※『とある神父と禁書目録』シリーズ
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ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」【1】
1つ前:
ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」【4】
1 : ◆weh0ormOQI - 2011/07/03 01:01:57.49 vI5sckLy0 726/2388
当スレは
ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305391028/
の2スレ目、そしておそらく最後のスレとなります
お読みになる際は以下の点にご注意ください
※ステイル×インデックスが主役
※未来設定
※全体的に誰得
※つまんないギャグとなんちゃってシリアスが交差しきれてない
=地の文と台本形式が入り乱れて読みにくい
※勝手なカップリング多数
※稀にキャラ崩壊
※俺得
それでもいいなら↓へどうぞ
元スレ
インデックス「――――あなたのために、生きて死ぬ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309622517/
学園都市第二三学区。
宇宙開発施設が立ち並ぶこの学区では、常時はおろか一般客来場のため
警備が緩められる大覇星祭期間中ですら、その警戒が解かれる事は無い。
その二三学区をいま現在、かつてない喧騒が支配していた。
国際空港の連絡通路からエントランスホールに至るまでを埋め尽くすのは全て人。
興奮して隣の友人に何事かまくしたてる男子学生。
真っ白な修道服に身を包むコスプレ女子学生。
『Welcome To Japan』の幟を掲げている電子街特有の雰囲気をまとう集団。
それら野次馬とはスペースを区切られて、テレビカメラやマイクを準備するマスコミ。
あまねく熱気の矛先は、空港内の随所に特別に設けられたモニターである。
画面に映し出される滑走路にコンパクトな旅客機が姿を見せた瞬間、おお、と歓声が上がった。
無事着陸を終えたジェットが停止して十五分ほどは、
滑走路を取り囲んでいた黒服の男たちが周囲を神経質に固めていた。
指揮を執っているのは前時代的なデザインの杖をつく白髪の男だ。
お預けを喰らった形の群衆が不満な空気を醸し出し始めた事を察知したわけではないだろうが、
警備主任がカメラに取り囲まれる己が上司に向けて、一つ大きく頷く。
すると、遂に機体側面のハッチが音を立てて開門された。
先刻とはうって変わって大空港全体を束の間の閑静が取り巻いた。
扉の隙間から陽光が差していると錯覚した者は、果たして幾人居たのであろうか。
輝きの正体は、溢れんばかりの笑顔から放たれる光であった。
十字教三宗派の一角、イギリス清教が最大主教。
インデックス=ライブロラム=プロヒビットラムが、正式に日本の地を踏んだ瞬間だった。
はあ、とそこかしこから恍惚とした吐息が漏れる。
報道マイクを握って現況を報告しなければならない筈の
プロのテレビマン達でさえ、呆然として阿呆面をお茶の間に垂れ流していた。
それほどの、俗世の穢れとは無縁の光景であった。
故に、なのであろうか。
聖女のすぐ後ろに影の如く寄り添う大柄の男など、誰一人として気に留めない。
最大主教の純白の聖衣と見事なコントラストを形成する、
漆黒の牧師服に身を包んでいるにも関わらず、である。
民衆の注目を一身に集める女性はにこやかにカメラに手を振りながら、
階段を一歩、また一歩とゆるやかに下っていく。
その正面でこれまた温和な笑みを浮かべて待つのは、学園都市統括理事長、親船最中。
階下へ辿りついたインデックスと親船が手を取り合った瞬間、この日最大の喝采が渦を巻いた。
あの第三次大戦からおよそ十年の歳月が流れた、七月十日。
学生のみならず数多の群衆が見守る喧騒の最中で。
歴史が痛みを教訓に前進し続ける証左としての。
かがく まじゅつ こうさ
学園都市とイギリス清教の、対面の瞬間であった。
果てしないように思われた歓喜の声が徐々に徐々に静まってくると、
インデックスがそのふっくらとした唇を動かそうとした。
当然の如く、航空機脇での撮影を許可された運の良い放送局の集音機が一斉に向けられる。
『統括理事長さま自らのお出迎え、大変身の縮む思いです。
お身体の具合はその後、いかがでいらっしゃいますか?』
流暢な日本語がマイクを通して響き渡ると、今度は驚愕の色が辺りを包む。
最大主教が常人離れした記憶力の持ち主であるのは周知の事実だが、語学まで完璧にこなすとは。
親船はその顔をはっきりと綻ばせると、孫に接するかのように無邪気に聖女に感謝を述べた。
『まあ、ありがとうございます! 最大主教様の労り、老骨に温かく染みますわ』
その光景を直ぐ後ろから見守っていた神父の、真一文字に結ばれた線が微かに上弦の弧を描く。
誰にも認知されていないつもりなのだろうが――
この場で唯一男の魔術が通用しない白髪黒服が、肩を軽く竦めた。
んが。
『ようこそ、学園都市へ。つきましてはこの感謝の気持ちをパネルに籠めましたので』
怪しくなる雲行きと不吉なフレーズに、二人の魔術師の面持ちが途端にこわばる。
同時に遥か彼方の管制塔屋上に、特大のボードがババーン! と空だった筈の座標に跳躍してきた。
『どうぞご覧くださいね』
おぞましい悪寒が背筋を走るのを感じた神父が、即座に最大主教の前方にその身を滑り込ませる。
が、時既に時間切れ。
そこに切り取られているのは、ことさら馬鹿でかく引き伸ばされた例の百万再生映像
――――ではなく、元気な姿の親船最中であった。
デデーン
インデックス、ステイル、アウトー
拡声器越しの淡々とした処刑宣告は、二人にとって聞き覚えの無いわけがない声で告げられた。
今この瞬間だけは『幻想殺し』から『空気殺し』へとジョブチェンジしたヒーローを呪いつつ、
赤髪バーコードことステイル=マグヌスは腹の底から一発、乾坤一擲の怒号を放った。
「そんなん反則だろうがあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっっっ!!!!!!!!」
「動くなあああああ!!!!!!!!!!!!!」
11 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/07/03 01:17:26.07 vI5sckLy0 736/2388
申し訳ありません、このようなスレで なんかAAずれてますし
というわけで今日はここまで
どんなスレかと聞かれたらこういうスレだと答えるのに丁度いい部分だけ抜き出しました
見切るならはやくしろっ!!間にあわなくなってもしらんぞーーーーっっ!!!!
ではまた
----------------------------------------------------------
六時間後
ワイワイ ヤイノヤイノ
打止「カラオケのメニューって高いよね、
ってミサカはミサカはそれでも気にせずガンガン注文!」
美琴「あ、打ち止め。そのポテトも頼みましょ」
一方「ドリンクは全員持ったな」
当麻「よし、それじゃあ科学と魔術の公式会談が無事に終了した事を祝って!」
「「「「カンパ「待たんかあああーーーーーー!!!!」
ステ「貴様らぁぁ…………!! 特に男二人ぃっ!! 僕に何か言うべき事はないか!?」
一方「護衛のお仕事お疲れさまでしたァ」
当麻「身を挺してインデックスを守るお前の姿、最後まで見届けさせてもらったぜ。
でもな、お前だって知ってるだろう! 大切な誰かに死なれることの痛みを……
(中略)
……そんなに重たい衝撃は、誰かに押し付けちゃいけないものなんだ!」
ステ「黙れ黙れ黙れ黙れーーーーーーっ!!!!」
美琴「結局何発やられたの、『アレ』?」
打止「MNW調べではステイルさんの分が二十三回、
インデックスさんの代わりに受けたのが六十五回だったよ!」
ステ「またネットワークに垂れ流したのか!?」ヒリヒリヒリヒリ
イン「どうしてなの、すている…………?
どうして、私の身代わりなんて馬鹿な事したの!?」
ステ「……決まっている。僕は貴女を護るためにこの世に居るからだ」
イン「それであなたが傷ついたら、私の心も傷つくの! もう、こんな事しな、いで…………」
ステ「…………最大主教」
一方「急に昼メロが始まったぞ」
美琴「ウチでもときどきやってるわよ。
チャンネル争いしてたらいつの間にかいちゃいちゃ、みたいな」
打止「文脈が全然繋がってないんだけど、ってミサカはミサカは(ry」
当麻「ははは。……おや!? インデックスの様子が…………!」
イン「うっ、うう……………………」シーン
ステ「頼む、泣かないでくれ…………ん?」
一方「ゴンベからカビゴンにでも進化するンですかァ?」
打止「BBBBBBBBBB」
美琴「まだ進化を残していたというの…………!?」
当麻「ようやくなつき度MAXになったのかよ」
ステ「外野ぁ!! 少し黙ってろ!!!」
イン「うう、ひっく……………………ぷ」
ステ「…………ぷ?」
外野(((( ? ))))
イン「ぷっ、ぷぷ、あはは! あーっはっはっはっはは!!!!!」
ステ「」
イン「だ、ダメじゃん! 思い出すだけで腹がよじれてくるンだよォ!!!」ヒーヒー
ステ「おいぃぃぃぃいいい!!!???」ガビーン!
イン「せ、せりあとみさきが、真顔でリンボーダンス始めた時なんて、
ぷっ、あはははは!!! ひーっ、ひーっ!」バンバン!
美琴「アレは笑ったわねー。あの女王サマがひっくり返って」ププ
イン「や、やめてぇみことぉ! こ、呼吸、こんなんに、なる、よぉ!」ゼーゼー
ステ「…………」ドン! ドン! ドン!
当麻「隣に迷惑だからあんまりイラ壁するなよ」
一方「マグヌスくンじゅうよンさいはリアルに中二かそういや」
ステ「二十四だ!! くそがっ!」
打止(本格的に邪気眼が疼いてきたかも、
ってミサカはミサカは自分の中学時代を回想してみたり)トオイメ
ステ「だ!」ドン!
ステ「れ!」ドン!
ステ「が!」ドン!
ステ「『絶対に笑ってはいけない公式会談IN学園都市』なんて企画したああ!!!」ドオン!
当麻「つちm」
ステ「ですよねえええええええ!!!!!」
一方(雲川も親船もノリノリだったけどな)
美琴「それにしてもアンタたち、どうしてわざわざ飛行機から降りて来たの?」
イン「公式には最大主教は今日、イギリスから学園都市に来た事になってるの」
打止「……それってつまり」
一方「一ヶ月間学園都市で遊び呆けてた事実を隠そうってのか?」
ステ「聞こえが悪いね。仕事の準備をしつつ休暇を取ってただけだよ」ハア
当麻「なんだよ準備って……あちこち観光してただけだろお前ら」
イン「そんなことよりクワガタの話しよーじゃん!」
美琴「全然誤魔化せてないから!」
当麻(建宮のことじゃないよな)
ステ「おい、僕にはまだ疑問が残っているぞ上条当麻」
当麻「なんだよ? まだ何か文句あんのかサボり神父」
ステ「…………どうして僕らはこんな所にいる?」
一方「あァン? バーコードくンはカラオケ来たこと無いンですかァ?」
ステ「いや、そう言う事じゃなくて」
当麻「今日の仕事でたまった鬱憤をマイクに吐き出してみようぜ!」
ステ「鬱憤どころか憤懣が弾けそうなんだよ今にも!
溜めさせるぐらいなら初めからあんな企画止めさせろ!!!」
美琴「じゃ、まずはステイルからね」
打止「日本語の歌わかる? 洋楽もたくさんあるけど」
イン「じゃあ次はわたし!」
ステ「…………最大主教!」
イン「じょ、冗談なんだよ……」
当麻「どうしたんだよ二人とも」
ステ「いいか、僕らの仕事はまだ終わっ」
prrrrrrr!
ステ「…………(ピ) 何の用だ! 今こっちは……なに?」
イン(もとはる?)ゴフ
ステ「(ああ)………………………………しかしだな」
当麻「?」
ステ「………………わかった、お言葉に甘えよう」ピ
一方「さっきから忙しねェけどよ、結局どうなンだ?」
イン「どうも、予定が空いちゃったみたいじゃン」
打止「おお! それじゃあ心おきなくカラオケ大会できるね!」
ステ「そもそも此方の予定を確かめてから引っ張ってくるものだろう普通!」
美琴「ノリ悪いわねー。もしかしてアレ? 音痴だったりするわけ?」ニシシ
ステ「」
イン「……あ」
当麻「?」
ステ「………………誰が」
打止(なんか火が付いたような)
ステ「 誰 が 聞 く に 堪 え な い デ ス ボ イ ス だ と ? 」
美琴「!?」
一方「言ってねェよ」
ステ「OK。お望み通り先陣を切らせてもらうよ」ピピピピピ
当麻「て、手慣れてやがる……!?」
打止「カラオケって日本特有の文化じゃなかったっけ?」
イン「十年経てば大抵の事はどうにでもなりますの」
美琴「それ言えば何でも許されると思ってないでしょうね!?」
ピピピ
ステ「さて、まずは軽く喉鳴らしだ」
一方「曲名は……ンだこれ?」
「なんとなく消したストーリー」
http://www.youtube.com/watch?v=20_fDhFJMoU
※なんか色々注意
「「「「 ! ? 」」」」
六分三十二秒後
ダラダラダラダラダラ(ドラムロール音)
「 1 0 0 点 ! ! ! 」
当麻「当たり前だろコレええええ!?」
一方「中の人補正マジパネェわ」
美琴「いまひどい自作自演を見た」
イン「いきなり持ち歌なんて珍しいなぁ…………」ポー
打止「わ、私ですらちょっとクラリと来ちゃった…………
ってミサカはミサカは多感なお年頃を気取ってみたり……」
一方「ンだとおォォっ! 打ち止めァっ!!!」ガタッ
打止「お、落ち着いてあなた!」
ステ「フン、次は誰だったかな?」ドヤ
当麻(この後どうするんだよ…………)
美琴(カラオケでああもプロい真似されるとしらけるわー)
一方(続けねェ……この空気の中歌うとか勘弁)
打止「え、えーっと…………そうだ! インデックスさんだったよね次!」
イン「ボー…………え? あ、そうだったね。ステイル、まいくまいく」
打止「え」
ステ「はいどうぞ」
イン「よぉし、負けないよステイルー!
