キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」十冊目

286 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:19:04 DXW 134/451

ルイス・キャロル著 不思議の国のアリス 六章より

・・・

「チェシャ猫さん、私はこれからどっちの道に進めばいいのか教えてくれる?」とアリスは聞きました

「どっちでも君の好きな方に進めばいいさ」とチェシャ猫が答えたのでアリスは質問を変えることにしました

「それじゃあこの辺りには何があるのかしら?そしてどんな人が住んでいるの?」

アリスの質問にチェシャ猫はニヤニヤしながら答えました

「あっちの方角に進めば帽子屋の家にたどり着くだろうね。そしてこっち側の方角には三月ウサギの家がある」

「どっちでも好きな方を訪ねると良いよ。まぁどっちともキチガイだけどね」

ニヤニヤと話すチェシャ猫にアリスは言いました

「でも私はキチガイのところになんか行きたくはないわ」

「そりゃ無理な相談だ、この世界じゃみんなキチガイなんだから。帽子屋も三月ウサギもキチガイ、僕もキチガイ、君もキチガイだ」

「まぁ、どうして私がキチガイなの?私はキチガイなんかじゃあないわ」

怒るアリスにチェシャ猫はニヤニヤしたまま答えました

「いいや、君は絶対にキチガイだよ。そうじゃなければ――この世界には居ない」



「だってこの世界にはキチガイしかいやしないんだから」

・・・

287 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:20:57 DXW 135/451


不思議の国のアリスの世界 三月ウサギの庭

カチャカチャッ

三月ウサギ「ったくよぉ…あいつらときたら菓子のカスをボロッボロこぼしやがって、掃除が大変だぜ」サッサッ

三月ウサギ「さて、掃除が終わったら茶葉のストック確認して…砂糖とミルクも見ておかねぇと。菓子も特別なもんが欲しいな、あとで帽子屋に相談するか」

三月ウサギ「折角だから特別なティーセット出しとくかな。テーブルクロスもとっておきの奴引っ張り出して、花もとびきり綺麗な奴を――」

スッ

帽子屋「ンフフッ、お茶会の支度してる時のアナタはいつだってご機嫌ねぇ。でも祝勝会の準備はちょーっと気が早いんじゃないかしらぁ?」ブホホッ

三月ウサギ「なんだ帽子屋、お前【雪の女王】の世界に向かったんじゃなかったのか?アリスの帰りが遅いってんで迎えに行くって話だったろ?」

帽子屋「そうよぉ、でももう済ませたわっ。雪の女王とキモオタちゃん相手にちょーっぴり手間取ってたみたいだけど、雪の女王は始末したしアリスちゃんは別に怪我とかしてないから大丈夫よっ」

三月ウサギ「そりゃあ何よりだ。で、一緒じゃねぇみたいだけどアリスは何してんだ?」

帽子屋「アリスちゃんなら今頃、鬱陶しい結界を破って【アラジンと魔法のランプ】の世界に居るでしょうね。何をするために向かったのか…なんてことは言わなくたって当然わかるわよねぇ?」ブホホ

三月ウサギ「当たり前だろが。あらゆる願いを叶える魔法のランプ、そいつを奪いに行ったんだろ?そんなもんクイズにもなりゃしねぇよ」

帽子屋「ぶほほっ、大正解!まぁアタシ達はその為に魔法具集めてたんだしねぇ~、魔法具集めには結構苦労したけれどようやく報われるって感じねぇ」

三月ウサギ「まぁそうだけどよ、んなことより護衛は誰がついてるんだ?まさかアリスを一人で向かわせたって訳じゃねぇだろうな?」

帽子屋「当然よっ、護衛にはアシェンちゃんがついてるわ。あの娘の強さは折紙付きだから大丈夫でしょっ。そんなことよりもアタシ喉渇いちゃってるのよぉ…ねぇお茶を一杯もらえなぁい?」

三月ウサギ「あいにく準備中でな。おらっ、水でも飲んでろ」コトッ

帽子屋「んもうっ!ワタシはこれでもグルメなのよ!?今更ただの水なんて出されても満足できないわよっ!まったく……カァーッ!潤うわぁっ!」ゴクゴクゴク プハーッ

三月ウサギ「にしちゃあお前、随分といい飲みっぷりじゃねぇか…」

288 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:22:33 DXW 136/451


三月ウサギ「で、結局何しに来たんだ?まさか茶を飲む為だけに来たってわけじゃあねぇんだろ?」カチャカチャ

帽子屋「もちろんよぉ~。アリスちゃんが『ボクが魔法のランプを奪いにいっている間、帽子屋は休んでくれて構わないよ。留守番を兼ねてね』なんていうもんだからお言葉に甘えてんのよっ」

三月ウサギ「そりゃいい御身分なこって、まぁ俺も待機だから人の事言えねぇけどよ」フキフキ

帽子屋「でっ、時間も出来た事だし三月ウサギちゃんには話しておきたい事もあったからお邪魔したってワケよぉ~」クネクネ

三月ウサギ「俺に話す事だ?あんまり…つぅか微塵もいい予感はしねぇがよぉ、まぁ言ってみろ。俺に話したい事ってなんだよ?」

帽子屋「始めに言っておくけど…コレすんごくマジメな話よぉ?」

三月ウサギ「あぁ、わーったわーった。お前がそうやって話を切り出して真面目だった試しがねぇんだよ、どうせまたくだらないジョークかハートの女王へのイタズラでも思いついたんだろ?」

三月ウサギ「お前はいつだってそうだ、マジメな顔して興味を引いておきながら口を開けば答えのないナゾナゾだのくだらない替え歌だのを披露してよぉ…もう俺は騙されねぇんd」

帽子屋「アタシね、実は雪の女王殺してないのよ」

三月ウサギ「はっ?」ガタッ

帽子屋「だからぁ…始末したって言ったけど彼女まだ生きてるの、生け捕りって言うやつよぉ。城の敷地の時計塔あるでしょ、あそこに幽閉してるわ。あそこはとても頑丈な造りだし陽の光もよく当たるからねぇ」ブホホ

三月ウサギ「待て待てお前…!生け捕り!?そりゃなんの冗談だ!?先に言ってやるが笑えねぇからなそのジョーク!」バンッ

帽子屋「んもうっ…だからマジメな話だって言ったでしょぉ?冗談なんかじゃないわ、本当の話よ」

三月ウサギ「おいおい…マジかお前…。あの雪の女王だぞ!?殺さず生かしておくなんざ何を考えてるんだテメェはよぉ!」バンッ

289 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:26:32 DXW 137/451

帽子屋「何を…って、そんなの決まってるじゃないのぉ。アナタと同じよ、アタシはアリスちゃんとアリスちゃんの願いのことだけしか考えちゃいないわ」

三月ウサギ「だったらどうして女王を殺さなかった!?こないだの話し合いで雪の女王は殺すべきだって結論になっただろうが!何を独断で勝手な事をしてんだ!」

三月ウサギ「確かに生け捕りにしてその魔力を利用するって案も出たがよ、雪の女王の魔力はあまりにもデカ過ぎる!生かして損はあっても利は無ぇ…だったら殺すべきだってアリスが決めたじゃねぇか!」

帽子屋「大丈夫よっ、彼女は随分衰弱しているし暑さのせいで魔力も枯渇してるわっ。あの様子じゃ自由に動けないし、仮にキモオタちゃん達が奪還に来てもあの塔をこじ開けるのは一筋縄じゃいかないわっ」

帽子屋「それに万が一女王を奪い返されたってあの女には何もできないわよっ。魔力を失ってんだからもう一般人とたいして変わらないものねぇ」ブホホ

三月ウサギ「例えそうだとしてもだ…帽子屋、お前少し楽観的すぎやしねぇか?」

帽子屋「あらそぉ?」ブホホッ

三月ウサギ「俺達がやってる事は余所の連中にとっちゃ許しがたい悪行だ。そりゃあ確かに今のところ俺達が圧倒的有利で、もはやアリスを止められる奴なんざいねぇように思えるが…」

三月ウサギ「仮にアリスが倒され、俺達の計画を阻止されちまったら…俺達やアリスがどうなるかわかってんだろ?」

帽子屋「わかってるわよ。アタシ達は今まで散々やりたい放題してきたんだもの、もしもアタシ達が敗者になったとしたら……世界中はアタシ達を、アリスちゃんを決して許さない」

帽子屋「【不思議の国のアリス】はもちろん現実世界にも別のおとぎ話の世界にも居場所なんかなくなっちゃうわね。そもそも、敗北した時点でアタシ達は捕えられて殺されるでしょうね」

三月ウサギ「あぁそうだ!いろんなもんを犠牲にしてきた事を今更とやかく言わねぇがな、ここまでやった以上アリスの願いを叶える以外に俺達に未来はねぇんだ!絶対に失敗は許されない戦いなんだよこれは!」バンッ

帽子屋「んもぅ…そんなに怒鳴らなくてもわかってるわよ」

三月ウサギ「わかってるってんならなんでこんな事してんだお前は!しくじれない以上、どんなに小さな可能性でも不安要素は潰すべきだろうが!」

帽子屋「確かにアナタの言ってる事は正論よ。アタシ達の役目はアリスちゃんを勝利に導く事、どんな些細な障害でも取り除くべきだってアタシも思うわ」

三月ウサギ「だったらよぉ…!」

帽子屋「それでもね、今のアタシは…雪の女王は殺すべきじゃないと思うのよね。他ならないアリスちゃんの為にもねっ」

290 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:30:36 DXW 138/451


三月ウサギ「アリスにとって雪の女王は障害にしかならねぇだろ!こっちに引き入れるにしてもどう口説こうが脅そうが俺達に味方するとは思えねぇしよぉ…」

三月ウサギ「まったく、わっかんねぇな…どうして雪の女王を生かしておく事がアリスの為になるってんだよ!?」

帽子屋「簡単な話よ。ルイスちゃんが昔、雪の女王にお世話になった事があるってお話…とうぜん覚えてるでしょぉ?」

三月ウサギ「あぁ、チェシャ猫が仕入れてきた情報だろ?ルイスがアンデルセンの弟子してたとき雪の女王が助手してたっていう話――」ンッ?

三月ウサギ「おいおい…まさか雪の女王がルイスの恩人だからって生かしてたってのか!?」

帽子屋「その通りよぉ、大正解ね三月ウサギちゃん」ブホホッ

三月ウサギ「お前馬鹿か!そんな百年以上も昔の…しかもアリスが直接関係してるわけでもねぇ奴に恩義なんざ感じる必要ねぇだろ!」

帽子屋「確かにアリスちゃんには直接関係ある話じゃないわね、もちろんアタシ達にとっても」

帽子屋「でもルイスちゃんは感謝してると思うわよぉ?師匠のアンデルセンにも先輩の雪の女王に対してもねっ。ルイスちゃん、情に厚いからねぇ」ブホホ

三月ウサギ「そりゃあルイスは感謝してるかもしれねぇけどなぁ!それとこれとは話が違うだろうが!」

三月ウサギ「ルイスの恩人はルイスの恩人!アリスの敵はアリスの敵!その相手がたとえ同一人物だとしても関係なんざねぇだろ!?」

帽子屋「そうね、アタシ個人としてもルイスちゃんが受けた恩義はアリスちゃんにとってはなんの関係もないと思うわよ?」

帽子屋「でも…当の本人、アリスちゃんはどう思うのかしらねぇ?」

291 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:34:52 DXW 139/451


三月ウサギ「どうもクソも…関係無いと思ってんじゃねぇのか?つーか雪の女王とルイスの関連性を知った上で殺すって決断出したのは他でもないアリスだぜ?」

帽子屋「そうねっ、でもそれがアリスちゃんの心からの言葉かどうかはわからないわよっ?」

三月ウサギ「なぁ、お前はさ…こう言いたいのか?実はアリスは雪の女王を殺す事を躊躇していた。ってよぉ」

帽子屋「んー…細かいところまでいうとちょっと違うんだけどねぇ。まぁ、ザックリ言えばそんなところかしらっ」

三月ウサギ「俺にはそんな風には見えなかったぜ?チェシャ猫からこの一件聞いた後も相変わらずアリスは目的を達成するためには容赦が無かったしよぉ」

三月ウサギ「容赦なく別世界を消して、躊躇なく殺しに手を染めてたぜ。いくら大好きなルイスの恩人だからって…アリスが女王に情なんかもつかぁ?」

帽子屋「まぁ少なくとも情は持ってないわねっ、アリスちゃんが気にして居るのだとすればおそらく…理由はただひとつね」

帽子屋「『ボクが雪の女王を殺したと知ったらルイスはどんな顔をするだろう』って事だけよ、例えとっくに亡くなってても大好きなルイスちゃんには嫌われたくないでしょうしねぇ」

三月ウサギ「お前さ、そこまで言うからには何か根拠っつぅか思い当たる節があるんだよな?まさか推測だけで話してるわけじゃねぇだろ?」

帽子屋「ンフフッ、もちろん根拠ならあるわよっ。それはねぇ…アタシの鋭いオンナの勘ってやつかしらn」

三月ウサギ「張っ倒すぞお前」

帽子屋「冗談よ。ほらァ、アタシ客商売長いじゃない?だから表情とか雰囲気でなんとなーく本音っていうか考えてる事わかっちゃうのよぉ、そゆとこ目ざといのよ」

帽子屋「チェシャ猫ちゃんがルイスちゃんと女王の関係話した時、アリスちゃんは特に表情変えずに冷静な風に見えたけど……」

帽子屋「きっと、内心動揺していたはずよ。少なくとも私にはそう見えたわ」

292 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:38:23 DXW 140/451


三月ウサギ「つってもなぁ……」

帽子屋「まぁアリスちゃんのことですもの、無理やりにでも自分の中で折り合いをつけて結局は雪の女王を殺すことにしたんでしょ。リーダーである自分が悩んでちゃ示しがつかないなんて思ったのかもねぇ」

帽子屋「でも…結局殺す事はできなかったわね。気持ちの上ではきっと殺す気でその感情に嘘は無かったんでしょうけど、雪の女王にルイスちゃんの名前出されたことでどこかで心がセーブしちゃったみたいねぇ」

三月ウサギ「……」

帽子屋「三月ウサギちゃん、なんだか納得いかないって顔ねぇ?」

三月ウサギ「お前の言ってる事、とりあえず筋が通っているようにも聞こえる。確かにアリスはルイスの想いを大切にしてる、責任感が強いってのもそうだ、お前が言うようなこともあるかもしれねぇ…。でも結局その根拠も説も推測の域を出ないレベルだぜ」

帽子屋「それは否定しないわねっ。まぁ…アタシの妄想だといえばそれまでだしねぇ、商人の勘って事以外に根拠があるわけじゃないし」

帽子屋「でもね、もしこの推測が事実だとしたら…雪の女王を殺してしまえばアリスちゃんには決して外せない枷が食い込むわ、ルイスちゃんに対する罪悪感と言う名のね」

帽子屋「そしてその枷は…きっと重要な局面でアリスちゃんを動けなくする。そしてそれは…作戦の失敗につながる、それだけは絶対に避けなきゃならない」

三月ウサギ「だから大事をとって雪の女王を生け捕りにしたってか?」

帽子屋「そうよ、それに彼女を生け捕りにした事はアリスちゃんも知ってるけど、殺せなんて命令私にしなかったわよ?まぁ生かせとも言わなかったけどね」

三月ウサギ「ふーむ…理屈はわかったぜ。言いたい事がねぇわけじゃないが、アリスが黙認してるってんなら俺がやいやい言う必要もねぇ。ただ…」

三月ウサギ「アリスは今までに何度もヤバイ修羅場をくぐりぬけてきたんだ、罪悪感に押しつぶされるほど弱くはねぇと俺は思うぜ」

帽子屋「あらっ、それは誤解よ。三月ウサギちゃん?」

293 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:42:02 DXW 141/451


帽子屋「あの子は…アリスちゃんは強くなんかないわ。むしろ弱い女の子よ、アタシ達が守ってあげなきゃならないほどにね」

三月ウサギ「まぁあいつは元々は現実世界の人間だしな、時間停止以外に特別な力があるってわけでも魔法が使えるわけでもねぇ」

三月ウサギ「でも俺は強いと思うぜ?あれくらいの年齢の女が世界を敵に回す決断をしたんだ、強くなけりゃそんな覚悟もてねぇだろ」

帽子屋「ンフフッ、わかってないわねぇ~…三月ウサギちゃんはっ」

三月ウサギ「なんだよ…だってそうだろ?心が強くなけりゃ世界消して人殺して平気な顔でいられねぇだろ、普通」

帽子屋「そりゃあ覚悟はしてるでしょうけどね、それでも結局アリスちゃんは…まだまだ少女、女の子なのよっ」

帽子屋「どんなに覚悟して修羅場を抜けてきても、大好きな人の名前を出されて少し心が揺れてしまうような…まだまだ子供の女の子」

帽子屋「別の世界に向かうとね、余所の世界の連中はアリスちゃんをまるで悪魔のように言うのよ…恐れるべき悪人のように。まぁ実際やってる事はそうかもしれないけど」

帽子屋「でもね…いくらおとぎ話の世界を消そうともその住人を滅ぼそうとも、冷酷な殺人鬼だの悪逆非道な悪魔だの呼ばれてもね…結局アリスちゃんはただの女の子なのよ、アタシにとっては」

三月ウサギ「まぁ、な…」

帽子屋「自分自身を蔑ろにされて、大切な人を蔑まれて…人々を恨んで世間を恨んで、世界に絶望してそしておとぎ話の世界を恨んで…」

帽子屋「やっている事の規模は大きいけれど、アリスちゃんの心の根っこにある感情は結局大人や社会に対する反抗、不満よ」

帽子屋「普通の女の子が持つ感情と、それはそんなに違うものでもないでしょうに。特別あの子が強いってわけじゃないわよ」

三月ウサギ「確かにな、そう考えりゃ…結局はあいつもただの少女ってわけか」

帽子屋「えぇ、ワタシはそう思うわね。まぁなんにしても…アタシ達がすべきことは今までと変わらずたった一つだけ、アリスちゃんの幸せを願うことのみ」

三月ウサギ「そりゃあ俺もお前も、あいつらも同じだろうよ」

帽子屋「そうよねっ、でも悲しい事にこの世界は誰かを幸せにすれば他の誰かを不幸にしなきゃならない仕組みになっている」

帽子屋「【不思議の国のアリス】でのアナタのお茶会と一緒ね、自分のティーカップが汚いのなら席を一つずれて…それを他人に押し付けるしかないのよ。そうすれば自分は綺麗なティーカップを使える、結局は誰かが汚れたカップを我慢して使わなきゃならない」




帽子屋「でもそれはアリスちゃんの役目じゃないわ。アリスちゃんには綺麗なカップで楽しいお茶会を過ごしてほしいものね」ブホホッ

・・・

294 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:46:34 DXW 142/451

時間は前後し…
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷 裏の森

キィィィィィン

キモオタ「ぶひいいいぃぃっ!」ドッサァー

ティンカーベル「ここは…見覚えがある!シンデレラのとこの魔法使いの家だ!ほらあそこ裸王とヘンゼルが倒した木があるしっ!」

キモオタ「確かにそのようですな…つまり雪の女王殿は、我々の事を考えてこの世界に……って、カイ殿ぉぉぉぉぉっ!」キャッチ ズサーッ

カイ「……」ゼェゼェ

キモオタ「ぶっふぅ…カイ殿満身創痍ですからな、その状態では着地も出来ないでござろうし。我輩のキャッチが間に合ってよかったでごるよ」

ティンカーベル「うんうん、そうだよねっ。ここでまたカイに大怪我なんてさせたら雪の女王に合わせる顔がないm…むぐっ!ちょっとカイ!いきなり身体掴まないでよ!」ガシッ

カイ「……おい、ティンカーベル」ギロリ

キモオタ「か、カイ殿…?なんかすごい顔をしておりますな…いや心中お察しするでござるが、ひとまずここh」

カイ「ティンカーベルッ!お前、確か世界移動の魔法使えるんだよな?」

ティンカーベル「うん、できるよ。でも…」

カイ「だったら何をモタモタしてんだ!こうしている間にも女王はアリスに攻撃されてる間もしれねぇんだぞ!?時間がねぇんだ!」

カイ「さっさと【雪の女王】の世界へ戻れ!あいつ何を考えて俺達を逃がしたんだかしらねぇが…馬鹿な真似しやがって!」

カイ「今すぐに戻って加勢するぞ!そしてこんな馬鹿げた真似をしている連中に文句を言ってやらねぇと俺の気が収まらねぇんだよ!」

295 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:50:04 DXW 143/451


ティンカーベル「……」

カイ「おいティンカーベル!何をチンタラしてやがる!一刻を争うって事がわからねぇか!?さっさあの世界へのゲートを…」

ティンカーベル「……駄目だよ、あの世界には戻れない」

キモオタ「……」

カイ「はぁ!?テメェ何を言ってんだ!戻らねぇって…あいつを見殺しにしようって言うのか!?」

ティンカーベル「そんなつもりはないよ、でも駄目。絶対に私は世界移動…しないよ」

カイ「ふざけてんじゃねぇぞテメェ…!そんなに自分の命が惜しいのか!?あぁ!?アリスにやられっぱなしで悔しかねぇのか!?」

ティンカーベル「悔しいよ!悔しいに決まってるじゃん!特訓頑張ったけど歯が立たなくて…何も出来なくて、すんごく悔しいし今すぐにでもアリスに仕返ししたいよ!」

カイ「だったら早く世界移動しろ!んなところでウダウダ話してても埒があかねぇだろうが!」

ティンカーベル「じゃあ聞くけどさ、戻ってどうするつもりなの!?説明してよ!さっき私達は大したこと出来ずにボロボロにされてんだよ!?今から帰って何かできるとは思えないよ!」

カイ「…それでもだ!勝機があろうとなかろうと、あいつを見殺しにするなんざ俺にはできねぇ!」

ティンカーベル「じゃあ女王が心配だからって何もできない私達がもっかい戻ってさ、そんでアリスと戦ってなんになるの!?勝ちなんかこれっぽっちも見えないんだよ!?」

ティンカーベル「だったらここは女王の想いを無駄にしないためにも体制を整える場面じゃん!しっかり対策しなおしてアリスを倒す事、それが私達が女王にとって出来る最後の――」

カイ「テメェ…最後ってどういう意味だ言ってみろクソ妖精が…!」

296 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/23 01:54:31 DXW 144/451

キモオタ「落ち着くでござるよカイ殿!お主まだ血を流しているというのにその様に暴れては…」

カイ「うるせぇ豚ァ!おいティンカーベル、テメェ等がこないってんなら好きにしろ。だが俺一人だけは元の世界へと連れ戻せ!」

ティンカーベル「…それも駄目、カイ一人で戻っても…悪いけど何にも出来ないよ。それに…もう傍から見たっ女王は限界じゃん!女王が心配なのはわかるけど、でも……」

カイ「…じゃあなんだ、頭を下げりゃいいのか!?土下座でもすりゃあお前は満足して俺を元の世界に返してくれんのか!?」

ティンカーベル「そうじゃないよ!私はただ…!」

カイ「……頼む、お前にしかできねぇんだ。俺には、俺にはあいつを見殺しにするなんか、できn」フラッ

ドザッ

キモオタ「カイ殿ォ!?いわんこっちゃない!お主相当に血を失っているでござるからあまり無茶をしては…!」

ティンカーベル「カイ…!」

カイ「頼む…頼むティンカーベル…俺を、俺をあのせかいへ……」ゼェゼェ

キモオタ「……」

魔法使い「裏庭が騒がしいから着て見れば……予想以上にひどい有様だな」

キモオタ「魔法使い殿…!丁度よかったのでござる、実は大変な事が起こってしまい…助言をしていただきたいでござるがいいですかな!?」

魔法使い「こちらは元よりそのつもりだ。どうやら…アリスを倒すどころか力の差を見せつけられたようだな…」



魔法使い「今はとにかく部屋入りなさい。立ち話をしているわけにもいくまいし…その少年の手当ても必要そうだ」

304 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:21:40 w7G 145/451

ずっとずっと昔
雪の女王の世界 書庫

・・・

カイ「……」ペラッ

カイ(俺がこの宮殿で暮らす事になってもう一週間か…)ペラッ

カイ(行方不明になった俺の捜索もいい加減に打ち切られただろ、家族も村の連中も俺の生存は絶望的だと諦める頃だ。まぁ、ゲルダの奴は俺が死んだなんて絶対に認めないだろうがな…)

カイ(心配してくれている連中には悪いが、ここでの生活は俺にとってかなり快適なもんだ、何しろこの膨大な数の本に囲まれて過ごせるんだからな)

カイ(親父の仕事や家事の手伝いをする必要なんざねぇ。一日中、気が済むまで本を読んで思索にふける事が出来るなんてのはまさに天国だ)ペラッ

カイ(寝床にも飯にも不自由しねぇ快適な生活。ただ、一つだけ不満があるとすれば……)ペラッ

スタスタスタ

雪の女王「カーイっ!おはよう、今日も早起きだな君は。なんにせよ勉強熱心なのはいいことだ、偉いぞ」ムギュッ

カイ「……」ペラッ

雪の女王「そうはいっても何か食べなければ頭も働かないぞ。さぁ私と一緒に朝食を取ろうじゃあないか」ギューッ

カイ「……俺はいい。抱きしめるな、ページがめくれねぇだろうが」

雪の女王「フフッ、なんだなんだ。照れているのか?かわいい奴め」フフッ

カイ「……」

カイ(快適な生活の中で感じる唯一の不満、それがこいつ…この宮殿の主にして強大な魔力の持ち主…雪の女王だ)

305 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:24:30 w7G 146/451

カイ「俺に構うな。メシなら一人で食えばいいだろ、俺は読書を優先する」

雪の女王「そんなつれない事を言うなよカイ。君の朝食用にと思って普段は食べない卵やベーコンなんかを揃えたんだぞ?」

カイ「知った事じゃねぇな。捨てちまうのがもったいねぇってならお前が食えばいいだろ」

雪の女王「それは出来ない。私は火を使った調理はできないんだ、だから君が食べてくれなければ困る」フフッ

カイ「勝手な事を言いやがる…。つぅか調理するの俺じゃねぇか、面倒くせぇ…」

雪の女王「そうはいっても料理することにも慣れておかないとな。そうしなければ君はこの先、温かいものは一切口にできないぞ?」

カイ「メシにこだわりはねぇ、水とパンがありゃあ十分だ」

雪の女王「そういう訳にもいかないだろう?これから長い間君と私は生活を共にするわけだが、私も時には数日間宮殿を空ける事がある」

雪の女王「いつ、何が起きるかわからないからな。君もある程度の生活力を身につけていかないといざという時に困るぞ?」

カイ「…だったら俺は後で適当に作って食う。別にお前と飯を食う必要性は無いだろ」

雪の女王「魔法具の影響とはいえ君は随分とドライだな、確かに必要性は無いかも知れないが意味はあるぞ?」

雪の女王「誰かと食事をするのは単純に楽しい時間だ。それに食卓を囲めば相手の好みや人間性も見えてくる。これは経験則だが、親密な関係を築く上でこれはとても大切な事だぞ」

カイ「…だからそれが無意味だって言ってんだよ。俺はお前と慣れ合うつもりなんかねぇんだからな」



カイ「所詮、俺とお前の関係は【雪の女王】の作者が作りだした単なる『設定』だ。親密になる必要も親睦を深める意味もありゃしねぇんだよ」

306 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:28:08 w7G 147/451


カイ「確かに…悪魔の鏡の破片のせいで俺は変わった。性格の豹変した俺があのまま村に居てもロクな事にならなかったのは目に見えてる」

カイ「そういう意味では俺をここに連れて来たお前に一応感謝はしてるぜ。だがそれも結局は作者が生み出したおとぎ話の筋書きに過ぎねぇんだ」

カイ「俺達に求められている事は慣れ合って生活する事じゃねぇ。ゲルダがここに来て俺にかけられた魔法を解くまでの間、俺達は適当に時間をつぶしてりゃあそれでいい」

雪の女王「……」

カイ「まぁ、俺もこの世界が消えちまったら困るんでな。存続の為にもすべきことはしてやる、だが必要以上にお前と慣れ合うつもりはねぇんだ」

雪の女王「なるほどな、君の考えも一理ある」

カイ「そうだろ?お互いに干渉するのは最小限にしようぜ、その方が面倒くさくなくていいだろ」

雪の女王「だがそれは…少々枯れた考え方だな。結末や運命が決まっているからその流れに身を任せて何もしないなんていうのは、幸福になる事を放棄しているだけだ」

カイ「あぁ…?何言ってんだお前、俺もお前もおとぎ話の世界の住人だ。どう足掻こうと運命には逆らえねぇ、何をしたところで結果がかわらねぇならそりゃ無駄な足掻きだろうが」

雪の女王「そんな事は無いさ、アナスンは…作者は【雪の女王】の原稿に中で私と君の生活について詳細は記していないんだから」

雪の女王「確かに私達の運命や結末は決まっている。だが本に記されていない部分…言わばページとページの間の空白の時間、それをどう使おうと私達の勝手というわけだ」

雪の女王「そしてその時間をどう過ごしたか、それは必ず結末の先の未来を変えるだろう。おとぎ話の住人である私達にも変えられる事はある、私はかつて共に暮らした男からそれを学んだ」

カイ「……」

雪の女王「だから私達は出来る限り幸福になる努力をしないとな」フフッ

雪の女王「私達の人生は物語を締めくくる『めでたしめでたし』の後も、ずっと続くのだから」

307 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:32:59 w7G 148/451


雪の女王「君の人生はゲルダに助けられておしまい…じゃあないんだ、その先どうするか決めるのは作者じゃない。君だよ」

カイ「……まぁ、興味深い説だとは思うぜ。それが事実かどうかは別としてな」

雪の女王「私はその考えに則って、君との生活をお互いにとって豊かで幸福なものにしたいと考えている。ゲルダがここを訪れるのはまだまだ先、それならばその間の時間も楽しんでいたいと思うんだよ」

カイ「理屈はわかるけどよ、だからって出会ったばかりのお前を手放しで信用しろって言うのか?それはあまりに都合がよすぎるぜ」

カイ「確かにお前に感謝してるとは言ったがよ、それはお前の事を信用してるかどうかってのとは別問題だ。逆に聞くがお前は俺を信用できるのか?出会って数日、名前以外ろくに何も知らないガキの事をよ」

雪の女王「出来ると言えばそれは嘘になる。正直に言えば、君の全てを信用しているというわけじゃあないよ、今はまだね」

カイ「そうだろうよ、だったらよぉ…」

雪の女王「でも君と親しくなりたいとは思う、君の事をもっと知りたいともね。だから君を食事に誘った」

カイ「……」

雪の女王「信用するとかしないとか、そういうのはお互いをもう少し知ってからだよカイ。何が好きとか、どんな癖があるとかこういうところが鬱陶しいとか知ってから、その先だ」

雪の女王「君が好きな本だって装丁からじゃ全てわからないだろう?手にとって、その内容に目を通して初めてどんな本かわかる。人間も一緒だよ」

カイ「……いいぜ、そこまで言うならメシくらいは付き合ってやる。読みもせず本の内容にグダグダ文句つける奴は俺も嫌いだからな」スッ

カイ「だが、俺がお前を信用するかどうかはまた別問題だぜ。お前の事を多少知ってそれでもお前に付き合いきれねぇと思ったら俺は好きにする、いいな?」

雪の女王「フフッ、それで構わないよ。だけど私はなんとなく、君とはいい家族になれるんじゃないかって思っているよ」

カイ「流石にそりゃあ無いな。仮にお前が信用に足る奴だったとして、俺はお前にそこまで肩入れするつもりはないぜ。家族とかねぇよ、ありえねぇ」

雪の女王「それじゃあ勝負するかい?いつか君と私は離ればなれになる時が来る、その時に君が涙を流すかどうか賭けようじゃないか」クスクス

カイ「馬鹿かお前、んな事で俺が泣く訳ねぇだろうが」

雪の女王「へぇ、それじゃあ賭けに君が負けたらどうする?」

カイ「賭けにもならねぇ馬鹿馬鹿しい勝負だが、仮に俺が負けるようになりゃあ何だってしてやるぜ」


カイ「お前の命令だろうと願いだろうと何でも聞いてやる。それがどんなもんだろうとお前の望み通りにしてやるよ」

・・・

308 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:35:11 w7G 149/451

キモオタ達がここに来てしばらく後…
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷

・・・

ゴーテル「さてと、止血と応急処置はこんなもんじゃろ。あとは包帯を巻いて…ありゃ、どこにやったかの…おお、これじゃこれ」ゴソゴソ

カイ「……」

ゴーテル「よしよし、これでいいじゃろ。しかしこれはあくまで応急処置、あとでキチンと医者に診てもらう事じゃ。よいな?」

カイ「……」

ゴーテル「こりゃぁ!気落ちなんざ好きにしとりゃあええが返事ぐらいせんかい!」ベシッ

カイ「……っ!痛ぇだろうがババァ!傷口叩いてんじゃねぇよ、こちとら怪我人だぞ!?」ズキズキ

ゴーテル「ほう、自分が怪我人だという自覚はあるようじゃな。じゃったらもう少し怪我人らしくすることじゃ!こんな状態で戦いの場に戻ろうとするなど自殺行為じゃぞ!まったく…」

カイ「……わぁったよ。あと、悪かったな。応急処置してもらってよ」

ゴーテル「感謝するんならアンタんとこの女王にすることじゃ。もう少し処置が遅れたらお主、アリスの目の前で倒れていたところじゃったろうからな」

カイ「…そうだろうがよ、あいつには感謝なんざできねぇよ。自分を犠牲にするような真似しやがって、残された方がどう思うか考えろってんだよ」

ゴーテル「ふむ…お主の言う事は尤もじゃな、命が失われて本当に苦しい思いをするのは残された方じゃからな」

ゴーテル「じゃがあまり責めんでやって欲しいのぉ、女王の気持ちも痛いほどわかるでな。ワシも娘が危機にさらされておればこの身を犠牲にしてでも助けるわい」

カイ「そりゃあ、あんたんとこは親子だから当然だろ?」

ゴーテル「親子だとか血の繋がりなんざは関係無いわい。女王はあやつらやお前さんはどうしても生きていて欲しいと願った、そうでなけりゃ命など投げ出さんわ」

ゴーテル「女王がそれだけの覚悟をした以上…お前さんがすべき事は気落ちすることなんかじゃありゃせん。そうじゃろ?」

309 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:39:15 w7G 150/451


カイ「あぁ…そうだな。あいつはキモオタに言っていた、アリスを止める方法をもう一度考えろってな」

カイ「戦ってみてわかったが…あいつの時間停止は思った以上に厄介だ。あれをなんとかしねぇと…あいつを止めるなんざできねぇ」

ゴーテル「ほう…じゃが本の虫であるお前さんなら、アリスの時間停止を阻止する方法を知っておるのではないかの?」

カイ「……そりゃあ、心当たりはあるけどよ。そう言うなら女王だって千代だって知ってたはずだ、それで止められなかったってことはそういう事だろ」

カイ「つぅか【不思議の国のアリス】を読んだことある奴なら知ってるはずだろ、どうすりゃ時間を操れなくなるのかなんかよぉ」

カイ「こんな事に首突っ込んでんだ、キモオタ達だって【不思議の国のアリス】くらい読んでんだろ。俺が今更話す事なんかあるとは思えねぇぜ」

ゴーテル「じゃがな…あやつら結構いい加減じゃぞ?それにあやつらが読んだ本が原書の翻訳とは限らんぞ?あのおとぎ話ほどの知名度ならばそれこそ星の数ほど本があるじゃろうし」

ゴーテル「キモオタの事じゃ、手に取りやすい薄手の本…内容が簡略化された子供向けの本を読んでおるかもしれんしのぅ」

カイ「そういや千代が言ってたな…現実世界のおとぎ話の本にはわかりやすく読みやすくされたもんも多いってな」

ゴーテル「なんにせよあやつらは時間停止を阻止する方法を知らん。そしてお前は心当たりがある、ならば協力しない理由はあるまい?」

カイ「まぁ、そうだがよ…」

ゴーテル「それにあやつら、お前さんの事を心配しておったぞ。そうじゃろティンカーベル、いつまで扉の向こうに居るつもりじゃ?こっちへ来たらいいじゃろ」

キィッ

ティンカーベル「……いや、なんかさ、気まずくて。あのさ、カイ、大丈夫?怪我…」

カイ「見ての通りだ、大丈夫じゃねぇよ」

ティンカーベル「だよねぇ…。あのさ、さっきの事なんだけど…」

カイ「なんつうか…悪かったな。あの時は感情を抑えきれなくてよ、お前にも言いすぎちまった。許してくれ」スッ

310 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:41:04 w7G 151/451

ティンカーベル「ううん、気にしてないよ。私もなんていうか…力になれなくてごめん、でもやっぱりあそこで戻っちゃいけないって思ったから…女王の覚悟無駄にしたくないし…」

ティンカーベル「だからカイのお願いは聞けなかった。それだけはわかって欲しいなって…思うんだけど」チラッ

カイ「あぁ、今はもう大分落ち着いた、もう無茶は言わねぇよ」

カイ「あいつの行動を認めるってのは難しいが…俺がやらなきゃなんねぇ事はあいつに文句を言ってやる事じゃあねぇしな。お前じゃねぇがあいつの覚悟を無駄にするってのも嫌だしな」

ティンカーベル「そっか…!そうだよねそうだよねっ!折角女王が時間作ってくれたんだもん、一緒にアリスをぶっ飛ばす方法考えよう!ねっ!」

カイ「なんだお前テンション高ぇな…」

ゴーテル「こやつ、お前さんの処置しとる間ずーっとこっちをチラチラ見ておったからのぉ。お前さんと仲直り…というかわかりあえて嬉しいんじゃろ」ホッホッ

ティンカーベル「い、いいんだよそんな余計な事言わなくても!っていうか喧嘩してたままじゃなんか嫌なの当たり前じゃん!」

カイ「別に喧嘩じゃねぇだろありゃ、ところであいつはどうしたんだよ?」

ティンカーベル「あっ、キモオタは今みんなに連絡してる。アリスにこっちの作戦バレバレだったし、みんなに手を出さないとも限らないし注意してって言っとかないとね」

カイ「あぁ、あの時計で他の連中と連絡が取れるんだったか」

ティンカーベル「そうそう。それにアリスはもう【アラジンと魔法のランプ】の結界破る準備ができてるっぽい事言ってたからね…」

ティンカーベル「だから【アラビアンナイト】のシェヘラザードにも連絡するって言ってた。多分もうそろそろ戻ってくると思うんだけど――」

ドタバタドタバタ…バターンッ!

