あやめ速報-SSまとめ-

空手家「オォォォォッス！！！　俺様の正拳で殴り殺してやる！」

男「次は空手家か……」

男「空手の弱点を教えてやろう」

空手家「そんなもんあるか！　空手は無敵だ！」

男「空手は突きや蹴りで戦うから、こうやって腕を取ってしまうと」ｶﾞｼｯ

空手家「あうっ！？」ﾐｼｯ

男「もうどうしていいのか分からない」ｸﾞｲｯ

空手家「あたたたたた……！　いででででででで……！　離せ、離せぇっ！」

男「離してやるよ。ただし、無傷でというわけにはいかないがな」ｸﾞｲｲｯ

ボキッ！

空手家「ぎぃやぁぁぁぁぁっ！！！」

柔道家「私が相手だ！」

男「柔道の弱点を教えてやろう」

柔道家「面白い、教えてもらおう！」

男「柔道は投げや寝技は恐ろしいが、打撃はまったくできない」

男「だから、打撃で攻めれば――」

バキッ！　ドカッ！　ボゴッ！

柔道家「ぎゃっ！　ごふっ！　ぐへっ！」

男「このように一方的に倒すことができる」

柔道家「無念……」ﾄﾞｻｯ

ボクサー「俺は今までの奴のようにはいかないぜ！」

男「ボクシングの弱点を教えてやろう」

ボクサー「先手必勝！」ﾀﾞｯ

男「ボクシングはパンチだけで戦う競技ゆえ、下半身は一般人よりも貧弱だ」

男「ゆえに、ローキックを一発当てれば――」

ベキィッ！

ボクサー「ぐぎゃああああああっ！　折れたぁっ、足が折れたぁぁぁぁぁっ！！！」ｺﾞﾛｺﾞﾛ…

男「割り箸を折るよりたやすく足が折れてしまう」

プロレスラー「ぐへへへ……捻り潰してやる！」

男「プロレスの弱点を教えてやろう」

プロレスラー「プロレスには打撃も寝技も関節技もあるんだぜ！」

男「台本とちがうぞ……今は後ろを向かなきゃ」

プロレスラー「あっ、そうだっけ」ｸﾙｯ

男「ふんっ！」

ゴッ！

プロレスラー「あら……？」ﾄﾞｻｯ

男「プロレスラーは“台本ではこうだぞ”といえばどんな命令にも簡単に従ってしまう」

ナイフ使い「ヒヒヒ……切り刻んでやるぜ」

男「ナイフを持っているな？」

ナイフ使い「武器は卑怯だなんていうなよォ～？」

男「ナイフの弱点を教えてやろう」

ナイフ使い「！？」

男「ナイフは抜く、相手を刺す、の２アクションが必要だが――」

男「素手なら相手を殴る、の１アクションだけでいい」

男「つまり、殴り続ける限り、ナイフ使いは攻撃できない」

バキッ！　ゴッ！　ガッ！　ガスッ！　ボゴッ！

ナイフ使い（こ、攻撃できねぇ……！）

ﾄﾞｻｯ…

男「いいサンドバッグだったよ」

剣士「いざ勝負！」ﾁｬｷｯ

男「剣の弱点を教えてやろう」

剣士「あいにく既に抜刀している。君に勝ち目はない！」

剣士「てやぁぁぁぁぁっ！」ﾌﾞﾝｯ

ガッ！

剣士「！？」

剣士（壁に刃が引っかかって……！）ｸﾞｯｸﾞｯ…

男「剣は狭いところだとまったく戦えない。ここをフィールドに選んだのもわざとだ」

剣士（こいつ……なんという頭脳！）

バキィッ！

剣士「ごふぅっ！」ﾄﾞｻｯ

ガンマン「HAHAHA、ユーの額にロックオンね！」

男「拳銃の弱点を教えてやろう」

ガンマン「ワット！？」

男「こうやって、銃口に指を入れてしまえば」ｽﾎﾟｯ

ガンマン「オー、クレイジー！」

男「銃は暴発するから使うことができない」

ガンマン「アワワ……オーマイガッ！」

男「ってのは嘘だがな」

ドゴォッ！

ガンマン「オーノー！」ﾄﾞｻｯ

狙撃手「ならば、狙撃してやる！」ﾁｬｯ

男「スナイパーの弱点を教えてやろう」

男「スナイパーは遠くの敵を狙撃するのに長けているから」

男「こうして接近してしまえばもう怖くない」

狙撃手「うわぁっ！？」ﾊﾞﾝｯ ﾊﾞﾝｯ

男「さらに、遠くの敵を撃つのに慣れすぎているから、近くの敵には全く当てられない」ｻｯ ｻｯ

狙撃手「弾切れだぁぁぁ！」ｶﾁｯ ｶﾁｯ

男「はっ！」

ドズゥッ！

狙撃手「ぐはぁぁぁ……っ！」ｶﾞｸｯ

ミサイル発射係「ならばミサイルで……！」

男「ついに俺もミサイルで狙われる身になったか。光栄だな。光栄ついでに」

男「ミサイルの弱点を教えてやろう」

ミサイル発射係「なに！？」

男「たしかにミサイルは恐ろしい兵器だ」

男「だが、発射される前にボタンを押す奴を仕留めてしまえば――」

バキィッ！

ミサイル発射係「ぎゃふっ！」

男「簡単に無力化できる」

炎能力者「オレ様の能力で燃やしてやるぜ！」ﾎﾞﾜｯ

男「とうとう異能力者が来たか……」

炎能力者「オマエにゃ、多額の賞金がかかってるからなぁ」

男「だが、恐れるものでもない」

男「炎能力の弱点を教えてやろう」

炎能力者「オイオイ……まさか水だなんていうなよ？　水ぐらい簡単に蒸発できるぜ！」

