母「四兄弟に好きなことをやって、のびのび生きなさいと育てたら……」
母「見事に文系ニートと理系ニートと体育会系ニートと芸術系ニートが出来上がったわ」
長男「今日も小説を読みながら、作者の気持ちを考えるとするか!」
次男「ずっと欲しかった薬品が手に入りましたよ」クイッ
三男「うおっしゃあっ! 今日もスポーツ中継見るぜ!」
四男「ン~、平日昼間の美術館(ミュージアム)は空いていて実に最高だね」
母「ハァ~……」
妹「育て方間違えたね~」
元スレ
母「文系ニートと理系ニートと体育会系ニートと芸術系ニートが出来上がった」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1524680721/
母「あんたたち!」
長男「なんだい、母さん?」
次男「なんですか、母上?」
三男「なんだ、母ちゃん?」
四男「なんだね? マミー」
母「わざわざ呼び方まで四者四様にしてくれてご苦労様」
母「なんで働かないの!」
長男「有名な作家というのはニート同然の生活をしてた人も多いんだよ。たとえば……」
次男「綿密な計算の結果ですよ。我が家の経済力と、私どもの支出を計算した結果……」
三男「母ちゃん、難しい質問はやめろよ~! 俺頭使うの苦手なんだ! ガハハハハッ!」
四男「実に美しくない質問だ……まるで、パトロンの好みに合わせて作品を描かせるような……」
母「~~~~!」
母「一言でどうぞ」
長男「働くの嫌いだから」
次男「働くの嫌いだから」
三男「働くの嫌いだから」
四男「働くの嫌いだから」
母「こいつらぁ……!」
長男「一言で済んでよかった。これ以上の説明は文学的に蛇足になるから」スタスタ
次男「母上ももっと理論的に考える癖を身につけるべきですね」クイッ
三男「終わったァ! ゲームセット!」
四男「いやぁ、今日の我が言い訳も実に芸術的で先鋭的で美しかった……」
スタスタ…
母「ああっ、ちょっと待ちなさい! 話は終わってないわよ!」
母「ああもみんな方向性がバラバラだと、やりにくくてしょうがないわ……」
母「四方向に逃げた兎を捕まえるようなもんよ……」
妹「だけど、働かないって方向だけは一致してるのがタチ悪いよね~」
母「ホントよ……近所の人からは≪ニート四天王≫だなんて笑われてるし、もう疲れたわ……」
妹「肩揉んであげる」モミモミ…
母「ありがと、まともなのは末っ子のアンタだけよぉ~」
妹「あたしはちゃんと就職して、いい男つかまえて、お母さんに楽させてあげるからね」
母「ねえ、あなた!」
父「ん?」
母「息子たちに、あなたからもいってやってよ」
父「なにを?」
母「決まってるでしょ! 就職しろってことをよ!」
父「う~ん、だけど俺はそういうのはどうも……叱るってのが苦手で……母さん頼むよ」
母「~~~~!」
母「だいたいね、あなたがいけないのよ!」
母「一般サラリーマンのくせに、無駄にホワイト企業に勤めてるせいで給料やたら高いから」
母「あの四バカも甘えちゃって『自分が稼がなきゃ』って気持ちにならないのよ!」
母「この高月給亭主が! 少しは家計を困らせたらどうなの!」
父「す、すまん」
父「実は……また出世して、給料上がることになりそうで……」
母「いやぁぁぁぁぁ!!!」
母「……とお父さんに八つ当たりしてもしょうがないわ。私が何とかしなきゃ!」
母(といっても、どうすれば……)
母(そもそも私、あの子たちが普段何してるのかをよく知らないのよね……知りたくもないし)
母(敵の力を知るのは兵法の基本……)
母(あの子たちがいつも何やってるのかチェックしましょう)
母(ミッションスタート!)コソッ
母「……」コソコソ…
長男「……」カリカリ…
母(あら、勉強してるのかしら? ニートのくせに?)
長男「『たかしは誰もいなくなった部屋で、一人りんごを数え続けていた』……」カリカリ…
長男「『しかし、あまりに膨大なりんごの数に、たかしの精神は次第に蝕まれていったのである』……」カリカリ…
母(なるほど、小説を書いてるのね! さすが文系ニート!)
母「……」コソコソ…
次男「ふむ……なるほど」コポコポ…
次男「この素材は、この薬品にはこう反応するのですか」
次男「好奇心をそそられるいいデータが取れましたよ」クイッ
母(次男は白衣を着て、なにやら怪しい実験をやってる……理系なだけあるわ)
母「……」コソコソ…
三男「ふんっ! ふんっ! ふんっ!」グッグッグッ…
三男「トレーニング終了!」
三男「ハッハーッ! 上腕二頭筋がいい具合に仕上がったぜ!」ムキッ
母(体育会系ニートの三男は筋トレ……ま、予想通りね)
母「……」コソコソ…
四男「むむむ……こうか、こうか!?」バババババッ
四男「おおっ、美しい! なんと美しいのだ! 我が前衛芸術!」
母(……!?)