キモオタ「ブヒイイイィィッ!」ゴロゴロゴロ ガシャーン

311 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:43:32 w7G 152/451


ティンカーベル「噂してたら肉団子が転がってきた…」

ゴーテル「こりゃあ!キモオタ!人の家であんまり暴れるんじゃないわい、迷惑じゃろうが!」

カイ「つぅかなんで転がってきたんだよ歩いてこいよ、豚界でのトレンドかなんかかよ…」

キモオタ「ドゥフwww辛辣ですなwww我輩、カイ殿の声が聞こえた故ダッシュで戻ってきたというのにwww」コポォ

キモオタ「しかし慌て過ぎてつまづいてしまいましてなwwwそのままゴロゴロと思いっきりこけてしまったわけでござるwww時にゴーテル殿、我輩、腕をすりむいてしまった故に手当てをお願いしt」

ティンカーベル「そんなことどーでもいいからさ、みんな何って言ってた?それ報告してよ」

キモオタ「ちょwww少しは心配して欲しいwww」コポォ

キモオタ「まぁそれはさておきwww皆の者に連絡してきたでござるよwww赤ずきん殿、桃太郎殿、裸王殿、ラプンツェル殿…共に居る者たちにも伝言頼んだでござるwww」

カイ「で、どうするんだよ?アリスにバレちまっている以上、作戦は続行できねぇだろ?」

キモオタ「でござるな、かといって今、個々で動くのも危険でござるし十分に警戒しつつ待機してもらう事にしたでござる。そしてもしも各々の世界が消えそうならば十分に注意して【不思議の国のアリス】に移動してほしいと伝えましたぞ」

ティンカーベル「アリスが全部の世界を消しちゃったらどこに行っても危ないし、絶対消えない保証があるのそこだけだもんね…」

キモオタ「ぶっちゃけ敵地でござるし危険度で言えばヤバイのでござるが、こうなればやむを得んでござる。ここに今一度集まる事も考えたでござるが…」

ゴーテル「一網打尽にされる可能性もある、一か所に集まるのは危険に思えるのぉ」

キモオタ「我輩もそう思うでござる、故に今回はそれを避けたのでござるが…それよりも一つ気になる事があるのですぞ」

312 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:45:09 w7G 153/451


ティンカーベル「えっ、気になる事って何?もしかして誰かが危ない目にあってたとか…!」

ゴーテル「ワシの娘は無事じゃろうな!」ガタッ

キモオタ「ラプンツェル殿は無事でござるから座っていただきたいwwwなんか親衛隊が出来たとか言ってましたぞwww」コポォ

ゴーテル「どんな状況じゃいそれ。まぁラプンツェルの可愛さならば遅いくらいじゃがな」

カイ「おい、話を進めてくれ」

キモオタ「そうでござったwww実はでござるな…シェヘラザード殿に連絡がつかないのでござる」

ティンカーベル「えっ…なんで?」

キモオタ「それがわかれば苦労はしないでござる。おはなしウォッチは正常に機能してるのでござるが、連絡に応じてくれないのでござるよ」

ゴーテル「ふむ、シェヘラザードは【アラジンと魔法のランプ】の作者。連絡がつかないとは嫌な予感がするのぅ…」

ティンカーベル「でもさ、ラプンツェルってシェヘラザードのとこにいるんじゃなかった?」

キモオタ「それが親衛隊と別の世界で修業しているとかで同じ世界には居ないらしいのでござる。ラプンツェル殿からはシェヘラザード殿に連絡する手段もないとかで…」

ティンカーベル「だったらさ!私がひとっ飛びして【アラビアンナイト】に行って来るよ!」

カイ「でもよ、その世界には結界があるんじゃあなかったのか?」

ティンカーベル「そこでゴーテルだよ!ゴーテルの魔力なら結界破って世界移動できるじゃん!」

313 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:48:39 w7G 154/451

ゴーテル「……」

キモオタ「おおwwwそういえばそうでしたなwwwではゴーテル殿、頼みましたぞwww」

ゴーテル「それは無理な相談じゃ」

ティンカーベル「えぇっ!?なんで?前は出来たじゃん!」

ゴーテル「…今のワシにはそれだけの魔力は残っとりゃあせんのじゃ。あの結界を破る事は、もうできん」

キモオタ「以前よりも魔力が減っているという事ですかな?それはどういう……」

ガチャッ

魔法使い「ふむ、どうやら皆揃っておるようじゃな。カイとやら、傷は一先ず大丈夫じゃな?お主にもこの場に居て欲しい」

カイ「あぁ、問題ないけどよ…なんだ?なにをしようっていうんだ?」

魔法使い「お前たちはアリスを今度こそ止めるための策を練るためにここに飛ばされたのだろう?ならばすべきは奴の時間操作能力を防ぐ事。その件について少し話をしようと思ってな。お主なら【不思議の国のアリス】についても詳しいだろう、カイよ」

カイ「まぁ…何度も読んだからな。ゴーテルばぁさんにも言ったが時間停止を防ぐ方法にも心当たりがある」

キモオタ「おぉ…!それは心強いですな!」

魔法使い「うむ。実はワシとゴーテルも思うところがあってな…アリスの時間停止に対抗する方法を考えておった。そしてとある魔法具を作っておったのじゃよ」

ティンカーベル「あっ、もしかして前にちらっと言ってた奴?二人もなんか策があるって言ってたもんね!」

ゴーテル「そうじゃ、ワシと魔法使いの魔力を駆使して作ったアリスに対する対抗策」

魔法使い「さぁ、キモオタ。この魔法具を受け取るのじゃ、必ずやお主等の役に立つ」

コトッ

キモオタ「これはおはなしウォッチ…!?まさかこれは…我輩の持つおはなしウォッチの改良版でござるか?」

魔法使い「うむ、その通り。新たな機能を搭載したおはなしウォッチ…」

キモオタ「名付けて『おはなしウォッチドリーム』…というわけでござるな!?」キラーン

314 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/01/30 01:52:58 w7G 155/451

その頃…
現実世界 本屋


店員「えーっと…この本はこっちの棚で、あの本はあっちの棚で…うーん忙しい!」ドタバタ

店員「そんでえーっと…次はおとぎ話か、このジャンルは数多くないから楽勝だな…よいしょっと!」ドサッ

店員「さてと、リストと照らし合わせて五十音順に並べていって……んっ?」

スゥゥゥッ

店員「あれ、おかしいな…リストにはあるのに本が無いぞ?さっきまであったのに…」ガサゴソ

先輩「おーい、どうした?無い本でもあったのか?」

店員「あっ、先輩。おかしいんですよ、ほらこれ。リストにはちゃんとあるのに本が無いんですよ、ミスですかね?」

先輩「マジで?なんて本?」

店員「【アラビアンナイト】です。ほら、リストにはあるんですけど…」

先輩「おいおい!お前目の前にあるじゃん【アラビアンナイト】!ほらこれ!」スッ

店員「えぇっ!?ホントだ!おかしいな…さっきは絶対無かったのに…」

先輩「もーっ、頼むよほんとにー!店長に怒られるの俺だぞー?じゃあ俺自分の仕事に戻るからなー」

店員「すんませーん…おかしいなぁ…さっきは確かに無かったのに……ん?」

スゥッ

店員「あれっ!?また無い!?えぇっ!?先輩ー!ちょっといいですかー!やっぱり無いんですけど…」

先輩「あのなぁ、お前も見ただろ?さっきちゃんと……ほらあるだろうがバカ!ちゃんと見なさい!」プンスカ

店員「えぇぇ…ホントだ。どうなってんのこれ……」

321 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:08:02 TiB 156/451

魔法使い「相変わらずお前のネーミングセンスは理解できんな…、どこから来たというのだその『ドリーム』は…」

キモオタ「ドゥフフwww現実世界のキッズ達に人気のアイテムから名を借りているのでござるよwwwっと、それはさておきwww早速でござるがこの魔法具の説明をしt」コポォ

ティンカーベル「ねぇねぇ魔法使い、おはなしウォッチの新しい機能ってなんなの?二人がアリスに対抗するために作ったって事は…やっぱり時間停止に対抗する力?」

キモオタ「ちょwww我輩のセリフがwww」コポォ

魔法使い「ふむ、長くなるのでその説明は後々するとして…。実はその新型おはなしウォッチ、まだ完成しておらんのだ。最後の仕上げが残っておる」

ティンカーベル「最後の仕上げ?なにそれ?」

ゴーテル「おはなしウォッチは使用者が他者との間に紡いだ絆を感知して会話を可能にしておるじゃろ?つまりキモオタが使って来たおはなしウォッチには様々な絆やこれまでの旅の記憶が込められておるというわけじゃな」

ゴーテル「その情報を新しいウォッチに移動させる必要があるんじゃよ。そうしなければ折角新型を手にしても今までと同じように使う事ができんのでな」

キモオタ「なるほどwwwつまり携帯の機種変みたいなもんでござるなwwwドゥフフwwwファンタジー機種変キタコレwww」コポォ

ゴーテル「機種変が何かは知らんが…前のウォッチから魔力を取り出して新ウォッチに流し込むだけの簡単な作業じゃ。では以前使っていたウォッチを貰おうかの」

キモオタ「了解でござるwwwではこのおはなしウォッチはゴーテル殿へ…ではよろしく頼みますぞwww」スッ

ゴーテル「うむ確かに。さてキモオタよ、今からこの旧ウォッチの魔力をその新型の方に転移させるでな…新ウォッチを腕に巻き、そのまま高く掲げよ」

キモオタ「ほうwww腕を高く掲げるとはまたベタベタな少年漫画的ポーズでござるなwwwさて、こんなもんでよいでござるかなwww」シュタッ

ゴーテル「腕を掲げるだけでいいんじゃ、ポーズまでとる必要はないのじゃが…まぁよかろう、そのままじっとしておれ」

ポオオォォ

キモオタ「おおおwwwおはなしウォッチが光に包まれていきますぞwwwこれはなんともふつくしいwww」コポォ

ティンカーベル(どうでもいいけど決めポーズが絶望的にダサい)

322 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:11:12 TiB 157/451


ゴーテル「…よし、もう手を下ろしても構わんぞ。これでその新たなおはなしウォッチも今までと同じように使えるでな」

キモオタ「ありがたいでござるwwwしっかし以前のおはなしウォッチとさほど見た目は変わりませんな」

ティンカーベル「うんうん、言えてる!どうせパワーアップすんなら見た目もかっこよくすればよかったのにねー」

魔法使い「そんなものは必要あるまい、魔法具のデザインを競っているわけではないのだからな」

キモオタ「確かにそうでござるけどwww」コポォ

魔法使い「安心するといい、外見の変化は少ないが魔法具としてはより優れたものへと変化を遂げておる。一回りも二回りもな」

キモオタ「ほうwwwプロである魔法使い殿がそう仰るのならば間違いは無いでござろうwwwしっかし旧タイプのおはなしウォッチも相当便利な魔法具だったでござるが…」

キモオタ「この新型はそれを凌駕するというのでござるから驚きでござるよwwwバージョンうpしたおはなしウォッチの新たな機能に今からココロオドリますなwww」コポォ

ティンカーベル「でさ、結局…このおはなしウォッチは何ができるようになったの?やっぱり時間停止には時間停止で対抗する感じなの?」

魔法使い「まぁ、簡単に言えばそういう事になる」

ゴーテル「アリスが時間を止めている間、停止した時間の中を自由に行動できるのはアリスだけじゃ。それに対抗するにはアリスの能力自体を無効化するか、こちらも時間を止めて同じ舞台に立つ必要があるでな」

魔法使い「アリスが魔法や魔法具を使って時を止めているのならば話は早かったのだが…アリスの能力は少々特殊。こちらも時間停止の能力を得たほうがよいと判断した」

カイ「マジかよ、女王ですら出来なかったってのに【シンデレラ】と【ラプンツェル】の魔女が手を組めば時間を操る魔法すら可能ってのか…すげぇな」

キモオタ「ほうwwwまさか我輩が時間操作系の能力者になる日が来るとはwww凄まじいパワーアップでござるぞこれwww」コポォ

ティンカーベル「だよね。実際アリスが強いのも時間停止が厄介だからってのが大きいし、アニメや漫画でも時間操作できるキャラは強いし人気あるもんね」

キモオタ「ジョジョのDIO様とかラスボスでござるしなwwwちなみに時間停止キャラなら我輩の推しは断然、まどマギのほむほむですなwww」コポォ

323 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:15:01 TiB 158/451

カイ「つーかよぉ、言っちゃ悪いがそんな便利なもん作れるならもっと早く作ってくれって話なんだが…」

魔女s「……」

ティンカーベル「ちょ、そんな言い方しちゃ悪いよ!」

カイ「だから悪ぃって前置きしただろ。でも実際よぉ、こっちにも時間停止の能力がありゃあアリスにあそこまで苦戦する事も無かったって事だろ?」

キモオタ「むむっ…確かにそうかもしれんでござるが…」

カイ「考えても見ろよ、もっと早くにこの能力もってりゃあきっと数え切れないほどの世界を救えたはずだぜ。それ以上の命だって守れたはずだ」

ティンカーベル「そ、そーだけどさ…なんか理由があるんだって…」

カイ「だとしてもだ。ばーさん達を責めるつもりなんかねぇけど、こういう便利なもんがあるならもっと早く――」

ガタッ

ゴーテル「たわけ!容易くできるもんならワシらもとっくにやっとるわい!考えてモノを言わんか馬鹿者!」ビュン

ゴスッ

カイ「痛ぇ…!殴るこたぁねぇだろばーさん!」ギッ

ゴーテル「お主の言いたい事ぐらいわかるわい!確かにもっと早くこの能力があれば雪の女王を失わずに済んだはずじゃ。お前さんはそこが気に食わんのじゃろ?」

カイ「……」チッ

ゴーテル「雪の女王を失ったお主の辛さは理解しとるつもりじゃ。じゃがな、大事なもん失っておるのが自分だけじゃと思わん事じゃ!」

キモオタ(魔法使い殿はシンデレラ殿を我が子のように思っていたでござる。魔法使い殿もまた、アリス殿の手によって大切な人を失った独りでござったな…)

魔法使い「もうよい、ゴーテル。相手は子供でしかも怪我人だ、それに気持ちはわかる…そこまでだ」

324 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:16:57 TiB 159/451


ゴーテル「しかしじゃな魔法使い…」

魔法使い「もうよいと言っているだろう。それにワシも少々後悔しているのでな、確かにもっと早く時を止める魔法具を作っていればシンデレラを守れたかもしれぬ」

カイ「聞いた話じゃあシンデレラは確か…」

キモオタ「詳細は不明な点が多いでござるが、とりあえず今は…アリス殿のところに捕われているようでござる」

ゴーテル「言ったじゃろカイ、大事なもんを失っておるのはお前さんだけじゃないとな」

カイ「そうだったのか…。悪かった、俺はあんたの気持ちも知らないで言いすぎちまった。許してくれ」

魔法使い「気にするでない。感情的になった子供に責められて落ち込むほど純粋じゃありゃあせんよワシは」

カイ「あんたも俺と同じでアリスに家族を奪われちまってたんだな……」

魔法使い「ワシらは家族などという間柄ではありゃせんよ、シンデレラはこの国の王妃じゃがワシはただの魔法使い……いいや」

魔法使い「今のワシはただの老婆に過ぎん。魔法も使えぬただの老婆だ」

ティンカーベル「えっ?それってどういう事?魔法使えないって…?」

カイ「おい、あんたまさか…」

キモオタ「魔法使い殿!お主…もしかしてこの時間停止機能付きの魔法具を作るために魔力を……!?」ガタッ

魔法使い「……」

ゴーテル「数日前、ここでワシ等がシンデレラを捜索した話をした際、二人とも不思議に思っておったじゃろ?」

ゴーテル「魔法使いは世界移動をすると魔力が制御できなくなる体質じゃ、それなのに何故問題無く【美女と野獣】の世界へ行く事が出来たのか…」

ティンカーベル「そうそう!それ不思議に思ってたんだよね…でももしかして、その時にはもう…!」

ゴーテル「そうじゃ、その時点で魔法使いは完全に魔力を失っておった。いいや、自ら捧げたと言った方が正しいじゃろう」



ゴーテル「シンデレラを救いだすため、アリスを止めるため…魔法使いはその身に宿す魔力を全て投げ出したのじゃ」

325 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:21:22 TiB 160/451

ティンカーベル「完全に魔力を失ったって…。で、でも魔法の知識はあるわけだしなんとか魔法使う事も…!」

カイ「できねぇだろうな…グレーテルと似たようなもんだ。本人に魔法の知識があったとしても魔力が無けりゃ独りじゃ魔法は使えねぇ」

キモオタ「すまんでござる…その様な覚悟が込められた魔法具とは知らず、我輩はただただ浮かれてしまい…」

魔法使い「えぇい、何をしんみりしておる!まったく…ゴーテルが仰々しく語るからこやつらが責任を感じておるだろうが」

ゴーテル「そうは言うが大切な事じゃろう、こやつらに悪気が無い事くらいはわかるが…少々物事を軽く見過ぎじゃ」

ゴーテル「時間の流れは絶対、そして一方通行じゃ。そして空も海も大地も、そこに住む様々な生物もその流れに従って生まれそして死んでいく。何者にも干渉することは許されない、それが例え魔法使いや魔女でもじゃ」

キモオタ「むむ…我々、魔法使い殿やゴーテル殿に助けられてきたせいか、魔法さえ使えば何でもできると思い込んでいたようでござるな…」

ティンカーベル「うん…私もだ、しかもちょちょいのぱっぱでお手軽にできるって思ってた…」

魔法使い「それは大きな間違いじゃな。魔法とて万能ではない、確かに魔法は不可能を可能にする、理を覆す事が出来る、時に干渉するという事も…それ自体は不可能ではない」

魔法使い「だが何事にも代償は必要だ。紙切れを宙に浮かす魔法と時を止める魔法、同じ魔法でもその代償が同じというわけではないのだ。強力で影響力の高い魔法ほどその代償は大きい」

魔法使い「ワシの持つ魔力全てとゴーテルの魔力半分以上、それに数種類の希少な魔法植物と鉱物…それが時を止める為に必要な代償じゃ」

キモオタ「ゴーテル殿も魔力を…!」

ゴーテル「大丈夫じゃ、ワシはそもそも魔法植物の栽培がメインじゃしな。だが先に言ったように【アラビアンナイト】の結界を破る事は出来ん」

ゴーテル「ワシも魔法使いも…魔力を手放した事を後悔などしておらん。その事を恩着せがましくするつもりもありゃあせん」

ゴーテル「ただ、時間に干渉するという事は本来…それほどの代償と覚悟が必要と言う事じゃ」

326 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:24:27 TiB 161/451


ティンカーベル「…ずるい!ずるいじゃんアリスの奴!」バンッ

ティンカーベル「魔法使いとゴーテルが魔力を失ってようやく時間に干渉出来るんだよ?でもアリスは何回も何回も時間を止めて…ずるい!」

カイ「ズルイも何も…アリスの能力は魔法じゃねぇんだ。魔力を必要とするわけじゃねぇから比較にならねぇだろ」

キモオタ「アリス殿の時間停止…そのメカニズムについては以前司書殿が教えてくれたでござる」

カイ「あぁ、あいつに聞いてたかそれなら話は早い」

ティンカーベル「うん、教えてくれたよね。えっと確か…」

キモオタ「【不思議の国のアリス】の主人公であるアリス殿は『時間』そのものとの対話ができるのでござる。そして親しいが故に時間はアリス殿の頼みを聞いて時間を止めたりできる…のでござったな?」

魔法使い「その通りじゃな」

ゴーテル「キモオタにしてはよく覚えておったのぅ。忘れておると思ってカイに説明させようと思っておったんじゃが」

キモオタ「流石に覚えておるでござるよwww重要ポイントでござるからなwww」

ティンカーベル「うーん…でもそれ聞くとなおさらずるいよ!なんなの時間と話せるって!時間と仲良しって何!?意味わかんないし!」

カイ「そんな事言い出したらお前が住んでたネバーランドも大概意味わかんねぇよ、あそこに居ると歳をとらないんだろ?なんでだよ」

ティンカーベル「それはそういうもんなの!なんでもクソもないんだよ!」

キモオタ「ちょwww暴論wwwとはいえ確かに時間と対話できるというのはハチャメチャというか…なんとも不思議な話でござるな」

魔法使い「それはそうだろう、アリスが住む世界に理屈だとか常識だとかそういった類の者は通用しないだろう」

魔法使い「なにしろあそこは『不思議の国』なのだからな」

327 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:26:37 TiB 162/451

ゴーテル「とにかくじゃ…状況をまとめるとこうなるのぅ。魔法使いはもう魔法は使えん、ワシも多少ならともかく大がかりなものは無理じゃ。よいな?」

ティンカーベル「うん、わかった!二人の覚悟を無駄にしないために頑張る!」フンス

ゴーテル「頼もしい事じゃな。そしてキモオタのおはなしウォッチは時間停止できる機能が備わっている。まぁ、条件はあるんじゃがな…」

キモオタ「ここまで代償を払ってさらに条件があるとは時間への干渉厳しすぎワロエナイ…」

ゴーテル「そしてアリスは自在に時を止められる。その方法は時間との対話…ここまではよいな?」

ティンカーベル「オッケー!……んっ?ねぇねぇ、ちょっと気がついたんだけどさ。おはなしウォッチで出来るのは時間停止だよね?」

魔法使い「そうだ、時を止める事だ。それも条件付きでな」

キモオタ「なるほど…ティンカーベル殿はこう言いたいのでござろう?」

キモオタ「おはなしウォッチで時を止め、停止した時のなかでアリス殿と対面したとして…どうやってアリス殿の時間停止能力を無効化するのか?という」

ティンカーベル「そうそう!こっちも時間を止めたからってそれで終わりじゃないでしょ?」

キモオタ「そうでござるな、時を止めて対等な舞台に立ったうえでアリス殿を無効化しなければ…」

魔法使い「それについては考えがある。そうじゃろ、ゴーテル?」

ゴーテル「うむ、お主等は知らぬかもしれんが…アリスの時間停止も万能ではない、弱点が存在する。そこを突けば無効化できるのじゃよ」

キモオタ「おぉ…!そんな方法が!一体どうすればよいのですかな!?」

ゴーテル「それに関してはワシらが説明するよりも、実際に【不思議の国のアリス】を何度も読んでおるカイの方が適任じゃろ。あとは任せたぞカイ

カイ「あぁ、俺に出来る事なんざもうこれくれぇだからな。何度も説明するのは面倒だから一度で理解しろよ?」

328 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:29:19 TiB 163/451


カイ「アリスは時間と対話して親しくなることで時間を操っている訳だが…そもそもこの能力はアリスじゃなく帽子屋のもんだ」

ティンカーベル「帽子屋って…確か、あの沸点低いオカマの?」

キモオタ「そうでござるな、あの思いの外強敵だった割にあっさり煽りに釣られたオカマでござる」

カイ「オカマなのかよ帽子屋…。いやそれはどうだっていいんだが、【不思議の国のアリス】の三月ウサギの茶会の場面でも出てくる有名な話なんだがな」

カイ「元々、帽子屋は時間と対話ができた。その上仲良くしてたもんだからいつだって時間は帽子屋の味方だったんだが……ある日、帽子屋はその能力を失った」

ティンカーベル「失ったって…どうして?」

カイ「帽子屋はな、時間と喧嘩しちまったのさ」

キモオタ「喧嘩…でござるか?」

カイ「おう、喧嘩だ。帽子屋はハートの女王に呼ばれて城の演奏会で歌を披露したんだ、それがまぁ適当な替え歌だったんだが…それが女王の気に障ったんだろうな」

カイ「折角の演奏会でくだらない歌を歌って時間を浪費してるってんで、女王は怒鳴ったんだよ『こやつは時間を殺しておる!首を刎ねよ!』ってな」

ティンカーベル「うわー、すんごい物騒な女王じゃん。なんていうかめっちゃ短気だし」

キモオタ「まるでティンカーベル殿の様な短気っぷりですなwww」

ティンカーベル「ちょっと!私は短気じゃないし!言いがかりはやめてよね!!」バンッ

カイ「……続けるぞ」

329 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:31:17 TiB 164/451


カイ「女王の言葉を時間は真に受けちまったんだ。それ以来、時間は帽子屋の頼みごとを何一つ聞かなくなった」

ティンカーベル「なるほど…だからお茶会の時間は止まったまんまなんだね」

キモオタ「つまり、アリス殿と時間殿を喧嘩というか仲違いさせればおとぎ話のなかでの帽子屋殿同様に時間停止能力を奪えるということですな?」

カイ「あぁ、あいつが時間と親しくして時を止めている以上、仲違いさせりゃ当然時間はアリスの頼みごとなんざ聞きやしない」

カイ「あいつは時間を止められなくなるってわけだ」

ティンカーベル「でも…どうやって?ぶっちゃけさ、カイが知ってるってことは女王も知ってただろうし…他にも知ってる人いたと思うんだよ。なのになんでやらなかったの?」

キモオタ「今まで誰ひとりとしてそれを試さなかったとは考えにくいでござる。ならば何かアリス殿側にもその弱点を補う何かがあるのでは…」

カイ「まぁあるだろうな。お前らは無知だったから知らなかっただろうがこの話は【不思議の国のアリス】をきちんと読んでりゃわかる話だ」

カイ「なんにも対策せずに使ってりゃあたちまち封じられるような脆い力でもあるからな」

ティンカーベル「って、向こうが対策してるんだったら手の打ちようが無いじゃん!」

カイ「そうでもねぇよ。考えてみろ、時間を止められるなんてのはほとんど反則なんだぜ?」

カイ「それなのに何故、アリスはお前らを殺さないんだ?時間を止めている間にお前らをメッタ刺しにでもなんでもすりゃ時を動かしたとたんに殺せるんだぜ?」

330 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:34:34 TiB 165/451

ティンカーベル「あー…確かにジョジョでもDIOがやってたね。時間止めてる間にナイフ投げまくる奴、で時間動いたらめっちゃ刺さる奴」

キモオタ「確かに、時を止められるアリス殿にとって我々を殺す事などたやすいでござるな…」

カイ「それなのにやらなかった。さっきはお前らを殺そうとしてたのにだ、だったら理由は一つだけだろうな」

キモオタ「時間を止めている間に我々を殺す、あるいは傷つける行為はアリス殿にとって不利益…ということですな!」

ティンカーベル「っていうことは…もしかしたらだけど、時間は優しい人(?)で誰かを傷つけたりすることに直接協力させられるのを嫌がってる…とか?」

カイ「いい線いってるんじゃないか?なんにしろ『時間停止中に人を殺せば時間に見限られる』だからアリスは時間停止中には襲ってこない」

キモオタ「なるほど、だから時間停止中はあくまで移動に専念し、時を動かしている間に攻撃をしている…でござるな」

ティンカーベル「これ決定的な弱点じゃん!ここを突けばアリスを倒せる!時間停止を封じられる!」

カイ「問題はそれをどうやって実行するかなんだがな…」

ティンカーベル「そんなの簡単だよ!アリスにあった時におはなしウォッチで時間止めてー、そんで時間にアリス悪い奴ですよーって言えばいいんだよ!」

キモオタ「また大雑把なwww理屈ではそうなのでござるが、果たして面と向かったアリス殿が…しかも時間停止のなか動ける我輩をスルーしますかな?」

カイ「そもそも対話できるのかってとこも怪しいが対話出来たとして…キモオタの話を時間がそうそう信じるかってところも微妙だぜ?」

カイ「知りもしない他人に『お前の友達は悪い奴だ』って言われてそうですかってなるか?」

ティンカーベル「もーっ!そんなのやる前からウダウダ言ってたって仕方無いじゃん!やるしかないんだよ!」プンスカ

331 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:37:01 TiB 166/451

カイ「どっちにしろ、アリスの時間停止を防ぐ方法は『時間との仲違い』これだけだ」

カイ「お前が言うように無理だろうがなんだろうがこれをやらねぇ事にはあいつはまた時を止める。それじゃあこっちの勝ち目は限りなく薄い」

ティンカーベル「だよ!キモオタ、聞いてたでしょ!?何が何でもアリスから時間停止の能力奪ってさ、シンデレラも助けてアリスも捕まえてもうぜーんぶなにもかも終わらせよう!」

キモオタ「…そうですな!今まで無理っぽい事は多々あったでござるが結局なんとかなっておりますしな、今回もなんとかするしかありませんなwww」

カイ「そうだぜ、あいつは…雪の女王はお前たちにならそれができるって信じてくれてんだ。あいつの弔いの為にも、その信頼に応えてやってくれ」

ティンカーベル「わかった!大丈夫、さっきは逃げるしかなかったけど次こそはなんとかする!任せて!ねっ、キモオタも!」

キモオタ「ドゥフフwwwお任せあれwwwしかし…先ほどこのおはなしウォッチで時を止めるのには条件があると言っておりましたな?」

ゴーテル「そうじゃな。人によっては大したこと無い条件じゃが、まぁこればっかりはキモオタ次第という感じかの」

キモオタ「我輩次第ですと?なにやら嫌な予感がするのでござるが、最悪条件が満たせなくて時を止められないという事も…?」

魔法使い「十分にあり得る。おまえの普段の行いがモノを言う条件…むしろ試練か」

ティンカーベル「うわー!駄目だー!キモオタの普段の行いなんか最悪そのものなのにー!」

ティンカーベル「プリキュアの映画見に行った時子供限定の特典欲しいって店員さんに無理いったり、スーパーでお総菜買う時醤油の小袋たくさん貰うし、吉野家でねぎだく頼んで店員さんにマークされたりしてんだよ!?…おわったー!詰んだー!」ジタバタ

キモオタ「それ全部お主もノリノリで賛同してるでござろうがwwwそれにまだ駄目と決まったわけでは……ゴーテル殿、ちなみにその条件ってハードル下げるとかでk」

ゴーテル「できるわけないじゃろ。覚悟を決めんか!では時間停止の条件と方法を説明するでな、時間もないんじゃからしっかりと聞くようにの」

ティンカーベル「とにかく今からでも徳を積んでよ!ほら真面目にゴーテルの話聞いて!」

キモオタ「ぶひぃぃ…こんなことなら普段から真面目にしておけばよかったですぞぉー!」

カイ(なぁ、女王…大丈夫なんだよな?こいつら信じていいのか…?)

・・・

332 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:40:00 TiB 167/451

同じ頃…
アラビアンナイトの世界 城下街

ザワザワ ザワザワ ギャーギャー ワーワー

トランプ兵「……」ザッザッザッザッ

「う、うわああぁ!!得体のしれない化物が…こいつらどっから湧いてきやがった!?」
「グッ…なんだこいつら!殴っても斬りつけても立ちあがってきやがる!どうなってやがんだ!?」
「駄目だ駄目だ!応戦したって俺達でどうにかなる相手じゃあねぇぞ!ここは逃げるしかねぇぞ!」

トランプ兵「……Kill」ギギッ

ガキィィン

兵士1「ぬぐっ…!なんて力だ化物め…ぜぇい!!」ビュン

町人「おぉ、王国の兵士さんか!助けてくれ!一体何がどうなってるってんですかい!?」

兵士1「わからん!今緊急対策本部が原因を究明しているが…皆目見当もつかんようだ、とにかく今は兵の指示に従って避難を!」ガキィン

兵士2「さぁこちらです!緊急時です!荷物は諦めて人命を優先に!私の指示に従って、落ち着いて行動してください!」

・・・シェヘラザードの実家

大臣「なんということだ…!トランプ兵達が城下を…!恐れていた事が遂に起きてしまった!」

大臣「何らかの対策を練らなければこの街は…この世界が危険だ!我が娘、シェヘラザードよ!この事態をどう切り抜ける!?」クルッ

シーン…

大臣「シェ、シェヘラザード!?こ、これ!娘を知らぬか!?」

使用人「シェヘラザード様なら大分前に独り言言いながら走って行きましたけど…それより大臣様も避難を!ここに留まっていては危険です!」

大臣「クッ…今更どこへ逃げろというんだ…。いいや、すまん、すぐに向かう」タタッ

大臣(事情を知っているだけの私にできることなど何もありはしない。後は頼むぞ我が娘よ…)

333 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/06 01:42:16 TiB 168/451


アラビアンナイトの世界 王宮

・・・

シェヘラザード「ハァハァ…次!お待たせしてすいません、担当のおとぎ話と状況説明をお願いします!」タッタッタッ

イフリート「【商人とイフリート】のイフリートだ。主よ…何が起こっているというのだ!?紙片の兵士共が無限の如く現れている!今は持ちこたえているが…我の力だけでは時間の問題。至急、救援を要請する!」

シェヘラザード「申し訳ありません、救援は…難しいです。なんとか…なんとかもう少し持ちこたえてください!」タッタッタッ

イフリート「ぬぅぅ…承知した。我が名にかけてこの世界は守り抜く所存!主、どうかご無事で」

シェヘラザード「はい、イフリートも。では…次!」タッタッタッ

フサイン「【ヌレンナハール姫と美しい魔女】のフサインです!」

シェヘラザード「フサイン王子!そちらの様子はどうですか!?」タッタッタッ

フサイン「幸い、ハサン兄様の象牙の望遠鏡のおかげで襲撃をいち早く察知出来たので被害は最小限で済みました。こちらの世界に余裕はあります、ご指示を!」

シェヘラザード「では魔法のじゅうたんでアリとフサインは【船乗りシンドバッド】の世界へ向かってください!シンドバッドが不在なためあの世界の被害が最も甚大なのです!」タッタッタ

フサイン「承知いたしました!私には魔法のリンゴがあります、治療はお任せください!では、シェヘラザード様ご武運を!」

シェヘラザード「はい、また追って連絡します!では、次…!」タッタッタッ

シェヘラザード(私の書いたおとぎ話…【アラビアンナイト】に所属するほぼ全てのおとぎ話が同時に襲撃を受けている…!)

シェヘラザード(【アラジンと魔法のランプ】のアラジンには連絡がつかず…シンドバッドも通信に応じません。キモオタさんからの通信もありましたが…多くの世界の対応に追われて連絡も返せないまま…!)

シェヘラザード(それでも私には作者としての責任があります…!この身に変えても残された世界を救わなければ…!)

350 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:23:02 v7q 169/451

アラビアンナイトの世界 王宮へと続く道

タッタッタッ

シェヘラザード(迂闊でした…。あれだけ警戒を重ねていたにも関わらずここまでの混乱を招いてしまうとは…)タッタッタッ

シェヘラザード(アリスが魔法のランプを欲している以上、あの世界を覆う強固な結界もいずれは打ち破られるだろうという事は想定していました)

シェヘラザード(本来ならばあらかじめ【アラジンと魔法のランプ】に増援を送り、万全な態勢でアリスを迎撃できればよかったのですが…そうする事は出来なかった)タッタッタッ

シェヘラザード(なぜなら…【アラジンと魔法のランプ】を覆う結界は【アラビアンナイト】に属するおとぎ話を守る結界よりもずっとずっと強固なものだからです)

シェヘラザード(あらゆる攻撃や侵入者から世界を守る結界は味方の侵入すら拒む…。ロック鳥であろうと魔法の絨毯であろうと作者である私であろうと…立ち入ることはできません)タッタッタッ

シェヘラザード(あの世界の主人公であるアラジンには指輪を介し、出来る限りの迎撃準備をするよう指示は出しましたが……それだけでは心もとない)

シェヘラザード(とはいえ他のおとぎ話から援軍を送るにはアリスが結界を壊したあとでなければいけない…。こちらは必然的に後手に回らざるをえない状態になってしまいました)

シェヘラザード(それでも極力迅速な援軍ができるよう、イフリートやシンドバッドを始めとする戦闘に特化した者達にはあらかじめ護衛を最優先にするよう命じていたのですが…その弱みをアリスは見逃さなかった)

シェヘラザード(アリスは【アラジンと魔法のランプ】の襲撃と同じタイミングで【アラビアンナイト】に属するほぼすべての世界に襲撃を仕掛けてきた…)

シェヘラザード(結果、それぞれの世界は自らのおとぎ話を守るだけで手一杯。とても別の世界に援軍を出せるような余裕は無い…仮に行けたとしても焼け石に水になる可能性も高い…)

シェヘラザード(今頃アリスは万全な状態でアラジンの元へ向かっているのでしょう…魔法のランプを奪い、望みを叶えるために)

シェヘラザード「……私が不甲斐ないばかりにこんな事に」ギュッ

シェヘラザード「本当に不甲斐ない…!私は作者でありながら…自らのおとぎ話の住人たちを守ることすらできないとは…!」タッタッタッ

351 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:26:23 v7q 170/451


シェヘラザード(……アリスが複数の世界に同時に襲撃を仕掛ける可能性も、考慮はしていました)

シェヘラザード(ですが、あろうことか私は慢心していたのです。例え同時に襲撃されようとこちらの迎撃態勢は万全。すぐに押し返してアラジンの援護に回る事が出来るだろうと)

シェヘラザード(ですが実際は、現存する二百以上のおとぎ話に押し返すことが困難な程大規模な攻撃を仕掛けられてしまった。そして…予想外の大軍勢を相手しきれず混乱を招いている。まさか彼女がこれ程までに勢力を拡大していたとは……)

シェヘラザード(……いいえ、言い訳はやめましょう、何の意味もありません。ただ私の読みが甘く、アリスに出し抜かれてしまっただけ。責任は私にある)

シェヘラザード(しかし、今の私にこの状況をひっくりかえす事は出来ない。皆さんを救う事もアラジンを援護する事も出来ない。でも……何もできないわけじゃない)

シェヘラザード「とにかく、今は王宮へ急がなければ…!」タッタッタッ

ザザッ

トランプ兵「……target Lock on」ギギッ

シェヘラザード「トランプ兵…!急いでいるというのに…!」ババッ

トランプ兵「preferred target sahrzad……ready……」ジャキッ

シェヘラザード「……っ!」

ガキィィン

兵士「クッ…!まったく護衛は何をしているんだ!?王妃様、ここは私に任せてお逃げください!」

シェヘラザード「助かりました!ありがとうございます…!」タッタッタッ

シェヘラザード(私がここで命を落とせば【アラビアンナイト】は近いうちに消滅するでしょう。そうすれば…語り手を失ってしまい、私が生み出したおとぎ話の世界も消えてしまう)

シェヘラザード(戦う力を持たない私が唯一出来る事。私が生み出したおとぎ話を守るために唯一出来る事、それは…死なない事。そして陛下の命をお守りする事…!)


