※『とある神父と禁書目録』シリーズ
1 : VIPに... - 2011/05/15 01:37:09.27 XZt4l12R0 1/2388
総合に投下したものですが、なぜか続いてしまったので独立します
人生初スレ建てなので至らないところがあったらよろしくご指摘願います
10レスぐらいの小ネタを週1~2回投下できたらいいな
長編なんて無理ゲな貧弱一般人です
なるべく多くの人に罵ってもらいたいからsage忘れても気にすることないんだよ!
注意事項
※ステ×イン未来設定
※ほぼ魔術サイドのみ
※全体的に誰得
※つまんないギャグとなんちゃってシリアスが交差
※回収未定の伏線満載
※勝手なカップリング多数
※俺得
需要なさげだけどよければどうぞ
元スレ
ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305391028/
昼下がりのロンドン、聖ジョージ大聖堂。その中庭で神父服の男が紫煙を燻らせていた。
「はぁ……」
煙と共に大きく息を吐く長身赤髪の神父―ステイル=マグヌスに向けて目の前に立つ女が口をとがらせる。
「なぜにそのような溜め息をついたる、ステイル?私の護衛がそれほど気の重くなりたる仕事といいける?」
珍妙にまとめられた、身長のゆうに1.5倍はありそうな銀髪を左右に揺らしながら絶世、と言っても過言でない美女がステイルを糾弾する。
神々しささえ感じられる美貌にそぐわぬ稚い仕草は、ステイルの拍動を少なからず速める効果があった。のだが。
彼女の美貌は現実逃避の受け入れ口としては悪くないが、そうも言ってはいられない。
「はぁぁぁ………………」
問いかけには答えず、先ほどより更に長く呼気を逃がす。これ見よがしに、である。
「……言いたいことがありけるなら、はっきり言ったらいいと思うにつき!」
「ならば一つ質問があります、最大主教(アークビショップ)……」
ステ「その馬鹿げた口調は、土御門の差し金ですか……!」
イン「え?ローラが最大主教たるものこの口調でって……」
ステ「(元)最大主教ゥゥーーーッ!!!」
ステ「内にも外にも問題児が多すぎるだろう!どうなってるんだイギリス清教は!?」
イン「むむ!心配は無用なりてよステイル!私が最大主教となるからにはしっかり改革を」
ステ「それ以前に貴女の食費が財政を圧迫しているんですよ!」
イン「わ、我らの父は食物を粗末にしたることを第一の罪として定めて……」
ステ「今の問題発言は教義を揺らしかねませんよ!?」
ワーワーギャーギャー
イン「……フゥ、ハァ……」
ステ「ゼェ……ハァ、と、とにかく、明日にはローマから就任祝いの使者が到着します。その前でこんな間抜けな……」
イン「……やっぱりステイルも、私には無理だと思いけるの?」ウル
ステ「…………ッ!?」アセ
イン「……」
ステ「い、いや、違うんだそうじゃなくて」アセアセ
イン「無理しなくてよきよ、うすうす自分でも身の丈に合わぬこととは」グス
ステ「違うッ!!」
イン「!」
ステ「君は……貴女は、神を愛し、神に愛される高潔な聖職者だ。多くの人が疑いようもなく、貴女に救われているのだから」
ステ(……君を救えたのは、ただ一人だけだったが、ね)
イン「……す、すている……?」
ステ「んっ、ああ、とにかく……必要悪の教会は皆、貴女を認めている。自分をあまり下に置かれると、彼らも悲しみます」
イン「そっ、か。うん、わかった。」
ステ「口調の方はまあ、おいおい直していけばいいでしょう。今は明日の公式訪問について詰めなければ(とりあえずあの女狐を今すぐ遠隔操作で塵に……)」
イン「あっ!」
ステ「ッ、今度はなんですか?」
イン「明日のことで思い出したる!もとはるが公式の場ではこの……」ゴソゴソ
ステ(いやな予感しかしない)
イン「『神にご奉仕☆メイド風あーくびしょっぷ』を着るべし!と」
ステ「土御門ォォォーーーーーッ!!!!!」
大聖堂に、本日二度目の絶叫が響き渡る。
すっかり『必要悪の教会』の、いやイギリス清教のメインツッコミに定着したすているくんにじゅうよんさいのこれからやいかに!
続く
どこの国の何処とも知れぬ、路地裏の暗がりに、雰囲気にそぐわない軽快な声が吹き抜ける。
「ッハッ、ハッ、ヒー! そりゃー傑作だぜい! で、オレからのプレゼントの方はお気に召したかにゃー?」
『やかましい!! 君とあの婆のせいでこの忙しい時期にいらん苦労を背負いこんでるんだぞ僕は!!』
耳元から携帯電話を遠ざけて、怒鳴り声に対処する金髪グラサンアロハシャツの大男――土御門元春は電話相手の怒りを意にも介さずのたまう。
「そいつは残念。十年前とは比べ物にならんインデックスの肢体にあのサイズ小さめに見積もったメイド服はさぞかし……」
『OK、現在地を教えろ。ピンポイントでルーンを郵送してやる』
相変らず冗談が通じないヤツだ、と苦笑しつついまやイギリス清教のブレーンを務める男は薄暗い路地を抜け、人気の多い市場へ出る。
土御門の現在のねぐらはすぐ近くだ。
「オレの仕事、わかってるのかにゃー? 秘匿回線とはいえおいそれと喋るわけにはいかないぜよ」
『……つまり、だ。使者の到着までにイギリスに戻ってくる、ということはないんだね?』
電話の声のトーンが変わる。こちらが本題、ということだろう。
現在イギリス清教は最大主教の交代という難しい時期にある。そこにけっして友好的とは言えないローマ正教がいち早く『祝い』の使者を送りこんできたのだ。
現ローマ教皇、ペテロ=ヨグディスがどのような思惑だったとしても、外交交渉にも長けたブレーン役、土御門元春も本来その場に同席すべきなのである。
しかしは彼は現在イギリスからはるか大西洋を越えた地に潜伏して、今回の件に関わる気はないという。訝しむ相手に向けて土御門は声色を変えずに軽く返す。
「まあ、深刻な事態になることはないと思うからそう気張らずにいることだぜい?」
『クソッ……何か知ってるな? 土御門』
「にゃっはは。まあ繰り返すが、おまえが心配するようなことにはならない。到着してからのお楽しみってことだにゃー」
はぁ……と向こう側から最近お馴染みの溜め息が聞える。
苦労性というか、とある『病気』がここのところとみに顕著になってきている青年にむけて一つ、確認しておく。
「それから……舞夏は元気か?」
『ああ、元気さ。神裂も気をかけてくれるが、立場というものがある。かなり彼女にも助けられているよ』
少なくとも電話先の相手には決して見せないような表情に緩めてそうか、と返す。
土御門の元義妹は現在、最大主教の世話係として学園都市からイギリスに移り済んでいる。
最大主教とは気心の知れた仲ゆえに、環境の激しい移り変わりに対する清涼剤となっているらしい。
『とはいえ、たまには帰ってきたらどうなんだ。口には出さないが、最大主教は寂しさを堪えているのでは、と言っていたぞ』
「…………まあ、いずれ、な。」
土御門の現在の仕事はやや私情が絡むとはいえ、教会の利益につながる立派な「裏のお仕事」である。
中途半端に済ませて世界一大事な妻を巻き込むわけにはいかない。
そうこうしていると、寝泊まりしているボロアパートが眼前に現れる。
溜まった郵便物を無造作に抜き取るとドアを開け、しばらくぶりの清潔、
とは言い難いが少なくとも硝煙や血痕の染み付いていない寝床に飛び込む。
「じゃあそろそろ切るぜい。オレは久方ぶりの惰眠をこれから貪るんですたい」
『……ん、そうかい。わかった、それではよい夢路を』
初っ端の剣幕からは考えられないほど穏やかな声が耳に入ると、ブツッと通話が切れた。
土御門は怪訝に思いつつも、会話には滲ませなかった疲労に負けてとりあえずは睡魔に身をゆだねることにした。
と、その時。放りだした郵便物の中に見覚えのある筆跡と名前を見つけた。見つけてしまった。
常識も国境も通用しない未元速達便――「土御門元春様へ ステイル=マグヌスより哀をこめて」。
「にゃ、なんでこの場所が……」
慌てて跳ね起きた時にはすでに遅い。中に仕込まれたルーンカードが「土御門がギリギリ死なない威力」で発動した。
「ふっ、不幸だにゃーーーーーっ!!!!」
いや、自業自得である。
イン「なにかありて、ステイル? いやにすがすがしい顔をしてつきにけりなのよな」
ステ「いや、とりあえず溜飲が下がった。…………?」
イン「どうかしたるのよな?」
ステ「いや、なにか……おかしい。更に、一段と、おかしくなっているような……」
イン「おかしき!? かような馬鹿なことがありにけるのよ? 矯正はさいじが手伝ひてくれたのよな」
ステ「建宮ァーーッ!! お前もかァァーーーーッ!!!!」
イギリス 聖ジョージ大聖堂
ステ「クソッ、結局天草式には逃げられ、馬鹿口調も全く矯正できず、
僕がやったのはあのふざけた露出度のメイド服を片っ端から焼き捨てることだけか……!」※予備が五十着ほどありました
イン「まあしょうがなきにつき! それよりいよいよご使者が着きてきたるのよな!」
ステ「正直そこが一番の不安材料なんだが……(土御門の口ぶりからすると誰なのか知ってる風だったが……?)」
コンコン ローマセイキョウカラノゴシシャガゴトウチャクシタゾー
イン(つ、ついに最大主教デビューの時がきたのよな……!)
ステ(一体何者が………………)
扉「ギギギギィ」
フィアンマ「俺様だ」ドヤッ
イン「」
ステ「」
フィ「?」
イン「すいませんチェンジで」
フィ「!?」
フィ「全く失礼な奴らだな」プンスカ
ステ(普通にキモイ)
イン「まさかローマ正教があなたを送りけるとは……意外といふべきか、大胆といふべきかなのよな」
ステ「というか、面識あったっけ……」※原作未確認
フィ「こまけぇことは気にするな、ステイル=マグヌス」
ステ「……いやいや、待て。僕と……最大主教と貴様の間には全く細かくない事情があるだろう」ボウッ
イン「ステイル、かように前に立ちふさがりてはロクに会話できぬのよな?」
フィ「そうだぞ、そう恐ろしい顔をせずとも『聖なる右』のない今の俺様では貴様に勝てんよ。場所も場所だしな」
ステ「よく言う。だいたい本人の口からいけしゃあしゃあとそんなことを言われて、納得できると思うのか?」
フィ「あの金髪グラサンから聞いてないのか? 奴は俺様の事情を断片的にだが知っている」
ステ「(……あ・の・シスコンがッ……!)……確かに、土御門は「心配ない」と言ったが」
イン「そもそも、なぜにもとはるとフィアンマに面識がありけることよな?」
フィ「世界を流離っている最中に、な。あの男のおかげで俺様の世界も少し拡がった」
ステ(おかしな方向に拡がってないだろうな……)
フィ「いまの俺様はメイド喫茶『お客様は神様~右席に失礼しますご主人様』のCEOとして布教活動を」
ステ「土御門ォォォーーーーーーッ!!!!」
イン「そろそろパターン化してきにけり。しかしそうなるとおもてなしには『神にご奉仕☆メイド風あーくびしょっぷ』が
やはり必要なりけるのよ!幸いここにあと一着……」
フィ「!! ほう……これは!」
ステ「それはっ、土御門のっ、罠だァァァァーーーーーーーッ!!!!! というか気に入ってたのかぁ!!!」イノケンティウス!!!
イン&フィ「「あぁっ、もったいない!」」
ステ「もったいなくありません!! もう持っていないでしょうね!!」
フィ「フフッ、それで上手いこと言ったつmウボァーーーーーーッ!!!」ジュゥゥゥウウ
イン「肉の焼けたるいい匂ひなのよな」ジュルリ
ステ「なんというか……しらけたな」
フィ「さて、いい加減に仕事をしなければな」シューシュー
ステ(もう少しヴェルダンにしておくべきだったか)
イン「そうだったのよ! さにあれども、私の初仕事を遂行しけるべきよな!」
ステ(そういえばこの口調は完全にスルーされてるな……)
フィ「エッヘンオッホン! ……それではイギリス清教最大主教、Index-Librorum-Prohibitorum殿。
こたびは最大主教への昇叙、厚くお慶び申し上げたる」
ステ(……?)
