※『とある神父と禁書目録』シリーズ
ステイル=マグヌスは専守防衛に長けた魔術師である。
一定のエリアにルーンを刻んで己の『陣地』とし、
その内側を戦場に選べば聖人や超能力者といった怪物たちともどうにか、伍する事ができる。
しかし長所を裏返せば短所になるのは至極当然のことで
彼は追跡戦を最たるものとし、討って出る戦闘ではその戦術的価値を大きく下げてしまう。
ただ一人を守れる力。
それは彼が渇望しているものであり、終着点に着いたのだと諦めてしまっても良かった。
だが、ステイル=マグヌスはそこでは終われなかった。
『ただ一人を守れる力』では、彼女の笑顔までは守れないのだ。
ならばどうする。どうすればいい。
方法は二つあった。
一つ、『陣地』を動かしてしまう。
フィアンマの『ベツレヘムの星』は極端にすぎる例だが
常に陣地として機能する動く要塞があれば、ステイルの求める力は手に入るかもしれない。
そして、もう一つは――――
ステイルとエツァリを見送った土御門は、タイミングを見て背後の暗がりに声を掛ける。
「もう出てきていいぞ」
「ったく、なーにカッコつけてんですかグラサン」
現れたのは戦闘修道女の部隊を統括する、アニェーゼ=サンクティスである。
「ま、ちょっと嬉しくなってな。……配置は終わってるか?」
「完了したから来てんですよ。それとさっきのアレですけど、
私たちは『必要悪の教会』にもイギリス清教にも鞍替えした覚えはありゃしねーんですが」
「十年経ってまだそんな事を言うのか……。だがどっちみち、助けてくれるんだろ?」
「ぬぐっ……ここでツンデレキャラになっちまうのは、何だか負けた気分になりそうです」
『別にアンタ達のためじゃねーんですからね!』というテンプレートをなんとか飲み込みはしたものの
十年慣れ親しんだこの街を守る、というアニェーゼの覚悟に揺らぎはない。
「素直で結構。さあ、おっぱじめるか」
「ま、私たちの出番が来ちまうほどの相手は、今のところ皆無ですが」
路地裏を抜け、陽が中天にかかっているにも関わらず
猫の子一匹――このタチの悪い二匹は例外だが――いないロンドンの街路に出る。
「……嬉しいってのは何の事なんです?」
周囲への警戒を怠らず、アニェーゼが徐に問いかける。
「…………ん、ああ。ステイルのことでな……」
「まさかあの早漏状態が好ましい、とか言うんじゃねーですよね」
まったく見習いたい口の悪さだ、と苦笑しつつ土御門はいらえを返す。
「言ってしまえば、そういうことだな。オレはアイツを昔から知ってるが、
十三になるかならないかって頃に一人の女に人生を捧げる覚悟を決めちまったんだ。
それだけでも大したイカレぶりだろう?」
「……私だって、そのぐらいで神にこの身を捧げてやすよ」
「そりゃあ失礼」
もちろんまったく悪びれずに大男は続ける。
「まあそういう経験を通して、あまりにも早く『自分を殺す』ことを覚えちまった。
……考えてみれば昔からその辺は異常だった。だってそうだろう?
惚れた女が自分など眼中にもない事をわかっていながら、
それでも守る決意は一度だって揺らがなかったんだからな」
「…………美しい話です。良いか悪いかは別として」
自信の過去も悲惨なものであるゆえか、アニェーゼも神妙な顔で聞き入る他ない。
「ところが今はあのザマだ。インデックスを守れるのは自分だけだと先走って、
この大事な時に体調不良。…………完全に護衛失格だ」
「おお、辛辣辛辣ぅ」
「守る相手が遠くから近くに来た分、視野が明らかに狭くなってるんだな。あれは」
「……の割には嬉しそうじゃねーですか。最初の質問に逆戻りです」
「まあつまりだな…………」
土御門が結論に入ろうとした、その時。
「この話はまた後で、ってことだ」
「…………そのようですね」
土御門とアニェーゼの前に、十を超える影がぬうと現れる。
魔術でも科学でもなく、そのどちらでもある――――作戦コード、『半端者』の集団だ。
「おうおうおめでとさん、アンタらが最初の『通過者』のようだ。ここまでの旅路はどうだった?」
しかし彼らは一様に決して浅くない負傷を負っている。いずれも――火傷である。
「いやー長旅御苦労さまでしたぁ。お疲れなんじゃねーですか?」
それを見たアニェーゼの顔が嗜虐心に揺さぶられて凶悪に歪む。
隣の土御門が思わず一歩引くレベルの残念加減である。
「そんじゃぁまあごゆっくりできるように――」
パチンに彼女が指を鳴らすと、こちらも十人以上のシスターが
ルチアとアンジェレネに率いられて姿を現し、『半端者』を取り囲んだ。
「防衛を重視、退却を禁止! 不退転の覚悟で、異教の友人を守り抜け!」
「し、シスター・アニェーゼ、ほどほどにしてくださいね……」
数の上で互角であろうと、アニェーゼ達と敵方には埋められない差がある。
それは体力であり、装備であり、練度であり――戦う理由だ。
「――豚肉市場に送ってあげちまいますから、よーろこんでくださいねぇぇええ!!!」
「聞いてないですよね……」
「だにゃー」
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女子寮についたステイル達を出迎えたのは、
火織、シェリー、オルソラ、五和、トチトリの五人だった。
「始まったのですね、ステイル?」
移動中も矢継ぎ早に使用していた携帯電話を耳から離すことなく、ステイルは火織の問いに頷く。
「僕の『陣地』の欠点を補うには君とシェリーの力が不可欠だ。行ってくれ」
「任せときな」
「私は建宮さんたちに合流します」
「ああ、頼むよ」
その時、階段から二人分の足音が聞こえてきた。
インデックスとショチトルも事態は把握しているようだった。
「連中め、もう来てしまったのか……」
「ショチトル、思い詰めてはいけないぞ」
「しかしだな、トチトリ!」
責任を感じずにはいられないのか、ショチトルが声を荒げる。
そこに、落ち着き払った声がかかった。
「ショチトル。深呼吸、してみましょうか」
「え、エツァリ……」
「いま自分たちにできるのは、自らの身の安全を確保し彼らを闘いに専念させること、ですよ」
張り付けたものではない、なによりもショチトルの不安をほぐす笑顔が向けられる。
「う、うん……お兄ちゃん…………」
「「「「…………」」」」
そのかわり、周囲の空気は何とも言えない味付けとなったが。
「ふふ、良かったねショチトル」
「これは……ご挨拶が遅れました。この度は誠、お世話になりました」
事の成り行きを微笑ましく見守っていたのはインデックスのみである。
ショチトルにばかり意識の行っていたエツァリは彼にしては珍しく、慌てて一礼した。
「あなたには、他にお話ししておきたい事もありますが……」
「すまないが後にしてくれ。事態は急を要する。最大主教、早急、に…………」
「……あ…………」
「…………ん」
「…………えと」
向こうが落ち着きゃ今度は此方で、ステイルとインデックスは視線を合わせようとしない。
いや正しくは、互いにチラチラ見合っているのにすぐに逸らしてしまうのだ。
「………………やってる場合ですか、この非常時に……!」
火織のぶつけどころのない嘆きはこの場の残り全員の、
「あらまあ、オセキハンをご用意した方がよろしいのでしょうか?」
「「「「………………」」」」
……残り全員マイナス1の意見を代弁したものだった。
「……ゴホン!! とにかくそちらの三人とオルソラは、
最大主教と共に最も安全な場所に移る。四人分の『許可』は土御門が手配済みだ」
「…………ステイルは、どうするのかな?」
「……僕も、護衛としてランベスに詰めます」
インデックスが安堵のため息をつくのを見て、ステイルは内心の苛立ちを押し殺す。
(彼女にまで心配されるようでは…………僕は、何をやってるんだ)
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「終わりました、教皇代理」
「『元』、なのよな」
「……ふふ、仕事中と思うとなかなか昔の癖が抜けませんね」
ロンドン東端部の民家密集地帯。
とある一軒の屋根上に陣取るのは天草式十字凄教の建宮と対馬であった。
十年も昔の肩書で今なお男が呼ばれるのは、彼らの『女教皇』に
負けず劣らず建宮が慕われ、信頼を集めている証左でもある。
「五和がこちらに合流するという連絡も入りました」
「ん、了解。……しーっかしこれだけの範囲を人払いするのは一苦労だったのよ」
「王室の戒厳令がなければ現実味すらなかった話ですからね」
彼ら天草式が担当したのは今回の戦闘に市民を巻き込まないための工作である。
とはいえそこまで大がかりな術式を使ったわけでもないし、
外敵の侵入を戦闘前から完璧にシャットアウトしても意味が無い。
王室が鶴の一声で家の外に出るな、とのお達しを出して後は民家の入口を一軒一軒『人払い』。
ロンドン外周部の、更に狙われやすそうな位置に絞ったとはいえ
ひたすら地味で根気のいる作業ではあった。
「土御門もどうやって戒厳令なんて引き出したのよなぁ?」
「……あの男のことですから、なにがしかの取引があったのでしょう」
まさかその材料が『ステイルくん弄くり認可権』とは誰も思うまい。
暫くすると、建宮のふところの端末が震えて着信を知らせた。
「おっと、はいはい建宮なのよなー」
『七人抜けた。そこから西北西に約百五十m』
電話越しに事務的な声が響き、すぐに切れてしまう。
「……そっけないのよな」
「建宮さんが彼に被せた損害を考えれば、ごく当然だと思いますけど」
「はっはっは、そんじゃあお前ら始めるぜ!」
無理矢理誤魔化した彼の言葉に呼応して、そこかしこに潜んで居た天草式の精鋭メンバーが動き出す。
五和も、いつの間にやら愛用の海軍用船上槍(フリウリスピア)を携え到着していた。
建宮と目が合うと慌てて逸らす挙動不審に、生温かい視線が注がれる。
「き、緊張感を持ってください!」
(((それはこっちの台詞だ)))
「……? なにやってんのよな、お前ら」
「教皇代理には関係ありません!!」
「だから『元』だっての……」
首を傾げた建宮は、まあいいかと切り替えて号令を掛ける。
「……んじゃあ、行くぞ! 『我らが女教皇様から得た教えは?』」
苦笑していた対馬、牛深、野母崎、香焼、諫早、浦上が、
そして憤慨から覚めた五和が鬨の声に代えて、一斉に応じた。
誰かに利用されるだけだった、あの三人の人生を変えるために。
――――救われぬ者に、救いの手を!!――――
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『ランベスの宮』に無事全員を護送したステイルが最初にしたことは――
「やっほー。お邪魔してるぞインデックス、ステイル」
肺の底から大きく、息を吐き出して吸う事だった。
「なにをしているんですか、先代ぃぃっ…………!!!」
「なにって、別になぁ。キャーリサ」
「おかわりはいかがだー?」
「許可は出てるんだから、お茶して寛いでただけだし。……あ、一杯頼む」
あらゆる意味で英国最強の母娘はこんな時でも絶好調だ。
「……質問を変えましょうか。その脳味噌の配線はどうなっているんです……!」
「血圧が上がりても脳の中身は危なきよ、ステイル」
「…………」
「スルーなりし!?」
間の抜けた問答を繰り返す連中を見て、アステカ組……もといショチトルは呆然とする他ない。
「……インデックス、なんだアレは?」
「イギリスの先代女王と、現女王の妹なんだよ。あとついでに私の前任者」
「えぇー………………」
「……噂以上にクレイジーな国だな、イギリスは。学園都市と友好的なのも頷けるぞ」
「何を冷静に分析してるんだトチトリィィ……」
「とりあえず自分がご挨拶申し上げて来ましょうか」
「やめて! これ以上引っ掻きまわさないでお兄ちゃん!」
「まあ初めましてショチトルさん、お茶などいかがでございますか?」
「むっオルソラ、お客様にお茶を出すのは私の仕事だー」
「ああもうなんなんだこの状況はぁーっ!!」
イギリス清教に期待の新人が加わったと見てよさそうである。ご愁傷様。
その間にもステイルのなんかどうしようもない怒りは収まらず、彼の血管は断線寸前である。
「宮殿はどうなってるんですか! あちらの方がよほど安全でしょう!」
「騎士団長とウィリアムがいるから向こうは問題ないの。
魔術防衛網ならこの『ランベスの宮』とて負けず劣らずで、
さらにこの私がここに居る以上、母上の安全は確保されている」
「ここに居る理由にはなってません!」
「ちなみに私は久々の我が家に戻りてきただけにつき」
彼の顔色はその長髪と同じ色……を通り越して、光が逆流してきたようなそれになっている。
いい加減に死にそうだ。見せ場も作ってないのに。
「しょうがないじゃないか。可愛い娘に孫と一緒になって、
『友人を助けてやって欲しい』、なんて言われてはね」
「母上、言われたのは私ひとりだし」
「え! ヴィリアンが……?」
「……私にも構って欲しきことよ……」
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バッキンガム宮殿には、毎度お馴染み騎士団長の怒鳴り声が響いていた。
そこらで警護に当たっている騎士たちも、上司が御立腹だというのに動じることなく職務に当たっている。
よほど、焼き増しの効く風景であるらしかった。
「君たちだな!? キャーリサ様と先代を城外に出す手引きをしたのは……!」
その前に並んでどこ吹く風なのは、魔術結社『新たなる光』の四人である。
「んーん……。そんなことより私たちも繰り出していいですかぁ?」
代表して受け答えしているのは最も緊張感なく欠伸などかいているレッサーだ。
「良いわけあるかぁぁっ!! 言え! どうしてこんな事を……」
彼女の舐めきった態度にますますボルテージのあがる騎士団長を
押し留めたのは、雰囲気にそぐわぬ涼やかな声だった。
「騎士団長。どうか彼女たちを責めないでください」
「少しは落ち着いたらどうだ、我が友。また血圧が上がるのである」
「ヴィリアン様、ウィリアム……! も、もしや?」
わなわなと震えだす騎士団長に申し訳なさそうにしながら、第二王妹は続ける。
「姉君には、私からお願いしたのです。
……その、母君まで行ってしまうとは思わなかったのですが」
「ぬ・ぐ・ぐ…………」
「今さら連れ戻すことに意味はないだろう。彼女らの言うとおり、我らも討って出るべきだ」
理解者だと思っていた親友の一言に肩を落とし、悲しき中間管理職は力なく告げた。
「わかった……。好きにしなさい…………」
「さっすが~、ウィリアム様は話がわかるッ!」
「止すのである。……なぜだかとてつもなく後ろ暗い気分になる」
「さわらないで…………お願い、やめて……プフッ」
「誰も触ってないわよ、ランシス」
しかしこの連中、緊張感皆無である。
王室に毒されるとこうなってしまうモノなのだろうか。
ちなみに女王陛下は戒厳令の実施に加え、政治的策謀からも
国を守るべく孤軍奮闘しているのだが、ここで語られることはない。
「…………前代未聞ね」
平静に戻った騎士団長が部下の騎士に声をかけ、ウィリアムが抜ける守備体系の変更を伝える。
「……宮殿の守護は、我ら騎士団があたろう」
「では私が守るのは無辜の市民だ。無事は祈らないのである、我が友よ」
「私とて今さら、お前の為に祈ったりなどするか。妻のことならともかく……
…………ゲッホンゴッホン! ヴィリアン様と女王陛下は任せろ」
「ああ。……では行ってくるぞ、ヴィリアン」
「はい……。この子たちと一緒に待ってるわ、ウィリアム」
ひとときの別れに際して、父でもある男は妻の腹部をしばし、愛おしげに見つめる。
――やがて家族に背を向けた時、そこには百戦錬磨の戦士がいた。
「味方だと思うと、頼もしいですねぇ」
「フッ……。よろしく頼むのである」
守るべきものを背に、ウィリアムは四人の魔術師に先だって歩み出す。
そうして男は、自らの人生そのものである戦場に飛び込んでいった。
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「ヴィリアン殿下が…………」
「理解したかい?」
粗方の事情を聞き終えたステイルは、しかしそれでも納得しきれなかった。
「しかし! そもそもこの件は、我ら清教派が始めたことです! 王室派や騎士派は……」
「無関係なのだから引っ込んでろ、とでも言いたいのか?」
「…………それ、は」
とたん、目の前の老婆がとてつもない巨人に様変わりした。
「イギリスは、我が国家だ。『第三世界』の連中が好き勝手することをこの私が許すとでも?」
ステイルは、言葉なく俯く。
しかしエリザードは覇気を収め、そんなステイルに優しく声をかけた。
「……そして、ロンドンを守るためのお前のたゆまぬ努力を、この私が知らないとでも?」
「なっ…………!!」
「ふふふ……だから、十年早いと言いけり」
「お前さんの『セキュリティ』にはみーんな助けられてるんだ。
……少しは、周りに見返りを求めな?」
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「ど、どうなってるんだコレは……!?」
ロンドンの『ギリギリ外側』、南の開けた郊外の地。
『半端者』の指揮官のひとりは青ざめた顔で目の前の惨状を見やっていた。
彼ら急ごしらえの『組織』は百を超える魔術結社が、
イギリスに対し乾坤一擲の反攻を行うために集まったものである。
構成人数は万に迫るという常識外れの烏合の衆、それが『半端者』(土御門命名)だ。
しかし、しかしである。
彼らはその半数以上を既に戦線に投入しているにも関わらず
ロンドン市内への侵入を果たした者はその十分の一にも満たない。
一方で侵入に失敗し命からがら逃げ出し戻ってこない脱走者や、
戦線復帰できない負傷者は二千を越え――
――残る二千五百は、躯すら残さず燃え尽きていた。
「あ、あり得るのかこんなことが……」
男の脳裏に過ぎる、一つの可能性。
ロンドンには、数年前からまことしやかにある噂が流れていた。
――この街には悪意を持った侵入者を焼き尽す、『守護神』がいる――と。
もちろん『組織』もこの都市伝説を軽視したわけではない。
事実、噂が流れ始めた時期からロンドン市内での魔術的事件の発生は
外部から見てもはっきりわかるほどに激減しているのだ。
焼き尽す、という一節からその筋で有名な一人の魔術師を連想した彼らは判断した。
多方面から一斉に侵攻すればいかに凄腕とはいえ所詮、身一つの魔術師である。
他に聖人を抱えているとしても、『原典』の奪取は不可能ではない。
追いつめられた焦燥感に、内部からの土御門の巧妙な誘導も手伝った。
――かくして彼らは、神罰吹き荒れる死地へと赴いてしまったのである。
そしてつい先刻。
男の部下はロンドンに踏み入った瞬間、前触れもなくかすかな『熱』を感じだした。
そこで違和感に歩みを止めてしまえば良かったのだが、元より彼らには後が無い。
欲望か絶望か、はたまた狂気か。とりつかれたかの様に前進する彼らの妄執を――
ゴオオオオウウッッ!!!