ってインデックスはインデックスはウォーミングアップ!」
ピピピ
当麻「いやアイツ満点だから」
美琴「どうやっても勝てないから」
http://www.youtube.com/watch?v=AQ-fM5LKTbU
~~~~~♪
一方「コイツァ……」
イン「『必要悪の教会』でカラオケに行くと大体私とステイルで満点の取り合いになるンだよぉ」
打止「何その異次元カラオケ!?」
ステ「他の連中も軒並み九十点台を叩きだすよ。
神裂とかシェリーとかアニェーゼとか土御門とか建宮とか」
当麻「俺らの中じゃ美琴ぐらいだよなそんなの」
美琴「な、なにハードル上げてんのよ!」
イン「……When I am down and, oh my soul, so weary.」
当麻(う、上手い事は知ってたが……!)
イン「When troubles come and my heart burdened be……」
打止(もはやこの勝負、ミサカたちの入れる領域じゃあ(ry)
You raise me up, so I can stand on mountains.
You raise me up, to walk on stormy seas.
I am strong, when I am on your shoulders.
You raise me up…… to more than I can be.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ダラダラダラダラダラ
「 9 9 点 ! ! ! 」
当麻&打止「」
イン「ああああ!! 惜しかったかも!」
ステ「ラストのサビでヘッドボイスの効きが後一歩だったね」ハハ
イン「やっぱりぃ? っていうか慣らしでパーフェクトなステイルがおかしいじゃぁん」アハハ
当麻「おかしいのはお前らだよ」
打止「ますます歌いづらくなった…………」
ステ「僕をコケにしてくれたそっちの超能力者二人、何か言う事はあるかな?」
イン「まあまあ。みこともあくせられーたも点数なンて気にせず楽しくやろォ?(笑)」
当麻「感じ悪っ!」
一方「……………………だ」
ステイン「え?(笑)」
美琴「いい度胸だって言ってんのよ!! 超電磁砲舐めんじゃねー!」
一方「良く言ったァァァ!! それでこそ学園都市の頂点だよなァ!?」
美琴「出してやろうじゃない百点満点!!」
一方「第一位はな、歌唱力も第一位だから第一位なんだよ三下どもォォォ!!!」
打止「えぇぇ…………」
当麻「そんなシステムスキャン受けるぐらいだったら音楽都市に行くわ」
ステ(それはそれでそそられるものがあるな)
美琴「じゃあ私からいくわよ!」
ピピピ
「only my railgun」
当麻「なりふり構ってねーなオイ!?」
イン「あはは、意外性が足りないねぇみこと? だから第三位なんですの」
打止「さっきからキャラ違うよねインデックスさん」
ステ「どうだか……」
一方「やっちまいな超電磁砲ンン!!」
美琴「放て! 心に刻んだ夢を 未来さえ置き去りにして 限界など知らない 意味無い!
この能力(チカラ)が光散らす その先に遥かな想いを…………」
当麻(さすがにテーマ曲だけあって映えるなぁ……)
美琴「歩いてきた この道を振り返ることしか 出来ないなら…今ここで全てを壊せる」
打止「おおお! さっすがお姉様! ってミサカはミサカは興奮してみたり!」
イン「ふ、ふふん! ってインデックスはインデックスは(ry」
当麻「これならインデックスの99点に勝てるかも!」
ステ「次回、『超電磁砲』死す!」
一方「デュエルスタ…………ンばるわきゃねェだろォが!! なに不吉な次回予告してやがる!?」
美琴「狙え! 凛と煌く視線は狂い無く闇を切り裂く! 迷いなんて吹き飛ばせばいい
この心が叫ぶ限り 誰ひとり邪魔などさせない……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ダラダラダラダラダラ
「 9 5 点 ! ! 」
美琴「んあーーーっっ!!」ダンダン!
当麻「いや、悔しがるような点数じゃないからね?」
ステ「まあまあだったね」パチパチ
イン「高得点おめでとうなんだよ」パチパチ
美琴「最っ高にムカつくわよ今のアンタら!」
ステ(そもそも本人(?)が歌ったから満点が出るとは限らないんだけどね)
イン(スローテンポの曲の方が高得点出やすいんですの)
一方「チッ、第三位に期待した俺が間違いだったか」
美琴「んですってぇ!!」
打止「落ち着いてお姉様! アナタも言い方きつすぎ!」
一方「へーへーすいませンでしたァ。じゃあ次は俺だな」
ピピピ
美琴「大口叩いといて私より点数低かったらわかってるでしょうね」
一方「どうして俺とお前が一位と三位に分けられてると(ry」
打止(少なくとも歌の上手さは関係ないよね)
http://www.youtube.com/watch?v=7liIs5AO-kU
一方「Just cry 閉じ込めた記憶を辿る Why 罪を引きずる足音
今はもう空は滲む涙と 厚い雲に閉ざされた心」
当麻(コイツもうめぇ……)
一方「ああ 誰も彼も 一つや二つは触れられたくないことも
もう自分以外の人を傷つけたくないよ 弱ささえ受け入れて」
打止(驚き役に定着してきた、ってミサカはミサカはヤムチャ顔をしてみたり)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一方「つらい時は泣けばいい 言葉じゃきっと満たせないから
君の痛みに触れて 僕も泣くから
壊れ行くもの 確かになおせないこともあった 明日へ向かうために」
打止「激しい曲なのになんかウルってきちゃった……」
ステ「言うだけの事はあるね」
イン「さあ、肝心の点数は!? ってインデックスはインデックスはちょっとハラハラ!」
ダラダラダラダラダラ
「 9 5 点 ! ! 」
一方&美琴「ええェェ…………」
打止「そ、そんな落ち込むことないよ二人とも、すっごく上手で私感動したよ!」
ステ「科学にしては良くやった、と褒めてあげるよ」HAHA
イン「まあでも95点、これが限界だってハッキリしたかも」AHAHA
打止「水掛けてるところに油注がないでーーーっ!?」
美琴「も、もう一曲! 今のは単なる前座よ!」
ステ「ふ、三流の逃げ口上だね」
一方「ああああァァァァ!?」
イン「どうどう」
美琴「やっぱ馬鹿にしてるでしょアンタ!」
打止「こ、こうなったら演算補助を解除するしか…………」
当麻「………………」
打止「あれお義兄様? さっきから静かだね」
イン「ふふ、ちゃんと順番は守らないとダメじゃん?」
ステ「その通り、次はどっちが…………おい、上条当麻?」
一方「ン?」
美琴「と、当麻…………? どうかし」
「 お 前 ら 、 い い 加 減 に し ろ っ ! ! 」
「情けねえと思わねえのかよ!?
大の大人が寄ってたかって、こんな鉄の塊が吐き出す数字に踊らされやがって!
カラオケってのは皆が和気藹々と交流するため、その為に作られた日本の至高の発明品だろうが!
それがこのザマはいったい何だってんだ!? 下らねえ点数に一喜一憂して、お互いいがみ合って!
違うだろ、そうじゃないだろ!! 思い出せよ、初めてカラオケに行った時を!
歌の上手い下手じゃあない、純粋にマイクに魂をぶつけて、皆に拍手されたあの日を!
一方通行! てめえの言う学園都市最強ってのは、
大事な人を困らせてまで守らなきゃならないプライドなのか!?
美琴! 俺はお前の歌ならいつだって百点満点で採点してやる!!!
ステイル! ちょっとてめえ上手すぎてKYなんだよ!
そして耳の穴かっぽじって良く聞きやがれインデックス!
もしもお前が得点なんてモンに縛られて、カラオケの本質を見失っちまってるって言うなら!
まずは――――!!」
てんすうしじょうしゅぎ
「そのふざけた 幻 想 をぶち殺す!!!!」
打止「生で見るのは何気に初めてかも、ってミサカはミサカは呆然としてみたり」
一方「説教だけで一スレ……もとい一レス使いやがった」
ステ「濃厚な説教スレか…………悪夢だなそれは」
イン「しかも途中でさりげなく惚気たんだよ」
美琴「もーとうまったらぁ」ニヘヘ
当麻「おい、俺の言いたい事はわかったか!?」
ステ「わかったわかった」
一方「高得点出す自信ねェから点数つけンのやめろって言いてェンだろ?」
当麻「え」
イン「なーんだ、とうまは自分の歌がアレだから説教で誤魔化したんだぁ」
美琴「大丈夫、そんな当麻でも私にとっては百万点だから……」ポッ
当麻「え、ちょ、上条さんはそういう思惑があったとかじゃ」
打止「お義兄様は犠牲になったのだ……そういうことだから次は私の番!」
一方「ンじゃ、こっから採点無しだな」
イン「んー、あまりこだわっても良い事ないかも」
ステ「そこの説教魔の顔も一応立ててやらないとね」
当麻「とっくに面目丸潰れだっつーの!! ちくしょう…………」イジイジ
美琴「元気出して? 私が居るから……ね?」
当麻「美琴…………」
美琴「当麻ぁ…………」
イチャイチャ
一方「パターン入りましたァ」
ステ「次はどういうチョイスでいくかな……やはりロックで…………メタリカあたりを」ウーム
イン「らすとおーだーはどんな曲歌うの? ってインデックスは(ry」
打止「(慣れてるなぁ)……よーし、決定!」
ピピピ
「メモリーズ・ラスト」
打止「誰にも負けないなんて誇大妄想だってこと 傷だらけの掌(てのひら)から溢れた孤独」
一方(コイツ…………)
打止「過ぎ去った時間(とき)は 戻せないから 一秒ずつ塗り替えてくその笑顔で」
打止「忘れないよ 季節が巻き戻されても もし君が今日の事 忘れていっても」
ステ「………………」
イン「あ…………」
打止「今でも小さなガラクタだけど この胸に刻んだ 記憶があれば」
「ゆっくり針は進んでく もう逃げないよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
打止「お粗末さまでした!」
当麻「いやいや、よかったぜ。やっぱカラオケはこうあるべきだよな」
イン「……良い歌だったね、ステイル」
ステ「…………ああ」
美琴(この子なりのエールなのかしらね。まったく自分の事で手一杯でしょうに)クス
一方「クソガキにしちゃまあまあだったじゃねェか」
イン「ハイハイツンデレ乙」
一方「ちげェよ!!」
美琴「ちょっと涙ぐんでたくせに」
ステ「父親か君は…………」
一方「誰がだよ…………ったく」
当麻「よっしゃ、ようやく上条さんの出番だな」
ピピピ
「ラフ・メイカー」
一方「おォ……!」
イン「これはとうまっぽいなぁ」
当麻「涙で濡れた部屋に ノックの音が転がった
誰にも会えない顔なのに もうなんだよどちら様?」
打止(上位個体だけど今お姉様のテンションがやばい)ビビビ
当麻「『名乗る程たいした名じゃないが 誰かがこう呼ぶ“ラフ・メイカー”
アンタに笑顔を持って来た 寒いから入れてくれ』」
ステ(独善者の歌、か。コイツらしい)
当麻「ラフ・メイカー? 冗談じゃない! そんなモン呼んだ覚えはない
構わず消えてくれ そこに居られたら泣けないだろう」
美琴(ああもうダメだわ私…………思い出しちゃうじゃない)グス
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
当麻「小さな鏡を取り出して 俺に突き付けてこう言った 『アンタの泣き顔笑えるぞ』」
「呆れたが なるほど 笑えた」
ガバッ!