イン「ありがたきことよな。非才の身にあれど、主の教えに従ひて研鑽を積み、人々の救いの手となりぬのよ」
フィ「……わがローマとイギリスは長らく友好関係とは言ひ難かった。」
フィ「が、教皇聖下は万民の心の安寧を願っておられる。宗派の違いなどなにほどのことがあろうか、ということだ」
イン「それこそ主の望みと私も考えたり。ローマとイギリス、否、
世界の人々の求める『救い』を丁寧に拾いてゆきてこその『救済』なりしよな」
フィ「……フフッ」
イン「?」
フィ「なぜ『お前たち』の周りに多くの善意があるのか。それが今よくわかった」
ステ(……『お前たち』か……)
フィ「俺様がこの場に来たのは、祝福のためだけではない。十年越しの、謝罪のためでもある」
ステ「……」
イン「……」
「十年、経ってしまったのはひとえに俺様の――俺の身勝手な願望ゆえだ」
「あの男に諭されて、世界を見た。なにものも通すことなく、この眼で」
「醜かった。歪んでいた。しかし、」
「美しかった」
「善は確かに、この世にあった。作り出すまでもなく、今の世界に」
「それを確かめてようやく、俺は自分の過ちと向き合えた」
「自分が間違っていたと、認められた。だから、いくら遅くなったとしても頭を下げよう」
「済まなかった」
「顔をあげてください」
「人には、口があります」
「目があって、耳があって、鼻があって、手があって」
「心があります」
「話し合うために、笑いあうために、手を取りあうために神様がくれたもの」
「私はそう思ってます」
「だから、取り戻しましょう?」
「どんなに長い時間がかかっても、一生だったとしても」
「取り返しのつかないことを取り戻そうとしている人を、私は知っているから」
「あなたにも、あきらめないでほしいから」
「私は、あなたを許します」
「ありがとう、最大主教――いや」
「シスター・インデックス」
ステイルには、言葉はなかった。口を真一文字に結んで、眼前の『救い』から目ではなく、心を背けた。
まるで天上の、この世ならざる光景を見ているかのようで、そしてなにより――
自分が愛したままの『インデックス』がそこにいたから。
自分以外を愛した『インデックス』がそこにいるから。
どんな瞬間よりも強く、その隙間を思い知らされてしまっていたから――
なにも、言えなかった。
フィ「それでは、時間も時間だ。そろそろお暇しようか」
ステ「ローマに戻るのか? それとも……」
フィ「今度は、贖罪の旅ということになるな。今回のことは、前教皇の計らいで実現したることだ」
イン「マタイ前聖下はお元気でありて?」
フィ「りうまち、だったかをこじらせてな。歳も歳、万全とはいかぬが……」
フィ「学園都市の医者を誰かに紹介されたらしくな、どうやら快復にむかっているそうだ」
イン「それはよきことよな!」
フィ「まったくいつまで経てども頭が上がりそうにない……」
ステ(とか言いつつ微妙に嬉しそうだな)
ステ(…………? やはりなにか、違和感が)
フィ「ではな、最大主教、ステイル=マグヌス」
イン「……我らをして御身にならいて、常に天主に忠実ならしめ、その御旨を尊み、その御戒めを守るを得しめ給え」ニコッ
ステ「(へえ……)かくして我ら相共に天国において天主の御栄えを仰ぐに至らんことを」ヤレヤレ
フィ「……御身の御取次によりて天主に願い奉る、アーメン」フフッ
スタ、スタ、スタ……ギィッ
「…………さらばだ」
フィ「機会がありければまた会いたし。主の加護があらんことよな!」
ステ「なんかうつってるーーーーー!!!??」ガビーーーーン!
ステ「どうするんだあれ……」
イン「気にすることなしよな!」
ステ「なくてたまるか! アイツこれからあの口調で地球一周謝罪行脚するんですよ!?」
ピラッ
イン「あれ? なにか紙切れが落ちたるのよ? なになに……」
フィ『そうそう言い忘れた、俺様の旅は「お客様は神様(以下略)」の宣伝も兼ねているのだが』
ステ「……いや、いつ書いたんだこんなもん」
フィ『先ほどちらりとだが見せてもらった「神にご奉仕☆(以下略)」には実に感銘を受けた。
そちらが良ければ俺様の城、略称「ベツヘレムの星」の制服として採用したいと思う。というか採用する。答えは聞いてない』
イン「!!」
ステ「!?」
フィ『現物はないが俺様の「聖なる右脳」にかかれば再現など容易い。
「あのイギリス清教最大主教も絶賛着用中!」のキャッチコピーで商品展開も考えているので楽しみにしt』ボウッ!
イン「す、すている!? 何故にまたイノケンティウスを顕現させたるのよな!?」
ステ「ふ、ふぃ、っ、」
イン「ふぃ?」
ステ「フィアンマァァァァァァーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」
鬼のような形相で『魔女狩りの王』を引き連れたステイルが大聖堂を飛び出す。通行人がびっくらこいて何人か腰を抜かした。
乳母車の赤ん坊がキャッキャと笑いだし、何故だか手慣れた感のあるホームレスがありがたやと暖を取りに群がる。
しかし本日四度目となった絶叫の元凶はすでにどこにも見えず、青青く晴れ渡る空に五度目の絶叫が響いて抜けた。
「不幸だぁぁーーーーーーーっ!!!!!」
続きますん
日本 上条家
prrrrrr!
上条「はいはい今でますよ~っと。……何だ、ステイルか」
ステ『何だとは何だい、上条当麻。ぼくだってできればこの短期間に何度も君の声なんか聞きたくないよ』
上条「なんだそりゃ。じゃあかけてくんなっつーの」
ステ『いや、その……ね。この間の、ミセス浜面の件で確認しておくことがあってね』
上条「ああ、理后さんの力を借りたいとか、土御門の居場所がどうとかって話のことか?もしかして、やっぱりあの……ナントカの……」
ステ『「体晶」のことかい? 話には聞いてたから一応本人に確かめたが、いまは大した問題にはならないらしい』
上条「はぁ~っ。俺の紹介だからな、無事で何よりだ。それにしてもあんなトンデモ能力を副作用なしでいけるのか、レベル5ってのは」
ステ『君の右手ほどではないだろう……話が逸れたね、本題は最大主教のことだ』
上条「インデックスのこと……? まさか、また何かあったのか!? ついこないだも電話してきたばっかだぞ!?」
ステ『…………はぁぁぁぁぁ…………』
上条「……そんな不幸オーラビンビンの溜め息をつかれると、上条さんとしては他人事とは思えないのでせうが。何があったんだ?」
ステ『はぁ……最大主教は君に連絡を取った。そして、ミセス浜面の連絡先を聞き出した。そうだね?』
上条「な、なんだよお前!?まさかこの電話、盗聴でもしてるんじゃ」
ステ『よりにもよって君の電話など、誰が盗聴するかッ!! ……とにかく、OKだ。僕の用事は済んだ。御夫人と仲良くやれよ』
上条「……それこそお前に言われるまでもねぇよ」
ステ『フラグをこれ以上増やすなよ。
君の建てまくった旗のせいでわりと世界の大部分が大ピンチだったあの頃を、忘れたとは言わせないよ』
上条「…………それは、言われるまでも……あった、な。……じゃねぇよ! さっさと切れ!」
ステ『ヤレヤレだ』ブツッ
上条「……ほんと、お前に言われたかねーよ」
イギリス 聖ジョージ大聖堂
ステ「本当に、ヤレヤレだよ」
火織「」
ステ「OK、事情は把握しましたよ最大主教。根本の部分でいまだによくわからないところがありますが……」
イン「なにやら疲れが超たまっているように見えたるのよな、ステイル。
でも大丈夫!さようなステイルでも私は超応援しにけるにゃーん」
ステ「……不幸だ」
火織「」
ステ「どうしてこうなったんだ、最大主教ッッッ…………!!!」
火織「それで……いったい全体なにがどうなって……その、こんな有様に?」
イン「むむっ! 久方ぶりに会いたる超親友にむけてその言い草はブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・いなるのよな、かおり!」
ステ「申し訳ないが、少し黙っててください、最大主教。……とても捌ききれませんので」
イン「」(´・ω・`)
火織(……捌く?)
ステ「とにかく、僕の胃もそろそろ限界だったところだ。本当によく来てくれたね、神裂……おっと、すまない」
火織「ふふっ、あなたからはそう呼ばれる方がしっくりきますからね。今まで通り、神裂で構いませんよ」
ステ「お言葉に甘えさせてもらうかな。……さて、この危機的状況についてだが」
イン「」(´・ω・`)
火織「……冷静になって考えてみれば、なんというか……状況は読めますね、だいたい」
ステ「……まあ、例によって元凶はあのアンポンタンだ。髪の長い方の。それにクワガタやらレベル5やらが絡むうちに……」
火織「どうしてもこうなった、と」ハァ
ステ「現状を嘆いても始まらない。更なる症状進行の前に手を打たないと」
火織「原因がハッキリすれば、話は早いのですが……
インデックスの完全記憶能力に端を発しているならば、どちらかというと科学の分野になりますね……」
ステ「あのスットコドッコイがなにがしかの魔術を仕掛けた可能性も完全には否定できないが。
……今のところ、そういう形跡は見られないね」
イン「」ヒョコヒョコ
火織「どうしました、インデックス?」
ステ「ああ済まない。発言しても構いませんよ」
火織(教師と生徒ですね、これ)
イン「学園都市には、超学習装置(スーパーテスタメントではありません)なるものがあるのよな。それで脳を上書きしたれば」
ステ&火織「「却下だ(です)」」
イン「あれー?なぜに応援してくれぬのよ?」
ステ(当然だろう……君の脳を弄くるなど、そんなこと)
火織(二度とあってなるものですか……!)
イン「?」
火織「やはり、地道な矯正こそが最大の近道ではないでしょうか」
ステ「はぁぁぁ…………それしかないか。そういうことなら適任は僕と君、かな。他にはいるかい?」
火織「信頼できて、かつ言葉遣いが無個性……もとい、平易な人物というと……五和、ですかね」
ステ(良い性格になったよなぁ)
火織「それから恐れ多いことですが、ヴィリアン王妹殿下などどうでしょう? お茶友達、でしたよね?」
イン「大丈夫、ヴィリアンのところに行くと得も言われぬ美味が並びてにゃーん!」
ステ「(自制しろ、自制……)寮の連中なら、シスター・ルチアとシスター・アンジェレネに……シェリーもギリギリセーフ、か?」
火織「……遺憾ですが、天草式の男どもは引っ掻きまわしそうなのでアウトです。浦上や対馬にも手伝ってもらいましょう」
イン「……!」
ステ「どうかしましたか?」
イン「……もしや、彼女らと毎日その矯正とやらを行わなければ超いけなし?」
ステ「まあ、公務に支障の出ない範囲で最大限やってもらいます。いずれは学園都市への訪問もありますし……最大主教?」
イン「むー」
火織「? その、私たちとでは不満、ですか?」
イン「そ、そういうわけにはあらぬのよな! ただ、その……」
ステ「その?」
イン「す、すているは、超参加しなくてよしにつき!」
火織「!?」
ステ「」
火織「そ、それは、どういう……」ハッ
ステ「」マッシロ
火織「ステイル? ステイル!? しっかりしてください!!」ガクガク
イン「……ハッ!? わ、私は何を言ってるのよな……かっ、かおり!! かおりの力でかように揺さぶっては!」
ステ「」チーン
イン「ああああっ! ステイルが超!ゴ・リ・ン・ジュ・ウ・か・く・て・いになりてしまうのよなーーーー!!」ガビーン!
火織「すっ、すいません!! とり、とりあえず医務室に運ばなくては!!」ヨッコラセ
ステ「」
ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ
ナンダヨナニカシラ ウルセーデスネ オッ、オシボリイリマスカ!?
コリャタイヘンナノヨナ ドーカシタノカー? ニャー アラアラデゴザイマスヨー
ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ
すているくんにじゅうよんさいの受難はまだまだまだ終わらない。まる。
火織「そういえば、ステイルの話でよくわからない部分があったのですが」
イン「?」
火織「いえ、あなたの口調をしっちゃかめっちゃかにしてくれた表六玉とクワガタについてはよくわかるのですが」
イン(ヒョーロクダマ?)
火織「レベル5、というのは、その……彼女のことではないですよね? 彼女の口調はごく普通であったと記憶していますし」
イン「!」
火織「あなたはどうして他の超能力者と交流を持つに至ったのですか? そこのところの経緯がよく……」ウーン
イン(……かおりもステイルも、とうまに似てきたんだよ)ボソッ
火織「なにか言いましたか?」
イン「なんでもなし!」
火織「?」
続けたし
60 : 天草式編0 - 2011/05/17 20:46:04.06 yylIiJLt0 26/2388
注意事項強調
※勝手なカップリング多数←CAUTION!
懐かしい夢を見ていた。
「そ、それ、待ったなんだよ!」
「おいおい、冗談だろう? チェックだ」
「ステイル! 少しぐらい手加減してくれてもいいかも!」
「君の頭脳にかかれば、あっという間に僕より上手くなるよ。これくらいの意地悪は許してほしいね」
「ステイル……それは少し大人げないですよ?」
「僕の方が年下だッ!!」
『あの子』と初めて会った頃の夢。十年前、『あいつ』によって彼女が救われるより、更に前。
「おかわり!」
「おい、神裂! 多めに用意しておけといっただろ!?」
「うっせえんだよ、ド素人が! あの体にあれほど入るとは思わないでしょうが!」
「私の『宇宙胃袋』に――常識は通用しないんだよ!」
「「やかましい!!」」
『あの子』を救えなかった時の夢。――なにもできなかった無力な自分の夢。
「お別れだね。すている、かおり……」
「イン、デックスッ……!」
「…………最後に、これだけは誓うよ。たとえ君は全て忘れてしまうとしても――」
「んんっ…………? ここは……?」
ステイルが目を覚ますと、そこは清潔なベッドの上だった。上体だけでも起こしてあたりを窺おうとすると、
「ツッ! か、肩が……?」
手をつくだけで鈍い痛みが走り、満足に起き上がれない。
仕方なく首だけ回して状況を把握しようとするも、ベッドの周りはカーテンに覆われている。
とにかく、状況を整理すべきだ。
この無機質な天井、規則的な機械音、極めつけに鼻をつく薬品臭。
魔術の総本山に似合わぬ医療機器がいくつも運び込まれた、聖ジョージ大聖堂の医務室である。
どうやら自分は、怪我を負って運び込まれたらしい。
この医務室に運ばれるということはすなわち、聖堂で倒れたということになる。
「――――――ッッ!!」
そこで、気づいた。肩の痛みなど気にもならず、ベッドから這いずり出ようとする。
(あの子は、いまどこにいる!?)