シェヘラザード「この【アラビアンナイト】の世界を一分一秒でも長く存在させる事…!私のおとぎ話とそこに住む人々を守るために…!」タッタッタッ

352 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:28:32 v7q 171/451

アラビアンナイトの世界 王宮

タッタッタッ

シェヘラザード「ハァハァ…城門の守りごくろうさまです、陛下は…陛下は宮殿にいますね!?」

門番1「王妃様!?なぜお一人で…護衛はどうしたのですか!?」

シェヘラザード「陛下は…陛下はいますかと聞いているのです!」キッ

門番1「も、申し訳ございません!国王は確かに宮殿の中に、ですが……今はお会いすることはできません」

シェヘラザード「どういうことですか…?」

門番2「ご安心を、国王はご無事です。さぁ王妃様、私が護衛につきます。共に安全な場所へ…」

シェヘラザード「断ります!私は陛下にお会いするためにここへ来たのです!通しなさい、私は王妃シェヘラザードですよ!」

門番1「ひえっ…。そ、そう申されましても…ど、どうする?」チラチラッ

門番2「例え王妃様であろうと、お通しすることはできません」キパッ

シェヘラザード「…もう結構。私にはここを通る権利があります、あなた方が止めようと関係など――」

ズイッ

門番2「なりません。国王様からのご命令なのです、誰一人王宮へ侵入させないように。それが例え王妃様であっても…とのことです」

シェヘラザード「な、何故そんな事が…。王宮で何が起こっているというのです!?」

門番2「……王宮内にもはや安全な場所など存在しません。あの化物共は上空からこの宮殿を襲ったのです、」

シェヘラザード「……っ!」

門番2「現在、国王様は自ら刃を持ち、侵入者の討伐にあたっておられます。故に、兵以外は誰一人この宮殿に入れぬよう…そう、仰せつかっているのです」

353 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:30:59 v7q 172/451


シェヘラザード「それでは王は今最も危険な状況におかれているではありませんか!」

門番2「ご安心を、兵達も共に闘っております。なにより国王様はお強い、必ずや侵入者を殲滅してくださいます。ですので王妃様は安心してお逃げください」

シェヘラザード「そんな事出来るはずが無いでしょう!あれはただの敵兵ではないのですよ!?」

門番2「だとしても、お通しは出来ません。国王様の命令である以上…この門を死守する事が私の使命ですので」

シェヘラザード「…融通が利かない方ですね」キッ

門番2「えぇ、よく言われます」

シェヘラザード「では…もう一度だけ命じます、私を通しなさい。従わなければ王妃の権限を使い、あなたとその一族を処刑するよう陛下に進言します」

門番1「えっ!?ちょ、ちょっとそれは困りm」

門番2「どうぞ、進言なさってください。私はもとより家内も兵の妻、覚悟は出来ておりましょう」

シェヘラザード「……」クッ

門番2「お気持ちはわかりますがここはお逃げください。国王様は王妃様をを危険な目に会わせたくないとの考えから、私にこのように命じたのです。どうか、国王様のお気持ちを無駄になさらぬよう」

シェヘラザード「ですが…!私は…!」

ルオオオォォォォッ

シンドバッド「ハァー、どいつもこいつも頭が固い奴でまいっちまうなぁ…どこの王妃に似ちまったんだぁ!?…よっと」スタッ

門番1「うおっ、なんか上から下りてきた!?」

シェヘラザード「シンドバッド…!?」

354 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:33:55 v7q 173/451


シンドバッド「あんたが無事で何よりだぜシェヘラザード」ヘヘッ

シェヘラザード「何をヘラヘラして…私の通信にも応じず今まで何をやっていたというんですか!?」

シンドバッド「悪い、モルジアナんとこ…【アリババと四十人の盗賊】の世界でトランプ兵共を蹴散らしてる最中に指輪落としちまってな…。とりあえずあの世界は無事だ、ラプ公も親衛隊もな」

シェヘラザード「そうですか…それならば一安心です。ですが私も少々困ったことになっているのです」

シンドバッド「見てたぜ?王の所に行きたいがこいつらの忠誠心に邪魔されてるってんだろ?」

シェヘラザード「そんなところです。王の身にもしもの事があればこの世界は消えてしまうでしょう、それに……」

シンドバッド「はいはい、妻として心配だってんだろ?まー俺に任せとけ、なんとかしてやっから」スタスタ

門番1「な、なんだよこのチャラチャラしたチンピラ…な、何する気だ!?」ビクビク

門番2「王妃様のご友人とて、俺は容赦せん。力ずくで門を開けさせようというのならば…かかってくるが良い、こちらも伊達に門番をやっているわけではない」

シンドバッド「あーそうかい、んなら力ずくで入らせて貰うぜ…!剣を抜きな、門番ちゃんよぉ!」シャキンッ スタタタッ

門番1「く、来るぞ…!」シャキッ

門番2「焦るな。素人に剣で負けるほど、俺達は軟な鍛え方をしていないだろう。さぁ、来るが良いシンドバッドとやら」シャキッ

シンドバッド「ハハッ、せいぜいシンドバッド様の剣捌きに見惚れねぇように気を付けるこったなぁ!……よし今だロック鳥!シェヘラザード咥えて塀の向こうにぶん投げろ!」ババッ

門番2「何ッ!?」

シェヘラザード「っ!?ちょ、ちょっと待ちなさい!ロックt」ヒョイッ

ロック鳥「ルオッ」ポーイ

355 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:36:30 v7q 174/451


ドサッ

シェヘラザード「きゃっ、あいたた…。シンドバッド!あなたは相変わらず相談なしに無茶な事を…!」

シンドバッド「説教してる暇ねぇだろ?王宮に入れたんだ、さっさと王のとこに行ってやれって」

シェヘラザード「わかっています、少々手荒ではありましたが感謝しますよシンドバッド」

シンドバッド「わーったから早く行けって、お前は見えねぇだろうが俺は今めっちゃ門番に睨まれてんだよ。正直逃げてぇ」

シェヘラザード「そうですか、では手短に話すので一つ頼みを聞いてもらえますか?」

門番2「何という事をしてくれたのだこのチンピラめが!散れぃ!」

ジャキン

シンドバッド「どわっ!マジで手短に話せ!こいつ斬りかかってきやがった!」

シェヘラザード「わかりました、では…あなたにはすぐに【アリババと四十人の盗賊】の世界に戻って欲しいのです。そしてラプンツェルさんの元へ向かってください」

シンドバッド「あぁ、ラプ公は世界移動の手段もってねぇからな。もしもの時ヤベェってか……ってうおっ、油断してたらこっちがヤベェわこれ!つーかアラジンの所は後でいいのかよ?」ガキィン

シェヘラザード「心配ですがこうなってしまっては…あとはもうアラジンが少しでも長く凌いでくれる事を祈りましょう。少しでも、少しでも時間が稼げれば他の世界も援軍に向かう余裕が出るかもしれません」

シンドバッド「わーった、まずはラプ公を安全な場所に送り届けてからアラジンとこ行くわ。それでいーか?」ヒョイ ガキィン

シェヘラザード「あなたの実力ならばその方がいいでしょうね、お願いします。いいですか、くれぐれも調子に乗らずに戦うのですよ?」

シェヘラザード「あなたは真面目に戦えば私が生み出した者の中でも指折りの強さを誇っているのですから。なんだかんだいってもあなたの事、頼りにしていますからね?」

シンドバッド「へいへい、わーったから早く行けって」スッ

シェヘラザード「わかりました、では…無事を祈ってます、シンドバッド」タッタッタッ

356 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:38:54 v7q 175/451

シンドバッド「行ったか…。緊急時だってのに説教っぽいんだからどうにかなんねーかなあの性格は」

門番2「お前…ただの船乗りではないな?この俺が押されるとは…!」

シンドバッド「あぁ、俺は伝説の船乗りだからな!まぁあんたも門番にしとくには勿体ない強さだけどな…っと」スッ ドスッ

門番2「ぬぐっ…!お前、手を抜いていたか…!」ドサッ

シンドバッド「悪ぃがあんまりお前に時間取ってられねぇんだよ。もう一人は…おいおい、逃げやがった。マジかよあいつ…まぁいいけどよ、おいロック鳥!」

ロック鳥「ルォッ」バサッ

シンドバッド「お前もシェヘラザードの言いつけ聞いてたと思うけどよ、今からちょっくらラプ公の所にいってくれねぇか?」

ロック鳥「ルォ…?」

シンドバッド「ん?俺か?俺はいかねぇ、お前一人で行ってくれ。ラプ公ならお前の言いたい事大体わかんだろ?とりあえず状況話して安全そうな世界に連れて行ってくれ」

ロック鳥「ルォルォ!ルォック!」バサバサッ

シンドバッド「あぁ、アラジンの所にはいかねぇよ。俺一人だけで行ったってどうにもなんねぇし…あいつの手前言わなかったが、もう手遅れだろ。アラジンとこも、この世界もな」

シンドバッド「俺はこの世界に残ってトランプ兵共の相手をするわ、少しでも時間稼ぎが出来りゃあ御の字だろ。この世界が消えちまったらおしまいだからな、それにシェヘラザードに旦那と愛を語るくらいの時間はやりてぇしな」

ロック鳥「ルオォォォ…」

シンドバッド「ハハッ、お前今更何言ってんだよ?俺は優等生じゃあねぇんだぜ?おとなしくあいつの言う事聞く訳ねぇだろ?……っと無駄話してる場合じゃねぇな」

ザッザッザッザッ

トランプ兵「「「……」」」

357 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:41:07 v7q 176/451


トランプ兵「……lock on」ガチャ

シンドバッド「おーおー、結構数いるな。街の連中があらかた避難しちまってこっちに来たってとこか。やべぇ、門番倒さなきゃよかったぜ」

ロック鳥「ルォォ…ルォッ」

シンドバッド「なーに不安そうな声上げてんだよ!俺はシンドバッドだぜ?どんだけ修羅場越えてきたかお前も知ってんだろ?」ヘラヘラ

シンドバッド「心配する事なんかねーよ。いいからお前はラプ公んとこ行ってあいつの力になってやれ」

ロック鳥「……ルォォ」

シンドバッド「大丈夫だろ、確かに俺達は…消えちまうだろうしアリスは魔法のランプを手に入れちまうだろうが…」

シンドバッド「あの豚の事だ、またなんか上手い事やってまるっと解決してくれるだろうよ。見た目は家畜だがなにしろうちの作者が認めた男だからな、まぁ中身はある男だぜ」ハハッ

ロック鳥「ルオオッ」

シンドバッド「わかったらさっさと行け、あんまり時間ねぇぞ?」

ロック鳥「ルォォォック!!」バサバサッ

バサバサーッ

シンドバッド「さぁて、シェヘラザードもロック鳥も行っちまった事だ。面倒だがしゃあねぇか」スタッ

トランプ兵「……ready」ジャキッ

シンドバッド「おーおー、いっちょまえに槍なんざ構えやがって。さぁてよく聞け!俺ァ【船乗りシンドバッドの冒険】の主人公、シンドバッド!ウチの作者、それと大事なダチと相棒の為、いっちょ本気でやってやっかな…」

シンドバッド「…さぁ、かってきやがれ紙切れ共。この戦いも俺の冒険譚に加えてやるからよぉ、そんじゃあ行くぜぇぇ!!」ダダッ

・・・

358 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:43:22 v7q 177/451

アラビアンナイトの世界 王宮

・・・

トランプ兵「……」ザッザッザッ

ヒョコッ

シェヘラザード「……」スタスタスタ

シェヘラザード(ふぅ、なんとか気付かれなかったようですね。しかし、本当に王宮内にまでトランプ兵が…)

シェヘラザード(兵とはいえ魔法具ですから量産する事は可能。とはいえ…二百以上の世界を同時に襲うためにはどれだけのトランプ兵が必要か見当もつきません…)

シェヘラザード(それに兵を生み出す為にも魔力は必要でしょうし…結界を破壊する以外にもアリス側は膨大な魔力を持っているという事になりますね)

シェヘラザード「本当に私は読みが甘かったようですね…」

シェヘラザード(しかし、門が閉ざされているのに王宮内にトランプ兵がいるという事は…鳥か飛行能力を持つものが上空から投げ入れたと考えるのが普通でしょうか)

シェヘラザード(となると当然、意図的に王宮に投げ込んだという事で…やはり国王の命を狙っていると考えるのが自然)

シェヘラザード(私か国王の命を奪う事が、この世界を消すうえで最も簡単な方法ですからね…)

シェヘラザード「それにしても、陛下はどこへ…」

ガキィンッ

トランプ兵「……kill」ジリジリ

国王「フンッ、化物風情が随分と粘るな…だがこれで終いだ」ビュオン

359 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:46:50 v7q 178/451

ドスッ

トランプ兵「……error」ドサッ

国王「他愛もない…。だがこいつら明らかに人間ではない、自然発生した化物とも考えにくいが…すると人工的に生み出された魔物の類と考えるべきか?」

国王「いや、考えるのは後か。まずは王宮内に潜む化物共を駆逐せねば……」

シェヘラザード「陛下…!」タッタッタッ

国王「シェヘラザード…!何故お前がここに居る!?門番共は何をしているのだ…!」

シェヘラザード「申し訳ありません陛下。しかし彼等を責めないでください、私が無理やり王宮に入り込んだのです」

国王「お前が無理やり…ならばこの王宮が危険だと知っての行動なのだな?」

シェヘラザード「はい、侵入者が潜んでいるという事は聞きました」

国王「ならば何故自ら危険に飛び込むような真似をしたのだ?自らを危険にさらしてまでこの場に赴く理由などあるまい」

シェヘラザード「理由ならございます、陛下をお救いするためです」

国王「…私はお前に救われるほど弱くは無いつもりなのだがな」

シェヘラザード「はい、ですが…戦いを止めて避難するようにお願いすることは出来ます。陛下、今からでも安全な場所へ」

国王「つまりは我が身を案じてここまで来たというのか?」

シェヘラザード「はい、私は陛下の妻ですから。さぁ陛下、共に」

国王「……悪いがそれは出来ぬ相談だ、我が妻よ」

360 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:50:09 v7q 179/451


シェヘラザード「何故ですか?陛下がお強い事は存じております、ですが相手は水のように次々と湧き出てくる化物なのです。キリがございません」

国王「だとしても、兵が自らの命を掛けて戦っているというのにのうのうと逃げられるわけがあるまい」

シェヘラザード「陛下…。そのお考えは立派です、ですが…!」

国王「お前もよく知っているだろう、私がかつてどれだけ愚かな真似をしたのか」

国王「かつて妻だった女に裏切られ、その寂しさを埋めるために国中の若い女を根絶やしにした…そんな狂気の所業を忘れられるわけなかろう?」

シェヘラザード「……」

国王「よいかシェヘラザード、今この国に残っている者たちは…その中でも私の下に残っている兵達はその愚行を知った上で、私に忠誠を誓っている」

国王「人望も信用も何もかも失った私について来てくれている、お前と同じようにかつての繁栄を取り戻す事が出来ると信じてな」

国王「ならば私は、それに応えなければならない。この王宮の兵、街の者…この国を捨てずに残ってくれたものたちの為にも。それに相応しい王でいたいのだ」

シェヘラザード「…ご立派です、陛下」

国王「ならばわかってくれるなシェヘラザードよ、私はもう二度と信じてくれている者を裏切りたくは無いのだ」

国王「私の事を心配してこの場に赴いてくれた事は感謝する、だが案ずるなシェヘラザード。私は死にはせん、必ず化物共を根絶やしにし再びお前の元に戻ると約束しよう」

国王「故に、今はその身を大事にしてほしい。兵を一人護衛につける、しばらくは安全な場所に身を隠していて欲しい。聞き入れてくれるな?我が妻よ」

361 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:54:07 v7q 180/451

シェヘラザード「……」

国王「聞いているのかシェヘラザードよ」

シェヘラザード「……嫌です」

国王「シェヘラザード」

シェヘラザード「これが愚かな我儘である事は理解しています。ですが…それでも私は陛下のお傍に居たいのです」

国王「……」

シェヘラザード「先ほどここに来た理由を陛下をお守りするためと私は言いました…その言葉は嘘ではありません。ですが…それは理由の一つです。ここに来た理由は他にもあります」

国王「聞かせて貰おうか、その理由と言うのを」

シェヘラザード「詳しくお話しすることはできませんが、私は少し特別な力を授かっていて…。その世界の寿命がわかるのです」

国王「世界の寿命…?」

シェヘラザード「はい、この国や隣国、陛下の弟君が収める国、それらが存在するこの世界の寿命です。そしてそれはもう…僅かしか残されていません」

国王「この世界に終末が訪れる、お前はそう言いたいのか…?」

シェヘラザード「…はい、その通りです」

シェヘラザード「この世界の命は長くありません、もうじき潰えてしまうかもしれないのです。ですから、私は残された時間…陛下とともに過ごしたいのです」

362 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/13 01:57:28 v7q 181/451

国王「……」

シェヘラザード(申し訳ありません陛下、本当の事を話すわけにはいかないのです…)

シェヘラザード(とはいえ…例え妻の言葉でもこんな突拍子もない事を信じることなんかできませんよね…)

シェヘラザード「あの、陛下……」

国王「うむ、それならば無理に帰すという訳にもいかんな。しかし危険な事に変わりは無い、常に周囲に警戒しそして私の傍から離れぬよう」

シェヘラザード「よろしいのですか…?いえ、それは嬉しいのですが。私の言葉を信じてくださるのですか…?」

国王「お前が言うのだ、嘘や冗談ではあるまい」

シェヘラザード「それはもちろん、そうですが…あまりにも突拍子もない話なので…」

国王「たとえ突拍子が無かろうと、私は今更お前の言葉を疑ったりはせん。それに考えてみればお前の主張は当然だ」

国王「夫婦とは共に過ごすものだ。そうだろう、シェヘラザードよ」

シェヘラザード「はい、へいk」

アシェンプテル「……お前たち夫婦は随分と仲が良いのだな、シェヘラザード?」クスクス

シェヘラザード「…っ!」

国王「こやついつの間に…!下がれシェヘラザードよ!」バッ

アシェンプテル「勇ましいものだな、国王。それにお前の『夫婦は共に過ごすもの』という言葉には共感できる。どこかの馬鹿な王に聞かせてやりたいくらいにな」

国王「貴様…何者だ?この騒動の元凶か?女、名を名乗れ!」チャキッ

アシェンプテル「アシェンプテルだ。まぁ…知ったところでお前の命は灰のように散るのだがな、国王」

380 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:30:22 oS8 182/451

シェヘラザード「アシェン…プテル…?」バッ

国王「随分と威勢が良いなアシェンプテルとやら。しかし武器一つ持たぬお前が私をどのように灰にするというのだ?」チャキッ

アシェンプテル「そんな物が無くても敵を始末する事は簡単だ、今の私ならな」

国王「フン、小娘が戯言を…」

国王(……とは言ったものの、おそらくこの言葉は虚勢でもハッタリでもあるまい)

国王(見るからに異国の者だが…武器を隠し持つ暗殺者か?あるいは魔女の類か…いずれにせよシェヘラザードを守りながらの戦いになる、容易に手出しは出来んか…)

アシェンプテル「フフッ…」クスクス

国王「何を笑っている?」

アシェンプテル「随分と慎重なんだなと思ってな。とても個人的な感情で一国を傾けた王には見えない」

アシェンプテル「男ならば…特にお前のように女絡みで痛い目にあった奴ならば、丸腰の小娘に負けるわけないなどと慢心して正面から斬りかかって来ると思ったが」

国王「あいにくだが相手の力量を読み違えるほど錆び付いてはいないのでな。それに私はもう、かつての愚かな王ではない。今の私には――」

アシェンプテル「『守るべき国と、愛する妻がいる』といったところか?」

国王「故に、例え貴様が底知れぬ力を隠していようと、私は剣を収めるわけにはいかんのだ。王として国を、夫として妻を守るためにな」

シェヘラザード「お待ちください陛下…!ここは引くべきです、あの者は…!」

国王「案ずるなシェヘラザード。お前はただ、私の背に身を隠していればよい。いざっ…!」

アシェンプテル「フフッ、愛する国の為女の為。身を呈して戦うか、その覚悟に敬意を表して…相手になってやろうじゃないか」スタッ




アシェンプテル「…さぁ国王、私と一曲踊って貰おうか」ヒュンッ

381 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:32:56 oS8 183/451


フッ

シェヘラザード「消えた…!やはりあの者は…!」

国王「…っ!消えた…だとっ!?」バッ

アシェンプテルの声「そのリアクションには正直飽き飽きだな、私の舞踏の相手はいつだって同じ事を口にする」スッ

国王「……そこか!」スタッ ザシュッ

アシェンプテルの声「流石は国王だ。その反応速度は今までに戦った誰よりも秀でている。だが惜しいな…今はもう、私はそこにいない」

国王「クッ…人間とは思えんスピードだ、やはり魔法の類か…!」

アシェンプテル「ご名答。だが解ったところで手の打ちようはないだろう、とてもじゃないが常人に反応できる速度じゃあない」ヒュッ

スタッ ドゴォッ

国王「ぬぐぉっ…!」ベキベキッ 

シェヘラザード「陛下…!」

国王「何を不安げな顔を…案ずるなと言っただろう、シェヘラザード。王はこの程度で果てぬわ」ググッ

アシェンプテル「驚いたな、気絶さえせずに意識を保てるとは…」

国王「フン…見くびってもらっては困るな…。どうやら貴様は随分と舞踏には自信があるようだが…」ヨロッ

国王「狂王になり下がろうと私も王だ、多少は舞踏の心得もある。さぁ続きを始めるぞ、アシェンプテルよ」

382 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:34:39 oS8 184/451


アシェンプテル「私の蹴りを浴びたのだ、骨の数本は確実。悪くすれば内臓も無事ではないだろうに…それでいて尚も虚勢を張るか、呆れたものだ」

国王「あいにくだが小娘にじゃれつかれた程度で動けなくなるほど、やわな鍛え方はしていないのでな」

アシェンプテル「なるほど、もはやその身を捨てる覚悟か。ならば戦いを長引かせてしまうのは失礼と言うものだ」

アシェンプテル「舞踏の相手、感謝する。さらばだ国王よ」

ヒュンッ

国王(クッ、やはり姿は見えんか…!しかし存在はしているはずだ、攻撃の瞬間に刺し違える事さえできればそれでよい…!)

バッ

シェヘラザード「させません…!陛下のお命は私がお守りいたします!」バッ

国王「馬鹿な!無茶はよせシェヘラザードよ!」

シェヘラザード「アシェンプテルと言いましたね、あなたの目的は陛下ではなく私のはず!回りくどい事はやめ、私を狙いなさい!」

アシェンプテルの声「自ら盾になるとは…流石は主人公といったところか。守られる事を良しとせず自ら抗おうという気概は、賞賛に値する。だが…」

ヒュッ ビュンッ

国王「グアッ…!」ドサッ

シェヘラザード「陛下…!何故…!?」

アシェンプテル「国王でも追いきれなかった私の動きをお前に追えるはずがないだろう。立ちはだかるお前をすり抜けて国王を攻撃するなど容易いことだ」

アシェンプテル「所詮モノをいうのは実力だ。気概だけでは何もできない、覚悟とそれを貫き通す実力が備わっていなければな」

383 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:37:51 oS8 185/451

シェヘラザード「……あなたは一体、何者なんですか?」

アシェンプテル「名なら先ほど名乗ったはずだが?」

シェヘラザード「それは偽名でしょう?その名を主人公に持つ【アシェンプテル】の世界は、ずっと昔に消滅していますから」

シェヘラザード「かつて現実世界にはいくつかの『灰かぶり』の物語が存在していました。【アシェンプテル】もその一つ、語り継がれていた名も無き物語をグリム兄弟が編集したグリム版灰かぶり…それが【アシェンプテル】」

シェヘラザード「ですが…それはシャルル・ペローが編集したペロー版灰かぶりの知名度の陰に隠れ、やがてその世界は消滅してしまった。他のいくつかの『灰かぶり』と共に」

アシェンプテル「そう、らしいな。私は詳しく知らないが、興味も無い」

シェヘラザード「私の考えが正しければ、あなたこそが唯一現実世界に残された『灰かぶり』……シンデレラですね?」

アシェンプテル「察しが良いな、確かに私が生まれ育った世界は【シンデレラ】だ。だが…それは既に捨てた名だ」

ギロリ

アシェンプテル「二度とその名を口にするな、シェヘラザード」

シェヘラザード「……あなたが元の世界から消えてしまって、沢山の人が心配しているんですよ?キモオタさんから聞きました」

アシェンプテル「そうだろうな、あの連中ならばそうだろう。友が消えたとなれば必ずその身を案ずるような連中だ」

シェヘラザード「わかっているのなら何故あなたは…!」

アシェンプテル「それは連中の都合だ、私には私の都合もあれば目的だってある」

アシェンプテル「それに連中と友人関係にあったのは周囲に流される情けない『灰かぶり』だ。今の私は違う、連中とは赤の他人だ」

384 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:39:37 oS8 186/451

シェヘラザード「彼等はあなたを救いだすために必死なのですよ?魔力の影響を受けているのでしょうけど、その様な言い方は…!」

アシェンプテル「言っただろう、連中はもはや赤の他人だ。私は過去を捨てた、私を愛した王も私に力を与えた魔女も…私にとっては過去の者達だ」

シェヘラザード「その方々はあなたにとって恩人であるはず、その恩さえも捨てるというのですか…?」

アシェンプテル「今の私にとって一番大切なのは復讐を遂げる事だ。もしも私に恩人と言うものが存在するというのなら、その手助けをしてくれたアリスだろうな」

シェヘラザード「やはりあなたはアリスに協力を…!」

アシェンプテル「私のことをあれこれ聞いてくる前に、お前にはやるべき事があるんじゃあないのか?この世界を、お前が生み出した世界の連中を守るんだろう?」

シェヘラザード「……聞いていたのですか」

アシェンプテル「お前の夫は随分としぶとい、多少加減はしたが…息の根を止めるには至っていないようだ。つまりこの世界はまだ救える可能性があるということだ」

シェヘラザード「どの口が…!アリスの息がかかっているという事はあなたの目的は陛下や私の命を奪う事、そしてこの世界の消滅でしょう!?」

アシェンプテル「まぁ、否定はしないな。だが私がわざわざこの世界に赴いたのは別の理由だ。シェヘラザード、お前の事を一目見ておきたいと思ってな」

シェヘラザード「私を…?」

アシェンプテル「あぁ、お前の事も【アラビアンナイト】の筋書きもアリスに聞いた」

アシェンプテル「大臣の娘であるお前が、国王の暴挙を止めるために自ら行動する物語。身の危険すら顧みず、祖国と国王を想い行動する様には感動さえした」

アシェンプテル「いいや、感動なんて言葉じゃ言い表せない。私はお前を尊敬したよ、これは嘘偽りの無い真実の言葉だ」

385 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:41:39 oS8 187/451

シェヘラザード「私は、あなたに尊敬されるようなことはしていないはずですが」

アシェンプテル「謙遜なんかするもんじゃない。主人公でありながら作者であるという点もそうだが、お前はおとぎ話の登場人物の中でも異端だ」

アシェンプテル「かつての私がそうだったように…おとぎ話の主人公を務める年頃の女というのは大抵が大きな力に流されていくものだ。特に王族やそれに準ずる権力を得るパターンが多い、それもその大半が偶然によるものだ」

アシェンプテル「塔に幽閉された女が偶然王子に見初められ王族に、虫や獣に連れ去られた小さな娘が偶然花の王子に見初められ、百年の眠りにつく女も果実に毒を盛られた姫もそうだな」

アシェンプテル「かつての私も、何の努力もせず偶然魔女に助けられただけであっというまに王妃だ。そんな物語ばかりだ、おとぎ話と言うのは。実に嫌気がさす」

シェヘラザード「……」

アシェンプテル「だがお前は違う、自ら現状を打開する策を練り、そして命の危険が伴う事を知った上でその策を実行した。未来を切り開くため、自分自身で考えてそして行動した」

アシェンプテル「それは非常に素晴らしい事だと私は考える。そうやって勝ち取ったモノは本物だ、私達が偶然得たようなまがい物のそれとは異なる…そんな行動を選択したお前を私は尊敬した」

シェヘラザード「それならば何故こんな事を…!」

アシェンプテル「失望したからだよ、シェヘラザード」

シェヘラザード「失望…?」

アシェンプテル「私は本当にお前を尊敬していたんだ、話を聞いた限りお前は流される事も無く他人にゆだねる事も無く自ら運命に立ち向かえる女だと思っていたからな。だが実際は違った」

アシェンプテル「アリスが【アラジンと魔法のランプ】を襲撃したとき、お前が取った行動は実に保守的なものだった。お前の行動を思い出してみろ、シェヘラザード」

386 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:45:10 oS8 188/451


シェヘラザード「私は【アラビアンナイト】に属するおとぎ話を救うために最善を尽くしました!それに、そんな事を襲撃者側であるあなたに言われたくは…!」

アシェンプテル「最善?本当にそう思って行動していたか?」

アシェンプテル「ならば何故、【アラジンと魔法のランプ】の世界が襲撃された時…その世界に戦力を集中させて迎撃しようとしなかった?」

シェヘラザード「それは他のおとぎ話も同時に襲撃されたからです!アラジンの所へ援軍を送れば他の世界はトランプ兵の襲撃に耐えられず消えてしまうと思ったから…!」

アシェンプテル「甘い、甘いなシェヘラザード。あの世界もこの世界も全て守ろうなんて考えるからだ、そんな虫のいい話があるか」

シェヘラザード「ではあなたは…【アラジンと魔法のランプ】を守るために他の世界を犠牲にしろと言うんですか!?そんなことできるはずがないでしょう!」

アシェンプテル「犠牲にすべきだろう、お前が最も守るべきは【アラビアンナイト】の世界。そしてお前が決して許してはいけない事は魔法のランプをアリスに奪われる事だ」

アシェンプテル「それを優先する為ならば他の世界が消えることはやむを得ない。そうだろう?」

シェヘラザード「…私は作者です。既に消えてしまった他のおとぎ話だって、消したくは無かった!守れるかもしれない世界を見捨てることなんか…!」

アシェンプテル「守れるかも…で、結局この有様だ。お前は選択を誤った、下手に保守的になったせいでより多くのものを失った」

シェヘラザード「……」

アシェンプテル「そもそもだ、それ以前の話になるがお前が生み出した世界がほぼ同時に襲撃されたあの時、事もあろうのお前は……」

アシェンプテル「もう成す術が無いと、諦めていたんじゃあないのか?」

387 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:49:10 oS8 189/451

シェヘラザード「そんな事は…!あなたの考えと違っていただけで、私は自分にできる方法で世界を救うために…!」

アシェンプテル「私にはそうは見えなかったがな。他の世界を守るためと言えば聞こえはいいかもしれないが、結局何一つ守れなかった」

アシェンプテル「そして心のどこかで諦めていたお前は死に場所を求めて、国王のもとへやってきた。そうだろう?」

シェヘラザード「あなただって知っているはずです!国王と私、どちらかが欠けてしまえばこの世界は消える!この世界が消えてしまえば私が生み出した物語も…!」

アシェンプテル「お前は結局、最期を愛した男と迎えたかった、それだけだ。皆を守ろう世界を守ろうと考えていたようだが、心の底では諦めていて…それを覆い隠していただけだ」

シェヘラザード「違う!私は、私は皆さんを守るために…!」

アシェンプテル「本来の【アラビアンナイト】の世界では運命に立ち向かったお前の姿は素晴らしいものだったが…結局お前も、他のおとぎ話の連中と同じ」

アシェンプテル「運命から目を背け、誰かを頼って生きていく。そんな奴だ」

シェヘラザード「違う、私は…!」

アシェンプテル「別にそれでも構わない。確かに失望はしたが…どのみちお前は一人では世界移動ができない、この世界と運命を共にする事になる」

アシェンプテル「ただ…私はお前のようにはならない。誰かを必要以上に頼らない、自分自身が定めた目標だけ見据え、運命から目を背けず生きる」

アシェンプテル「妥協もしない、諦めもしない、流されない、誰かに媚びたり、何かを気にして生きたりしない。おとぎ話の世界にも、現実世界にも縛られない」

アシェンプテル「私は自分で積み上げたものだけを信じて、独りで生きていく。誰の力も借りず自分だけの意思で、力で」

ゴゴゴゴゴ……

388 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:51:52 oS8 190/451

ゴゴゴゴゴ……

シェヘラザード「な、何故消滅が…!?国王もまだ息があるのに…!」

アシェンプテル「遂にこの世界も消滅が始まったか…。まぁいい、私はそろそろ去ろう。最後に、お前に文句が言えて満足だ」スッ

シェヘラザード「待ちなさい…!あなたを帰すわけにはいかないんです…!」

アシェンプテル「長居して巻き込まれては困るんでな。なんなら追いかけてくるか?うっかりガラスの靴を落としてしまうかもしれない、それを拾って街中探せばいい」クスクス

ヒュンッ

シェヘラザード「クッ…!しかし、私も国王もまだ生きているのに一体何故……」ハッ

シェヘラザード「……まさか!?」バッ

スッ

シェヘラザード「イフリート!イフリート!聞こえますか!?シェヘラザードです、応答をしなさい!」

シーンッ

シェヘラザード「駄目ですか…ならば。アリ王子!フサイン王子!聞こえませんか!?シェヘラザードです!応答を…!」

シーンッ

シェヘラザード「アラジン!無事ですか!?魔法の、魔法のランプは――」

シーンッ

シェヘラザード「…どうして、どうして気が付かなかったんでしょう。【アラビアンナイト】の世界が消えれば、私という語り主を失った物語は消滅する。でもそれだけじゃない…」

シェヘラザード「私が生み出したおとぎ話…それがあまりに多く消滅してしまった場合、私は陛下に語る物語をうしなってしまう。その結果…この世界は形を保てなくなってしまった…!」

ゴゴゴゴゴ……

シェヘラザード「……彼女が言うように、私は選択を誤ってしまったようです」

シェヘラザード「……私は何一つ、救えませんでした。陛下の事も、他のおとぎ話の皆さんも…」

389 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/20 01:55:17 oS8 191/451


国王「……それは、違うぞ。シェヘラザードよ……」ヨロッ

シェヘラザード「陛下、意識を…!ですがお体に障ります、どうか安静に…」

国王「崩れゆく景色…どうやらお前が言う終末とやらがやってきたようだ、今更身体を案じてどうにかなることもあるまい…」

国王「だがこの命が果てる前にいっておかねばならない事がある。シェヘラザード、先程の言葉は撤回すべきだ…お前は私を救ってくれたではないか」

シェヘラザード「いいえ…私が選択を誤らなければ、陛下がこのような怪我を負う事も…」

国王「そんな話をしているのではない。お前は、道を踏み外した私を見捨てる事無く傍に居てくれたではないか。妻としてな…」

国王「私はお前に感謝しているのだ、私は前妻に裏切られてもう二度と女などと思っていたが…お前がその考えを変え、そしてこの国の未来を変えてくれた。礼を言わせてくれ、シェヘラザード」

シェヘラザード「そんな…勿体ないお言葉です。私も、陛下の妻で幸せです」ポロポロ

国王「フフッ、そうか…。だが心残りが無いと言えば、それは嘘になってしまうな…」

国王「お前が昨晩語ってくれた心躍る物語、その先を聞く事はもう…出来そうにない」

シェヘラザード「ご安心ください陛下、私はいつでもどのような場所でも陛下の隣で物語を紡ぎます」

シェヘラザード「陛下にも私にも…時間はたくさんございます。これからはいくらでも、物語をお聞かせする事が出来ます」

国王「そうか、それは喜ばしい…。そう考えれば、死後の世界も悪い場所ではなさそうだ」フフッ…

シェヘラザード「えぇ、どこまでもお供いたします。陛下」

ゴゴゴゴゴ……

399 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/27 00:44:23 kHg 192/451


場面は戻り…
シンデレラの世界 魔法使いの家

・・・

ゴーテル「さて、キモオタよ。その魔法具で時を止める方法じゃが…」

ゴーテル「先に言ったように新型おはなしウォッチで時を止めるにはある条件を満たす必要がある、その条件というのがじゃな…」

キモオタ「その条件とは……?」

ゴーテル「お主自身が『時間』に認められる。という事じゃ」

キモオタ「むむっ…?『時間』に認めて貰うですと?それは一体どのような意味でござろうか?」

ゴーテル「どうもこうもそのままの意味じゃよ。難しく考える必要などありゃせん」

ティンカーベル「つまりアリスが『時間』と仲良くなることで時を止めてるみたいに、キモオタも『時間』と仲良くなって時を止める力を手に入れようって事?」

ゴーテル「当たらずとも遠からずといったところか…。特に『時間』と親しくならずともその魔法具には時を止める力が備わっておる、ただし……」

ゴーテル「事情があるとはいえ、お主が勝手に時を止めてしまえば……その行為に腹を立てる存在がおるんじゃよ」

キモオタ「はぁー!?こっちはちゃんとした理由があるのに怒られる事なんか無いじゃん!誰なの!?そのわからず屋は…!」プンスカ

キモオタ「もしや、我輩が時を止める事で怒るだろう存在というのは……『時間』いいや『時間殿』でござるか?」

ゴーテル「左様、確かにお主はその新型おはなしウォッチで時を止める力を手に入れた。ただし、今はまだその力を使ってはならん」



ゴーテル「『時間』そのものが…それを許しはせんじゃろうからな」

400 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/27 00:46:56 kHg 193/451