当麻「んなあっ!?」ウケトメ
美琴「とうまぁ…………」エグエグ
打止「完全に感極まっちゃったね」
一方「素人くせェ歌い方が逆にくンだよな」
イン「あはは、ちゃんと責任取らなきゃダメなんだよとうま?」
ステ「君が何とかしろよ、ラフ・メイカー」クク
当麻「んな事わかってるって。コイツの涙を止めるのは俺の役目さ。
…………本当は、泣かせたくもないけどな」ナデナデ
イン&打止「………………」チラッ
一方「なに見てンだ」
打止「べっつにー?」
イン「ああいうの憧れるなー、なンて別に思ってないンだよ」
ステ「………………さて、二巡目だね」
イン「ちぇっ」
ステ「…………だがその前に、少し手洗いに」
美琴「わ、私もちょっと顔洗ってくるわ」
バタン
一方「…………ドリンクが切れたな」
打止「え? 私のはまだ」
一方「いいから補充手伝え、打ち止め」
打止「…………うん、わかった」
バタン
イン「え、あ?」
当麻「ちょっと休憩だな。はあ、しかし疲れたよな今日は」
イン「……うん、あんなサプライズするから笑い疲れちゃったよ、あはは」
当麻「………………」
イン「………………」
当麻「なあ、インデックス」
イン「! ど、どうしたの?」
当麻「お前の仕事もとうとう終わっちまったな」
イン「まだ、らすとおーだーの結婚式までは日本に居るよ」
当麻「そういや、そうだったな…………でも、十日なんてあっという間だ」
イン「……そうだね」
当麻「この一ヶ月はさ、昔に戻ったみたいだったよ。
朝起きたらお前が居て、一緒に朝飯食ってドタバタしてさ。
さすがに風呂場に寝泊まり、とまではいかないけどな」
イン「…………」
当麻「美琴や真理とも仲良くしてくれてありがとな。
ステイルの奴も俺にはああだけど女には結構優しいし」
イン「………………とうま」
当麻「――――どうした、インデックス」
イン「私ね、とうまに言わなきゃいけない事があるの。その為に、日本に来たの」
当麻「…………なんだ?」
イン「え、っと」
当麻「………………」
イン「その…………」
当麻「うん」
イン「………………」
当麻「そういや、二人っきりになる機会なんて今までなかったな」
イン「!」
当麻「ステイルが四六時中張り付いてるからなぁ。そのせいか」
イン「ち、ちがうの! …………私が」
「私に、勇気がないから」
「そうなのか?」
「そう、勇気が、ないから…………」
「大丈夫か」
「…………大丈夫じゃ、ないかも」
「俺は、お前の為に何が出来る?」
「……………………待ってて」
「待つ?」
「私が、あなたに、この想いの全てをぶつける決心がつくまで」
「いつまででも待っててやる…………って言いたいけどな」
「うん」
「あと十日だけ、だな。きっと、あっという間だ」
「わかってる」
「その時が来たら、お前の想いに向かい合う。そう約束するよ」
「――――ありがとう、とうま」
「十年前とは変わったな、俺たち」
「私の見る限り、とうまはあんまり変わってないと思うな」
「ひでえな。成長が無いってことかよ?」
「ふふ。違うよ、もちろん」
「ホントだろうな…………」
「…………線がね、変わったと思うの」
「線?」
「私たち人間っていう『点』を結ぶ『線』。
とうまの点が動かなくても、私が動いたのかもしれないね。それとも…………」
「線の形そのものが、別物になったってことか」
「…………昔は、たとえ歪でも、あんなに近かったのに」
「そうなのかな。…………そう、なのかもな」
「きっと、そうだよ」
「十年か。意外と、あっという間だったな」
「たった十年だもん。当たり前かも」
なみだ とめる
(それでも、お前の 幻 想 を 壊 す のはもう)
(俺の役目じゃないんだろうな)
(アイツに、渡さなきゃならないものなんだ)
ガチャ
ステ「待たせたね」
イン「おかえり、ステイル」
当麻「随分遅かったな」
ステ「混んでたんだ。もう少し遅い方が良かったのかな?」
当麻「さあな…………丁度良かったんじゃねえの?」
ステ「それはなによりだよ」ハン
当麻「他の皆はどうしてる?」
ステ「さあ? 別々に出たんだから僕が知るはずもない」
当麻「そーかよ」
イン「……ありがと」
ステ「何の話だかさっぱりだね」ヤレヤレ
ガチャ
一方「ドリンクバーが切れてて時間掛かっちまったぜェ」
打止「…………うわあ、わざとらしイテッ!!」ゴツン!
美琴「さ、続きよ続き! 今度こそはアンタらを唸らせてやるわ!」
当麻「点数は出さねえぞー」
イン「ま、客観的な評価よりは主観にうったえる方が楽かもしれませんの」フフン
ステ「では僕からだね」
ピピピ
「Reckless fire」
美琴&打止「「………………」」
イン「また持ち歌? 頑張ってねステイル!」
当麻&一方((こいつ本当にイギリス人か?))
---------------------------------------------------------
『はあ………………不幸なんだけど』
『くく、心中お察しするぜい。素晴らしいリンボーダンスを見せてもらったにゃー』
『やかましいんだけど』
『結局、オレたちの当初の目論見は外れたわけだ』
『予想を遥かに越えて慎重だった、と見るべきか。
それとも単純に私たちの頭脳が劣っているのか』
『さあな。さておき二人を留めておくのは七月いっぱいがリミットだ。
それ以上は本人たちが何と言おうと帰国してもらわなければならん。
議会のジジイどもがまたぞろ騒ぎ出しかねないんでな……あとねーちんも』
『おやおや、心中お察しするけど』
『やかましいぜよ』
『実は、一方通行が外出許可を求めてきてるんだけど』
『ふうむ……………………危険な賭けだな、それは』
『いつも通り話が早すぎて助かるけど』
『期待値は相手の質、量いかんに大きく左右される事になるぞ』
『だから、その辺りの情報が欲しいんじゃないか。最大主教の身にも響くぞ?』
『ちっ…………お見通しか。確かに昨日、仲介人を探しあてた。
数日中にはどんな手を使ってでも口を割らせる』
『一方通行は五日後に「外」に出る。出来れば間に合わせてくれよ』
『…………おい、決定済みなのかそれは』
『分の悪い賭けは嫌いじゃないけど。そっちは違うのかな?』
『オレは、嫌いじゃないが苦手だな。己の心臓部をチップにしてるとなれば尚更だ』
『私は気楽なゲームマスターさ。別に大したものを賭けては』
『ほーう、旦那の命は「大したもの」じゃないのかにゃー?』
『……何の話かわからないんだけど』
『くくく、くっくっく………………』
『なぜ笑う、だいたい私は結婚などしていn』
『くははははは!! これが笑わずにいられるか!
遂にアンタの弱みを握ってやったぜよー!!!』
『!? 待て、なにを』
『満天下に向けて吠えたい気分だぜい、雲川芹亜の』
『よせっ!!! さもなくば貴様の家庭での痴態を飛行船で学園都市中に流してやるけど!!』
『人を呪わば穴三つ。そしてオレはアンタより遥かに呪術に精通している……後はわかるな?』
『わかるか!!』
『それならそれで構わないぜい。ハハハ、テンション上がってキター!!!』ブツッ
『だから待て…………クソッ!! 早急に対策を…………!」
「ん、さっきから喧しいがどうかしたのか?」
「お前が言うな! いま私は忙しいんだ!! 放っておいて欲しいんだけど!!!」
「ふーん、良くわかんねえ」
「ああもう、不幸なんだけどーーーーっっ!!」
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OUT
エセ関西弁(賞味期限切れ)
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とある日 上条家
イン「…………そういうわけで、電話したんだよ」
13857『お姉様に「お姉様」と呼ばせたい…………なかなか背徳的な響きですね、フフ』
イン(いきなり相談相手を間違えたかも)
13857『そういうことならやはり力づくでにTEGOMEにして
姉妹SMプレイに持ち込むのが手っ取り早いでしょう』
イン「いや、あっちは超能力者だから。全然手っ取り早くないんだよ」
13857『我らが主から授かりし愛の力を持ってすればどうということはありません』ハァハァ
イン(この子破門すべきなのかな……)
13857『さあ最大主教! ご決断くだされば今すぐにでも必要な物資は手配します!
だから早くお姉様の屈服する姿を全ミサカに布教s』
ガッ
イン「……ぬるぽ?」
17000『お耳汚しをして大変失礼しました、インデックスさん』
イン「あ、管理人さん」
17000『害虫は駆除しておきましたのでどうかご安心を』
イン「鈍器で頭を殴ったような音がしたんだけど」
17000『話は聞かせていただきましたよ。どうか私にも協力させてください』
イン(わーお、スルー)
17000『やはりここはインデックスさんの武器をフルに活用すべきです』
イン「私の武器? 『魔滅の声』でみことの中学時代を糾弾すればいいのかな?」
17000『それでは立ち直れなくなる可能性がありますよ』
イン「ですよねー」
17000『あなたの長所、それはごくごく稀に表に出る「聖母」属性です』
イン「『聖母』だなんてそんな畏れ多い……」
17000『この場合の「聖母」とは私の持つ「寮母」属性をつきつめた先にある境地を指します』
イン「ダーウィンも爆笑ものの進化論だね」
17000『お姉様はその立場上、常に誰かに頼られる人生を送ってきています。
学び舎の後輩然り、模範生徒として扱う大人たち然り、私たち然り』
イン(聞いてないし)
17000『男性ならお義兄様が不動のポジションを築いていますが、
女性という観点に立てばあまり一緒に過ごす機会の無いお母様ぐらいのものなのですよ』
イン「じゃあ、そこにつけこめば?」
17000『お姉様を攻略できる確率はMNWの試算によれば78%です』
イン「攻略…………とうまになった気分だなぁ」
17000『まあお義兄様が意図して攻略した相手は当のお姉様ただ一人ですが』
イン「むむ、じゃあとうまのやり方を参考にすればいいのかな」
17000『あなたはそういえば二人がくっつく過程を目の当たりにしているのですね』
イン「……………………うん。いやー、あれは見ててホントに面白かったかも!」
17000『…………しかしあの方の場合は少々…………いや結構………………
いやいやすこぶる、特殊な状況だったと聞きますが。主に不幸のせいで』
イン「…………良く考えなくても再現は無理だね、あんなの」
17000『ですから私の提言に従って頂ければ』
イン「そうする。ありがとね!」
17000『いえ、お役に立てて幸いですよ、インデックスさん。では失礼します』
イン「じゃあね!」ピ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イン「かくかくしかじかで、みことと姉妹(スール)の契りを結ぶ算段が付いたんだよ!」
ステ「はあ」
真理「はー」
イン「みことが仕事から帰ってきたら実行に移すけど、その前に二人の意見を聞きたいかも」
真理「すーるってなーに?」
ステ「…………真理には無理だろう」
イン「じゃあステイルは?」
ステ「ああ、凄く良いと思うよ………………………………………………………………どうでも」
イン「だよねだよね!」
ステ(やれやれだ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガチャ
美琴「真理ちゃんただいまー!」
真理「おかえりなさい、まま!」
ステ「僕らもいるんだがね。おかえり」
美琴「ごめんごめーん。ただいまステイル、インデ…………」
イン「お帰りなさい、『美琴』」キラキラキラ
美琴「!?!?!?」
ステ(まあ、そういう反応になるよね)リョクチャズズズ
美琴「ちょ、ちょっと! 何でアンタ私立リ○アン女学院の制服なんて着てんのよ!!」
ステ(読んでたんかい)
イン「まあ美琴ったら、アンタなんて。いつも通り『お姉さま』と呼んでちょうだい?」ウフフ
美琴「」ゾワゾワゾワッ!!
ステ(美琴がノンケのようで何よりだ)ズズズ
イン「さあ美琴、こっちに来て姉妹の絆を深めましょう?」クスクス
美琴「ちょっとステイルー! アンタこの状況に何か言う事ないわけ!?」
ステ「Something」スッ
美琴「ふざけんなあああ!!! ってどこ行くのよ!?」
ステ「真理とベランダに行っているよ。ああ煙草は吸わないからご安心を」ガラガラ
美琴「逃げんな、いや、逃げないで下さいおねが、ああもう!」パチ
イン「まあそんなに照れないの、美琴ったら…………へ?」ベタベタ
美琴「ひっつくんじゃないわよぉぉぉ!!!」バチバチッ!
バリバリバリッ! ドオンッ!
ステ「アーメン」スッスッ ジュウジキル
真理「しゅている、あーめんってなーに?」
ステ「電化製品の冥福を祈る言霊さ。君は使う機会が多そうだから覚えておくといい」
真理「あーめん!」キャキャ
------------------------------------------------------
美琴「言う事はある?」バチバチ
イン「うう…………ありません(かかっててよかったギャグ補正)」プスプス
美琴「だ、だいたいさ。どうしてそんなに私なんかを妹にしたいわけ?
私なんか生意気で、年上に敬意払わないし、昔は短パンだったし」
イン「みことが可愛いからに決まってるんだよ。あと、一生懸命なところも好きかな」ニコ
美琴「………………い、一生懸命?」カァ
イン「まことが生まれてから今まで、みことはずっと走ってるでしょ」
美琴「……そりゃそうでしょ。子供の教育には妥協したくないもん」
イン「(その割には甘やかしてるけど)疲れた時、ちゃんととうまに寄りかかってる?」
美琴「…………ツンケンしてた頃の私じゃないんだから、大丈夫、よ……」
イン「うんうん、とうまはここ一番では頼りになるもんね。でも」
美琴「!」
イン「とうまに言えない事だって、あるよね? 男と女、なんだから」
美琴「な………………無い、とは言わないけどさ」
イン「そういうのを聴きたいから、みことのお姉さんになって私も頼られたいんだよ」
美琴「…………………………いんでっくす」
イン「なあに?」ニッコリ
美琴「いいの? だって、だってそんな酷い事」
イン「いいよ。だって私は、とうまもみことも大好きだから」
美琴「…………いんでっくすぅっ……!」ガバッ!
イン「よしよし。お姉ちゃん呼びはまだ早いかな?」ダキッ ナデナデ
美琴「…………………………………………………………………………聞いてくれる、お姉ちゃん?」
イン(………………キ、)
美琴「私ね、会心のゲコ太コレクションを真理ちゃんに『ハン!』って鼻で笑われちゃってね」
イン(キタ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(。 )━(∀。 )━(。∀。)━━ !!!!)