――――赤々と盛る紅蓮の炎が断ち切った。
「どうだ、ウチの『セキュリティシステム』は?」
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ステイル=マグヌスは専守防衛に長けた魔術師である。
彼がインデックスと、その周りの世界まで含めて守るためにとった方法とは――
「……南で二十八人。今ので二千六百、か」
――――『陣地』そのものを、極端に巨大化してしまう事であった。
ステイル=マグヌスの現在の『陣地』は、ロンドン全域である。
彼は『日課の散歩』と称して毎日のようにステルス化を施したルーンを市内に配置してきた。
数年をかけて街に自らの魔力を行き渡らせ結界を張ったステイルは、
かつて「三沢塾」に自身の力を充満させ、レーダーとした錬金術師のように――
――霧の都の『魔術の流れ』を把握する存在となった。
「大丈夫、ステイル……?」
「……ご心配なく。僕がするのは敵の位置を連絡することのみ、…………です」
「………………すている…………」
次に彼が着目したのは、魔術世界では語り草となっている
「0930事件」で用いられたとされる『天罰術式』であった。
ステイルは『神の火』に由来するこの術式を再現することに――不完全ながらも、成功した。
『自らの陣地内で、強力な「悪意」を抱いた者を、それに応じる「熱」の苦しみでかき乱す』
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「後は『天罰』で抵抗力の落ちた敵をレーダーで捉えて、
街中に張り巡らせた『爆弾』をボン! ってなわけだ」
「こんな、ことがぁっ……!!」
ただ一人残された哀れな子羊を前に、土御門元春は感情のこもらない眼差しを向けた。
長期に及ぶスパイ活動の中で、権力や金への執着を捨て、平穏を選んだ者を彼は数多く見てきた。
もちろん事情があって残らざるを得なかった者もいるだろう。
しかし、欲に塗れてこんな場所まで来てしまった連中と
そうでない者を区別してやるほどの甘さを、彼は持ち合わせてはいない。
それにどうやら、目の前の男は前者であるらしかった。
「くそっ、原典が! 原典さえあれば私はぁぁっ!!」
「見苦しいな。あんた、ちゃんと下調べしてきたんだろ?」
(都合のいいように誘導したのはオレなんだけどな)
「黙れっ、黙れえェッ!!」
露骨な権力欲。
この世の日陰を渡り歩いた土御門からすればさほど汚らわしいものでもない。
科学の暗部とて似たようなもの、と言うよりは
即物的な欲望に基づいているのならいくらかマシだ、とさえ思える。
しかし同情の余地があろうが無かろうが、土御門には関係などない。
最後通牒がわりに一層冷えた視線を男に送る。
「ま、せめてこれだけ覚えてから死ぬんだな」
そしてゆっくりと、彼らを破滅させた『モノ』の名を告げた。
「この街にはな――――
ファイアウォール
――『守 護 神』っつう、神様がいるんだよ」
しかし絶望を突きつけられてなお、『半端者』の歪んだ志は未だ折れていなかった。
「く、クククク……だったら、アレならどうだぁ!?」
「ほう……?」
男が哄笑して指差す先、およそ百メートル。
彼方に異形の駆動鎧が数台並んで、起動を開始すべく蠢いていた。
「……これはこれは「FIVE Over」とは。十年前の遺物とはいえよくあれだけ揃えたな。
しかもあれはガトリングレールガンか……あんなスクラップに嫁さんが見立てられてるなんて、
カミやんが聞いたらキレるな、くくっ」
「笑ってられるのも今のうちだ! 貴様らの切り札ではあれは止められん!」
「切り札なんて言った覚えはないが……。
だがあれで『陣地』の外から所かまわずぶっ放されたら、街にかなりの被害が出るな。
……お前ら、それがどういうことだかわかってるのか?」
これから起こるであろう事態を言葉に出した土御門が凄む。
しかし手負いの獣はそのような脅しなど歯牙にもかけない。
「仲間や一般市民の心配をする暇があるなら命乞いをしたらどうだ!
『超電磁砲』の最初の標的は貴様だ!」
「…………そうかい、よーくわかったよ。
まあ確かに、『守護神』じゃあれは止められないな」
ステイルの築いたシステムは『侵入者』に「魔力」ないし「悪意」があることを前提にしている。
仮に『侵入者』が秒間六十発放たれる金属砲弾だとしたら、それらを阻止することは不可能だ。
「あれがお前らの切り札ってわけだ。……ところで知ってるか?
あの駆動鎧はその昔、とある異端の無能力者(イレギュラー)に
戦闘不能にされたっていうご立派な実績があるんだ」
「ははは、戯言を! だったらなにか? 貴様がそれを再現して見せるとでも!?」
「御冗談。オレはか弱いか弱い、異端でも何でもない無能力者(レベル0)さ。
しかしイレギュラーでも破壊できるんだぜ? だったら――」
土御門が舌先三寸で敵の気を引いているその時、
二つの影がまた別の方角――やはり百メートルほど先――に現れる。
「『アレら』はどうやら、無差別攻撃を行うつもりのようです。
…………ならば、遠慮は全く要りませんね……!」
「よく聞こえんなー、あんな遠くの会話。
……それにしても微妙に見覚えがあると思ったらあの物騒なビリビリ、
もしかして前にエリスを吹っ飛ばしたのと同じヤツかしら?」
「――だったらオレらの聖人(キリフダ)に、どうにかできないワケないだろうが」
「な、まさか、アレはぁぁっ…………!?」
「シェリー、二秒稼いでください。
……それで、終わらせます」
「その間に何発喰らわなきゃいけないのかしらね。
まあしょうがない、相手は違うが…………。
…………リベンジマッチといこうぜぇ、エリス!」
「撃てェッ!! はやくそいつらをコロセェェェェーーーーッッ!!!!」
男の絶叫とともに駆動鎧の銃身が回転を始め、 『Gatling Railgun』が光の嵐を放った。
精密性を著しく欠くそれらは疎らに拡がり、ロンドンの一角を阿鼻叫喚の地獄絵図に変える。
「『Intimus115(我が身の全ては亡き友のために)』!!」
――そこに居たのが、卓越した土属性の魔術師、シェリー=クロムウェルでさえなければ。
彼女が産み落とした特大ゴーレムは、かつてその身を貫いた
『超電磁砲』の一斉掃射をかろうじて逸らし、愛する街を守るべくそびえ立つ。
GAGAGAGAGAGAGAGAGA!!!!!!!!!!!!!!!
「耐えなさい、エリス!」
総合火力のみなら本家を上回る『Gatling Railgun』の前に、
シェリー渾身の一作とはいえゴーレムが屈するのは時間の問題である。
だが、彼女の表情が揺らぐことは微塵たりともない。
なぜなら、本物とは似ても似つかぬ無粋な鉄塊に向かって駈けるのは――
「『Salvere000(救われぬ者に救いの手を)』!!!」
――ロンドン最強の聖人なのだから――!
「終いだな」
瞬きの間に全てが終わったとしか認識できない男は膝から崩れ落ち、放心状態に見える。
が――
「おっと!」
土御門がいきなり男の手を踏みつけた。
その手には通信用の護符なのだろう紙切れが握られている。
「何のために長々と講釈を垂れてやったと思ってるんだ?
さっさと出さずにあんなガラクタ引っ張ってくるもんだから、一時は焦ったぜ」
「ちいぃっ…………!!!」
男は土御門が親切に語ってやった情報を仲間に伝えるべく
密かに連絡文を飛ばそうとしていたのだが、それこそがこの曲者の狙いだった。
「早速連絡先を探知させてもらおうか」
「キサ、がああああぁぁぁっっ!!??」
「ああ、ちなみにオレの魔法名は『Fallere825(背中刺す刃)』だ。 ついでにコイツも」
土御門は友好的に表情を崩したつもりである。
しかし男は、死神が自分に微笑んだ、としか感じなかった。
「――――覚えて死ね」
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ところ変わって、再び『ランベスの宮』。
「潮が引いていくな……」
敵の動きの変化を感じ取り、ステイルはそう呟いた。
「なんだ、もう終わりか。結局私の出番はなかったし」
キャーリサはぼやくが、軍事を司る彼女ももちろんわかっている。
どんなヤケッパチの集団だろうと、戦力の過半数を失えば負け戦を認めざるを得ない。
土御門も外交交渉上、余り勝ち過ぎて禍根を残すのはよろしくない、という見解だった。
一般への被害をほぼゼロに抑えた上での完勝というのは理想の戦果である。
しかし、インデックスは――
「たくさん、人が死んだんだね……」
「………………最大主教」
「これは、戦争だったんだ。向こうから仕掛けてきて、決してやめようとはしなかった、な」
キャーリサの力強い言葉に、後ろめたさは一切見られない。
彼女が守るのは自国民の安寧のみであり他国の、ましてや
敵対者に慈悲を与えるなどこの王妹の矜持が許すはずもない。
「それでも、私は祈るよ」
しかし、インデックスは毅然と宣言する。
自分にできることはそれだけだ、と言わんばかりに。
「私も、お供をさせてくださいね」
オルソラが、いかなる時も揺るがぬ柔和な笑みで彼女に続いた。
かつて自らを殺めようとしたアニェーゼを許し、共に歩んでいる現世の聖母。
「……はっ、好きにするといいの」
「こらこら、言い方というものがあるだろキャーリサ」
「インデックス、くれぐれも無理なきようにしなさい?」
二人の静かな決意に、三人の女傑が同調し場の雰囲気も僅かながらに緩む。
――そのときだった。単調な機械音が鳴り響く。
ステイルが眉をひそめて、しかし即座に着信に応答した。
「土御門か、どうしたんだ? 敵の動きならもう……」
『手短に言うからよく聞け、ステイル!』
通話マイク越しに伝わってきたのは焦燥。
周囲にそれを悟らせぬよう、落ち着き払ってステイルは答える。
「なんだい?」
しかし事態は、彼の予想を大きく上回っていた。
『敵だ! それもおそらく、かなりの実力者がすぐ近くまで迫っているぞ!』
終幕は、まだ下りきってはいない。
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火織を先行させた土御門は、自身はその辺りにあった農家のトラックを拝借して走らせていた。
とはいえロンドンのほぼ中心に位置する『ランベスの宮』までここから二十キロ弱はある。
火織の到着も半刻は先になるだろう。しかし何をおいても土御門を急がせるのは――
(舞夏…………!!)
