1 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:03:00.56 6gh8yCJJ0 1/80

【森の奥】
少年「お前が緋色の魔女か?」

魔女「そうよ。あなたは?」

少年「お前を殺しにきたッ」カチャ

魔女「ふぅん。……でも、まだまだね。」スッ

少年「なっ……ク……ソ……」バタン 

元スレ
魔女「あなたも独りなの?」少年「…………」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1518523380/

3 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:03:41.73 6gh8yCJJ0 2/80

魔女(気を失っちゃった…… こんな棒切れで私を倒そうなんて……」

魔女(人間のくせにボロ雑巾みたいな格好ね……)

魔女(どれ、ここに置いて帰るとしましょ――なにこの傷……)

魔女(こんな小さい子になんでこんな傷が……)

魔女(仕方ないわね……)

4 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:04:39.03 6gh8yCJJ0 3/80



【魔女の家】
少年「……!? ここは……?」

魔女「気づいた? 私の家よ」

少年「なっ!? 今すぐ殺してや――ウッ……」

魔女「痛むの? なにその傷? 私はあなたに傷がつくようなことはしてないはずなんだけど……」

5 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:05:25.32 6gh8yCJJ0 4/80

少年「黙れ! 殺して――」ピキッ

少年(なんだこれは?……身体が動かない……)

魔女「金縛りの術よ。大人しくしてなさい」

少年「くっ……」

魔女「それでなんなの?、その傷は?」

少年「…………」

6 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:06:07.70 6gh8yCJJ0 5/80

魔女「まあいいわ。傷が治るまでは大人しくしててよ」ガチャ

少年「……どこに行くんだ?」

魔女「薬草を採りに行くの。私、回復魔法は使えないから」バタン

少年「……!」 

少年(…………)

7 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:06:40.88 6gh8yCJJ0 6/80



【森】

魔女「ええと…… これと、これと、これか。まったく、人間の薬なんて普段は作らないからよくわからないわね」

魔女(それにしてもあの傷。魔獣の牙や爪につけられたような傷じゃなかった)

魔女(だとしたら……)

魔女「だから嫌なのよ。人間は」

8 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:07:21.54 6gh8yCJJ0 7/80



【魔女の家】

魔女「大人しくしてたかしら?」バタン

少年「……! 金縛りの術をかけたのはお前だろ」

魔女「あら、解くのをすっかり忘れてた。それは悪い事をしたねぇ」ニヤッ

少年「わざとだろ」

魔女「ふふっ……」グツグツ

10 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:07:56.93 6gh8yCJJ0 8/80

少年「何してるんだ?」

魔女「薬草を煮てるのよ。回復魔法は使えなくても、薬なら作れるから」

魔女「これを布にひたしてっと。できたよ。ほら、塗りなさい」

少年「…………」

13 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:09:07.75 6gh8yCJJ0 9/80

魔女「あら、自分で塗れないの?」ニヤニヤ

少年「だから金縛――」

魔女「仕方ない。私が塗ってあげるわ」

少年「なっ…… 辞めろ!」

魔女「ふふっ」カチャ

少年「くっ……」

14 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:09:50.96 6gh8yCJJ0 10/80

魔女「……それにしても本当にひどい傷だねぇ。誰がこんな……」

少年「…………」

少年「……目」

魔女「目?」

少年「俺の目。真っ赤だろ。だからみんなが人間じゃないって……」

17 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:10:49.21 6gh8yCJJ0 11/80

魔女「その傷、村の人間たちにやられたの……?」

少年「ああ。鬼の子だって。バケモノだって。俺、母さんも父さんもいないんだ。生まれた時からずっと独りで……」

魔女(忌み子…… これだから人間は……)

少年「森の奥に悪い魔女が住んでるってみんな言ってて…… だから……だから、そいつを殺して、俺も人間だって村のやつらに認めさせようと……」

魔女「それで、ここまで来たと……」

少年「そうだ。だから絶対にお前を……」

19 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:11:22.61 6gh8yCJJ0 12/80

魔女(独りねぇ……)

魔女「なるほどね」ナデナデ

少年「なっ…… 辞めろ!」

魔女「とにかく傷が治るまでは大人しくしてなさい。私を殺したかったからまずはその傷を治さないと駄目よ」

少年「くっ……」

21 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:11:55.44 6gh8yCJJ0 13/80