護衛の自分が倒れるような事態が起こったのだ。必然、彼女の身にも何かが、
動きが、止まる。
何かを、忘れている。彼女に関することだ。そうだ、脳裏に焼きつく最後の光景は、焦り顔の彼女が、なにごとか、叫んで
思い出すべきでない記憶が、すぐそこまで顔を出している。 記憶<チーッス
煩悶し、混乱するステイルはカーテンの向こうに現れた気配に気づかない。
(えーっと、確か神裂と一緒に何かを話し合っていたんだ。そこで、あの子が……)
魔術師として致命的なミスだった。闖入者は前触れなくカーテンをめくると、ステイルに向かって――
「目を覚ましたるかにゃーん、超すている! 大丈夫、こ、この人魚姫アワメイドが看病しちまうのよな!」
鱗を意識したのだろうか赤い網タイツ。大事な部分は泡のような謎の物質で隠された下半身。
『歩く教会』の内側でもなお存在感を強烈に主張していた部位にいたっては、
大きな貝殻が二枚、直に張り付いているようにしか見えない。
全体的にスケスケ素材で歩く18禁ボディをコーティングした人魚姫アワメイドが――
――惜しげもなく、精神年齢に明らかに合致していない艶姿をふりまいた。
眼福眼福。 ステイル爆ぜろ
凍れる時の術式が作動して数秒後、
「……フッ」
完全にチルド状態だったステイルが突如として笑みを浮かべた。
近年稀に見る穏やかな微笑である。スーパー(笑)イノケンティウス(笑)を発動した時以来かもしれない。
「おお! そんなに気に入りてか! さあさ、これからあなたは私の超応援を受けなければいけねー……え? 何?」
勘違いしたインデックスが喜々としてご奉仕を始めようとすると、ステイルが首を振る。
さらにぎこちなく腕を動かし、耳に指を突っ込む。
「……? 耳を? 塞げと言いたいのよな?」
ステイルが笑みを深めて頷いたのを見て、恐る恐るインデックスがそれに倣った次の瞬間、
「最 大 主 教 ッ ッ ッ ! ! ! ! !」
最大級の雷がロンドンの街並を大げさでなく揺らした。炎使いなのに。
大聖堂 医務室
イン←着替えた
ステ「ま・た・つ・ち・み・か・ど・か! ……ゲホッ、カホッ」
イン「あまり叫びすぎては喉が潰れちまうにゃーん?」
ステ「誰の、ガフッ……だれ″のぜいだど」
イン「されども今回の超メイド服はもとはるから貰いしものではなく……」
ガラッ!
建宮「そう! 我ら天草式十字凄教の総力を結集して作り上げた至高にして有頂天の逸品なのよな!!」
天草式「オオッ!!!」
イン「さいじ!」
ステ「やばりきざまら″かッ……!!」
野母崎「あああ、最大主教!! なんで着替えてるんですか!?」
牛深「くぅーーー、惜しい!! もう一回見ようとおもって来たのに!」
香焼←脳内映像再生中
諫早「まあまあ。最大主教は慎み深く攻めるということでしょう?」
建宮「だぁーから言ったじゃないのよ最大主教! これを着さえすれば童貞のステイルくんなんてイチ」
火織「あ な た た ち ?」
五和「な に や っ て る ん で す か ?」
馬鹿ども「」
オーモーイーガーシューンーヲーカーケーヌーケーテー
ナナセエンッ
--------------------------------BASARA K.O.--------------------------------------
大聖堂 中庭
五和「まったく貴方達ときたら! 私と女教皇様では飽き足らず、最大主教にまで!」
牛深「」シーン
五和「野母崎さん、今回のことは奥さんに言っておきますからね!」
野母崎「そ、それだけはご勘弁を……」グフッ
五和「香焼。浦上には『香焼は巨乳以外はお断り』と伝えておきますね」
香焼「!? なっ、え!? あれ!?」ビクビクッ!
五和「諫早さん……はいませんね。あれ? 最初から?」
(((クソッ、逃げやがった!!)))
五和「……まあいいでしょう。さて…………たーてーみーやーさーん?」
建宮「おうおうどうしたのよ五和? 可愛い顔が台無しなのよな?」ピンピン
五和「そん、なこと言っても誤魔化されません!! いい年していつまでもメイド服メイド服って……!!」
建宮「……勘違いしちゃあならねえのよ五和。俺が愛してるのはあくまでメイド服の中身。
そう、これはお前さんや女教皇様への愛ゆえの行動なのよな!!」
五和「へ? あ、あっ、愛!? わ、私のことを愛し……っ!!??」
建宮「そうよそうなのよそうなのよな三段活用!
だぁーからそんな怖い顔してないでこの! 『帰ってきた超精霊チラメイド2』を」
キュピーン
テーレッテー
---------------------------------FATAL K.O.---------------------------------------
---------------------------------------------------------------
ステ「……………………はぁぁぁぁぁぁあああ……………………」ケフ
火織「すいません、ステイル。少し花を摘みに行った隙に……」
ステ「まあ、だずかったから″いいざ」
火織「ひどい声ですね。正直、普段の煙草もあまりよろしくないと思うのですが」
イン「これを機に禁煙したるなら、応援しちまうのよ!」
ステ「だから、だれ″のぜいだど…………神裂」
火織「…………ええ。インデックス、『いけないです』と言ってみてください」
イン「いけねーですにゃーん」
火織「」
ステ「」
イン「?」
ステ「畜生!! いっだいいづの間に接触しだんだ!?」ゲフグフッ
火織「アニェーゼ! アニェーゼはいますか!? あっ、やっぱり来なくていいです!」
ナンダッテンデスカマッタク!
イン「着替えは女子寮で行いたるゆえ、超がーるずとーくに花が咲きたり!」
ステ(がーるって歳かい……)クチニハダサナイ
火織「……私が目を放したのは、ほんの十分程度なのですが……」
ステ「超ズピード感染だな。厄介極まり″ないね、まっだぐ……オル″ソラ″が不在なのが、不幸中の幸いだっだな」
火織「一日前の内容を憶えてないと、彼女とは会話になりませんからね……」
イン「げに恐ろしき怪奇現象なりて! 超催眠魔術だとか超超スピードだとかかようなチャチな(ry」
ステ「貴女の方がよっぽどファンダジーやメル″ヘンしでまずよ!! どいうが何を記憶しでいる″んだ貴女の脳は!」カハッ
イン「十万三千冊改め、+ジャパニーズコミック二万冊の超禁書目録(ネオインデックス)を応援してほしいのよな!」
ステ&火織「「やかましい!!」」ゲッホンガッフン
五和「失礼します、女教皇様。この肉塊の処理ですが」
火織「いつも通り、テムズ川に流しておけば問題ないでしょう」
五和「了解です。対馬さんにも手伝ってもらわないと……」
イン(天草式女性陣も)
ステ(逞しくなったなぁ。いや、わりと昔からか)トオイメ
五和「申し訳ありませんでした、最大主教、ステイルさん。まったく、建宮さんは……」ブツブツ
イン「いやいや、楽しき時間だったにゃーん!
いつわもたまには超さいじの期待に答えちまってもよきことよ?」ニヤニヤ
ステ「別に、貴女があの男の言動に責任を取るいわれ″などないだろ″う?」ニヤニヤ
五和「なっ、なにを微笑ましそうな顔で見てるんですか!」
火織「……? まあ、どちらかと言えば責任は私が取るべきですね」
五和「えっ!? そ、そんな、女教皇様にはすでに家庭が」
火織「な、なにをそんなに焦ることがあるのですか?
まあ、あの男も教皇代理の肩書きから解放されて緩かったタガが抜けてしまった感はありますね」
五和「い、いえ、でも! 昔から決めるときにはちゃんと決めてくれますし!」
火織「はあ、いえ、それは私もよく知ってますが……あの、五和?」
五和「……ハッ、いえその、別に他意は」アタフタ
イン「ニヤニヤ」
ステ「ニヤニヤ」
五和「」
火織「?」
五和「もぉーーーっ! 不幸ですーーーーーっ!!」ダッ
ヌオッ アッ、アマリランボウニヒキズラナイデホシイノヨナ……アッーーーー!
火織「…………?」ハテ
ロンドン市街地
スタスタ ヒョコヒョコ スタスタ
ステ「嵐のような……いや、前方のヴェントに強襲されたような一日だったな……」シュボッ
火織「ドタバタ具合では匹敵するかもしれませんね……」
イン「喉はもう大丈夫につき?ハ・イ・ガ・ン・か・く・て・いする前に医者にかかるべしなのよな」
ステ「やめてください、リアルに怖い」トイイツツ フー
火織「ああそうです、インデックス」
イン「?」
火織「ステイルほどではないにしても、私からもお小言がありますよ」
イン「ええー」
火織「看病やらの動機があったとしても、あのような振る舞いを誰彼かまわず見せていては
最大主教としての威厳などあったものではありません!」
ステ(自分のことは棚に上げて……)プカー
火織「それからいいですか、あなたは少し暴食的に過ぎる。
シスター・ルチアほどとは言いませんがもっと禁欲的に……」クドクドクドクド
イン(……別に、誰彼かまわず見せてるわけじゃないかも)ボソッ
火織「?」キコエタケドイミフメイ
ステ「?」キコエテナイ
ステ「そう言えば結局、どうして僕はベッドに転がされていたんだ? どうもそのあたり、記憶が曖昧なんだが」
イン「!」アッ
火織「!!」ヤバッ
火織(ここは、口裏を合わせて)
イン(超なかったことにしにけりにゃーん)
火織「あ、貴方は前最大主教の遠隔魔術(イヤガラセ)で一時的に、
……えっと……その…………し、四十肩にされてしまったようなのです!」
イン「し、しかしもう大丈夫! 我が超禁書目録にかかればカ・ン・チ・か・く・て・いしたるのよな!」
ステ「んな馬鹿な。と、言いきれないのがあの女狐の恐ろしいところだな……
クソッ、やはりプライベートジェットを落とした報復か?」ブツブツ
イン(どうにか疑われねーで押し切りけり!)
火織「あと……インデックスの口調矯正講座の件ですが、女人ばかりの輪に入るのは気まずいでしょう?」タブンコンナカンジ?
イン(かおりにありては珍しく超空気読んでるのよな!)
ステ「(なぜか心臓が痛い)僕は護衛だぞ。そういうわけには」
火織「私か、私が無理なら五和らを同席させます。宮殿のお茶会は、まあ……これは別にいいでしょうか?」チラッ
イン(……コクリ)
ステ「しかし、だな。これは僕の仕事なんだ。他人任せになど」
イン「……すているは、頑張りすぎたるのよ。少しは自分の体のことも考えてほしいのよな」
ステ(…………)
(駄目なんだ。それじゃあ、駄目なんだよ。君の隣にいるためには、少なくとも)
(『あいつ』より、強くなければならないんだ……!)
(僕の力では、まだまだ足りない…………!!)
(まだまだ、まだまだ………………)
「……大丈夫」
「!」
「そんなにも頑張ってるすているを、私はいつでも信じてるんだよ」
「だから……ね?」
(まったく……敵わないな…………君には)
(そうですか……あなたたちも、複雑なことですね……)
カー カー カー
火織「…………さて、夕食の時間になる前に、私は買い物に行かないと」
ステ「そんなものメイドが用意するだろう? いや、そもそも君に洋食なんて作れるのか?」ハハッ
火織「魚をさばく前に試し斬りしようかと思うのですが」スチャ
ステ「何を包丁にする気だ!? あ、いや待て、すみません、僕が悪かったです」ハイ
イン「ステイルの超へたれっぷりは長く見ぬと不安になっちまうにゃーん」
ステ「くそ、くそ……どうせ僕なんて」イジイジ
火織「……ふふふっ。それでは二人とも、また明日」バイバイ
イン「あははっ。また明日!」バイバイ
ステ「……ああ。また明日」バイバイ
――お互い手を振り、また明日。
それは今まで夢の中にしか存在しない世界だった。
しかし、夢と現実は違う。当然のように世界は遷ろっている。
男と女の関係も、少年と少女のそれとは違うものなのだ。
「さて、帰りましょうか。最大主教」
『さて、神裂が待ってるよ、インデックス』
「まいかが夕餉を作りて待ちたるのよ!」
『かおりはどんなごはんを用意してるのかな!』
霧越しに夕日が差し込むロンドンに、かつてより少しだけ伸びた二つの影が落ちる。
それはやがて縦から、横に並んで揺れていった――
なんだかこのまま終わって問題なさそうなんだね?
カチャカチャと陶器の擦れる音が豪奢な室内に響く中、ステイル=マグヌスは優雅に紅茶を口に運ぶ。――とびきり美味い。
それも当然だ。ここはイギリス王家の中心地、バッキンガム宮殿。
『人徳』の王妹ヴィリアンが客人を通すこの部屋で、もてなされる紅茶が最上級のものでないはずがない。
「いやいや、茶葉の質がどうということではない。ヴィリアンが手ずから入れた紅茶は極上、と決まっているのである」
ステイルのひとりごとを聴きつけたのか、ウィリアムが重々しくそれを否定する。
かつて『神の右席』の一員、後方のアックアと呼ばれ――現在ではイギリス王妹ヴィリアンの夫となった男である。
「それは私への当てつけか、貴様? 我が妻とて魚を捌かせれば一級品だ」
やっかみ半分で噛みついたのは英国三派閥の一つ、騎士派のトップに君臨する男、騎士団長(ナイトリーダー)。
『最近の』悩みは、妻以外に本名を呼んでもらう機会がないことである。
……なかなかに深刻な問題ではあるが、こればかりは神でもない限りどうにもしてあげられない。 タスケテカマチー!