美琴「当麻に言っても『( ´_ゝ`)フーン 』だし、もう私どうしたらいいのか」
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真理「いんでっくしゅ、くるくる!」キャッキャッ
ステ「仲良き事は美しき哉、だったっけな…………日本とは、おかしな国だ」
真理「あんなのを日本代表だと思って欲しくないなぁ」
ステ「!?」
美琴「それでね、劇場版の試写会には結局私一人で、仕事の合間を縫ってね」ハグハグ
イン「キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!」ナデナデ
美琴「書斎をゲコ太部屋に改装しようと思ったら二人に失笑されて頭に血が上っちゃって
ついつい机をバン!! って叩いたら腕折れちゃって」
イン「腕もろっ!」
真理「カエルとかないわ(笑)」
イン「!?」
オワリ
七月十一日
第七学区 とある病院 待合ロビー
ステ「げほっ、かほ! 調子に乗って歌い過ぎたか……?」
イン「受付済ませてきたよ、ステイル」
ステ「ああ、ありがとう。もしかして、あの医者に掛かる事になるのかな」
イン「お尻と、喉と、胃に肺の検査をいっぺんにやってくれるのなんてあの先生ぐらいじゃん」
ステ「それもそうか。彼に診察してもらうのは初めてだね」
イン「え、そうなの? 結構意外ですの」
ステ「…………どういう意味かな」
イン「だってちょくちょく学園都市に来てたんでしょ?」
ステ「上条当麻じゃあるまいし、仕事の度に大怪我してられないよ」
イン「……そう、だよね。良かった」ニコ
ステ(………………まあ、だからこそ僕はヒーロー足り得ないんだろうな)
イン「ステイル、バカな事考えてるでしょ」
ステ「ば、馬鹿とは何だい」
イン「それはみさきでもないと分からないけど。
でも、きっと自分を傷つけるような事を考えてたに決まってるよ」
ステ「……勝手に決め付けないでくれ。心理掌握でもなければ無理なんだろう」
イン「わかるもん」
ステ「なぜ?」
イン「ずっとあなたの顔を見てたから」
ステ「…………貴女は」
イン「私がこの五年いちばん一緒に過ごしたのは、あなたなの。それは、事実だよね?」
ステ「……最大主教」
イン「すている……」
ミサカ19090号「……………………あのー」
イン「きゃわわわわわっ!!!」
ステ「ぬおおおおおおっ!!! な、何だいきなり!」
19090「いえ、先ほどから三回程お呼びしていますよ。ステイル=マグヌスさん?」
ステイン「へ」
ワカイッテイイデスネトミサカハ マッタクチカゴロノコイツラトキタラ
ヘッダガタリナイ コウキョウノバダトイウコトヲカンガエテホシイデストミサカハ
サッソクネットワークハイシンヲ ニャー ヒトリモノニハメノドクデストミサカハ
ザワ ザワ ザワ ザワ
19090「お二人の世界にダイヴされてたようですね、
とミサカはこんな公衆の面前で見つめ合うおバカさん達に嘆息します」
ステ「ぐぐ……ちょっと待て、『妹達』が多すぎるんじゃないのか?」
イン「そ、そういえばざっと見まわしただけでも五人は居るかも」
19090「まあ私たちはこの病院の看板ナースですから」フフフ
ステ「今すぐ帰りたい……」ゲンナリ
イン「そういうわけにはいかないじゃん!」
19090「いい加減に行きましょう。先生もお待ちですよ」
イン「あ、ごめんなさい。ほら行こ、ステイル」
ステ「貴女はここで待っててくれてもいいんだよ」
イン「だーめ。悪い診断されたのに黙ってるとかやりそうだもん」
ステ「そんな事はしやしないし、仮にしたところで僕の自由だね」
イン「あなただけの身体じゃないの! もしもの事があったら、私…………」グス
ステ「……ごめん」ナデ
イン「一緒に連れてってくれたら、許してあげるかも」イチャイチャ
19090(この二人の間にどんな障害があるのか全く推測が立ちません、とミサカは(ry)
診察室
コンコン
冥土帰し「どうぞ?」
ガチャ
19090「お連れしました、先生」
冥土「ご苦労だったね?」
19090「いえ、それでは私は仕事に戻ります」
冥土「君、前々から言ってるが無理なダイエットは禁物だよ?」
19090「ケフッ!! ……失礼します」ソソクサ
バタン
冥土「さて…………ご無沙汰だったね?」
イン「お久しぶりです、先生」ペコリ
冥土「はっはっは、ずいぶん礼儀正しくなったね?」
イン「う。子供扱いしないで欲しいかも」
ステ「僕の事も覚えておいでで?」
冥土「患者の顔なら大抵記憶しているんだが、君は特別だね?
まあ、爆発する手紙の配達人にされればそりゃあ忘れないさ」
ステ「う」
冥土「まあ若いころを思い出して身を捩るのは大人になった証拠だね?
…………そう言えば、『彼女』はロンドンではどうなのかな?」
イン「その人なら『愛しのお兄ちゃん』と仲良くやってるんだよ」
ステ「仲が良すぎて困るがね」ハァ
冥土「それは良かったね? 僕のやり残した仕事を完遂してもらったんだ、礼の言葉も無いよ」
イン「そんな…………大それたことじゃ」
冥土「謙遜の必要はないと思うけどね?」
ステ「………………」
冥土「しかし君たち、明日の便で帰国すると聞いたんだがね?
こちらで病院にかかっている暇などあるのかい?」
イン「あ、それは……」
ステ「多少予定を詰めてでも診てもらう価値がありますよ、貴方にならね」
冥土「おだてても無駄だよ? 僕は常に最高の治療を心がけているからね?」
ステ「はは、頼もしい」
イン「みっちり隅々まで診て欲しいんだよ、先生!」
冥土「ではそろそろ、医者として仕事をさせてもらおうかな。
…………えーっと、ステイル=マグヌス君と」
ステ「……と?」
冥土「付き添いはインデックス=マグヌス君で間違いないね?」
ドンガラガッシャーン!!
冥土「おいおい、デリケートな機器や薬品もあるんだ。気を付けてくれないかね?」
ステ「最大主教ゥゥーーーッ!! こ・れ・はどういう事なんだ!?」
イン「だ、だって付き添いは家族じゃないとダメだ、って受付で言われたからしょうがなく」
ステ「なぜそんな摩訶不思議なルールがまかり通っているんだ…………!」
冥土「僕が制定したんだよ。君たちから今朝電話で予約があった時点で急遽ね?」
ステ「くそっ、貴方もか! どいつもこいつも!!」
冥土「待合ロビーでも三回ぐらい呼んだと思うんだけどね?
『イギリスよりお越しのステイル=マグヌスさん、
付き添いのインデックス=マグヌスさん。診察室へお入り下さい』って」
ステ「ちょっと待てえええ!! 昨日(テレビ中継)の今日でそんな事をされたら……!」
冥土「今ごろは『最大主教既婚者説』が院内で流布してるかもしれないね?」
イン「あ、あわわ(でもそれはそれで……)」
ステ「どうしてこうなったあああああ!!!!!!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
冥土「喉の痛み、カラオケで熱唱しすぎ……とりあえず口の中を見せてもらうよ?」
ステ「」チーン
イン「ステイル、ガンバ!」
ステ「十年前でも古いわ! くそっ」アーン
冥土「………………ふむ、ただの炎症だね? トローチで充分かな。では次」
ステ(早いな…………)
冥土「臀部を九十発ほどひっぱたかれる……昨日のアレか。
僕は仕事中で見ていないんだが、テレビのあるロビーは爆笑の渦だったね?」
ステ「…………Son oF A bitch!」
イン「言葉づかいが悪いですの」
冥土「じゃ、下を脱いで」
イン「!」カァ
ステ「…………出て行ってくれ」
イン「えー? それじゃあ付き添い人としての役目が」
ステ「いいかい、三度は言わない。出て行くんだ」
イン「はーい」シブシブ
ステ「渋らないでくれ…………なにやら切ない気分になる」
バタン
冥土「それじゃ脱ごうか」
ステ「お断りする。尻が云々は彼女が勝手に言ってるだけで、実際は大した痛みじゃないんです」
冥土「そんなものは素人の浅い判断だよ?
まあ確かに歩き方や筋肉の張りに異常は見られないから、
脱ぐのは止してレントゲンを撮るに留めておこうかな?」
ステ「服の上からでもおわかりになるんですか」
冥土「僕ぐらいになると脱がずともね。
それにしても脱ぐ気がないならどうして彼女を外に追い出したんだね?」
ステ「『脱ぐ』を連呼するのは止めてください! …………実は、少し頼みが」
診察室前
イン「冷静になるとあの場に残りたがるなんてもの凄くはしたないんだよ……」ハァ
イン「でも、すているの事考えてると最近…………」
番外「最近?」
イン「胸の痛みが前より大きくなってて…………って!」
番外「どうもー、お久しぶり」ピチピチナースフク
イン「わーすと……! その格好って」
番外「聞く必要ないでしょ? ミサカは当院の看板娘なんだから」
イン「…………わーすとの治療はなんとなく受けたくないじゃん」
番外「(ヨミカワ?)ひっどーい。言いたい事はわかるけどさ?」
イン「ちなみに担当の科は?」
番外「心療内科」
イン「この病院危ないかもーーーーっっ!?」
番外「早めの休憩時間もらったからぶらついてたんだけど。アナタを見つけたからさ」
イン「私はこの部屋にいるステイルの付き添いで来たんだよ」
番外「……ああ、昨日散々叩かれてたもんねぇ。ミサカもテレビ見て興奮しちゃった☆」
イン(ミサカDNAの汎用性がヤバイ)
番外「ステイルさんか…………ねぇ、恋人なの?」
イン「…………違うよ。みさかねっとわーくで知ってるんじゃないの?」
番外「私、あんまネットワークには接続しないの。コレといった理由はもう無いんだけどね」
イン「聞かない方が良い話かな?」
番外「その方がありがたいかな。いや、でも……」
イン「大丈夫? 言いたい事があるなら遠慮しないでね」ニコ
番外「…………アナタって、結構聞き上手なの?」
イン「シスターだから当然じゃん!」
番外「そういう職業的技能を超越してると思うんだけど。
でも考えてみれば、アナタはミサカの先輩に当たるんだよね」
イン「……………………失恋の、ね」
イン「この間は、ロクにさよならも言えなくてごめんね」
番外「頭下げないでよ、悪いのはミサカなんだからさ」
イン「あの後はどうしてた?」
番外「んっと、アナタが『くーるびゅーてぃー』って呼ぶ子のアパートで、
一晩中飲んで泣いてた…………アナタはどうだった?」
イン「結婚が決まった後って意味なら…………人生で初めて、ヤケ酒ってヤツをしたんだよ」
番外「………………私たちってさ」
イン「うん」
番外「アナタはお義兄様が好きだったけど、お姉様に勝てなかった」
イン「でもあなたは、らすとおーだーを決して嫌ってなんかいない」
番外「だって、可愛い妹で、頼りになる姉なんだから」
イン「好きになりこそすれ、嫌いになんてなれるはずないよね」
番外「アハハハ! 何これ、ミサカたちってビックリする程そっくりさんだね!」
イン「いまだにその男性(ひと)を愛してるって点まで含めてね」
番外「! アナタ…………」
イン「おかしいよね? 本来なら、五年前に諦めてるべきなのにね」
番外「……諦めるとか、そう言う話じゃないじゃん」
イン「…………」
番外「私はこの世に生み出された時から、あの人の為だけに存在してたんだ。
たとえそれがどんな腐った理由で、どんな汚らわしい目的だったとしても」
「私の生きる道は――――あの人なくしては在り得ないのに」
「……私も。私の人生は、あの人が救ってくれたから始まったの」
――――私と一緒に、地獄の底までついてきてくれる?――――
「あの人の、とうまの為に生きるのが、この上ない幸せだった」
番外「そんなに好きなのにさ。振られたからって他の男を好きになれるもんなの?」
イン「……正直に言っちゃえば、私自身も意外だったんだよ。
とうま以外の人を愛するっていう感覚が、自分の心じゃないみたいだった」
番外「………………良いなぁ」
イン「決して、良いとは思えないけど?」
番外「一般論ではだよ? 恋なんて破れるのが普通、また次のを探すのが女の常じゃない」
イン「…………私の周りにも沢山いるかも、そういえば」
番外「でしょ? 一人の男しか眼中に無いミサカって異常なのかな、とか思っちゃうわけよ」
イン「そんなことない、って言ったら自己弁護になっちゃうかな」クス
ガチャ
ステ「待たせたね…………おや」
イン「あ、ステイル!」
番外「ちぇー、いいところだったのに」
ステ「? お邪魔をしてしまったかい?」
イン「だいじょぶかも。中に戻ってもいいんだよね?」
ステ「ああ、もういいよ」
番外「短い間だけど話せて楽しかったよ。じゃあ……」
イン「ちょっと待って」
番外「え、なに?」
イン「番号とアドレス、交換しよう?」
番外「! い、いいの? 宗教家のお偉いさんの番号なんて」チラ
ステ「プライベートを制限するほど、イギリス清教は閉鎖的ではないよ」
イン「わーすとが嫌じゃないなら。どう?」
番外「よ、喜んで! いやー、何かミサカすごい番号ゲットしちゃったな」イソイソ
イン「『妹達』も二十人ぐらい登録してあるよ、私」ポチポチ
番外「(案外レアでもなかった)……完了! 今夜電話していい?」
イン「いつでもOKなんだよ」
ステ「イギリスに帰った後は、時差を気にしてくれるとありがたいね」
番外「あっは、神父さんって石頭かと思ったら意外に話せるじゃん」
ステ「……油を売ってていいのかい、看護士さん?」
番外「ざんねーん、まだ休憩時間で…………アレ?」
ミサカ13577号「油売りから本職へ復帰する時間は、とっくに過ぎていますよ番外個体」
番外「ひっ!?」
イン「あーあ」
ステ「だから言ったろう」ハン
13577「三十分オーバーですので三百分ほど余計に働いてもらいましょうか」
番外「ち、巷で節電が叫ばれるこのご時勢に残業を推進する様な発言は如何なものかと」
13577「なるほど、では明日の朝は五時間早く出勤してもらいましょうか」
番外「わ、わかった! ミサカが悪かったからせめて睡眠を二時間は確保させてええ!」
ヘルプミー!! ユーキャンノットエスケープフロムミー トミサカハ
イン「またねー」フリフリ
ステ「さて、次は貴女がうるさかった肺の検査結果だ」
イン「うるさいなんて言い方は無いと思うよ! ロリコン疑惑の原因でしょ!」
ステ「それは貴女が吹っかけてきた言い掛かりだろうが! 疑惑もクソもあるかッ!」
イン「いーや、アニメで年齢に言及されなかった理由はもはや誰もが知ってるんだよ。
そのせいで私や小萌に絡むのを見たアニメからの人が誤解するんですの!!」
ステ「やめんか! この際どい話をこれ以上続けるつもりはない!! 僕は診察室に戻るぞ!」
イン「ハイハイ死亡フラグ死亡フラグ」
ステ「やかましい!」
診察室
冥土「病院なんだから君たち、少し静かにしてくれないかね?」
ステ「…………し、失礼した」ペコ
イン「ごめんなさい……」ペコリ
冥土「さて、奥さんが最も心配していた煙草の吸い過ぎについてだね?」
ステ(反応したら負けかな、と思ってる)ピクピク
イン(しっかりこめかみが震えてるかも)
冥土「一日平均四十本、これはヘビースモーカー一歩手前の数字だね」
イン「え!? そ、そんな程度だったの!?」
ステ「僕を何だと思ってたのかな」
イン「ガチガチのヘビースモーカー」
ステ「はぁ…………否定はしないがね。最近減らしたんだ」
冥土「検査の結果も今のところ正常。あまり煙を深く吸わないようにしてるのかな?」
ステ「ここ五、六年は、そう心がけていますよ」
イン「じゃ、じゃあ何も心配要らないの?」
冥土「エックス線検査は決して万全じゃないんだけどね?