【翌朝 魔女の家】

魔女「ほら、起きなさい。ねぼすけ」カ-ン

少年「……! な、何すんだ!」

魔女「大人しくしてなさいとは言ったけど、ここにいる以上少しは働いてもらわないと。ほら、早く起きて」

少年「や、辞め――」

23 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:12:52.02 6gh8yCJJ0 14/80

魔女「はい、まずは朝ごはんよ。食べなさい」

少年「なっ…… 誰が魔女の作った飯なんか食べるか!」

魔女「もう…… 駄目よ、わがまま言っちゃ」

少年「くらえっ」ヒュン

魔女「あら、フォークは投げるものじゃないのよ、お行儀悪い。それにこんなもので私を殺せるわけないでしょ」

少年「クソ……」

24 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:14:01.62 6gh8yCJJ0 15/80

魔女(まったく……)

魔女「あー、私、食料がなくなったら死んじゃうかもなー。全部食べ尽くされちゃったらどうしましょ……」

少年「……!」

少年「俺が食ってやる!」ガツガツ

魔女「ふふ……」

魔女(馬鹿な子…… 可愛いわね)

26 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:15:28.89 6gh8yCJJ0 16/80



【昼】

魔女「ほら、行くわよ」

少年「お前の言うことなんか聞か―― うわっ、なんだこれ!」

魔女「マリオネットの術よ」フフフ

少年「クソ! 辞めろ、離せ!」

魔女「ほら、早くしなさい」

27 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:16:27.09 6gh8yCJJ0 17/80



【森の奥】

少年「なんだよ、これ!」

魔女「薬の材料よ。この森には魔獣に襲われる動物がたくさんいるからね。その子たちのための薬。ほら、早くあなたも探してきて」

少年「なんで俺がそんなこと!」

魔女「私には不死の呪いがかかってるけど、もしあなたに魔法の知識がついたら、それも解かれちゃうかも……」

少年「クソ…… 探してくる!」

魔女「ふふ……」

28 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:17:22.01 6gh8yCJJ0 18/80

少年(絶対隙を見て殺してやる)

魔女「あったー?」

少年「おらぁぁぁ」ガチャン

魔女「あらあら、傷が治るまでは大人しくしなさいって言ってるのに……」パチン

少年「クソ、離せ!」

29 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:18:19.91 6gh8yCJJ0 19/80



【夕方 魔女の家】

魔女「じゃあお風呂入りましょ」

少年「……!」

魔女「ほら、早く脱いで」

少年「一人でできる!」

魔女「駄目よ、怪我してるんだから」

32 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:19:48.73 6gh8yCJJ0 20/80

少年「くそ、辞めろ、辞めろって!」

魔女「言うこと聞かないと魔法かけるわよ?」キラ-ン

少年「うわぁぁ」

魔女「あなた魔法が効きやすいみたいね。ほら早く入って」

33 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:20:36.16 6gh8yCJJ0 21/80

魔女「染みる?」ゴシゴシ

少年「別に!」ウッ 

魔女「強がっちゃって。ほんと可愛いわね」

少年「黙れ!」

魔女(それにしても本当にひどい傷……)

35 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:21:31.45 6gh8yCJJ0 22/80



【夜】

少年「…………」スヤスヤ
 
魔女「寝てるときは大人しいのよね……」

魔女「緋色の目…… 独り…… 私と一緒か……」

36 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:22:37.69 6gh8yCJJ0 23/80



【数日後】

少年「くらえっ」

魔女「はいはい。すっかり元気ね」

少年「クソ! 絶対倒す!」

魔女「そう。楽しみ」

少年「くっ……」

38 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:23:43.57 6gh8yCJJ0 24/80

魔女「じゃあ出かけましょうか」

少年「またか?」

魔女「今日は街に行くのよ」

少年「街?」

魔女「ええ。山を二つ越えた先にあるのよ。結構遠いけど魔法を使えばすぐよ。街で買いたいものがあるの。それに街ならあなたのことを知っている人もいないわ」

39 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:24:56.28 6gh8yCJJ0 25/80

少年「……なあ?」

魔女「何?」

少年「お前、悪い事しないのか?」

魔女「なにそれ?」クスッ

40 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:25:45.60 6gh8yCJJ0 26/80