「そのようなつもりではない。お前の被害妄想である」
「一級品と言っても捌くところまででしょう。和食なら良かったんでしょうがね……」
ツッコミを入れたステイルも、なにを隠すこともなくイギリス清教は最大主教の側近である。
つまりこのテーブルで交わされている会話は事実上、英国三派閥のトップ会合となんら変わりがない。
だがその内容はと言えば、
「なんだお前たち、他人事のように!」
「この件に関して、僕と神裂は他人です。下手にフォローして毒物混入容疑でしょっ引かれるのはもう御免だ……」ボソ
「まあ、彼女には借りも負い目もあるが…………すまんな、我が友。リアル犯罪者は勘弁なのである」ボソボソ
「畜生、畜生!! 上はやかましいババアと年増どもに無理難題を押し付けられ、
下は若い連中に突き上げられ、家に帰って安らいでも食卓でプラスマイナス――ゼロになる!
この状況で友達見捨てんのか、テメェらぁ!!」ウガー!
……繰り返すが、これはイギリスで最も権威ある野郎どものやりとりである。
正直、そこらの居酒屋で交わされるものと大差ないと言わざるを得ない。
中でも派閥の長であるはずの騎士団長の中間管理職じみた嘆きは
(微妙に惚気に聞こえなくもないが)ことに悲哀の色が濃く、
こちらに関しては他人事と思えないステイルは、さすがになにかしらフォローを入れるべきかと言葉を探る。
が、現実は非情である。
「………………………………」
「ハッ!! まっ、待て待て! ノーカウント! ノーカウントだ!」
「あ な た … … … … ?」チャキンッ
「おい、マジかよ、夢なら覚め」
答え③ 覚めない。現実は非情である。
デーンデーンデーン
サイシュウオウギッ ユイセンッ
---------------------------------誠---------------------------------
……カーテナなしでは、夫婦喧嘩(喧嘩になってないか)は妻に軍配が上がるらしい。
「…………不幸だなぁ」
(唯閃なのに)三枚に下ろされてしまった騎士団長の切り身を眺めながら紅茶を啜る。
ちょっぴり結婚願望が薄れたすているくんにじゅうよんさいの秋の日であった。まる。
火織「…………フン。まったく、あの人は」
イン「あれ?あっちは大丈夫につき?あれー?」
ヴィリアン「ほら、よそ見しないでください、インデックス」
イン「うう……ヴィリアンは超意外にスパルタ教育であるのよな」
火織「そろそろ二時間ほどですね。いかがですか、ヴィリアン殿下」
ヴィ「とりあえず、ローラ様の口調はあんいんすとーるできたと思うのですけれど……」
イン&火織((あんいんすとーる?))チンプンカンプン
ヴィ「ああ、ごめんなさい。つまりローラ様言葉が治った、ということです」
火織「おお!」
イン「あまり実感がわかねーにゃーん」
火織「コラ!折角ヴィリアン殿下が貴重なお時間を割いて下さったのに、あなたという子は……!」ゴツン
ヴィ「ま、まぁまぁ、私も楽しかったのだから構いませんよ」
イン「うう……結局、かおりの方が超恐ろしいって訳なんだよ」
ヴィ「……いつの間にか、また増えているような」
火織「……なんだか絶対聞こえるはずのないものを聞いてしまった気がします」
イン「よくわかんない方角からビビビと、信号が来たのよな」ボー
火織(収拾つくんでしょうか、コレ……)
ステ「で、プラスマイナスゼロになった、というわけですか」
ヴィ「ごめんなさい、やはり私では力不足だったようで……」ペコリ
火織「そ、そのようなこt」
ウィリアム「そのようなことは断じてない!」ヌッ
イン「わわ!超びっくりしちまったんだよ!」
ステ(急に見ると心臓に悪い顔だ)
ヴィ「ウィリアム……?」
ウィ「ヴィリアン、己を卑下などするな。それで悲しむ男が、少なくともここに一人いるのである」
ヴィ「ウィ、ウィリアム……!」
ウィ「ヴィリアン!」ガバッ
ヴィ「ウィリアム!」ダキッ
ステ(見てられない)シラー
イン(見てられないかも)シラー
騎士団長「さすがだな、我が友」ヌッ
ステ「うおっ! 貴方もか!」
団長「『第四子懐妊も時間の問題』!これでクソバ……先代のご機嫌取りには事欠かないだろう」
ステ(本当に、同情を禁じ得ないな)ホロリ
火織「あっさり起き上がられると、かなりショックですね……まったく、あなたという人は」ハァ
団長「!! ああ、その、か……火織」
ステ(四十男がなにを恥じらってるのやら)
火織「なんですか?」プイ
団長「ババ……エリザード様への献上話だが、もう一つぐらい、その……」
火織「……もう一つ?」ナニガ?
団長「だから、だな……もう一つ、その、エー…………け、慶事が! あると、より効果が上がると、思うのだ」
火織「!!! っ、なっ!?」カアア
団長「……」タラタラ
火織「……」カアアアア
団長「か、火織……?」オソルオソル
火織「ほ、本当に、あなたという人は、まったく!まったく!!」ボカボカ ミシッメリッグフッ
ステ(付き合いきれない)ヤレヤレ
イン(付き合いきれねーんだよ)ヤレヤレ
ステ「まあ一歩前進、と捉えるべきでしょう」
火織「おや、珍しく前向きな意見ですねステイル」
イン「本当なのよな。結局、いつもなら溜め息をつくか、超不幸だーってなるところな訳よ」
ステ(…………ここ最近の僕は、よほどの哀しみを背負ってたらしいな…………)ズーン
団長「しかし、実際問題として治すそばから新しい口調が追加になるのではいたちごっこだろう」
ウィ「しかも感染経路が電波ではどうしようもないのである」
ヴィ「で、電波ってちょっとウィリアム……」
ステ「事実ですから仕方がありません」
イン「」ガーン
ステ「受け入れてください」
イン「」(´・ω・`)
団長(漫才を見ているようだ)
火織「しかしそのわりには、常にない落ち着きではないですか」
ステ「あれ?もしかして僕、君に嫌われてる?」
ステ「……僕としてはやはり、あの超教皇級の馬鹿口調が消えたことが大きいんですよ」
イン「大丈夫、確かに喋るのが超楽になったにゃーん!」※書くのも楽になりました
火織「公の場に出すにはまだまだですが、このぐらいなら日常会話もしやすいですしね」
ヴィ「根本的解決にはなってないと思うのですけれど……」
ステ「いいのです、これで。僕の精神安定上、ね」
団長「まあ、考えてみればあの女狐のような珍妙極まる話し方をする者など」
ウィ「世界広しといえど、そうそういるはずもないのである」ハハハ
一方通行「ぶェっくしゅン!」
打ち止め「クシュン!ってミサカはミサカは(ry」
サーシャ「第一の質問ですが、ハックシュン!」
アウレオルス「突然。へっくしゅん!」
ガブリエル「bhown噂cixwoovhsa」クチュン!
ステ「あれ?なんかいやな予感が……」ゾクッ
イン「結局、私もなんだよ。あれー?」ブルッ
イン「そういえば、超三人に聞きたいことがあったんだにゃーん」
ヴィ「超三人……?ええとつまり、四人以上、ということですか……?」ウーン
ステ「あの、ヴィリアン殿下。深くお考えになられない方がよろしいかと」
火織「それで、三人とは誰のことですか?」
イン「そこの男三人のことであるんだよ」
ステ「うん?」
ウィ「む」
団長「なにかね?」
イン「あー……ウン。す……三人は」
ステ「(す?) なんですか?」
イン「さ、三人はロリコンなのよな?」
ステ「僕はこれからウチの馬鹿どもの居場所を特定します」ボウッ
ウィ「では私はキャーリサ様の尋問を」ガタッ
団長「一番可能性があるのは、やはり先代だろう」スチャッ
火織「い、インデックス! いったい誰にそんな戯言を吹き込まれたんですか!?」
イン「リメエアなんだよ」
「「「国家元首ゥゥゥーーーーーーーッッ!!!!!」」」
イン「大丈夫。そんなロリコンな……三人でも私は応援しちまうかも」
ステ「いったい何を言ってるんですか貴女は!」
イン「だってだって! 超ヴィリアンも超かおりも、十歳以上歳の差があるかも!
これはもうロ・リ・コ・ン・か・く・て・いである!」
ヴィ「うぃ、ウィリアム……」
ウィ「な、何故そんな顔で見るのだヴィリアン! 私が愛しているのはお前だという事実は変わらな……」
ヴィ「でも初めて助けてくれたあの時、私はまだ十四歳で……」
ウィ「ベ、別に当時からそのようなあれだったとは限らな」
ヴィ「じゃ、じゃああの時は私のことなんてなんとも……」ウル
ウィ「どっ、どうしろというのであるかーーーーっ!!」
火織「私とあなたに至っては、初対面の時は倍ほど開きがあったように思うのですが」
団長「それがなんだというんだ? 私には恥じるところなどない。凛々しく、気高く、美しい。
一振りの名刀のようなお前にだから私は惹かれたんだ。歳の差など問題になりはしない」キリッ
火織「あなた……」キュン
団長「そんな不名誉な誹りを受けたことなどもないしな。ハハッ、まあ私とお前ではあまり外見年齢に差がn」
デーンデーンデーン
団長「」
キーーン メリメリッ スパスパスパッ
ヌオオオオオッ! ゼロニスル!
ターゲットカクニン ハイジョカイシ デデデデストローイ
ナンナンダソレハァァァァァッッ!!!!!!
ステ「僕はあちらのアレら↑とは違います! 無罪だ、冤罪だ!」
イン「でもでも! アンジェレネがスイーツ食べさせて貰ったってドヤ顔で自慢してきたのであるんだよ!」
ステ「寮の連中はたいてい一度は彼女に奢らされてるんですよ! 別に僕のほうがどうというわけじゃ」
イン「い、一度や二度じゃないって言ってたかも! 結局、すているもペドフィリアって訳よ! 応援できねーです!」
ステ「悪化してるぞおい! と、とにかく、僕は彼女をそういう対象としては見ていませんよ」
イン「む、むむむ、そもそもこもえっていう前科があるのよな!」バン!
ステ「実年齢ではむしろ彼女の方がショタコンです!! というか僕と彼女はそんな関係ではない!」ババン!
イン「! じゃ、じゃあすているは超年上好きってことにゃーん?」
ステ「なんだその熟女フェチみたいな言い方!?
……別に、女性を年上だとか年下だとか、そういう観点で見たことはありません!」
イン「……そ、そう。そういうことなのよな……」
ステ(お、収まったか…………)ホッ
イン「まあ、それならいいのであるのよな」
ステ「だいたい僕にそういう疑惑があったとして、何故貴女に糾弾されなきゃならないんですか……」
団長「ゼェ……ゼェ……ヴィリアン様、ウィリアム。そろそろ……」
火織(チッ)
ヴィ「あらいけない、もうこんな時間なのですね」ハッ
ウィ「う、うむ。それでは我らはそろそろ行かねば (助かった……)」
ステ「この後は御公務ですか?」
団長「…………いや、これから『イギリス王室わくわくふれあいタイム』だ」
ステ「………………(聞き返したくないんだが)…………すいません、何ですって?」
イン「なんだか超楽しそうであるのよな!」
団長「……すまない火織。頼む」
火織「『イギリス王室わくわくふれあいタイム』です。
詳しいことは王室のほーむぺーじとやらに載っているそうです。
……私達も一応、護衛として同席を」ハァァ・・・・・・
団長「先代(クソババア)が御提案なされたものだ。内容は」
ステ「いやもういいです、大体予想がつくんで」
イン「えー。私は詳しく聞きてーかも!」
ステ「断固お断りです。聞きません」
火織「……ちなみに関連法もいくつか成立しています」
ステ「はぁぁぁあぁ………………もうやだこのイギリス」
ロンドン市街地
ヒョコヒョコ スタスタ
ステ「はぁぁ」
ステ「結局、どこに行っても僕の気苦労は絶えないって訳なんだな……」
イン「大丈夫?そんなステイルでも私は応援しt」
ステ「八割がた貴女が原因です!」
イン「でも、かおりが仲良くやってるみたいでよかったにゃーん」
ステ「仲良く……やってるのか…………? まあ、喧嘩するほどなんとやら、か。
神裂もいい加減洋食は諦めればいいものを」ヤレヤレ
イン「むっ! その言い草は聞き捨てならねーかも」
ステ(……まあ、なんだかんだでだいぶ聞けるようになったじゃないか。それほど心配することでも……)
イン「乙女心はカーテナより貴く、英仏関係より複雑なのである!!」ドヤッ
ステ「」
イン「あれ?…………あれー?」
ステ「そういえば……さっきから…………そんな感じだったような……」
イン「ドタバタしてて自分でも超気づいてなかったんだよ!」
イン「うむむ! 由々しき事態であるにゃーん!」
ステ(そりゃあ、そう簡単にはいかないか…………)
「やっぱり、不幸だ………………はぁ」
---------------------------------------------------
インストール済み
クワガタ 原子崩し 窒素装甲 AIM剥奪 くぎゅ
OUT
超教皇級の馬鹿口調(ヴィリアンがアンインストール)
IN
フレ/ンダ←New! アックア←New!