まあそこは学園都市製という事で一つ」
イン「さすが学園都市製じゃん!」
ステ(言い訳じみて聞こえるのは、僕が穿った物の見方をしているからだろうか……)
冥土「とは言えやはり健康の為には禁煙すべきだ、と医者としては言わざるを得ないよ?
減煙はいつから、どのくらいの本数から始めたのかな?」
ステ「それは、言わなければいけないのですか?」
冥土「もちろん強制はしないよ? ただ今後の事を考えればね?」
イン「ステイル」ジトー
ステ「…………はあ。およそ四カ月前に始めました。だいたい月百本から七十本に」
冥土「それはそれは。よく減らせたね?」
ステ「………………別に」
イン(あれ? 四か月前?)
冥土「今の本数にしてからはどのくらいかな?」
ステ「だいたい一月です」
イン(………………)
冥土「ふむ。減煙と言うのは普通、禁断症状を増幅させるばかりで良い事無いんだがね?」
ステ「ストレスがどうこうする世界はもう通り過ぎましたよ……」トオイメ
冥土「……むしろ胃の方が深刻そうなんだね? 禁煙するだけの精神力はあるようだから」
イン「あの、ステイル。聞いていい?」
ステ「なにかな」
イン「タバコ減らした切っ掛けなんだけど。私の自惚れじゃなかったら……」
ステ「遠慮する事はないよ」
イン「その。私がダイエットしてるから?」
ステ「…………ああ」
イン「じゃ、じゃあ…………私のご飯の量が普通になったら?」
ステ「禁煙するよ、貴女の望み通りに」
イン「!」
ステ「十字の前で誓ってもいいさ」
イン「……ニコチンとタールの無い世界は地獄だって言ってたよね?」
ステ「…………貴女と一緒なら、地獄も悪くはない」
イン「え?」
ステ「あまり積極的に、というのはゴメンだがね。
無力な僕に出来るとしたら、これが限界さ」
イン「………………やっぱりばかだよ、すている」ギュ
ステ「かもしれないね」ス
冥土「ご両人、申し訳ないがこの後も診察はあるんだがね?」
ステイン「!!!」ガバッ!
冥土「磁石みたいな反応だねぇ、くっついたと思ったら離れて」
ステ「そ、そこまで密着してはいない!!」アセアセ
イン「そーだよね、すているハグは絶対してくれないし」ボソボソ
冥土「…………はぁ、最後は胃カメラを飲んでもらうよ?」
十分後
ステ「もう少し苦しいものだとばかり思っていたよ」
イン「さすが学園都(ry」
冥土「それを抜きにしても胃カメラ技術は進歩しているからね。世間一般のイメージも今は昔、さ」
ステ「それで、結果は……?」オソルオソル
冥土「僕を誰だと思っている?」キリッ
イン「……先生、名台詞を使うのがワンテンポ早いんだよ」
冥土「おや?」
ステ「いやだから、とりあえず結論をお願いします」
冥土「まあよくもここまで荒れてるものだね?」
ステ「やっぱりか…………」ズーン
イン「先生でもどうしようもないの?」
冥土「ふっ、僕を誰だと思ってる? 特製の特効薬を投与するから安心したまえ」
イン「感動も半減なんだよ」
ステ「さっきの今だからな…………」
冥土「これで診察は終了だよ。後はロビーで待っててくれ」
ステ「その前に、少しだけいいだろうか」
冥土「……あまり言いたくはないが、手短にしてくれると嬉しいね?」
ステ「一つ、質問するだけですよ」
冥土「なら構わないかな」
ステ「貴方はアレイスター=クロウリーの生死をご存知ですか?」
冥土「………………なぜ、僕にそんな事を?」
ステ「貴方の患者なんでしょう、奴は」
イン「イギリス清教には、彼専用に組み上げられた探知術式があるの」
ステ「三年前。アレイスターが上条当麻に敗北したその日以来、反応は皆無ですが」
冥土「ならばきっと、彼は今この世に居ないんだろうね?」
ステ「知らない、と言う事でよろしいですか」
冥土「……認めたくはないね。自分の患者が、己のあずかり知らぬ処で死んだなどとは」
ステ「! だが奴はこの箱庭を創り、数多の悲劇を産んだ男だ。それでも貴方は……」
冥土「誤解を恐れずに言おう。僕は彼を救った事を後悔などしていない」
イン「………………そっか。先生はお医者さんだもんね」
冥土「その通り。医者は目の前の命を救うのが使命。
更に言うなら、結果として現れるモノは宿業なんだよ。
そこから目を背けるつもりは、ないさ」
ステ「…………思いの外、長引いてしまいましたね。最後にあと一つだけ」
冥土「どうぞ?」
ステ「もしも今、彼が貴方の眼前で倒れ伏していたら?」
冥土「助けるよ、もちろん」
ステ「――――わかりました。では今度こそ、失礼します」
イン「さようなら。お世話になりました、先生」
冥土「………………お大事に」
ガチャ パタン
「僕の仕事はどこまで行こうと治す事のみさ。なあ、アレイスター?」
-------------------------------------------------------------
控え目な賑やかさの雑居する待合ロビーに戻ってきた二人は、疲労感と共に着座した。
先ほどの騒動にも関わらず患者たちの注目が良くも悪くも目立つこの男女に集まらないのは、
ステイルがいつもより念入りに『神隠し』の術を行使しているからである。
処方箋の発行を待つあいだ、二人の口数はやや少なかった。
「この街に来て、いろんな人に会ったね」
インデックスがそう呟いたのは、冥土返しと別れて十分ほどの事だった。
ちょうどその時ステイルは、窓を通して梅雨明けの青空を眺めていた。
「そうだね。本当に、多くの希望と絶望に触れた」
一人の『人間』が播いた、夥しい数の絶望の種子。
そして、抗った『人間たち』から際限なく溢れた、希望と言う名の水。
二人がこの街で目撃したのは、二つの望みがない交ぜになった、科学と言う名の庭園だった。
生徒の身に降りかかっていた悲劇を知り、心を痛めた女がいた。
悪魔の目から家族を守るため、多くを失った男がいた。
深い深い電子の闇から、いまも抜け出せない男がいた。
じっけん
狂気の沙 汰の後遺症を、振り払おうともがく人々がいた。
暴かれた裏側に、世界の在り様を見つめ直した女がいた。
決して消えない爪痕と共に散った、一〇〇三一の命があった。
「私たちの問題なんて、ちっぽけなものに思えてしょうがないね」
「…………実は僕も、そうじゃないのかと自問してしまった」
男女の心の機敏など霞む、血で記された脚本がそこかしこに存在していた。
陳腐なラブ・ストーリーの登場人物が、場違いを知覚しても無理からぬ事であった。
「その中で強く生きている人達に比べて、私は
そんな事はないだろう
……………………え?」
少なくとも私は、君たちが演出し、出演するこの舞台を
とても楽しく拝見させてもらっているよ
「どうかしたのかい、最大主教?」
いま
現在の私にとって、ただ一つの愉しみなんだ
どうか、失望させないでくれよ
「――――――――――――――――――」
「最大主教、おい! 聞こえているかい!?」
聞きなれた声で、瞬きすら忘れていたインデックスの瞳に光が戻ってきた。
何者かの声に聴き入っているようだった、とステイルは根拠も無く直感した。
周囲ではこれまでと変わらず、生温かい活気がBGMを務めている。
「ごめんなさい、ステイル。ちょっとお花摘みに行ってくるね」
何事も無かったのように微笑み、女はやおら立ち上がった。
ステイルは続けて質そうとするが、一瞬早く彼女は小走りで去ってしまった。
呼気の行き場を失った神父の視線の先で、その手が修道服の内側をまさぐる。
腕が伸びた先には、携帯電話が仕舞ってあったはずだ、とステイルは思い出した。
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とある日、とある時、とある場所。
明りの灯らない静謐な、広々としたスペースに四つの影が在った。
「……なぜ、計画を変更した?」
沈んだような低い声。
「怖気づいたの? いつもの強気はどこに消えたのかしら」
弾むような高い声。
「いけませんね、喧嘩腰では。まずは言い分を聞こうではありませんか」
張り付けたような明るい声。
「完璧な遂行のため、だ」
――そして燃えるような、しかし昏い声。
「日取りを変えただけだ。単純極まりない内容に変更点は無い」
「ま、そりゃそうよね」
「予定通り、第一一学区のゲートから私が先駆けすればいいんですね?」
「おのおの、過ぎた相互干渉は不要という点も変わりないな」
連帯感をまるで感じさせない好き勝手な言い草が飛び交った。
しかしリーダー格らしい男はまるで気にも留めず、一つ大きく頷いた。
「決行は、七月十五日未明」
幽かな月明りの差し込むステンドグラスの瞬きに向けて、
己に酔いしれるかのようにその両の腕が空に伸ばされる。
他の三人の視線が、思い思いの色を帯びて自然と一点に集中した。
かがく
「学園都市に、立ち直れない痕を刻んでやろうではないか」
--------------------------------
OUT
心理掌握
粒子加速器
最終信号 ⇒冥土返しが胃カメラの片手間に十分でやってくれました
警備員ですの!
警備員じゃん
IN
冥土返し ←New!
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とある日 とある託児所
幼児A「まことちゃん、おれとプリンたべよ!」
幼児B「あー! ぼくがさきにあそぶやくそくしたのにー!」
幼児C「ね、まことちゃん。わたしとおままごとしよ?」
真理「えー? みんないっしょにあしょべばいいじゃん!」
絹旗「真理ちゃんは超いつも通りですね……さすがフラグ夫婦の子です」
ヒョコヒョコ スタスタ
イン「こんにちは!」
ステ「失礼するよ」
絹旗「これはこれは。今日はお宅のお子さんのお迎えですか?」シシ
ステ「アホぬかせ」
イン「まことのお迎えに来たんだよ」
絹旗「ええ、上条さんからお電話頂いてますよ」
ステ「じゃあ今の無駄なやり取りはなんだ!」
絹旗「超挨拶がわりですよ…………あれ、裏篤じゃないですか」
裏篤「……こんにちは、きぬはたさん」
イン「りこうからも幼稚園へのお迎え頼まれたの」
絹旗「むむむ、超信頼されてますね」
ステ「日ごろの行いのおかげでね。ところでこの子は大人しいな……」
裏篤「………………」ボー
イン「私たちみたいな何回も会ってない人の前だからなんだよ、きっと」
絹旗「いえいえ、裏篤はいつもこんな感じですよ。ね?」
裏篤「………………ん」コクリ
ステ「母親似なのかな」
絹旗「私もそう思うんですけど、超馬鹿面は名前がどうとか言ってましたね」
イン「名前?」
絹旗「私も詳しくは超知りません」
トテトテ
真理「あー! いんでっくしゅ、しゅている………………あ」
ステ「迎えに来たよ。…………?」
イン「どうかしたの、まこと?」
絹旗「ああ…………お二人はまだ知らなかったんですね」
ステ「何の話だい?」
絹旗「真理ちゃんと裏篤の事ですよ」
イン「え? いわゆる一つの、幼馴染でしょ?」
絹旗「超すぐにわかりますよ」
ステイン「?」
裏篤「……まこと、いっしょにかえろう」
真理「は…………はぁ!? にゃにいっちゃってるわけ!?」
ステイン「!?」
裏篤「……おまえ、いつもそればっかだよな」
真理「うっしゃい!! しゃんしゃいとしうえだからっていばんにゃいでよ!!!」
ステ「これは」
イン「まさか」
絹旗「おわかりだろうか? そう、真理ちゃんは裏篤に対して…………!」
真理「かんちがいしにゃいでよね! うまづらのことにゃんてぜんぜんすきじゃにゃいもん!!」
ステ「ツン…………ッ!」
イン「デレ………………ッ!?」
絹旗「父親からはフラグブレイカー、母親からはツンデレールガンを継承したサラブレッド。
それが、上条真理ちゃんの超正体なのですッ!!!」
イン「末恐ろしい子ッ…………なんだよ!」
ステ(常時よりボキャブラリーが増えてないかあの子)
イン「馬面っていうのは…………」
絹旗「ああ、白髪のオジサンと遊んでたらうつっちゃったみたいで」
ステ「oh…………」
絹旗「しかししかし超しかし! 我らが真理ちゃんのポテンシャルはこの程度ではありません!