男「……」ﾊﾟｯﾊﾟｯ

炎能力者「！？」

男「小麦粉をまぶした……今、お前が炎を使えば≪粉塵爆発≫を起こす」

炎能力者「あっ……」

男「あとは……殴るだけだ」

バキィッ！

氷能力者「絶対零度で凍らせてあげましょう……」ﾋﾞｭｵｵｵｵｵ…

男「氷能力の弱点を教えてやろう」

男「絶対零度はしょせんマイナス273℃でしかない」

男「一方、今俺が持ってる100円ライターの炎は約800℃……」ｼｭﾎﾞｯ

男「100円ライターを燃やしてるだけで、絶対零度は俺には届かない」ﾒﾗﾒﾗ…

氷能力者「そ、そんなっ！？　絶対零度が通用しない！？」ﾋﾞｭｵｵｵｵｵ…

男「あとは近づいて……殴るだけ」

バキィッ！

風能力者「町をも吹き飛ばす竜巻を喰らえッ！」

ビュゴォォォォォッ！

男「風能力の弱点を教えてやろう」

風能力者「あ、あれ！？　吹き飛ばされない！？」

男「どんな風にも、“目”というものがある。そこに入ってしまえば、簡単に無力化できる」

風能力者「風を……読んだのか！　まさかプロゴルファー！？」

男「あとはもちろん……殴るだけ」

バキィッ！

土能力者「ガハハハッ！　大地の恐ろしさを思い知らせてやる！」

男「土能力の弱点を教えてやろう」

男「土って時点ですでに負けている」

土能力者「な、なんだとォ！？　地割れよ、ヤツを呑み込めェ！！！」

ピシピシピシッ！

土能力者「あらっ！？　自分の真下に地割れができちまった！」

土能力者「うわぁぁぁぁぁっ！！！」ﾋｭｩｩｩｩｩ…

男「殴るまでもなかったな」

雷能力者「ゆくぞ……吾輩の雷、受けてみい！」

バリバリッ！　ズガガァンッ！

雷能力者「ふっ、終わった……」

男「雷能力の弱点を教えてやろう」ｼｭｩｩ…

雷能力者「効いてないだと！？」

男「ゴム製品を身につけていれば、雷は無効化できる。ちなみに俺は消しゴムを持っている」

雷能力者「しまった……ッ！」

男「たまには蹴ってみるか」

ドゴォッ！

重力能力者「下級能力者を倒したぐらいでいい気になるな！　覚悟しろ！」

男「重力能力の弱点を教えてやろう」

重力能力者「お前の体に100倍の重力をかけてやる！」

ズシッ！

男「重くなった状態でこうやって抱きついてしまえば――」ｶﾞｼｯ

重力能力者「ゲッ！？　や、やめっ！」

重力能力者「ぎえええええええええっ！！！」ﾊﾞｷｺﾞｷﾎﾞｷﾒｷﾎﾞｷ

男「筋トレで無理な重さのバーベルを持った人状態になってしまう」

時止め能力者「時間を止めて、と」ﾋﾟﾀｯ

男「時間停止能力の弱点を教えてやろう」

時止め能力者「止まってるうちに攻撃だぁっ！」

ドゴッ！

時止め能力者「ぐはっ……」ﾄﾞｻｯ

男「時間停止能力者はしょせん無抵抗の相手にしか粋がれない」

男「俺のような時間停止に対応できる人間を相手にすると、とたんに脆くなる」

宇宙人「ワタシハ宇宙人デス」

宇宙人「アナタガタヨリ遥カニ優レタ科学力ヲ持ッテイマス。アナタヲ抹殺シマス」

男「宇宙人の弱点を教えてやろう」

男「……」ｺﾞﾎｯｺﾞﾎｯ

宇宙人「コ、コレハ……私ガ弱点トスルウイルス！？」

宇宙人「ウギャァァァァァ……」ﾄﾞｻｯ

男「地球人にとっては大したことのない微生物やウイルスに耐性がないことが多い」

竜「ギャオォォォォォンッ！！！」ｽﾞｼﾝ…

男「ドラゴンの弱点を教えてやろう」

男「ドラゴンというのは、ようするにでかいトカゲだ」

男「だからドライアイスを投げつけると――」ﾎﾟｲｯ

竜「グゥ、グゥ、グゥ……」

男「あっさり冬眠してしまう」

神「力をつけすぎた愚かな人間よ……私が相手になりましょう」

男「神か……」

男「神の弱点を教えてやろう」

神「全知全能たる私に弱点などありませんよ」

男「ちなみに俺は……神を信じてない」

神「な、なんですって！？」

男「神の力は神を少しでも信じてる者には絶大な力を発揮するが、そうでない者には無意味だ」

神「なぜだ！？　なぜ神を信じない！？」

男「なぜなら……俺が“最強”だからだ」

男「自分より劣る存在を信仰する者はおるまい」

バキィッ！

神「この男……神を超越している……」ｶﾞｸｯ

男「やはり、神でも俺を倒すことはできないのか……分かり切っていたことだがな」

…………

……

男「……夢か」

男「俺の弱点を教えてやろう」

母「あんた！　昼過ぎまで寝て！　今日こそハロワ行きなさいよ！」

母「まったく……このごく潰しが……！」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ…

男「……」

男「現実には……勝てねえ」







おわり