少年「だってお前悪い魔女だって、村のやつらが…… それなのに悪い事なにもしないから……」

魔女「そんなの村の人間達が勝手に言ってるだけでしょ。私には関係ないわ」

少年「……!」

魔女「ほらそんなことより、早く行きましょ」

少年「……ああ」

41 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:26:32.80 6gh8yCJJ0 27/80



【数日後】

魔女2「邪魔するぞ」

少年「なっ、誰だ! お前」

魔女2「ほぉ…… これが件の小童か」

魔女「あら、いらっしゃい。久しぶりね」

42 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:27:33.68 6gh8yCJJ0 28/80

魔女2「フン。お前が人間の童を召抱えたと聞いてな、見にきたんだが……」

少年「お前も悪い魔女なのか。まとめて殺してやる!」

魔女2「随分な暴れ馬のようだな」

魔女「うふふ~ 可愛いでしょ」

43 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:28:28.88 6gh8yCJJ0 29/80

魔女2「人間を召抱えるなど……お前まさかあの事を忘れたんじゃないだろうな?」

魔女「…………」

魔女「まあいいじゃない。それよりちょうどご飯の時間なの。あなたも食べていってちょうだい」

魔女2「ああ……」

45 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:29:23.20 6gh8yCJJ0 30/80



【夜】

魔女2「じゃあお暇させてもらおう」

魔女「あら、もう帰るの? 君、悪いんだけどお見送りしてあげて」

少年「……!」

魔女2「いらん、儂を誰だと思って……」

少年「……わかった」

魔女2「なっ……」

魔女「いいから、ほら。またね」

46 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:31:14.03 6gh8yCJJ0 31/80



【道】

魔女2「童、どういうつもりだ? 素直について来るとは」

少年「聞きたいことがあるんだ」

魔女2「ほぉ」

47 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:33:06.43 6gh8yCJJ0 32/80

少年「どうして悪いことしないんだ?」

魔女2「ハッ。なんだそれは?」

少年「魔女は悪い事をする奴らってみんな言ってたのに、それなのにアイツもアンタも何もしない。何故だ?」

魔女2「くだらんな。そんなのは人間どもが勝手に言っているだけだ。中にはそういう魔女もいるかもしれんが、少なくとも儂たちは人間に危害を加えたことなど一度もない」

少年「……!」

魔女2「童。お前村のやつらに迫害されてたそうだな。儂たちもそうさ。少し違うだけで人間たちはなにもしてない儂たちを魔女と呼び、攻撃するんだ」

48 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:34:52.67 6gh8yCJJ0 33/80

魔女2「なあ、お前は獅子と山羊どちらが強いと思う?」」

少年「はぁ? そんなの獅子に決まって……」

魔女2「違うんだよ。本当に強いのは獅子じゃない。本当に怖いのは特別な力を持ったものじゃないんだ。本当怖いのはいつだって数だけ多くて声の大きい、力を持たない奴らだ」

少年「……どういう事だよ?」

魔女2「言葉の通りさ。特別な力なんてなんの意味もない。特別な力を持った少数は、なんの力も持たない多数によって迫害されて殺されるんだ。力がないから殺されるんじゃない。数が少ないから殺されるんだ」

49 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:36:09.82 6gh8yCJJ0 34/80

魔女2「魔女も同じさ。どれだけ特別な力を持とうと数の前には無力だ。人間は力を持った私たちを恐れ、そして攻撃した」

魔女2「だから儂たちは隠れて、できるだけ人間と関わらないように生きた。儂たちが、魔女が生きていくにはそれしかなかった」

魔女2「それなのにアイツは人間を信じる事を辞められなかったんだ」

少年「アイツって……?」

魔女2「ああ。お前のよく知る魔女さ」

50 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:37:40.24 6gh8yCJJ0 35/80

魔女2「アイツは優しい。だが儂たち魔女が生きるのにそれは仇となる。どれだけ酷い目にあっても、どれだけ儂らが止めても、それでもアイツは人間を信じることを辞めなかった。魔女と人間が分かり合えると本気で信じていたんだ」