神父さん、あの二人を一時的に二人っきりに出来ますか?」
ステ「出来るか出来ないかと聞かれれば、出来るがね」カードスッ
イン「するとどうなるのかな?」
絹旗「もちろん見てからの超お楽しみです」
イン「ステイル、GO!」
ステ(悪趣味な大人どもに囲まれて可哀想に……まあ、僕も見たいんだけどね)バラマキ
カミカクシー
裏篤「…………!」スッ
真理「ちょっ、いきにゃりちかづかにゃいで…………あれ、せんせーは?」
裏篤(しんぷさんがなにかしたのかな)
真理「み、みんなどこー?」
裏篤「……おちつけ、まこと」
真理「………………みんな、いないの?」
裏篤「……たぶん」
真理「………………ふたりっきり…………」
ステ「異変を感じてとっさに真理を庇ったね」←すぐ近くで見てる
絹旗「ふふふ、ウチの裏篤はなかなかの紳士でしょう?」フンス
イン「この後何が起こるのかな?」ワクワク
裏篤「……しんぱいすんな、おれがいる」
真理「……………………りとくん」ボソッ
ステ「おっ」
イン「これは?」
裏篤「……なんだ、まこと?」
真理「りとくん……えっと…………こわいから、なでなでして?」ウワメヅカイ
ステイン「……………………!!!!」デンリュウハシル
裏篤「……ん」ナデナデ
真理「んにゃあ…………りとくぅん……」ゴロゴロ
イン「あ、あの歳で………………ッ!!」
ステ「デレを極めている……………………だとおッ!!!」
絹旗「二人の時だけ超素直になる、お母さんとはまた一味違うツンデレですね」
イン「みことは『時間経過型』あるいは『フラグ回収後型』だったからね」
ステ(ツンデレってのは奥が深いな……)
真理「えへへ~…………りとくん、ちゅ、ちゅーして?」
裏篤「………………やれやれ」
絹旗「老若男女問わずの全方位旗立てに加えて、本命へのデレデレスキンシップ。
…………この超スペック、如何思われますか?」
ステ「ああ、これは確かに」
イン「サラブレッド、かも」
オワリ
イン「ステイルステイル! 新訳二巻の表紙絵が公開されたんだよ!」
ステ「…………ああ、それは良かったじゃないか」
イン「あれ、何そのリアクション」
ステ「もう何回目かもわからない表紙登場おめでとう」
イン「そんな子供みたいな事で拗ねてるの!? 私だって十七巻以来の登場かも!」
ステ「ああ、神裂と仲良さそうにしてたアレね……」
イン「べ、別に良いでしょ、設定上は親友なんだから」
ステ「ちなみに僕は十巻の端に登場したのが最初で最後だ」シュボ
イン「…………い、一応あの絵で私と一緒だったよね!」
ステ「間に年増と歩く18禁を挟んでだったがね」フー
イン「(どんどん傷口が広がってくんだよ)…………あれ?」
ステ「どうかしたかい?」プカー
イン「……よく見たら『SP』の表紙絵も公開されてるんだよ」
ステ「なにっ!? という事は」
イン「良かったね、表紙はステイルとイノケンティウスだよ」
ステ「なん…………だと? いや待て、これは夢だ、夢に違いないね」
イン「現実だよ、ちゃんと向き合って」
ステ「……………………………っしゃああああああああ!!!!
一巻から出続けている僕にもようやく日の目が当たる日が来たのか!
神裂なんて四巻でとっくに一人で表紙を飾っているっていうのに、
僕と来たら苦節――――何年だっけ? まあいいや、この扱いだった!」
イン「………………」
ステ「それが、それが遂に! …………おっと失礼、取り乱したね、HAHAHA!」
イン「…………じゃあステイル、もう一つの現実もお目に掛けようね」
ステ「? さ、さっきからなんなんだい?」
イン「簡単な事なんだよ。私の質問に一つ答えるだけだから」
ステ「はあ」
イン「……………………ねえステイル?」
「この可愛い女の子、誰?」
「!? あ、いやその、彼女は別に」
「 だ れ な の ? 」
「単なる、そう、仕事上のアレ、あ、ちょま」
「 す ー て い る ぅ ? 」
終わりがないのがオワリ
七月十五日 午前六時
上条家 ベランダ
「それは、本当なのか?」
『ああ、間違いない。たった今、「吐かせたて」ほやほやのネタだ』
「科学サイドにはこのことは?」
『もう別口で伝えてある。対策は向こうの頭脳が立てるさ。…………問題はお前達だ』
「何の問題があると言うんだい」
『お前は連中の恐ろしさを目の当たりにした事が無いんだ! 今すぐにでも援軍を……!』
「それでは全てが台無しだ。らしくないぞ」
『…………すまん。この件に関しては、オレの失策だ』
「己が身は、自分で守れるさ。僕も…………彼女も」
『……お前こそ、なんぞ心境の変化でもあったか?』
「彼女は強い。そして、天才だ。それを思い出しただけだよ」
『…………そうか。カミやん”も”いないそうだな?』
「一昨日からアメリカに出張中だ。相当に渋ってたがね」
『あのアマ…………っ!! くそ、お前達はどう動く?』
「決まってるだろう、現場だ」
『確認するまでもないが、最優先事項はわかってるな』
「愚問だ」
ブツッ
「…………長い一日になるな」
ガラガラ
美琴「あら、こんな朝早くから電話?」
ステ「……ああ、仕事の関係でね」
美琴「仕事ねぇ」
ステ「最大主教は? もう起きてるかい?」
美琴「ええ、まだ寝室だけど。さっきに起こしに行ったら誰かと電話してたわよ」
ステ「電話……そうか、ありがとう」
美琴「何のお礼よ、変なの。今日は出かけるの?」
ステ「ああ。今日は一日忙しいかもしれないね」
美琴「そっちもなの? 実は私も母校で講演しなきゃいけないのよ。
浜面さんもお出かけらしいし、真理は絹旗さんのところかな」
ステ「……そもそも今日は」
美琴「いいのよ、今回だけはね。私も他の妹達も、行かないって決めてるの」
ステ「………………そうかい」
美琴「それより我慢できないのはね」
ステ「?」
美琴「今日で六連チャンって事なのよおおぉぉぉぉ!」
ステ「……世の社会人には珍しくもなんともないよ」
美琴「真理ちゃんの相手をロクに出来ずに六日! もう嫌だわ……夜しか寝れてないもん」
ステ「ツッコまないぞ? ツッコまないからな?」
美琴「不幸だわ…………講演会なんて抜け出そうかしら」
ステ「ちゃんと責務を果たせ! いい大人だろうが!!」
美琴「はあああ………………あ、新聞取ってきてちょうだい」
ステ「やれやれ」
スタスタ
ガチャ
ガサゴソ
ステ「………………これは」ピラ
美琴「どうかしたー? はぁ」
ステ「……いや、今日の予定が決まってね」
美琴「なんか面白いチラシでもあったの?」
ステ「ああ、ちょっとメイド喫茶に行ってくるよ」
美琴「は?」
午前八時 第七学区 警備員第七三活動支部
ガチャ
佐天「おはようございます!」
削板「おはよう佐天! 朝の挨拶はこうじゃなくちゃな!!」
白井「朝っぱらから頭に響くので遠慮して欲しいですの……」
削板「そりゃあいかん! 軽くランニングしてスッキリしねえと」
白井「隊長の『軽く』は天元突破しすぎですの!」
佐天「あのー、それで何で招集されたんですか? 私これから研修に行くんですけど」
白井「コホン! それでは事態を説明させていただきます。まずはコチラのモニターを」
ブゥン
佐天「これ…………第一一学区の物資搬入ゲート?」
削板「まあ、もう見る影もないけどな」
白井「今日未明、何者かが警備の最も手薄になる時間帯を狙って正面突破してきたようです」
佐天「正面突破、って! こんなの戦車でも持って来なきゃ不可能ですよ!」
削板「………………あるいは、魔術師か」
佐天「!!」
白井「本部でもその見方が強まっております。もしかすると、『あの二人』が手引きを」
佐天「白井さんっ!!」
白井「……冗談ですの、九割ほどは。彼らの奇妙な動きは上層部も黙認していたようですし」
佐天「ほっ…………それで、私たちはどうすれば?」
削板「皆は警戒だけは怠らず、普段通りの職務に当たってくれ。有事の際には俺が出る」
白井「た、隊長? そのような独断専行はお止しになった方がよろしいかと思うのですが」
削板「むむ、俺の頭ではどうにも上手く説明できねえんだが…………。
何かあったら、とにかく俺に知らせろ! 責任は俺がとる! ってえ事だ!!」
佐天「…………なんかモーレツに納得いかないんですけど」
白井「とは言え隊長ですし。これ以上訊いてもきっと無駄ですわ」
佐天「それで済むのが七三支部クオリティーなんだよね…………」
午前九時 第十二学区
イン「…………凄まじい『場違い』を感じずにはいられないんだね?」
ステ「辺りには神学校が割拠しているというのに、まったく」
「お客様は神様~右席に失礼しますご主人様~ベツレヘムの星へようこそ!」
ステ「……………………はあ」
イン「居るのかな、あの人は」
ステ「土御門の情報と照らし合わせるなら、可能性は高い」スタスタ
イン「え、ちょっと。まだ『CLOSE』って」
ステ「貴女がメイド喫茶を満喫したいなら一時間後に一人で来るんだね」
イン「二人で行かないの?」
ステ「男女でこんな独り身御用達の店に来て何が楽しいんだ!」ガチャ
カランカラン
??「あらお客様、開店時間まではまだありm」ピシ
ステ「すまないが、CEOに話があってきたんだ。今この店に居るんだろう?」
イン「…………聞こえてないよ、固まっちゃってる(かなりの美人メイドかも)」
ステ「おやレディー、どこかお具合でも?」
イン(このフェミニストっぷりが時々憎い…………あれ、私の方見てる?)
??「な、な、『禁書目録』!?」
イン「! 最大主教としてじゃなく、魔道図書館としての私を知ってるって事は……!」
ステ「なるほど、魔術師かい。それなら話が早いな」
??「何の目的で此処に来た!?」
ステ「既に言っただろう。君たちのボス――――フィアンマを出せ、とね」
同時刻 第七学区
常盤台中学校 講堂
ザワザワ ガヤガヤ
美琴「ふう…………真理ちゃああんん…………」
キビキビ
寮監「おお、御坂……いや上条か。久しぶりだな」
美琴「あ、教官、じゃなかった寮監! お久しぶりです」ペコリ
寮監「誰が教官だ…………しかし感慨深いな。
あのじゃじゃ馬がこうして壇上で生徒を見下ろす立場になったとは」
美琴「そんな言い方はないですよー。 私だってもう一児の母…………まことちゃぁん」オヨヨ
寮監「生徒の成長を見守るのがこの身の喜びとはいえ、自分が歳をくった事は実感せざるを」
美琴「まこちゃん、ママは一刻も早くあなたに…………ハッ!」
美琴「あの、すいません!」
寮監「いつまでも行き後れと呼ばれるのは耐えがた……おっとすまない、どうした?」
美琴「私、自分の講演だけ済ませたら帰る、というわけにはいかないでしょうか?」
寮監「…………はあ」
美琴「い、いやだなー。そんなこれ見よがしな溜め息つかなくても」アハハ
寮監「お前は結局のところ相変わらずなわけだ、と思ってな。無理に決まってるだろう」
美琴「ですよね……」
寮監「今日の主賓なんだぞお前は。もっと常盤台OGとしての自覚を持て!」
美琴「はい………………はぁ」チラッ
寮監「今度はどうした」ヤレヤレ
屈強な黒服達「「「………………」」」
美琴「いえ、今日の警備は昔よりも物々しいな、と思いまして」
寮監「ああ……いつもはもちろんここまででは無いが。
今日は特別だろう。なにせ巷間で屈指の人気を誇る『超電磁砲』の講演会だからな」
美琴「…………そうなんでしょうか」
寮監「おいおい、九年も経つと性格も変わってしまうのか? もっと自分に自信をだな」クドクド
美琴(……本当に、それだけなのかしら)
(今朝のステイルの様子も少しおかしかったし)
(それにいま、当麻は学園都市には居ない)
(真理に何かあった時――――あの子を守るのは、私の役目だ)
「…………………………い!」
美琴「ん?」
寮監「……………………いてるのか、上条!!」
美琴「んにゃ、ひゃい!? な、何でしょうマム!!」ビシッ
寮監「誰が鬼上官だっ!! 出番だぞ、早く行け!」
美琴「へ!? も、もうそんな時間!? い、イエスマム!!!」ソソクサ
オ、オマタセシマシター
ワーワーワー ザワザワザワ オオオッ!!!