---------------------------------------------------
そんなつづきは応援できない……
『必要悪の教会』寮 食堂
イン「まっだであっるか♪ まっだであっるか♪」
ステ「……その口調で軽快に跳ねないでください」
火織「お行儀が、悪いですよ、インデックス…………」ハァ
トントントン グツグツグツ ジュージュー
舞夏「さあ出来たぞ、召し上がれ―」
イン「ああ、天にまします我らが主よ、迷える我らはここにいっただきまーす!!」
ステ「祈るなら最後までやってください!」
火織「い、いただきます……」
舞夏「おう、どんどん食べろー」
ステ「この量でこの質……相変らず絶品だね、ミセス土御門」
イン「ふふん、まいかは超!名門綾乱出のプロのメイドで
あるのだからこれぐらいは朝飯前なのよな!」モキュゴクゴックン モグモグモグ
ステ「よくちゃんと喋れますね。というか何で貴女が自慢げなんですか」カチャカチャ
舞夏「そ、そんなに褒められるとさすがに照れるなー」ニヘヘ
イン「謙遜することねーかも!」ズズズズズ!
ステ「その通りだね。さすがはイギリスにもその名が轟くメイド学校。だがしかし……」スープハオトヲタテズニ!
火織「う、ううぅ……」シクモグシクモグ
ステ「そっちのしけた面はどちらかというと、冥土送り(エクスキューショナー)だね」モグモグ
舞夏「どうだー火織? それが洋食の基本、オムライスだぞー?」
火織「お、美味しいです。オムライスがこんな、こんなにも……」シクシク
ステ「まあ、この間君の作ったオムライスときたら対味覚兵器もかくや、という代物だったからね」ゴチソウサマ
イン「結局、私が平らげたって訳だにゃーん」ゴチソーサマ!
舞夏「oh…………」オソマツサマデシター
ステ(『宇宙胃袋』は健在だったな……)
火織「うっ、うぇぇぇえええええええんん!!」
ステ(三十路近くにそんな泣きかたされてもな)
火織「私だって頑張った! 頑張ったんですよ!!
慣れない洋食を! あの人に喜んでもらいたくて!!」ウェーン
舞夏「愛情は料理の一番のスパイス! 間違ってないぞー、火織ー!」
ステ(結果、塗炭の苦しみを味わっているようだったが……)
火織「うううううぅぅ。つ、つまりそれは愛情が足りないということでしょうか……」シクシク
舞夏「……追いうちになっちゃったなー」
イン「な、泣かねーで、かおりー」ナデナデ
五分後
火織「…………申し訳ありません。お見苦しいところを」カオマッカ
舞夏「だいたい、なんで洋食にこだわるんだー? 火織は和食はちゃんと作れるじゃないかー」
火織「……その、それは。あの人は根っからの洋食派なので……」
舞夏「自分の故郷の味を知ってもらうってのは、国際結婚の王道だと思うんだけどなー」
ステ「僕らもそう言ったんだけどね。この頑固者は聞かなくて」
イン「相手の好きなものを食べさせてあげたい、っていうのは超恋愛の王道なのよな!」
火織「あ……う…………」プシュー
舞夏「むむ、そうかそうか! それで私に洋食を教わりたい、ということなんだなー!」
ステ「まあ、今日はそのために彼女と神裂の予定を合わせたのさ」クルッ
イン(誰に説明してるのかな?)
舞夏「そういうことなら善は急げ! さっそく始めるぞー!」
火織「よ、よろしくお願いします! 先生!」
イン「味見はまかせてにゃーん」
ステ(一応、医務室の手配はしておくか……)ピッポッパッ
舞夏「さて、まずは私も火織のレベルを確かめさせて貰うぞー」
火織「うう……」ドキドキ
舞夏「そんなに緊張しなくても、ただのスクランブルエッグだー。作り方はこちら↓」
1.卵をボウルに割って、よくかき混ぜろー。この時、箸で黄身を切る様に混ぜると、よく混ざるぞー。
2.薄く油をひいたフライパンを熱するんだー。熱したときに出る白い煙が消えたらもっかい油をひけー。
3.フライパンを弱火にかけて、1で作った物を入れて熱しながら混ぜれば、
ウルトラジョウズニデキマシター!
舞夏「なー? 簡単だろー?」
火織「りょ、了解です! 行きます!」
イン(どこに?)
1.卵をボウルに割って、よくかき混ぜろー。この時、箸で黄身を切る様に混ぜると、よく混ざるぞー。
コンッ パカ シャカシャカシャカ
舞夏「なんだ、上手じゃないかー」
火織「そ、そうでしょうか?」
ステ(力の入れすぎとかは起こらないんだよな、なぜか)
2.薄く油をひいたフライパンを熱するんだぞー。熱したときに出る白い煙が消えたらもっかい油をひけー。
シューシュー ツツツ シュー
舞夏「……普通に考えて、問題の起こり得ない工程だなー」
火織「プレッシャーをかけないでください!」
イン「ふぁいと! かおり!」
3.フライパンを弱火にかけて、1で作った物を入れて熱しながら混ぜれば
キシャーン キシャーン ダダッダー
ダッシュ! ダッシュ! ダンダン ダ ダン
舞夏「!?」
ステ「!?」
イン「!?」
ドンッ!
火織「……………………」
オーレーハー グレートー
舞夏「……………………それは、スクランブルダッシュだー」
ステ&イン「「………………いくらなんでも、これはない」」
火織「うわぁぁぁぁぁぁんんんんんん!!!!!」
イン「ごちそーさまなのよ」ケフッ
舞夏(人体って不思議だなー)
ステ「だいたい、卵焼きはちゃんと作れるのにどうして横文字が入るとこうなるんだ?」
火織「お、おのれ魔術師ッ…………!」
イン「現実逃避はいけねーかも」
火織「インデックスまで!?」
舞夏「まあ、私にもプロとして意地があるからなー。このままじゃ終われないんだぞー」
火織「! じゃ、じゃあこれからも」
舞夏「どん! と任せておけー! 必ずや旦那の大好物をマスターさせてやるぞー」
火織「ああ、ありがとうございます!! ……あ、いやしかし、貴女にも時間の都合というものが」
舞夏「いいんだー。…………馬鹿兄貴がいないと、毎日にハリがないからなー」ボソッ
イン(まいか…………)
ステ(…………。ん?)
prrrrrrr
ステ「失礼。…………ああわかった。すぐ行く」ピッ
イン「誰からだにゃーん?」
ステ「なに、大したことではありません。……僕は少し出ますので、最大主教はここでお待ちを」
イン「むー。連れてかないと私も超長電話してやるのよな」ピポパ
ステ「我儘言わないでください。おい、神裂……」
神裂「ああ、師匠! 貴女に一生ついていきます!」
舞夏「ふふー。あがめろーたてまつれー!」
ステ「(だめだこりゃ)…………ん、あれは」
レイチェル「~~♪」
ステ「ちょうどいいところに、シスター・レイチェル」
イン「!!」ビクッ
レイ「あら、神父(ファーザー)ステイルではありませんか。皆さんも」コンニチワ
ステ「実は緊急の用件が入ってしまって。少し彼女を見ていてもらえませんか?」
イン「むー! 私は良いとはいってな」
レイ「まあまあ! じゃあ行きましょうか最大主教! ご飯を山でご用意しますよ?」
イン「山のような、と言って欲しいのよな!? っ、ていうか、たった超今お腹たっぷり食べて……」
レイ「はいはい行きましょうねー ほっぺたにしまっちゃおうねー」
イン「すっ、ステイル!! 結局、助けてほしいってわk」
ステ「アーメン」
イン「」
ステイルゥゥゥゥゥ!!!???
ニヒャクニンマエホドアリマスヨー
ステ(…………恐ろしい人だ)プカー
ロンドン 路地裏
ステ(……このあたりか)
スッ……スッ……
ステ「……来たか」
??「面と向かっては久しぶりぜよ」
ステ「やあやあ、よく帰ったね。……土御門」
元春「いやーステイルくん、素晴らしいプレゼントをありがとにゃー」ピクピク
ステ「君の置土産に較べればなんてことのない代物さ」ピクピク
元春「おかげで舞夏の元に戻ってくるのが一月ばかり伸びちまったぜい」ギロッ
ステ「……御夫人には申し訳なかったがね、あれは自業自得と言うんだ」マケジトギロッ
元春「なんのことかにゃー。そうそうこないだフィアンマから新店舗の招待券が届いて」
ステ「それのことだそれのっ!! くそっ、ただでさえ問題は山積みだっていうのに!」
元春「あ、お前の分も同封されてたぜい。今度一緒に中国nアチョーーーーーッ!!!!!」ボボボボボッ!!
ステ「あの野郎ッッ……!!! なにを全世界展開なんてしてるんだ!!!」
元春「……そう言ってやるな。これが今奴の目に映ってる世界の在りようなんだ」プスプス
ステ「君が掛けさせた色眼鏡に映ってる世界だろうがッ!! どんだけピンク色のレンズなんだ!!」
元春「いやー相変わらずよくキレるツッコミで安心したぜい」ハハハ
ステ「ああ確かによくキレてるよ僕は!! ……もう、正直疲れた」ゼェハァ
元春「インデックスの護衛にか?」
ステ「…………そういう聞き方はないだろう」
元春「はっはっはっ、冗談ですたい」
ステ「……ちっ」シュボッ
元春「おっ、オレにも火ィくれよ」スッ
ハー プカー
ステ「……」
元春「その分なら、インデックスを守る気持ちに揺らぎはないんだろう?」
ステ「当然だろう。愚問の極みだね」
元春「……たとえあいつの心に、いまだに『だれか』が棲んでいても、か?」
ステ「繰り返す。愚問だ」
「それが、僕の生き方だ。遠い昔に誓った、ね」
元春「……死んでも、いや『死ぬまで』変わらぬ頑固者だな」
ステ「何とでも言え」
元春「もう言うことはないにゃー。さ、愛しの愛しの舞夏とご対面だぜい」ウキウキ
ステ「おい待て、土御門。僕の方にはまだ聞くことが残ってるぞ」
元春「なんですたい?」
ステ「とぼけるな、君の『仕事』のことだ。もう終わったんだろう? 僕ぐらいには教えても……」
元春「終わったから、戻ってきた。そんなことを言った覚えはないな」
ステ「なに? だが君は」
元春「オレの今回の仕事は、土壌づくりだ。本番はこれから『やってくる』」
ステ「……前に言ったな? 今回の件は、めずらしく私情を絡めていると」
元春「…………ああ、そうだ」
ステ「……めずらしい、ということは御夫人ではない?」
元春「……そうなるな」
ステ「ではいったい何のために、いや誰のために動いた、土御門元春?」
元春「そうだな……間違っても、ダチ、ではない。仲間というのも少し違う」
ステ「……じゃあ、なんだ?」
「『共犯者』……そう呼ぶのがしっくりくる、変態野郎さ」
ステ「結局、明確な答えになってない気がするな」
元春「んーそれじゃあそうだな……こいつはサービスだ」スッ
ステ「……この封筒はなんだい?」
元春「今回の仕事の報告書だぜい。一応お前はオレの上司だからにゃー」
ステ「君に上司扱いされたことなど前世まで遡っても記憶にないんだが……というか、初めに出せ」
元春「それじゃあお話があっさり終わっちまうぜい」
ステ「早く終わってなんの不都合があるっていうんだ……?」※作者にあります
元春「さてと、それじゃあ今度こそ」
イン「あーーーーっ!!!! こんなところに居たかもー!」
ステ「最大主教!?」
元春「おう、久しぶりだぜい、インデックス」
イン「もとはる! いつ帰ってきたのよな?」
元春「つい今朝の便でにゃー。……舞夏は、元気か?」
イン「それは超本人に聞くべきかも! ほらこんなところに居ないで! 舞夏を待たせちまうんだよ!」
元春「わかったわかった、すぐ行きますたい。お前はステイルに用があったんじゃないか?」
ステ「! なにかあったのですか!? ……いやそもそも、何を一人でこんなところまで!!」
イン「レイチェルから逃げ……い、いつまでも帰ってこねーから捜しに来たんだにゃーん」
元春(アイデンティティーの危機を感じるにゃー)
ステ「護衛を捜していて危険な目に遭ったら本末転倒でしょう!」
イン「むー! 結局、ステイルは過保護すぎるって訳よ!
だいたい私には『歩く教会』があるから超安全なのよな!」
ステ「突然空から幻想殺しでも降ってきたらどうするつもりです!」
イン「なにそれこわい。それなんてベツレヘムの星なのである?」
元春「(……頃合いかにゃ)夫婦漫才してるところ悪いけど、オレはお先に行くぜい?」
イン「漫才じゃないかも!」
ステ「夫婦でもないよ!」
元春「(息ぴったりですたい)ああそうそう、インデックス、ちょっとお耳を」ゴニョゴニョ
イン「?」フムフム
ステ「……おい、何をしている?」
元春「おいおい、これぐらいでステーキにされちゃあたまらんぜよ。じゃ、あばよ」ダッ
ステ「……なんだったんだ?」チッ
イン「…………」ヒョコヒョコ
ステ「どうかしましたか? というか、今いったい何を……」
イン「その封筒、見せて欲しいかも」
ステ「な……!?(しまった! 彼女に『裏側』など見せるわけには……!)」
イン「あ・や・し・いのであるー!」グイッ
ステ「ま、待てそれは!!」クッ!
イン「いいから見せるのよな!」ムキー!
バサッ バラバラバラ
ステ(ああっ! やむを得ん、こうなったら消し、炭、に…………?)
『新装開店!! ベツレヘムロンドン店VIP席御招待券!! これであなたも神の右席!?』
ステ「」
イン「………………」ギラリ
ピラッ
『騙して悪いが、これも仕事(?)ぜよ』
ステ「」
イン「……………………………………すている?」シャキーン
ステ「」
ガブリッッッ!!!!
