「ねーねーおかーさん、今日の晩ごはん肉にしてよー」
「ダーメ。この前も食べたでしょ?」
「4日も前じゃん!あとは魚とか野菜ばっかでさー」
子供の頃、うちでは肉があまり出なかった。
肉好きの俺としては、いつもカリカリしていた。
魚や野菜じゃなく、腹いっぱい肉が食いたい。
できれば毎日。
「うちって、別にそんな貧乏じゃないじゃん」
「でも、毎日お肉は出せないわよ」
「やだー!肉が食べたーい!肉!肉!肉肉ニクーッ!」
「テストで、いい点取ったらね。いい点取ったら
ご褒美に何でも好きなの食べていいわよ」
(自分の部屋)
「お母さんが、憎い・・・」
「ああやって、ぼくに肉を食べさせないで意地悪してるんだ」
「ああ、お母さんが憎い、憎い、ニク、ニク、ニクニクニク・・・」
「ニクニクニクニクニクニクーーーーっ!」
「・・・」
「・・・こう、なったら」
「いっぱい勉強して、いっぱいいい点とってやるーっ!」
「ニク、ニク、ニクニクニク・・・!」バリバリ
決意した俺は、猛烈に勉強をがんばり
テストで毎回いい点を取るようになった。
ご褒美の焼肉やステーキは、それはそれはうまかった。
それから、約10年後・・・。
(勉強を一生懸命頑張ったお陰で、そこそこの大学に入れて)
(それなりにいい会社に入れた)
(今は一人暮らしだし、給料は俺がほぼ自由に使える・・・)
(だから、いつでも好きなだけ肉が食べられる)
(・・・けど)
(何だかちっともうまくない)
(たまに食べるから、あんなにうまかったんだ)
(家にいた頃は、魚と野菜中心で・・・)
(思えば、健康的な食生活だったな)
(・・・そして、母ちゃんは)
(俺が一生懸命勉強して、立派な社会人になれるように)
(あんな風なこと、言ったんだな・・・)
(・・・)
(・・・母ちゃん)ポロリ
終わり