ミコトサマ! レールガン! ツンデレールガン!
ツンデレッツッタヤツチョットマエデナサイ!
寮監「…………不安だ……いや、こういう時はいま流行りのアレだな」
寮監「不幸の予感だ………………」ハァ
午前九時半 メイド喫茶『ベツレヘムの星』
スタ スタ スタ
ステ「…………久しぶりだね」
イン「私の昇叙以来だから、もう九ヶ月になるのかな。『右方のフィアンマ』」
フィアンマ「ふっ、遂に俺様の城に足を踏み入れる気になったか。歓迎するぞ」
フィ「それから一つ訂正を求めよう。俺様の事は、ただの『フィアンマ』と呼べ」
ステ「僕らの話はわかってるだろうな、『ただのフィアンマ』」
イン「学園都市に出店したのもこの時の為だったんだね? 『ただのフィアンマ』」
フィ「ん、何をそんなに怒ってる?」
ステ「当然だろうがこのチラシを見ろ!!(ピラ)
いまだに最大主教の写真を無許可で掲載しやがって!!」
イン(別に私はいいんだけどなぁ、メイド服可愛いし)
ステ「この一年、会ったら一言くれてやろうと思ってたんだよこっちは!
なんだこの異様に完成度の高いコラ画像はあああ!!!」
フィ「知っているか? 肖像権侵害は親告罪なのだから本人の訴えが無ければ成立しない」
ステ「……!! そ、そういえば」
フィ「世界を股に掛けるチェーン店の経営者である俺様が、
その程度の法務知識も備えていないと思ったのか? 底が知れるぞ、ステイル=マグヌス」
ステ「グググググッ!」
イン(華麗に論点をずらされてるんだよステイル……まあ私は別に(ry)
フィ「それで? そんなクレームを付けにわざわざ当店にお越し下さったのか?」
ステ「……Holy Shit! 本題に、入ろう」ギリギリ
イン「(聖職者がその表現はまずいんじゃ)それより私は口調の事が気になるんだね?」
ステ「なぜ僕のトラウマを抉る方向に舵を切るんだ!?」
フィ「口調?」
イン「最後に別れた時はローラとさいじの喋り方がハイブリッド状態だったね?」
ステ「その組み合わせで何らかの文化的発展が得られるとは思わないけどね」
フィ「ああ…………周りがとやかくうるさかったからな。
ビジネスに相応しい話し方がどうとか、矯正には苦労したよまったく」
??「ちょっと待て! さも自分の苦労話のように吹聴してんじゃないわよ!!」
フィ「む」
ステ「誰だ!」
??「苦労したのはアンタじゃなくて私でしょうがこのおかっぱ頭!」
イン「あ、さっきのメイドさん」
フィ「なんだ、開店間近だというのにどうして着替えたんだヴェント?」
ヴェント「名前で呼ぶなあああああ!!!!!」
ステ「ヴェ、ヴェント…………?」
ヴェ「あ、ち、違うのコレは」
イン「えーっと、天罰術式で『0930事件』を起こした、あのヴェントさん?」
ヴェ「いやだから」
フィ「今日は指名予約が三名様入ってるぞチーフメイド」
ヴェ「ちょっとアンタ黙ってなさいよおおおおお!?」
フィ「まあどっちみち今日は開店しないけどな」
ヴェ「がああああ!!! アンタ一発殴らせて頼むから!」グイッ カラン
フィ「どうどう」
ステ「濃厚な同一属性の魔力を感じる……!」
イン「…………別に『前方』は火属性じゃないから、
ヴェントとすているに属性的な共通点なんて無いよーだ」フン
ステ(そんな意味のわからない機嫌の損ね方をされてもな……(コツン)ん、何だコレ)
午前十一時 第一学区 統括理事会本部
雲川「………………そうか、その……くれぐれも無茶は」
コンコン
雲川「どうぞ」ピ
親船「あら、芹亜さん。もしかしてお邪魔だったのかしら?」ウフフ
雲川「何か御用で?」
親船「あらあら」
雲川「…………御用をどうぞ、統括理事長……!」
親船「うふふ」
ドン!
雲川「貴女、私をからかいに来ただけだな!?」
親船「からかうだなんてそんな。芹亜さんも人の子だもの、
心配で胸が張り裂けそうになっても無理はないわ」
雲川「捏造だけど! それは捏造以外の何物でもな」
prrrrrrr!
親船「どうぞ、出てくださって構わないわ?」ニコニコ
雲川「…………もしもし! まだ何か話が………………へ?」
雲川「ま、間違えたんだ、気にするな!! ……コホン、報告を聞くけど」
親船(あら?)
雲川「!! 付近の捜索は! 検問の設置はどうなっている!!」
親船「……………………あらまあ、もしかして」
雲川「クソッ!」ピ
親船「いけないわ芹亜さん、淑女らしい物言いを心掛けないと」
雲川「それどころじゃあないんだけど」ハァ
親船「常盤台からの連絡かしら?」
雲川「いかにも。『超電磁砲』が自分の講演時間を終えた途端に消えたらしい」
親船「…………攫われた、という可能性は万が一にも在り得ないのかしら?」
雲川「書置きが控室に残されていたそうだけど」
親船「どのような?」
雲川「『我真理を愛す故に我在り』」
親船「……………………錬金術の極意に辿りついた、とかじゃあなさそうねえ」
雲川「あの親馬鹿娘がぁ……! アイツの性格のどの辺りが『破綻してない』んだ!」ピピピ
親船「あら、今度こそ愛しの旦那様に?」
雲川「やかましいんだけど! ……もしもし、例の番号はしっかり登録してあるな?
今後はその相手からの指示に従って移動して欲しいんだけど」
親船(お茶でも淹れましょうか。親船最中はまだ動かない)
雲川「……ああ、『超電磁砲』の位置を把握するのもいいんだけど。
やり方としてはこの手の方が確実だ。じゃ、あ…………」
親船「」コポポポポポ
雲川「た、『大したこと』じゃないけど! ああっと…………ええっと」
雲川「し、死なないで………………無事で帰ってきてね?」
親船「そろそろ出来たかしら」ツツツ
雲川「うん、うん…………わかった、信じてる」ピ
親船「」ズズズ
雲川「はあ………………」ポー
親船「あらあらまあまあうふふ」
雲川「………………!? ってうわあああああああ!!!!
い、いま見て聞いて触ったありとあらゆる一切合財を忘れて欲しいんだけど!!!」
親船「若さって、振り返らない事よねえ」ズズ
雲川「振り返りたくないんだけどおおおおおお!!!!!!」
再び『ベツレヘムの星』
ステ「…………はあ、了承した」ピ
ヴェ「そっちのアンタ! 私の話聞いてたの!?」
イン「ま、まあまあ。私がちゃんと覚えてるから安心して?」
フィ「一時間以上も言い訳めいた身の上話をせずともいいだろう」
ステ「コレは失礼。いまいち要領を得なかったが、話をまとめてもらっていいかな」
イン「ヴェントは三年ぐらい前から、フィアンマの監視をしてたんだね?」
フィ「俺様に言わせれば、勝手に着いてきただけなんだけどな」
ヴェ「私は前教皇にアンタから目を離すな、って言われてるのよ! 誰が好き好んで!」
ステ(ほう)
イン(まさかコレは…………?)
フィ「その割には喜んで俺様の覇道に手を貸しているじゃないか」
ヴェ「誰がっ!! 生活の糧を得るために仕方なくやってんのよ!」
イン「でも、イギリスに来た時はフィアンマ一人だったよね?」
ヴェ「そ、それは…………」
ステ「最も監視を緩めてはいけないタイミングだと思うけどね」
フィ「万が一、億が一にも自分を知る相手には出くわしたくなかったそうだ」
ヴェ「ん、ぐ………………」
イン「え、ロンドンに知り合いなんて居るの?」
ステ「あるとすれば元ローマ正教のオルソラやアニェーゼ部隊か。
…………いやいや、『後方のアックア』が居たな」
ヴェ「たとえどこの馬の骨ともわからない魔術師の一人にでも、
元『神の右席』がメイドやってるなんて知られたら舌噛むわよ!」
ステ「いま僕らが知ってしまったがね。そんなに嫌なら辞めればいいだろう」
ヴェ「……………………」
イン「ねえねえヴェント」コソコソ
ヴェ「……なによ」
イン「フィアンマってニブい?」ゴニョ
ヴェ「!!!!!!」パクパク
ステ「奴もまた上条当麻の犠牲になったんだ……犠牲の犠牲にね…………」
ヴェ「ど、どどどっど、どういう」カァァァァァ
イン「そっか、ローマは結婚に関してはイギリスより厳しいもんね?」
ヴェ「………………よーし。私に敵意があると見なしたよアンタらぁぁぁ!!!」
ステ(天罰術式はもう使えないだろう……)
フィ「よさんかバカもーん」バチカーン
ヴェ「ごっ、があああああああ!?」ドガッシャーン!
ステ「おい待て…………どういうことだ今のは?」
イン「え? あれ?」
フィ「お前達の用事は、『コレ』に関係しているんだろう?」クク
ステ「…………わかっててやってたなクソ野郎。素晴らしい寄り道の供出どうもありがとう」
イン「琵琶湖を回らずに突っ切るぐらいのタイムロスはしたんだね? …………はぁ」
「それでは戦争と洒落こもうじゃないか――――『ただの魔術師』どもよ」
「わ、私を置いてきぼりに、してんじゃないわよ……不幸だ、わ…………」ピクピク
同時刻 第一三学区 とある託児所
黒夜「いないいない…………」
幼児たち「………………」ゴクリ
バサモサドサッ!
黒夜「おててがいっぱぁーーい!」
幼児「きゃあーーーーー!!」キャッキャッ
黒夜「よっしゃウケたーーーーっ!!!」グッ!
絹旗「海鳥ぃぃ! 超無垢な子供たちになにしでかしてくれてんですか!?」
黒夜「かてぇ事言うなよ最愛ちゃん、こんなに喜んでくれてんだ。今度こそ真理にも!」
絹旗「私の超仕事を増やすなっつってんですよ!!
何度見せようが真理ちゃんにアレは生理的に無理なんです!
ちなみに私も見てると吐き気が超こみ上げます」
黒夜「ひでぇ…………」
絹旗「だいたいあなた、何こんなところで油売ってるんですか」
黒夜「いやそれがさ、今朝から浜面や麦野と連絡つかないんだって。
……………………今日は『あの日』だってのにさ」
絹旗「…………麦野はまだわからなくもないですが、超浜面や理后さんまで?」
トテトテトテ
真理「もあいせんせー」
黒夜「おっ真理、ちょうどいいところに」
絹旗「やめろって言ってンでしょうが人の話聞いてンのかァこの田ゴ作がァ!!」
真理「せんせー、まことね。ままに会いたい」
絹旗「え、ええ!?」
真理「さいきんね、ままとおねんねしてないの」グス
黒夜「真理…………」
絹旗「うーん…………真理ちゃん、ママはお仕事中なんですよ?」
真理「…………うん、おしごと」
黒夜「良いじゃんかよ、講演会ぐらい連れてってやろうぜ」
絹旗「無責任な事言わないで下さい!
だいたいあの超講演は一般公開されてないはずです」
真理「やっぱり、だめ?」ウルウル
絹旗「んぐ」
黒夜「……どうするよ」
絹旗「…………お散歩行きましょ、真理ちゃん?」
真理「ままのところ!?」
絹旗「それはダメです。だけど、ちょっとでもママの近くに行きましょう?」
真理「んー…………」
絹旗「嫌ですか?」
真理「ううん、おさんぽいく」
黒夜「おお……最愛ちゃんがちゃんと保母さんしてる」
絹旗「おててを全部切断されたいんですか?」
黒夜「こわいこわーい」
真理「もあいせんせーとおさんぽ!」
絹旗「海鳥も来ますか?」
黒夜「いや、もう少し麦野たちと連絡とれないか試してみるわ」
絹旗「そうですか。じゃあ超準備しましょう、真理ちゃん」
真理「うみどりちゃん、ばいばい!」フリフリ
黒夜「おう、最愛ちゃんをくれぐれもよろしくな」フリフリ
絹旗(…………超愉オブカ・ク・テ・イですね)
とある路上
ジジジジジ ミーンミーン
絹旗「あっついですねー、お水はちゃんと持ってきてますか?」
真理「カエルのすいとう、あるよ」
絹旗「(美琴さんの趣味ですかね)か、可愛いですね!」
真理「いやぁ微妙」
絹旗「!?」
ジジジジジジジジ ミーンミーンミーン
真理「ままはどっちかな?」
絹旗「そうですねー、超第七学区はここからだと――――」
ジジジジ シ ゙ ミ ーン ミーンミ -ン
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「――――――!」
絹旗最愛の視界が、にわかに紅く染まった。
「せんせー?」
いや、違った。
彼女の脳内でアドレナリンが急速に、劇的に分泌された為に生じた錯覚だ。
盛夏も近い日本特有の熱気は、生々しい絵の具になど彩られてはいない。
(……肌を刺す、喉が涸れる、呼吸が乱れる……!)
しかし、女の全身を貫くこの寒気が幻などであるはずがない。
錆ついて幾年経ったかもわからない警鐘が、耳の奥で轟音をあげ続けている。
(『懐かしい』、この感覚――――ッ!)
