古代遺跡 発掘現場
発掘隊隊長「ふむ、この辺りには古代人の住居の遺跡がたくさんあるようだ」
隊員「隊長!見てください、こんなに沢山『本』が出土しましたよ!」
隊長「おお!素晴らしいじゃないか!以前発見された『本』とは別の物か?」
隊員「詳しくは調査が必要ですが、ほらここ」
隊長「これは、失われた古代文字だな……どれどれ、ガ、ヴ……ガヴリール」
元スレ
未来人「ガヴリールドロップアウト……?」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1512922369/
隊長「ガヴリールドロップアウト、だな」
隊員「今回出土したのは全て同じ名前の『本』のようです」
隊長「同じ?ほう、確かに名前は同じだが、描いてある『絵』違うようだ」
隊員「あ、隊長!よく見ると、ここの文字も違います!」
隊長「これは……なるほど、これは通し番号を意味する文字だ」
隊員「これが1、こっちは2……やはり詳しく調べる必要がありますね」
研究室
研究員「今回発見された遺跡は古代人の住居の跡でした」
隊長「ああ、それもかなりの大都市のようだった」
研究員「そして、どの住居からも同じ名前の『本』が出土しています」
隊長「『ガヴリールドロップアウト』だな」
研究員「はい、通し番号の入った『ガヴリールドロップアウト』は1番から始まり、発見された物だと300番が最後になります」
隊長「300個の『ガヴリールドロップアウト』か」
研究員「しかし未発見の番号の物もありますし、状態が悪く中身を確認できない『ガヴリールドロップアウト』も多い」
隊長「これからの発掘作業で発見できれば良いのだが……しかし状態が良い『ガヴリールドロップアウト』もあったろう?そちらの解読はどうだ?」
研究員「進んでおります……現時点で判明している内容から推測しますに、これは『聖書』と呼ばれる類の『本』ではないかと」
隊長「『聖書』とは、古代人が『生きる』ための指標にしたと言う、あの『聖書』か?」
研究員「その通りです」
研究員「この『ガヴリールドロップアウト』というのが恐らく題名ですが、この部分にも共通の古代文字が記されています」
隊長「本当だな、発掘した時には気づかなかったが……う、かみ」
研究員「えぇ『うかみ』と書かれているようです」
隊長「うかみ、うかみ……!」ハッ
研究員「気づきましたか」
隊長「『かみ』とは、古代人の『信仰』の対象の名前だったな」
研究員「どの住居跡からも発見された事からも『聖書』で間違いないかと」
隊長「素晴らしい!では、その内容の方も聞かせてくれないか」
研究員「では、この通し番号1の『ガヴリールドロップアウト』から……この『本』には『物語』があります」
隊長「ふむ」
研究員「『本』の名前と同じ『ガヴリール』と呼ばれる二足歩行の生物が、様々な体験をしていく……というような『物語』です」
隊長「二足歩行の生物とは、恐らく古代人だろうな」
研究員「この『本』が発見された事で古代人の研究も飛躍的に進むと思いますよ」
隊長「素晴らしい、素晴らしいな『ガヴリールドロップアウト』!」
研究員「では続きを……この『ガヴリール』が所属する派閥と、それと敵対する派閥の二つの勢力が存在しているようです」
隊長「ふむふむ」
研究員「この『ガヴリール』は、 彼女の所属する派閥の中でも優秀な個体だったようですが、しかし環境の変化によりその能力を失ってしまいました」
隊長「古代人の環境適応能力は、我々ほど高くなかったのだな」
研究員「そのようで」
隊長「環境の変化とは、具体的にはどのような?」
研究員「二つの勢力とは別の、第三勢力が登場します」
隊長「ほう」
研究員「その第三勢力の生息地に『ガヴリール』は住む事になりました」
隊長「それは何故だ?」
