父「今日からお前と同じだ、無職だ」
無職「冗談だろ?」
父「お前を蔑ろにしすぎた、俺はお前をもっと知らなければならない」
無職「…」
元スレ
父「お前の気持ちを理解するために仕事を辞めて来た」無職「え?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1330391624/
父「お前はどんな事に興味があるんだ?教えてくれ」
無職「ちょっと待ってくれよ父さん、仕事を辞めたって?どうすんだよこれから」
父「…分からん、お前と同じだ。不安でたまらない」
無職「…何でこんな事するんだ」
父「お前が言ったんだぞ?父さんは俺のことなんて何も分かってないと」
父「学生からそのまま公務員になった私には確かに無職の気持ちは分からない、だから辞めたんだ」
男「生活はどうするんだ?」
父「…仕事を探す、ただ以前の職のコネは使わず、職歴無しで面接は受けるつもりだ」
男「父さんの年齢で採ってくれるところなんてあるわけないだろ」
父「お前も職歴が無い、私だけが職歴を履歴書に書くわけにはいかんだろう」
男「職歴詐称になる」
父「かまわない」
男「…」
父「仕事の以外の事を教えてくれ、お前は昔は野球が好きだったじゃないか。今は何が好きなんだ?」
男「…何も」
父「そうか、だが一日中部屋でパソコンをしてるじゃないか。あれは何をしてるんだ?」
男「…特に、掲示板に書き込んだり、スレを立てたり…父さんに言っても分からないよ」
父「ゲームみたいなのか?小さい頃に一緒にマリオカートをやったな」
男「そういうのじゃない」
父「じゃあどういうのなんだ?」
男「…」
父「黙ってたら分からんだろう」
男「くだらない事だよ、俺と似たような奴が集まって。馴れ合ってるだけ…」
父「…」
男「テレビとか新聞で時々犯罪者の集まりみたいに言われてる。2ちゃんねるってサイトだよ」
父「そうか」
男「一日中そこ見て過ごしてる」
父「なら私もそれを見よう」
男「やめてくれ」
父「止めても自分のパソコンで私は見る」
男「…分かった、でも最低限やったら駄目な事があるんだ」
父「何だ?」
男「個人情報は書き込まない、URLを安易に踏まない、画像、動画をアップロードしない」
父「…?」
男「父さんがいつも見てるサイトとは違うんだ、できれば書き込まないで欲しい」
父「お前は書き込んだりしてるんだろう?」
男「とりあえず数日は見てるだけで書き込まないで欲しい、取り返しがつかないから」
父「お前は何かすごい所で遊んでるんだな」
男「…馬鹿みたいだ」
父「分かった、見てるだけに留める」
数日後
父「…男、お前はあんな所で一日中遊んでるのか」
男「…」
父「止めろとは…言わないよ…私は無知だった」
男「…」
父「…そろそろ書き込んでいいか?大分分かってきた」
男「分かってきたって?」
父「あの場所では何よりも平常心が大切だってことだな、そして常にリスク管理を要求されている」
男「…」
父「平常心を失ったもの、リスク管理を怠った者は徹底的に攻撃に晒される」
男「暇つぶしのおもちゃを探してるだけだよ」
父「その感覚も少し理解できてきたよ」
男「…」
父「…」
父「怖いものだな…」
父「今日もまた些細なアップロードから身元がバレた少年が一人いたな」
男「…うん」
父「不思議な感覚だ、掲示板を通して見ていると必死で抵抗しているその少年の姿を笑っている自分がいる」
男「…」
父「私はそういう人間だったのだなと、後になって気づく」
男「…普通はそういう事は考えない、っていうより父さんの歳になる前に人がどれだけクソかって事に気づかされる」
父「そうだな」
男「…」
父「…今日は卑猥な画像や動画を一日中集めていた」
男「…」
父「お前も同じように集めているのか?」
男「…」
父「…親子であっても相手を知るってのはつらいものだな…」
男「…普通はこんな所まで踏み込んでこない」
父「…お前の事を知ろうとするのがあまりに遅すぎた」
父「ところでお前もロリコンか?」
男「…朝一の質問がそれかよ」
父「興味がある、私も大分感化されてきた。案外ロリコンなのかもしれんな」
男「こういう話はしたくない」