「おい、女」
「…………は? 何ですかあなた、超いきなり」
背後から話しかけてきた人物を、顧みる事が出来ない。
「その子供について少し聞きたいんだが」
血みどろのダンスホールから離れて久しい女は、口の動きとは裏腹に慄いていた。
何かが、この声の持ち主は自分とは『何か』が本源的に違う。
拙い、不味い、マズイまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい
「えー? わたしのなーに?」
「まこ…………」
折れそうな膝を無自覚に支えたのは、小さな命の邪気ない呼吸だった。
そうだ、この幼い娘一人を守れずして、何が『第一位の防護性』か。
オフェンスアーマー
手足に、心臓に、瞳に、脳に、『窒素装甲』絹旗最愛が蘇る。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――――否。蘇ってしまった。
「どうやら異国の方のよォですが、日本の礼儀というものを弁えてませンね。
とっとと失せてくださいませンか、超クソ野郎」
結論から言ってしまうならば。
「…………どうやら『上条』という名に相違ないな、『窒素装甲』?」
絹旗は大能力者になど戻らず、無力な保母として遁走を選択すべきだったのだ。
「答える義理は、ありませン」
先刻彼女が嗅ぎ取ったのは、かつて『未元物質』に相対した際と同質の。
「そうか、ならば仕方ない」
いや、それ以上の。
比喩表現などでは決してない。
「死ぬしかないな、能力者」
――――――死臭であったのだから。
「あれ? まこちゃん?」
佐天涙子は研修のため普段教鞭を執る中学ではなく、児童施設が多く存在する第一三学区にいた。
午前中で研修を終えた佐天が所属する学び舎に戻るべく駅に向かって歩いていると、
車道を挟んだ向かいの歩道に、見覚えのある小さな影が。
それは敬意と友愛を彼女に抱かせるとある夫婦の愛の結晶、上条真理であった。
「ひっく…………るいこー?」
「まこちゃん! どうしたの? パパとママは一緒じゃないの?」
慌てていたため横断歩道を捜す事もなく、
軽く左右確認を行って佐天は泣き叫ぶ真理の元に駆けつけた。
周囲に人影はあるが、みな一様に関わらないのが一番、とそそくさ過ぎ去ってしまう。
彼女は憤慨に鼻息を荒くしながらも、まずは目の前の子どもが大事だと気を取り直した。
「もあい、せんせーとね、おさんぽしてたんだけろ…………」
しかし二歳児が嗚咽しながら事情を説明しようとしたところで、要領を得るわけもない。
ただ、佐天は最初に飛び出したキーワードの重要性に食いついた。
「最愛ちゃん……絹旗先生と一緒だったの?」
友人のそのまた友人を通しての知人である絹旗最愛が、
夫婦が愛娘をよく預ける託児所の職員であることは佐天も承知していた。
時刻もそろそろ正午三十分前になる。お昼寝前の散歩にでも出ていたのだろうか。
「…………!! まこちゃん、背中! もしかして怪我してる!?」
そこまで思案を巡らせたところで、佐天は真理の背の異常に気がついた。
粘着質で、それでいて鮮やかな真紅の液体。
手のひら大の血漿による染みが、愛らしい衣服の腰上に付着していた。
「大変! すぐ手当…………」
顔を蒼くした佐天はすぐさま真理の上着を捲って傷の具合を確かめる。
しかしそこには服の上から浸透したであろう僅かな朱色があるのみで、
それ以外は健康的な肌色と、餅のような柔らかい感触しか認められなかった。
「この子の血じゃ、ない……?」
血液はいまだ目に痛いほど鮮烈な赤を放って佐天の視覚に訴えかける。
警備員としてのキャリアは浅いとはいえ、『コレ』が持ち主の肉体から流れ出て
そう時間が過ぎたものではない事は彼女の目にも明らかであった。
(だったらまさか、この血は――――ッ!!!)
――――異常。
瞬間、佐天は真理を抱えて力の限り横に跳ねた。
「……こんな雌犬を一撃で『倒し』損ねていては、
俺様もいよいよもって廃業かもしれんな」
腕の中の泣き声が一層大きくなった。
真理に怪我が無いことだけ真っ先に確認した佐天は、
先ほどまで自分がかがんでいた座標を振り返って戦慄した。
――――無い。そうとしか表現できなかった。
すぐ後ろに立っていた街路樹、歩道を覆うガードレール、
ウインドウとその向こうに立ち並ぶディスプレイ品の数々。
先程まで別段視界にも入らないほど、
その存在が当たり前すぎる日常の数々が綺麗さっぱり、失せていた。
「……我ながら情けない結果だ。
あの時代遅れのロートルが介入さえしてこなければ……!」
そしてその向こう側に、赤髪の――決して長身ではない――男が在った。
鍛練とは無縁に思える痩躯とは結びつかぬ圧力が、全身から迸っている。
「あなたは、何者ですか」
声と体の震えを必死に殺し、佐天涙子は警備員(アンチスキル)として誰何を行った。
しかし、歳と性別に合わぬ修羅場をくぐった経験と、本能が告げている。
「俺様は機嫌のありかが不安定なのだが……そうだな、『宣戦布告』ぐらいはしなければな」
コイツは、能力者ではない。――――魔術師だ。
「ようく聞け、科学の狗たる雌よ」
異様な事態に気付いた通行人が、悲鳴を上げて我先にと逃げ出し始めた。
そのような俗事には目もくれず、赤い異能者は『両腕』を天に掲げた。
自らに酔いしれたように空を仰ぐ。
――――同時にその右肩から、三本目の『腕』が顕れた。
あまりの異形に完全に声を失った佐天を尻目に宣言は続く。
ただしく、天上から衆愚を見下ろすが如き音吐だった。
「目あらば見よ、耳あらば聴け。我が名は『神の右席』が頂点」
道端の虫けらを眺めるように下々を睥睨する。
そして、『腕』が禍々しい輝きを放ちながら振りかぶられた。
「――――『右方のフィアンマ』だ」
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同時刻、第六学区。
アミューズメント施設が集合するこの学区の中央通りに、
派手な街並みに劣らぬパンクな風体の女が一人、肩で風を切るように歩いていた。
言及するまでもなくイカレたファッションとメイクだが、
後ろに負った巨大な、布に覆われた棒状の物体がその特異性を際立たせている。
しかしその女の真の異常性は、別の点にあった。
「…………あなた。この人たちに『なに』をしたの?」
そこに、茫洋とした眼差しのジャージ姿が声を掛けた。
良く見るまでもなく、二人の女の周りには――倒れ伏す、人、人、人。
「んー? ああ、こりゃ大変だよね。で、私が何かしたって?」
「対象のAIM拡散力場を確認できず。…………あなた、魔術師だね」
面倒そうに鼻の頭を掻きながら、黄色いパンク女が空とぼける。
しかしピンクのジャージ女の口から出た文言を聞いた瞬間、黄色はニタリと笑んだ。
AIMルーラー
「『能力剥奪』、浜面理后よね?」
「だったらなに?」
二人の女が初めて、真正面から対峙する。
魔術師が一層凶悪かつ、吐き気のするような笑みを浮かべ、
更には舌――ピアスが通っている――を出して相手の『敵意』を誘った。
「なんていうか、とりあえず? アンタ気に入らないから殺していい?」
「ダメ」
しかし理后の、良く言えば深淵のような、悪く言えばぼーっとした瞳の色は変わらない。
小さく舌打ちした黄色い女は、それでも支障は無いとばかりに――
「どんなに澄ました面をしてようがねぇ」
――背負ったハンマーで、有無を言わさぬ実力行使に切り替えた。
「私の『天罰』からは逃れられないわよ」
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同時刻、第二学区。
「ちょっとそこの方、よろしいですか?」
警備員らの訓練施設など、特殊設備一色に染まっている学区の一角。
濃紺のスーツに身を包んだ女性が、深緑のローブを纏う男の前に立ち塞がった。
夏だと言うのに奇妙な厚着で闊歩する不審者に『職務質問』をかけたのだ。
「おやぁ? 私に何か用ですかね?」
緑の男は間延びした口調で平静のまま答える。
何を聞かれようと時間を割いてやる気は無いと、言外にその表情は語っていた。
しかし、女の目的はその回答いかんに関係なく遂行される。
「アンチスキルですの!」
「第十一学区の監視カメラに、ゲートを破壊した不審人物の姿が捉えられておりました。
…………これ以上の説明は、必要がありますの?」
「……おっかしいですね。カメラは全て壊したつもりだったんですが」
失態があった事が信じられない、と肩を竦めて依然おどけた態度を男はとる。
よくよく見ればその手には鼠色の小さな袋が掛かっている。
苛立ちを感じながらも、白井黒子は彼の疑念をあっさり晴らしてやった。
「ええ、あなたの仰る通り。生き残った監視カメラなどありませんわ。
私はただ、不審人物に職質をかけただけですもの」
「………………やられましたね」
先ほどより幾分か余裕を失った姿を見て、白井の溜飲がいくらか下がる。
本当に直感のみでのカマかけだったのだから、内心ヒヤヒヤもしていた。
「では、拘束させていただきます。今度は答えは聞きませんわよ!」
まあ、結果として正しかったからそれでいいのだ。
往年の相棒(花)が聞いたら溜め息をつきそうな言い訳を浮かべながら白井は、
腿に仕込んだ愛用の金属矢に手をかけ、複雑極まりない空間移動の演算を始める。
「第一優先。――三次元を上位に。十一次元を下位に」
その時、手の内で右に左に弄んでいた袋を男が唐突に投げ出した。
静かな声が響き――――白井黒子のただ一つの能力が封じられた。
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同時刻、第七学区。
講演会を我が子可愛さにサッサと抜け出した上条美琴はちらほら現れる黒服たちを
レーダーを駆使して避けながら、絹旗の勤める託児所に向かうべく猛チャージをかけていた。
強烈な美人が競走馬もかくやという凄まじいスピードで駈け抜け、
それを目撃した通行人が物珍しさにパシャパシャとフラッシュを焚く。
そんな周囲からの視線を気にも留めていなかった彼女だが、
とある公園に差し掛かると、珍妙な品の並ぶ自販機の前で何故かその脚を休ませた。
「なにか御用ですか?」
「……気付かれていたか」
美琴の背後の空間。
何も存在しなかったはずの場所から、青い着衣の大男が現れた。
「『超電磁砲』だな?」
「上条美琴、って呼ばれる方がずっと好きですけど」
男はもはや誤魔化すつもりもないのか、堂々たる態度である。
ただならぬ雰囲気を感じ取っている美琴は、警戒心を隠さず応えた。
「で? 私は今急いでるんですが」
「頼みがあるのだが」
彼女の態度を歯牙にもかけぬ落ち着き払った低い声。
既に心理戦で負けてるようでダウナーな気分になりながら、投げやりに美琴は返す。
「はあ。私で力になれる事ならなんなりと」
「そうか、では頼むのだが――――死んでくれ」
目の前の失礼な男を完全に『敵』と認識した彼女は、帯電しながら質問した。
特に意味のある問いかけでもない。
「アンタ、何者? ……いや、何が目的?」
ただ上条美琴という女は闘う目的が明確であれば、
そしてその目的が大事な誰かの為であれば、巨大な戦闘能力を更に増す。
パーソナルリアリティ
良くも悪くも感情に『 自分だけ の 現実 』が左右される、それが上条美琴だった。
しかし女の思惑などお構いなく、男は簡潔に――凄絶な目的を語った。
レベル5
「――――超能力者の抹殺」
「…………『全ての』超能力者を?」
「そうだ、全員……プラス、もう一人」
「OK、もういいわ。十分よ」
悲しいかな、最後の一人がどこの『不幸』者なのか、美琴には察しが付いてしまった。
よしんばそうでなくとも、この男の標的の中には死なせたくない相手が、少なくとも二人いる。
優しいご近所さんと、愛想の悪い近い将来の義弟。
まあそれに加えて、ご近所さんのおっかない友人と、
後輩の暑苦しい上司と、いけ好かない女王サマと――
「…………ぷっ、あははははは!!」
「なにがおかしい?」
突如笑いだした彼女に、律儀に戦闘開始を待っていた男が首をかしげる。
その貌には純粋な疑問の色が浮かんでいた。
然程の悪人でも無さそうだ、と頭を過ぎったものの彼女の闘う決意は鈍らない。
なぜなら。
「いやぁ、私ね…………どうやら、誰にも死んで欲しくないみたいなのよ」
いつかどこかで聞いた、ある男の夢。
――何一つ失うことなく、みんなで笑って帰る――
それを、必ず守って見せる。
彼女の闘う理由は、それだけでも十分だった。
「…………成程。甘いが、良い覚悟だ」
「どうも、じゃあさっさと始めましょ。子供が待ってるの」
戦場らしからぬ好意的な笑みが、男女の間で交わされた。
男は『影から』巨大なメイスを掲げ、女はポケットからコインを取り出す。
レールガン
「学園都市第三位、『超電磁砲』の上条美琴よ。短い間だろうけどよろしく」
「ご丁寧に痛み入る。『神の右席』が一人、『後方のアックア』――――参る!!」
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こうして七月十五日、後に「0715」の名で世に広まるこの日。
多くの学生が異常に気付かぬ普段通りの喧騒の最中で。
歴史が繰り返される事を証明するかの如く。
かがく まじゅつ こうさ
――――再び、能力者と魔術師が激突した。
続き
インデックス「――――あなたのために、生きて死ぬ」【2】