魔女2「昔アイツには人間の友がいた。他の誰に裏切られても、そいつだけは裏切らないと信じていたんだ」

魔女2「だが所詮そんなものはまやかしだ。そいつは自分の立場が危うくなると、すぐにアイツを贄に差し出したよ。結局魔女と人間が分かり合えるわけがなかったってことだ」

51 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:39:03.04 6gh8yCJJ0 36/80

魔女2「最後の頼みの綱を失って、とうとうアイツは壊れた。あの事件以来アイツは森の奥に引きこもって、人間どころか儂ら魔女とも滅多に関わろうとしない」

魔女2「だから驚いた。まさかアイツがお前のような人間を召抱えるとはな」

少年「……俺は人間じゃないさ」

魔女2「なに?」

少年「バケモノだからな……」

魔女2「フン……」

52 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:40:34.85 6gh8yCJJ0 37/80

魔女2「見送りはここまででいいぞ。あとは魔法を使えば一瞬で帰れる」

少年「ん、ああ」

魔女2「童」

少年「……?」

魔女2「アイツを頼むぞ」ドロン

少年「なっ……」

少年(…………)

54 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:41:54.02 cTcpDJh9d 38/80



【数年後】

青年「てやぁぁぁぁ」カチャ

魔女「はいはい、暴れないの」ヒュッ

青年「クソ…… いつになったらお前を殺せるんだ……」

55 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:43:18.57 cTcpDJh9d 39/80

魔女「ふふ。随分強くなったじゃない。体もこんなに大きくなっちゃって」

青年「おかげさまでな」

魔女「まあ、まだまだだけどね。私を見下ろすくらい大きくなったのに、ねぼすけは相変わらずだし……」

青年「ほっとけ!」

魔女「ふふっ……」

57 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:44:44.16 cTcpDJh9d 40/80

青年(こいつと暮らすうちに、気づけばいつも乗せられて飯を食わされたり、鍛えられたりしていた)

青年(そうして気づけば、初めてここに来てからもう何年も経っている)

青年(俺は一体何をしてるんだ……)

青年(まあどうせ村に戻ったところで俺の居場所なんて……)

58 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:46:35.35 cTcpDJh9d 41/80

魔女「それにしても、やっぱり人間ってすぐ成長しちゃうのね」

青年「ああ?」

魔女「私はこの姿になるまでもっとたくさん時間がかかったわよ。それにもうこれ以上は歳もとらないし死にもしないわ」

青年「不死の呪いってやつか?」

魔女「ええ。魔女には生まれつき不死の呪いがかけられてる」

59 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:48:03.04 cTcpDJh9d 42/80

青年「何が呪いだ。死なないなんていいことだらけじゃないか」

魔女「そうかしら…… 私はあなたと一緒に歳をとって、死にたかったわ……」

青年「なぜだ? 死なないならなんだってできる。なんなら俺にその呪いをかけて欲しいくらいだ」

魔女「駄目よ。そんなの辛いもの……」

青年「辛い?」

魔女「そうよ。だって寂しいじゃない。あなたも仲良くなった森の動物たちも、みんな私だけを置いてすぐに死んでいっちゃう。そんな辛い思いするのは私たちだけで十分よ」

60 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:49:33.95 cTcpDJh9d 43/80

青年「……フンッ。安心しろ。お前はすぐに俺が殺してやるよ」

魔女「あら、それは頼もしい。じゃあ頑張ってもっと強くなってね」

青年「くっ……」

61 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:51:04.32 cTcpDJh9d 44/80

魔女「ふふ。じゃあそんなあなたにお使いでも頼もうかな」

青年「お使いだと……また俺を馬鹿にして――」

魔女「もう一人でお使いくらいできると思ったんだけど…… あなたにはまだ早かったかしら?」ニヤッ

青年「チッ…… わかったよ。早く言え。何を買って来るんだ?」

魔女(本当この子は変わらないわね。可愛い……)

62 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:52:35.91 cTcpDJh9d 45/80

魔女「じゃあ街に行ってこれとこれ買ってきてちょうだい。歩いて行くことになるけど大丈夫?」

青年「当たり前だ! すぐ戻ってきて殺してやるよ」

魔女「ふふ、楽しみね。行ってらっしゃい」

魔女(バイバイ……)

63 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:54:15.40 cTcpDJh9d 46/80