研究員「『ガヴリール』が所属する派閥は第三勢力へ利益を与える存在のようですので、その調査が目的かと」
隊長「なるほど……では敵対する派閥は、それを良しとしない思想の持ち主という訳だな?」
研究員「さすが隊長殿、その通りでございます」
隊長「ふふふ……さ、続けて続けて」
研究員「そんな『ガヴリール』は、敵対勢力に属する個体と接触します」
隊長「すると『争い』という現象が発生するのだな」
研究員「いえ、この敵対勢力の個体『ヴィーネ』もまた、彼女の所属する派閥の中でも異端の存在のようでして」
隊長「どのような?」
研究員「『ヴィーネ』の派閥は『ガヴリール』の派閥と敵対関係にありますが、しかし『ガヴリール』は環境の変化によって能力を失っています」
隊長「うむ」
研究員「『ヴィーネ』はそんな、能力を失った『ガヴリール』を放っておけず、お世話をするのです」
隊長「敵対する存在と『争う』のではなく、逆に助ける……確かに異端ではあるが、良いことじゃないか」
研究員「そう、そこなのですよ!」
隊長「そこ?そことは……なるほど!」ハッ
隊長「古代人は高い技術力を持ちながらも、愚かな事に同種属同士で『争う』野蛮な性質を合わせ持っていた……そこに、この『ガヴリールドロップアウト』という『聖書』の存在!」
研究員「『ガヴリールドロップアウト』は、読む者に『争い』の愚かさや種族の垣根を超えた『愛』の素晴らしさを説く、高尚な書物であったと推測できます」
隊長「なるほどなるほど……他に解読できた『物語』はあるか?」
研究員「この『物語』の中には『ガヴリール』と『ヴィーネ』以外にも、複数の人物が登場しています」
隊長「ほほう」
研究員「例えばこの『サターニャ』と『ラフィエル』ですがーー」
火星付近 宇宙船内
ガコン…ウィーン…
男「ふわぁ~……ずいぶん長いことコールドスリープしてたが、お陰でここまで帰ってこれたぜ!」
男「愛しの我が故郷、地球!」
男「人類で始めて太陽系の外へ出た男の帰還だ……きっと大歓迎されるぜ!」ニヤニヤ
男「しかぁーし、楽しみなのは帰還セレモニーだけじゃねぇ!」
男「そーれーはー……『ガヴリールドロップアウト』の新刊だぁー!」バーン
男「俺が地球を出発した時、ガヴドロはちょうど100巻が発売された頃だったな」
男「この100冊、何度読み返した事か……!」
男「そしてアニメ!ガヴドロのアニメだ!」
男「1期から20期まで、アニメの円盤も擦り切れるほど見たぜ!」
男「……長い孤独も、ガヴちゃんやヴィーネ、サターニャやラフィ、タプちゃん達のお陰で乗り越えられたよ」
男「本当に、ありがとうよ」
男「あれからどんだけの時間が経ったか知らねぇが、さすがにガヴドロも完結してるはずだ!」
男「くぅ~、早く黒奈ちゃんのフルネームが知りたいぜ!」
船内アナウンス(CV富田美憂)「そろそろ地球だぞ」
男「お、マジか」
男「ただいま!俺の生まれた青い、星……?」
男「なぁガヴ、ここ本当に地球?」
船内アナウンス(CV富田美憂)「地球だって言ってんじゃん……降りて確かめてみたら?」
男「お、おう」
地球
男「座標は日本を指している……大気も無害だが……」
男「……ふぅ、船の外に出るぜ」
ガコン…ウィーン…ガコン
男「……」
男「……なんだこの、得体の知れねぇ建物は……!?」
生命体「××××!」
男「え?うわぁっ!?」
生命体2「××!?×××!」
男「な、なんだこの、得体の知れねぇ生命体は!」
生命体3「×××××!」
男「まさか、宇宙人なのか?俺が太陽系の外まで行って一度も会えなかったってのに?」
男「俺の地球が宇宙人に支配されてるぅ~!?」ガーン
生命体「×××××!」
男「いや、もしかすると『猿の惑星』的な感じで、ガチリアルな地球も……『得体の知れねぇ生命体の惑星』になっちまったって事もアリエルぜ!」