あの状況で死んだ男がロンドンの『仕掛け』を伝える相手は
それなりの地位と実力を持った指揮官クラスだろう、と土御門はふんでいた。
運よく司令部の場所でも割れれば、戦術的にも戦略的にももはや優位は揺るがない。
ところが札から魔力を探知すると、すでにその反応は都の中枢に迫っているではないか。
こうなると弱まった敵の攻勢も何らかの伏線と見るべきである。
念のため、シェリーをはじめとするメンバーには外への警戒を引き締めるよう指示した。
『半端者』がいかにして『守護神』の情報を掴み、そして突破したのかは杳として知れない。
しかし察するに、敵の目的はこの厄介極まりない術式を内から破壊して、
しかる後に残存戦力をつぎ込むことだろう。
術式の破壊とは即ち、ステイルの首を取ることに他ならない。
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「なるほど、ヤケッパチを通り越した愚者の集まりだった、ということか」
「……なぜ着いてくるんです」
「母上に叱られておいて、まだ言うか」
「く…………」
淑女諸氏をエツァリに任せたステイルは、『ランベスの宮』の入口で刺客を迎え撃つ事に決めた。
中で待ち受けてもよかったが、万が一この要塞さえ突破するような
実力者であった場合、彼女らの身の安全を保証できない。
更には市街地を無差別に攻撃するのではないか、との危惧もあった。
…………余計な、しかしこの上なく豪華なオマケもついてきたが。
「……ちなみに申し上げておくと、あなたの護衛は僕の仕事に含まれていません」
「そりゃそうだし。お前の仕事は私に護衛されることだからな」
「……………………はぁぁ……」
潜入した敵が用いた手段に、ステイルはある程度想像がついていた。
手段というより、敵の性質か。
天罰が作動した相手が魔術師なら、苦しみから逃れるため魔力を精製して抵抗しようとする
可能性は高く、そこに『揺らぎ』が生まれる。多種多様の感知術式を併用することで、
ステイルはその揺らぎをかなりの精度で察知することが可能だ。
ならば初めから、この敵に『揺らぎ』は起こらなかった、ということになる。
そこに至る可能性は二つ。
「あの、すいません」
一つ、魔術師ではない、つまり能力者の類。ステイルの考えではこちらだ。
「えーっと、『ランベスの宮』というのは、こちらでよろし……おや、君は」
そして、まあこっちはないだろうが、二つ目は――
「どこかで会わなかったかな……ああそうだ、確か!」
――悪意がまるっきり無い場合。
「当麻の結婚式に来てくれたともだ」
「誰が友達かぁぁーーーーっっ!!!!!」
「………………おい、ステイル。説明しろ」
「そうそう、ステイル君! すまないね、商売柄人の名前を忘れてはならないというのに」
キャーリサもステイルも、火織のオムライスをいっぱい食わされたような湿気りきった面をしている。
「……ご紹介します、キャーリサ殿下」
「へ? キャーリサ? 英国王室の?」
それもそうだろう。こんなとき、他にどんな顔をしろというのか。
「上条当麻……
……さんの父君、上条刀夜氏です」
「あ、どうもよろしく」
「」
「あれ? なにこの空気?」
「どういうことなの…………」
……とりあえず、ステイルくんから一言。
「……………………不幸だよな、コレ」
「なんだ、やっぱり友達じゃあ」
「違いますッッッ!!!!」
寒さも薄らいできた早春、午後六時をそろそろ回る霧の街は未だ幽かに明るんでいる。
逃避したくなる幻想(げんじつ)にすんでのところで回帰したステイル=マグヌス二十四歳。
……とりあえずは、仕事に取り掛かることとした。
「…………申し訳ありません、ミスター上条。まずは、身体検査をさせていただきたい」
「ん、ああ……それはそうか。
ここは教皇の、いや言い方が違うのか? とにかく官邸だものな。
それにしてもあのインデックスちゃんがねぇ……」
「………………はぁぁ」
正直もう、この段階で本人同定も必要ないくらいである。
敵側の変装魔術の可能性も捨てきれないが、最大主教をちゃん付けで呼ぶような男である、
というぶっとんだ事実まで把握しているとは考え難い。
が、しかし。
「…………おいお前、女装趣味でもあるのか?」
「あ、あれ!?」
刀夜が所持していた黒のスーツケースから出てきたのは、
明らかに女物の下着や香水、必需品のたぐい。
更にそれと知れないようカモフラージュされた儀式用具であった。
その隙間に挟まった、一枚の術札。
「…………あった、術式だ……」
とあるロリ教師の平野に負けず劣らず凹凸のない声で、ステイルは札の向こうの人物を検めた。
「…………モシモシ、ツチミカドクン?」
『!? どうしてこれにお前が……既に刺客を撃退したのか!?』
「……もう来なくてもいいよ。オーバー」
『おい、どういうことだ説明し』
ブツッ。電話でもないのにそんな幻聴がステイルの鼓膜を打った。
「……キャーリサ殿下。申し訳ありませんが…………」
「お、おう。後は任せるの」
甚大な気力の萎えを感じたステイルは、なんと仕事を英国王妹に投げ出す。
キャーリサが同情するほどの死相が今の彼には浮かんでいるらしかった。
「おい、トーヤだったか? 貴様、このスーツケースはなんだし?」
「おかしいな……よく見たら外観は似てるが、これは私の物ではない。
どこかで取り違えたのか…………?」
誤魔化してるつもりならあまりにもお粗末であるし、何より中身を見せるはずが無い。
と言う事は、出まかせの虚言という可能性は低いと見てよさそうだった。
「どこで間違えたか、心当たりは?」
「むむむ…………」
ステイルの脳裏に、一つの情景が浮かぶ。
「……今日の正午過ぎ。どちらで、何をなさってたか覚えていますか?」
「正午……? 確か川沿いの公園で、って…………ああ!!」
「なにか思い出したか?」
『数が合わないが、あと一人はどうした?』
『どうも、一般人と一緒に居るようで手が出しづらい』
「ベンチで女性が一人、苦しそうにしていたんだ。
声をかけようとして近づいたんだが、急に暴れ出して。
なんやかんやで取っ組みあってるうちに、その…………」
「……その?」
「いやー実は、その女性の胸を鷲掴みにしてしまって。
そしたら、顔が真っ赤になってキューバタン!と」
『熱』暴走でも起こしたのだろうか。術者のステイルも予想してるわけがない事態である。
「………………」
「………………」
「ははは、お恥ずかしい!」
「……なるほど、間違いなく親子だし」
英国王妹も納得の元祖フラグメイカーであった。
「救急車を呼んだんだが、ロンドン市内には戒厳令が出ているというじゃないか。
仕方なく、市街の病院まで付き添ったのさ。その時に間違えたのかな……」
「その女は、結局どうなった?」
「それが少ししたら快復してね、何度もお礼と謝罪をもらったよ。
なんかスッキリした顔で、故郷に帰ってやり直すとか言ってたなぁ」
……その女は土御門の見立てでは相当の実力者で、かつ組織の中心に近いはずなのだが。
「つまるところ、
『実力者→美形or美人→フラグ→再利用→メインキャラ昇格』
……の流れで善玉になったという事だし」
「全然さりげなくないですが、勝手に自分をメインキャラに含めないでください」
「ってああ! じゃあ私の荷物はあの人が持って行ってしまったのか!?」
お間抜けなやりとりがこれでもかと繰り広げられる。
どう収拾つけんだコレ。
駄菓子菓子、キャーリサが何ごとか思いあたったのか再び表情を引き締める。
「……いや、待つし。貴様いま、戒厳令のことは知っている、と言ったな?
だというなら何故、こんな危険地帯までのこのこやってきた?」
戒厳令とは非常事態において、政府が市民の権限を制限することである。
今回はテロリストの襲撃予告が出たとして正午前に発令したが、
そこは「ブリテン・ザ・ハロウィン」を経験済みのロンドン市民、手慣れたものであった。
しかし目の前の男はそれを知っていながら人気のまるでないロンドンの異様な街並みを、
一人で、しかも己の足以外の手段を使わずはるばるやって来たというのだ。
そんなことがあり得てたまるか。
『軍事』を象徴する戦乙女は、疑念の色濃い眼光で男をにらみつける。
「……そんなこと、決まっているさ」
「なに?」
しかし上条刀夜は憶さない。
息子によく似た、強い意志の宿る眼でキャーリサを正面から見据えた。
「家族が心配だった。父親が娘を訪ねるのに、これ以上の理由がいるのか?」
大切な人を慈しむ、迷いなき言葉。表情。眼差し。
ステイルにはその全てが、途轍もなく眩ゆく感じられた。
「っ…………ミスター上条、あなたという人は……!」
「娘だと? 誰のことを言っているの?」
ステイルの口から、呻きに似た声が漏れる。
「決まっているだろう、君たちの最大主教のことだよ」
「な、何を言ってるんだし、貴様……?」
――遠くにあって、こんなにも彼女の事を想っている人がいるというのに。
「あの子は、当麻の家族なんだ。つまり、私にとってもかけがえのない家族だ」
――この五年間、最も近くに居て、彼女を見ていたはずの自分は。
「だから何かあったなら、世界中いつでも、何処からでも駆け付けるさ」
――――自分はいったい、彼女に何をしてやれたのだろう。
夜の帳が下りた。
敵が再び侵攻を始めることはなく、現在ロンドン周囲は騎士団が警戒に当たっている。
最終的に内部への侵入を果たした『半端者』は七百人ほどになった。
そのほとんどがステイルの『守護神』によって減衰した戦力であり、
無傷の精鋭およそ三百名で構成されたイギリス清教サイドに負けの目など出るはずもなかった。
大した怪我人も出さず引き上げてきた彼らは、後を出番のほとんどなかった騎士団に任せ
普段通りの、ただし決して明るいばかりではない日常に戻っていく。
インデックスはエリザード達(とついでにローラ)に礼と別れを告げると
エツァリ、ショチトル、トチトリの三人を念のため『ランベスの宮』に残し、
『家族』である上条刀夜との旧交を温めるべく聖ジョージ大聖堂に場を移したのであった。
「大したおもてなしもできないけど、改めて久しぶり、とうや!」
「はっはっは! インデックスちゃんにもてなされる日がくるなんてな」
「はぁ……まったく、酷いオチがついたものですね」
「まあまあねーちん、今は腹にモノ入れることにしようぜい。舞夏ーお酌してくれにゃー」
「お客様が優先だぞ馬鹿兄貴♪」
聖堂上階のテラスからは、美しい街並みと天蓋の灯のコントラストが実によく映える。
息せき切って駆け付けた結果、盛大にずっこけた火織と土御門を加えた四人は
丹精込められたメイドの手料理がところ狭しと並ぶテーブルを囲んでいた。
「そちらの三人も、当麻のご友人で良かったかな? 式で会ったと思うんだが」
「何度か食事を用意したこともございます、お客様ー」
「は、ははは……その、当麻さんには大変お世話に……」
「確かにカミやんには筆舌に尽くしがたいほど世話になったぜい」
「そんな、ウチのバカ息子で良ければドンドン使ってやってください。
そういうのが性に合っているんだから」
「…………そ、そうだとうや! ちょっと聞きたい事があるし!」
上条当麻の話題になったとたん、インデックスの表情が曇る。
刀夜もそれを察知して、慌てて話題を変えた彼女に追従した。
「なんだい? フフ、もしかして恋の悩みだったり……」
が、あと一歩空気を読みきれていない。本人は渾身のドヤ顔であるが。
「……それだったらとうやには相談しないかも」
「どういう意味なのかな!?」
そういう意味である。
「その、このあたりに来るまで誰かに止められたりしなかったにゃー?」
「誰かって誰だい?」
「あー…………」
言葉に詰まったインデックスを見かねて、土御門が助け船を出した。
真に空気を読むとはこういうことである。
「戒厳令のことを聞いてるのなら予想がつくんじゃないかにゃー。
街のあちこちに特殊部隊が潜んでいたって噂だぜい」
「そうなのか……私は適当に中心に向かっていたらここに着いたんだがね」
(外周に注力してたとはいえ、天草式とアニェーゼ部隊の
防衛網を潜り抜けるなど一般人の所業とは思えませんね……)
「ま、偶然だろう! 私は昔から意外と運が強くてね。良いか悪いかは別として」
土御門も火織もそのことは実体験を通して痛いほどよく知っている。
なにせ『偶然』大天使をこの世に墜とした男なのだ。
『偶然』彼らの敵と接触してフラグを建て、
『偶然』二重三重の警戒をスルーし、
『偶然』ドンピシャのタイミングで姿を現したとしても、
「まあ無い事もないか」で済ませられる。
それが上条刀夜だった。
その後も和やかな談笑が続いていたが、あるとき刀夜が疑問を投げかける。
「……ところで、ステイル君はどうしたのかな? 姿が見えないが」
「あ…………」
「どうも、ここの所仕事を無理していたようでして」
「ちょっと一人になりたい、なんて格好つけて出ていったにゃー」
「そうか、それは心配だね」
再び押し黙ってしまったインデックスを見やった刀夜は
ふむ、と口元に手を当てて何事かを考え出した。
卓上を賑やかに行き来していた言の葉が、しばしの間途切れる。
食器が擦れ、舞夏が給仕する音のみが場を包んで一分ほどだったであろうか。
口火を切ったのは、やはり刀夜だった。
「土御門君。それに舞夏さん、火織さん。すまないが……」
刀夜は少し語尾を濁したが、二人は顔を見合わせ、さほど間を置かず立ち上がる。
「……それでは時間も遅いので、私たちはこれで失礼しようと思います、上条さん。
またいつの日か、食卓を共に囲めれば幸いです」
「本当にオレは、貴方の息子のような友人を持てて幸せだ。
……カミやんにも、よろしくお願いします」
二人は『ヒーロー』の父親に敬愛の念をこめて別れを告げ、
また舞夏は優雅に一礼だけし、そして立ち去っていく。
そうしてガランとしたテラスには、刀夜とインデックスだけが残された。
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ステイルは礼拝堂の長椅子に腰かけ、紫煙を燻らせるでもなく虚空を眺めていた。
考えるのはもちろん、上条刀夜ら『親子』のことだった。
(――堪えられなかった)
ステイルには刀夜の眼差しを、正面から受け止めるだけの勇気がなかった。
(理屈抜きであの子を愛してくれる、あの人のつよいつよい想い)
それは、ステイルが長い歳月の中で失ったものだった。
――禁書目録があるから――
――最大主教になったのだから――
――――――■■■■■った、償いだから――――――
そんな理屈を並べなければ彼女を守れなくなっていた自分が、途方もなく醜く思えて。
ステイルは、彼ら『親子』から逃げ出したのだった。
ギ、とかすかに背後から音がした。
『守護神』は既に停止している。ステイルには誰が来たのか知る術はない。
しかし彼は振り向かなかった。
「調子はどうだ、ステイル?」
「私たちはそろそろ帰宅します。…………大丈夫ですか」
土御門と火織が気遣う色を表情に滲ませ現れた。
ステイルは、なにも答えない。
「精神的に、という心持ちなのでしょうが……
実際問題今日のあなたは大量に魔力を消費しているはずです。
無理にでも休息を取るべきですよ」
「ま、その様子じゃ身体なんてどうとでもなれ、って感じだが」
確かにその通りである。
『魔女狩りの王』のような大量に魔力を要求される術式を使用しなかったとはいえ、
今日一日でステイルが起動させたルーンは軽く万を超えるだろう。
加えて敵の位置特定を行っては休みなく連絡、そして『守護神』の維持。
矢面に一度も立たなかったとはいえ、疲労は限界をとうに超えていた。
「……休むとも。ここで寝てるさ」
しかしこの男と来たらその身を案じる声にロクに耳を貸さず、
でかい図体を丸めて長椅子に寝ころんでしまった。
火織は常にないステイルの子供じみた仕草に溜め息をつきつつも、同時に笑みも洩らした。
「あーあー、まるっきりガキの不貞寝ですたい。
…………ま、そんなお前を見てると嬉しくなるのも事実だが」
「………………はぁ?」
それは土御門とて同様だった。彼は昼間のアニェーゼとのやりとりを思い出す。
「惚れた女のことでうじうじしやがるなんて、十年前のお前にはあり得なかった事だ。
…………正直言えばオレはあの頃、お前が気味悪く見えることがあった」
「…………なんだと…………」
「土御門、少しでいいから言葉を選んでくださいよ……」
剣呑な顔をしたステイルがむくりと身を起こす。
火織が苦笑いして容赦のない男をたしなめるが、土御門はそんな彼女にも問うた。
「ねーちんだって、同じこと考えてたんじゃないのかにゃー?」
「…………まあ、否定はしません」
「かっ、神裂! 君まで何を!?」
「あなたがもっと未練がましく、微かな希望に縋りついたところで……
……少なくとも私たちは、それを責めたりはしなかったでしょう」
「…………っ!! ふざけるな!!!
仮に君たちが肯んじたところで、他の全てがそれを許しはしなかった!
状況が、時期が、政治が! 科学も魔術もそいつらの思惑も!」
「そしてなにより、彼女がそれを許さなかったんだよ!!!」
自分ではない別の男の傍で、彼女が笑っている光景。
まさしく煉獄に身を焼かれるようだったあの日々。
しかし彼は、自らを律した。当然のことだ。
それが嫉妬だろうが何だろうが『火』である以上、御せずしてなにが焔の魔術師か。
にも拘らず、十年前のステイル=マグヌスを知っているこの二人が、そんな己を否定するというのか。
――何故だ。彼らなら、理解してくれるはずなのに――
「だから、そういうのをぶちまけりゃあ良かった、って言ってんだよオレらは」
「な…………?」
冷や水を浴びせ掛けられたように気勢を失ったステイルを見て、土御門はくつくつと喉を鳴らす。
「確かにお前は正しい。お前の言ってることは間違いなく正論だ。
インデックスの保護をカミやんに委ねたババアの目論見をオレ達は静観するほかなかったし、
当の本人はお前のことなんざちょっと顔を知ってる同僚、としか認識してなかった」
「だっ、だったら!!」
「……正しければ、それで良いのですか?」
混乱する彼に、横から静かに声がかかる。
「辛い、悲しい、苦しい…………。感情は、理屈とは別のところで動きます。
そういった心の澱を、あなたに溜めこませてしまった自分が、私は許せない」
「世の中のサラリーマン連中だって、気に入らないことは酒に吐き出して明日には持ち込まない。
そういうポーズすら見せようとしなかったあの頃のお前より、今は百倍マシだな。
…………だから、そういう隙間が見れて嬉しい、と言ってるんだ」
無茶苦茶だ。ステイルはそう思った。
あの頃の彼にとって土御門元春と神裂火織は、単なる仕事仲間に過ぎない。
それは逆から見ても、また真であったはずなのだ。
「だーかーらー。ただの同僚でも酒ぐらいは付きあうもんだぜい。
まあ、オレら全員未成年だったけどにゃー」
「あの時点で、それなりの付き合いだったと思うのですが。
…………そんなに信用が無かったのでしょうか?」
呆れたような笑みを浮かべて好き勝手を言う『仲間』に、ステイルは顔を俯ける。
「はは……ははは…………まったく、何なんだい君たちは…………」
視界が、ぼやける。
「まったまたー、素直になるにゃーツンデレ神父ー」
顔が、熱い。
「……ふふ、別に今からでも一杯、いいですよ?」
躰が、震える。
「あぁ、まずいな…………目からイノケンティウスが」
「「そのボケはない」」
「やかましい!!」
礼拝堂に反響する自らの笑い声は、ひどく久しぶりのものだとステイルには思えた。
「それで、どうします? 本当に一杯付き合っても構いませんよ」
「ふふ……気持ちだけ受け取っておくさ。まだ気を抜いて良いわけじゃあない」
心に淀んでいたモノを少しだけ吐き出し、ステイルは笑う。
気分が楽になると、身体の疲れが否応なしに表面に浮上してくる。
「ほう、多少は視野が広がったようでなによりだ」
「ま、一応礼を言っておくかな。…………ありがとう。神裂、土御門」
滅多に聞けない素直な礼を受け、二人の表情も自然と綻ぶ。
「どう致しまして。次は更に遠慮なくかかって来なさい、ステイル」
「君は酒癖が悪いからな……。お手柔らかに頼むよ」
「おおおお、思わず鳥肌が立っちまったぜい。明日は火の雨だにゃー」
「君の頭上だけ局地豪雨にしてやろうか?」
「こわいこわい。じゃ、そろそろ退散するぜい」
そう言うと土御門は、蝋燭の灯のみで照らされた礼拝堂の入口を見やった。
「新しいお客さんも、来たことだしな」
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時は少し遡る。
土御門たちが去った後のテラスは静寂に包まれていた。
慈愛とも憐憫ともとれる刀夜の――『彼』そっくりの――面立ちに
インデックスもまた、正対することが出来ないでいた。
彼女は視線を手の内の水面に落とし、次に放つべき言葉を求め彷徨う。
しかし上条刀夜は、彼女を待ちはしない。彼にも、確固たる目的があった。
其れを果たすべく――
「……インデックス。君は――――当麻をまだ、愛しているんだね?」
――核心に、切り込んだ。
グラスがか細い指から離れ、床に吸い込まれる。
「………………あ……………………」
蒼白な表情は、千の言葉より雄弁な解答だった。
「…………そうか」
硝子の破片を拾い集めながら、刀夜が一言呟く。
焦点の合わない目で彼に視線だけ向けるインデックスは、混乱の極致にあった。
――どうして、なんで? 誰から、いつから?