キモオタ「なるほど…つまり我輩が時を止めるには時間殿の許可が必要だと、そう言う事でござるな?」

ゴーテル「そういう事じゃ。その魔法具を使えば時間との対話自体は可能じゃ、あとはお前自身が『時間』と交渉を……」

ティンカーベル「ねぇねぇ、別に許可なんかとらなくても勝手にやっちゃえばいいじゃん!もし怒られたら後で謝ったらいいよ!」

カイ「お前、俺の話聞いててよくそんな事言いだせたな…。んなことやってみろ、キモオタがどうなっちまうかわかんねぇぞ」

魔法使い「『時間』という存在は強大すぎる我々のような人間が刃向ってはならんのだ。怒りをかう事は絶対に避けるべきだ、決して敵に回してはならない存在なのだから」

ゴーテル「うむ、なにしろ相手は『時間』じゃ。その気になればキモオタを時と時の狭間に幽閉し、永久に虚無の空間をさまよう事になるやもしれんでの…」

キモオタ「ひえっ…なんと恐ろしい…!」

ティンカーベル「うーん…じゃあ駄目だね、それは流石にちょっとだけ困るよね…」ウーン

キモオタ「大いに困っていただきたいところですなwww」コポォ

ゴーテル「なんにせよ『時間』に無断で時を止める事は死を意味する。キチンと『時間』と対話し、時を止める許可を得るのが無難じゃな」

ティンカーベル「でもさ、簡単に許可してくれるのかな?もしも「駄目!」って言われたらどうする?外見がキモイから駄目って言われたら反論の余地が無いし…」

キモオタ「ちょwwwとはいえ、もし断られてしまえば我々はアリス殿の時止めに対抗する手段を失ってしまうでござるし、ちょっと不安でござるな」

ゴーテル「なぁに、そう不安に感じる事もあるまい。無断で時を止めれば『時間』も怒るじゃろうが、事情を話せば大丈夫じゃろ」

ゴーテル「お前が時を止めたいというのは決して私利私欲の為ではない、友を助け世界を救うためであるときちんと説明すれば問題なかろうて」

401 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/27 00:54:01 kHg 194/451


ティンカーベル「そうだよね!私達、正しい事してるんだし!悪いことするために時間を止めようってわけじゃないし!」

キモオタ「そうでござるなwww誠心誠意込めつつ事情を話せば時間殿も協力してくれるでござろうwww」

ゴーテル「うむ、何一つ案ずる事などありゃあせん。あぁ……そういえば一つだけ注意点があるんじゃったわい」

キモオタ「ほうwww注意点でござるかwwwそれは一体なんでござるかなwww」

ゴーテル「今回、その魔法具を作るにあたって色々と調べてわかったんじゃが…時間というのは軽視される事をとことん嫌うようなんじゃ」

ティンカーベル「そーなんだ!そーいえば、帽子屋も時間に『時間を無駄にしてる』って思われて喧嘩になったんだっけ」

キモオタ「そうでござったなwww故に、アポ無しで時を止めたら怒るんでござろうなwww」

ゴーテル「うむ、じゃから『時間』という存在は無駄にされる事を、蔑ろにされる事を、粗末に扱われる事を何より嫌う」

ティンカーベル「ん?つまり、どゆこと?」

ゴーテル「つまり時間という存在はじゃな。休日にだらだらと惰眠を貪ったりする輩なんぞを嫌っておるんじゃ」

キモオタ「……」ギクッ

ゴーテル「予定も立てずにうだうだ過ごした揚句、中身の無い時間を過ごす者…」

ティンカーベル「……」ギクッ

ゴーテル「無計画に遊んでばかりで時間を浪費したり、挙句時間を持て余して毎度毎度暇つぶしなんぞに興じているような…」

キモティン「……」ギクギクッ

ゴーテル「時間に敬意を払わず、いつもウダウダダラダラと過ごしては時間を浪費しているような…」

キモティン「……」ギクギクギクゥ

ゴーテル「そういった怠け者の事を、『時間』は心底嫌っておるじゃろうなぁ」

402 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/27 00:59:06 kHg 195/451

ゴーテル「まぁ、お主等には関係の無い話じゃから安心せい。キモオタはもういい大人じゃし、ティンカーベルに至っては妖精なんじゃから、そんな堕落した生活は送っておらんじゃろ?」

キモオタ「ハハハ、トウゼンデゴザルヨ。ワガハイ、イイオトナ、ナニモシンパイナイ、デゴザル」ドゥフフ…

ティンカーベル「ダヨネー、ワタシタチ、ダラクシテナイ、ダイジョブ」ハハハ…

カイ「お前らなんだその汗」

魔法使い「そもそも何故カタコトなのか」

ゴーテル「まさかとは思うが、お前たち……嘘じゃろ?」

キモオタ「……」

ティンカーベル「……」

ゴーテル「……」

キモオタ「ドゥフフフwww」

ティンカーベル「アハハハwww」

ゴーテル「呆れたわい…!何を笑っておるんじゃお前たちは!『時間』に協力してもらえんのかも知れんのじゃぞ!?」

ゴーテル「えぇい!とにかく話してみるんじゃ、お前たちが現実世界でどのように時間を浪費しておるのかを!」バンッ

403 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/27 01:00:16 kHg 196/451

ティンカーベル「は、話すからそんな怒んないでよ…。ほらキモオタ話してあげて、休日何してるかとか…」

キモオタ「そ、そうでござるな…。まず金曜日の晩は一週間頑張ったご褒美にピザとかとって、平日に取り貯めた深夜アニメを見るでござるなwww」

ティンカーベル「そうそう、ピザが無くなったら近所のファミマでジャンボフランクとスパイシーチキンと…適当におにぎり買って夜遅くまで見るんだよ、ね」

ゴーテル「いい歳した大人が休みに浮かれて夜更かしとは…!まぁよい、それで一時くらいに寝るんじゃな?」

キモオタ「いやいやwwwそれくらいはまだ序の口でしてwwwそっから海外ドラマのDVD見たり、時には大体マリカーや桃鉄に興じますぞwww」

ティンカーベル「大体寝るのは明け方だよね!そんで次の日の昼過ぎにもそもそ起きてきてー、またファミマ行ってー」

キモオタ「ジャンボフランクとパンで腹ごしらえをしてwww家に帰って洗濯機回しつつ早売りのジャンプ読みつつネタバレスレに書き込んで…」

ティンカーベル「Youtubeとかニコニコ見てー、そんなこんなしてたら大体夕方になってるから大体近くのガストに行ってー、そんで帰りにゲオでDVD借りてー」

キモオタ「そして帰りのファミマで補充したジャンボフランクをかじってはコーラをグビグビしつつチップス的な菓子をもさぼり夜が更けていくというwww」

ゴーテル「……」

ティンカーベル「あっ、でも次の日出かけるからお風呂入って十二時には寝るよ!ねっ?」

キモオタ「ですぞwww日曜日はアニメイト行ったりゲーセン巡りしたり忙しいですからなwwwまぁ特に予定立てずにぶらついてるでござるけどwwwそのあとは……」

ゴーテル「もうよい」

ティンカーベル「えっ?まだ日曜日の夜何するか話してないk」




ゴーテル「もうよい」

404 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/27 01:02:37 kHg 197/451

魔法使い「その辺でいいだろうゴーテル、いくら説教をしたところで過去を変える事は出来んのだから。肝心なのはどう『時間』を説得するかだろう」

ゴーテル「確かにそうじゃが…お前はなんだかんだで甘いのぅ。こういう奴等には厳しいくらいがちょうどいいんじゃい!」

カイ「同感だな、流石にだらしなさ過ぎるからな。マッチ売りもピーターパンも草葉の陰で泣いてんじゃねぇのか?」

キモオタ「ぬぅっ…」

ティンカーベル「うっ…」

ゴーテル(流石に精神的に来るものがあるようじゃな…。まぁ自業自得じゃ、これで少しは反省すればいいんじゃがな)

キモオタ「ティンカーベル殿、全てが終わったら…ちょっと生活見直そうでござる」ヒソヒソ

ティンカーベル「わかった、私もそうしたほうが良いと思う。約束ね」ヒソヒソ

ゴーテル「さて、『時間』をどう説得するかはキモオタに任せるとして…。ワシからの説明はこれで終わ――」ガタッ

キモオタ「むっ?どうしたでござるかゴーテル殿?突然立ち上がって……」

魔法使い「この感覚は…!お前たち!今すぐにゴーテルの背後に!」バッ

ティンカーベル「まさか襲撃!?早くない!?」

キモオタ「ちょ、突然そんなこと言われてましても…!」ドタバタ

カイ「ヤベェぞ…!確かにデカイ魔力を感じる…!そっちの壁の向こうだ…!」スッ

ドンッ! ゴゴォォォッ!

キモオタ「ぶひいぃぃっ!壁が一瞬で焼き払われて…!」

スタッ

アリス「やぁ、魔法使いにゴーテルも一緒か。ボクと戦う為の作戦でも考えていたのかい?」スッ

ゴーテル「……問題児の登場じゃな。全員、気ぃ抜くでないぞ…!」ググッ

405 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/27 01:06:55 kHg 198/451

アリス「問題児とは随分な言い草だな、ボク自らわざわざ出向いたっていうのに」クスクス

キモオタ「アリス殿…!我々を追って来たのですな…!」

アリス「まぁ否定はしないけど、今の目的は君じゃあない。そっちの魔女たちだ」ヒュン

キモオタ「なんですと…!?」

スタッ

アリス「君たち魔女を生かしていては何かと面倒だからな、消しズミになってしまえ」スッ

カイ「クソッ、また例の瞬間移動か!」

魔法使い「火打石…!来るぞゴーテル!火炎系の魔法具を持っている!」

ゴーテル「……っ!」

アリス「間に合わないよ、魔力を持っていようと所詮は老婆。ボクの炎からは逃れられない」カチカチッ

ゴゴゴォォッ!!

ティンカーベル「あぁっ!ゴーテル!」

アリス「フフッ、老婆を焼き殺すなんて他愛も無い事だ…。……っ!」

ゴーテル「この程度で勝ち誇られても反応に困るのぅ、アリスや?」

メラメラメラ スッ

ゴーテル「老婆だろうと魔力さえ持っていれば魔女じゃい。避けずとも攻撃を防ぐ手段などいくらでも思いつくわい」

アリス「……防御壁か。驚いたな、君は植物を扱うしか能がないと思っていたのに、身を守る事にもたけていたなんてな」

ゴーテル「フォッフォッフォ、甘いのぉお前は。ワシは【ラプンツェル】のゴーテル…いいや、一人の母じゃぞ?護ることに関してはおとぎ話の世界でも五指に入るわい!」

ゴーテル「例え一国の軍が攻めてこようとドラゴンが襲い来ようと天地が崩れようと…ワシはラプンツェルを護る事ができるようにしとるんじゃ。お前の拙い攻撃なんぞ屁でもありゃあせんわい!」

406 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/02/27 01:07:45 kHg 199/451

アリス「へぇ、それはすごいね。少しばかり舐めていたかもしれないな」クスクス

ゴーテル「お前が何をしにここに来たのかは大体察しが付くがの、こっちとしてもただ傍観しているわけにもいかんのでな」スッ

アリス「そうか、まぁ防御壁で防がれるなら魔力の底上げをすればいいだけの話だ」

カツンカツンッ

カイ「あの靴は…!ばーさん!アリスが履いてる靴は魔法具の威力を増幅する!用心してくれ!」

ゴーテル「厄介じゃな…じゃがどんな攻撃であろうと防ぐだけじゃわい!護る相手が可愛い可愛い我が娘じゃないのが残念じゃがなぁ!」ババッ

ゴーテル(とはいえ…ワシも本来の魔力を保持しておるわけじゃない、どこまで持つか正直なところわかりゃせんな…)

アリス「あくまで諦めずに立ち向かうか。いいね、どこまで耐えられるか見物だなゴーテル」カチカチッ

ボボボォォッ!!

アリス「さぁ防御壁を張ってみなよゴーテル、相手をしてやるかr――」

キモオタ「ちょwww我輩の存在を忘れてはおりませんかなwwwアリス殿www」シュタッ

ビュオンビュオンッ

カイ「あの長い棍は…孫悟空の如意棒か!?」

魔法使い(棍を振り回してあれだけの火炎を打ち消すか。どうやらキモオタ、おはなしサイリウムを使いこなしておるようだな)

キモオタ「ドゥフフwwwこの豚に茶々入れられるようでは底が知れますぞwwwさぁ続きを始めるでござるよwww」

アリス「…やっぱり、君は邪魔だなキモオタ。死に急ぐって言うなら相手してやるのも悪くは無い」スタッ

キモオタ「コポォwww死に急いでいるわけではござらんが、ぜひとも相手してもらいますぞwww」

ビュバッ

422 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:20:18 BET 200/451

アリス「お前も懲りない奴だ、先の戦いでボクには敵わないって思い知っただろう」

キモオタ「ドゥフフwww確かにお主は強いでござるが、それでもワンチャンある限り我輩は立ち向かいますぞwww」ビュンビュン

アリス「チャンスなんか無いさ。ボクはいつだってお前の死角から攻撃できる、いい加減学習しなよ」ヒュンッ ザシュッ

キモオタ「ぬうぅぅん!緊急回避ぃぃぃっ!!」ズサーッ

アリス「考えが浅いな。如意棒を振り回していれば近寄れないとでも思ったか?そんな物、ボクには止まって見えるんだよ。キモオタ」

キモオタ「ほうwww止まって見えるという割にはショボイ攻撃ですなwwwこの程度の攻撃で我輩を倒すなど片腹大激痛ですぞwww」キリッ ズキズキ

アリス「血を流しながら言われても説得力がないよ。まぁその強がりがどこまで続くか見届けてやろうか」シュタッ

キモオタ「ブフォwww強がりとは何のことでござるか?wwwこれは余裕というもんでござるwww」シュバッ

ガキィィン

ティンカーベル「ゴーテル!この隙に魔法使いとカイを連れて別世界に逃げて!」スイスイーッ

カイ「待てよ、やっぱり俺も戦うぜ。手負いだっつっても頭数くらいにはなるだろ……っておい!放せゴーテルばーさん!おいっ!」ジタバタ

ゴーテル「まったく、油断も隙も無い小僧じゃな…」ガシッ

魔法使い「カイよ、手負いのお前と魔力の枯渇した私なんぞ容易く捕えられて盾にでもされるのがオチだ」

カイ「クッソ…!情けねぇ…!」ジタバタ

魔法使い「お前も私もやれるだけのことはやった。これ以上出来る事は無かろう、ならばあとはキモオタ達に託すべきだ」

カイ「そりゃあ…そうだけどよぉ……」

ゴーテル「待っておれ、今すぐに別世界へのゲートを……」ブツブツ

423 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:22:45 BET 201/451


アリス「世界移動はさせないよゴーテル。君たちにはもう一つ役に立ってもらいたいんでね」ヒュッ

ヒュンッ

ゴーテル「……っ!」

キモオタ「ファッ!?しまったでござる…!ゴーテル殿ォォ!!」ダダッ

ティンカーベル「食い止められなかった!?ゴーテル!なんとか逃げてぇぇ!!」ピューッ

ゴーテル「クゥ、無茶言いよるわい…!」バッ

アリス「どんな優秀な魔女だろうと不死ってわけじゃない。その上老婆だ、その身にナイフを突き立ててやれば命を奪うなんて事は……容易い」シュバッ

ザクッ!!

キモティン「えっ…!?」

アリス「……足掻くね。まさかその身を犠牲にするなんて思わなかったよ、千変万化の魔法使い……!」ギリッ

魔法使い「フ、フッ…そう褒めるでない。お主の言うとおり、単なる足掻きなのでな…そう、最後の足掻きだ」ボタッボタッ

カイ「ばーさん…!」

ゴーテル「なん…じゃと……!?」

魔法使い「詠唱を…止めるでないゴーテル…!そう長くは止められん…!」ゼェゼェ

ゴーテル「う、うむ…!」ブツブツブツ

魔法使い「さぁアリスや、どうする…?私なんぞを突き刺したばっかりに身動きがとれぬようだな…」ボタボタッ

アリス「クッ、こいつ突き刺さったナイフごとボクの腕を…!自ら命を捨てるつもりか…!?」

魔法使い「解っておらんようだなアリス…ゴーテルを刺そうが私を殺そうが何の意味もありはしない…。何故ならお前の野望を食い止めるのはこんな老いぼれではないからだ」

アリス「……!」

魔法使い「見誤ったなアリスよ。キモオタもティンカーベルも、そして各地に散らばる仲間達…彼等の闘志は死んでなどおらんぞ?」

424 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:24:53 BET 202/451


ゴーテル「…よし、完了じゃ!これでいつでも別世界へ渡れるでな…!」

アリス「…予定は狂ったけど構わない。このまま魔法使いを殺してしまえば結果は同じだ…!」

カイ「…っとぉ、ばーさん共が気合見せてんだ。俺だけぼーっと見てるってわけにはいかねぇんでなぁ!」ヒュッ

バシィィッ

アリス「チッ、鬱陶しく足掻くじゃないか死にぞこない共…!」ギロリ

カイ「少しは見せ場作っておかねぇと後で家族に笑われちまう。そう言うのは俺の役回りじゃねぇんでな」クックッ

ティンカーベル「よーしっ!アリスが魔法使いから離れたよ!私達で一気に叩こう!おらぁー!」ピューッ

キモオタ「ガッテン承知ですぞ!」ドスドスドス ビュンビュン

アリス「まぁいい、あいつらを逃がしたところで…結果は同じだ。結局、最後にボク達が立っていればそれでいい」ヒュッ

ガキィンッ ビュンビュン キィン

ゴーテル「魔法使い、立てるかの?キモオタ達がアリスを抑えておる間に、さっさと逃げてしまうぞ」

カイ「俺が肩を貸す。素人目でも明らかにやばいだろその傷は、さっさと治療しねぇと」

魔法使い「すまぬ。だが、逃げる前にひとつだけ…二人に伝えておかねばならん事がある」ヨロッ

ゴーテル「何を言っとるんじゃ!お主、控え目に言って死にかけじゃぞ!?」

魔法使い「わかっておる…。それにこれは私の推測、仮説にすぎない不確かな考えだ……だが」


魔法使い「私の考えが正しければ…あの二人に、キモオタ達に希望を与えられるかもしれん…」ヨロッ

425 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:26:48 BET 203/451

魔法使い「キモオタ…!ティンカーベル…!」ヨロッ

ティンカーベル「えぇーっ!?なんでまだいるの!?早く逃げてって!あんまこっち余裕ないよ!こうなったら私が無理やり…」

キモオタ「待つでござる、魔法使い殿のことでござるから何か考えがあっての事。我々に伝えたい事があるのでは…?」ババッ

魔法使い「これは仮説だ、確かな情報ではない。だが…だが聞いておいてほしい」

アリス「……」ギロリ

魔法使い「お前たちは重々承知だろうが…おとぎ話の世界は現実世界の者に忘れられれば消えてしまう。そして、物語を動かす重要人物や主人公が消えたり死んでしまっても…同様だ」

魔法使い「ならば、その逆はどうなる…?」

キモオタ「逆…?それは一体どういう事d」

ティンカーベル「……あぁっ!?そっか…!そういう事なんだ…!それなら……!」

アリス「チッ、最後の最後まで目障りな老いぼれだ。やっぱり今ここで……」スッ

キモオタ「何が何だかわからんでござるがそれだけは阻止しますぞぉ!」ガキィン

魔法使い「ティンカーベルよ、お主は理解したようじゃな。ならばもう…恐れる事はあるまい」

ティンカーベル「うん…!ありがと、ありがとね魔法使い!」

ゴーテル「そこまでじゃ魔法使い、もう十分伝わったじゃろ。それ以上は本当に命にかかわる」

魔法使い「わかっている。…これで私の役目は本当に終わった、もう思い残すことなど無い」

426 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:30:43 BET 204/451

ゴーテル「キモオタよ、悪いがワシ等はもう行くでな。協力できるのはここまでじゃ、なんだかんだでお前たちならば大丈夫だと信じとる!よいな!」

キモオタ「ガッテン!お任せあれ、でござるよ!」シュバッ

カイ「妹と弟、あいつら大概だからよぉ…まぁ死なねぇように見てやってくれよ、ティンカーベル」

ティンカーベル「任せて!だからカイは安心して逃げていいからね!」ピューッ

ゴーテル「うむ、では退散じゃ…!」ブワッ

ヒュンッ

キモオタ「ふぅ…これでなんとか三人を逃がす事が出来ましたな、被害は甚大でござったが…ここからが本番ですぞ!」

ティンカーベル「そうだよね!っていうか、まんまと逃げられてるとかアリスも大したことないよね!バーカバーカ!」プークス

アリス「フッ、フフフッ……相変わらずお前たちは呑気だね」

ティンカーベル「はぁー!?何その負け惜しみ!魔法使いやゴーテルを倒してこっちの戦力を削ろうって考えてたんだろーけど無駄に終わって残念でしたー!」ベロベロー

アリス「何も知らずに挑発なんかして、馬鹿に見えるぞティンカーベル」クスクス

ティンカーベル「はぁん!?馬鹿じゃないし!」イラァ

アリス「いいや、馬鹿だよ。魔法使い達が逃げようと、お前たちが何を企もうと…【雪の女王】の世界でボクを止められなかった時点で、もう勝負はついていたんだよ」ゴソゴソッ

アリス「ボクはもう勝利のカギを手に入れた。魔法使い達を目の前で殺せばうまくお前の心を折れるだろうと思ったけど、そもそもそんな小細工に頼る必要なんかないんだよ」

アリス「お前達お得意の友情だの絆だの信頼だの、あるいはおはなしウォッチだのおはなしサイリウムだの…そんなものはもう意味を成さない無意味なものだ」スッ

カランッ

アリス「どんなに優れた魔法具でも…この『魔法のランプ』の前では何もかも霞んでしまうからな」フフッ

427 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:34:16 BET 205/451

キモオタ「あ、あれが魔法の…!」

ティンカーベル「ランプ…!もう奪ってたなんて…!じゃあシェヘラザードは!?」

アリス「ハハッ、いい顔をするじゃないか二人とも。シェヘラザードは今頃、国王に自作のおとぎ話でも聞かせているんじゃあないか?空の向こうの、ずっとずっと高い場所でね」

キモオタ「ティンカーベル殿!【アラビアンナイト】の世界には!?」バッ

ティンカーベル「……。……駄目!そもそも世界移動の門が開かない!つまりもう【アラビアンナイト】の世界自体が存在しないってことで…!」

キモオタ「ぬぅ…やはり連絡が付かないという事はそう言う事でござったか…!」クッ

アリス「長かったよ、長かった。【アラジンと魔法のランプ】に厄介な結界が無ければもっと楽だったんだけどな。でももう、ようやく苦労が報われた」

アリス「ボクはこの魔法のランプの力を使い、願いを叶える」スッ

キモオタ「うおおおぉぉぉっ!させませんぞぉぉぉぉぉ!!あれって確かこすられたらアウトでござるよね!?」ドタドタドタ

ティンカーベル「うん!アウト!逆に言えばアリスがランプをこする前に奪っちゃえばいいんだよ!おらぁーっ!」ピューッ

ウオオオォォ

アリス「…お前たちとは不本意ながら長い付き合いになるけど、そのがむしゃらにやれば解決するかもっていう考えは捨てるべきだとボクは思うな」

アリス「間に合う訳がない、間に合わせるわけがないだろう。ボク達は今この瞬間の為に様々な苦難を乗り越えてきたんだ」スッ

428 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:36:46 BET 206/451


スッスッ

アリス「さぁ…出でよランプの魔神!そしてボクの願いを叶えろ!」バッ

ゴゴゴゴゴゴゴ

キモオタ「ぬぅっ…間に合わなかったでござるか!」

ティンカーベル「うぅ…まだ、まだだよ!まだなんとかなる!考えて考えて!」

アリス「無駄だ、全ての世界はもうボクの手中にある。もう諦めてボクの望みが叶うのを指をくわえてみているといい」

ズモモモモモ ブシャーッ

キモオタ「ファッ!?ランプから暗雲が吹き出しましたぞ!?」

ティンカーベル「あっ、見て!暗雲の向こうに何かいる…きっとあれが魔神だよ、ランプの魔神!」

魔神「……我、魔法のランプに封じられし魔神也。ランプの所有者となり、我の主人となった者は……汝であるか?」ゴゴゴゴゴ

アリス「そうだ、ボクはアリス。お前の主人だ」

魔神「御意。主は望んでランプの所有者となったと見受ける、そのランプがどういったものなのか説明が必要であろうか?」

アリス「必要無い。お前はただ、ボクの願いを叶えればそれでいい」

魔神「御意。では…主よ、我は汝の願いを三つ叶えよう。どのような望みであろうと、その手に収めてみせましょう」

魔神「大海を埋め尽くす程の財産だろうと、一国の王など目ではない神にも匹敵する名声だろうと、この宇宙全てを牛耳る事が出来る圧倒的な力であろうと…我は主に差し出す事が可能です」

魔神「我は主のしもべ、どのような願いでもなんなりとお申し付けを。さぁ、主…第一の願いをお聞かせください」

429 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:39:08 BET 207/451

アリス「よし、それならばまずは…」

ティンカーベル「させるかオラァー!そのランプさえ奪っちゃえば所有者変わるでしょ!」ピューッ

キモオタ「ちょっ、ティンカーベル殿!?無茶ですぞ!?」

ティンカーベル「無茶でもやるしかないよ!今奪わなきゃ大変な事になっちゃうんだから!」ピューッ

アリス「……無計画が過ぎるなティンカーベル」ガシッ

ティンカーベル「くぅっ…!放せ!放せ!はーなーせーぇぇぇーーー!!!」ジタバタ

キモオタ「ティンカーベル殿…!いわんこっちゃない!今助けに行きますぞ!」ダッ

アリス「近づくなキモオタ。こいつの命は今、ボクが握っているという事を忘れるな。そこで黙って見ていろ」

キモオタ「ぬぅっ…」

アリス「話を中断して悪かったね魔神、それじゃあまずは一つ目の願いだ」

魔神「御意。なんなりと」

アリス「『【不思議の国のアリス】と現実世界の立場を入れ変えろ』それが一つ目の願いだ」

魔神「御意。【不思議の国のアリス】の世界を現実世界に、そして現実世界をおとぎ話の世界に変えてしまえばよいのですね?」

アリス「そう言う事だ。そして続けて第二の願いも叶えろ、いいな?」

魔神「御意。では第二の願いをお聞かせを」

アリス「【不思議の国のアリス】が現実世界になった今、もう他の世界なんか必要無い。お前たちが魔法使い達を必死で逃がした事も、まったくの無意味となる」

キモオタ「ぐぬぬ…。と言う事はアリス殿の願いはやはり…」

アリス「待たせたな魔神、さぁボクの第二の願いを聞け!そして叶えろ!ボクの、そして仲間達、無念に散って行ったルイスの想いを形にするため…!」



アリス「『全てのおとぎ話の世界を消滅させろ』!」

430 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:42:04 BET 208/451

魔神「御意。第三の願いはどうなさいますか」

アリス「今は必要ない。その二つの願いを叶えたらランプへ戻って構わない」

魔神「御意。では、ハァァァァァ……フンッ!」パーッ ズワワワワ!

ゴゴゴゴゴ

キモオタ「結末を迎えている【シンデレラ】の世界が崩壊を…!」

ティンカーベル「ランプの魔神に願ったんだもん…!もう結末を迎えていようと迎えて無かろうとおとぎ話の世界がみんな消えちゃう…!」

アリス「それだけじゃない、現実世界も共に消える。いいや、今はもう【現実世界】という名のおとぎ話の世界だったな?」クスクス

キモオタ「何という事を…なんと言う事を!アリス殿ォ!こんな事をして多くの人々が消えてしまう事になるんですぞ!」

アリス「今更、そんな言葉がボクに通用するなんて思ってるのか?だとしたら随分と能天気だ」

キモオタ「何故、何故こんな事を平然に…!どうかしていますぞアリス殿ォ!!」

アリス「流石に生まれ育った世界を消されたら頭に来るかい?是非どんな気持ちなのか教えてほしいもんだな」

アリス「おとぎ話の世界を救う救うと旅をして、結局全ての世界を失ったどころか生まれ故郷さえも消えてしまった。父親も母親も、友人も一人残らず混乱の中消えていく…あぁ現実世界ではお前に友人なんか存在しなかったんだったか」

キモオタ「ぐぬぬ…!」

アリス「どうする?今から現実世界に戻るかい?まぁ戻ったところで何もできないだろうけどね」

アリス「ともあれこれで雑多な世界は綺麗に消え去った。唯一、【不思議の国のアリス】の世界を残してね。これでひとまず、ボクの願いは達成できたってわけだ」クックッ

431 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/06 01:47:44 BET 209/451

アリス「ともあれこれで雑多な世界は綺麗に消え去った。唯一、【不思議の国のアリス】の世界を残してね。これでひとまず、ボクの願いは達成できたってわけだ」クックッ

アリス「ルイスが生み、皆が暮らす【不思議の国のアリス】だけが唯一存在する世界、もう 
魔神「主、我はランプへと戻ります。第三の願いを命じる際、またお呼び下さい」

アリス「御苦労。…さて、次はお前の番だな?ティンカーベル」

ティンカーベル「うっさい!放せ自己中ボクっ娘!死ね!」

アリス「死ねとは直球だな。だが死んでしまえと思っているのはこっちだって同じなんだ」

アリス「言ってしまえば全ての元凶はお前なんだからな、ティンカーベル」

ティンカーベル「はぁ!?あんたがいろんな世界で無茶苦茶するからこんなことになったんでしょ!私のせいにすんなバカバーカ!」キッ

アリス「いいや、お前が元凶だ。お前が現実世界に出向かなければ、キモオタを巻き込んでボクの邪魔をしなければこの計画はずっとずっと早く完遂していただろうよ」

ティンカーベル「ふんっ!残念でした!キモオタはキモイけど私の為に一生懸命手伝ってくれてるからね!お前の邪魔ができて良かった!あーよかった!」

アリス「憎まれ口が減らない奴だな。ボクがお前を消す方法を知らないとでも思ってるのか?」

ティンカーベル「ふんっ、どうせ知ってるんでしょ?でも別に平気だし、私!」

キモオタ「ちょ、ちょっとティンカーベル殿何を言っt」

ティンカーベル「むしろやれるもんならやってみなよ!でも私一人殺したところで何にもならないけどね!バカバーカ!」

アリス「……そんなに望むのならその存在を消してやる。」ビュンッ

ビタンッ

アリス「まったく難儀な種族だな、存在を否定されただけで消滅するなんて」」

ティンカーベル「フンッ、私はそう思わないし!」

アリス「そうかい、まぁどうだって構わないさ。お前を殺すのに特別な武器も魔法具もいらない。ただひとことお前に投げつけてやればいい、否定の言葉をな」




アリス「妖精なんかいない…!」

453 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 01:48:09 65h 210/451

同じ頃
現実世界 某所 混乱に陥る都市

ゴゴゴゴゴ…

ギャーギャー ギャーギャー

警報『緊急警報!緊急警報!只今、原因不明の崩壊が発生しています!命を守るため、一刻も早く避難してください!』

「ここは危険だ!とにかく建物から離れねぇと下敷きにされちまうぞ!急いで避難場所へ走れぇぇ!!」
「うああぁぁ!!邪魔だ!どけぇぇ!!畜生、なんなんだよ…!何が起こってるんだよ一体!原因不明の崩壊ってなんなんだよ!」
「逃げろ逃げろおぉぉ!!立ち止まるなぁぁ!!走れええぇぇ!!」
「ううぅ…動けない、動けない…!誰か、誰か…助けて!」
「あぁぁ…!死にたくない…死にたくない…!」

警報『繰り返します!一刻も早く指定の避難場所へ急いでください!決して立ち止まらず!引き返さず!命を守る行動を最優先し、避難を――』

ギャーギャー ギャーギャー

454 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 01:48:30 65h 211/451

スタッ

チェシャ猫「相変わらず、現実世界の人間共は愚かで滑稽だ。まるで現実というものが見えていない」

チェシャ猫「冷静に状況を判断すれば理解できるはずだ、目の前で起きている崩壊は異常なものだと。そしてこの惨状から逃れる事は決してできないという事を」

イソゲ ニゲロ ニゲロ!
ウワァァァ シニタクナイ シニタクナイ!
タスケテ タスケテ!

チェシャ猫「にもかかわらず、こいつ等は逃げ惑う。この状況が理解できないほど愚かなのか、理解していながらそれを受け入れられていないのか、あるいは自分だけは死なないという根拠の無い希望にすがっているのか…」

チェシャ猫「何にせよ、これは罰だ。誰かを、何かを犠牲にすることで手に入れた仮初の平穏に甘んじてきた罪に対する、罰」

チェシャ猫「何一つ、誰一人犠牲になる事など無い『完全なる平和』を掴み取る努力をしなかった、愚かな人間どもに対する報いだ」

455 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 01:49:23 65h 212/451

ゴゴゴゴゴ……

ギャーギャー ワーワー

チェシャ猫「さぁ、そろそろ戻るとするか。愚か者共が絶望する姿はこの目で確かに確認した」スタッ

チェシャ猫「この世界、そして他のおとぎ話の世界が完全に消滅するのも時間の問題。そうすれば愚かな人間共は、我等の敵は全て消え去る」

チェシャ猫「アリスの仲間だけ、我々の理解者だけが暮らす平和な世界。【不思議の国のアリス】という名の、誰一人犠牲になる事の無い本当の意味で平和な世界を…ようやく手に入れる事が出来るのだ」

チェシャ猫「我が同士アンデルセン、そして我が友ルイス…お前達が想像していた形とは多少違うかもしれないが、私は…我々はお前達の仇を討った、そしてお前達の願いを実現させた」

チェシャ猫「【不思議の国のアリス】には戦争も無ければ貧困も無い。差別の心を持つ者も、偏見の眼差しを向ける者も存在しない」

チェシャ猫「それに何より、子供達にとって優しい世界がそこにある。あの世界の子供は身を売る事も、犯罪に手を染める事も、幼くして死ぬ事も無い」

チェシャ猫「お前達が、アリスが、我々が望んでいた理想の世界が…ただ一つの現実となって、その平和を永遠のものにするのだ」

チェシャ猫「……いいや、まだ仕上げが残っているか。作戦ではアリスがあの豚を始末する手はずになってはいるが……」

チェシャ猫「あいつの事だ、今まで散々邪魔をしてきた礼をするなどと言い出しかねない。そうでなくともあの豚の仲間が何人か我々の世界に入り込んでくるだろう」

スタッ

チェシャ猫「まったくもって面倒だが、自分達の部屋にゴミが転がっているのは見るに堪えない」

チェシャ猫「残念だが勝利の余韻に浸るのはしぶとい汚れを消し去ってからになりそうだ」スゥゥ

・・・

456 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 01:50:29 65h 213/451

ライオンとねずみの世界 ライオンとねずみが暮らす森

ゴゴゴゴゴ…

リスリーダー「ご報告いたします王様!僕達、草食組は全員避難完了しています!」ピシッ

コヨーテ先輩「俺等、肉食組も避難完了してますぜ。コヨーテ数匹には逃げ遅れた連中が居ないか森を巡回させてまさぁ」

ライオンの王「報告ごくろう、無事に避難出来たようでなによりだ。巡回中のコヨーテにも頃合いを見て避難するよう命じてくれ」

コヨーテ先輩「わかりましたぜ。だが安心してくだせぇ、ウチの部下共はヤワな鍛え方してねぇんで。一匹の犠牲者も出さずに御覧にいれますぜ」キリッ

コヨーテ後輩「ヒューッwww流石は肉食組のリーダーッスわwww先輩マジカッケェwww」マジパネェ

コヨーテ先輩「オイオイwww俺がマジメにキメてんだから茶化すなってのwww」

ライオンの王「さぁお前達も避難所に急いでくれ、そして混乱が広がらぬように皆を安心させてやって欲しい」

コヨーテ組&リスリーダー「「承知でさぁ」」「わかりました!」シュタタッ

ライオンの王「……」

ネズミお譲「……辛いですわね。絶対に助からないという事がわかっていながら、避難するように命じるしかないというのは。心が痛みますわ……」ヒョコッ

ライオンの王「やむを得ん、真実を話したところで助かる術は無い…。我等はこの森を平和に導いたつもりでいたが、こうなってしまうと無力なものだ」

ネズミお譲「そんな風に自分を卑下しないでくださいまし!おじ様は立派な王ですわ、わたくしが太鼓判を押しますわ!」

ネズミお譲「それに赤ずきん達がきっとうまい事してくれますわ!【不思議の国のアリス】には大量の魔法具があるらしいですし、なんかこういい感じにやって…この世界が消えてしまっても復活させてくれますわ!多分!」

ライオンの王「フフッ、そうだといいがな。我々に教えられることは全て教えた、協力できる事は全てやった。あとは信じるのみだな」

ネズミお譲「大丈夫ですわよ!わたくし達ネズミとライオンが協力して平和な森を作れたんですもの!人間の女の子と鬼と精霊が協力すればもっともーっとでっかい事できますわ!」

ネズミお譲「それこそアリスなんか木端微塵のケチョンケチョン!必ずおとぎ話の世界に平和な日常を取り戻してくれますわよ!師匠であるわたくしが言うんですから間違いねぇですわ!」ドヤァ

・・・

457 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 01:51:52 65h 214/451

裸の王様の世界

ゴゴゴゴゴ…

ギャーギャー ワーワー

「裸王様ー!お姿をお見せください!これは…一体この崩壊はなんなんですか!?なにが起こっているんですか!?」
「私達はどうなるんですか!?裸王様!裸王様!助けてください、私達を導いてください!」
「うぅ…筋肉神よ…。どうか我々をお守りください…」

ブリキ「城の前に人だかりが…。どんなに統治された国でも緊急時の混乱は防げないか…」

大臣「ブリキよ、崩壊が始まったという事はお前の連れ合いも【不思議の国のアリス】の世界に旅立つのだろう?顔を見なくてもいいのか?」

ブリキ「今ドロシーに会えば決心が鈍る、お互いにな。それよりも民衆の混乱がエスカレートすれば暴動に発展するかもしれない、早急に手を打った方がいいんじゃあないか…?」

大臣「ブリキよ。お前はまだこの国の凄さというのがわかっていないようだ、この程度の混乱など些細なものだ」

ブリキ「いや…いくらこの国の治安が良いとはいえ、今は緊急時だ。民衆の混乱を鎮めなければ大事に…」

スタスタスタッ

裸王「待たせてすまないな大臣、支度に手間取ってしまってな。民達の様子はどうだ?」シリアスマッスル

大臣「皆、王の言葉を今か今かと心待ちにしております」

裸王「うむ、では皆に事情を説明するとしよう。この世界が消え去ってしまう事、そして世界が潰えても筋肉の素晴らしさは潰えぬ事をな!」マッチョ

ブリキ「この世界が消え去る事をだと…?馬鹿な、そんな事をすれば確実に暴動になるぞ!?」

裸王「ハッハッハッ!我が国民は年中半裸で過ごす王を受け入れているのだ、世界が消え去る事を受け入れる事など容易かろう」ハッハッハ

458 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 01:53:04 65h 215/451

裸王「皆の者、待たせてしまって申し訳ない!私はここに居る、鍛え抜かれた筋肉と共に!」マッスルポーズ

「おぉぉー!裸王様だ!ご無事で何よりです!ところで何が起こっているんですか!?ご存知なら教えてください!」
「この凄まじい揺れは地震でも炭鉱の崩落でもありませんよね?一体何が…」
「裸王様!そして筋肉の神よ、私達を導いてください!」

裸王「うむ、にわかには信じられないかもしれん。だが今から話すことに一切の偽りがない事を、私はこの筋肉に誓おう」

裸王「この国は…いや、この世界はもうじき消え去ってしまうだろう。非常に無念だが…それを止める事はこの裸王にすら出来ぬ。皆を世界の終末から救う事は…私には出来ないのだ」ザワザワ ザワザワ

「ら、裸王様にもなんとも出来ないなんて…!筋肉が通用しないんじゃあ…どんな手も通用しないって事じゃあないか!」
「世界の終りだ…!もうどうにもならない…!これじゃあこむら返りだぁー!」

ブリキ(そら見た事か、民衆が一斉にざわめき出した!あんな事を聞いて平常心を保てるわけがない…!)