男「なにせ俺ったら、太陽系の外まで行ってコールドスリープまでしてたからな!そうたいせいりろん的なアレがソレしたせいで!俺は!」
男「超絶未来の地球に帰ってきちまったんだァーーー!!!!!!」
生命体2「!?」ビクッ
生命体3「!?」ビクッ
発掘隊の基地
隊長「ふむ、やはり『ガヴリールドロップアウト』の解読には時間がかかりそうだ」
隊員「隊長!たいへんです!」
隊長「ん?どうした、そんなに慌てて」
隊員「お、おおお、落ち着いて聞いてくらさい!」
隊長「私は至って冷静だが」
隊員「古代人の乗った未知の乗り物が、空から降ってきました!!!!」
隊長「なにィィイイ!!!??」ガーン
研究室 地下実験区画
男「××!××××!××!」ジャラジャラ
隊長「こ、これが例の」
研究員「はい、空から降ってきた古代人です」
隊長「危険はないのか?こんなガラス1枚だけでは不安なのだが」
研究員「鎖で拘束してありますし、問題ないかと」
隊長「しかし、報告によると一般市民に『暴力』を振るっていたらしいじゃないか!」
隊長「本当に古代人なのか?なぜ彼は現代に生きている?得体の知れない侵略者ではないのか?」
研究員「その疑問はごもっとも……ですので」
隊長「な、なにか策があるのか!」
研究員「本人に聞いてみましょう」
隊長「え?」
男「×××××!!!!!」
男「くそっ!訳が分からない内に捕まっちまった!」
男「幸いすぐに殺されはしねぇようだが、早く逃げねぇと……!」
男「……」ハッ
男「は、ははっ……そうだ、そうだよ」
男「ここが地球なら、俺はどこに帰ればいい?」
男「俺の故郷は、もうどこにも無いんだ……!」
男「ちくしょう……ガヴリール……ガヴリールにまた会いたかったぜ……!」
研究員「我々は古代人の研究しているのですよ?会話は無理でも、あるいは筆談なら可能かもしれない」
隊長「そうか!そうだったな!さすが研究員!」
男「××……ガヴリール……ガヴリール××××……!」
隊長「!?」
研究員「こ、これは」
隊長「ああ、確かに聞こえたぞ」
隊長・研究員「「ガヴリール!」」ドン
研究員「××××」
隊長「×××」
男「はは、なに話してんだろな……俺をどうやって食うかの相談かな……」
隊長・研究員「「ガヴリール!」」ドン
男「……え、幻聴、か?今、得体の知れねぇ生命体が」
隊長「ガヴリールドロップアウト!」
研究員「ヴィーネ!サターニャ!ラフィエル!」
男「え、な、なん、で……なんでこいつら、ガヴちゃん達の名前を……!?」
男「ガヴリールドロップアウト×××?××、××××サターニャ!?」
隊長「通じてる、通じてるぞ!」
研究員「やはりガヴリールドロップアウトは古代人の聖書だったのですよ!」
隊長「ならば、彼はきっと無害だ!早く拘束を解いてあげるんだ!」
隊員「は、はい!」
男「ガヴィーネ!?サタラフィ!?」
男「なにがどうなってやがる……!?」
隊員「ガヴサタ」
男「うわっ!……って、鎖を外してくれた?」ジャラ
隊員「ラフィーネ」
ガコン…ウィーン…
男「ガラスの壁が上がってくぜ」
隊長「××××」コクッ
研究員「××××」コクッ
隊長「我々の研究は正しかった」
研究員「ならば、これまでに解読した古代語も、通じるかもしれません」
隊長「いくぞ」コクッ
研究員「はい」コクッ
隊長「ワタシタチ、テキ、チガウ」
研究員「アナタノ、トモダチ、ナリタイ」
男「!?」
男「こ、言葉が、分かる」
隊長「アナタ、ムカシ、ヒト」
研究員「ワレワレ、ミライ、ヒト」
男「やっぱり、ここは俺の生まれた時代より、ずっと未来の地球なのか……!」
隊長「ガヴリールドロップアウト、スキ」
研究員「ガヴリールドロップアウト、ムカシヒト、スバラシ」
男「は、あはは!んだよ、なんで未来人がガヴドロ知ってんだよ!あはは!あはははは!!!!」ポロポロ