疑問が次々に浮かんでは消える。
しかしどの一つとして明白な答えを得たくないと思う自分が居ることに、彼女は気がついた。
「そもそも今日私がここに来たのは――当麻や美琴ちゃんに話を聞いたからなんだよ」
そしていよいよ、身体の震えがおさまらなくなる。
――ああ、駄目だ。それだけは。他の誰に知られても、あの二人にだけは。
「……私は二人から君の様子が少し心配だ、という話を一週間ほど前に聞いた。
推測でしか言えないが……当麻はもちろん、美琴ちゃんもあれで結構鈍感な部分がある。
私だって詩菜に言われなければ、ね。君の一番の心配事は杞憂だと思う」
「あ…………う、うん……」
――全て、見透かされている。この、父の如き人には。
「先ほども言ったがこの事に最初に気がついたのは詩菜なんだ。
私は半信半疑という程度だったが……。
君とステイル君のお互いへの態度、そして当麻の名前を出した時の反応。
…………女の勘とはつくづく恐ろしいものだね」
確かに、恐るべき直感である。
インデックスはこの事実をもちろん自分以外の誰にも話していないし、
感付いているとしたらごく身近な――例えば土御門のような――数人だけだと考えていた。
「……そもそもどうしてとうま達は、私が変だって思ったのかな?」
僅かばかり心が軽くなったインデックスだが、
最大の不安について自ら切り出すのはやはり勇気の要ることだった。
「同じ事を言っていた。…………君からの電話やメールが減った、とね。それだけさ」
たった、それだけ。
刀夜にとっては然程深刻にも思えなかったが、
当麻と美琴は彼女の懊悩を漠然とだが感じ取ったのかもしれなかった。
「そっ、か…………変わってないね。とうまもみことも」
そして遥か東の国から『家族』の温かい想いを受け取ったインデックスは――
「じゃあ…………聴いてくれるかな、とうや」
「もちろん」
礼拝堂の想い人同様、心の澱をかき混ぜることに決めた。
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十年前。彼女は間違いなく、世界にも恥じることなく宣言できた。
『わたしはとうまを、愛してるよ』
それこそ、恋敵の友人にでも。
其れが、美琴の背中をもしかすると押したのかもしれなかった。
今となっては、もうわからない。
結果として、インデックスは恋に破れた。
『おめでとう。とうま、みこと。……幸せになってね』
緊張した面持ちで自らを呼び出し、事実を余すことなく告げた男女に、彼女は祝福の言葉をかけた。
無理をしていなかったと言えば、嘘になる。
――そんなの、もう、どうでも良いよ。いつものとうまが帰ってきてくれたら、何でも良いよ――
しかしインデックスは、いつの日か彼にそんな懇願をしたことを思い出した。
彼女はただ幸せそうな二人を――上条当麻を見て、これでいい、と思い定める事にしたのだ。
自暴自棄になった、というわけではない。
事実インデックスは遂に学園都市を去るその日にも
大勢の見送りの先頭に立つ彼らを拒みはせず、笑いかけた。
急な帰国をした彼女を慌てて出迎えたのはもちろん、神裂火織と――ステイル=マグヌスであった。
彼らは所用で日本まで迎えに行けなかった事を詫びたが、それ以上に、どこか複雑そうな面持ちだった。
インデックスは改めて『必要悪の教会』の一員として、彼らの同僚になった。
そうして、三人の日々が『再び』始まった。
食卓を共に囲んで騒いだ事は数えきれない。
土御門に引っ張り出されて、魔術事件を解決すべく力を合わせた事もある。
アニェーゼ達とミサを執り行い、オルソラやシェリーと暗号談義に花を咲かせた。
ローラとは唯一、二人を交えず対話したし、王室に招かれた宮殿の晩餐会は忘れられない美味ばかりで。
火織が騎士団長からの求愛を受けた日には、ヤケなのか祝いなのか判然としない酒宴を天草式と共に張った。
そんなある日、ステイルがフラッと姿をくらましたと思うと、顔に青痣をつくって帰って来た。
それは当麻と美琴から結婚式の招待状が届いた、翌日のことだった。
思い起こせば、その日、その時からだったのかも知れない。
手当てをするインデックスに一言も発さず、
ただ悲しげな瞳で咥えた煙草を上下に揺らす彼を見て、何故だか切ない懐かしさを感じ。
――心臓が一度、大きく跳ねた。
記憶を失う前の二人がどのような関係だったのか。
彼女の問いにステイルは頑として回答を拒み続けた。
そもそも十年前、インデックスと彼がまともに顔を合わせたのは
『法の書』の一件と、第三次世界大戦の騒乱時ぐらいのものだ。
月詠小萌と姫神秋沙、そして上条当麻の言葉の端からステイルが
しばしば学園都市に訪れていたらしいことは感じとっていた。
しかしそれは即ち、彼が当麻を事件に巻き込みに来ている、という事実に繋がる。
決して好意的に解釈できるような事実ではなかったし――
――『卑怯者』と、そう詰ったことさえあった。
火織も彼女自身とのことは語っても、ステイルの話題になると力なく言葉を濁すのみ。
しかしただ一つだけ、懇願するインデックスに根負けして、
ある『誓い』の存在を教えてくれた。
その時に脳裏を過ぎったのは、彼女と彼の数少ないやりとりの一つ。
『法の書』を廻る攻防の最中の事だった。
――駄目だッ!! そうなれば、今以上に大勢の魔術師に狙われる羽目になる!
――? 心配、してくれるの?
往時のステイルは一瞬肩を震わせたかと思うと彼女から顔を背け、
すぐに当麻に凄まじい剣幕で食ってかかり、インデックスを守るよう迫った。
そのあと彼女は、疑問を抱きながらも差し迫る危機に頭を切り替えたのであったが。
今にしてみれば、なんと残酷な問いだったのだろうか。
こんな薄情な女を、何故ステイルは身を削ってまで守ってくれるのだろうか。
どうして彼は、そこまで己を殺してしまうのだろうか。
ステイル=マグヌスのことを、もっと『記憶』したい。
自らの『図書館』にのみ価値を見出して日々を過ごしていたインデックス。
彼女に、新たな標が生まれた。
意識して彼に特別な笑顔を向け始めたインデックスに、だがステイルは徐々に頑なになっていく。
彼への思慕が募る一方で、インデックスはある日唐突に、一つの事実に気づいてしまう。
『とうま』
ロンドンでは珍しい、茹だるような寝苦しい夜だった。
誰かの苦しげな呻きで彼女は目を覚ました。しかし辺りには誰もいない。
夢だったのかと再び眠りの海に身を浮かべようとして、インデックスは愕然とした。
『とうまぁ……』
声は再び、驚くほどすぐ近くから――自らの喉から漏れ出てきた。
すすり泣くような声は、彼女自身のものであった。
そうしてインデックスは皮肉にも、
ステイルに心を寄せれば寄せるほど、
恋という情動の中で焦がれれば焦がれるほど、
――――上条当麻を未だに愛している自分がいることを、知覚した。
「……苦しかったかい?」
語り終えて、インデックスは刀夜の問いに大粒の涙を零しながら頷いた。
「すているが、本当に、好きなの……! ……なのに、なのに!」
自らの『能力』など言い訳にはできない。
『完全記憶』は、感情を記録する異能ではないのだから。
しかし。
自分を地獄から引きずり出してくれた少年が。
約束を守って帰って来てくれた男性(ひと)が。
「とうまの事が、どうしても『忘れられない』の…………!」
――どうして、誰も幸せにしないこんな『熱』を記録してしまったのだろう。
「なんで、わたしは、こんなに汚いの……?」
――――どうして、素直に彼の目を見て、このキモチを伝えられないのだろう。
「やめるんだ」
力強い、怒気を孕んだ声がインデックスの自傷を咎める。
「でも現に、私はすているを傷つけてる! ……『不幸』に、してるんだよ!」
『それ』が原因の一つであると、彼女は考えていた。
ステイルも知っているからこそ、自分に踏み込まないのだ、と。
このままでは彼は、『幸せ』になどなれは
「 違 う ッ ッ ! ! ! 」
――裂帛の大喝が、彼女の苦悶を断ち切るべく放たれた。
「思い出すんだ。この五年、君の側に居た彼の事を。
ああ、私は知らないさ。だから君の記憶に訊こう。
……ステイル君は悲しんでいたか? 苦しんでいたか?
君の側に一分一秒とて在りたくはないという顔を、していたのかッ!!」
『君は……貴女は、神を愛し、神に愛される高潔な聖職者だ。
多くの人が疑いようもなく、貴女に救われているのだから』
(――そうなの? 私は、あなたも救えているの?)
「彼は、笑っていなかったか? 安らいでいなかったか? 喜んでいなかったのか?
君の側に居られて幸せだという表情を、一度たりとも見せたことがないのか!?」
『――Sleep then my prince, oh sleep 』
『お、おい……!』
(――――ひとときでも、あなたの拠り所になれているの?)
インデックスの瞳に生気が蘇りつつあるのを見てとり、刀夜は立ち上がった。
「さあ行こう、彼のところに」
「え、え…………!?」
突如の提案、いや命令に狼狽するインデックス。
しかし上条刀夜は止まらない。
「……私は当麻じゃないから、これ以上の事は出来そうにもない」
「この問題がすぐに解決するものでないことも承知の上さ」
「だが一度、君の今の想いをぶつけてみるべきだ」
「何、言葉にしなくても良い。言葉で全てが伝わるとも限らないしね」
「……君たちがもし記憶ではなく、心で繋がってるなら」
そして微笑み、手を差し伸べる。
くのう
「いつか君の幻想を、彼が壊してくれるよ」
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立ち去る土御門たち――火織は別れを告げた直後の邂逅で気まずそうであった――と
入れ替わりで現れたのは、上条刀夜と、インデックスだ。
十年前の心情に向き合ったばかりのステイルだが、『現在』の事はまた話が別である。
飽きもせず沈黙に身を委ねる男女を気にも留めず、刀夜は用件を告げた。
「ステイル君、来たばかりで申し訳ないが私はそろそろお暇しようと思う。
もともとここには近くで商談が在ったから寄ったんだ。
明日からも仕事があるし、スーツケースも探さなければならないんでね」
「…………そうですか。最大主教とは、もう良いのですか?」
「ああ。目的は果たした。…………あとは、私の出る幕ではない」
ステイルは立ち上がると黙ったままの彼女を一瞥した後、刀夜に一礼をおくる。
「……では、お元気で」
「私の娘を、よろしく頼むよ」
「…………命にかえても」
(……そういうことではないのだが)
刀夜は思ったが、高望みしてもしょうがない。
「とうや…………」
「……わかってるね? じゃあ、またいつか」
『娘』はいまだ、縋りつく子犬のような瞳で刀夜の袖を引く。
しかし、このままでは彼女の為にはならないのだ。
「最後にこれだけは言っておこうか」
その手をゆっくりと引き剥がし、別れの言葉に代えて彼は告げる。
「インデックスという慈愛深く、優しい娘を持てた事は、私の誇りだ」
溢れんばかりの情愛を残し、『父親』は聖堂を――ロンドンの街を後にした。
そして礼拝堂は、一組の男女のためだけの舞台と化す。
二人は通路を挟んで隣の長椅子に、どちらからともなく腰を下ろした。
「…………どうしようもないな、僕らは」
「……………………そうかも」
先に口を開いたのは、煙草を切らしたのか口寂しそうなステイルであった。
応じるインデックスの声はか細い。
「まったく、問題はまさに山積みだ」
「なんでこうなんだろうね。私たち」
いったいどれだけの人々に見守られ、心を砕かせているのか。
続くやりとりは、どこか諦観を伴って交わされた。
「…………僕は」
「私は…………」
――やがて二人は、想いを言葉に変えた。
「僕が愛したのは、貴女ではなく『あの子』だ」 「あなたが愛したのは、私じゃない『私』だよね」
「貴女はまだ、上条当麻を忘れられない」 「私の心には、いまだに上条当麻がいるの」
「それでも」 「それでも」
『――それでもあなたが――』
――――――――
想いの最後のひとかけらは結局、言葉にはならなかった。
「まだまだ……時間はかかりそうだね」
「はぁ……臆病者なんだよ、お互いに」
しかし二人には、時間も機会も有り余っている。
一年のタイムリミットも、一万キロの距離も、とうに融けて消えた。
ならば残る障壁は、心の遠さ、それだけだ。
一歩縮めるべく先に踏み込んだのは、インデックスであった。
「…………名前」
「……え?」
「インデックスって呼んでくれたら…………嬉しいな」
ステイルは押し黙る。
彼女を最後にそう呼んだのは、果たしていつのことであっただろうか。
そして今の自分に、その資格があるのか。
「…………どうかな?」
一瞬の逡巡。
二人にとっては無限に等しく感じられた刹那の後。
降ってきた言葉は、誰も幸せに出来ない一片であった。
「…………………………すまない、『最大主教』」
「……………………そっか。うん、無理しなくていいよ」
「本当に、すまない」
――結局自分は、ただの臆病者であった。
忸怩たる思いを噛みしめながら、しかしステイルも、一歩だけ。
「今日は…………疲れた。その、出来れば…………」
「…………なに、かな?」
――――ただ一歩だけ、勇気を出すことにした。
「膝を借りても、いいかな」
聖女の綻んだかんばせに、赤みが差した。
そこに在るだけで誰かを幸せに出来る、彼女の真の『才能』の顕れ。
「……どうぞ、私ので良ければ。…………子守唄も、いる?」
守護神はその瞬間、たとえ天使にだろうが悪魔にだろうが――
――『アイツ』にだろうが、胸を張って誇ることが出来る、と感じた。
「…………ありがとう。……お願いするよ」
僕は今、幸せだ――と。
白銀の聖女が、黒衣の守護神を温かく包みこんだ。
天から降りそそぐ陽のような唄声が、光に乏しかった聖堂を照らし出す。
安らかに微睡む男と、ふわりと微笑む女を、ステンドグラスの聖母が優しく見守っていた――――
一ヶ月後 聖ジョージ大聖堂 大広間
建宮「えーそれではお集まりの皆さん、この不肖建宮斎字が音頭を取らせていただくのよ!」
レッサー「よっ、やれやれ!」
建宮「ロンドンの街を守り切った我々と、新たな三人の仲間、そしてなにより――」
天草式「「「なによりー!?」」」
建宮「我らが麗しきアークビ「『私の』くぁいいインデックスの誕生日に、カンパーイ! なりしよ!!」
あああああぁぁぁぁ!? なにするのよなー!!」
「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」
建宮「oh……」
五和「げ、元気出してください建宮さん。おしぼりいりますか?」
建宮「おお五和……今の俺の癒しはお前だけなのよ…………」
五和「ほ、ほ、ほ、本当ですか!? 私、建宮さんのお役に立てて……?」
建宮「そのとーり! さあその『隠れてない巨乳』に顔を埋めさせてほs」
シンクノソラー
ステ「どいつもこいつも、主賓そっちのけで騒いでるな……」
イン「みんな楽しそうだから、別にいいんだよ!」
ステ「こう言っちゃなんだが、貴女の誕生日に括られて歓迎会をされるあの三人だって……」
元春「本人たちは一向に気にしてないからいいんだぜい」
火織「……結局のところ、財政難が一番の原因なわけですが」
ステ「…………」
元春「………………」
イン「なななななんで、私の方を見るのかな!?」
元春「その豊かな胸に手を当てて考えるぜよ……誕生日おめでとう」
火織「とりあえず一日五食はやめましょうね……誕生日おめでとう」
ステ「ダイエットの成果はどうなったのかな……誕生日おめでとう」
イン「とってつけたような祝いの言葉はやめて欲しいかも!?」
火織「おや……ステイル?」
イン「どうかしたかい」
ステ「今、インデックスに敬語を使ってませんでしたよね?」
イン(何で……!)