【数日後 街】

青年「ふぅ…… やっと着いた」

青年(やっぱり魔法を使わないと結構遠いんだな)

青年(えっと…… 店は……)

魔女2「おい!」

青年「え……」

魔女2「やっと見つけたぞ。何をしてるんだ!?」

青年「何って買い物に……あんたこそどうして?」

64 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:55:38.76 cTcpDJh9d 47/80

魔女2「やはり知らんのか……」

青年「知らないって、何を?」

魔女2「アイツが……緋色が勇者に倒された……」

青年「!?」

65 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:57:17.62 cTcpDJh9d 48/80



【魔女の家】

魔女「…………」

青年「なんだこれ……眠ってるのか?」

魔女2「ああ。魔女は不死だ。だから勇者は呪いの剣を使って呪いで倒したんだろう」

青年「呪い?」

魔女2「眠りの呪いだ。おそらく緋色は千年はこのまま眠ったままだろうな」

66 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 21:58:33.75 cTcpDJh9d 49/80

青年「千年……! その呪いを解く方法はないのか!」

魔女2「わからん。先刻から目覚めの魔法を試してはいるが一向に目を覚ます気配がない…… 呪いをかけた勇者ならあるいは……」

青年「そんな……」

魔女2「近頃人間どもが、魔女狩りに精力的だという噂はあった。だから儂たちも身を潜めていたのだが…… おそらく村のやつらが緋色の討伐を勇者に依頼して、それを察知した緋色は、お前を遠ざけるために街へ使いに出したのだろう…….」

68 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:00:10.71 cTcpDJh9d 50/80

青年「クソ……!」

魔女2「おい! どこに行く?」

青年「勇者のところだ」

魔女2「待て! お前じゃ勇者には……」

青年「そんなこと知るかよ! このまま千年眠ったままなんて、絶対に認めねぇ! それに……アイツを倒すのは俺の役目だ。それを勇者なんかにとられてたまるかよ!」バタン

70 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:01:51.99 cTcpDJh9d 51/80



【村】

村人A「いや~ 勇者様、お見それいたしました」

村人B「まさかあの魔女を倒してしまわれるとは。いやはや流石でございます」

勇者「なに、なんてことはない。悪は滅びるそれだけのことだ」

村人A「これはこれは。流石勇者様。あっぱれでございますな」

村人B「あっはっは」

72 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:03:14.41 cTcpDJh9d 52/80

青年「おい!」

勇者「ん? なんだ貴様。随分怪しい風体だな。そのフードをとるのだ」

青年「……うして」

勇者「おい、人の話を聞いて――」

青年「……どうして、どうしてアイツを傷つけた!」

勇者「なんのことだ?」

73 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:04:44.77 cTcpDJh9d 53/80

青年「魔女だ。森の奥の緋色の魔女のことだ! どうして……どうしてアイツを……」

勇者「フッ。何かと思えば。悪事を働くものを成敗するのは勇者として当然のこと。貴様こそ何を言ってい――」

青年「……見たのか?」

勇者「ん?」

青年「アイツが……魔女が悪さをしているところを見たのかと聞いているんだ」

74 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:06:11.79 cTcpDJh9d 54/80

村人A「何を言っているんだお前。あの魔女は昔から悪い奴だと言い伝えられて……」

青年「だから! それを実際に見たことがあるのかと聞いているんだ!」

村人B「そんなの見なくたって分かるさ。魔女なんて悪い奴にきまっているんだ!」

青年「お前に……お前にアイツの何が分かる!」

村人AB「ひっ……」ビクッ 

75 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:07:51.66 cTcpDJh9d 55/80

青年「この村がどうして魔獣に襲われないか知っているか? どうしてこの村の人間が魔獣に襲われないか知っているのか?」

勇者「落ち着け。貴様何を言っているんだ」

青年「この村が魔獣に襲われないように……魔法を使って守っているのが……自分を傷つけた人間を誰よりも憎んでいるはずなのに、それなのに長い間ずっと人間を守り続けているのが……それが誰なのか知っているのか!」

青年「そんな優しい魔女がいるって誰か知っているのか! 人間にたくさん傷つけられて、迫害されて、それでも人間を愛することを辞めない魔女がいることを、誰か知っているのか!」

青年「どうして……どうしてアイツばっかりこんな目に…… どうして!!!」バサッ

76 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:09:13.43 cTcpDJh9d 56/80