研究員「これは、ガヴリールドロップアウトの中でもありましたね」
隊長「ああ、笑っているな」
研究員「笑いとは良い感情です」
隊長「やはりガヴリールドロップアウトは良い物だったのだな!」
男「アハハ!ガヴリールドロップアウト!アハハ!」
その後 男の宇宙船内
男「あー……ここ、俺の、家……ワカル?」
隊長「ワカル、イエ、スムトコロ」
男「おー、イエスイエス……で、ほらこれ」
研究員「ガヴリールドロップアウト!」
隊長「ガヴリールドロップアウト!キレイ!」
男「そうだな、あんたらの持ってるガヴドロはボロボロだったもんな!」
隊長「ボロボロ?」
研究員「すごいですよ!こんな状態の良いガヴドロが残っているなんて奇跡です!」
隊長「ああ、しかも1番から100番まで全て揃っている!」
研究員「男さん、えーと、コレ、ツヅキ、ドコ?」
隊長「そうだな、100番より先のガヴドロが見当たらない」
男「つ、ツヅキ?」
男「ツヅキって、続きのことだよな……いや待てよ、むしろ続きを読みたいのは俺の方じゃねーか!」
男「いったい未来じゃ、ガヴドロは何巻まで出てるんだよ!あー、えーと、うー……オレ、ヨミタイ、ツヅキ、ナイ!……どうだ!?」
研究員「ナイ?ガヴドロ、ナイ?マジデ?」
隊長「ホシイ、キレイナ、ガヴドロ、ホシイ」
男「これは俺のガヴドロだよ!アゲナイ!」
研究員「どうやら続きは無いようですね」
隊長「男が地球を旅立った後のガヴドロは無いのだな……残念だ」
船内アナウンス(CV富田美優)「今日はガヴドロのアニメ見ないのか?」
隊長「な、なんだ今の音は!」
研究員「いえ、声のようでしたが!」
男「!」ピーン
男「そういや、こいつらガヴドロの単行本は持ってるようだったが、アニメの話は全然しねぇな」
男「……ふふふ、ちょっと驚かしてやるか」
男「ああ、見るぜ!今日は1期の1話を頼むぜ!」
船内アナウンス(CV富田美優)「はいはい、ちょっと待ってな」
ウィーン…ガチャン
男「自慢の特大スクリーンだぜ!」
隊長「おや、何か装置が作動したようだぞ?」
研究員「あれは……何か映し出されているようですね」
男「ガヴリールドロップアウト、アニメ、イチワ」
隊長「あ、にめ?どういう意味だ?」
研究員「この映し出されているモノが『あにめ』なのでしょうか」
隊長「いったい何が映ると……」
(特大スクリーンに映るガヴリール)
隊長「!!!?!?!??!」ドキーン
研究員「!!!!!!!!!」ドキーン
男「へへっ、驚いてる驚いてる!」
(画面狭しと動いて喋るガヴリール)
隊長「フォーーーー!!!!!!」
研究員「イェェーーーイ!!!!!」
男「んほぉぉぉおおおお!!!!!」
ーーこうして、男の帰還をきっかけに『ガヴリールドロップアウト』は未来人の間で爆発的な大流行となった。
また、男が発掘チームに加わった事で古代遺跡の発掘作業そしてガヴドロの解読も飛躍的に進み、男が地球を旅立った後の空白の歴史も徐々に明らかになっていったのだった。
繰り返される悲しき争いと、そんな冬の時代に人々の心に温もりを与え続けた『ガヴドロ』の存在。
やがて訪れる春を信じる子羊達の子守唄、あるいは暑い夏の日に吹くそよ風のようなーー。
数年後 発掘現場
男「ふぅ、今日もガヴドロが大量だぜ」
隊長「男さん!どうですか、今日のガヴドロは」
男「ああ、今日はなんと600巻が出土したんだぜ!」
隊長「600巻!すごいじゃないですか!これまでの定説が全部覆りますよ!」
男「ああ!研究員の驚く顔が目に浮かぶぜ!」
男(長い旅路の孤独を消してくれたガヴドロ)
男(異なる種族の架け橋となってくれたガヴドロ)
男(そして今は、俺の新しい生き甲斐になってくれたガヴドロ!)
男「ガヴリールドロップアウト」
隊長「男さん?」
男「へへっ、やっぱりガヴドロって最高だぜ!」
おわり