ステ(こんな時だけ鋭いんだ…………!)
元春「ほう、ねーちんにしてはなかなか早かったぜよ」
火織「なんですか……また私だけ気付いてなかったとかですか……」ズーン
元春「いやいや、なかなか尻尾を出さないようにはしてるから、皆そんなには気付いてないにゃー」
ステ「べっ、別に前から敬語が外れる事は珍しくなかっただろう!」アセ
イン「そっ、そうかも! 二人きりの時は普通がいい、なんて頼んだわけじゃ」アセアセ
ステ「ホントに隠す気があるのか貴女はァーーーーッッ!!!」
ステ「くそ、油断したか……」
火織「別に堂々としていれば良いでしょう」
イン「そ、その。私が、恥ずかしいって言ったから……」
元春「上司と部下になる前はタメだったろうが」
ステ「そこらへんの女心ってヤツは僕にもよくわからないがね……
まあ、最大主教が望むのなら、僕は何だってするよ」
イン「あぅ……」カァ
元春「見事なカミやん病だ……殴りたくなってきた」ウズウズ
火織「でもその割に名前は呼ばないのですね?」
ステ「…………」
イン「…………」
元春「……どうやらそこは地雷原だ、ねーちん」
火織「?」
元春「さて、いつまでもお邪魔するのもなんだし」
火織「そうですね、後は若い二人に……」
ステ「たいした歳の差でもないだろうが二十八歳!」
火織「冗談ですよ。来客に挨拶するのもあなた方の務めでしょう」
元春「(オレは冗談を言った覚えはないですたい)だな、会場を回って見せつけて来い」
ステイン「「何をだ(かな)!?」」
元春&火織((それをだよ))
移動開始…………
ガヤガヤ ワイワイ
ステ「……回るのはいいが、ドンチャン騒ぎで皆こっちには見向きもしないね」スタスタ
イン「皆嬉しそうだから別にいいかも。…………あ、あれ!」ヒョコヒョコ
ステ「アレ? ……………………さて、ではアチラに……」
クランス「おおインデックス! この度は誠に目出たいな!」
ステ「なんで居るんだよッ!! おかしいだろロシア成教!!!」
クラ「友人の生誕日を祝いに来て何が悪いんだ?」
ステ「いや、外交上いろいろあるでしょう? 其方のブレーンだって……。
…………ブレーンからしてアレだったな」
アニェーゼ「アレってのは、あっちでばか騒ぎの中心に居るアレのことですかい?」
イチバンタテミヤ! フリーキックヤルノヨナー!
オナジクイチバンワシリーサ! キックサレルボールヤッリマース!
ステ「…………」
イン「……なんでもありなのかな、あの人」
サーシャ「第一の懇願ですが見ないで聞かないで触らないでください! ロシアの恥ですあれはッ!!」
アニ「……ああ、あれが『カナミンスーツのワシリーサ』ってワケですか」
サー「第一の質問ですがまたかあのバカ上司ィィィーーーーッッ!!!!」
ステ(安定感があるいい人材だ……)
イン(ステイルの目がプレミアリーグの監督みたいになってるんだよ……)
イン「あれ? そう言えばなんでアニェーゼが二人と一緒なの?」
ステ「そういえば……何かつながりがあったのかい君たち?」
アニ「よくわかんねーですけど、あのアロハ野郎にお偉いさんだからって
案内役を押し付けられちまったんですよ。こちとら初対面だってのに」
サー「…………!! 第一の解答ですがその通りです! 私たちに特に面識などありません!」
クラ「きゅ、急にどうしたんだサーシャ?」
アニ「サーシャ…………?」
サー(うわあああぁぁぁ!)
アニ「ああ、ああ。なぁるほどぉ……」ニヤ
イン(あ、スイッチ入った)
サー「だ、第二の質問ですがその凶悪な顔はなんですか!?」
ステ(待て落ち着け、これは土御門の罠だ)
アニ「そうそう、その口調で気付くべきでしたねぇぇ……
痴女としか思えない拘束服のサーシャ=クロイツェフさぁん?」ニタニタ
イン「…………拘束服?」
ステ「………………痴女?」
サー「いやあぁぁぁあぁぁ!!!!!
第二と第三と第四の懇願です、お願いだから黙ってください!!!」
クラ「ん? あれはあれで可愛かったじゃないか、サーシャ」キョトン
サー「え…………」キュン
アニ「……チッ。予想外の展開になりやがりましたね。
はぁ……どいつもこいつも……」デアイガホシイ
ステ「だいたいにして頬を染める場面とは違うだろう、これは」
イン「ちっちっ、そこが乙女心の難しさなんだよステイル」
ステ「貴女は全世界の乙女に謝るべきだと思うね」
クラ「ああ失礼した。すっかり遅れたが誕生日おめでとう、インデックス」
サー「……ハッ! だ、第一の祝辞ですが、おめでとうございます」
アニ「ああ、私もまだ言ってやせんでしたね。おめでとうございます、最大主教」
イン「ふふふ、ありがとう!」
クラ「……『ありがとう』とは紛れもなくこちらの台詞だ」
サー「第二の解答ですが、私を長年の悩みから救ってくれたのは、貴方です。
なんと、お礼を言えば良いのか…………」
ステ「…………」
イン「サーシャがお礼を言うべきなのは、クランスのはずなんだよ。
あんなに頭を下げられたら、断れるはずないもん。
ほーんと、サーシャは愛されてるかも」ニヤニヤ
アニ「ほほう、愛されてるんですかい」ニタニタ
ステ(シスター・アンジェレネを呼んでおくべきか……)
サー「………………えーっと、その……第三の解答ですが」
ステイン「「?」」
アニ(おや、またしても予想外の反応)
クラ「待てサーシャ、そこから先は私の口から話そう」
サー「クランスさま…………」
ステ(十秒後に何をしてるか予想のつく自分が嫌だ)
イン「どうしたの?」
クラ「実はだな…………」
クラ「私とサーシャは今、結婚を前提にお付き合いを」
ステ「進展が速すぎるだろッッ!! とりあえず僕たちに謝ってくれ>>1!!!」
メンゴメンゴ(笑)
ステ「ちくしょおおおぉぉーーーーっっ!!!!」
イン(ステイルはいったい何と闘ってるんだろう……)
移動中…………
五和「はああぁぁぁ………………何であの人はいつも『ああ』なんでしょう…………」グビグビ
アンジェレネ「だ、大丈夫ですか五和さん……? ……はぁ」ゴクゴク
五和「大丈夫じゃないですぅ……。あなたの方こそ元気がないですよぉ……」プハァ
アン「うう……だってあの二人、割って入る隙がますます無くなってるんです……」ハァァ
オルソラ「まあまあ、二人とも夜更かししては美容にいけないとあれほど……」
ステ「……それは一カ月以上前の話題だった気がするんだが」フー
アン「あ! ふぁ、ふぁ、神父ステイル!」
イン「…………私もいるかも」
五和「あーこれは最大主教! おたんじょうびー、おめれとうございます!」
アン「お、おめでとうございます。……上手く、やってますか?」
イン「…………うん。ごめんは言えないけど、ありがとうねアンジェレネ。いつわも……」
オル「あら、十七歳の誕生日誠におめでとうございます、最大主教様」
イン「……」
ステ「…………」
五和「………………」
アン「……………………え、永遠の十七歳だったんですか? 最大主教」
イン「それはしいなの事なんだよ!」
ステ「なかったことにしよう。うん、絶対その方がいい」
アン「そうですね……」
オル「?」
イン「じゃあ↓から仕切り直しかも!」
ステ「それで貴女は、なにをくだを巻いていたんだ?」
五和「……わかってるんでしょおぉ……教皇代理の事ですぅぅぅ……」
アン「相当出来あがっちゃってますね……」
オル「おしぼりなど如何でございましょう?」
ステ(キャラまでぶれ始めた)
五和「…………オルソラさん! あなたもずるいんですよぉ!!!」
オル「え? え?」
アン「ど、どうしちゃったんですか五和さん?」
イン「いつわはネジが飛ぶと誰よりも怖いって天草式の皆が言ってたんだよ、そういえば」
ステ(別に平常運転でも相当なものだが……)
オル「わ、私何か、五和さんのお気に障ることを…………?」ワタワタ
五和「だって、だってだって!!」
五和「オルソラさん、建宮さんにお姫様だっこされてたじゃないですかぁぁ!!!」
「「「!!??」」」
オル「え? ヴィリアン王女様がなにか……?」
「「「………………」」」
ステ「……ゴッホン! あ、あの男、オルソラ狙いだったのか…………!?」
アン「そ、そんなシーン見たことないですよ!」
イン「…………ううん、私のデータベースに一件だけヒットしたんだよ」
ステ「なん…………だと………………?」
五和「そーですぅ!! 私は忘れてませんよぉ…………
十年前のあの日、オルソラ教会でのことをぉ!!!!」
「「………………は?」」
イン「詳しく知りたい人はアニメⅡ期のDVD二巻を見てね!!」
ステ「まさかの販促!?」
移動中…………
トチトリ「しかしあれだな、管理人さんとそちらのシスターさんは本当に瓜二つだ」
13857「こんなドジっ子と一緒にされるとは心外です、とミサカは悲しきDNAの悪戯を嘆きます」
17000「いったい誰がドジっ子だと言うのです、とミサカは失礼極まりない発言に憤慨します」
13857「お義兄様の好みの属性を獲得しようと『寮母さん』などにうつつを抜かしているから
お姉様に先を越されたのだ、とミサカは17000号の本末転倒ぶりを嘲笑います」
17000「アニェーゼさんに感化されて特殊性癖をゲットしてしまった13857号よりは
遥かにマシです! とミサカは(ry」
13857「どどどどうやってミサカがドSって証拠だよ! とミサカは(ry」
トチ「……仲の良い姉妹だなぁ」
イン「もう、また喧嘩してるの二人とも?」
ステ「彼女らのコレはじゃれ合いだろう。もう見飽きたよ」
トチ「おや、最大主教にステイルさん」
ステ「すまないね。せっかくの歓迎会がこんな節操のないもので」
トチ「ははは、貴方も意外に律義な人だな。こんな会を催してもらえるだけで私達は満足さ」
ステ「フッ……成程。確かに本人がそういうなら仕方がないね」
トチ「その通りだとも。さ、一杯どうだ?」
イン「…………」
妹達((また始まった…………))
ステ「お言葉に甘えたいところだが、遠慮するよ。……最大主教の身は素面でないと守れない」
トチ「ほほう、見上げた男ぶりじゃないか。なあ最大主教?」
イン「す、すているのバカ……!」
13857「お義兄様とは一味違う所を見せてくれますね、とミサカは微妙に惜しがります」
17000「なにが惜しいのでしょう、とミサカは修羅場を誘発しかねない
13857号の腹黒さに戦慄します」
ステ(SPが酒を飲まないのはごく普通のことだと思うんだけどね)
トチ「いやあ済まない。普段からバカップルを見慣れてるものだから、
私もうっぷんが溜まっていたのかもしれないな」
イン(普段からアレなんだ……)
トチ「とにかくこの場はあなたへの祝いが先だろう。
誕生日おめでとう、あなたの前途に我らの神の祝福を」
妹達「「お誕生日、おめでとうございます」」
イン「あ、あはは……。ありがとう、みんな」
ステ(他宗教の祝福は……まあ無粋なことか)
13857「ああそうです、最大主教」
イン「え? まだ何かあるの?」
17000「後ほどスペシャルなプレゼントをお渡しするのでご期待ください、
とミサカはあえて今出さずに勿体ぶります」
ステイン「「?」」
移動中…………
建宮「おらおらアックアさんよぉ! この建宮斎字の酒が飲めないっていうのよなぁ!?」
ウィリアム「す、少し落ち着くのである建宮! おい貴様ら、コイツを止めないか!」
牛深「ええー」
野母崎「やだよ、建宮さん酔うと見境つかなくなるしー」
対馬「そうね……五和に変に誤解されて聖人崩し喰らいたくないし……」
諫早「このまま行けばその対象はウィリアムさんになるのかな」
ウィ「わっ、私はもうとっくに聖人ではない!
というか貴様らもしかして、まだ十年前の事を根に持っt」
香焼「きょ、今日のポニーテールは反則的なまでに似合ってるっすよ///」
浦上「///」
ウィ「人の話を聞けーーーっ!!」
ステ「…………行こうか、最大主教」
イン「うーん、ちょっと可哀想だけど。関わるとめんどくさそうかも」
天草式「あ、お誕生日おめでとうございまーす(なのよなー)」フリフリ
イン「ありがとなんだよー」フリフリ
ステ「テキトーだな……」スタスタ
ウィ「待て、助けなくても良いから、せめて祝いぐらいはさせるのである!
って行くな! ぬうう、誕生日おめでとおおおおおおおおっっ!!!」
イン「ありがとねー」ヒョコヒョコ
ステ「ヒーローェ……」ホロリ
移動中…………
ヴィリアン「あら? 今ウィリアムの声が……?」
リメエア「間違いようのない野太い声ね……まあ大丈夫でしょう」
キャーリサ「そうそう。そんな事よりも腹の子の為に食べるべきなの、ヴィリアン」
ステ「立食パーティだってのに椅子持ち込んでるのもいるし……」
キャ「妊婦が居るんだ、大目に見るし」
イン「ヴィリアン! もう出歩いて平気なの?」
ヴィ「ふふ、心配してくれてありがとう。安定期に入ったから大丈夫ですよ」
リメ「さすがに四度目ともなると肝の据わり方が違うわね。……誰かさんと違って」
キャ「妹の心配をしてなにが悪いとゆーの姉上!?」
ヴィ「もう、姉君ったら……」テレ
リメ「自分が婚期を逃しているという事実をまず心配なさい」
ステ「すっかり姉馬鹿伯母馬鹿だな……どうしてこうなった」
ヴィ「でも、私はとても幸せです。こんなに家族に想ってもらえて。
……昔は、夢に過ぎないと思っていた光景ですから……」
キャ「…………」
リメ「…………」
イン「ヴィリアン、良かったね……」
ヴィ「まあいけない、私の事ばかりかまってもらって。
今日はおめでとうございます、インデックス」
キャ「そう言えばそうだったし。おめでとう」
リメ「おめでとう、最大主教。これからも共に英国を支えて行きましょう」
イン「ありがとうございます。不束者だけど、よろしくお願いするんだよ!」
ステ(今のはわざとなのか……?)
ヴィ「それに私も幸せだけど、今のあなたも幸せそうですよ、インデックス?」
イン「そ、そうかな…………」チラッ
ステ「………………」ポリポリ
キャ「横の甲斐性なしが我慢ならなくなったら私の所に連れて来い。
カーテナ(欠片)で根性を叩きなおしてやるし」
ステ「……どうぞ御随意に。例え大天使が相手だろうと僕の意志は揺るがない」
ヴィ「あら」
キャ「おお」
イン「」
リメ「だからキャーリサ、貴女は四十路手前の自分を顧みなさい……」ハァ
移動中…………
ステ「…………あれもスルーしたいんだが」
イン「……どうしよっかなーなんだよ」
エリザード「ほーれじゃんじゃん持ってこーい!!」ヤッホーイ!