勇者「貴様……その緋色の目。もしや魔女のしもべか」

村人A「……! アイツは鬼の子!」

村人B「勇者様。アイツは数年前に姿を消した鬼の子でございます。どこかでくたばったとばかり考えていましたが、まさか魔女のしもべになっていようとは……」

勇者「ふむ……」

77 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:10:35.80 cTcpDJh9d 57/80

村人A「アイツは化け物だ、人間じゃない! 直ちに退治を!」

青年「……!」ピクッ

青年「……人間? ……人間だって? じゃあ、お前らの言う人間ってなんだ?」ゴゴッ

青年「徒党を組むことか? 徒党を組んで本当は弱くて……優しい魔女を……傷つけることか? それが人間なのか!」ゴゴゴ

79 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:12:24.03 cTcpDJh9d 58/80

村人A「ひっ…… 化け物……」ガクガク

勇者「くっ、貴様。その禍々しいオーラ。ついに本性を現したな。この勇者アロガンス3世が退治してくれよう」

青年「来いよ……お前ら全員……ぶっ殺してやる!」ゴゴゴ

勇者「覚悟! たぁぁぁっ!」

80 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:13:40.41 cTcpDJh9d 59/80



村人A「…………」ピクピク

村人B「…………」ピクピク

勇者(くっ…… なんなんだこいつ…… 強すぎる……)

82 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:15:09.53 cTcpDJh9d 60/80

青年「……教……ろ」ハァハァ

勇者「……?」

青年「呪いの解き方だ! アイツにかけた呪いの解き方を教えろ!」

勇者「ハッ。そんなものはないさ。一度かかった呪いが解けるのは、時間の経過でだけだ。千年後まであの魔女は眠ったままさ」

青年「……ッ、クソ!」ガンッ

84 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:16:26.32 cTcpDJh9d 61/80

勇者「残念だったな」フッ

青年「……!」ギロッ

勇者「……ッ」ビクッ

青年「…………」

85 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:17:44.20 cTcpDJh9d 62/80

青年「……失せろ!」

勇者「……えっ?」

青年「そいつらを連れて、さっさと俺の前から失せろと言っているんだ!」

勇者「……! チッ……」スタコラサッサ-

87 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:19:15.93 cTcpDJh9d 63/80

青年(…………)

青年(やっぱり俺は……)

青年「化け物なのか……」

88 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:21:00.27 cTcpDJh9d 64/80



【魔女の家】

魔女2「おい、お前……その血……何があった?」

青年「なあ、人間ってなんなんだ?」

魔女2「……ッ」

青年「昔アイツが言ってたんだ。人間は愚かで哀れで醜くて、それでも……それでも美しいと」

青年「本当なのか? 人間は美しいのか? アイツらは……人間たちはあんなに優しい魔女を……そんな奴らが本当に美しいのか……?」

89 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:22:16.98 cTcpDJh9d 65/80

青年「俺は殺せなかった……人間達が憎くて憎くて仕方ないのに……アイツを傷つけた人間達が憎いのに……それなのに……何をされても人間を愛し続けたアイツのことを思い出したら、殺せなかった……」

青年「なあ、俺は人間なのか? それとも化け物なのか? どっちつかずの俺は……なんなんだ……」

青年「人間の輪にも入れない。アイツを助けられもしない……そんな俺はなんなんだ……生きてる価値なんて……」

90 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:23:59.48 cTcpDJh9d 66/80

魔女2「いいんだよ……お前はそれで……そんなお前を、そんな優しいお前を緋色は愛したんだ……」

青年「…………」

青年「うっ……なんで……なんでこんな出来損ないの弟子を……」

魔女2「…………」

92 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:25:27.09 cTcpDJh9d 67/80



青年「なあ、俺に魔法をかけてくれ」

魔女2「魔法……だと?」

青年「ああ。不死の魔法。いや呪いか。それを俺にかけてくれ」

魔女2「なっ…… まさかお前、緋色が目覚めるのを待つつもりか?」

青年「俺はまだあの人にもらった恩を何一つ返せちゃいない。それを返せる日が来るまで俺は待ち続ける」

95 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:26:48.38 cTcpDJh9d 68/80