「謀ったなぁぁーーーーっ!! 土御門ォォォォォ―ーーーーーーーーッッッ!!!!!!!」ドクドクドク
「どういうことなんだぜい!? 私のメイドじゃ不満なのかにゃー!? 白状してもらいますたい!!」ガジガジ
「不幸だぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!!」
OUT
AIM剥奪(ステイル&神裂がなにげに矯正)
IN
だぞー ←New! だにゃー ←New!
ツ・ヅ・キ・か・く・て・い・ね
――聖なるかな、聖なるかな――
荘厳な空間に賛美の祈りがこだまする。
聖ジョージ大聖堂には多くの十字教徒が詰めかけ、壇上の司祭と共に祈りを捧げながらも――
ひと際、響き渡る清廉な声に誰もが聞き入っていた。
やがて祈りが終わりを告げると、司祭が信徒にむけて祝福の言葉を授け、ミサは閉祭となる。
「あなたに、祝福を」
ミサを執り行った司祭――イギリス清教最大主教、インデックスは列をなす会衆ひとりひとりを祝福する。
ステンドグラスから射す陽に融ける銀糸。
エメラルドよりなお碧の深いくりくりとした瞳。
愛らしい唇から紡がれるやわらかな言の葉の調べ。
そしてなにより、悪魔をも蕩かしてしまいそうなその微笑みの輝き。
天使と見まごう美貌に、老若男女を問わず感嘆の息が漏れる。
ある年若い青年など、恍惚とするあまりその幽かに眩いてさえ見える手をとり、口づけを捧げようと――
――できなかった。
「祝福は、最大主教手ずからなされます」
祭壇の陰にひっそりと佇んでいた黒い神父が、青年と最大主教の間に瞬きもしないうちに入っていた。
一度見れば忘れないような灼髪、二メートルを越すであろう長身。
なぜだか彫られたバーコードの直ぐ上の眼は、その髪より少しだけ暗い――焔色。
その風貌に反して周囲の誰もが接近にすら気づかなかった影のような男は、一切の感情を顕わさずに続ける。
「……どうか一度、お引き取りをんんッ!!!????」
…………ところがいったいどうしてしまったのか、突如として男の無表情が著しく歪む。
我に返った青年は慌てて謝罪し、羞恥に耐えかねて聖堂を飛び出してしまう。
しかし会衆の関心は既に青年ではなく、鳥の首を絞めたような切ない叫びをあげ、蹲ってしまった男の方に集っている。
異様な事態に誰もが声をかけかねていると、やがて男がギ、ギ、ギ、と首だけを後ろに回した。そこには――――
――男の陰になって、衆目から隠れていた最大主教の、つい先ほどまでとは、まるで異質な――
「私の視界に、入らないで欲しいかも。………………変態」
――――悪魔をも畏れさせるような、ドス黒い微笑みが煌めいていた。
三時間後 『必要悪の教会』寮 食堂
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ
ヒートアップシテキタデゴザイマスヨー!
ダレダコイツニノマセタノハー!
イチバンタテミヤ、イックノヨナー!
ステ「 」
アニェーゼ「ゴキュッ、ゴキュッ、ぷはーっ! で、どうしちまったんですかい? あれ」
ルチア「親父臭いので自制してください。なんでも、さきほどのミサで最大主教となにかあったとか」
ミサカ13854号「……今にも死にそうな、いえ終わりがないのが終わりと言わんばかりの
表情です、とミサカは神父(ファーザー)ステイルの心境を分析します」
アニ「よくわかんねーですけど、的を射た表現ですねえ。……おや?」
トコトコトコ
アンジェレネ「ふぁ、ふぁ、神父ステイル! あの、元気出してください!」
ステ「 」
アニ「おっ、アンジェレネがここぞとばかりに行きましたよ!」ニヒヒ
ルチ「まったく。シスター・アンジェレネも、あんな煙草臭い男のどこがいいのでしょうか」ナゲカワシイ
13854「まあ、神父ステイルはどうやらお義兄様の病気がうつったようですので、とミサカは事情通ぶります」
アン「い、嫌なことはお酒を飲んでぱぁーっと、忘れちゃいましょう?」
ステ「 」
アン「こ、これ、『すぴりたす』って言う名酒らしくて! つ、土御門さんからもらいました!」
アニ「おおっ、飲ませて潰してお持ち帰りですか。アンジェレネも大胆じゃねーですか」ヒュー!
ルチ「嘆かわしい。全く、嘆かわしい! 禁欲精神の欠片もない!」クワッ!
13854「……ツッコミどころはそこではない気がします、とミサカはお二人にツッコミを入れます」ビシッ
アン「さ、さあ! ふぁ、神父ステイル、どうぞいっぱ」
ステ「…………t……………………ど…………?」
アン「へ?」
ステ「つ……ち……み……か……ど……?」
アン「はい? つ、土御門さんがなにか?」
アニ「?」
ルチ「?」
13854(だいたい予想はつきました、とミサカは予め耳を塞ぎます)
「つゥゥゥゥちィみィィかァどォォォォォォくううううンンン!!!!???」
アン「ひ、ひぃぃいっ!!?」
アニ「」
ルチ「」
13854(神父ステイルがもやし化してしまいました、いや元からか、
とミサカはセルフツッコミを入れます)ビシッ イテッ
ステ「土御門の馬鹿はどこだ!!!」
アン「え、え…………。つい先ほど、奥様と一緒に中国へ旅行に出たとか」
ステ「畜生めぇぇーーーーっ!!!」
アン「あ、あ、あ、ご、ごめんなさぃぃっっ!!!」
ステ「!!」ハッ
ステ「す、済まない。君に怒鳴ったわけではないんだ……」
アン「い、いえ。私もついビックリしてしまって…………し、失礼しました」
ステ「君が謝ることなど何ひとつない。見苦しいところを見せてしまって、済まない」ペコリ
アン「あ、い、いえ。こちらこそ……」
ステ「いや、だからそこで謝られると僕の立場がだね……」
アン「ご、ごめんなさいっ!」
ステ(……まずい、無限ループだこれ)
13854「女性を困らせるものではありませんよ神父ステイル、とミサカは大人の女な忠告をします」
ステ「あ、ああ! シスター・ミサカか、ちょうどいいところに」
アニ「そうやってすぐ誰かに頼るのはヘタレくせーですよステイルくんー?」
ルチ「ことが女性問題だけにより際立ちますね……汚らわしい」
ステ(あれ、僕ぜんぜん助かってない? 状況悪化?)
アン「し、シスター・アニェーゼ!? まさか見てたんですか!?」
アニ「見てたも何も、あんな馬鹿でかい叫び声が上がっちゃあ注目しないわけにも……」
アウト! セーフ! ヨヨイノヨイ!
オルソラ「また負けてしまったのでございますよー」アハハハ
建宮「いーやッふうゥゥーーー!!! 勝ったのよなー!
さあオルソラ、次はいよいよその修道服よな!」
オル「わかりましたでございますよー」ウフフフ
ヌーゲ! ヌーゲ! ヌーゲ! ヌーゲ!
建宮「うっひょー! 眼福眼福なのよなー!」
チョンチョン
建宮「…………ん?」
五和「たてみやさん」
建宮「おお五和、いいところに! 次はおまえさんも」
五和「これが、ヒトを殺すってことです」
建宮「へ?」
コノメニウー
------------------------------Last-Ark Finish---------------------------------
アニ「……いえ、あっちのことは置いときましょう」トオイメ
13854「結局のところ、ミサカ達は最初からデバガメしていましたが、とミサカは真実を告白します」
ルチ「別に私は覗くつもりなど……」
アン「あ……あうう…………」シュー
ステ「そこらへんにしておけ、君たち。シスター・アンジェレネも困っているだろう」ヤレヤレ
アン「ふぁ、神父ステイル…………」
アニ「……なるほど、こりゃ病気ですね」
ルチ「……汚らわしい」
13854「処置なしなんだね? とミサカは大恩人のモノマネをしてみます」
ステ(……いくらなんでもそこまで言わなくてもいいだろう)
ステ「とにかく、礼を言うよ。シスター・アンジェレネ」
アン「い、いえ!お力になれてよかったです!」
ルチ「最大主教とのことはよろしいのですか?」
ステ「ん……まあ……なんとか…………なるような、ならないような…………」ズーン
アニ「……それにしてもなにをやらかしたんですか、いったい」ハァ
13854「結局ミサカたちは事情をよく知らないのですが、とミサカは暗に説明を求めます」
ステ「……いや、なんというか、その…………」
最大主教官邸 『ランベスの宮』
イン「わかってる、わかってるよ……でも、あんな言い方って…………」
コンコン
イン「!」
火織「インデックス、ここですね? 入ってもいいですか?」
イン「ど、どうぞ!」
ガチャ
火織「失礼します。……? 電話中でしたか?」
イン「う、ううん! もう終わったにゃー」パタン
火織「そうですか。みんな寮で楽しそうに……
いや、少しハメを外しすぎですが、楽しくやってますよ?」
イン「…………みんなには悪いけど、結局、たまにはひとりになりたいって訳よ」
火織「……ステイルですか」
イン「………………うん」
火織「さすがに可哀想でしたよ、あれは」
イン「う…………でもでも、悪いのは超すているかも」
火織「あー、その…………間違ってたら申し訳ないんですが」
イン「?」
火織「もしかして…………嫉妬ですか?」
イン「…………意外だにゃー。まさかかおりが気付くなんて」
火織「酷い言いようですね!?」
イン「自分で言うのもなんだけど、正直気付いてなかったのはかおりくらいかもー」
火織「しょ、しょうがないでしょう!?
……その、あなたはいまだに『彼』を、という先入観がですね」アタフタ
イン「…………はぁぁ、である」ヤレヤレ
火織「な、なんですかその溜め息はー!」ウガー!
火織「は、話を元に戻しますが」
イン(逸らしたのはかおりですたい)
火織「いい加減に許してあげてもいいのではないですか? ステイルからなんとか聞き出しましたが、
これはどう考えても土御門の謀りです。わかっているのでしょう?」
イン「まあ、確かに最初は思わず噛みついちゃったけど、ちょっと考えればわかる訳よ」
火織「……ならばむしろ、あなたが謝るべきなのでは?」
イン「ううっ!! で、でもでも、さっきのアレは超ひどかったんだぜい!」
火織「さっきの、アレ?」
イン「……んー、なんていうか、そのー…………」
--------------------------------
ミサの始まる少し前 聖ジョージ大聖堂
イン『…………』
ステ『…………最大主教、ご準備の方は』
イン『…………万事、整っているぞー』
ステ『……まだお怒りですか』
イン『超別に…………』ブツブツ
ステ『何度でも言いますが、僕は嵌められたんだ、土御門に! …………ん?』
イン『……やっぱり、もう一度もとはるやさいじに頼んで……』ブツブツ
ステ『…………ッッッ!!!! いいですか!!』プチッ
イン『ひゃ、ひゃあっ!! なんであるか!』
ステ『僕はもう!! 金輪際!!! 貴女のあんな姿はお断りですっ!!!!』
イン『~~~~~~っっ!!!!』プチッ
イン『こんのっバーコード!! ロリコン!!! ……ヘタレ魔術師!!!!』
イン『それならいかがわしいお店でもなんでも行って満足してくるといいかも!!!』
ステ『な、な、なんだとっっ!!!?? ど、どうしたらそういう話にっ!!』
ゴーン ゴーン ゴーン
ワイワイガヤガヤ
ステ『!! も、もうこんな時間か!?』
イン『…………ふん』
ヒョコヒョコヒョコ
イン『それでは皆さま。ミサをはじめるにゃ……ゲフッゴホッ! ……ミサを執り行うかも』
ステ『くっ、くそぉ…………』ケハイケス
-------------------------------------------------
シスターズ「……………………なんていうか」
火織「……………………その」
「「「「「付き合ってられません」」」」」
ステ「…………」
イン「…………」
「「…………すいませんでした」」
聖ジョージ大聖堂 廊下
スタスタ
ステ「…………」シスターズニオイダサレタ
ヒョコヒョコ
イン「…………」カオリニオイダサレタカモ
ステ「あ」
イン「あ」
イン「あ…………その。さっきは……」
ステ「申し訳ありませんでした」
イン「!」
ステ「……お互い、言いたいことはわかってると思いますので。
…………僕からは、これだけです」
イン「……そう、だね。じゃあ私も、ごめんなさい」
ステ「………………まだ、料理は残ってると思いますよ」
イン「………………うん。じゃあ、超行くんだよ」
ヒョコヒョコ スタスタ
コツコツと音を立て、人気のない廊下を二人は会話なく歩む。
インデックスの脳裏をよぎるのは、先ほどの火織とのやりとり。
『……その、あなたはいまだに『彼』を、という先入観が』
(先入観、か。…………結構するどいかも、かおり)
そして、すぐ隣を歩く青年の顔をちらりと見上げる。
(だから、なんだよね…………)
(だから、きっと貴方は………………)
インデックスの苦悩を知る者は彼女以外に誰もいない。
『彼女』以外には、誰も。
超続きます
OUT
原子崩し(にゃーで上書き)
クワガタ(五和が矯正)
IN
ない……だと……?