ローラ「良き飲みっぷりであることよエリザード様! 私も負けてられなし……!」ウズウズ
ワシリーサ「んねぇねぇ聞いてるオジサーン? サーシャちゃんがね、
私の可愛いサーシャちゃんがお嫁さんに……ウッウウウッ」ガクガク
騎士団長「」シーン
ステ「騎士団長が尊い犠牲に……」アーメン
イン「無事主の御許に辿りつかん事を……」アーメン
ロー「あああ! インデックスーーー!! ってわわっ!?」トタトタガバッ
イン「あわわ! 危ないんだよローラ! 歳を考えなきゃ!」フラフラ
ステ「クソッ、感付いたか女狐が……!」チッ
ロー「…………本人の前でする言い草でなきにつきよ……」シクシク
ロー「と、とにかく! 二十六歳の誕生日おめでとう、インデックス」
イン「えへへー。ありがとう、ローラ」
ステ(年齢にせよ誕生日にせよ、この女の申告だという点が気に入らないんだよな……)
エリ「おや、主役のご登場か。今日はめでたいね、インデックス」
ワシ「あらぁインデックスちゃん、お誕生日おめでとー☆
…………ああサーシャちゃん、クランスちゃぁん……。
もう子供じゃないのねぇ…………うっ、ぐすっ」ビシバシ
団長「…………お、おめでとう。最、大主、教……。
これか、らも……妻、と仲良、く……………………」パタッ
イン「うん、うん! とっても嬉しいかも!!」
ステ(…………まあ、いいか。……?)
ロー「」チョイチョイ
ステ「はあぁ………………なんですか、手短にお願いしますよ」プカー
ロー「どうである、青少年? 新たな一歩は踏み出せし?」
ステ「…………あの聖堂、カメラも監視術式も無いはずなんですが」
ロー「なんとステイル! 神の御前でナニに及んだとヒャアアァァッッ!?」ボボウッ!
ステ「次に言ったらその阿呆な長髪を焼き尽くしますよ……」ユラリ
ロー「今のだけで三十センチは減りたりよ!?」
ロー「それはさておき。壁を一つ、乗り越えた感じでありて?」
ステ「……別に、そのような」
ロー「どのみち、上条刀夜には感謝せねばならなし。
……あの子の父親役を出来る者は、ロンドンにはおらぬのだから」
ステ「…………母親役だって、居るわけじゃあない」
ロー「……えぇ、そうね」
ステ「話はそれで終わりですか?」
ロー「手短に済ませいと言ったのはそっちにつきよ。
まあ、まだまだこれから、と言う事ね?」
ステ「貴女に言われるまでもない事ですね」
イン「むー! またローラとお喋りしてるのすている!?」
ステ「おっと。では僕は行きますよ」
ロー「ええ、頑張りなさい」
ステ「フン……」スタスタ
「ええ、ええ。まだまだ、これからよ? ステイル…………」
移動中…………
イン「あ、レッサーが何か始めるかも」
ステ(イノケンステンバーイ)
レッサー「あっはっはっ!! さーさお集まりの皆さん、見たいですかー?
私のスカートの中身、今日はなんとノー」
ステ「よさんかァァッッ!!!!」ゴオウッ!
ルチア「おやめなさい、破廉恥なッ!!」ドグシャァッ!
レッ「んぎゃぁぁっっ!!!」
シェリー「あーあ、レッサーが『✝レッサー』になっちまった」
ショチトル「だ、大丈夫なのかコレ!?」
ルチ「気にする必要はありません、こんな喋る15禁」
ステ「すぐに蘇るよ。レッサーだからね」
ショ「そ、それにしてもやり過ぎてるように……これ、ただの肉塊じゃぁ」
シェ「アンタも心配性ねえ。だったらやるか? 蘇生の儀式」
イン「うむ! では準備を始めるんだよ」
ショ「じゅ、十字教にはそんな秘術が!?」
ルチ(純真な子羊ですね…………)
イン「それじゃあいくよ……」
ショ「」ゴクリ
イン「ささやき」
ステ「いのり」
シェ「えいしょう」
ルチ「ねんじろ!」
ショ「……」
レッ「 レッサー は まいそう されます 」
レッ「…………じゃあないでしょうがあああぁぁぁ!!!」ガバァ!
ショ「おお! 本当に蘇るなんて!!」キラキラ
ルチ(心が痛い)
シェ「なるほど、ツッコミはツッコミでも純真無垢なのねこの子……」
イン「ステイルとは大違いなんだよ」
ステ「おい待て」
レッ「ステイルを差し置いてツッコミに回るとは何たる不覚…………。
それはさておき、本日はおめでとうございます最大主教」
ルチ「おめでとうございます。我らの主に感謝いたしましょう」
シェ「おめでとさん。また一つ三十路に近づいたわね」ククク
ルチ「シェリーさん! 主より命を授かった聖なる日をそのように……!」
イン「る、ルチア。そんなに目くじら立てなくてもいいんだよ?」
ステ「いつもの軽口だろう、全く生真面目にすぎるね」ハッ
((((アンタが言うな))))
ステ「…………?」
ショ「おめでとう、インデックス。……そして、ありがとう」
イン「こちらこそ。……私の力で、誰かを救えるんだって思えたから。
だから、私もあなたに救われたんだよ」
ステ(『救い』…………か)
ショ「これからの、あなたに貰った人生を力の限りに生きる。
それで、あなたも喜んでくれるだろうか?
……エツァリは、私と共に生きてくれるのだろうか?」
イン「一個目の解答は、必要ないよね。……そして二個目の答えは、私にはあげられないよ。
ショチトルが、自分で掴みとらなくちゃ意味ないの。頑張ってね」ニコッ
ショ「わかり、ました…………。ありがとうございます、最大主教」
イン「もう! だからインデックスでいいって言ったかも!」
ショ「あ、いやその、つい! あまりにあなたが、その、眩しかったから……」
イン「く、口説かれてるのかな私!? で、でも、私には他に心に決めた人が……」モジモジ
ショ「ちが、ちがぁーーーう! 私にだってそんな趣味はなーーーいっ!!」
ワーワー ギャーギャー
シェ「……ごく稀にだけど、あの子からはオルソラとはまた別の神々しさを感じるんだよな。
むかし私、インデックスの命を思いっきり狙ってた筈なんだけど」
ルチ「私とて、かつて最大主教に刃を向けた身ですが…………。
どこぞのウニ頭同様、ああもサッパリ許されるとそれはそれでむず痒いものがあります」
ステ「…………そんなことはないさ」
ルチ「え?」
ステ「彼女もまた、人並の苦悩に焼かれ、当たり前の感情に左右される人間だ。
人の上に立つ者として、それを衆民に見せてはいけないのだろうが……」
レッ「……だったら、貴方がその受け皿になる、ぐらいの気概を見せたらどうなんですか?」
ステ「当然やるさ。僕は彼女の心まで守り抜きたい。
しかし、それは一人で背負い込めばいい、という問題でもない。
…………僕では受け止められないモノも、あるんだ」
シェ「それで? 私らにどうして欲しい訳?」
ステ「僕が言えた事ではないのはわかってる。だが…………」
レッ「まどろっこしいですね。良いんですよ? 遠慮なく言ってくれて」
ステ「……時々で良いんだ。彼女の中に、踏み込んでやってくれ。
それで彼女は、少なからず救われるかもしれない」
ルチ「……立場と言うものがありますから、一歩引いていた事は否めません」
シェ「確かになぁ。親しみやすいヤツだけど、
奥にまでズケズケ入っちまうのは違うかな、とは思ってたよ」
レッ「別に私は仕事上の付き合い、ビジネスライクな関係しか持ってないですしー?」
ステ「…………そ、そうか……」
レッ「――まあでも、素直になれない神父さんが多少なりとも自分を曝け出したんです。
私たちも負けてられませんね」
ルチ「迷える子羊……いえ、迷える友人の支えになるのは、主ではなく私の意志です」
シェ「私はどう足掻いても長い付き合いになるんだ。それとなく気を掛けてやるわよ」
ステ「……………………ありがとう」
レッ「あーーーーーっ!! やばい、今のでサブイボバリバリですよ!! おおサムイサムイ」
ステ「なんだと貴様ぁっ!?」
ルチ「明らかにキャラに合っていなかった事も否めませんね。嘆かわしいことです」
ステ「キャラ否定!?」
シェ「っていうか赤髪黒尽くめって時点で『キャラ作り頑張ってます』オーラ出てない?」
ステ「貴様が言うなゴスロリィーーーーーッッ!!!!!」
ショ「あ、あっちは賑やかだな……あはは」ビクビク
イン「……まーたレディーに囲まれてイチャコラしてるんだよ…………」ブツブツ
ショ(怖いよぉ…………)
移動中…………
ステ「あらかた、挨拶は済んだかな」スタスタ
イン「あと残ってるのは…………。いた、ね」ヒョコヒョコ
エツァリ「どうも最大主教。この度は誠におめでとうございます」ペコリ
イン「どういたしまして。…………ごめんねステイル、ちょっといいかな?」
エツ「おや?」
ステ「……ああ。では僕は、向こうに行っているよ」
スタスタ
エツ「……一体どうしました?」
イン「私に、話があるんだよね?」
エツ「これはこれは……一月も前の事を、よく記憶して……。いや、愚問でしたねこれは」
イン「私は、『忘れない』よ。
……今までの事も、これからあなたが語る言葉の一欠けらも、逃さずに」
エツ「そうですか……」
「では、お話しましょう。自分の『約束』について」
------------------------------------------------
インデックスたちから距離を取ったステイルは、
ギリギリで視界から外れない程度の位置に陣取って食事を摘むことにした。
もちろん、二人の会話の中身は聴こえない。
「なんだ、終わったのか?」
「お疲れ様です、ステイル」
「おう、今日は顔色がいいじゃないかー?」
姿を現したのは、最初に会って以来影も形もなかった二人と、舞夏であった。
「君たちか、どこに行っていた?」
舞夏は給仕の為にあちこち動き回っているのを何度となく確認したが、
ステイルは土御門と火織をその後一度も見かけていない。
彼はその事を怪訝に思い問い質した。
「なーに、誕生祝いがたっぷり届いてたんでな」
「不埒なものが紛れ込んでいないか、確認していたのですよ」
「…………そうかい。御苦労さま」
少し前のステイルなら、どうして自分を呼ばなかったのだと食って掛かるところだろう。
だが今の彼には、こうして二人を労う余裕さえある。
舞夏も含めた三人は顔を見合わせ、三様に笑った。
「なんだ、その反応は…………! 僕が何かおかしなことを言ったか?」
そんな彼らの応えに、ステイルは僅かばかり紅潮して憤慨する。
似合わない、という自覚はここまで散々からかわれて身に染みているようであった。
「いやー悪い悪い。インデックスは…………海原と一緒か」
「ほほー。良いのかステイルー?」
「……別に言いも悪いもない。僕が彼女の交友関係に口を挟むわけにもいかないだろう」
「ふむ…………。どうも貴方達の『ソレ』は複雑で、私には量りかねますね……」
煙草に手を伸ばして舞夏の口撃をかわすステイル。
それを見た火織は呆れの交じった口調でひとりごちた。
「放っておいてくれ。『この点』だけは余人に口を挟まれたくはない」
「……ま、誤魔化さなくなっただけマシ、と取ってやるよ」
(誤魔化す、か…………)
しかしステイル自身、目指す頂を把握しているわけではなかった。
「プレゼントと言えば、御坂姉妹が先ほど含みを持たせてきたな……」
やや重くなった雰囲気を解すため、ステイルは話題を切り替える。
三人は多々不満顔だったものの、これ以上は得るものが無さそうだと乗ってきた。
「シスターズ? オレたちはなんにも聞いてないぜい」
「それは気にはなりますが、彼女たちに限って心配はないでしょう」
「そーだ、私はまだインデックスにお祝いしてなかったなー」
「君は朝起こした時にしたんじゃないのか?」
「それはそれ、これはこれだー」
他愛もない会話が延々と続く中でふと、火織が形の良い眉を顰めた。
「どうかしたのかい、神裂」
「いえ……今にして思い当たったのですが…………」
言いにくそうに、口籠る。
事情を理解できないステイルや舞夏が疑問符を浮かべる中、
「なんだ、今頃気付いたのかねーちん」
「…………結局、気付いてて私には黙ってるではないですか!!」
テンプレート通り土御門が飄々とからかいの言葉をかけた。
憤懣やるかたなしの火織を押し留めて、ステイルが突如始まった漫才の解説を求める。
「どうどう。で、なんの話だい」
「いや、インデックスへの贈り物の話なんだがな? 学園都市からもタップリ来てんですたい」
「それはそうだろう。あの子の友人は科学サイドにも数多くいるんだからね」
ステイルの知らない彼女の片鱗を感じて、小さく胸が痛む。
しかしその辺りの事情は、むしろこのアロハシャツの方が良く承知しているはずだ。
訝しむ彼の疑問に答えたのは、土御門ではなく火織であった。
「…………無かったのです」
「……え?」
「『あの二人』からの分が…………どこにも」
--------------------------------------------------------
「…………そっか」
「……ご清聴、感謝いたします」
己の『物語』を語り終えたエツァリが、芝居がかった仕草で一礼する。
インデックスは、感慨深げにポツリと呟いた。
「……とうまはちゃんと、みことを幸せにしたね」
「…………ええ。自分にとっての『世界で一番』も、そろそろ期限切れですね」
二人の間を奇縁で繋ぐ、一組の男女。
彼らの幸せは、インデックスとエツァリにとっても甘く、そして切ない幸福だった。
「これからエツァリは、どんな『幸福』を捜すのかな?」
「おっと……申し訳ありませんが、其れを最初に告げる相手は既に決めておりますので。
どうか、ご容赦ください」
「……ルール違反、するとこだったかも」
舌を出しておどけるインデックスに、しかしエツァリは鋭く、次なる問題提起をした。
「たったいま課したルールを破るようで恐縮なのですが」
「………………なに?」
「貴女ご自身は、『幸福』というものを如何様に捉えておいでですか?」
問いに、息が詰まった。
「……貴女は、ショチトルを救ってくれました。自分の事も、トチトリの事もです。
この感謝は言葉では言い表せない。ゆえにこれからの行動で示そうと思います」
「そんな、私はそんな見返りなんて」
「きっと貴女は、他にも多くの人を救ってきたのでしょう?
その度に、自らも救われた、そう感じてはいませんか?」
――どうして?
彼女の表情から自らの推察が正しい事を感じ取ったのだろう。
エツァリは、更に畳みかける。
「救ったから、救われた。高尚で高潔な精神で、誰もが貴女を讃えるでしょう。
…………しかし、あなたはそれで本当に『幸福』ですか?」
彼の語る言葉の裏側に、二人の『独善』の背中が見え隠れしていた。
それは、インデックスも良く知る――
「はっきり、申し上げてしまいましょう。
あなたは、上条当麻と御坂美琴の『信念』を、『模倣』してはいませんか?」
それは、当に正鵠であった。
「……自分も、あの二人をそれなりに、しかも『そういう目』で眺めてきた身です。
他の皆さんがどうかわかりませんが、自分には、理解できてしまうんですよ」
――彼らのように、何の見返りも求めずただ誰かを救えば、それで『幸福』を掴めるかもしれない。
インデックスは、自らも確りとは自覚していなかった『勘違い』を、出会って間もない男に正確に突かれた。
「お節介なのは承知の上。……しかし貴女は、別の『幸福』も探ってみるべきだ。
自分達を救ってくれた貴女の痛々しい姿は、見るに堪えないのです」
『今のあなたも幸せそうですよ、インデックス?』
(ヴィリアン……良いのかな? そんな『幸せ』、私に似合うのかな?)