裸王「だが私は!そして私の友は世界消滅の元凶がなんなのかを知っている!そしてその元凶と戦うべく今まで筋肉を研ぎ澄ませてきた!」

裸王「皆を今、苦しみから救いだす事が出来ないのは私の責任だ。だが信じて欲しい!私は必ずその元凶を打ち倒し、この世界を!この国を!そして民の笑顔と筋肉を取り戻す!」

ブリキ「いくら熱弁をふるったところで…消滅した世界を蘇らせるなんて戯言を混乱した民衆が信じるわけが……」

「なんだ、裸王様が取り戻してくれるってんなら安心だな!俺とした事がやべぇと思っちゃったぜ、とんだ取り越し苦労だったな。これで万事解決、帰って風呂入ろ」スタスタ
「裸王様がああ仰るなら私達は信じて待てばいいわね。裸王様に筋肉の加護あらんことを!」
「さっそく帰ってばーさんに伝えなきゃな、裸王様がなんとかしてくれるってな」

ブリキ「なんだと!?なんだって民衆がこうも素直に…普通は疑うだろう!?」

裸王「では私はこれより戦いの地に赴く!皆の者!次に会うときは凱旋パレードであると約束をしよう!では皆に、そして我が友に筋肉の加護あらん事を!」

ウオオォォ!!ラオウサマー! ガンバッテー!オウエンシテマスー!

ブリキ「…侮っていたな。これが裸の王の求心力か…!」

・・・

459 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 01:54:36 65h 216/451

金太郎の世界 足柄山

ゴゴゴゴゴ…

食わず女房「桃太郎さんとライオンさん、行っちゃいましたねぇ…。私、ちょっぴり寂しいですぅ…」ションボリ

金時「そうだな、短い間だったが寝食を共にした仲だ。だがあいつは勇敢に戦場へ向かっていった!だったら残された俺達にできる事はあいつの勝利を信じてやることだ!そうだろう?」

舌切り雀「つっても、なんつぅか…ちぃとばかり不安は残るな。まっ、やれるこたぁは全部やって送り出せただろ。あとはあいつら次第ってぇとこだな」

食わず女房「大丈夫ですよぉ。桃太郎さんならきっと勝てますぅ、私は信じてますよぉ…」

金時「もちろん俺もだ。アリスは相当な強敵だって話だが、桃太郎は勝てる!あいつの努力を近くで見た俺が言うんだから間違いねぇ!」ハッハッハッ

舌切り雀「まぁ…あのクソヘタレにしちゃあよく頑張った方だな。【聞き耳頭巾】のジーさんと【雪女】の雪女からもあいつが日ノ本一だってお墨付き貰ったし、ここ数日であいつは見違えるようになったしなぁ」

舌切り雀「確かに今のあいつなら大抵の事は解決できらぁな。つっても完全に別人になったわけでもねぇ、またいつ臆病風に吹かれて腐った桃になっちまうかわからねぇから安心は出来ねぇなぁ…」

食わず女房「うふふっ…雀さんは口は悪いですけど、桃太郎さんの事が心配なんですねぇ…優しいです」

舌切り雀「まったくよぉ、あっしみてぇな雀に心配されるような侍がどこに居るんだってぇ話だ。困ったもんだぜあのキビダンゴ野郎はよぉ」

金時「ハッハッハッ、そう心配する事も無いと思うぞ舌切りの。確かにどこか頼りない所もあるが…それをひっくるめてもあいつは日ノ本一の侍だ。俺の侍としての魂がそう言ってる!」ハッハッハ

食わず女房「そうですよぉ、桃太郎さんは日ノ本の誰よりも強いです…。そして日ノ本の誰よりも美味しそうです、きっと柔らかくていい香りがするお肉です……だから大丈夫です」

舌切り雀「なにが大丈夫だってんだそりゃ。まったく、オメェらは楽観的すぎんだよなぁ…ったくよぉ」



舌切り雀(ここまでオメェの事信頼してる奴がいるんだ。この期に及んで無様な泣きっ面さらすんじゃねぇぞ、桃太郎)

460 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 01:56:53 65h 217/451

アリババと四十人の盗賊の世界

ゴゴゴゴゴ…

ギャーギャー ワーワー

女の子「だ、誰か…!誰か助けてください…!お母さんが崩れた小屋の下敷きに…!誰か…!」

「この緊急時に他人なんか構ってられねぇよ!」
「うおぉぉー!どけどけー!俺が一番先に逃げるんだぁー!」
「気の毒だがそんなことしてたらこっちが逃げ遅れちまう…」

女の子「うぅ…誰も助けてくれない、このままじゃあお母さんを助けられない…」ポロポロ

親衛隊アニキ「どうしたんだお譲ちゃん、何か困ってんのかい?」

女の子「あっ、あの…!お母さんが小屋の下敷きになってて…助けてください!」

親衛隊アニキ「何っ、そいつはいけねぇ!オイ、お前らァ!二、三人こっちこい!この譲ちゃんのお袋さん助けるぞ!」ヘーイ!

親衛隊アニキ「他の連中は逃げ遅れた年寄りや子供が居ねぇか見て回れ!ラプちゃんが頑張ってんだ!俺達も出来る事やるぞ!わかったな!?」ヘイアニキ!

親衛隊アニキ「さぁ譲ちゃん、お袋さんの所に案内してくれ。すぐに助けてやっからな」

女の子「あ、ありがとうございます…!で、でもなんでこんな事に…お母さん助けられても、私達無事でいられるかなぁ…」オロオロ

親衛隊アニキ「可哀そうに、不安だよなぁ。でも大丈夫だ、俺の友達が悪い奴やっつけに行ってる、不安がらなくても大丈夫だ」ポンポン

女の子「お兄さんの…お友達…?」

親衛隊アニキ「あぁ、少し危なっかしいが友達思いで正義感が強い…髪の長い長いお姫様だ」ニッ

・・・

461 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 02:01:40 65h 218/451

シンデレラの世界

ゴゴゴゴゴ…

ティンカーベル「……っ」シュウゥゥゥ…

キモオタ「ティ、ティンカーベル殿…!少しずつ姿が消えて…!」

アリス「【ピーターパン】の妖精は存在を否定されると消滅する。そのルールは元の世界が消えていたとしても当然適応される」

ティンカーベル「フンだ!今まさにそうなってんのにイチイチそんな事言わなくたって解るし!バーカバーカ!」

アリス「最期まで威勢だけはいい奴だ。喚くのは勝手だけどもうすぐ消えてしまうお前に興味なんか無いよ」

ティンカーベル「そーですか!いっとくけどね、私を消したところで何にもかわんないんだから!キモオタやみんなが絶対にお前の事やっつけてくれるし!」

アリス「何も変わらない?そんな事は無いだろう?なぁ、そうだろう?キモオタ」

キモオタ「……」ギリッ

アリス「お前にとってティンカーベルは大切な存在だったんだろう?そんな存在を消されてしまったんだ、平常心を保っていられないだろうね」

アリス「今まで一緒に過ごしてきた友達を失って平気でいられるほどお前は薄情じゃない。ティンカーベルを失った今お前は絶対に――」

ビュバッ

ガキィィン!!

アリス「……っと、真正面からいきなり攻撃とはお前にしては無策だね?」クスクス

ティンカーベル「キモオタ…!!」

キモオタ「アリス殿……ティンカーベル殿を、我輩の友人を…!過去のもののように言うのはやめてもらうでござる!」ギロリ

462 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 02:03:33 65h 219/451


アリス「お前がそんな風に怒りをあらわにするのは珍しいね」クスクス

キモオタ「……我輩を豚と蔑もうが家畜と揶揄しようが好きにするでござるよ。とはいえ我輩は聖人君主ではないでござる、怒る時は怒るでござる」

キモオタ「そして友を軽んじられた今がその時でござるよアリス殿オォォォ!!」ビュバッ

シュタッ

アリス「相当、精神に負荷がかかっているね。無理もないか、初めてできた親友が死んだようなものだ」クスクス

アリス「でもボクとの戦いはお預けだ、そろそろボク達の【不思議の国のアリス】に侵入者が来るだろうから相手をしなくちゃいけない…それに」

アリス「お前には随分と世話になったからね、こんな場所ではなくもっとふさわしい場所で…礼をしなければいけない」ギロリ

キモオタ「こんなことまでやっておいて…逃げるつもりでござるか!?」

アリス「お前相手に逃げたりなんかするもんか。場所を変えようと言っているんだ」

キモオタ「……」

アリス「この世界はもうじき消滅する。そうなればお前と戦う舞台は一か所だけだ、どの世界かなんか言わなくたって答えは出ているだろう?」

キモオタ「【不思議の国のアリス】…の世界でござるな?」

アリス「まぁ、もはやそこにしか世界は存在しないわけだけどね」クスクス

アリス「その世界の中心にハートの女王の城がある、ボクと仲間達はそこに居る。決着をつけたいのならそこまでやってくることだな、キモオタ」

アリス「…もっとも、故郷を失った上に親友まで失って冷静さを欠いてしまったお前にボクを倒す算段があるのなら…の話になってしまうけどね」クスクス

463 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 02:06:24 65h 220/451

アリス「それじゃあボクは先に行っているよ、長居してこの世界の消滅に巻き込まれても馬鹿みたいだからね。それにボクだって悪魔じゃない」

アリス「大切な親友との別れを惜しむくらいの時間は与えてやるよ」クスクス

ヒュンッ

ティンカーベル「あいつ最後まで好き勝手な事言っててメッチャ腹立つなぁ…もぉ!」シュウウゥゥゥ…

キモオタ「……ティンカーベル殿、すまんでござる。我輩が不甲斐ないばっかりにお主を消滅させてしまう事に…!」

ティンカーベル「……ねぇ、キモオタ」

キモオタ「お主が存在を否定されれば消えてしまう事は知っていたというのに、何もできなかったでござる!もっと具体的な対策を立てておくべきだったでござる…!」

ティンカーベル「ねぇ、キモオタ。ちょっと聞いt」

キモオタ「お主を失って…我輩は一体どうすれば…!すまんでござる、すまんでござるティンカーベr…おぶっ!」ドゴォ

ティンカーベル「聞け!私の話を!まったく前にも似たようなやり取りしたよもう…。あのねぇキモオタ!言っとくけど、私は感動的な別れとか別れ際に友情を確かめ合うとかそういうベタな事するつもりないからね!」

キモオタ「おぉう…お、お主このような時に冗談など…」

ティンカーベル「冗談じゃないって!もー…キモオタの事だから私が消滅しちゃったら絶対に取り乱すと思ったよもー…仕方ないなぁ…」

キモオタ「そ、そりゃあ取り乱しますぞ!?お主を失うという事は我輩にとっては……」

ティンカーベル「あのね、言っとくけどこれ…わざとアリスを焚きつけて私を消すように仕向けたんだからね?」シュゥゥゥ…

キモオタ「ファッ!?」

464 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 02:08:47 65h 221/451

キモオタ「ど、どおりでなんか不自然というか無茶な感じでアリス殿に噛みついているとは思ったでござるが…自分を消滅させるためにわざと煽ったのでござるか!?」

ティンカーベル「だからそう言ってんじゃん!アリスがいつか私を消すってのはわかってたからさ、あーすればキレて私をすぐに消すかなって思って」

キモオタ「そんな馬鹿な…!一体何のためにその様な自殺行為を…!」

ティンカーベル「だってさ、私が消えなくてもきっとこの後アリスの世界に行ってあいつらと戦う事になるでしょ?普通に考えてさ」

キモオタ「まぁ…そうでござるな」

ティンカーベル「で、もう一歩でアリスを倒せる!って大チャンスの時に、私が存在否定されて消えてっちゃったら…キモオタは絶対にそのチャンスをドブに捨てて取り乱すよ?最悪すきを突かれて殺されちゃうかもしれないし」

キモオタ「た、確かにそうかもしれんでござる…」

ティンカーベル「でもこうやってあらかじめ消えちゃえばそんな心配も無くなっちゃうでしょ?それにこーすればキモオタもちょっとは心の準備ができるし」

キモオタ「しかし、もしかしたら消されないという可能性もあったでござるのに……」

ティンカーベル「いやー、ないと思うなー。あいつもそんな感じの事言ってたでしょ?私なんかいつでも消せるけどキモオタの精神をぐちゃぐちゃにするための弱点として消さずに取っといたんだってば」シュウウゥゥ…

キモオタ「……しかし」

ティンカーベル「もーっ!いっつもは気持ち悪いくらいポジティブなのになんで私が居なくなるくらいでネガティブになんのさ!このキモネガティブ!」

ティンカーベル「その様子じゃ魔法使いが言ってた言葉も忘れちゃってるでしょ?キモオタは仕方がない友達だよほんとにもー…」

465 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 02:12:25 65h 222/451

キモオタ「魔法使い殿…?そう言えばなにやら言っておりましたな…」

ティンカーベル「主人公とか、私みたいな物語に深くかかわってる登場人物が消えちゃえばおとぎ話の世界は消える。でしょ?」

キモオタ「そうでござるな…」

ティンカーベル「じゃあさ、消えてしまったおとぎ話を何らかの方法で蘇らせたらどうなると思う?例えばさピーターパンも私も死んじゃってる【ピーターパン】の世界を魔法のランプで元に戻したとしたら…?」

キモオタ「そりゃあ【ピーターパン】の世界は元通りになるのでは?」

ティンカーベル「でも私達は死んでるわけだから元通りになった途端に消えちゃう、そんなの願いをかなえたって言えないでしょ?」

キモオタ「なるほど…!つまり魔法使い殿の説はこう言う事でござるな…!」

キモオタ「消えてしまった人々を個々に蘇らせたりせずとも、ランプの魔神殿に一言『おとぎ話の世界の完全復活』を望めばその世界もそれに巻き込まれて消えた人々も元のように蘇ると…!つまりはうまくすればティンカーベル殿を救いだす事も!」

ティンカーベル「そゆこと!そして都合のいい事にそのランプをアリスは持ってるんだよ。これってさ、よくよく考えたらメッチャ私達有利だよ?」ニヤニヤ

ティンカーベル「あいつを倒せなくたって、私達の中の誰かがランプを奪っちゃえばそれで勝ち!べりーいーじーもーどだよ!」

キモオタ「確かに、奪うだけなら割と…」

キモオタ「とはいえ、ランプを奪えなければ話にならないでござるし、仮に後に復活できたとしてもお主にこのようなつらい思いをさせてしまう事を…我輩は無念に思うでござるよ」

ティンカーベル「何言ってんのさ、私は全然気にしてないって。そりゃあ死んじゃったきりってなるなら怖いけど、ちょっとでも蘇られる可能性があるなら一回死ぬくらい我慢するよ」

キモオタ「しかし、そんな確証も無い賭けを…」

ティンカーベル「いやいや、確証はあるでしょ?だってキモオタ、約束してくれたじゃん?」

ティンカーベル「絶対に【ピーターパン】の世界を取り戻してくれるってさ」ニコッ

466 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/13 02:15:57 65h 223/451

キモオタ(ティンカーベル殿の言葉は本心でござろう、しかし…消滅してしまうのが少しもこわくないなどという事はおそらくないでござる)

キモオタ(それでもティンカーベル殿は…我輩が気に病まないように、そして確実にアリス殿に勝利する為に気丈にふるまっているでござる)

キモオタ(ならば我輩が一人、落ち込んでいていいわけがないでござるな…)

キモオタ「……そうでしたな!いやいや、もちろん覚えておりましたともwww約束しましたからなwww」コポォ

ティンカーベル「だよー?もし忘れてたら部屋にあるアニメのDVD全部燃やすとこだよ」シュウゥゥゥ……

キモオタ「ちょwwwそれだけはご勘弁をwww初回限定版とかばっかりでござるにwww」コポォ

ティンカーベル「まぁ覚えていたから良し!それにちゃんと【ピーターパン】の世界復活させてくれたらさ、ピーターパンとか妖精の長とかにお願いしてキモオタのお願いなんでも叶えるように交渉してみるよ!ご褒美があった方がやる気出るでしょ?」シュウウゥゥゥ……

キモオタ「ほうwwwそれならば全てが解決した暁には妖精の奇跡で我輩に彼女を作ってもらいますかなwww」コポォ

ティンカーベル「あ、いや…そういう神の力を越えてる願いはちょっと……」

キモオタ「ちょwww神の力をもってしても我輩には彼女出来ないんでござるかwww」コポォ

ティンカーベル「キモオタはキモイからなぁ…とりあえずオタくらいまでならないと彼女は無理かな。絶対無理かな」

キモオタ「お主はwwwそうやって我輩をディスってばかりなんでござるから困ったもんでござるよwww」

ティンカーベル「アハハ、冗談だよ冗談!っと…そろそろ時間っぽいかな」シュウウゥゥゥ………

キモオタ「ティンカーベル殿。では…しばし待っていて欲しいでござる、必ずやアリス殿に勝利して【ピーターパン】の世界を…お主を取り戻して見せるでござる」

ティンカーベル「うんうん、約束だからね?」

キモオタ「うむ、約束でござるよ!」

ティンカーベル「もし約束破ったらクロゼットに隠してあるエッチな同人誌の存在を司書さんにバラすからね?」

キモオタ「えっ、なっ、ちょ、なんでアレの存在を知っt」

ティンカーベル「あははは!焦り過ぎだよー!っとぉ……流石にもう無理かな」ボソッ

ティンカーベル「じゃあ私はお先にちょっと休憩してるから!ぜーんぶ解決したら起こしてよ、そんでまた一緒にピザ食べよっ!」



ティンカーベル「それじゃあ、キモオタ……またねっ!」ニコッ

シュゥン……

488 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:22:13 mnS 224/451


崩れていくシンデレラの世界 崩落していく魔法使いの屋敷

ゴゴゴゴゴ

キモオタ「……ティンカーベル殿」

キラキラキラ…

キモオタ「……ドゥフフ、どうでござるかアリス殿。我輩の親友は一味も二味も違うでござろう?」

キモオタ「ティンカーベル殿は我輩にとって初めての親友でござる。アリス殿は彼女を消滅させることで我輩の戦意を喪失させようと考えたのでござろうが……」

キモオタ「ティンカーベル殿の方が一枚上手でしたな。失った存在は大きいでござるが…彼女の選択によって少なくとも我輩は一切の迷いなくお主と対峙できそうでござる」

キモオタ「ドゥフフwww我輩の戦意を削ぐつもりが、決意を新たにさせてしまうなど大誤算でござるなぁwww」

ゴゴゴゴゴ

キモオタ「それにしてもwww我輩の様なオタクに命を託すなどティンカーベル殿は相当なチャレンジャーでござるよwww」コポォ

キモオタ「しかし問題ないでござる。その選択は誤りではなかったと、この豚めが証明して見せるでござる」スッ

キモオタ「……さて、我輩もここに長居は出来ませんな」スッ


―― マッチ売り「頑張ってね、お兄ちゃん。おとぎ話が消えちゃわないように……みんなのこと助けてあげてね?約束だよ…?」

―― ティンカーベル「約束してくれたじゃん?絶対に【ピーターパン】の世界を取り戻してくれるってさ」ニコッ


キモオタ「……マッチ売り殿。ティンカーベル殿。安心してくだされ、お主等が託してくれたこのマッチと瓶詰めの妖精の粉…そして仲間達がいれば我輩に出来ないことなどなにもありませんぞ。さて、そろそろ……」グッ



キモオタ「友との約束を果たしに行きますかな」

489 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:25:24 mnS 225/451

不思議の国のアリスの世界 キノコ生い茂る森

・・・

赤鬼「…赤ずきんの奴、遅いな」ソワソワ

人魚姫の声『いやいやいや、赤ずきんが【シンデレラ】の世界へ向かってからそんな時間経ってないんですけどー?流石に焦り過ぎっしょー』

赤鬼「それはそうだが……キモオタを連れてくるだけだぞ?そう考えたら遅くないか…?」

人魚姫の声『まったくさー、落ち着きなって赤鬼ー!私達がソワソワしてたってなーんにも変わらないっしょー?』

赤鬼「しかし、気がかりな事が多すぎてな…落ち着けってのが無理な話だ。この【不思議の国のアリス】以外の世界はどこも消滅を始めちまってる、他の連中が無事にこの世界に移動出来ていればいいけどな。それにキモオタの事も気になる」

赤鬼「詳しくは聞けなかったが、ティンクが消されちまったって話だ。あいつらは大層仲が良かったからな、キモオタは相当深い心の傷を負っただろう…」

人魚姫の声『大切な人と会えなくなるって、ある意味死んじゃうよりも辛いかんね…。あたしも身に覚えがあるからさ、しんどいの解るよ』

人魚姫の声『相手が友達でも、愛した人でもさ。今まで一緒に居るのがフツーだった相手と会えなくなるのは、寂しいなんて言葉じゃ全然足りないしねー』

赤鬼「まぁ…キモオタは心の強い男だ。大丈夫だとは思うが…流石に心配でな」

鬼神『消滅する世界と運命を共にしたであろう同胞を想うならばいざ知れず…人間共の心配をするなど愚の極みだな、青二才」

赤鬼「そんな風に言うなよ。オイラにとっちゃあ鬼も人間も同じ仲間、そこに違いなんかねぇんだ」

鬼神『フン、相変わらず虫唾の走る物言いだ。いいか青二才、腑抜けていようが甘かろうが貴様は鬼だ。鬼である以上、アリスとか言う人間の小娘如きに敗北する事は決して許さん』

鬼神『鬼は常に勝者であるべきだ。だが腹立たしい事に…現状は奴の思惑通りに事が運んでいる、貴様がこの地に居る事も他の連中が集う事さえも奴の計画通りなのだろう』

赤鬼「まぁ…そうだろうな。オイラ達を完全に排除しようってなら、とっくに襲ってきてるだろうしな」

鬼神『これがどういう事かわかるか青二才?あろうことか奴は鬼を舐めてかかっている…。掌を這う虫ケラなどいつでも潰せるのだと…!自分にとっては鬼などとるに足らない相手だと…!畏怖するに値しない瑣末な存在であると…!鬼である我々を軽視しているのだ!!』

赤鬼「お、おい鬼神…?」

鬼神『思い知らせてやれ青二才…!種族として優位なのはどちらなのか!生殺与奪を握っているのは鬼であるという事をあの小娘の身に刻んでやれ!』ゴゴゴゴゴ

490 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:28:17 mnS 226/451


赤鬼(こいつが物騒で過激派だってのはいつもの事だが…)

鬼神『聞いているのか青二才?そもそも貴様が腑抜けているから舐められているんだぞ、わかっているのか!?』グオォ

赤鬼「なぁ鬼神…仮の話なんだが、もしもオイラが『アリスを倒すために力を貸してくれ』って言ったら、お前は…オイラ達に協力をしてくれるのか?」

鬼神『……』

赤鬼「こうなった以上…オイラ達はアリスとの戦いは絶対に避けられない。アリスを止めて、消えちまったおとぎ話の世界を元通りにしなきゃならない」

赤鬼「お前は鬼の尊厳を傷つけられたってんでアリスを憎んでるんだろう?だったら、オイラに戦う為の力を貸しちゃくれねぇか?」

鬼神『状況が状況だ、貴様に力を貸してやる事も…やぶさかではない』

赤鬼「おぉ…!お前は少しばかり乱暴だが協力してくれるってんなら心強い!アリスを倒して思いなおさせるって事も出来る!」

鬼神『ただし。甘ったれの貴様にその覚悟があるのならば、の話だ』

赤鬼「ん?戦う覚悟が出来て無いって言いたいのか?」

鬼神『戦う覚悟ではない、殺す覚悟だ。『止める』『倒す』などと言っている甘ったれにその覚悟ができているとは思えんがな』

赤鬼「……っ」

鬼神『貴様が望むのなら力は貸してやる。だがその場合…アリスとその一派は皆殺し、根絶やしだ。俺が出る以上それ以外の決着はありえんと思え』

491 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:32:12 mnS 227/451


赤鬼「待てって鬼神!そりゃあこれは戦いだ、命を奪っちまう事もあるだろう。だが殺さずに解決できるってんならそうすべきだろ!?お前の力があれば命を奪わずに捕える事も…」

鬼神『捕えてどうする?この期に及んで説得でもするというのか?貴様、本当にその行為に意味があるとでも思っているのか?』

鬼神『そもそも…話し合いを無意味に感じ、解り合うことなど到底できないと知ったからこそアリスという小娘は自らの願望を暴力によって叶えた。違うか?』

赤鬼「……」

鬼神『フン、貴様が納得しようがしまいが俺には関係ないがな。そんな甘い考えで戦っていてはあっという間に俺に身体の主導権を渡すことになるだろう』

赤鬼「ま、待て!俺の身体で好き勝手する事は許さねぇぞ!?」

鬼神『知った事か、俺に身体を渡したくないのならば死に物狂いで戦え。そしてあの愚かな小娘を殺し、同胞を殺した報いを与えろ』

赤鬼「どうしてそうなるんだ鬼神…!オイラ達の目的はアリスを殺す事じゃあねぇだろ!」

鬼神『青二才が、アリスは全ての元凶。ならば奴を殺すことこそが唯一の解決策だ。フン…これ以上は何を話したところで無駄だ。力を借りる覚悟が出来たのならば呼べ、いつでも連中を根絶やしにしてやる』フッ

赤鬼「待て鬼神!話はまだ終わっちゃあ…クソ!なんだってあいつはあんな考えしかできねぇんだ!」バンッ

人魚姫の声『あたしには鬼神の声聞こえないケドさ…二人が話してんのアリスをどうするかって話でしょ?まぁ、難しい問題だよねー…あたしは命まで奪わなくてもとは思うケド、まーみんなが納得するカタチにすんのは相当難しいっぽいよね…』

赤鬼「あぁ、難しい問題だよ…。確かに鬼神が言うようにアリスを殺してしまえばこの一件はとりあえず解決するかもしれない、でもよぉ……そりゃあ、違うだろ?」

赤鬼「確かにアリスはとんでもない事をしでかした、易々と許される事じゃねぇよ。故郷を消された赤ずきんやティンクを見てりゃあ尚のことそう思う。だとしても……」

赤鬼「相手を殺して解決…なんて方法をとり続けてりゃあ、いずれ取り返しのつかない事になる。その結果が、今の鬼と人間の関係だってあいつはなんでわからねぇんだよ…」

492 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:34:56 mnS 228/451

人魚姫の声『人間と鬼との関係…。えっと、確か……』

赤鬼「世界によって違いはあるだろうが、どこも大きくは変わらないはずだ」

赤鬼「オイラの世界の例でいえば…人間は村々を襲う鬼を恐れ畏怖し、そして憎んでいる。一方の鬼は心無い人間に女子供を殺され住処を追われ、人間を憎んでいる」

人魚姫の声『鬼は鬼で人間を憎む正当な理由があって、人間には人間で鬼を憎む真っ当な理由があるって事かぁ…でもそこまでこじれたらどっちが正義とか悪とかの話じゃないんじゃね?』

赤鬼「あぁ、どっちの種族も同族の弔いの為に敵を殺した。復讐の大義名分のもとに相手の命を奪った。そしてそれは新たな憎しみになって…結局、鬼と人間の間には深い溝が出来たままだ」

人魚姫の声『なんつーかさ……なんか空しいよね。だってそんなの真実の無い戦いだよ、結局そんな事繰り返したって争いは無くならないし…』

赤鬼「どっちにしろ、オイラが考えを曲げなけりゃあ鬼神が力を貸してくれる事はねぇだろうな…。これを機にあいつにも考えを改めて貰えねぇかと思ったんだけどな」

人魚姫の声『今のままじゃ無理っぽいねー。力借りれたらすっげぇ心強かったっぽいし、残念だよねー』

ザッ

赤ずきん「何を話しているかと思えば、そもそも鬼神の力を借りようって事が間違いなのよ。まったく……」フゥ…

赤鬼「おぉ、戻ってたのか、赤ずきん。心配したぞ」

キモオタ「おおっとwww我輩もいるでござるよwww」コポォ

赤鬼「キモオタ…。見たところ怪我なんかはしてなさそうで何よりだ。しかし、その、なんだ……どうやら大変な目にあっちまったようだな……」

キモオタ「全くでござるよwwwティンク殿は消されるでござるしwww赤ずきん殿の手を煩わせてしまうでござるし、踏んだり蹴ったりとはこの事ですなwww」コポォ

赤鬼「お、おう…?」(なんだ?ティンクのことで落ち込んでると思ったらそうでもねぇな…)

493 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:37:07 mnS 229/451


赤鬼「なんつぅか…こんな事言っていいのかわかんねぇんだけど。なんだか思ったより元気そうだな」

キモオタ「ドゥフフwwwティンカーベル殿を失って我輩がもっと落ち込んでると思ったのでござるな赤鬼殿www」

赤鬼「そりゃあなぁ…。傍から見てもお前らは仲良かったし、あいつは賑やかだった分居なくなっちまうと悲しいだろ」

キモオタ「ご心配には及びませんぞwww確かにショックではござるけど、今我輩にできる事は落ち込むことではない故にwww」

ヒソヒソ

赤ずきん「彼に聞いた話だと…ティンクは自ら消されるようアリスに仕向けたらしいわ」

赤鬼「わざとか?なんでまたそんな事を…」

赤ずきん「キモオタの足を引っ張りたくなかったんでしょう。だから彼を鼓舞して自分は消える事を選んだのね……自分を犠牲になんてなかなか出来る事じゃないわ、凄いと思うもの」

赤鬼「なるほどなぁ、身体は小さいってのに肝は据わってるよなぁ…」

赤ずきん「彼女の覚悟を無駄にしない為にも、私達で絶対にアリスを止めなければいけないわね」

赤鬼「そうだな、オイラ達が腑抜けてちゃあいけねぇよな。気ぃ入れて挑まねぇとな」

キモオタ「赤鬼殿www赤ずきん殿www何をヒソヒソと相談しているでござるかwww我輩の陰口ですかなwww」

赤ずきん「何言ってるのよ、陰口ならあなたが居ないところで言うにきまってるじゃない」

キモオタ「ちょwww出来れば言わないでいただけた方がありがたいwww」

赤ずきん「冗談よ。それよりも他の仲間達もこの世界に集まっているでしょうし…今後どうするかを決めるためにも一度集まった方が良いんじゃない?」

赤鬼「そうだな、お前のお話ウォッチを使えばあっという間にあいつらをこの場に呼ぶ事ができるんだろ?」

キモオタ「その通りwwwでは作戦会議を行う為にも皆に呼び掛けてこの場に来ていただくとしますかなwww」コポォ

494 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:40:10 mnS 230/451

しばらくして…

ヘンゼル「いつかはこうなるだろうと思っていたけど…遂にこの時が来てしまったね、もうアリスとの戦いは避けられない」

赤ずきん「そうね。でも私達だってただ指をくわえて状況を眺めていたわけじゃない、そうよね赤鬼?人魚姫?」

赤鬼「おうよ、短い修業だったが…それでも数日前のオイラ達とは比べ物にならない程だと自信を持って言えるぞ」

人魚姫の声『うんうん、私だってできる事はそんなないけど役には立つつもりでいるしさ、大船に乗ったつもりでいて欲しいんですけどー?』

裸王「ハッハッハ!頼もしい事だ、もちろん我々も筋肉を研ぎ澄ませていたぞ!ヘンゼルはもちろんのこと、グレーテルも自主的に修業に参加してくれたからな!我々の筋肉パワーをアリス達の目に焼き付けてみせよう!」マッチョ

グレーテル「私、マッチョには程遠いけど……お兄ちゃんと一緒に戦う……。私、頑張る……アリスちゃんやっつける……」フンスッ

司書「私は戦いでは役には立てないと思うけど、支援くらいは出来ると思います。特に、おとぎ話の知識に関しては頼ってもらって大丈夫です」

ドロシー「わ、私も支援が中心になるかと…怪我の治療のやり方は一通り覚えたので…。あ、あと道案内ならできると思います…が、頑張ります!」

ライオン「ドロシーちゃん…少し見ない間に頼もしくなって。僕は嬉しいよ…あっ、もちろん僕自身も頑張るよ!」

キモオタ「さて、まずは我輩の呼び掛けに応じてくれてありがとうでござる。ひとまず、皆の無事な姿を見る事が出来て安心したでござる」

桃太郎「ちょっと待ってくれキモオタ。お前が呼び集めたのは…本当にこれで全員?」

キモオタ「そうでござるよ。赤ずきん殿、赤鬼殿、人魚姫殿、裸王殿、ヘンゼル殿、グレーテル殿、司書殿、ドロシー殿、ライオン殿に桃太郎殿」

キモオタ「そしてこのキモオタを加えたメンバーでアリス殿に挑むことになるでござる」

司書「あの…キモオタさん、ラプンツェルさんは……?」

赤ずきん「そう言えば居ないわね…。いつもフラッとどこかへ消えるから気にしていなかったけど、この場に呼び出せなかったという事はもしかして…」

桃太郎「まさか…ラプンツェルは逃げ遅れておとぎ話の世界もろとも消える事になったって事か…!?」

495 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:42:26 mnS 231/451


キモオタ「いや、ラプンツェル殿はこの場には居ないでござるが。消滅に巻き込まれたとかではないでござる、キチンとこの世界のどこかには存在してますぞ」

裸王「むっ?それはどういう事なのだ?ラプンツェルがこの世界に来ているというのならばこの場に来ない、あるいは来れない理由があると言うのか?」

キモオタ「むぅ…なんと言いますか。実際におはなしウォッチでの呼び出しを見てくれれば理解してもらえると思うのでござるが……例えば」スッ

キモオタ「ティンカーベル殿、応答してほしいでござる。今すぐ、我輩の下に集まってくれますかな?」

シーン…

グレーテル「なんの反応も無いね……」

ドロシー「ティンクちゃんは……その、消えちゃってるから反応がないのは、当然ってことなのかな…?」

キモオタ「そうでござるな、存在していないティンカーベル殿に連絡をつなぐ事は不可能。しかし……ラプンツェル殿、応答してくれますかな?我輩のもとに集まって欲しいでござる」

ザザッ ザーザー

司書「なんだかノイズがひどいですね…。電波が悪い…なんて携帯電話じゃないですしね、何故でしょう」

キモオタ「理由は解らんでござるが少なくともラプンツェル殿は生きてこの世界に居るでござる。それは間違いないでござろう」

ライオン「それじゃあ…ラプンツェルさんはどういう訳か今、応答できない状況だって事だねぇ…でも少なくとも生きてるって事は安心していいのかな?」

桃太郎「そうとも言いきれないぞ、この世界に居るは居るが大怪我をして動けないのかもしれない」

赤鬼「確かにその可能性も拭えねぇな…無事でいてくれるといいんだが…」

496 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:44:34 mnS 232/451

赤ずきん「それで…これからどうするつもり?まずはラプンツェルを探すの?」

キモオタ「むむむ……実はまだ悩んでいるのでござるよ……」

ドロシー「どうするかはキモオタさんにお任せしますけど…早く決めなきゃアリスちゃんが襲ってくるかもしれないです…よ?」

キモオタ「いや、それに関しては大丈夫だと思いますぞ。アリス殿は我輩に『ハートの女王の城に居る、そこで決着をつけよう』と告げたでござる、その気になればあの場で我輩を消す事も出来たというのに…」