やべ、どうしよ
聖ジョージ大聖堂
ステ「……」ソワソワ
イン「……」ソワソワ
元春「おまえら、少し落ち着け」
イン「いやだって……」
ステ「なにかこう、もの凄く久々のお仕事な気がしてね……」
元春「……まあ、わからんでもないが」
イン「それになにしろ、内容が内容だしなー」
ステ「……ロシア成教総大主教、クランス=R=ツァールスキーか。
本当に何も掴んでないのかい、土御門?」
元春「掴んでるなら旅行になんざ行かないし、帰ってくるつもりもない。
……舞夏をがっかりさせたのだけは、ほんと苦渋の決断だったけどにゃー」ギリッ
ステ(御夫人には悪いがざまあ)
イン「しかし人前に顔を出さねーことで有名な総大主教が直々に、なんてにゃー」
ステ「前々から不思議ではありましたがね。今のご時勢、呪術に対する警戒としては過剰な気もするし……」
元春「どうも総大主教が、と言うより側近の一人が止めているそうだ。俺でも顔写真すら手に入れられなかった」
ステ「…………マジかい」
イン「それはただ事とは思えねーかも……」
元春「お前ら、人をなんだと思ってるんだ?」
元春「…………そろそろ時間だ」
ステ「むこうの警護はどうなっている?」
元春「こっちが二人だからな。この場では同じ人数、ということで納得させた」
ステ「二人、か……」
イン「そういえば昔、とうまからロシアにはとんでもねー魔術師がいるって聞いたんだよ」
ステ(そういえば、奴もロシア出身ではあったな……)
元春「ま、心配しなくてもそう無茶な真似をロシア成教がするとも思えんが……」
コンコン
「「「!」」」
ロシアセイキョウカラノオキャクサマノオナリダゾー
イン「どうぞ、入るのであ……(ゲシッダニャー)お、お入りください」
ステ(やはり不安だ…………)キリキリ
ギギギギギギィィッ
(…………こ、)
(これは………………)
ステイルと土御門は、等しく言葉を失った。
いや、二人は隣にいるインデックスを見慣れているから、その程度で済むのである。
何の免疫もない一般人が視界に入れれば、それだけでひれ伏したくなる中性的な美貌。
後ろに付き従う護衛であろうか、二人の修道女もかなりの美女ではあるが、
主の方に至ってはもはやそういう次元ではない。
十字教徒としては畏れ多いことだが、あえてなにかに例えてしまうなら――
――神ではないか、これは。
青年の視線は、初めから同種の輝きを持つ女性にのみ向けられている。
インデックスはそこから瞳を逸らすことなく毅然と応じる。
痛いほどの静寂の中、ついに総大主教が口を開く。その第一声は――――
「……………………ハラショー」
「……………………………………は?」
「ハラショー! おお……ハラショー!!」
「え…………え……? あ、あの、総大主教様?」
「なんと美しい。いや、写真と実物ではこうも違うものか!」
(どういう…………)
(ことだってばよ……だぜい)
先ほどとはまた別の静けさに包まれた聖堂の中、
全く空気を読まずに総大主教、クランス=R=ツァールスキーがインデックスに迫る。
あまりのことにステイルと土御門が呆気にとられている間に――
(しまっ…………!)
クランスはインデックスの手を恭しく取り、躊躇うことなく口づけた。
ビキビキビキッ!!!!!!!
部屋のこちら側と向こう側からそんな音がするのを、土御門は確かに聞いた。
と同時に、此方の気温が著しく上がり、彼方は零下の如く冷えこむ。
このままでは明日の一面ニュースを総大主教殺人事件が飾ることになる。
土御門がそう危惧して頭を回転させようとしたその時、護衛の修道女の片割れと目が合う。
すると女は、どこか面白がっているような――底知れぬ笑みを浮かべた。
(……どういうことだ)
寒暖差が見せる蜃気楼というわけでもないだろう。
現にもう片方のシスターと来たら、今にも飛び出しそうな憤慨した顔で――顔?
(この顔は…………?)
その情報が意味するところを悟ったとき――
イギリス清教一の曲者、土御門元春はこの状況の全貌を理解した。
「ああ失礼、つい感極まった! お初にお目にかかる、Index-Librorum-Prohibitorum殿。
ロシア成教総大主教をつとめている、クランス=R=ツァールスキーという!」
その間にも、紅潮した貌で総大主教は絶好調でしゃべくり続けている。そして――――
「え、あ、その、ご丁寧にどうもなんだy」
「この度突然の訪問をした理由は一つ!」
「は、話を聞いてほしいかm」
「私と婚姻して、生まれてくる子の母親になってはくれないか?」
――――三たび、時が凍る。
「「死にさらせぇぇぇぇぇーーーーーーーーっっっ!!!!!!!!!」」
時が動き出した刹那、ロシア成教のトップは炎剣とバールのようなものに吹き飛ばされ、星になった。
「………………神は死んだ」
――誰かがそう呟いたとしても、全く無理のない状況だった。
クランス「何をする、サーシャ? 痛かったぞ」
サーシャ「第一の解答ですが、こちらの台詞です!
何をいきなり子作り宣言などしているのですか!? 見てて痛々しいんですよ!!!」
ステ「くそっ、ケロッとしやがって……なぜだ?」
イン(強力な霊装? ……それともギャグ補正?)
元春(…………おそらく後者だにゃー)
クラ「ワシリーサが言ったのだ、愛を伝えるならそこ(子作り)までを前提にするべきだと」
サー「クソ上司ィィィーーーッッ!!!!」
ワシリーサ「あらあらサーシャちゃん、いけないわ。
宗派の代表として、あまり大声を上げると品位と言うものが損なわ」
サー「第二の解答ですが、トップ自らが既に株を暴落させてるんですよ!!
さらに第一の私見ですが、そもそも訪問目的自体がメチャクチャです!」
クラ「そこに愛があるのだ、神の教えに背いてなにが総大主教か? なあ、インデックス殿」
イン「え、えー……。そこで私に振られても困っちまいます……」
クラ「はは、照れ隠しなどしなくとも貴女は十分愛らしい」
ステ「」チッチッチッ シュボッシュボッシュボッ
サー「第三の解答ですがそれはドン引きされてるんです!! あと後ろを見てください総大主教ーーッ!!」
元春「……つまるところあれか。こんなことの為に、
オレは舞夏との旅行をキャンセルしてきたってわけか……」
サー「第一の質問ですが、あなたは?」
元春「ああ、『アンタ』のほうはオレに会うのは初めてだったか。
……初めまして、『神の器』」
サー「!! …………第一の質問に補足します。 あなたの、名前は?」
元春「土御門元春、だ。よろしく、お嬢さん」
サー「…………第四の解答ですが、その節はご迷惑をおかけしました」ペコリ
元春「ま、終わったことだ」
ステ「ゼェゼェ…………なんの、話だい?」プスプス
クラ「なんだ、その男と知り合いなのかサーシャ」ボロボロ
元春「…………なーに、ちょっとした顔見知りって程度ですたい」ナァ?
サー「え、ええ。第五の解答ですが、以前少し、その……海水浴に」
ワシ「なぁぁんですってえええっっ!!! サーシャちゃんの、水着姿ぁあ!!?」
サー「喰らいつくな鼻息を荒げるな顔が近いんだよこのクソ上司ィィーーーー!!!」
ステ(すさまじい親近感が湧く)
イン(…………む)
イン「結局、ばたばたしてて自己紹介もロクにできてねーって訳よ」
ワシ「そういえばそうねぇ。なら早速私から……」
サー「第一の自己紹介ですが、ロシア成教『殲滅白書』のリーダー兼、総大主教補佐の
サーシャ=クロイツェフと言います。以後お見知りおきを」
ワシ「ぐすっ、ひどいわサーシャちゃぁん……」
ステ「その若さでかなりの重職ですね。よほどの腕前とお見受けしますが(唯一まともに話が出来そうだ……)」
イン「…………」
サー「第六の解答ですがそのようなことはありません。
……その、総大主教が目をかけてくださったからです。
解答に補足すると、残念ですが私の魔術などそこのクソリーサに比べれば……」
ワシ「はいはーい!クソリーサこと『殲滅白書』の特別顧問、ワシリーサでーっす☆」
サー(殴りたい、バールのようなもので)
イン「ぬうっ、ワシリーサ…………!?」
元春「知っているのかインデックス!」
イン「逃亡生活へと旅立つ弟子に、お手製カナミンドレススーツを餞にしたことで一躍、
その筋で有名になった……。人呼んで、『ロシア一ぶれない女』!!」
サー「第七の解答ですがってわぁぁぁあああ!!! どうしてそんなことまでぇぇ!?」
ワシ「てへっ☆」
サー「…………第一の宣告です、死ねっっ!!!」ギラリ
ワシ「きゃー☆ サーシャちゃんったらこ・わ・い♪」ダッ
キョウトイウキョウハキサマヲヤツザキニシマス!
ハゲシイノガオスキナノサーシャチャーン?
クラ「では私の番だ。改めて、ロシア成教総大主教、クランス=R=ツァールスキーと言う」
イン「…………ものすごーく、慣れてる感じがするのである」
ステ「……まったく他人事と思えない」
元春「おれはどっちかというと、ワシリーサのほうに親近感が湧くぜい」
ステ「ああそりゃそうだろうよ!!!」
イン「それで、総大主教様は……」
クラ「クランス、と気軽に呼んではくれないか? こちらも出来ればインデックス、と」
ステ「……………………」ギリギリ
元春(おお、こわいこわい)ニヤニヤ
イン「……クランスは私を愛してるっていうけど、いったいどうしてかなー?」
クラ「まあ有り体に言ってしまえばひとめぼれ、と言うやつだ」
元春「こいつぁストレートだにゃー」ヒュー!
イン「いやだから、これが初対面のはずだにゃー。どこで私を知ったってんです?」
クラ「…………? おい、そっちの男」
元春「へ?」オレ?
ステ「どうか、したのですか?」ヒクヒク
クラ「なぜ、インデックスと語尾が同じなんだ? それが噂のペアルックというモノか?」
元春「…………はぁ? なにいっt「なんだとぉおお!!!」……す、ステイルくーん?」
ステ「それは本当か、土御門!? 御夫人というものがありながら、彼女に手をッッッ・・・・・・!!!」
元春「ちょまっ、落ち着け! こいつ、錯乱してるにゃーーっ!!?」
ギャーギャーギャー シネー! ホーラコッチコッチー!
クラ「宗派が違えど、どこも変らないものだなぁ。……おやインデックス、上機嫌そうだが」
イン「ふふふっ、別にっ」ニコニコ
クラ「うっ!(か、可憐だ…………)そ、それは何より」
イン「えへへー」ジー
クラ(いったいさっきから何を見て…………。 ! これ、は…………)
数分後
ステ「ハッ…………僕はいったいなにをしてたんだ?」ハテ
元春「つ、月夜ばかりとおもうなよ、テメェ……」グフッ
クラ「そうそう。貴女をどこで知ったのか、だったな」
イン「結局、私の方はあなたのことをよく知らない訳よ」
クラ「それもそうだろう。私は貴女の写真を見て心奪われたんだ」
ステ「写真…………?(もしや……)」
クラ「ほら、これだ」ピラッ
『メイド喫茶ベツレヘム新商品! あのイギリス清教最大主教も』ボウッ!!
ステ「フィアンマェ……もう叫ぶの疲れたな……」ズーン
ワシ「それでクランスちゃんが会いたい会いたい、って言うからしょうがなく来ちゃった☆のよ」ピンピン
サー「『来ちゃった☆』ではありません!」ゼェハァ
クラ「はは、ワシリーサ。それではまるで私が駄々っ子のようではないか」
サー「第八の解答ですが、行動力がある分駄々っ子よりタチが悪いんですよ!」ゼェゼェ
クラ「だがまぁ、確かに突然の訪問は非礼だったし、なにより……」
イン「なにより……?」
クラ「貴女の人となりをもっとよく知って、それから挑むべきだった、と今は思う」
イン「!」
サー「…………」
クラ「先ほどの求婚は、どうか忘れて頂きたい。
まずは友人として、ティータイムでも共に過ごせれば望外なのだが」
イン「………………」
クラ「……………………」ゴクリ
イン「もとはる。まいかを呼んできてくれるかなー?」ニコ
クラ「……!」
元春「了解。ついでに、オレはこれで退散させてもらおう」
ワシ「じゃあ私も。インデックスちゃん、クランスちゃん。仲良くやってねん」
ステ「……僕は、すぐ外に控えさせていただきます」
サー「…………失礼します」
イン「ありがと、みんな」
クラ「済まない、気を遣わせて」
ギギギギギギギィィッ
バタンッ!
元春「舞夏、二人分の茶会だ。用意してくれ」
舞夏「了解だー。お客様はなにがお好みですかー?」
ワシ「クランスちゃんはオレンジペコにプリャーニキっていうお菓子が好きなんだけど……」
舞夏「ご安心をー。一通り用意してございますー」スッ
シツレイシマスー
ワシ「…………まあ、なんてよく出来たメイドさん。お持ち帰りしたいわぁ」
元春「オレの妻だ。それはご勘弁願いたいな」
ワシ「……噂はほんとだったのねぇ。イギリス清教の懐刀は頭に馬鹿のつく愛妻家だって」
元春「いやいやそちらこそ。倒錯趣味のあるロシアの裏のドンに知っていてもらえたとは光栄だ」
ワシ「ドンだなんてそんなおっかなーい♪ それに倒錯趣味なんてないわよぉ」
元春「総大主教が人前に出ないのは、『殲滅白書』のワシリーサがその美貌を
独占するため……なんて噂を思い出したな」
ワシ「独占だなんて、そんなぁん。私とサーシャちゃんによる複占よぉ」ズゴン!