母(なんだかわけ分からないものを作ってるわ……)
母(芸術系の四男が一番苦労するかも……)
母「とりあえず、それぞれ何かしらやってるってのは分かったけど……」
母「次の手が思い浮かばないわね……」
妹「ねえ、お母さん。今この本読んでたんだけど」
母「『バカな男の操縦法』ってあんた、なんつう本読んでるのよ」
妹「人がやる気を出すのって、やっぱり何かしらの成功体験を経た時なんだってよ」
妹「だからさ、あの四人にも成功体験を味わわせてやれば、何か変わるんじゃない?」
母「なるほどね……やってみようかしら!」
母「ねえ、あんたの書いた小説、勝手に読ませてもらったけど」
長男「えええ!? なに勝手なことしてんだよ、母さん!」
母「面白いわよ、この小説!」
長男「え……」
母「文章は読みやすいのに展開は読めないし、あんた、才能あるわよ!」
母「特に、たかしがりんごを数えるのを諦めて、みかんを数え始めたところなんか……」
長男「あ、ありがとう……!」
母「まぁ~、素敵な研究室ね」
次男「! ……勝手に入らないで下さい、母上!」
母「まぁいいじゃない。どんな研究してるの?」
次男「新しい素材を開発しようとしてまして……」
母「まぁ、すごい! あなたは頭がいいから、きっとうまくいくわ!」
次男「もちろん、やり遂げてみせますよ」クイッ
三男「今日も俺の筋肉は……」ムキッ
母「すごい筋肉じゃない!」
三男「母ちゃん!?」ギョッ
母「まるで、シュワちゃんみたいよ! シュワちゃん!」
三男「そ、そうかぁ? 俺がシュワちゃん……?」
母「もっと鍛えれば、きっとターミネーターにだって勝てるようになるわ!」
三男「マジで!? ならもっとプロテイン飲まねえとな……!」
母「う~ん、素晴らしい芸術ね」
四男「おお……マミー! やはり、あなたは分かってくれるか!」
四男「我が前衛芸術を……!」
母「ええ、あなたの芸術はまさに21世紀の最先端! いえ、23世紀ぐらいいっちゃってるわ!」
母「現代アートならぬ未来アートよ! 私たち現代人にはとても理解できないわ!」
四男「なんたる幸せ……!」ドバァァァァァ
長男「よし……本格的に小説を書いてみよう!」
次男「私の行った実験成果を、他の研究者にレポートとして提出してみるとしましょう」
三男「もっと大勢に俺の筋肉を自慢したくなってきたァ!」
四男「いつも通ってる美術館の館長に、我がアートを披露するのもいいかもしれぬ」
母「うふふ、ブタもおだてりゃ木に登る作戦、大成功!」
妹「みんな、大失敗しそうだけどね~」
母「いいのよ、失敗しても。こうして積極的に行動してくれることが大事なのよ」
母「少なくとも、家でずっとニートしてるよりだいぶ進歩したわ」
妹「やったね、お母さん!」
ピンポーン…
母「……誰かしら?」
母「はーい!」
ザワザワ…
母(なんだか色んな人が来てるわね……なにかしら?)
編集者「素晴らしい小説を読ませてもらいました! ぜひ、長男さんを我が社の専属作家に!」
研究者「あの素材は大発明だ! 次男氏には研究所の重要ポストについていただきたいのです!」
トレーナー「三男君の筋肉はボディビルダーにうってつけ! 今すぐにも世界を狙える逸材だ!」
美術館館長「ぜひとも、四男の彼には個展を開いて頂きたい……。あれは必ず価値が出る……」
母「まぁっ……!」
母(動く粗大ゴミだとばかり思ってたあの子たちが、人様から認められるなんて……!)
母(ゴミがリサイクル出来るように、どんな人間にも利用価値というものはあるんだわ……)
母「よかったわね、あんたたち! 自分たちのやってきたことが認められて!」
母「しかも、仕事ももらえて……一石二鳥じゃない!」
長男「……」
次男「……」
三男「……」
四男「……」
長男「いや、実は俺たちみんな……話を断ったんだ」
母「へ、なんで!?」
長男「なんでって……ねえ……?」
次男「ええ、まぁ」
三男「だよなぁ?」
四男「ン~……そういうことです」
母「なによ、はっきりいいなさいよ!」
母「文系、理系、体育会系、芸術系のあんたたちにとって、どれもいい話だったじゃない!」
長男「だって俺たち……」
長男「働くの嫌いだから」
次男「働くの嫌いだから」
三男「働くの嫌いだから」
四男「働くの嫌いだから」
母「この……“とっととはたら系”どもがァァァァァ!!!」
妹「おっ、お母さん座布団一枚っ!」
END