裸王「自ら居場所を明かすあたり…誘っていると見て間違いあるまい」

ライオン「誘ってる…?どうしてそんな事を…?」

赤ずきん「アリスにとって私達は邪魔者よ。特にキモオタは予想外の異物、今まで散々邪魔をされた分いたぶって殺してやろうって考えじゃあないのかしら?」

キモオタ「その通りなのでござるがそうも直球で言われると恐ろしいでござるなwwwしかし、そのおかげで向こうから襲ってくるという事はまずないでござろう、城にたどり着くまでは」

桃太郎「そう考えるのが普通だな…。ならば城へ急がなくてもある程度は安全にラプンツェルを探す事も出来ると言う訳だが……」

ヘンゼル「僕は反対だね。ラプンツェルさんには悪いけど、戦える状態にあるかどうかも解らない人を探すのに時間を割くのは…この状況じゃ下策だと思うよ」

グレーテル「ラプお姉ちゃんは優しい良い人なのに……見捨てちゃうの……?」ジトー

ヘンゼル「そうじゃないよ。アリスが絶対に襲ってこないって保証は無いんだ、皆で分担して探している最中に襲われたら何もできないままに全滅…なんて事だってあり得る。そうなれば最悪だ」

キモオタ「この世界は完全にアリス殿のホーム、我々にとってはアウェーもいいとこでござる。今、この広い世界で孤立するのは避けるべきでござるな」

497 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:48:10 mnS 233/451


キモオタ「……決めたでござる。ラプンツェル殿には折を見て連絡をする事にし、我々はひとまずハートの女王殿の城を目指すでござるよ」

桃太郎「ラプンツェルの安否も気になるけど…全滅したら何の意味も無いからなぁ、そうするのが妥当だと拙者も思う」

キモオタ「皆もこの方針で納得してくれるでござるか?」

赤鬼「なぁ、キモオタ一つだけいいか…?」

キモオタ「赤鬼殿?なんでござるかな?」

赤鬼「アリスと戦うってのは解るが…具体的にはどうするんだ?いや、なんというか、殺しちまうつもりなのか…?」

キモオタ「いやいやいやwww我輩にそこまでの度胸は無いでござるよwww」

赤鬼「そうか…」ホッ

赤ずきん「でも、向こうはこっちを殺しにかかるわよ?だからこっちも殺す気で…なんて言わないけど、方針を定めておかないと危険じゃないかしら?」

ヘンゼル「そう言えばアリスの時間停止に対抗する手段はどうなってるの?あれをなんとかしなければ勝ちなんか望めないと思うけど…」

キモオタ「ご心配なくwww時間停止の対策もバッチリでござるし、勝ちパターンの計画もあるでござるからwww」

キモオタ「知っての通りアリス殿は魔法のランプを所有しているでござる。そして我輩が知る限り、残る願いは一つ……おそらくこれは最後の切り札として残すはずでござる」

キモオタ「おとぎ話の世界と現実世界を消した恐るべきランプでござるが…これを奪ってしまいさえすれば、その時点で我々の勝利は確定でござる」

司書「ランプを奪い、アリスさんを拘束…そして世界を元に戻す。といったところでしょうか」

ライオン「そ、そんなにうまくいくかな…。絶対に抵抗してくると思うなぁ……」

キモオタ「当然一筋縄ではいかないでござろう。しかし、ランプさえ奪ってしまえば失った世界も消えてしまった人々も全て蘇らせる事が出来るでござる。それにアリス殿の命を奪う事無く、この一件を丸く収める事も可能でござろう」

498 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/21 01:51:10 mnS 234/451


キモオタ「故に、我々はアリス殿や仲間達と戦う事になると思うでござるが……最優先すべきはランプの奪取、この作戦で行きたいでござる」

裸王「うむ、敵とはいえ無駄に命を散らす事もあるまい。私はその案に賛成だ!私の背筋もそうすべきだとささやいている!」

キモオタ「皆の者も…この作戦で良いでござるか?」

赤ずきん「私達は異論は無いわ」

桃太郎「そうだな、拙者も賛成だ。戦いは避けられないだろうけど…それはもう仕方がない」

キモオタ「では善は急げでござる、早速城に向かうとしますぞ!ドロシー殿、案内をお願いできますかな?」

ドロシー「は、はい!任せてください!」

グレーテル「……?」

ヘンゼル「グレーテル?どうかしたの?空なんか見て」

グレーテル「……ねぇ、みんな……お空の上、見て……あそこ、何か飛んでる……」

赤ずきん「あれは…ドラゴン?というよりは……東洋の龍かしら?」

司書「確かにそう見えますね、でも…この【不思議の国のアリス】の舞台は西洋。それにこのおとぎ話に龍は登場しません、おそらく別の世界から来たのだと思いますが……」

キモオタ「別の世界から来た龍ですと…?まさか……」

ドロシー「……っ!!キモオタさん!み、見てくださいあの龍の腕……!右腕が無いです……!」

キモオタ「なんですと!?という事はあの龍は!」

510 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/27 01:40:22 XDB 235/451

ドロシー「玉龍ちゃんだ…!き、きっと間違いありません!…あれは玉龍ちゃんです!」

キモオタ「で、ござるな!世界の崩壊を察知し、あの者たちもこの世界に来ていたのでござるか。これは心強いwww」

桃太郎「ん?玉龍って確か、孫悟空にベタベタしてた娘の事じゃなかった?えっ、もしかして同一人物なの?」

司書「玉龍さんは【西遊記】に登場する龍なんですが、変化の術が使えるんです。普段はお師匠様の三蔵法師さんを乗せる馬に化けてますが、女性の姿で戦う事もあるんですよ」

桃太郎「へぇー…なんかすごいな。しかし龍なんか伝説上の生き物だと思ってたけど、こうしてみると荘厳っていうかなんて言うか…畏れ多い感じがするな」

裸王「うむ!遠目からでもはっきりと感じる厳かさ!何よりもあの巨体を支える筋肉…是非とも間近で拝見したいものだ!ハッハッハッ!」

鬼神『これは好都合だ青二才、あの龍が居ると言う事は神殺しの猿人もいるはず。二匹まとめてこの鬼神が相手をしてやる』クックック

グレーテル「龍、カッコいい…。でもなんだかおっきいヘビにも見えるね…うねうねってしてるとことか…」

赤鬼「おぉ、確かにヘビに似てるな。女はヘビとかカエルは苦手ってよく聞くがグレーテルは平気か?」

グレーテル「うん、大丈夫…。ザリガニは嫌いだけど、ヘビやカエルは嫌いじゃないし触れるよ…」

赤鬼「おっ、偉いぞ!褒めついでに菓子をやろう、うまいぞ」スッ

グレーテル「わーい…おせんべいだ…」ウキウキ

鬼神『先程の仕返しのつもりか…?聞いていないフリとはいい度胸だな青二才』ギリッ

ドロシー「きっと【かぐや姫】の世界が消えて悟空さんやかぐやさんと一緒にこの世界に来たんだと思います…。合流したいですけど、大きな声を出しても届かないと思うし…どうしよう…」オロオロ

キモオタ「心配ご無用www声は届かなくとも我輩のサイリウムを光らせればこちらの存在を伝える事は出来ますぞwww」スッ

511 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/27 01:41:54 XDB 236/451

ドロシー「あっ、そうですよね。こっちから見えるって事は向こうからも見えるって事ですもんね」

キモオタ「そうでござるwwwさて、おはなしサイリウムを光らせて…と、さぁいきますぞwww」

ピカー

キモオタ「ふんっ!はぁっ!玉龍殿にぃぃ!届けぇぇ!!我輩のパッションンン!!!」フリフリ

一同「……」

赤ずきん「キモオタ。ティンクが居ないから私が代わりに言っておくけれど……相変わらず気持ちの悪い動きね」

キモオタ「ちょwww我輩が渾身のオタ芸を披露しているというのになんという仕打ちwww」フリフリ

赤ずきん「そもそも踊る必要は無いでしょう。向こうは空から見ているのだから光を発するだけで合図としては十分よ」

キモオタ「そう言われてみれば確かにwwwいやはやwww無駄なカロリー消費でしたなwww」コポォ

ドロシー「あっ…でも玉龍ちゃんの動き止まりましたね。こっちに気が付いてくれたみたいです……あれっ?」

ゴォォォッ

ライオン「ええぇぇっ!?か、彼女こっちに向かって来てるよ!?」

ドロシー「ま、まさかこんな狭い場所に降り立とうとしてるんじゃ…!あわわ…どうしよう…!」オロオロ

ヘンゼル「こっちだドロシー、そんなところに立っていたら下敷きにされるよ。裸王さん、お千代とグレーテルをお願い」グイッ

裸王「うむ、任せよ!皆の者も出来るだけ距離を取るのだ、頭を守り身を伏せよ!」ヒョイ バッ

キモオタ「ぶひいいぃぃぃ!!!何故このような事にぃぃぃ!!」ズサーッ

ベキベキベキ!!バキバキバキバキー!!

512 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/27 01:44:58 XDB 237/451

パラパラパラ……

玉龍(龍形態)「……」ズズゥゥン

人魚姫の声『うわーっ、陸の上にはこんなデカイ生き物居るんだ!?木とかメッチャ倒れてるし地面もえぐれてるし、ヤバくない!?』ワクワク

赤ずきん「何をワクワクしているのよ…。こっちはアリスと戦う前に死んでしまうところだったわよ…」ハァ

桃太郎「皆の者、無事か!?怪我をした者がいればなら拙者のもとへ!すぐに治癒する!」

裸王「うむ、こちらは平気だ。しかし間近で見るとその凄まじい姿に圧倒されてしまうな!神々しいとはまさにこの事!」マッスル

桃太郎「神々しいってのは同感だな、なんかもう畏怖すら感じるし。流石は龍…って感じがする、威厳とか凄いし…」

キモオタ「二人とも玉龍殿に幻想を抱き過ぎると夢が壊されますぞwww」コポォ

桃太郎「何言ってんだよキモオタ、玉龍殿のこの姿…まさに威風堂々って感じでさ、きっと凄く威厳あふれた喋り方とかすr」

玉龍(龍形態)「ドロシー!猪hキモオター!いやー、プチ久しぶりッスね!皆に愛されるプリティドラゴン、玉龍ちゃんのお出ましッスよー!」

ドロシー「も、もぉー!危ないからあんまり無茶しないでよ玉龍ちゃん!し、死んじゃうかと思ったよ!」

玉龍(龍形態)「タハー!メンゴメンゴッス!でもドロシーもうちの真の姿近くで見るの久しぶりッスよね?どうっすか?可愛いっすか!?可愛いっすよね!?どうなんすか!?」ウキウキ

ドロシー「どうもこうもないよ…。でもどっちかといえば可愛いって言うより、カッコいいって感じかなぁ…」ハハハ…

玉龍(龍形態)「カッコイイ!?それは男の子に使う褒め言葉ッス!うちみたいなキュートガールには相応しくないッス!褒め直して欲しいッス!」ジタバタ

桃太郎「……なんか、思ってたのと全然違う」ドヨーン

裸王「ハッハッハ!随分とフランクな龍も居たものだ!私とした事が外見で判断してしまうとは…裸王ミステイクッ!」マッチョ

513 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/27 01:47:01 XDB 238/451

孫悟空「玉龍テメェ!今は龍の姿だってわかってんのか!?馬鹿デケェ図体で無茶してんじゃねぇ!あやうく殺しちまうところだっただろうが!」ゴッ

玉龍(龍形態)「フフフッ…うちは今、本来の姿に戻っているッス!先輩のゲンコツ程度じゃあ痛くも痒くもないッスよ!」ドヤァ

孫悟空「おう、そうか。痛みを伴わねぇと反省出来ねぇってんなら仕方ねぇな…伸びろォ!如意棒ォォ!!」ビュバッ

玉龍(龍形態)「先輩!?それは愛のムチにしては激しすぎるッスよ!?わかったッス!ちゃんとミナサンにあやまるッスから!如意棒は勘弁ッス!」

シュウゥゥゥ スタッ

玉龍(女の子形態)「さっきは危ない真似して申し訳なかったッス!龍の姿は久々でうっかりしてたんス!悪気は無かったからどうか許して欲しいッスよ!」ペコッ

孫悟空「ったく、やればできるってのに手間掛けさせやがる…」

桃太郎「おぉっ、本当に一瞬で娘に変身した。龍ってすごいな…」

赤鬼「いきなり龍が降りてきたのには驚いちまったが、大事にならなかったわけだしな!あんまり気にする事ぁねぇぞ、なぁ?」

赤ずきん「まぁ…みんな無事だったわけだしいいんじゃないかしら?流石に次は気をつけて欲しいけれどね」

玉龍「ありがとうッス!いやー、みんな優しくて玉龍ちゃん感激ッスよ!」

孫悟空「ったく、調子が良い奴だぜテメェは。っと、そこの半裸のおっさんとライオンは初めてだな。俺の事は孫悟空って呼んでくれ、消えちまった【西遊記】の主人公だ。よろしく頼む」

ライオン「えっとえっと、僕は【オズの魔法使い】のライオンだよぉ、よろしくね」

裸王「悟空よ!自己紹介感謝する!我が名は裸王!【裸の王様】の主人公を担っている!我が筋肉ともどもよろしく頼む!」マッスル

玉龍「そしてうちは玉龍ッス!悟空先輩とは肉体関係にある仲ッスy」

孫悟空「だからテメェはガキが大勢いる前で何言ってやがんだ!つぅか事実無根だからな!?こいつの戯言は基本的に信じねぇでくれ」ゴスッ

514 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/27 01:48:30 XDB 239/451


ドロシー「……?」キョロキョロ

キモオタ「ドゥフフwwwしっかしお二人は相変わらずですなwwwまるで漫才を見ているような掛けあいですぞwww」コポォ

玉龍「ははぁーん…夫婦漫才ッスね?」ニヤリ

孫悟空「……」ゲシッ

玉龍「無言で攻撃をするのはやめてほしいッス!……ってドロシー?キョロキョロしてどうしたんスか?」

ドロシー「あの、かぐやさんは…?かぐやさんは一緒じゃないんですか…?」オロオロ

玉龍「あー……」

孫悟空「……」

ドロシー「えっ、えっ…?なんなんですかその沈黙…。ま、まさかかぐやさんに何かあったんですか…?」

孫悟空(ドロシーは知らねぇ。かぐやが連れ去られちまった時、こいつは既に別の世界に居た。かぐやがさらわれた事も、【かぐや姫】の世界が消滅しかけた事も、玉龍がかぐやに化けて一時的にしのいでいた事も知るはずねぇ)

孫悟空(かぐやの一件…ありゃあ完全に俺達の責任だ。アリスにとっちゃかぐやは邪魔な存在、それを知っていながらあいつを一人にしちまった俺達の責任だ。当然、ドロシーには何一つ非なんざありゃしねぇ。だが……)

孫悟空(ドロシーは気弱で優しい娘だ。何かと世話を焼いてくれたかぐやがさらわれちまったと知れば…。当然悲しむだろう、悪くすりゃあ自分を責めちまうかもしれねぇ…)

孫悟空(それはあまりに不憫だ、だからキモオタにも伝えなかったわけだしな…。隠し事を続けるってのは気が進まねぇが…かぐやの事はドロシーには黙っておくべきだな。こいつの為にも…それがいい。適当に誤魔化して…)

ドロシー「こ、答えてください悟空さん…!かぐやさんは、かぐやさんは無事なんですよね!?」

515 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/27 01:49:55 XDB 240/451


孫悟空「あぁ、無事だ。かぐy」

玉龍「ドロシー…。言うのが遅くなってしまったッスけど、実はかぐやはアリスにさらわれてしまったみたいなんス…」

孫悟空「おい、玉龍!」

玉龍「ドロシーがキモオタ達と別世界へ渡った少し後ッス。うちと先輩が離れている隙を狙われて…連れ去られたッス。それからはうちがかぐやに化けてあの世界の消滅を防いでいたッスけど…」

キモオタ「なん…ですと…!?あの強力な力を持つかぐや殿が…!」

ドロシー「そ、そんな…!かぐやさんが…?なんてこと…」ヨロヨロ

司書「わわっ、ドロシーちゃん大丈夫?立てる…?肩貸すよ?」

ドロシー「ご、ごめんなさい…。大丈夫、大丈夫です…。ちょ、ちょっとショックで……ごめんなさい」

孫悟空「玉龍テメェ…!なんで言っちまうんだ!?こいつがショックを受ける事なんざ目に見えてただろ!?」

玉龍「黙ってたってそのうちわかる事ッス!ドロシーはうちらの仲間なんス、かぐやの事だって当然知る権利があるッスよ!」

孫悟空「そうかも知れねぇが実際こいつはふらつくほどショック受けてんだろうが…!言わねぇ事も優しさじゃねぇのか!」

ドロシー「ふ、二人とも良い争わないでください…!わ、私は大丈夫です…さっきは少し驚いて、ふらふらっとしちゃっただけで、もう平気です…あはは」

一同「……」

ヘンゼル「……無理して笑わなくたって良いでしょ、ドロシー」

ヘンゼル「かぐやさんは君にとって大切な人なんでしょ?だったらショックを受けて当然だよ、周りに気を使って笑う必要なんかないよ」

516 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/27 01:50:48 XDB 241/451

ドロシー「そうかな……」

ヘンゼル「そうだよ。落ち込みたいなら落ち込めばいいし、泣きたいなら泣きなよ。僕でよかったら胸くらいなら貸すよ?」

グレーテル「今回だけは……見なかった事にしてあげてもいい……」プイッ

ドロシー「ありがとう…。ヘンゼル君もグレーテルちゃんも優しいね、でも大丈夫…確かに悲しいけど、私が泣いたところで何も変わらないもんね」

ドロシー「それなら今は…私にできる事をやるだけだよ。かぐやさんを助けるため、アリスちゃんを止める為…私が今できる事を一生懸命やるよ!」

玉龍「おぉー!ほら見るッス先輩!ドロシーは少し見ない間に見違えてたくましくなってるッスよ!」ドヤァ

孫悟空「なんでテメェが自慢げなんだよ。だがまぁ…俺の心配は余計なもんだったな」

キモオタ「そもそもアリス殿の恐ろしさを間近で見ていながら戦いを決意している時点でドロシー殿はなかなか勇気がありますぞwww」

赤ずきん「そうね。彼女が何もできない臆病者なら、そもそもこんな場所に居ないわよ。立派なものよ」

裸王「うむ、我が城でもドロシーは皆の力になろうと一生懸命努力していたのだ!筋肉を付けるには至らなかったが…あの努力は称賛に値する!」マッスル

司書「うんうん、礼儀正しいしドロシーちゃんは素敵な女の子だよね、ヘンゼル?」ニコニコ

ヘンゼル「そうだと思うけど…。なんで僕に聞くの?」

グレーテル「……」プクー

ドロシー「み、みなさんあんまり褒めないでください…!わ、わたしはそんな大層な人間じゃないですから…」アワワ

ドロシー「そ、それよりも今はハートの女王様のお城を目指しましょう。キモオタさんの話では、アリスちゃんはそこで待ち構えているんですよね?」

キモオタ「そうでござるwwwまぁ積もる話もあるでござろうがそれは道中にてwww今は一先ず城を目指すでござるよwww」

517 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/03/27 01:54:37 XDB 242/451


玉龍「あっ、ハートの女王の城で思いだしたんスけど…。一体、ハートの女王の城ってどこにあるんスか?しばらく飛んでたッスけど影も形も見えなかったッスよ?」

赤鬼「そりゃどういう事だ?城なんてもん目立って仕方ねぇはずだ、空から探してりゃあすぐに見つかるんじゃねぇのか?」

孫悟空「いや、それがさっぱりでな。辺り一面に森が広がっていて城はどころか建物すらほとんどねぇんだよ」

玉龍「ドロシーはしばらくこの世界に居たんスよね?何か知らないッスか?」

ドロシー「あっ、えっと、それはね…。うーん、なんて説明したらいいんだろう……」

ドロシー「この世界は確かに【不思議の国のアリス】なんだけど、この森が広がっている『世界』はハートの女王様のお城がある『世界』とは違う…?というか…」オロオロ

裸王「むむっ?同じ世界でありながら違う世界…新手のなぞなぞかね?ハッハッハッ!」

グレーテル「……わかんない」

キモオタ「申し訳ないでござるけど微塵も理解できませんなwww」コポォ

ドロシー「うぅ…説明下手ですいません…」ショボーン

司書「大丈夫、私はなんとなくだけど理解できたよ」

キモオタ「流石は司書殿でござるなwwwでは我輩にもわかるように説明していただきたいwww」

司書「そうですねぇ…図で表すとわかりやすいかも知れませんね」ゴソゴソ

司書「少し待ってくださいね、図にしてみます」

545 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/03 00:50:38 bLP 243/451

司書「この世界に存在するはずのお城が空から見つからない理由…」

司書「それはきっと【不思議の国のアリス】の筋書きを追っていくとわかりやすいと思います。ドロシーちゃん、間違っていたら言ってね?」

ドロシー「は、はいっ!」

司書「【不思議の国のアリス】の冒頭で主人公のアリスはお姉さんと一緒に川辺で休日を過ごしていました。おそらく自宅からそう遠くない場所だと思います」

司書「この川辺やアリスの自宅がある世界、ここはキモオタさんや私達が住んでいた現実世界と同じ様な場所です」

キモオタ「つまり魔法も無ければ不思議も無いってことでござるなwww」

司書「そうですね。そこでアリスは一匹の白ウサギが走っていくのを見かけます、それ自体は珍しい光景ではなかったんですが彼は洋服を着て時計を手にしていました」

司書「白ウサギに興味を持ったアリスは彼を追っていきます、そして白ウサギが飛び込んだウサギの穴に潜り込みます。するとその先は……不思議の国でした」

赤ずきん「なるほどね。アリスが住んでいた世界…これを仮に『アリスの故郷』として、その世界は『不思議の国』とは別の次元にある。ということかしらね?」

赤鬼「お、おい人魚姫。オイラにゃあサッパリなんだが……お前はわかったか?」

人魚姫の声『えっ?あっ、うん。……バッチリ理解してんですけどー!』

赤ずきん「……つまり『アリスの故郷』と『不思議の国』は地続きにはなっていないそれぞれが独立した世界という事よ。だけどそれらは両方ともこの【不思議の国のアリス】の世界の一部、ということ。そうよね?」

司書「私の見解ではその通りです。更に言えば『不思議の国』も『三月ウサギの庭がある世界』と『ハートの女王の城がある世界』は別物だと考えています」

司書「作中で、アリスがそれらの世界を行き来するには身体の大きさを変える必要がありますから。地続きになっていない別の空間、と考えた方が自然だと思います」

546 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/03 00:54:05 bLP 244/451

司書「図で示すとこんな感じでしょうか…?」つ【メモ帳】

『アリスの故郷』
・主人公アリスが元々住んでいた場所。魔法も不思議も存在しなくて現実世界のよう

『不思議の国』
・三月ウサギの庭がある場所
・ハートの女王の城がある場所
・…etc
これらの世界には魔法や不思議が存在する。同じ『不思議の国』ではあるものの地続きにはなっていない?行き来するには特別な方法が必要

↑全てをひっくるめて【不思議の国のアリス】の世界
それぞれの世界を行き来するにはウサギの穴を通ったり、不思議な扉を使ったり、身体の大きさを変えて小さな扉を通るなどする必要がある

いくつかの異世界が【不思議の国のアリス】を形成している、と考えるとわかりやすいかも

司書「……って考えなんだけど、あってるかな?ドロシーちゃん?」

ドロシー「す、すごいです!その通りです、お姉さんは本当におとぎ話のこと詳しいんですね。わ、私、尊敬しちゃいます!」

司書「ふふっ、ありがとう。あっているなら良かった」ニッコリ

グレーテル「お千代ちゃんは司書なんだからこれくらい簡単なの…。ドロシーちゃんはもっと頑張った方が良いと思う……」ジトーッ

ドロシー「う、うん。つ、次はみんなの役に立てるように頑張る…!」

ヘンゼル「……ねぇキモオタお兄さん。なんだかグレーテルは事あるごとにドロシーに突っかかるんだけど、何故だかわかる?」ヒソヒソ

キモオタ「さぁwww何故でござろうなwww誰かに嫉妬でもしているのではござらんかなwww」コポォ

547 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/03 00:57:10 bLP 245/451


孫悟空「しっかし、そりゃあ城が見つからなかったのも納得だ。俺達が居るこの場所と、城がある場所は別の世界っつーか別の次元っつーか…そういう事なんだろ?」

玉龍「ひとつの【不思議の国のアリス】の中に幾つもの世界?空間?があるとか考えもしなかったッスよ。不思議な事もあるもんッス!」

司書「なにしろここは『不思議』の国のアリス。ですからね」

キモオタ「ドゥフwww魔法や怪奇現象には慣れっこでござるがwwwそれでもこの世界の不思議っぷりはまたレベルが違うのでござろうなwww」コポォ

ヘンゼル「まぁ例えレベルが違おうが結局は魔法でしょ?魔法なんて今更珍しいものでもないし、冷静に対処すればどうとでもなるよ」

赤ずきん「確かにそうね。魔法なんて特別なものでもないもの」

桃太郎「いやいやいや!そりゃあお前達はそうかもしれないけど!拙者達は魔法って未だに新鮮だぞ!?裸王殿もそうでしょう!?」

裸王「むっ?いや、我が国にも魔法は存在し魔法具もあるのでな、驚くほどではない。とはいえ赤ずきんやヘンゼルの持つ魔法具などと比べれば見劣りするものだがな!ハッハッハ!」

桃太郎「マジか…。もしかして魔法が存在しないおとぎ話の住人って拙者だけ!?」ガビーン

ライオン「で、でも桃太郎さんも不思議な力持ってるでしょ?普通の人は治癒能力なんか持ってないし、十分すごいよ!」

キモオタ「普通の人は桃から生まれないでござるしねwww」コポォ

桃太郎「あー…確かに拙者の治癒能力も不思議といえば不思議か…。いや、でもこれ生まれつきだしそんな感じしないんだよなぁ」

赤ずきん「私の猟銃やヘンゼルの火打ち箱なんかは所詮魔法具ですもの。生まれ持ったあなたの能力の方がずっとすごいと思うわよ?」

桃太郎「そ、そう?そうか、そうかもしれないなぁー!赤ずきんが言うならそうかもな!」パァァ

ヘンゼル(あんまり話した事無かったけど、なんだかこの人ちょろい感じだな…)

ドロシー「あ、あのぉ…。私、一つ皆さんにお伝えしたい事があるんですけど…いいですか?」オドオド

548 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/03 00:59:38 bLP 246/451


キモオタ「もちろんいいですぞwwwなんですかな?伝えたいこととはwww」

ドロシー「えっと、さっきお姉さんが説明して下さったこの世界の仕組みなんですけど…。一つ付け加えと言うか、補足というか……」

司書「うん、何かな?」

ドロシー「お姉さんが説明して下さったとおり【不思議の国のアリス】にあるいくつかの世界を行き来するには特別な方法が必要なんです」

キモオタ「確か、小さくなったり、謎の扉を使ったり…あとはウサギの穴をくぐったりですかな?」

ドロシー「そ、そうです。そのウサギの穴…アリスちゃん達はラビットホールって呼んでいたんですけど…。それで、えっと……」

ドロシー「アリスちゃんの望みを叶えるため、このおとぎ話の重要人物達は協力しあってるってのは知っていると思うんですけど。私がいた頃は集まって作戦会議とかお茶会もよく開いていたんです、三月ウサギさんの庭で……です」

赤鬼「まぁそうだろうな。でもそう考えると大変だな、そいつら全員同じ場所で行動してるって訳でもねぇだろうし、会議の為にわざわざ小さくなったりなんやらして集まるってのもなぁ」

人魚姫の声『その度にあっちの扉行ってこっちの穴くぐってー…ってのも面倒っちぃよねー。ぶっちゃけだるいって感じするー』

ドロシー「そ、それなんです。元の道順だと時間がかかります、だからアリスちゃんは本来この世界には存在していなかったラビットホールをもう一度作らせたんです。自分達が効率よく移動できるように」

キモオタ「なるほどwww筋書き通りのルートだと遠周りになる故、近道を作ったとwww言わば従業員用の通路といった具合ですなwww」

ドロシー「そ、そうですね。だから今では、それぞれの世界にいくつかのラビットホールがあるんです。それを使えば……近道できます。ここから女王様のお城への行き方も、私覚えてます。だから力になれると…思います」

ヘンゼル「へぇ、すごいじゃないかドロシー。この世界に居た君だからこそ解る情報だ、早速名誉挽回出来たね」

ドロシー「そ、そんな…ことないデス…」テレテレ

グレーテル「……」プクー

549 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/03 01:01:22 bLP 247/451


司書「それなら、ドロシーちゃんにそのラビットホールに案内してもらって…ハートの女王のお城に向かう、というのが良いのかな?」

孫悟空「おう、そうなるな。あっちは俺達の事を待ちかまえてんだろ?さっさとケリを着けちまった方が良いだろうな」

玉龍「玉龍ちゃんとしてはうちと先輩との恋に決着をつけて欲しいッスけどね!」

孫悟空「なぁキモオタ、オメェ達は準備できてんだろ?だったらもう城に直に向かっちまおうぜ」

キモオタ「そうでござるなwww善は急げでござるwww」

玉龍「タハー!焦らし上手ッスね先輩は!」

赤ずきん「…ねぇドロシー、そのラビットホールの事だけど」

ドロシー「あ、うん…。なにかな…?」

赤ずきん「さっき『アリスはもう一度ラビットホールを作らせた』って言ったわね?あれどういう意味かしら?以前にも作らせた事があるという意味?」

ドロシー「そ、そうらしいです。まだ私が居なかった頃の事なので、話で聞いただけなんですけど…」

ドロシー「以前、この【不思議の国のアリス】にはアリスさんが作らせた別のおとぎ話の世界に通じるラビットホールがいくつかあったようなんです…」

キモオタ「ほう…。別のおとぎ話へ通じるラビットホール…でござるか?」

ドロシー「は、はい。青い鳥さんや世界移動の魔法具を手に入れるより前の事らしいんですけど…」

550 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/03 01:03:30 bLP 248/451

裸王「うむ…?別のおとぎ話へ向かうラビットホールを作れるのならば、何故アリスはわざわざ世界移動が出来る魔法具を奪ったりしたのだ?」

桃太郎「確かに、そのウサギの穴で移動できるってならわざわざ奪う必要も無いように思えるな」

ドロシー「あ、あの…そのラビットホールは、安定していなかったんですよ」

赤ずきん「それ、どういう事かしら?」

ドロシー「例えば…赤ずきんさんの頭巾は行きたい場所を指定して、そのおとぎ話の世界へ行く事ができますよね?」

赤ずきん「そうね。基本的にはそう使うわね」

ドロシー「【不思議の国のアリス】の中で使う分には望む場所と場所をつなぐ事が出来たようです。でも別のおとぎ話の世界へ移動するとなると難しかったみたいで…」

ドロシー「別のおとぎ話の世界へ繋がるラビットホールでは、行先を指定する事が出来なかったんです。掘ってみるまで、その穴がどの世界に行くのかわかりません」

キモオタ「ほう、それでは少々使い勝手が悪いでござるなwww」

ドロシー「きっとアリスちゃんもそう思ったんだと思います。だからもう別のおとぎ話の世界へ繋がるラビットホールはアリスちゃんの命令で埋めちゃったみたいです」

赤ずきん「埋めた…?行き先が解らないとは言ってもそれは掘る前の話でしょう?一度掘って行き先が解ったなら、それはそれで使い道があるでしょうに」

ドロシー「う、うーん…。私が居なかった頃の話だから、詳しい事はちょっとわかんないけど…。やっぱり持ち運びが出来る魔法具と比べたら劣っちゃうから…かな?」

赤ずきん(それだけの理由でわざわざ埋めたりするかしら?使い勝手が悪いから使わなかったとして、放置しておいて損なんか無いでしょうに)

赤ずきん(推測の域を出ないけど、何か別の理由があって…アリスはそのラビットホールを埋めたのかしら……?)

551 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/03 01:04:39 bLP 249/451


ドロシー「えっと…それじゃあ女王様のお城への近道、案内しますね…?みなさん、準備はいいですか…?」

キモオタ「もちろんですぞ!今の我輩はかなりノっておりますからな!友との約束を果たすため、渾身のオタ芸を披露しますぞwww」

赤ずきん「えぇ、私達はいつでも戦える。そうよね、赤鬼、人魚姫?」

赤鬼「おう!鬼神の奴は頼れねぇし自分達の力でなんとかしねぇとな!」

人魚姫の声『うんうん!アタシもバッチリサポートすっかんね!』

ライオン「ぼ、僕達も頑張ろうね。やれることは、やったもんね…!」

桃太郎「ああ、そうだ。金太郎や食わず女房や舌切り雀…他にも大勢の協力があってこそ拙者達はここに居るんだ、ちゃんと礼を言わないといけないしな」

裸王「ヘンゼル!そしてグレーテル、千代よ!我らが過ごした日々はこの時の為のもの!各々が力を出し切れば決して破れる事は無い!気を強く持ち、戦いの望むのだ!」マッチョ

ヘンゼル「うん。僕達には取り戻さないといけない物がたくさんある、そのためにもアリスから魔法のランプを奪還しないとね。でも、二人とも無理はしないでよ?」

お千代「もう、ヘンゼルってば…。それはこっちのセリフだよね、グレーテルー?」

グレーテル「うん、お兄ちゃんはいっつも無理する…。私達は無理しない、だからお兄ちゃんも無理しないで……約束」

ヘンゼル「…そうだね。わかったよ、約束だ」

裸王「ハッハッハッ!我が鍛え上げられし筋肉も美しき兄妹愛の前では霞んでしまうな!否…!ならば更に鍛えるのみッ!」マッスル

孫悟空「さぁて…気合入れて行くぜ玉龍。かぐやの奴、いつまで寝てんだって叩き起してやらなきゃなんねぇからな」

玉龍「そうッスね!そして全部解決したらもう一度天竺への旅を続けるッス!」

ドロシー「私も…全て終わらせて、償いをして…普通の女の子に戻ります…!」

キモオタ「では皆の者…!ハートの女王殿の城へ、行きますぞ!」ザッ

552 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/03 01:06:52 bLP 250/451


不思議の国のアリスの世界 ハートの女王の城

アシェンプテル「……」

三月ウサギ「どうしたプテル?」

帽子屋「もう三月ウサギちゃんはデリカシーないわねぇ~…アシェンちゃんは元々キモオタちゃん達の仲間だったのよ?元とはいえ、仲間と戦うのは気が重いのよぉ~」

アシェンプテル「そんな事は無い。舞踏会で王子と出会ったのも、桃太郎やラプンツェルと友人になったのも、キモオタ達と友達だったのも……シンデレラだ。私ではない」

アシェンプテル「私はアシェンプテル、奴等とは何一つ接点の無い灰かぶりだ。赤の他人と戦う事に気を重く感じる事など無い」

帽子屋「あらそう?まぁどっちでもいいけどねぇ、そんなことよりあの負け犬女王をからかって遊びましょうよぉ」ブホホ

白ウサギ「ちょ、ちょっとやめてください!ハートの女王様は未だかつてない程機嫌が悪いんです!アリスさんの呼びかけでなんとかこの場には来て下さいましたが…刺激しないでください!お願いします!」

ハートの女王「白ウサギ!!大きな声を出すでない!首を刎ねられたいか!?」ギロリ

白ウサギ「ひいぃっ!申し訳ございません!!」ペコペコ

ハートの女王「雪の女王め…あのような屈辱は初めてだ…!奴は既に死んだが…それで許されるものではない…絶対に許さん、絶対にだ…!」

ハートの女王「……確か我等には向かう連中にはヘンゼルとグレーテルが居たはずだ。雪の女王はその二人を大層可愛がっていたそうだ…。ならば……」ブツブツ

チェシャ猫「……アリス。解っているとは思うが、奴等はお前が持つ魔法のランプを狙ってくるはずだ。気を抜かぬように」

アリス「大丈夫だよチェシャ猫、僕達の勝利は決定的だけど…それで付け入るすきを与える程、ボクは愚かじゃあない」

チェシャ猫「それならばいいのだがな…」

アリス「さぁ…噂をすればようやくお客様のご到着だ。みんな準備は出来ているね?時間だ、ルイスの…そしてボクの【不思議の国のアリス】の住人総出で――」


アリス「思う存分、連中をもてなしてやろう」

571 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/10 01:57:01 7Va 251/451


不思議の国のアリスの世界 ハートの女王の城

ザッ

キモオタ「……ここがハートの女王の城でござるか」

ドロシー「は、はい、アリスちゃんはこの場所を中心に作戦を進めてきました。人質が捕えられている牢屋もこの敷地にあります、奪い集めた魔法具もこのお城の宝物庫に保管されているはずです…」

赤ずきん「まさに彼女の本拠地、と言ったところね」

赤鬼「それにしても随分とデカイ城だな…。旅の途中でいくつかの城を見てきたが、その中でも特にデカイ部類に入るぞ」

裸王「うむ、だが単に広大なだけではない。派手でありながら丁寧な造りをしている、おそらく生半可な攻撃など通用しない強固な城!決して見かけ倒しではないだろう!」

スタッ

アリス「フフッ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。自慢の城だからな、余所の国の王に褒められるとは光栄だ」クスクス

キモオタ「アリス殿…!」

アリス「やぁ、随分と遅かったじゃあないかキモオタ。まずは逃げなかった事を褒めてやろうか、とはいっても逃げ場なんか何処にもないけどね」クスクス

キモオタ「ドゥフフwww我輩、逃げるなんて選択肢は持ち合わせていないでござるよwww更に言えば負ける気も無いでござるよwww」コポォ

アリス「ふーん…ティンカーベルを失ったことで少しは落ち込んでいると思ったけど…。ボクが思っているよりも君は薄情な人間だったようだな」

キモオタ「何を言うかと思えばwwwティンカーベル殿との別れはほんの一時のものでござるwwwこの戦いが終わればまた会えるでござるのに落ち込む必要などないですぞwww」

アリス「ハハッ、そうだな。ボクを倒して魔法のランプを奪えば彼女を蘇らせることなんか容易い。確かに落ち込む必要なんかない。だがお前は一つ考え違いをしているよキモオタ」