父「冗談だ、ただ妹に何かしてないか心配でな」
男「それは絶対にない」
父「掲示板でも冗談で言ってるのが大半だとは思うが時々いるからな、お前はそうじゃないんだな?」
男「違うよ、信じてくれ」
父「…そうか、安心したよ」
妹「おはよー、って兄ちゃんがごはんこっちで食べるとか珍しい」
父・兄「…おはよう」
父「妹は今日も仕事か?」
妹「今日、火曜日だよお父さん。お父さんも早く次の仕事見つけてよね」
父「ああ…」
兄「…」
父「仕事見つけてよねって言葉はプレッシャーだな」
兄「俺にはもう何も言わない…」
父「…今日ハローワークに行くか」
兄「…」
妹「お父さん兄ちゃんご飯おかわりつごうか?」
父「あ、悪いな」
兄「…じゃあ俺も」
妹「はいっ」
父「まあ、気持ちが向いてからでいいか。明日できることは今日やらな…」
兄「…行こう」
父「…え?」
兄「今日行こう」
父「…どうせハローワークになんてろくな求人無いぞ?」
兄「何でそうやる気失せる事言うんだよ」
父「…ああ悪い」
妹「何?兄ちゃんも仕事探すの?」
男「悪いか」
妹「いや珍しいなって」
男「…俺だって必死でやれば」
父「そうあんまり前のめりになると失敗するぞ」
妹「お父さんはもっと危機感持ってよ、その歳で無職とか兄ちゃんより希望無いじゃん」
父「…」
男「はは…」
妹「…」
男「…なんだよ」
妹「…何か兄ちゃんが笑うの久しぶりに見た気がして」
父「無職になった甲斐があったな」
妹「早く仕事見つけて、お願い」
父「はい…」
妹「じゃあ行ってくるね」
父「じゃあこっちも準備していくか」
男「うん」
男「…」
父「どうした?」
男「いや…」
父「男、いい仕事が無かったら帰りにバッティングセンターにでも寄って遊んで帰るか」
男「…そうだね」
父「あんまり気にするな、見つからなくて当然って気持ちで行こう」
男「…いや、生活費とかどうなってんのかなって今ちょっと気になって」
父「貯金切り崩してる、あと車売った」
男「…ごめんな」
父「ほら行くぞ…久しぶりだな、バッティングセンター行くの」
男「ハローワークはついで」
父「そうだ」
父「俺はまず失業給付金の手続きからか」
男「俺は先に探してみるよ」
父「ああ、後でな」
男「うん」
職員「じゃあ、こちらの書類渡しときますんで」
父「はい、早く次の仕事を見つけるように頑張ります」
職員「仕事見つけると失業給付受けられませんので」
父「わかりました」
職員「………」
父「え?」
職員「じゃあ次の方ー」
父「…」
父「失礼します」
カキーン、カキーン
男「今日はとりあえず相談員の人に色々話をしたよ」
父「そうか」
男「…やっぱり厳しいみたいだよ」
父「そうだな」
男「父さんは本当に職歴無しで探すの?」
父「失業給付の係りの人には書類行ってるからどこで働いてたのか知ってたよ」
男「やっぱりコネとか使って探した方がいいよ」
父「そうだな」
男「…うん、俺とは違ってこれまで頑張って働いてきたんだから」
父「…何を頑張ってたんだろうな、やるべき事もせず、子供の事も知ろうとせず」
男「…」
父「クソっ、全然バットに当たらない」
男「へたくそだね」
父「…お前は上手いな」
カキーン
父「だけどコネは使わない、職歴も使わない」
男「…」
父「くそ、結局全然当たらなかったな」
男「…」
父「…帰るか」
男「うん」
父「妹も帰ってくる、メシの準備でもしとこう」
男「そうだね」
父「…男、お前がどんな気持ちだったか少しだけだが分かってきた気がするよ」
父「蔑ろにされる、バカにされるってのは本当につらいもんだな」
男「…」
男「…何か今日言われたの?」
父「…」
男「家に帰ろう」
父「…ああ」
妹「ただいまー、家の前までしてたけど何?美味しそうないい匂い」
男「父さんが鍋作ってる」
妹「ただいま」
男「あ、ああ。おかえり」
妹「兄ちゃんに言うの久しぶりだね」
男「…そうだな」
父「妹も帰ってきたのか?」
妹「あ、うんー」
タッタッタッタッ
妹「うわ、おいしそう。ハローワークどうだった?」
父「褒め言葉と嫌な事を同時に聞くんじゃない」
妹「あはは、兄ちゃんも早くこっちおいでよ。食べよう」
兄「ああ、今行くよ」
fin