァッ!!!」
男「うわああああああああああ!!!」
店員「ああっ、試着なさっていた服に血が!」
男「金払います! 弁償しますぅぅぅ!」
――
美人「……」スタスタ
男「お、美人だ。モデルかなんかやってるのかな?」
女「ヴォヴェバァァァァァァァァァッ!!!」
男「君も負けてない! 君だって美人だよぉ! いよっ、血もしたたるいい女!」
――
プルルルルル…
男「もしもし」
女『ねえ、今から会えない?』
男「今から? もう遅いし、悪いけど明日にして――」
女『ゲボァァァァァァァァァァァッ!!!』
男「今から会おう! すぐ会おう! 光の速さで飛んでくよ!」
……
男「……とまぁ、こんな具合なんだ」
友人「あの子の吐血癖は俺も知ってるけど、大変だなぁ」
男「吐血されたら、さすがにいうこと聞かざるえないし……参ったよ」
友人「いっそ別れちまった方がいいんじゃねえか?」
男「いや、それは無理だ」
男「もし、俺が別れ話を切り出したら、どれほどの吐血量になるか予想がつかない」
友人「たしかに……10リットルは吐きそうだ」
男「それに――」
男「俺はあの子にベタ惚れだからな……」
友人「そりゃたしかに無理だわ」
友人「とはいえ、いつもいつも吐血で要求通されたらたまったもんじゃないだろ」
男「うん……」
友人「それに、あの子の健康にもよくないだろうし、一度きっちり話をしてみたらどうだ?」
男「そうだな……そうするか」
……
男「あのさ」
女「なに?」
男「君はいつもいつも、都合が悪くなると血を吐く癖があるけど……」
男「それ、いい加減やめてもらえないかな?」
女「!」
男「こっちにも血がついて洗濯も大変だし、はっきりいってたまったもんじゃないんだよね」
男「もしまた血を吐かれたら、俺は君を嫌いになるかもしれない」
女「うう……」
男(なーんて、んなわけないんだけど……)
女「うん、分かった……」
女「私、もう吐かない……」
男「約束してくれる?」
女「うん、約束する」
男(おお……ゴネられるかと思ったけど、案外あっさり聞き入れてくれた)
――
男「暇潰しにダーツでもいかない?」
女「え~、ダーツ苦手なの。私はカラオケがいいなぁ」
男「カラオケは俺が苦手なんだよなぁ~、音痴だし。ダーツにしようよ」
女「カラオケがいい!」
男「いや、ダーツだ!」
女「ウッ…」
男(あっ……ま、まずい!)
女「ウググググ…」
女「……っ! ……っ!」
男(おお……めっちゃ我慢してる! 必死に吐くのをこらえてる!)
女「そうだね、ダーツにしよっか!」
男「いや、ダーツにもカラオケにも両方行けばいいんだよ!」
女「うん!」
男(これだ……やっと俺たちは理想的なカップルになれた……!)
男「あれから彼女、吐血しなくなってさ」
友人「よかったな~」
友人「結局、彼女の方もお前にベタ惚れだったってことだな!」
男「そういうことだな」
友人「こいつぅ~、ノロけやがって!」
アハハハハハ…
ところが――
男「アイスクリームでも食べようか」
女「う、うん……」
女「ハァ、ハァ、ハァ……」
男「ど、どうしたの? さっきから調子悪そうだけど……」
女「あうぅぅ……」バタッ
男「だ、大丈夫!? ――救急車を!」
ピーポーピーポー…
病院――
医者「ううむ、脳波も、脈拍も、血圧も、乱れに乱れている……」
医者「このままでは……!」
男「お願いします! 彼女を助けて下さい! 彼女は俺の全てなんだ!」
医者「無論、手は尽くします。しかし……覚悟はしておいて下さい」
男「……!」
友人「彼女の容態はどうだ?」
男「このままじゃ、もってあと数時間だってさ……」
友人「えぇ!? マジかよ……」
男「いつもあんなに吐血してたんだ。あの子は元々長く生きられなかったのかもしれない……」
男「もっと早く病院に行かせておけば……!」
友人「人の命ってのは……なんて儚いんだ!」
男「!!!」
男「お前……今なんていった?」
友人「え? 人の命は儚いって……」
男「儚い……はかない……はかない……吐かない……」
男「吐かない……!」
男「そうか……そういうことだったのか!」タタタタタッ
友人「お、おい! 集中治療室に飛び込むつもりかよっ!」
バァンッ!
医者「うわっ!? コ、コラ、勝手に入ったら――」
男「俺の声が聞こえるか!?」
女「うう……う……」
男「聞こえるなら、吐いてくれ!」
女「!」
男「吐けーっ! 吐くんだっ! 思う存分、血を吐いてくれぇぇぇぇぇっ!」
女「だけど……」
男「俺は吐血する君が大好きだぁぁぁぁぁっ!!!」
女「う、うん!」
女「ゲボァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
女「ヴォエァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
女「グボゲボォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
男「いいぞ! もっとだ、もっと吐け!」
医者「し、信じられん!」
医者「全ての波形が正常値に戻っていく……! き、奇跡だ……!」
女「オゲェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!!!」
女「ヴォゲボァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!」
――
医者「もう大丈夫でしょう」
医者「念のため体じゅうを精密検査しましたが、あらゆる点で健康です。健康すぎます。健康estです」
男「ありがとうございます!」
女「ご迷惑をおかけしました……」
男「じゃ、さっそくデートしようか!」
女「私、退院祝いにパスタ食べたい!」
男「いいや、そばだ!」
女「ゲボォォォォォォォォォッ!!!」
数ヵ月後――
司会「皆さま、お待たせいたしました!」
司会「お色直しをした、新郎新婦の入場です!」
司会「どうぞ盛大な拍手でお迎え下さい!」
パチパチパチパチパチパチパチ…
友人「いやーまさか、あのまま一気にゴールインしちまうとはね……」
司会「さぁ、純白のウェディングドレスに身を包んだ新婦が出て参りました!」
司会「……あれ!?」
女「ごめんなさい……」ベットリ…
男「お色直しに手間取って、ちょっと喧嘩したら彼女が血を吐いちゃって……」
友人「あらら……」
司会「……さぁ、真紅のウェディングドレスに身を包んだ新婦が出て参りました!」
司会「引き続き、結婚披露宴ならぬ血痕披露宴をお楽しみ下さい!」
― 完 ―