アリス「そんな事をボクが許すと思うか?お前がどんなに魔法のランプに手を伸ばそうとそれは決して届く事はない。それに…この完成された世界に余所者は似合わない」

アリス「お前も、その仲間達も残らず葬り去る。そうすることでこの美しい世界は本当の意味で完成を迎える」

572 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/10 01:59:17 7Va 252/451

アリス「とはいえ…。流石のボクも君達を一度に相手するっていうのは少し面倒だ。だから――この世界の住人総出で、君達を歓迎するよ」パチンッ

ザザッ ザザザッ

ライオン「うえぇっ!?茂みや物陰から大勢の動物たちが…!?」

グレーテル「あっという間に囲まれちゃったね……」

司書「芋虫、大勢の鳥類に森の動物達、代用ウミガメ…。彼等はこの物語の脇役達、そうよね?」

アリス「流石、詳しいね。君の言うとおり、彼等は【不思議の国のアリス】の物語の中の脇役達だ、だがボクにとっては脇役なんかじゃない。大切な仲間だ」

アリス「ボクが命じるまでも無く、頼むまでも無く、君達を始末する手助けをしたいと申し出てくれたのさ」

桃太郎「注意した方が良いぞキモオタ。この獣たち…強さはそれほどじゃあないけど、どいつも強い意志が宿った目をしてる。油断ならない連中だぞ」

キモオタ「ガッテン承知ですぞ!しかし、逃げるつもりは無いとはいえ、完全に退路を遮断されましたな…」

ザッ

帽子屋「んふっ。もちろんあの子達だけじゃないわよぉ?最後の仕上げですものっ、アタシ達が直々に相手をしてあ・げ・る・わよぉ~!」ブホホ

三月ウサギ「まっ、少しばかり面倒だがこればっかりはやらねぇとな」

白ウサギ「アリスさんの、そして皆さんの願いを遂げるためにも死力を尽くしますよ!」

ハートの女王「……」ギロリ

チェシャ猫「煩わしい。早急に終わらせるとしよう」

キモオタ「やはり【不思議の国のアリス】の重要人物、幹部クラスの面々も勢ぞろいと言う訳でござるか…!」

573 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/10 02:02:05 7Va 253/451


アシェンプテル「キモオタ。お前が戦うべきは【不思議の国のアリス】の住人だけではない、この私もだ」スタッ

キモオタ「シ、シンデレラ殿ォ!?悪魔の鏡の破片の影響とはいえお主やはりアリス殿側に…!」

裸王「むむっ…目付きも立ち居振る舞いも私の知るシンデレラとはまるで異なる…。一見、信じられぬ光景だが…」

桃太郎「それは拙者も同じだ。でもあの『ガラスの靴』を履く事が出来るのは全ての世界を探してもあいつしかいない。
あいつは間違いなく、シンデレラだ」

アシェンプテル「先程からシンデレラシンデレラとやかましい連中だ、あの無様な灰かぶりは死んだ。その名は口にするな」フンッ

赤ずきん「随分と趣味の悪いドレスを着るようになったのね、シンデレラ?」

アシェンプテル「周囲に流されて着せられた豪華なだけのドレスと比べれば随分マシだと思うがな。だがそんな事よりも――」カッ

ヒュバッ

赤ずきん「……っ!」ビッ

キモオタ「赤ずきん殿ォ!」

アシェンプテル「赤ずきん、その無様な名で呼ぶなと忠告したはずだ。二度目は無い」

赤ずきん「そう。それならなんて呼べばいいのかしら?」

アシェンプテル「その必要があるのならばもう一つの『灰かぶり』の名、アシェンプテルと呼べ。もっとも、私の名を口にする事があるとは思えんがな」

キモオタ「アシェンプテル…。司書殿、もう一つの『灰かぶり』とはどういう意味でござろうか…?」

司書「…元々【シンデレラ】にはいくつかバリエーションが存在するんです、元々は民間伝承の物語ですから」

司書「それをシャルルペローが編集したものが『サンドリヨン』日本で最も一般的な【シンデレラ】です。そして彼女が口にしてた『アシェンプテル』はグリム兄弟が編集した、もう一つの【シンデレラ】です。
それはもう随分と昔に消滅してしまったようですけど、その二つのおとぎ話の違いを一言で表すなら――」

司書「もう一つの『灰かぶり』アシェンプテルは継母や姉への復讐を遂げる、という点でしょうか…」

574 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/10 02:04:31 7Va 254/451


キモオタ「復讐…」

アシェンプテル「そうだ、あの継母共を許すつもりはない。だが、あの世界が消えたことで連中も死んだ。不本意ではあるが一応の復讐は果たせたと言えよう」

アシェンプテル「だが私がすべきことは他にもある。それはお前達の心に巣くう『シンデレラ』を殺す事だ」

桃太郎「……」

キモオタ「我々の心の中の…?それは一体、どういう意味でござろうか…?」

アシェンプテル「私にとって『シンデレラ』は周囲に流されて平和ボケし、憎しみを忘れた無様な女。奴はもう存在しないが、お前達は奴の面影を追い続ける」

アシェンプテル「それが我慢ならない。あの無様な女が存在していたという証は、ひとつ残らず灰のように散らさねばならない。故にお前達を始末する、それが今の私の目的だ」

キモオタ「お主は魔法具によって洗脳されているだけでござる!その様なk」

桃太郎「キモオタ。あいつを正気に戻す役目、拙者に任せてくれないか?」

キモオタ「桃太郎殿…?それは構わんでござるけど…」

アシェンプテル「私を正気に戻す?辺境の地の侍が笑わせる、事あるごとに無様に怯えるお前に私の何を変えられると言うんだ?」

桃太郎「……お前、覚えていないか?前にお前の国を拙者とラプンツェルと三人で観光した時の話。拙者、なんだかんだあったけどあの時結構楽しかったんだよ」

アシェンプテル「……さぁ、覚えていないな」

桃太郎「あの時、あいつは冗談のつもりだったんだろうがラプンツェルはお前にこう言ったんだ」

桃太郎「『シンデレラが悪い子になっちゃっても私達が良い子に戻してあげる!』ってさ」

575 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/10 02:07:12 7Va 255/451


アシェンプテル「それがどうした?そんな戯言を引っ張り出してどうしようと言うんだ?」

桃太郎「あいつは今、ちょっと遅れてるけどその事忘れてねぇと思うんだよ。それにお前を元に戻したいってのは拙者だって同じ気持ちなんだ」

桃太郎「拙者達は友達が居ない仲間だってお前あの時言ったけどさ。そんな事ないんだよ、だってお前もラプンツェルも拙者も友達だ。だから拙者はお前を…いいや」

桃太郎「拙者はシンデレラを正気に戻す、それが友としてお前に出来る事だ」

アシェンプテル「田舎侍が…」ギリッ

アシェンプテル「その名を口にするなと……何度も言わせるな!」ヒュッ

キモオタ「桃太郎殿ォー!」

ガキィィィンッ

アシェンプテル「……っ!」

アシェンプテル(私の蹴りを…。ガラスの靴の速度を乗せた高速の一撃を見切って、刀で防いだだと…!?)

桃太郎「……お前は拙者達の中に居るシンデレラの面影を殺すって言ってたけどさ、そりゃあ無理だよ」

桃太郎「拙者は日ノ本一の侍。そんな憎しみと怒りに任せただけの攻撃なんか、通用しない」

アシェンプテル「……どうやら、真っ先に相手をすべきなのはお前のようだな桃太郎」

アシェンプテル「そこまで言うのならば相手になってやる。私が『シンデレラ』を殺すのが先か、お前が『シンデレラ』を呼びもどすのが先か…だがここでは邪魔が入りそうだ、場所を移す。城内にそれにふさわしい場所がある」

スタッ

アシェンプテルの声「怯えず向かってこれると言うのならば来いヘタレ侍。このアシェンプテルが舞踏の相手をしてやる」

ヒュンッ

581 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/12 01:15:31 yOc 256/451

桃太郎「相変わらずあいつの魔法具はすげぇな…。すぐに後を追いたいところだけど、城の中に戦いに相応しい場所なんかあるのか…?」

ライオン「う、うーん…訓練場ならあるけどあそこはお城の外だから違うかなぁ…?」

キモオタ「ドロシー殿、もしかしてこの城にはダンスホールがあるのでは?」

ドロシー「は、はい。舞踏会が催せそうなくらい広いホールがありますけど…」

キモオタ「それならば…おそらくシンデレラ殿はそのダンスホールに居るはずでござるよ、桃太郎殿」

桃太郎「ん…?どうしてそう思うんだ?」

キモオタ「シンデレラ殿、ドレスを身に纏いガラスの靴を履いていたでござる。ドレスの趣味は変わっていたでござるが…あれは彼女が舞踏会に向かった時のスタイル」

キモオタ「口では無様などと言っておりましたがな…。良くも悪くも自分の人生を変えた舞踏会には何か思うところがあるのでござろう」

桃太郎「確かに…ガラスの靴を使い続けているくらいだしなぁ」

キモオタ「それにあの高速を生かすにはある程度広い場所でなければなりませんからなwwwダンスホールという読みはあながち間違いではないかとwww」

ライオン「そ、それじゃあ僕が案内する…!背中に乗ってっ、桃太郎さん」

桃太郎「うん、かたじけない。それじゃあ拙者達はシンデレラを追う、一緒に戦えなくて悪いけどあとの連中は任せた!」

裸王「ウムッ!筋肉神は友情に厚い者に微笑む!桃太郎よ、お主に筋肉の神の加護あらんことを!後の事は任せたまえ!」マッスル

赤鬼「あぁ、こっちの事は気にしねぇでいいからな。全力であいつを正気に戻してくれ!頼んだぞ!」

キモオタ「死んだとしてもちゃんと埋葬しておきますぞwww」コポォ

桃太郎「死なねぇよ!まぁとにかくあいつの事は拙者にまかせてくれ、次会うときは必ずシンデレラも連れて帰るからな!」

シュババッ

582 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/12 01:19:00 yOc 257/451


チェシャ猫「……良かったのかアリス?」

アリス「何がだい?」

チェシャ猫「アシェンプテルは連中を始末する上で非常に有効な駒だ。名が変わろうと連中にとってあの女は友人だ、攻撃をする事を躊躇するだろうからな」

チェシャ猫「更にあの機動力…一対一の戦いをさせるより、遊撃をさせた方がはるかに戦果をあげられただろう」

アリス「確かにそうかもしれない。だが彼女の相手は桃太郎、ああ見えて実力は本物だ。経験に裏打ちされた強さ、磨き上げられた剣術……そして治癒能力まで備えている」

アリス「高い戦力と治癒能力を持つ桃太郎をキモオタ達と分断出来たと考えれば、これはそんなに悪い流れじゃあない。これでもうキモオタ達は治癒に頼る事は出来ないんだから」

チェシャ猫「まぁ…そう考えれば悪手とは言い難いが」

アリス「何にせよ彼女にかかった魔法を解かなければ元のシンデレラには戻せない。だが桃太郎の能力では魔法を打ち消すことまでは出来ないという事は調べが付いてる」

アリス「何一つ心配する必要なんかないのさ。ボク達はこれからじっくりこいつ等を苦しめてやればいい、それだけだ」

アリス「彼女の行動は想定外だったけど、この程度では何も変わらない。ボク達は――」

ズダーン!!

アリス「……ッ!」ビッ

赤ずきん「あら残念ね…。額を撃ちぬこうと思ったのだけど頬をかすっただけだなんて……私の腕もまだまだね」

赤ずきん「でも油断はしない方が良いんじゃないかしら?頭が弾けるなんてあなたも嫌でしょう?」

583 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/12 01:24:55 yOc 258/451


帽子屋「アリスちゃん…!大丈夫っ!?なんなのアレ…不意打ちだわ!許せない!許せないわよぉ!」ムキー

白ウサギ「ち、血が出てるじゃないですかァ!かすり傷みたいですけど化膿したら大変です!すぐに手当てを…!」

三月ウサギ「クッソ!姑息な真似しやがって…!あいつただじゃおかねぇ…!」

アリス「騒ぐな。大したことじゃない」

チェシャ猫「警戒心が薄れていたなアリス。くだらない慢心で全てを台無しにするつもりか?」

アリス「悪かったよ、ボクとした事が内心舞い上がっていたのかもしれない。まぁなんにせよ……まぐれ当たりは二度と無いぞ、赤ずきん」ギロリ

赤ずきん「あら、まぐれ扱いなんて心外ね。なんならもう一発、試してみる?」ガチャッ

アリス「好きにすればいいさ。でも流石に二度目はボクの仲間が黙っていないよ?そうだろう?」

帽子屋「当然よッ!こういう言い方アリスちゃんは好まないでしょうけど…女の子の顔を傷つけるなんて万死に値するわッ!女の子代表としてアタシは許すわけにはいかないわぁ!」

三月ウサギ「次、攻撃するそぶりを見せてみろ。テメェの頭巾が更に深い赤に染まる事になるからな!覚えてろテメェ!死ね!」

赤ずきん「自分たちの事を棚に上げて…。良い根性しているわね」

アリス「まぁそう慌てるなよ赤ずきん、ボク達は逃げも隠れもしない。だがボクが今一番殺したいのはそこの豚だ、悪いけれどそれ以外の連中はオマケでしかない」

赤ずきん「あら、随分な言い方ね…?」

アリス「本音を言ったまでさ。だからボクとしてはわざわざオマケと戦うのに時間を割くなんてバカバカしい事はなるべく避けたい、そこで……だ」

赤鬼「アリスの奴、一体何をしようってぇんだ…?」

アリス「なんてことは無い、少しふるいにかけるだけだ。お前達オマケがどうしてもボクと遊びたいっていうなら、こいつ等の相手をしてからにしてもらおうか」スッ

584 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/12 01:28:32 yOc 259/451


アリス「さぁ出番だ青い鳥!!こいつらと少し遊んでやれ!」

巨大な青い鳥「お任せください!一人残らず呑み込んでやりますよぉ!!」バッサバッサ

巨大な青い鳥「僕はもうちっぽけな小鳥でも平和の象徴でも無い!アリスさんに頂いたこの身体と力で連中を喰い散らかしてやります!」バッサバッサ

キモオタ「あの者は…!ティンカーベル殿がファミチキと呼んでいた青い鳥殿でござるか!?何故あのように巨大な姿に!?」

ヘンゼル「この世界には身体の起き差を変える魔法具なんて掃いて捨てる程あるんだ、驚くような事じゃないさ。それよりも…」

グレーテル「あんなにおっきな鳥さんに襲われたら……大怪我しちゃうよ……なんとかしなくちゃ……」

アリス「フフッ、それじゃあボク達はこれで失礼するよ。さぁ、みんなも行こう。予定よりも長居し過ぎてしまったからね」

キモオタ「ぬぅっ…!待つでござるアリス殿…!拙者を殺したいと言うのならばこのような小細工をせずに正々堂々と戦えばいいでござろう!」

アリス「ブラフ頼りだった君の口から正々堂々なんて笑わせるね」クスクス

アリス「ボクは正々堂々だろうがそうでなかろうがお前を殺せればそれでいいのさ。今まで散々ボクの邪魔をしてきたお前だ、青い鳥相手に苦戦したりしないだろうけど…少なからず消耗はするだろう?お前も他の連中も」

キモオタ「青い鳥殿と戦わせて我々の戦力を消耗させるのが狙いでござるか…!」

アリス「率直に言えばそうだね、何も万端な状態のお前と戦う必要はないんだ」

キモオタ「なんと卑劣な手を…!しかし我輩は負けませんぞ、必ずお主を…!」

アリス「フフッ、いつだって威勢だけはいいな。それじゃあまた後で会おうじゃないか、キモオタ。ボクはこの城にいる。お気に入りの場所でお茶でも飲みながら待っているからいつでも来るといいさ……あぁ、でも」

アリス「せめて戦える状態で来てくれよ?そうでなければ殺しがいが無いからな」フフッ

スタスタスタ

599 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 00:50:11 WND 260/451

キモオタ「待つでござるアリス殿!我輩の話はまだ終わっておりませんぞ!」ダダッ

ドロシー「ま、待ってくださいキモオタさん!私も一緒n」

巨大な青い鳥(以下、青い鳥)「行かせやしないぞ!アリスさんの為にもお前達をここで足止めする!それが僕の役目だァ!!」バッサー

キモオタ「ぐぬぅっ…!邪魔をしないでいただきたい!」

青い鳥「散々アリスさんや僕の邪魔をしてきたのはお前じゃあないか!文句があるなら力ずくで僕を倒して見せろ!もっとも今の僕はちっぽけな小鳥じゃあない、恐れられるべき怪鳥だ!」

青い鳥「魔法薬『力太郎』と巨大化するキノコのおかげで僕はこの姿と力を手に入れた!もう僕を止められるものなんか何もない!どんな敵だろうと、運命だろうと!」

ブルゥォォォォォォォ!!!

キモオタ「ぐぬぬ…!アリス殿の思惑通りになってしまうでござるが、やはりここは我々でファミチキ殿を倒して進むしかないでござるか――」

ヘンゼル「キモオタお兄さんはつくづく馬鹿正直だね。なんであの化物の相手しようなんて発想になるかな」バッ

キモオタ「ヘンゼル殿!」

ヘンゼル「化物の相手は化物に任せればいいんだ。出でよ銀貨の魔獣!あの怪鳥を食い止めろ!」ガキン!ガキン!

銀貨の魔獣「ガルァァァ!!」ビュバッ

青い鳥「クソォ…火打ち箱の魔獣か!人間に従うしかできない魔獣なんかに負けてたまるかァ!!」ビュオッ

ガキィィン!!

ヘンゼル「ここは僕達が食い止める!キモオタお兄さんやみんなはアリスを追うんだ!」

600 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 00:52:42 WND 261/451

キモオタ「助かったでござるヘンゼル殿!さぁドロシー殿、アリス殿の所まで案内してくだされ!」タタッ

ドロシー「わ、わかりました…!」タッタッ

赤ずきん「赤鬼、人魚姫、私達も急ぎましょう」スタッ

赤鬼「おう!あっちにはまだ仲間が何人もいる、少しでも戦力まとめてぶつからねぇとな!」

人魚姫の声『りょーかーい!でっかい犬とでっかい鳥の戦いとか見た事無いから興味あるけど…あいつ倒すのが先だもんねー』スゥー

青い鳥「そう簡単に突破されてたまるか!防衛部隊!投石部隊!あいつらが城に向かうのを止めるんだ!」

ビル「言われなくたってそのつもりだぜ青い鳥の旦那ァ!俺達みてぇな脇役がアリスの役に立てる最大の好機、見逃すわけねぇぜェ!!」

ザザッ

キモオタ「ぬぅっ!あの者…トカゲでござるか?いやそれよりも一人で我々を止めるつもりとは……まさか相当な強者では!?」

ビル「ヘヘッ…察しが良いねェ。俺様は『一番槍のビル』!!防衛部隊一の強者だァ!さぁさぁ侵入者共ォ!死にたくねぇ奴は下がっていやが…ブベラッ!」ドサッ

ズダーン

赤ずきん「先を急ぐわよ」タッタッタッ

赤鬼「容赦ねぇなお前…。つぅかなんだったんだアイツ……」タッタッタッ

「おい、ビルがやられたぞ。本当にあいつはクッソつかえねぇな……」
「いいよいいよ、わかってた事だし誰も期待してないから。それに侵入者共は僕達投石舞台が止めればいいだけだ」
「そうだな。【不思議の国のアリス】で鍛えた投石の腕、存分に発揮してやろうじゃないか。総員、投石準備ー!!」

「ひとまずは手押し車一杯!総員、投石始めェーー!!」

ビュンビュンビュンビュンビュンビュン

601 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 00:55:14 WND 262/451

ヒューッ ドスドスドス!!

赤鬼「おいおい…まるで石の雨じゃねぇか!これじゃあ強引に進む事もできねぇぞ!?」バシッバシッ

キモオタ「地味な攻撃でござるが下手すれば大ダメージでござるしな…。赤ずきん殿があの投石を全て撃ち落とせるというのなら話は別でござるが…」サッ

赤ずきん「無茶を言わないで。そんな事をするならあの脇役達を一匹ずつ倒した方がずっと効率的よ」ササッ

人魚姫の声『そうはいってもさー、結構な数居るからどっちにしろ相当足止め食らうと思うんですけどー…』

裸王「皆の者!ここはひとまず散開するのだ!一か所に固まっていては集中攻撃を受けてしまうぞ!」

玉龍「とにかくこの脇役達を始末しない事にはどうにもこうにもならないッス!そうッスよね?先輩!っと、まずはまとめて三匹撃破ッスー!」シュバッ ザシュッ

孫悟空「チィッ…数が多すぎる!こいつらを一匹一匹潰してたんじゃあアリスを倒すなんてとてもじゃねぇが――」ビュ シュバッ

グレーテル「ねぇお千代ちゃん……私の魔法で、全部焼き払ったらどうかな……?」

司書「この状況じゃ味方まで巻き添えにしちゃうから難しいかな。でもこのままじゃ…」

ヘンゼル「クッ…実力は銀貨の魔獣の方が上のハズなのに苦戦してる…。空を飛べる相手だと有利に運べないか」クッ

銀貨の魔獣「ガルルゥ……」ジリジリ

青い鳥「空からは怪鳥の僕が襲い、陸地は防衛部隊と投石舞台の攻撃!お前達はここで何もできずにやられるんだ!アリスさんの所にたどり着くことさえできずに!」

青い鳥「でも念には念を入れよう。今でも十分だけど、もっともっと戦力を増やせば…お前達なんかあっという間にズタボロだ!」バサッ

バラバラバラバラ……

602 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 00:57:23 WND 263/451

バラバラバラバラ……

キモオタ「……っ!ファミチキ殿が空からばら撒いているアレはまさしくトランプ…!これはマズイですぞ!?」

司書「ヘンゼル!魔獣さんにお願いして宙を舞うトランプを少しでも減らせない!?あの数が全て兵隊になって降りてきたりしたら…!」

ヘンゼル「わかった!銀貨の魔獣!あのトランプを一枚でも多く斬り裂け!」

銀貨の魔獣「ガルル…ガルルァ!!」ザシュザシュッ

ズダーンズダーン

赤ずきん「……駄目、数が多すぎる!とてもじゃあ無いけど撃ち落とせない!キモオタ!あなたもサイリウムの魔法で撃ち落としなさい!」ズダーンズダーン

キモオタ「承知でござる!しかし二人がかりでも撃ち落とせる量では――」フリフリ

ボウンボウンボウンッ

「Target Lock-on」
「Attack staeted…」
「……Ready」

ドロシー「あ、あわわ…青い鳥さんと、この世界の住民だけでも大変なのに、こんなにトランプ兵が増えちゃったら…」アワワ…

キモオタ「ぐぬぬ…こうなってはもう四の五の言っていられないでござる!全力で応戦してさっさと突破するほかありませんぞ!」

青い鳥「できるもんならやってみろ!この戦力差でお前達にできる事なんて何もないんだ!潔く諦めて倒されろ!」

605 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 01:01:39 WND 264/451


青い鳥「投石舞台は防衛部隊と共に白兵戦にかかれ!そしてトランプ兵と共に一気に侵入者共を叩き潰すぞ!」

ウオオオォォォォ!!

赤鬼「こうなったら覚悟決めるしかねぇ!オイラが道を切り開く!赤ずきんは援護してくれ!」

赤ずきん「えぇ、背中は私に任せなさい」ガチャッ

裸王「この裸王に力比べを挑むとはその意気や良し!さぁ磨き抜かれし筋肉の躍動をその目に焼き付けよ!」マッスル

ヘンゼル「銀貨の魔獣!お千代とグレーテル、それと僕を背中に乗せてくれ!」

銀貨の魔獣「ガルゥッ!」ヒョイヒョイッ

ヘンゼル「キモオタお兄さんとドロシーは…距離が遠すぎる!キモオタお兄さん!ドロシーを頼むよ!」

キモオタ「ガッテン承知!とはいえこの数相手ではいつまでもつやら…いやいや、悩んでも仕方ないですな!まずは桃太郎殿の刃で敵を一掃しますぞ!」フリフリ

玉龍「先輩、これマズくないッスか!?このままじゃああの時の…【西遊記】の二の舞ッス!」

孫悟空「あぁ…だがそいつだけは避けねぇとお師匠様に申し訳が立たねぇ!こっから反撃と行くぞ!ついて来れるな玉龍?」バッ

玉龍「モチのロンッス!うちは先輩についていくって決めてるッスから!天竺だろうとベッドの上だろうとお供するッスよ!」ドヤァ

孫悟空「…そんだけ軽口が叩けるってならまだまだ余裕って事だな。さぁて、遅れずに付いてきやがれ玉龍!」ヒュバッ

青い鳥「何か策があるような口ぶりだけど、無駄だ!多勢に無勢なんだ、お前達にこの大軍を退ける力なんかありゃあしない!」

孫悟空「ハッ、テメェ元々は小鳥なんだろ?巨大化する時に脳みそだけデカくすんの忘れたんじゃあねぇのか?」ハハッ

青い鳥「こいつ…!僕を馬鹿にして……絶対に許さないからな!こいつを一番にぶちのめせトランプ兵共!いくら強かろうがこの数の優位を覆せやしない!」バッサバッサッ

孫悟空「やっぱり忘れてやがるな?数にものを言わせて戦うってのは何もテメェの専売特許じゃあねぇんだぜ?」

ブチッ フーッ

孫悟空「さぁ湧いて出てきやがれ俺の分身!遠慮するこたぁねぇ、思う存分暴れやがれぇ!!」

607 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 01:06:08 WND 265/451

パラパラ…ムクムクッ

分身悟空達「「「うおおぉぉぉ!!任せやがれぇぇ!!俺ぇ!」」」シュババッ

青い鳥「そうか分身…!でもまだこっちの方が圧倒的に優位なんだ、少し数が増えたくらい…」

孫悟空「おいおい、誰がこれで終わりだなんて言ったんだ?」ブチッ フーッ

分身悟空第二弾「「「ウキキッ!ウッキィィィッ!!」」」サルサルサル

青い鳥「なんだって!?まだ…っ!?」

孫悟空「さぁて、もう一丁いっとくかぁ!!」ブチッ フーッ

分身悟空第三段「「「うっほほーーい!モンキィィィーマジーック!!!」」」ガンダーラッ

青い鳥「まさかこんなに数が増やせるなんて…!アリスさんそんなこと教えてくれなかったぞ!?」クッ

孫悟空「ヘッ、一度に出し過ぎると分身の精度が落ちちまうからやりたかねぇんだが…四の五の言ってられねぇ。それに多少精度は落ちちまったとしても――」

孫悟空「暴れ猿の名に、三蔵法師の守護者の名に恥じねぇ戦いは出来るぜ?」ニヤッ

青い鳥「クゥッ…!怯むな怯むな!実態があろうと所詮は妖術だ!一匹ずつ潰していけばいい!」

ウオオオォォォッ

裸王「おぉ…!噂には聞いていたがあれが孫悟空の分身…!なんと凄まじい魔法だろうか…!」マッチョ

キモオタ「この流れに乗ってこの者共を一気に蹴散らしますぞ!」シュババッ

孫悟空「おっとその必要は無ぇ!この脇役共とトランプ兵は俺と分身、そして玉龍が引き受ける!」

孫悟空「キモオタと他の連中は先に城に行ってろ!とっととアリスの奴をぶちのめして全て終わらせちまえ!」ニッ

608 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 01:12:00 WND 266/451

キモオタ「なんですと!?いくら分身が居ようともこの敵の数…悟空殿とはいえ厳しいのでは!?」シュババッ

孫悟空「だからって全員でこいつら相手にしてたらじりじり消耗しちまうだけだ!何人かがこいつ等の相手をして、残った奴らでアリスを叩くってのがこの状況じゃあ一番だ!」

孫悟空「そうなりゃあ残るのは俺と玉龍が適任だ。言っちゃあ悪ぃがテメェ等とは戦いの年季ってもんが違うからなぁ!」

ヘンゼル「待ってくれ、だったら僕が残る!この中で一番強い悟空さんがアリスの相手をせずにこんな連中の相手をする必要なんかないじゃないか」

玉龍「わかってないッスねー。ヘンゼルが残って倒されでもしたら城に向かった奴等は完全に挟み撃ちになるんスよ?そうなったら目も当てられないッス」ヒュヒュッ

ヘンゼル「……」クッ

孫悟空「仲間の背中を守るのは一番強い奴の使命ってな!俺と玉龍ならこいつ等を一匹たりとも城に流しやしねぇ、仏に誓ってだ」

孫悟空「それにテメェ等はアリスを止める為に散々修業やら何やらしてきたんだろ?だったらあいつをぶちのめす役目は譲ってやらぁ!」

キモオタ「…わかりましたぞ!ここは悟空殿の策に乗るでござる!ここは任せて他の者はアリスを追いますぞ!」

ブルゥォォォォォォッ!!

青い鳥「やらせないって言ったはずだ!ここで役目を全うできなかったんじゃあ僕はあの頃と変わらないただの平和の象徴になり下がってしまう…それだけは絶対に駄目だ!」

青い鳥「おとぎ話最強がなんだ!龍の子がなんだ!どれだけ分身が居ようが…僕達は絶対に勝ってアリスさんの役に立って見せるんだ!」バッサバサーッ

孫悟空「俺の妖術を目にして怯まねぇってのは褒めてやるぜ、だが手加減するかどうかってのはまた別の話だ!全力で行くぜ玉龍!伸びろォ…如意棒ォォォ!!」シュババッ

玉龍「オッケーッス!玉龍ちゃんの秘めたる実力、存分にさらけ出すッスよぉー!!」シャキーン

609 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 01:15:49 WND 267/451

キモオタ「皆の者!今のうちに一気に城まで駆け進みますぞぉー!!行きますぞドロシー殿!」ドスドスドス

ドロシー「は、はい!で、でもやっぱり敵が多すぎて、これじゃ皆さんと合流する事ができないです……きゃあっ!」ズサッ

グイッ

ビル「ヘヘッ…さっきは後れを取っちまったがこのビル様はただじゃあ倒れねぇ…!裏切り者のお前がいなけりゃあそいつは城の中で迷うしかねぇはずだ!」

ドロシー「は、放して…!」

ビル「放さねぇ…!お前達を城に向かわせる訳にゃあいかねぇんだ!俺達は脇役だがアリスの願いを叶えたいって気持ちは同じだ、お前らの様な侵入者に好き勝手させる訳にゃあいかねぇ…べぶっ!」ドサッ

ズダーン

ドロシー「あ、ありがとう…赤ずきんちゃん…!」

赤ずきん「礼は要らないわ。それより、この状況じゃあ合流するなんて無理よ。戦力を分散することになってしまうけど…今近くに居る者同士でアリスの元に向かうしかないわ」

赤鬼「あぁ、それがいいだろうな。オイラは赤ずきんと人魚姫で城に向かう!」

人魚姫の声『うんうん!私は二人としか会話できないしそーしたほーがいいっぽいね』

ワーワー

ヘンゼル「僕はお千代とグレーテルを連れて城に向かう。銀貨の魔獣に乗ったままならなんとか突っ切れそうだ」

グレーテル「今は離ればなれになっちゃうけど……みんなで頑張ってアリスをかまどにしようね……?」

司書「二人の事は任せてください!でも、そうなると裸王様がお一人で進むことに…」

ワーワー

裸王「うむっ!案ずるな!この裸王、一人とて一切問題無い!アリスの元まで一気に突き進んでくれよう!」マッスル

610 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 01:19:30 WND 268/451


キモオタ「ならば我輩はこのままドロシー殿と進みますぞ!」

「させるか!あの裏切り者をまず殺すんだ!あいつは城の内部構造を知っているぞ!」
「あいつさえ殺せば他の連中はアリスの居場所の見当もつかないはずだ!他の連中は後回しにしてドロシーを狙え!殺せ!」

ドロシー「ううっ…私が狙われてる…!怖い…怖いよ…追いつかれたら殺されちゃう……きゃあっ!」ズサーッ

キモオタ「ドロシー殿!?大丈夫でござるか!?」

「しめた!あいつ転んだぞ!今がチャンスだ、この隙に攻めかかれ!」
「手間を掛けさせやがって…所詮あいつは魔法具も何も持っていないただの小娘だ、恐れる事はねぇ!やっちまえ!」

ドロシー(うぅ…。頑張って皆の役に立とうと思ったけど、やっぱり私足手まといだ…)ジワッ

ヘンゼル「立って!立つんだドロシー!君は何も持ってないわけじゃあないだろう!こんなところで諦めてどうするんだ!」

ドロシー「ヘンゼル君…」

ヘンゼル「聞かせてくれ!君にはアリスが言っていた『お気に入りの場所』とやらがどこなのかわかるんだろう!?アリスはこの城のどこに居る?僕達はどこに向かえばいい!?」

ヘンゼル「それを知っているのは君だけだ!君が諦めたらアリスを倒せない!勇気を出すんだ、ドロシー!」

ドロシー「そうだよ、そうだよね…私は決めたんだ。皆と一緒に戦うって、こんなところで諦めてたら送り出してくれたかかしやライオンに叱られちゃうよね…」スクッ

「あの子供余計な事を…!今すぐにドロシーを止めろ!アリスの居場所を口にさせるわけにはいかない!」
「裏切り者め…!これで死ねぇぇぇ!!」ビュバッ

ザッ

「こいつ…避けただと!?」

ドロシー「あ、アリスちゃんは…アリスが一番気に入っている場所は王座の間です!だからきっと、今もそこに居るはずです!」

611 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/17 01:23:31 WND 269/451


ドロシー「王座の間は城の奥の奥…とても高い場所にあるけれど、その階までたどり着ければすぐにわかります!その階はほとんど王座の間に使われていますから!」

赤ずきん「王座の間…!とにかく上の階を目指していけばいいのね?」

ドロシー「はいっ!何処からお城に入ってもたどり着く事は出来ます!いくつも階段があるけど、お城の中央の方へ続く階段だけを探して上って行けばいずれはその階にたどり着けます!細かい道順は案内できなくて…ごめんなさい!」

裸王「問題無いぞドロシーよ!この広大な城からアリスを探す事を考えれば、その情報は事情に有益!」マッチョ

キモオタ「勇気出せましたなドロシー殿www」

ヘンゼル「これで僕達はアリスの元にたどり着ける!君のおかげだ、ありがとうドロシー」

ドロシー「う、うん…!頑張ろうね…!」タッタッタッ

「えぇい…!あの小娘余計な事を…!投石用意だ!今からでも連中を――」

分身悟空第一段「やらせねぇぞぉ!テメェ等の相手は俺だァ!!」シュバッ
分身悟空第二弾「ウキキッ、ウッキキー!!」サルサル
分身悟空第三段「うほほーい!マッチャアキィィィー!!」マチャアキ

「ぐおぉっ!邪魔をしやがって化け猿が…!」ズサー

孫悟空「なに余所見してやがんだぁ?分身じゃあ物足りねぇってなら俺が直接相手してやってもいいんだぜ?」ニッ

玉龍「先輩、超カッコイイッス~!惚れ直すッスー!抱いて欲しいッスー!」

孫悟空「玉龍!テメェ戦いに集中しろ!さぁて、あいつらは城に向かった!こっからが本領発揮だぜぇ!!うおおおぉぉぉっ!!」ウッキィー

・・・

627 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/24 01:00:28 vhU 270/451


不思議の国のアリスの世界 ハートの女王の城 城内

タッタッタッタッ ドスドスドスドス

キモオタ「ブフゥ~www一時はどうなるかと思ったでござるがなんとか城内へ入り込めましたなwww」コポォ

ドロシー「は、はい…。どうやら追手も来ていないみたいで……良かったです」ホッ

キモオタ「あの者達は悟空殿と玉龍殿がバッチリ足止めをしてくれていますからなwww背中は二人に任せて我々は先を目指しますぞwww」

ドロシー「は、はい…!あっ、そこのつきあたりは左です」タッタッタッ

キモオタ「ガッテン承知wwwいやはや、ドロシー殿のナビのおかげで迷うことなく進めて助かっておりますぞwww感謝感謝ですなwww」ドスドスドス

ドロシー「お、お役に立ててるなら私も嬉しいです。で、でも……」

キモオタ「何か気がかりなことでござるでござるかな?www」

ドロシー「キモオタさんにはこうやって直接道案内が出来ますけど…。他の皆さんにはちゃんとした道案内ができなかったから…」

ドロシー「うぅ……私、今思えばすごく雑な道案内をしてしまいました…。確かに王座の間に行くには上の階を目指せばいいんですけど…もっと細かい説明をした方が絶対に良かったです。階段の場所とかそういう……」

キモオタ「いやいやwwwあの状況でしっかり説明するなど無理でござるよwwwそれぞれ別のルートを進んでいるわけでござるしwwwドロシー殿は最善を尽くしたと思いますぞwww」

ドロシー「で、でも…皆さんが迷って怪我でもしたら大変です…。そもそもアリスが玉座の間に居るって言うのも私の予想だから絶対ってわけじゃないし……。うぅ……私が確証の無い事を言ったせいで皆が酷い目にあいでもしたら……」

キモオタ「お主は本っ当に気にしすぎガールでござるなぁwwwそんな事気にしているのはお主だけでござるよwww」

キモオタ「本来は城中を走り回って探し出さねばならなかったところを、ドロシー殿のおかげでアリス殿の居場所に目星が付けられたのでござるよ?www」

キモオタ「お主が勇気を出して声を張ったおかげで、我々のミッションの成功率はぐぐっと上昇しているのでござるwww誇ってもいいぐらいですぞwww」コポォ

628 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/24 01:14:35 vhU 271/451


ドロシー「も、もしもそうだったら…それはとても、嬉しいなぁ…」ニコッ

キモオタ「ドロシー殿はアレですぞwww少々ネガティブが過ぎますぞwwwもっと前向きに考えてもいいのではwww」

ドロシー「前向きに…ですか?」

キモオタ「そうですぞwww例えばお主が皆に道案内をした件でござるが…お主は自分のせいで皆が迷わないかと心配しているでござるよね?うまく道案内出来たのだろうかとwww」