「以上、です。貴女の御心を乱したこと、お詫び申し上げます」
言うべきを終えたエツァリが、再び一礼した。
その時。
「まったくだね、万死に値する……とりあえず後で屋上来い」
「ははは。この聖堂、屋上なんてあるんですか?」
「聖堂裏でも構わないよ」
コツ、コツ、とこの五年で最も聞き慣れた深い靴音が鳴る。
インデックスが顔を上げると、赤髪の想い人が見分けのつけ難い顔を二つ、引き連れて立っていた。
「彼女らが、『プレゼント』を渡したいそうだ。……中身は、土御門でさえ検めていない」
『彼女』の妹達、13857号と17000号が、手に何か持って歩み出る。
「失礼します、インデックスさん。『私達』からの贈り物は、このチョーカーです」
17000号は豊かになった表情で微笑みかけ、見覚えのある首飾りをインデックスに渡す。
「一方通行を覚えておいでですね? 彼のように装着してください。その後は私達にお任せを」
修道服の13857号は対照的に、淡々とチョーカーから延びる電極を彼女の頭に装着する。
「本当に、大丈夫だね?」
苦い顔で問いかけたのはステイルだ。
しかし嫌な記憶が蘇ったにすぎない彼も、その行為自体を咎めるわけではない。
「ご安心を。安全性を最重視した設計ですので」
「その結果として、耐久力が失われることになりましたが。
一度きりの使用と割り切れば問題ないでしょう……終わりました」
当のインデックスを置き去りにしたまま、事は拍子良く進んでいく。
「け、結局コレってなんなのかな……?」
困惑のまま声を絞り出す彼女に、妹達はあくまで冷静に返した。
「使って頂ければすぐにご理解できるかと。先ほど言ったように、安全は確保されています」
「これが、私達『ミサカ』のお気持ちですよ。……どうぞ、チョーカーの電源を」
悪意など微塵も感じさせないシスターズが是非にと促す。
それでも不安を御しきれなかったインデックスは、ステイルに目を向ける。
彼は、どこか寂しさを隠しきれない表情で、しかし安心させるように微笑みかけてくれた。
意を決したインデックスは、電極のスイッチに手をかけ――
――そして、電子の海に飛び込んでいった。
-------------------------------------------------------
――んっ、ん! コレ、上手く行くのかぁ? ――
――なによアンタ、あの子に直接会いたくないワケ? ――
右も左もわからぬ小宇宙の中で、インデックスの耳にとても愛しい音が響く。
――いやそんなんじゃありません事よ!? ただ、俺の右手が邪魔しないかな、とは――
――信号自体は機械でやり取りしてるの。場所も脳、あらゆる意味で右手の干渉なんて――
――って、アレ!? ――
――おい、どうした!? やっぱりなんかトラブって――
そう言えばこの一月、一度も声を聴こうとはしなかった。
だから、なのだろうか。こんな、こんな温かい方法で。
――も、もうあの子『来てる』わよ!――
――んなぁっ!? おいおい、妹から連絡はまだ――
――ハメたわねぇ、アイツラぁ…………! ――
こんなにも優しい『熱』を、自分に届けてくれたのだろうか。
――あーもう、怒るのはあとあと! ――
――だな。……おい、聞こえてるか? いきなりで悪かったな――
――……コホンッ! 久しぶり。元気よね? ちゃんとご飯食べてる? ――
――おいおい、そういう話は後に置いて、まず言う事があるだろ? ――
――う、うっさいわね! わかってるっつーの! ――
ああもう、どうして。
どうして彼らは、これほどに。
――せーの、で行くぞ。ちゃんと合わせろよ美琴? ――
――当麻が、私に、合・わ・せ・るのよ! せーの! ――
――おっ、おいおい! ――
――誕生日おめでとう! 俺の大切な家族、インデックス! ――
――誕生日おめでとう! 私の大事な親友、インデックス! ――
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止まらない。止まってくれない。
止めなくても、いい。
一月前とは意味を異にする透きとおった水晶が、ぽたりぽたりと顔を覆う指の間から零れては消える。
「お二人が今日という日に、電話よりもメールよりも、もっと近くで繋がりたい、と。
ですので、ミサカたちとその他多くの協力者でご用意致しました。
…………本来ならば、この場にお呼びできるのが一番だったのでしょうが」
「んっ…………ひっぐ……べつ、に……いいよぉ…………すごく、すっごく!」
女のか細い躰が、すぐ近くで頭を撫でていた長身の腰に抱きつく。
男は、そっと華奢な肩に手を置いて、硝子のような躰を抱き寄せ――はしなかった。
男はあくまで、慈しむように絹の如き銀糸を撫でるのみ。
「嬉しかった………うれ、しかったよぉ!!」
「ああ…………良かったね。本当に……良かった」
インデックスは、己が思いの丈をひたすらに叩きつける。
ステイルは、巨木のようにそれを受け止め、吸収する。
やがて彼は、彼女の耳朶に顔を寄せ囁いた。
「僕からも一言いいかい?」
その言の葉の一つとて聞き洩らしたくないと、インデックスは目を瞑って頷く。
愛おしげにその姿を見やってから、ステイルは肩を握る手にかすかに力を籠めた。
「あらためて。誕生日、おめでとう。それと――」
――――生まれてきてくれて、ありがとう――――
そうして男女は暫く、そのままのかたちで寄り添っていた。
――んが。
パシャリ!
「「………………へ?」」
突然、シャッター音が響き、フラッシュが瞬いた。
いや、突然と認識していたのはステイルとインデックスのみで――
「第二の祝辞ですが、おめでとうございます」
「ううう、お幸せに、ふぁ、神父ステイル……」
「計画通り、とミサカは嗜虐心100%の笑みを浮かべます」
「うむ。よきかなよきかな、である」
「なかなか大胆だったの。男を上げたなステイル!」
「インデックスー! 私の胸にも顔を埋めて欲しきよー!」
「お、お兄ちゃん……わ、わ、私も…………」
「おっといけません。その話は部屋に帰ってからにしましょうね」
二人を取り囲む、人、人、人。
そして、いましがたカメラを鳴らした元凶は。
「すっ、すいません二人とも! 私は止めたのですが……」
「またまたやらせていただきましたァン! だぜい」
「……つっ、」
「す、すている……?」
「…………つ…………!」
「あーその、血管がキレない程度にしましょうねステイル?」
「……つうぅぅぅぅ………………!!」
「とりあえずこの写真はロンドンタイムズにタレこみますにゃーステイルくん」
ブチブチブチンッ
「あ」
「土 御 門 オ オ オ ッ ! ! ! ! !」
ロンドンでは珍しい、よく晴れた日のこと。
珍しくもなくなった絶叫が、青青く晴れ渡る空に響いて抜けた。
--------------------------------------完-------------------
元春「いやいや、なに勝手に終わらせてるんだにゃー?」
ステ「えっ」
イン「えっ」
イン「なんていうか、普通に絶叫オチもついて良いエンドだったと思うかも」
ステ「極めて遺憾だが、まあ……オチとしては普通だね」
元春「だーかーらー。つまりそれってノーマルエンドだろ?」
ステ「……なにか文句でもあるのか?」
イン「トゥルーエンド目指すのは疲れそうなんだよ……」
ステ(さっきから何語で喋ってるんだこの二人)
元春「ま、そういうわけだから」
ステ「どういうわけだ……というツッコミも使い古された気がするな」プカー
イン「この先どうやって続けるつもりなのかな?」
元春「おまえら、ちょっと学園都市行って来い。二か月ぐらい」
ステイン「」
ステ「……とりあえず彼女は、最大主教なんだが」
元春「最大主教だからこそ、友好を深めるために訪問するんだろうが」
イン「二か月はちょっと……」
元春「サーシャの件もショチトルの件も片付いたんだ。たまには息抜き息抜き」
ステ「そもそもこの状況で学園都市に行った場合、結構気まずいんだが」
イン「とうまとみことにあんな会い方した手前、あっさり行っちゃうと向こうも……」
元春「ハァ…………まったくお前らときたら」
ステ「溜め息をつきたいのはこっちだ!!」
元春「しょうがないぜよ、そんな煮え切らないお前らに
陰陽道に伝わるとっておきのまじないを教えてやる」
イン「おまじない?」
元春「どんな理不尽な展開だろうと灰燼に帰す、最高の術式さ」
ステ「……とりあえず、言ってみろ。言った後でどうするか判断する」
元春「こまけぇこたぁ、いいんだにゃああぜるばいじゃんんんんんっ!!!???」
ボーボーボー
イン「とーおきーやーまにーひーはおーちてー」トオイメ
ステ「……………………」トオイメ
「不幸だ…………」
--------------------------------------完-------------------
----------------- 完-------------------
-----------------第一部 『ロンドン編』 完-------------------
超教皇級の馬鹿口調
クワガタ
原子崩し
窒素装甲
AIM剥奪
くぎゅ
フレ/ンダ
アックア
だぞー
だにゃー
かつての痴女服
ロシア最強の女
元第二王女(未婚)
おばあちゃん
ALL CLEARED!
……WHAT'S THE NEXT TRADEMARK PHRASE?
471 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/07 21:07:47.34 KJELjeb/0 307/2388
うん? 『続く』けど?
大変こざかしい真似をして申し訳ありませんでした
ではあとがき(笑)のようなものを少し書き捨てていこうかと思います
どうぞ読み飛ばしてください
ここまで読んで下さった方はもう御承知でしょうが、
このSSは要するにステインが相思相愛の癖につまんないことでウジウジして、
いろんな人に説教してもらっては距離を詰めていく、というのが本筋になります。
の割にあちこちに脱線するのは>>1にシリアス、ギャグ、ラブなどどれか一つの
作風に絞って作文するだけの能力が無いからです。
今後も8割方アホみたいにテンション高いギャグで行きます。
また>>1は上条さんとインさんの関係も実は好きで、
これを乗り越えようと思ったらステイルは相当なハードルを越えなきゃいけないだろうなあ、
と思ったのも彼の受難の原因の一つです。
まあ時間軸を原作時点に設定してしまえばいくらでも攻略難易度は上げられるんですが。
ラストまでのプロットはほぼ完成しており、後は肉付けしていくのみですが
このペースでは後2カ月はかかる見込みとなります。
学園都市編はロンドン編よりもさらにギャグ中心になるので、
気長に、気楽にお付き合い頂ければ幸いです。
以上チラ裏でした
それでは>>1は一週間ほどお休みさせていただこうと思います
とかいって調子に乗って明日来るかも
ご指摘の他、ご質問などもあればどうぞ罵ってください
それではまた!
482 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:10:28.64 gbNAPBf30 308/2388
こっそり自分用にまとめた俺設定(笑)を直して投下
そういうの要らないです、って方はスルー推奨
483 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:12:45.69 gbNAPBf30 309/2388
ステイル=マグヌス(24歳)
イギリス清教第零聖堂区、『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師。
一度も触れなかったけど実は事実上のリーダー。
その割にはロンドンの防衛と最大主教の護衛を一人で背負いこんでいたお馬鹿さん。
イギリスが誇るメインツッコミとしての技術と胃薬の量だけが日々増加し続ける苦労人。
あ、一応魔術の腕も上がってますよ?(笑)
チート術式をいくつか新たに修得しているが、基本は努力の人。
原作中で上条さんの右手の最初(だよね?)の餌食になった故か、結構なフラグ体質に。
最大主教とは上司と部下の関係から抜け出しそうであと一歩踏ん切りがつかないため、
周囲からは相当まどろっこしがられている。
実のところ当初からの彼女のアプローチは全て意識した上でかわし続けていた。ヘタレ。
が、最近はそれもやめたようである。
インデックス=ライブロラム=プロヒビットラム (26歳 ※ローラの申告による)
英国三派閥が一、清教派ことイギリス清教のトップたる最大主教(アークビショップ)。
頭に宿す『禁書目録』は健在で、最大主教としての公務のかたわら、
『原典』を危険度の低い『偽書』に編纂する作業に携わっている。
童顔とそれに似合わぬナイスバディで本人の知らぬところで着々と信者を増やしているが、
大食いも相変わらず。イギリス清教の緊縮財政にはかなり苦しめられている。自業自得。
護衛の魔術師とは上司と部下の関係から抜け出しそうであと一歩踏ん切りがつかないため、
周囲からは相当まどろっこしがられている。
上条さん限定だった攻撃性はステイルに対してはやや大人しめ。それをどう見るべきか。
実のところステイル以上のヘタレかも。
が、無自覚にイチャつくことも最近増えてきた。
484 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:14:10.52 gbNAPBf30 310/2388
神裂火織(旧姓 28歳)
イギリス清教傘下、天草式十字凄教の女教皇(プリエステス)。
騎士派の長である騎士団長の妻として、清教派とのパイプ役も兼ねている。
聖人としての能力はもちろん健在で現在ロンドンNo.1の実力者。
原作では和食にはある程度の腕を見せるが、>>1のせいで洋食がダメダメにされてしまう。
舞夏の指導でようやく産業廃棄物を産み出せる程度の腕前にはなった。
ステインの微妙な関係に最近やっと気付いた困ったさん。姉のように二人を見守る。
フルネームで呼びたいときに呼べない人その一。
土御門元春(26歳)
イギリス清教第零聖堂区、『必要悪の教会』のNo.2。
卓越した頭脳と交渉力、そしてスパイ能力を生かして世界を股にかけるスーパーエージェント。
が、おちゃらけた態度のせいで周りからは畏怖はされても敬意は持たれない。
学園都市での長いスパイ活動は既に終え、
現在は基本的にロンドンで妻となった元義妹といちゃいちゃしながら暮らしている。
イギリスのメイン孔明でもあり、現在の矛先はもちろんステイル。
ご存じ禁書の名ユーティリティープレイヤー。
土御門舞夏(24歳 ※原作では13~15?)
最大主教の御側付きメイドで、かつての義兄と籍を入れている。
しかし相変わらず呼称は(少なくとも人前では)「兄貴」。
原作では科学魔術どちらの裏事情も知らないとされるが、本作では魔術サイドの事は承知している。
『ランベスの宮』の雑事をほぼ一人で担当するスーパーメイド。
掃除ロボに乗っての移動はやめたらしい。
485 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:17:39.88 gbNAPBf30 311/2388
フィアンマ(年齢不詳 30代?)
現在は旅の修道士にでもなるのだろうか。あとメイド喫茶チェーンの経営者。
おそらく最もキャラ崩壊させられた人。
今後の見せ場も予定してるのでファンの方は許して。
上条当麻(26歳)
我らがヒーロー。現在の職業は学園都市のお偉いさん。
台詞のみでの登場にも関わらず、>>1は常に彼の存在を感じていました。
つまるところステインにとってのラスボス的存在。いや別に本人は何もしてませんけど。
学園都市編ではレギュラー…………になれるかな?
上条美琴(24歳)
我らがレールガン。現在の職業は研究者。ちなみに一児の母。
インデックスとはいろいろあったが今では良き友人。
っていうかこの夫婦周りの人間関係と来たらもうね。おかげで話の幅も広げやすいですけど。
女なのにフラグ体質かもしれない。
建宮斎字(30代?)
天草式十字凄教の元教皇代理。
とは言え、かんざきさんも結構複雑な身分なので変わらずメンバーのまとめ役である。
五和はいまだに上条さんラブだと思ってる。
五和(20代後半)
天草式十字凄教の一員。
なんか苦労してるが、結局この人の場合もハッキリ言葉にしないのが原因である。
>>1的に結婚させなかったのは「五和」が名字なのか名前なのかさえ定かでないから。かも。
486 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:19:21.00 gbNAPBf30 312/2388
ウィリアム=オルウェル(旧姓 40代)
英国王室第二王妹の婿。地位的には騎士団の特別指南役。
二重聖人としての力は失ったが長年の経験とたゆまぬ研鑽により今なお相当の実力者。
ステイルより多分強い。フルネームで呼べなくなった人その二。
ヴィリアン(34歳)
英国王室第二王妹。インデックスとは友人。
何気に夫とお盛んでもうじき四人目を出産する。
騎士団長(40代)
英国三派閥が一、騎士派のトップ。イギリスの元祖苦労人。
妻とは結婚して数年経つが、子供はまだ。そろそろかも。でも無理かも。
アニェーゼ=サンクティス(24歳 ※原作ではインデックスより少し下の外見)
ロンドン在住『アニェーゼ部隊』のリーダー。
いまだイギリス清教傘下に入ったつもりは無いらしい。
部下が何人か寿除隊している。結婚願望あり。でもドSが災いして独身。
ルチア(20代)
『アニェーゼ部隊』所属のシスター。
リーダーとは違い純粋に色ボケしてきたシスターどもを嘆いている。
でもまあ少しは丸くなったかも。
アンジェレネ(20代)
『アニェーゼ部隊』所属のシスター。
いつの間にやらヘタレ神父にフラグを建てられていた。が、諦め気味でもある。
下手するとステイルより年上の可能性も。禁書だし。
ミサカ13857号(10歳 外見24歳)
『アニェーゼ部隊』所属のシスター。ドSらしい。>>1オリジナル。
どのような経緯で入隊したのかは不明。考えてない。能力者なので魔術はもちろん使えない。
487 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:21:17.02 gbNAPBf30 313/2388
クランス=R=ツァールスキー(25歳 ※原作で外見15歳くらい)
ロシア成教のトップ、総大主教。サーシャと婚約中。
キャラ崩壊というかキャラ捏造。口調だけは原作準拠のはず。
サーシャ=クロイツェフ(23歳)
ロシア成教『殲滅白書(Annihilatus)』のリーダー兼総大主教補佐。
あれよあれよと言う間に婚約中の身になってしまった。でもまんざらでもない。
ロシア成教のメイン(と言うかオンリー)ツッコミ。
ワシリーサ(一応30代後半?)