魔女2「千年だぞ? お前が今まで生きてきた何十倍もの時間だ。それを一人で過ごすつもりか?」

青年「いいさ。いつ魔獣や盗賊にこの屋敷が襲われるかわからないからな。あの人を置いて、ここを離れるわけにはいかない……」

魔女2「それがどれほどの覚悟がいることか……わかっているのか?」

青年「それであの人にもう一度会えるなら、あの人の笑顔を見ることができるなら、そのためなら俺はどうなろうと構わない……!」

96 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:28:05.28 cTcpDJh9d 69/80

魔女2「……わかった。後悔……するなよ?」

青年「…………」コクッ

魔女2「緋色は幸せ者だな…… お前のような弟子を持てて…… 」

魔女2「いくぞ?」

魔女2「ハァァァァッ」キラ-ン

100 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:29:29.02 cTcpDJh9d 70/80



千年。
それはどれほどの時間なのだろう。
村は街となり、滅び、そしてまた新たな村が起こり、街となる。それが幾度となく繰り返される中、青年は一人生きた。
気の遠くなるほどの永い時間を独り。

101 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:30:54.89 cTcpDJh9d 71/80

時に魔獣を追い払い、時に盗賊を退け、ひたすら流れゆく時間を、一秒一秒しっかりと知覚させられ、独りの寂しさに溺れ、独りの恐怖に怯え、それでも青年は待ち続けた。
たった独りで魔女を守り続けた。

102 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:32:14.44 cTcpDJh9d 72/80

そうして悠久にも勝る時間が流れ、常しえの日々を乗り越え、雨垂れが石を穿つ頃、遂にその時は訪れた。

103 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:33:29.34 cTcpDJh9d 73/80



【千年後】

魔女「……ん、……ん~」

青年「……!」

魔女「あら、私……どうしてここに……」

青年「……ああ……ああ!」

魔女「あなたも……なんで」

青年「やっと……やっと会えた……!」

104 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:34:46.29 cTcpDJh9d 74/80

魔女「……そう。どうやら随分待たせちゃったみたいね……ごめんなさい」

青年「いいんだ。そんなことどうだっていいんだ。この千年アンタに会うためだけに生きてきた。それが叶っただけで……もう……」

魔女「千年……そう……私そんなに眠っていたのね」

105 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:36:19.48 cTcpDJh9d 75/80

青年「ああ。無防備な寝顔たっぷり見させてもらったぞ」ニヤッ

魔女「あら、随分生意気言うようになったわね」

魔女(涙で顔もぐしゃぐしゃのくせに)

青年「不老でも精神は成長するってことだ。どうだ、これで俺も少しはアンタに見合う――」

106 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:37:38.87 cTcpDJh9d 76/80

魔女「ふぁ~わ~。やっぱり私まだ起きていないかもしれないわ」

青年「は? 何言って――」

魔女「だってアレされてないもの。アレ」

青年「アレ?」

107 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:39:03.09 cTcpDJh9d 77/80

魔女「そうよ。お姫様が目覚めるのにはアレが必要でしょ?」クスッ

青年「……ッ/// お前、お姫様ってガラじゃねぇだろ!」

魔女「あら、そんなことないわよ。あー、アレしてくれないともう一回眠っちゃうかも……」

110 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:40:32.63 cTcpDJh9d 78/80

青年「くっ…… はぁ……やっぱアンタには敵わねぇなぁ……」

魔女「ふふっ。ほら、早く」

青年「チッ…… ほらよ」

青年「……これで満足か?」

111 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:41:50.34 cTcpDJh9d 79/80

魔女「そうね……じゃあ、おはよう……ってことでいいのかしら?」ニコッ

青年「ったく……遅ぇんだよ、ねぼすけ」

112 : 以下、5... - 2018/02/13(火) 22:43:08.20 cTcpDJh9d 80/80

これでおしまいです
ここまで付き合ってくださった方ありがとうございました
連投規制で遅くなってしまい申し訳ありません
何かありましたらTwitterまでお願いします
https://twitter.com/yuasa_1224

普段は地の文ありの普通のお話を書いているので、そちらも是非よろしくお願いします
「最適な時間の戻し方」「十年前から電話がかかって来た」などいくつかあります
最後宣伝みたいになってしまって申し訳ありません

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