ドロシー「は、はい…。やっぱり心配です…」

キモオタ「そうではなくwww成功した時をイメージするのですぞwww」

キモオタ「お主の予想通りアリス殿は王座の間に居てwwwスムーズにその場にたどり着けたことで万全な状態で戦えwww我々がアリス殿を止める事が出来たとしたらwww」

ドロシー「出来たとしたら…?」

キモオタ「MVPは間違いなくお主になるわけでござるよwwwラスボスの居場所をつきとめ、皆を導いたわけでござるからねwww」

キモオタ「そうすれば皆がお主に感謝しますぞwww赤ずきん殿や裸王殿はもちろん、消えてしまったおとぎ話を元に戻す事が叶えばその世界の住人もお主に感謝するでござろうwww」

ドロシー「あっ…それなら私がやってきた事の償いにもなるかも…」

キモオタ「もちろんなりますぞwwwそれに…ヘンゼル殿だってきっとお主の事を見直すでござるよwww勇気ある少女だと称えてくれるでござろうなwww」コポォ

ドロシー「へ、ヘンゼル君が…私を褒めてくれる…?」ドキドキ

キモオタ「褒められるどころかwwwお主の活躍によってヘンゼル殿はお主に惚れてしまうかもしれませんぞwww」

ドロシー「へ、ヘンゼル君が私に…?」

…ポワワーン

629 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/24 01:16:09 vhU 272/451

・・・

白馬に乗ったヘンゼル「遂にアリスの悪事を止める事が出来たね」キラキラキラ

ドロシー「う、うん。ヘンゼル君や、キモオタお兄さん…皆が頑張ったおかげだね。消えてしまった世界も元通りにできるみたいで、本当に良かった……私は、何もできなかったけど……」ショボン

白馬に乗ったヘンゼル「ハハッ、何を言っているんだいプリンセス。君が道案内をしてくれたおかげで僕達はアリスを止める事が出来たんだ」キラキラキラ

白馬に乗ったヘンゼル「本当に助かったよプリンセス、感謝している。君は僕の誇りだよ」ギュッ

ドロシー「お、大げさだよ…。私にできるのは道案内くらいだったから…。で、でもヘンゼル君の役に立てて嬉しい、私にできる事があったらいつでも言ってね」ニコッ

白馬に乗ったヘンゼル「そうかい?それなら早速、君に道案内をお願いしようかな」キラキラキラ

白馬に乗ったヘンゼル「君を想い過ぎて前が見えなくなっている僕の恋心を……君のハートに案内してくれないか、プリンセス」

ドロシー「ヘンゼル君…!」キュンッ

グレーテル「ドロシーお姉ちゃん大好きー……」トテトテ

司書「あなたの様な可愛らしい恋人が居るなんてヘンゼルは幸せ者ね」ニッコリ

白馬に乗ったヘンゼル「さぁプリンセス、手を」キラキラキラ

プリンセスドロシー「はい…!」

■HAPPY END■

・・・

630 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/04/24 01:18:56 vhU 273/451



ドロシー「……そ、そんなうまい話があるわけないじゃないですか!お、おとぎ話じゃないんですよ!?」ワタワタ

キモオタ「えぇぇwwwおとぎ話でござるけどwwwというか何を想像したのでござるかなwww」コポォ

ドロシー「ぜ、絶対に言えないです…!内緒です!」カァァ

キモオタ「ちょwww人に言えないような展開を想像するとはドロシー殿もなかなかに夢見がちガールでござるなwww」コポォ

ドロシー「うぅ……あっ、そこの角を左に進みますよ!わ、私は先に行きますからね…!」スタスタスタ

キモオタ「ドゥフフwww少しは恐怖が紛れたようでござるな、ドロシー殿www」

キモオタ「……」

キモオタ(さて…ドロシー殿と悟空殿達のおかげでうまく城に入りこめたのは良かったでござるが、分断されてしまったのは少々痛手ですな…一組ずつ我々の戦力を潰されでもすれば大惨事に…)

キモオタ(いやいや、前向きに考えるとするでござる。分断されたとはいえ逆に言えばあちらも戦力を分散せねばこちらを叩けないという事ですからな)

キモオタ(赤ずきん殿と赤鬼殿のコンビネーションはそうそう破られぬでござろうし。裸王殿の筋肉は言うまでも無く強靭かつ俊敏。ヘンゼル殿は持ち前のシスコン力で妹達を必ずや守るでござろう)

キモオタ(桃太郎殿も本当は頼れる男でござるから必ずやシンデレラ殿を救ってくれるでござろう。行方不明のラプンツェル殿は気がかりでござるが、きっと問題無いですぞ)

キモオタ(そしてもちろん我輩も、サイリウムを振るって全力で戦いますぞwww容易く負けるつもりなどありませんからなwwwアリス殿の時止めに対応する策もありますからなwww)

キモオタ(とはいえ……アリス殿を止める為の決めてであり切り札が欲しい所でござるな)

キモオタ(ふむ…。一度状況の整理をしてみますかな)

637 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/01 01:04:24 PsG 274/451


キモオタ(まず、今の状況は……)

・アリスは魔法のランプを使って【不思議の国のアリス】以外の世界を消滅させた。キモオタ側もアリス側も別世界へ移動する事はできない。

・アリスの口ぶりから察するにこの世界に入り込んでいる余所者はこの城に居るキモオタの仲間(+ラプ)だけ

・アリス含む幹部達は城内で待ち構えている。それぞれの居場所は不明だがアリスは城の上部に存在する『王座の間』にいる(ドロシー談)

・キモオタの仲間達は別行動をとっている、状況と目的は以下の通り
『キモオタ、ドロシー』→王座の間を目指し城内を進んでいる
『赤ずきん、赤鬼、人魚姫』→王座の間を目指し城内を進んでいる
『ヘンゼル、グレーテル、司書』→王座の間を目指す、銀貨の魔獣に乗り城内を進む
『裸王』→王座の間を目指す、単身で行動中
『桃太郎、ライオン』→シンデレラ(アシェンプテル)を追って城内へ
『孫悟空、玉龍』→城外にて青い鳥と大勢の兵隊達と戦闘中。キモオタ達の背中を守る重要な役目
『ラプンツェル』→この世界に居る事はわかっている者の行方不明

・アリスは魔法のランプを既に二回使用。あと一回だけ願いを残している。

キモオタ(こんな感じでござるかね)

キモオタ(我々の勝利条件はアリス殿の撃破および無力化、一番手っ取り早い方法は魔法のランプの奪取でござる。そして敗北条件は味方の全滅……といったところですな)

キモオタ(そういえば我輩とドロシー殿がここにたどり着くまで一切トランプ兵と遭遇しませんでしたな。となると城内への侵入者は幹部達が相手をするという作戦なのでござろう)

キモオタ(帽子屋殿、三月ウサギ殿、ハートの女王殿、白ウサギ殿、チェシャ猫殿、そして……アリス殿。どの相手も一筋縄ではいかないでござろうな)

キモオタ(とはいえこっちも負けてはいませんぞ。この時の為、皆がそれぞれ腕を磨いて準備をしていたわけですからな。それに我輩にはアリス殿が持つ時間停止への対抗策もあるでござる、戦いの準備は万端ですぞ)

キモオタ(……とはいえアリス殿の余裕たっぷりの態度を見てしまうと若干不安が残りますな。今からでも新たな策、特別な一手、切り札的なモノが欲しい所でござるが)

キモオタ「何か妙案が浮かばないでござろうか……」

638 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/01 01:08:13 PsG 275/451


ドロシー「キモオタさーん…?先に進まないんですか…?」ヒョコッ

キモオタ「おうふwww申し訳ないwww少々考え事をしておりましてなwwwすぐに行くでござるよwww」コポォ

ドロシー「考え事って、やっぱりアリスちゃ…アリスの事ですよね…?」

キモオタ「そうでござるwwwアリス殿に対して何か有効な作戦は無いかと知恵を絞っていたのでござるwww」

ドロシー「そうだったんですか…でもキモオタさんも皆さんもアリスを止める為にいっぱい頑張ってきたんです。だから私は、その、大丈夫だと思います」

キモオタ「確かに、皆はもちろんの事、我輩もやれることはやってきたつもりでござる。とはいえ切り札は一枚でも多い方が良いですからなwww」

ドロシー「それは私もそう思います…。アリスも他のみなさんも、当然だけど私が居た時よりずっと強くなってるみたいだったから…」

キモオタ「ドロシー殿は何か考えありませんかなwwwヤングなガール視点の意見も聞いておきたいでござるwww」

ドロシー「そ、そう言われてもそんなに急には…。私、作戦とか考えるのあんまり得意じゃなくて…」モジモジ

キモオタ「なんでもいいでござるよwww作戦とまでいかなくても思いつき的な事でも良いでござるしwww」

ドロシー「う、うーん…。それなら、アリスがこんな事をした理由をもう一回見直してみるとか…」

キモオタ「ほう…彼女の動機を再確認するということですな?」

ドロシー「は、はい。アリスには目的があって…それを叶えるために別世界の人たちをいっぱい傷つけて、他のおとぎ話の世界を消して、遂には現実世界までも消しちゃいましたよね?」

ドロシー「私にだって願いとか叶えたい事はあります。今までやってきた事の償いをしたい、ブリキ達の願いも叶えたい。赤ずきんちゃんやヘンゼル君ともっと仲良くなりたいし、グレーテルちゃんに睨まれないようになりたいです…」

ドロシー「でも…その願い事を叶えるために他の何かや誰かを犠牲にしようなんては思いません」

639 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/01 01:10:55 PsG 276/451

ドロシー「でも、アリスは違うんですよね。その願いを叶える為に、自分たち以外の全てを犠牲にしちゃったんですから…」

キモオタ「それだけ、その願いは彼女にとって重大なものだと言う事でござろうが…」

ドロシー「……私にはわかんないです。世界中の全てを敵に回して犠牲にして、それでも叶えたい願い事なんて……」

キモオタ「……アリス殿はこう言っておりましたな。元々彼女が住んでいた現実世界で、アリス殿やルイス殿は周囲との違いから差別や迫害を受けたと」

キモオタ「それがどの程度のものかは想像に頼るしかありませんがな、少なくとも彼女は自分自身、そして大切に思っているルイス殿共々差別の対象にされ、辛い思いをしてきたと」

キモオタ「故に彼女はその復讐を遂げるため、そしてマイノリティとして扱われた自分やルイス殿が誰からの迫害も受けない世界を生み出すため…【不思議の国のアリス】以外の世界を全て消した」

ドロシー「世界中を敵にまわしても構わないなんて思えるような酷い事を、アリスやルイスさんはされていたって事なのかな…?」

キモオタ「少なくともアリス殿はそう思ったから、今回の事件を起こしたのでござろうな」

キモオタ「それだけ現実世界で彼女を取り巻く環境は劣悪で、世間のルイス殿に対する扱いは凄惨なものだったのでござろう。百年も昔の現実世界となれば、世間も今ほど少数派に寛容ではなかったでござろうしな」

キモオタ「数奇な生まれの桃太郎殿や、鬼である赤鬼、【キジも鳴かずば】の世界に迷い込んだヘンゼル殿達のように…周囲と違う存在を、世間は何かと忌み嫌いますからな」

ドロシー「……なんだか、こんな事を言っちゃダメなんですけど。そう考えるとアリスも少し、可哀想かもしれないです」

ドロシー「自分や大好きな人が世間から認められなくて、差別を受けるなんて……きっと、とても辛いです」

キモオタ「そうでござるな…。我輩はオタク故に、世間の冷たい視線も浴びに浴びてきたでござるから多少は気持ちもわかるでござる」

キモオタ「とはいえ、我々も大切な仲間や世界を奪われた身。流石に彼女の行為を見過ごすわけにはいきませんからな…。今はとにかく彼女を止める事を最優先に考えるでござるよ」

640 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/01 01:13:10 PsG 277/451


ドロシー「あっ、それじゃあ……」

キモオタ「どうしたでござるかなドロシー殿www何か思いつきましたかなwww」コポォ

ドロシー「え、えっと…あの、本当にただの思いつきで…何の役にも立たないかもしれないんですけど…」オドオド

キモオタ「とりあえず話してみて欲しいですなwww恥ずかしながら我輩は特になにも思いついてないでござるしwww」コポォ

ドロシー「じゃ、じゃあ…。えっとですね、今話してみて改めて思ったんですけど…アリスってルイスさんの事をすっごく大事に思ってますよね」

キモオタ「そうですなwwwルイス殿は彼女の動機にも絡んでるでござるし、何より今までもアリス殿の口から何度もその名前が出てますからなwww」

ドロシー「私がアリスと一緒に居た時もよくルイスさんの名前を出してました。アリスだけじゃなくて、この世界に住む他の人たちもです」

ドロシー「作者だからって理由じゃなくて…アリスも他の人達も、この【不思議の国のアリス】に住む人達はきっと皆がルイスさんの事が好きなんだと思います」

キモオタ「一見妙な話でござるが、アリス殿が実は現実世界の住人だったという事を考えると不思議な事でも無いのかもしれませんなwwwこの世界に出入りしていたとしてもおかしな話ではないでござるしwww」

ドロシー「は、はい。だからですね、えっと…昔アリス達に何があったのかとか、ルイスさんの事をもっとよく知る事が出来たら、アリスを止める上で何かのヒントになるのかも……な、なんて事をですね。あの、思っちゃってるんですけど……」オドオド

キモオタ「ドロシー殿wwwお主自信が無さそうにしていた割にはなかなかグッドなアイディアを出すではござらんかwww」コポォ

ドロシー「そ、そうですか…?」テレテレ

キモオタ「そうですぞwwwこの有能っぷりは後ほどヘンゼル殿にバッチリ報告しておくでござるwww」コポォ

ドロシー「な、なんでそこでヘンゼル君が出てくるんですか…!い、いいですよ別に言わなくても…!」オドオド

641 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/01 01:16:24 PsG 278/451


ドロシー「うぅ…さっき褒めて貰ったのに早速とぼけたこと言っちゃいました…」ドヨーン

キモオタ「ドンマイドンマイですぞwwwアリス殿の部屋に向かうのは難しそうでござるが、日記や書記から当時の情報を得るという着眼点は悪くないはずwww」

ドロシー「一応、書庫はありますけど…。でも確かそういったものは置いて無かったと思います…」

キモオタ「まぁそうでござるよね、そう都合よく行くわけが無いでござるかwww」

ドロシー「ですね…。あと可能性がありそうな場所はルイスさんの部屋、ぐらいかな…」

キモオタ「ファッ!?ちょ、ちょっとドロシー殿!?ルイス殿の部屋がこの城にあるのでござるか!?」

ドロシー「えっ…?はい、ありますけど…?」キョトン

キモオタ「ちょwwwそんな当然の様なリアクションをされてもwww初耳でござるよwww」コポォ

ドロシー「す、すいません…」

キモオタ「いやいやwww我輩も察しが悪かったでござるなwwwアリス殿の部屋があるわけでござるしルイス殿の部屋があっても何らおかしくは無いですなwww」コポポ

キモオタ(……とはいえ、ハートの女王の所有物であるこの城にアリス殿の部屋が存在し、なおかつそれが最上階という一等地というのはどういう訳でござろうか…?本来ならば女王や王が使うべき部屋でござろうに)

キモオタ(作者であるルイス殿の部屋が存在すると言う事を考えると、アリス殿の部屋は後になって勝手に作ったわけではなく元々この城に存在していた可能性が高いでござる、つまり…)

キモオタ(この城はおとぎ話の中ではハートの女王の城でござるが、実際のところはアリス殿の為に作られた城なのでは…?)

キモオタ(アリス殿が以前言っていた『【不思議の国のアリス】は自分の為に作られた』というのはもしや……そういう意味でもあるのでは?だとすれば……)

ドロシー「キモオタさん…?」

キモオタ「おうふwwwなんでもないですぞwwwぼーっとして申し訳ないwww」

642 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/01 01:19:33 PsG 279/451


ドロシー「あの、ごめんなさい。も、もっと早く言えば良かったですね…。でもアリスとルイスさんだけじゃないです、他の幹部の皆さんにも部屋はあります。私が居る時も一室自由にさせてくれたから…」

キモオタ「ほうwww何はともあれ、まずはルイス殿の部屋に向かってみるでござるよwww何か情報が手に入るやもしれませんからなwww」

ドロシー「あっ、えっと…その事なんですけど。それはちょっと…難しいと思います」オドオド

キモオタ「おおっとwwwもしやルイス殿の部屋も王座の間を横切らないと行けないのですかなwww」コポォ

ドロシー「そ、そうじゃなくて…ルイスさんの部屋、鍵がかかっているんです。ルイスさんが最後にロックをかけた時からそのままになっているみたいで…当然鍵もスペアも無いんです」

キモオタ「ほう…しかしこの世界もおとぎ話の世界だけに魔法も妖術もなんでもアリアリでござるし、鍵を開けるくらい容易いのではwww」

ドロシー「そうなんですけど、アリスが『勝手に開けて入るとルイスに悪い』って言ってそのままになっているんです。だからあの部屋の中には誰も入った事が無いです、それに……」

キモオタ「部屋の中に何があるのか、アリス殿さえも知らない。ということですな?」

ドロシー「は、はい…」

キモオタ「そういう事ならばむしろ…ルイス殿には悪いでござるが鍵を開けて部屋に入るでござる。アリス殿でさえ知らない『何か』を手に入れられるかもしれませんからなwww」

ドロシー「で、でもどうやってあけるんですか?もしかして力技で叩き壊すとかですか…?」

キモオタ「我輩はそんな乱暴者ではないですぞwwwドロシー殿にはルイス殿の部屋に向かう前に宝物庫に案内して欲しいでござるwww」

ドロシー「宝物庫…?あっ、魔法の力で鍵をあけられる道具を探しに行くんですね?」

キモオタ「御明察wwwそれならばスマートでござろうwww我輩の腹はスマートではないですがなwww」コポォ

ドロシー「そ、そんなにうまくいくかな…?でも、わかりました。最初に宝物室に行って、それからルイスさんの部屋ですね。案内します、着いて来てくださいね」スタスタスタ

キモオタ「ちょwww渾身の自虐ギャグがスルーされたwww」

643 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/01 01:23:43 PsG 280/451

数分後
ハートの女王の城 宝物室

キモドロ「……」

キモオタ「なんと言いますかなwww宝物室だと言うのに見張りも皆無な上に扉が開けっぱなしだった故、嫌な予感はしておりましたがなwww」コポォ

ガラーン

ドロシー「か、空っぽですね…」

キモオタ「考えが甘かったですなwwwぶっちゃけ薄々こうなっている事も予想していたでござるがwww」コポォ

ドロシー「ご、ごめんなさい。でも、良く考えたらこうなりますよね…。戦いに使えそうな魔法具はアリス達が持っているだろうし、強い魔力を宿したものは結界を破る為に使っただろうから…」

キモオタ「まぁ無いものはしかたないでござるよwwwそれに空っぽとはいえいくつか残された魔法具もありますしなwww一通り部屋を回って使えるものが無いかチェックしますぞwww我輩は右回りに見ていくゆえ、ドロシー殿はそっち側から頼みますぞwww」

ドロシー「は、はいっ!」タッタッタッ

・・・

キモオタ「…とは言ったものの、ぶっちゃけロクなものがありませんなwww少なくともアリス殿が今までに手にしていた強力な魔法具の類は全然見当たらないでござるしwww」

キモオタ「残された魔法具も見るからにショボイアイテムばかりwwwここに置いてある以上魔力を宿しているのでござろうが、これなんかただの紙とインクにしか見えないでござるしwww」コポォ

キモオタ「案内してくれたドロシー殿悪いでござるが、無駄足だったかもしれませんなwww」

…カチャカチャン

キモオタ「ややっ?今、何やら音が聞こえたような…?気のせいでござるかな…?」

…カツンカツン シュタッ

「……」

キモオタ「ファッ!?な、なんですかな…?突然目の前に小さな鍵が…」

644 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/01 01:26:53 PsG 281/451

…カツンカツン

「……」キョロキョロ

キモオタ「いやはや驚きましたなwwwどうやらこの鍵は自我を持って動いているようですな、魔法具なのでござろうが一体どのような魔法具なのでござろうか?ここは司書殿に…」スッ

…カチャカチャ ドボーン!

キモオタ「ファッ!?先程のインク瓶に鍵がダイブしたでござる!?一体何なんでござるかこの鍵は!?」

「……」ボタボタ

…カチャカチャ スラスラスラ

キモオタ「なるほど、言葉を発せない故にインクまみれの自分をペン代わりにして我輩に意思を伝えようと言う訳ですな。どれどれ…なんと書いてありますかな?」

『欲望と憎悪入り混じる混沌の魔城≪キャッスル≫に足を踏み入れる物好きが居たとはな』

キモオタ「……」

『不思議の国の支配者、アリスの目を掻い潜って来たという事は…貴様もまた選ばれし適合者という事か。面白い、神も粋な真似をする』

キモオタ「ちょwwwなんでござるかなこの我輩の中の黒歴史を抉るような中二感はwww」

『何をブツブツ言っている…ハッ、まさか古より封印されし禁断の秘術の詠唱を――』

キモオタ「盛り上がっているところ悪いでござるがお主は何者ですかなwww」

『フッ…俺が何者か気になるか、無理もない。適合者同士は惹かれあう運命≪ディスティニー≫何者も逃れる事は出来ない』

645 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/01 01:31:17 PsG 282/451

『俺は【青髭】と呼ばれる異世界より生まれこの地に降り立った男。名は遠い昔に捨てた身だ、俺の事は好きに呼べ。例えば…†鮮血に染まりし深紅の鍵†とか悪くはないと思うが』

キモオタ「我輩はキモオタと申す者wwwあの、さっきから我輩のメンタルにじわじわダメージが加わっているのでその喋り方やめていただけないものかとwww」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†『安心しろ、会話の中に魔術の詠唱を混ぜるような真似はしていない』

キモオタ「いや、そうではなくwwwその無理にカッコつけた感じの喋り方をやめて欲s」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†『無理などしていない。貴様、あまりに無礼な言葉を口にするようならば…鮮血と言う名の後悔の底に沈むことになるぞ?』

キモオタ「ドロシー殿ー!ちょっと来ていただきたいwwwこの者、我輩だけでは手に負えないでござるwww」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†『フッ、俺の放つ魔力に中てられるのを恐れたか。賢明な選択だ』

・・・

ドロシー「うーん…やっぱりあんまりちゃんとした魔法具は残ってないなぁ…。どれも壊れてたりとか良くわかんないものばっかりで……あれ?この薬ってもしかして……」

スッ

ドロシー「やっぱりこの薬…アリスが私を操る時に飲ませた薬だ…!うぅ…見てると嫌な思い出がよみがえってくるよぉ、こんなのさっさと棚に戻して――」

ドロシー「……」

ドロシー「で、でも…この薬があればこんな私でも強気になれるよね…。もしものときでも、みんなの力になれるかも…」

ドロシードノー!チョットキテイタダキタイー

ドロシー「あっ、はーい!行きますー!」

ドロシー(…とりあえず、とりあえず持ってるだけ。持ってるだけ、ね)

タッタッタッ

655 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/08 01:04:31 Kna 283/451

ハートの女王の城 宝物室

ドロシー「キモオタさん、どうかしましたか?」ヒョコッ

キモオタ「ドロシー殿www助けてくだされwww我輩、なんだか妙な魔法具に絡まれてしまって困っているのでござるよwww」コポォ

ドロシー「妙な魔法具…?それって一体、何の事なんですk」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「『ドロシー』という名を聞いてまさかとは思ったが…やはりお前だったか」

ドロシー「あ、あなたは【青ひげ】の…!」ビクッ

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「覚えていたか、如何にも俺は【青ひげ】の世界で生まれた魔法の鍵だ。しかし驚いたな、まさかこの城でお前と邂逅する事になるとは……今日は随分と神が粋な真似をする日だ」

ドロシー「あっ、あの、その、えっと……」オロオロ

キモオタ「ドロシー殿、あの鍵殿と知り合いだったでござるか。友達同士…にはとても見えないでござるけど、一体どのような関係なのか聞いてもいいですかな?」

ドロシー「は、はい…。あの、その、私は……あの鍵さんの仇、なんです」

キモオタ「仇という事は、お主がまだアリス殿の元に居た頃の…?」

ドロシー「はい…。アリスが魔法具を集めていた頃、私は魔法の鍵さんを奪う為に所有者だった青ひげさんとその奥さんを……殺したんです」

キモオタ「そうだったのでござるか…。いやはや、言いにくい事を言わせて申し訳なかったでござる」

ドロシー「いえ…受け入れなきゃいけない事だから、大丈夫です。それに、私が落ち込んでいいことじゃ…ないです」

ドロシー「でも鍵さんは御主人さまを殺した私の事を絶対に恨んでます…。許してもらえなくて当然ですけど、なんとか償いをしなきゃ…。わ、私…キチンと謝ってきます…!」

656 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/08 01:07:38 Kna 284/451

ドロシー「あ、あの…魔法の鍵さん…!」オドオド

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「何の用だ?言っておくが、俺を倒そうなどという夢物語は早々に捨てておけ。お前達二人が束になって掛ってこようと俺の漆黒の魔力の前には無力。瞬く間に深紅の鮮血がお前達を包むだろう」

キモオタ「深紅なのか漆黒なのかどちらかにしていただきたいwww」

ドロシー「あ、あの…!私は、私達は鍵さんに攻撃しようなんて思ってないです!わ、私はただ鍵さんに謝りたくて……」オドオド

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「謝るだと…?お前が、俺にか?」

ドロシー「うぅ……ですよね、わかってます…。謝ったところで許される事じゃないですもんね…。で、でも聞いて欲しいんです。私の気持ちを……」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「待て、お前は何か考え違いをしているようだ。俺は本当に身に覚えが無い。俺はお前に何かされたのか?謝罪が必要になるような事を」

キモオタ「ドロシー殿?深紅の鍵殿、どうやら煽りとか嫌味を言っているわけではないようでござるよ?本当に身に覚えが無いのでは?」

ドロシー「そ、そんなはずは…。だ、だって私は鍵さんのご主人様だった青ひげさんを殺したんですよ?【青ひげ】の世界が消えちゃったのだって私のせいで……」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「まさかとは思うが……お前が青ひげを殺した事を俺が恨んでいるとでも思っているのか?」

ドロシー「は、はい…。だって御主人さまを殺されたんですから私の事を恨むのは当然で……」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「クックックッ…!幾多の世界を破壊し、数多の生命を奪おうと所詮は子供…!その様な甘い考えでよく今まで生きてこられたものだな」

ドロシー「えっ…?」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「所詮この世は弱肉強食。青ひげが死んだのは奴が弱者であり、お前が強者だったからだ。弱き者には敗北を、強き者には勝利を…それが自然の摂理、万物に定められた運命≪ディスティニー≫」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「そして勝者には絶対的な正義が与えられる。故にお前に一切の非は無い、非があるとすれば弱者だった青ひげだ。奴が死んだのは奴自身の責任なのだから」

657 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/08 01:11:08 Kna 285/451

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「故に、勝者であるお前が敗者の事など気にする事は無いのだ。むしろお前がやっている事は敗者に対する冒涜だ、勝者は堂々とするべきだ」

ドロシー「えっ…?キモオタさん、そうなんですか…?」

キモオタ「ちょwww我輩に振られてもwwwとりあえず深紅の鍵殿は気にしていないようでござるし結果オーライではwww」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「俺は冷酷な男≪クールガイ≫でな、かつて共に過ごした仲だからと敗者に同情するほどお人好しじゃあないのさ」

キモオタ「冷酷な輩は自分で自分の事を冷酷とか言わないでござるけどねwww」コポォ

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「フッ…なんとでも言え。とにかく、だ…俺は奴の死に関して特別な感情など抱いていないと言う事だ。理解したか、ドロシー?」

ドロシー「は、はい…」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「まぁいいだろう。そんな事よりもお前達は何故この宝物室を訪れたんだ?……あぁ、言わなくていい。俺がここでお前達と邂逅した事はお互いの魂が導きあった結果……すなわち運命≪ディスティニー≫……そうだろう?」

キモオタ「お主はディスティニー言いたいだけでござろうwww」コポォ

ドロシー「あっ…あの、キモオタさん。ルイスさんの部屋の鍵をあけるって話ですけど…魔法の鍵さんにお願いするっていうのはどうでしょうか?」

キモオタ「うーむwwwぶっちゃけこれ以上関わりたくないと我輩の魂が叫んでいるのでござるけどwww」コポォ

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「魂の叫び…か。それは深淵の底より世界に響き渡る賛歌の旋律≪メロディ≫…。だが如何なる存在も、人生という五線譜に刻まれた運命≪ディスティニー≫に抗う事は――」

キモオタ「ほらほらほらwwwもうこの感じ嫌なんでござるよwww一刻も早く実家に帰って中学の頃のノートを焼き払いたいwww」コポォ

658 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/08 01:14:30 Kna 286/451


ドロシー「で、でも他に方法も無いですから…。それに魔法の鍵さん、きっと悪い人じゃないですよ…?」

キモオタ「やれやれwwwそれも一理ありますしなwww気は進まないでござるが頼んでみるでござるよwww」コポォ

ドロシー「じゃ、じゃあ私が…。あ、あの、魔法の鍵さん…私達、実はあなたにお願いがあるんです」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「フッ…俺の優秀さを見込んでの依頼か。やはり俺が纏う漆黒の魔力は強大すぎて、その凄まじさを隠しきれないようだな」

ドロシー「え、えっと…?と、とにかくですね…私達、開けたい扉があるんですけど肝心の鍵が無いんです。あの、魔法の鍵さんなら……その扉開けたりとか、できませんか?」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「愚問だな。俺は魔力を宿した鍵だ、どんなに強固な扉であろうと複雑な錠前だろうと開ける事は容易い。世界中の全ての扉と錠前は俺の前では無力化する」

ドロシー「わっ…!すごいです!それなら少しだけ、私のお手伝いをしてくれませんか?」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「そうだな…それもまた一興か。だが、手を貸すかどうかはお前達次第だな」

ドロシー「私達次第…?どういうことですか?」

キモオタ「報酬を寄こせって事でござろうwwwなかなか足元を見てくる鍵殿でござるなwww」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「働きに応じた報酬を要求するのは当然の掟だ。【青ひげ】を知っているお前ならば当然わかるだろう、俺が最も欲するモノが何なのかを」

ドロシー「それはわかりますけど…。鍵さんが欲しているモノって……血液ですよね?」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「よく解っているじゃあないか。俺は血液を浴びる事が何よりの喜びだ、だがこの部屋に閉じ込められてからはそれも叶わない。俺は今、非常に血に飢えている…!さぁ、お前は俺にどれだけの血液を差し出す?」

659 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/08 01:19:03 Kna 287/451


ドロシー「うぅぅ…あの、血液以外じゃ駄目ですか…?」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「血液を差し出せないというのならばこの交渉は決裂だ」

ドロシー「そ、そんな…!」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「代償を払わず成果を手に入れようなど虫のいい話だ。お前が本当にその扉を開けたいのならば、どのような犠牲も厭わないはずだろう」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「だが血を差し出したくないというのならば、お前の信念はその程度のものという事。信念の無い願いに応じてやるほど、俺も暇ではないのでな。諦めて他の方法を探す事だ」

ドロシー「き、キモオタさぁん…助けてください……」ポロポロ

キモオタ「ちょwww泣かなくてもいいでござろうwwwとはいえ我輩も血液を差し出すのは勘弁でござるなぁwwwドロドロ血液でござるしwww」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「俺はどちらでも構わない。お前達が諦めるというのならばそれもまた一つの選択、それもまた一つの運命≪ディスティニー≫」

キモオタ「あーあwww残念でござるなぁwww我々に…もといドロシー殿に手を貸す事はお主にとってかなりのメリットなのでござるのになぁwwwあーもったいないもったいないwww」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「……どういう事だ?」

ドロシー「キモオタさん…?」

キモオタ「ドロシー殿、鍵殿を説得する為にちょっとだけお主のトラウマに触ってしまうでござるけど…かまわんでござるか?」

ドロシー「えっと…うん、それで鍵さんに協力してもらえるなら、大丈夫です…!」

660 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/08 01:22:01 Kna 288/451

キモオタ「深紅の鍵殿、お主の目の前に居るドロシー殿はどのような少女でござるかな?www」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「どうと言われてもな…内気で臆病な娘に見えるが?」

キモオタ「そうでござろうなwwwしっかしお主の記憶の中のドロシー殿はどうでござる?内気さも臆病さも無く、むしろ狂気に満ちているのではwww」コポォ

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「……実はそれは俺も気になっていた。かつて青ひげを殺したドロシーは相当好戦的で、頭のネジが数本はじけ飛んでいるような明るさがあったからな」

ドロシー「あ、頭のネジが…」ガーン

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「かつてアリスと共闘していたが今は決別している、という話は聞いていたからな。改心しておとなしい性格にでもなったものだと思い込んでいたが…違うのか?」

キモオタ「実はでござるな……今お主の目の前に居るのが本来のドロシー殿の性格なのでござる」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「それならば俺がかつて見た、あの狂気に満ちたドロシーは何だと言うんだ?」

キモオタ「あの姿はアリス殿に飲まされた魔法薬によって生み出された……ドロシー殿の第二の人格でござる!」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「第二の人格……」ピクッ

キモオタ「悲しい事にアリス殿に目をつけられた内気少女のドロシー殿は彼女に薬を飲まされ、第二の人格を生み出されたでござる。そして本人が知らない間にドロシー殿は悪事に加担させられていたでござる!」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†(内気な少女に植えつけられた狂気に満ちた第二人格…。無自覚のうちに利用される少女…)ピクッピクッ

キモオタ「そしてなんやかんやでアリスから逃れたドロシー殿は悩みに悩み、そして今までの罪を償う為にアリス殿に立ち向かおうとしているのでござる!」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†(第二人格の存在に気が付き悩む少女…。呪われた運命≪ディスティニー≫に立ち向かう少女…)ピクピクッ

661 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/08 01:25:39 Kna 289/451


†鮮血に染まりし深紅の鍵†「……」

ドロシー「キモオタさん…?鍵さん黙っちゃいましたけど…いいんですか?」ヒソヒソ

キモオタ「問題ないですぞwwwそれよりドロシー殿、鍵殿にこう言ってみて欲しいでござる……ゴニョゴニョ」ヒソヒソ

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「……」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†(おいおいおい…第二人格とかマジか!カッコよすぎるだろ第二人格持ってるとか!しかも本来の性格と正反対の人格とかメチャクチャ燃えるじゃん!)

†鮮血に染まりし深紅の鍵†(しかも利用されているのに気が付けないうちに第二人格は罪を重ねていって…ようやく気がついたときには自分は極悪人のレッテルが張られているとか!)

†鮮血に染まりし深紅の鍵†(そりゃ滅茶苦茶悩んだだろうな、元々は内気な娘なんだし。でもそれに負けることなく今こうしてアリスに立ち向かおうとしてるとか……いいよ!すごくいい!)

†鮮血に染まりし深紅の鍵†(なんだその王道ながらも熱い展開は!ヤベェ…滅茶苦茶心惹かれる!ぶっちゃけ仲間に入りたい…カッコつけて血液よこせとか言わずに味方しときゃよかった…!でも今更掌返すのもなぁ…)

ドロシー「あの、鮮血に染まりし深紅の鍵さん…」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「お、おう…?」

ドロシー「キモオタさんが話した通り…私はアリスに第二人格を植えつけられて、悪事に加担させられました。その事に気がついてからはとてもとても悩んだんですけど……その時私の心の支えになってくれたのは、仲間たちでした」

ドロシー「信頼できる仲間が居たからこそ、私はアリスに立ち向かう勇気を得る事が出来たんです。だから…深紅の鍵さんも私に力を貸してくれませんか?アリスの手で止められた運命≪ディスティニー≫という名の歯車を再び動かす為に…!」キラキラ

†鮮血に染まりし深紅の鍵†(こいつ…!なんて真っすぐな目をしてやがる…!)

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「フッ……お前に俺が纏う漆黒の魔力を使うこなせるとは到底思えんが。だが、いいだろう…!」

†鮮血に染まりし深紅の鍵†「お前の魂の叫び≪シャウト≫…しかと聞き届けたぜ!この†鮮血に染まりし深紅の鍵†…お前に力を貸してやろう…!」

ドロシー「わぁ…!ありがとうございます!一緒に頑張りましょうねっ!」ニコニコ

キモオタ(やれやれwwwこれでルイス殿の部屋に入れますなwwwひとまず一件落着とはいえ、しばらく中二っぽいのは勘弁ですぞwww)

・・・

662 : ◆oBwZbn5S8kKC - 2017/05/08 01:29:19 Kna 290/451

ハートの女王の城 広間

ハートの女王「……」イライライラ

白ウサギ「……」オロオロ

ハートの女王「……ええい遅い!奴等は何をやっておるのだ!戻ってきたら即刻首を刎ねよ!」バンッ

白ウサギ「落ち着いてください、女王様!もうじき戻ってくると思いますので…」

ハートの女王「まったく…この女王を待たせるなどありえん!」イライラ

トランプ兵(偵察部隊)「mission complete…!」ドタバタ

白ウサギ「おぉ…!ようやく戻ってきた!早速状況を伝えt」

ハートの女王「早急に応えよ!憎き雪の女王が大切にしているというガキ共は確かにこっちに向かっているのだろうな?」ギロリ

トランプ兵(偵察部隊)「y…yes!」

白ウサギ「ハートの女王様!ご安心ください、ヘンゼルとグレーテル…そして千代は間違いなくこちらに向かっているようです!もちろん迎撃態勢も整っております!」

ハートの女王「フンッ、当然であろう!見ているがいい…雪の女王に受けたこの屈辱…必ず晴らしてやるのだ…!」

ハートの女王「総員配置に着け!もたもたしている奴は首を刎ねるぞ!」

バタバタバタ

ハートの女王「今一度命じる!我等の目的は雪の女王を慕うガキ共の首を刎ねる事だ!失敗は許さぬ!死ぬ気で任務にかかれ!」

・・・


続き
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」十冊目【後編】

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