ロシア成教『殲滅白書』の特別顧問。事実上のトップ。
サーシャ同様にクランスも溺愛。ちょっと危ない趣味のオバサン。お婆さんの可能性も。
ローラ=スチュアート(26^2より上? そうでもない? 年齢不詳)
前最大主教で現在は隠居の身。あちこちを遊び歩いているらしい。
『インデックスと母娘』説も界隈にはある。彼女に注ぐ愛情は本物か、それとも…………?
ちなみにインデックスは、ステイルにフラグを建てられているのでは、と見ている。
エリザード(60歳前後)
前英国女王で現在は隠居の身。
最近はネトゲにハマっているらしい。大丈夫か英国王室。
またようやく出来た孫も溺愛中。重度のババ馬鹿。
488 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:22:13.08 gbNAPBf30 314/2388
レッサー(20代前半)
予備軍から結社になった『新たなる光』のメンバー。
『イギリスのためになること』という行動理念は変わらず、必ずしもステイル達の味方ではない。
かつては内心ビクビクだった色仕掛けにも年季が入ってきた。
キャーリサ(ギリギリ30代)
英国王室第一王妹。いまだ未婚。
さすがに歳なのかんざきさんに実力で抜かれてしまった。
何かしらの反動が出たのか、母親ほどではないが姉馬鹿伯母馬鹿に。
リメエア(40代中盤)
英国三派閥が一つ王室派の、そして英国のトップ女王陛下(クイーンレグナント)。
肩書の割に出番は少ない。キャラ掴みにくい。
いちおう一般男性と結婚済み。子供もちゃんといる。
シェリー=クロムウェル(30代後半)
『必要悪の教会』所属の魔術師。未婚、と言うか結婚願望なし。
インデックスの編纂作業を補佐するのが主業務。たまに王立美術院で教鞭も執る芸術家。
オルソラとは付き合いの長い漫才コンビ。
オルソラ=アクィナス(20代? ※原作に記述無し?)
イギリス清教所属のシスターにして、暗号解読官。こちらも未婚。
会話の異次元ぶりがやばい。ジョジョのラスボスになれる能力。
だと言うのになぜか優秀な交渉力を有するため、土御門に代わって各国を飛び回ることも。
でもなぜジンバブエに行ってたのかはイギリス清教七不思議の一つ。
489 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:23:12.88 gbNAPBf30 315/2388
エツァリ(20代中盤 ※本物海原は原作で15歳)
アステカの魔術師、というより『魔導師』。『必要悪の教会』所属になった。
美琴を見守ることに区切りを付け、ショチトルたちを守るためにかつての同僚と取引をする。
最後の最後でインデックスに説教もして見せた。
本領を見せる機会は無かったがステイルの胃薬増量に貢献できる逸材。
ショチトル(20代中盤)
アステカの元魔術師。寮に入ったがじき専業主婦になるかも。
身体は完治したが魔術行使はややトラウマ気味で、これからは一般人に。
数少ないツッコミサイド。しかし天然ボケも入っている。
トチトリ(20代中盤)
アステカの元魔術師。男子寮の寮母さんにでもなろうかと思案中。
ショチトルとの差別化に悩まされた人。ちょっと悪戯好きのお姉さんタイプに落ち着いた。
ミサカ17000号(10歳 外見24歳)
イギリス清教女子寮の管理人。原作組。
>>1がすっかりその存在を忘れてた人。
上条刀夜(50代? ※原作に記述無し?)
外資系企業の営業担当で、結構なエリート。孫が出来ても相変わらずの元祖旗立男。
インデックスとは何度も顔を合わせており、娘のように思っている。
無茶苦茶な登場をしておいて美味しい所をかっさらっていくあたり、まさに親子。
490 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:24:32.00 gbNAPBf30 316/2388
こんなモノを投下と呼ぶのもおこがましいので
何も考えずに書きなぐった小ネタを数レス
とある日 とある木陰
イン「…………」
ステ「…………」ウトウト
イン「ステイル、起きてる?」
ステ「……ああ、起きてるよ」
イン「…………ごめん、起こしちゃったね」
ステ「…………いいや、起きていたとも」
イン「頑固なんだから、ステイルは」プクー
ステ「なんとでも言ってくれ」ヤレヤレ
ステ「それで、何の御用かな、最大主教?」
イン「ちょっと、私の顔の方見てくれる?」
ステ「………………」
イン「………………」
ステ「………………別に、顔を見なくとも話はできるだろう」タラー
イン「…………………………」
ステ「言いたい事があるなら、はっきり言ってくれないか…………」
イン「…………………………じゃあ、訊くんだよ」
イン「すているって膝枕の時、絶対上見ないよね?」
ステ「…………そうかな、わからないね」
イン「上見て」
ステ「………………」
イン「……やっぱり」
ステ「……何がだい?」
イン「あ、あのね、その」
ステ「…………」タラタラ
イン「こっち見ないのって、その……『コレ』のせい?」
ボイン
ステ「………………………………………………ちがう」ボソリ
イン「やっぱりそうだ!」
ステ「違うと言ってるだろう!」
イン「うーうん、間違いないかも! ステイルはウソをつくと鼻の頭に血管が」
ステ「そんな方法で見つかるマヌケに見えるのか僕は!?」
イン「だったら私の目を見て違うって言って欲しいんだよ!」
ステ「………………だいたい!
万が一『そう』だったとしたら貴女はどうして欲しいって言うんだ!?
そもそもどうしてこんな難癖を吹っ掛ける!?」
イン「あー誤魔化した! 誤魔化したんだよ! やっぱりすているはチキン野郎なんだ!」
ステ「なんだとおおぉぉっ!? いやそれ以前にいろいろ問題のある発言だったぞ今のは!?」
ワーワー ギャーギャー
火織「…………あの二人は、何を膝枕したままで喧嘩しているのでしょうか?」
元春「さあにゃー。とりあえずアイツら、あれでカップルじゃないつもりらしいぜい」
火織「それは…………通りませんね」
元春「『アベックを下位に、独り身を上位に』したら間違いなく下位判定だぜい」
火織「…………とりあえず、争うならひっつき合うのをやめるべきではないでしょうか」
元春「あの間に怒鳴りこんでそう進言する気概があるならやってみるにゃー」
火織「無理です」
元春「俺にだって無理だな」
ステ「なんなんだ貴女は! 見て欲しいのかつまり!」
イン「…………」
ステ「………………お、おい。何故黙るんだい」
イン「ば、ばか。すているのばか」
ステ「…………なんでだ」
イン「そういうのを乙女の口から言わせる気なのが馬鹿って事なの!」
ステ「理不尽な…………」
イン「ねえ、私、そんなに魅力ない……?」
ステ「ッ!」
ステ「な、無いわけあるかっ!!!」
イン「んにゃあぁっ!?」
ステ「あ」
イン「……………………」
ステ「……………………」
イン「……寝よっか」ポリポリ
ステ「そうしよう…………」ポリポリ
元春&火織(いつまで昼寝する気だ……)
オワリ
499 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/09 23:39:21.80 gbNAPBf30 325/2388第二部ではこれが平常運転です
本編はもうしばらくお待ちくださいませ
その間にもう1,2本小ネタ行くかもー
とある日 とある居酒屋
元春「カンパーイ!」
火織「カンパーイ!」
イン「カンパーイ!」
ステ「………………」
火織「あっはっはっ、どうしましたステイルー? ノリが悪いですよノ・リ・が」
ステ「君はノリが良すぎだ。なんで乾杯直後にへべれけなんだ!」
元春「酒豪のくせに酒癖は悪い、全然潰れないっつー最悪のパターンだなこりゃ」
ステ「いいか、確かに僕は君たちと酒を飲むことは了承した」
火織「そうそう! たまには仕事のうっぷんを吐きだしてスッキリしようじゃありませんか!」
イン「ほらステイル、ペースが遅いかも! もっとじゃんじゃん行くんだよ!」
ステ「直属の上司が側にいて愚痴もクソもあるか! なんでここに居るんだ貴女は!」
元春「まあもちろんオレが呼んだわけで」
イン「呼ばれたわけれー」エヘヘ
ステ「ああ悪い、わかってたよ貴様の仕業だとは!」
火織「インデックス、いい飲みっぷりです! ほうらもう一杯!」
イン「あはははははは! 最ッ高の気分なんだよぉぉぉ!!」
元春「いやーいっぺんインデックスの酒癖がどんなもんか見てみたくて☆」
ステ「☆を付けるな気持ち悪いんだよ!
聖職者のトップが居酒屋でぐでんぐでんなんてスキャンダラスすぎるだろうが!」
元春「おい、このオレがそんな基礎を疎かにすると思うのか?
この店の周りには天草式(男)をそれとなく配置して怪しいヤツはシャットアウトだ」
建宮「」パシャパシャパシャ
天草式「」カメラマイクスタンバーイ
ステ「獅子身中の虫って知ってるかオイ!」
元春「え? 呼んだ?」
ステ「そういえばそうだったよ確かに!!」
元春「しかし実際問題、アイツの酔っぱらった所を見たことはなかったな」
ステ「ミサでは赤ワインが振る舞われるが、彼女はそのときぐらいしか飲まないな」
元春「……ほほう、つまり」
イン「かおりー暑くなってきたよー」
火織「インデックス、熱くなったらやることは一つと決まっています」
ステ(『あつく』の解釈に差異があるような)
元春「お前もアイツの乱れた姿は初めてなわけだな」
ステ「ぶっ!!!」
ステ「それが狙いか君は!?」
元春「他にどんな狙いがあると思ってたのかにゃー?」
ステ「くそっ! 今すぐ帰るぞ、アーク、ビショ………………」
イン「…………」ジー
ステ「ど、どうしたんだい? さっさと帰」
イン「あついの、すているぅ…………」
ステ「」
イン「すているの身体で、ひやして…………?」
ステ「神裂ィーーーーーッッ!? 責任を取れよ君ィィーーッ!!」
忽 然
ステ「いねぇーーー!?」ガビーン!
イン「ねえすている…………?」
ステ「待て、こっちに来るんじゃあ…………」
イン「おねがい、私から逃げないで…………?」
ステ「……………………」
ステ「…………ああ、逃げないさ」
ポフッ
イン「んー。ひんやりしてて気持ちいいよー」スリスリ
ステ「……貴女の体温が上がり過ぎているだけだ」
イン「そうかなー?」スリスリ
ステ「そうだとも」
イン「ねーすている」
ステ「なんだい?」
イン「お姫様抱っこ、して?」
ステ「…………なぜ?」
イン「してもらったことないからー」
ステ「そうなのかい?」
イン「すている、してくれた事無いよ?」
ステ「…………僕の話か」
イン「だからして?」
ステ「してもらった事が無いからしてくれ、と言うのは動機として意味不明だね」
イン「してくれないの?」
ステ「…………するよ」
ヒョイ ギュッ
イン「えへへー」
ステ「……信じられないほど軽いな」
イン「どーいう意味かな?」
ステ「質量保存って知ってるかい?」
イン「…………しほし?」
ステ「ニュースキルみたいに言わないでくれ」
ステ「それで、僕はいつまでこうしてればいいのかな?」
イン「ベッドまで、連れてって?」
ステ「…………お断りだ」
イン「んーじゃあ、どっか横になれるところ」
ステ「…………はぁ。すいません、お勘定」
店主「なんだ、もう帰るのか。 居酒屋『陽差し』を今後ともよろしくな」
ステ(どこかで間違いなく会ってるんだが…………くそ、頭が働かない)
とある公園
ステ(人払いしまくったとはいえ、なかなか神経の擦り切れる旅路だった……)
イン「ここ、どこー?」
ステ「川音が聞こえるだろう? テムズ川沿いの公園だ」
イン「じゃあ、あのベンチ」
ステ「元よりそのつもりだよ」
ヨッコイショ
ステ「ふう…………」
イン「あはは、親父臭いよすている! 体力ないねー」
ステ「」グサッ
イン「冗談なんだよ! そんな落ち込まないの!」
ステ「…………で、次はどうしたら?」
イン「ひざまくら」
ステ「……いつもとは逆、ということかな?」
イン「ん」コクリ
ステ「…………どうぞ」オロス
イン「おじゃましまーす」エヘヘ
ステ「お邪魔なら今までも十分にしてたよ」
イン「あったかーい」
ステ「冷やしたいんじゃなかったのか」
イン「zzz」
ステ「早っ!!」
イン「zzzzzz」
ステ(……………………)
ステ(…………僕も寝るか)チラッ
天草式男「」チーン
天草式女(女教皇除く)「」グッ!
ステ(ありがたい)GJ
ステ(周囲の警戒は彼女らに任せようか)
ステ(…………他人任せとは無責任な話だな、我ながら)
ステ(まあ、でも………………)
(たまには、いいか)
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イン「ん…………」
イン「頭が痛いんだよ…………」
イン「ここ、どこかな?」
イン「…………外? まだ夜だし…………」
イン「すている? どこ…………」キョロ
ステ「zzzzzz」
イン「………………」
イン「…………あぅ」カァ
イン「……」ムクリ
ステ「zzz」
イン「…………」プニプニ
ステ「zzzzzz」
イン「……やっぱり普通、逆だよね」ヨッコイショ
ステ「zzz」コテン
イン「えへへ、おやすみ…………」ウトウト
ステ「zzz」
イン「…………zzz」
オワリ
521 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/11 14:57:49.50 b8WmflSz0 344/2388くっついてるわけじゃないので甘さ控えめ
こういう小ネタって需要あるんですかね?
気分で書きなぐってるモノなので無いならやめようかなぁ、と
とある夕食時
イン「んぐんぐんぐ」
ステ「まったく、レディーらしからぬ食い散らかしようだ。ほら、食べカスがついているよ」
イン「え? ナプキンナプキン……」
ステ「そんなものは要らないよ」グイ
イン「へ? なあにすて…………」
パク
イン「なななな、なにするのすている!?」ジタバタ
ステ「駄目だ、逃げるんじゃない」ギュ
イン「ええええええ!?」
ステ「静かにするんだ。…………口の中も掃除しないと」グイ
イン「~~~~!?」
ステ「ふむ……」
イン「……ん、っあ…………す、すて…………」
ステ「っ…………」
イン「ひゃぁん……んむぁ…………ん、ぷはっ!」ガバッ!
ステ「…………嫌だったかい?」
イン「んあっ、はあ、ひゃぁ…………」トロン
ステ「御満足頂けたようで。では続きを……」
イン「へぇ……? だ、駄目なんだよ!!」
ステ「あんなに喜んでくれたのに、何が駄目なんだ?」
イン「あああ、ああいうのはお布団の上で、す、するものでしょ!?」
ステ「成程、一理あるね」
イン「ほっ…………」
ステ「じゃあ、ベッドに行こうか」
イン「」
イン「あ、あ、え、い、ええええ?」カァァァァァ
ステ「そう驚かなくても」
イン「お、驚くに決まってるんだよ!!」
ステ「何が不満なのかよくわからないね」
イン「え、え、え、だって…………。あ! ま、まだご飯の途中だし……」
ステ「…………いい機会だ」
イン「んにゃ?」
ステ「僕の長年の仇敵と決着をつけることにしよう」
イン「へ? へ? だ、誰と?」
ステ「簡単な事さ。君が僕の質問に一つ答えてくれればいい」
イン「はあ」
ステ「じゃあ、訊くよ。覚悟を決めてくれ」
イン「ええぇぇ…………意味不明かも」
ステ「すうう…………はああああ………………」
イン「ううう…………」
ステ「……『 』」
イン「ひゃ、はい!!」
ステ「僕と食事、どっちを愛してる?」
イン「………………」
ステ「……………………」ゴクリ
イン「そんなの、決まってるよ」ニコ
ステ「!」
イン「もちろん………………ステイ
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(続きは省略されました)
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舞夏(私もいるんだけどなー…………不幸だぞ)ハァ
オワリ?
537 : >>1 ◆weh0ormOQI - 2011/06/12 17:27:06.96 oz83ptPt0 351/2388なんかインさんのリミッターも外れかけでした
二人とも制限完全解除のレベル5が>>1の最終目標です どれだけかかるやら
では明日夜から本編の投下を再開いたします
基本は二、三日おきで間に時系列無視の小ネタが入るかも
今後ともよろしくお願いいたします
続き
ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」【3】