サー「だ、だ、誰が総大主教を我がものにしてるですってぇ!?」デンドウドリルノヨウナモノ
ワシ「もうもう、そんなに照れなくてもぉ☆」ダッ
元春「おいおい、オレを巻き込まないでほしいぜよ」ダッ
サー「くっ、逃げ足の速い…………!」
ステ「…………貴女も苦労しているようですね」シュボッ
サー「第九の解答ですが、はぁぁぁああっ…………」
ステ「心中、お察しするよ。……中の二人のことも含めて」フー
サー「!! だ、第二の質問ですが、そんなにわかりやすいですか……?」カァ
ステ「ええ、結構。……見慣れた光景です」プカー
サー「第一の独言ですが、……かなり、複雑な気分です」
ステ「…………」
サー「今から十年前、とある事件の後遺症に悩み、組織に、国に追われる身となった
私の味方になってくれたのは…………ワシリーサと、総大主教だけでした」
ステ「後遺症?」
サー「大規模魔術のようなもの、です。私自身はあまり記憶にないのですが、
それ故に有益な解決策も見いだせず……十年前の私は、途方に暮れていました」
ステ「……魔術による、後遺症…………」
サー「それでもあの方が――クランス様が、仰ってくださったから」
『諦めるな。私が、総大主教である私が、なんとかして見せるから』
サー「私は、あの方の御側にいようと決めたのです」
ワシ「あの頃は、クランスちゃんもガタガタだったのよねぇ」
元春「第三次世界大戦か……あの時は、ロシアも大きく揺れたな」
ワシ「ローマから糸を付けられた人形。そんなモノに自分の無力さを思い知らされたクランスちゃんは、
目の前のあの子を救おうとすることでなんとか自分を保つしかなかったのよ」
元春「共依存関係、ってわけか」
ワシ「クランスちゃんは方々手を尽くして……時に科学の力まで借りて、
サーシャちゃんの体を『医学的には』ほぼ正常な状態にまで戻したわ」
元春「そして……最後の一押しに来たって訳だ」
ワシ「さすが…………お見通しというわけね」
-----------------------------------------------------------------------------------
サー「え?」
ステ「『禁書目録』という言葉は知っていますか?
……我らの最大主教の脳には実に、十万三千冊の魔道書が詰まっています。
かつては、その力を求める魔術師は枚挙に暇がありませんでした」
サー「え…………? じゃ、じゃあクランス様は……」
---------------------------------------------------------------------------
イン「…………」
クラ「……どうだろう、承知してもらえないか、インデックス?」
イン「…………ふふ。私の力で良ければ」
クラ「お、おおぉ……! 有難い、本当に、礼を言う!!」パァァ
イン「まだお礼には早いにゃー。魔道書の利用には慎重に慎重を重ねる必要があるんだよー」
クラ「それでも! やっとサーシャに人並の幸せを贈ってあげられるかもしれない……!」
イン「……本当にサーシャを溺愛してるかも。
ってことはあれであるか、さっきのアレは嘘だったのかな?」
クラ「いやいや、ここに来る時はサーシャを驚かせるための方便だったが……一目見て、つい」
イン(つい、であんなのが飛び出すのはよほどの真性ぜよ)
クラ「私にとってサーシャは、隣に居なくてはならない存在だが……。
………………自分でも、その先はよくわからないんだ」
イン「……だったら結局、サーシャのためって訳でもないけど、はっきり言っちゃうかも」
クラ「!」
「――ごめんなさい。私には、他に愛している人がいるから」
「だから貴方の気持ちには、答えられません」
「だから。友人としてよろしくなんだよ、クランス」
「ああ………………よろしく、インデックス」
------------------------------------------------------------
元春「しかし……考えてみればしてやられたな」
ステ「なにがだ?」
元春「無茶な要求を断らせてから本命を出す。交渉術の基本だ」
ステ「……! それじゃあ……!」
ワシ「あらもう、やだわぁ。そんな打算だけでやったことじゃないのよぉ☆」
サー「……第二の私見ですが、ツッコミどころ満載です。というかあなたがやらせたんですか!」
ワシ「まあ、クランスちゃんってば人間離れしてキレイだから。
万が一の場合は『ドッキリ大成功!』で収めるつもりだったんだけど」
ステ&サー「「収まるかぁっ!!!」」
ワシ「……本当はね。クランスちゃんにも対等なお友達を作って欲しかったの」
サー「…………え?」
ワシ「幼いころからご機嫌伺いの大人に囲まれて、少し育ったら道具扱いされて。
お次は監視の目に晒されて、自分の人生なんて無いも同然」
ステ「…………」
元春「…………」
ワシ「サーシャちゃんにもとーっても助けられてるけど。
そうじゃない、支えるのとは違う相手もいたらもーっと良いかな♪
……なーんて考えちゃったり?」
サー「ワシリーサ…………」
ワシ「あらサーシャちゃん? そーんな顔しなくてもぉ……」
ギギギギギィ
サー「あ……」
クラ「サーシャ!!」バッ
サー「く、クランスさま……」カァ
クラ「朗報だ、よく聞いてくれ!!」グイッ
サー「だだ、第三の私見ですが、かかか、顔が近いです……!」ワワワ
ワシ「ね? 心配しなくても、クランスちゃんの一番はサーシャちゃんよぉ♪」
ワシ「インデックスちゃんも、ありがとねぇん☆」
イン「……ふふ」
イン「友達だもん。当たり前かも」
その夜 『ランベスの宮』
ステ「失礼します、最大主教」
イン「うん……うん……じゃあ、またね」ピ
ステ「……お邪魔でしたか?」
イン「大丈夫かも。それで、どうー?」
ステ「女王陛下の許可も内諾ですが取りました。
研究協力の名目でロシア側の人員を受け入れられそうです」
イン「第一の解答だけど、ありがとなんだよステイル」
ステ「…………実際のところは、土御門と貴女の仕事ということになります。
僕はいつも通りにやるまで。しかし、本当に大丈夫ですか?」
イン「私なりに、クランスの人となりは見たつもりかもー。
それに第一の質問だけど、何かあっても守ってくれるんだよね?」
ステ「……………………当然です」
イン「ふふ、頼りにしてるのである! 技術的にも、丁度似たようなケースを調べてたところだから」
ステ「初耳ですね、それは」
イン「結局近い内にわかるから、楽しみにしてほしいって訳YO!」
ステ「……………………………………」
ステ「また胃薬増やしてもらうかな……」
OUT
窒素装甲(期限切れ)
IN
かつての痴女服 ←New!
ロシア最強の女 ←New!
続いちまうんです
ガアアアアアアアァァァァァッッッッ!!!!!!!!!!
黒々と煌めく巨竜の天を震わす咆哮が、峰々の果てまで突き抜ける。
と同時にいかな魔術か、炎が、氷が、雷が、ところ構わず降り注ぐ。
人知では決して抗えぬはずの怪物に、しかし選ばれし四人の勇者は血戦を挑んでいた。
「おのれ……好き勝手しおって!!」
一人は先代英国女王、エリザード。
身の丈を上回る太刀を携え、痛む躰に鞭打ち竜の眼前に躍り出る。
「待てい、一人で先走りたるは許さなきよエリザード様!」
また一人は先代イギリス清教最大主教、ローラ=スチュアート。
その桁外れの長髪ほど、とまでは行かなくともやはり身に余る大太刀を構えエリザードを援護する。
「みんなで力を合わせればなんとかなるんだZEい!」
そして現最大主教インデックス。
もはやバランスの成り立っていない長尺の業物を振り回す姿は、滑稽を通り越して愛らしい。
「…………………………」
……さらに、遠距離から黙々と竜の弱点を、しかも正確に射ぬき続ける男が一人。
「ええい、全員で頭に群がったら邪魔になるだろ!」
「邪魔と言いしならそちらのことよ!」
「ひゃっはー! インデックス様の活躍をとくと見るんだよ!」
「……」
シュン バスッ シュン バスッ
「秘奥義! 斬・空・天・翔・剣!!」
「完全に別作品でありにけりよ!?」
「あー!? エリザードに吹っ飛ばされたのである!!」
「…………」
キュインキュインキュイン シュン バスバスバスッ
「ぬぐわぁぁぁぁあああーーーー!!!!」
<<ああ! エリザードがやられし!>>
「くうっ、これは聖ジョージのドラゴンの一撃に匹敵するぞー! こうなったら……」
「粉塵をおくれ、ステイル=マグヌス」
「ステイル! 粉塵パワーよ!」
「第七の要求だけど、粉塵が欲しいんだよステイル」
「………………………」
「は……………………………………………………………………………………………………………………………ぁあ」
ほぼ一人で討伐に貢献していた男の口から、ギネス級の溜め息が漏れた。
ロンドン郊外 エリザードの別邸
エリザード「全くお前らが足手まといなせいで、またスネオを仕留めそこなったじゃないか」
ローラ「自分のことを棚に上げたり!? エリザード様がところ構わず気刃大回転するのが原因につき!」
イン「おかげで何回尻もちつかされたかわからないぜよ」
ステ「なんでだ……? どうして、どうしてこうなってる…………?」ズーン
エリ「どうしてって……たまにはヴィリアンだけでなく、私とも遊んで欲しいじゃないか」
ステ「そうです、僕らはあ・な・たの招待を受けたからここに参ったのです、先代」
イン「ステイルの解答に補足すると、とっても楽しいんだよ!」
ステ「貴女は少し黙っててください! ……それで、問題はあんただ」
エリ「?」クルッ
イン「?」クルッ
ロー「???」クルッ
ステ「貴様だぁああーーーッッ!!!」ボウゥ!
ロー「きゃわわああんんんっっ!!///」
ステ「気色の悪い声を出すなァァァーーーーッ!!!!」
ステ「よくもまあ、あれだけのことをして僕らの前に顔を出せましたね!」
ロー「あれだけの?」ハテ
エリ「こと?」ハテ
イン「?」ハテ
ステ「なんで貴女まで『?』なんですか!?」
ロー「可愛いくぁいいインデックスに会いたることの何が悪いの?」ダキッ ナデナデ ポニュッ
イン「えへへー」ダカレ ナデラレナデラレ ポニュッ
エリ「おお、なかなか壮観じゃあないかステイル? こっちに来ておまえも見てみろ」クフフ
ステ「黙ってろアンタ!!」
ロー「インデックスはこの通り、何も気にしてなきよ?」ネー
イン「ふふ、結局、ローラなら大丈夫な訳よ」ネー
エリ「こうして見ると、姉妹のようだねぇ」
ステ(実年齢は倍どころか二乗しても怪しいぞ……!)
ステ「くそっ、くそっ! なら! だったら!!」
ステ「どうして揃いも揃って太刀を担いでくんだ!!」
エリ「かっこいいだろ?」
ロー「かっこよきことよ」
イン「かっこいいかも!」
ステ「くそぉぉぉおおおおおーーーーっっっ!!!!!」
イン「うるさいよー、ステイルー」
ステ「こ・の・科学かぶれどもがあ!!」
エリ「お前さん、騎士団長に似てきたよ」
ステ「うぐっっ!!!」グサッ
ロー「だいたいステイルにおきても、かなりの腕前でありしことよ? まあ私の次ぐらいには」フフン
イン「そげぶ。まあステイルはいつも私に付き合ってるからだにゃー。
とうまやあくせられーたともよくアドパしてるんだよ」
ステ「ちょっ」
エリ「アwwwwドwwwwパwwwwwおまえww」
ロー「『科学かぶれどもが』キリッ …………wwwww」
ステ「死ねぇェェェーーーーーッッ!! 特にそっちの若づくりーーーーーっ!!!!」ブオオオンンッ!!
一分後
エリ「いかにここがロンドンで、お前だったとしてもねえ」
ロー「さすがにこの面子相手に三対一は無謀につきよ」
イン「ごめんね、ステイル……」
ロー「最初の『強制詠唱』でチェックメイト、哀れなりしステイル……」ヨヨヨ
エリ「さすがは世界胡散臭い女ランキング暫定第一位、しらじらしい」※二位はワシリーサ
ステ「な……なぜですか…………最大主教……」
イン「この二人はともかく、げーむ機が可哀想なんだよー」
エリ&ロー「「ちょwww」」
ステ「僕は…………こんな玩具に負けたっていうのか……?」
ステ「どうして……? な、なんで……? どうして僕の身にばかり、こんな理不尽が…………?」
エリ「まあ仮にステイルの炎の直撃を受けたとしても、そこは安心と信頼のDM社製品。
イノケンならともかく、五百や千℃の炎では小揺るぎもせんよ」
ロー「げに恐ろしき科学の力……連中め…………よくよく好きと見える……」
イン「面妖な、変態科学者どもめ…………」デアル
ステ(あんたたちの方がよっぽど面妖だよ)ボロッ
ロー「科学というか機械につきては実際、ステイルやインデックスの方が詳しきことよ?」
エリ「へー、そうなのかい。私のパソコンも新しいの見積もってくれないか?
ニコ動の再生速度がどうも納得いかなくてさ……」
ステ「(これでいいのか、イギリス王室……)……それは、回線速度の問題では?
最近の話題はついに実現してしまった滞空回線(アンダーライン)通信ですかね」
ステ(夢というか、恐怖の技術だが……)
イン「第一の解答だけど、私は別にそれほど詳しくはないんだよー。
でもけいたいでんわの進化には着いていってるにゃー」フフン
ロー「ふふ、それを使って最近はよく誰かと話しているの?」
イン「! そ、そうなんだよ! 学園都市には友達がたくさんいるから……」
ロー「………………そう。それはよきことよ」
エリ「?」
ステ「……?」
エリ「しかし、確かにステイルの知識はなかなかじゃあないか」
ステ「別に専門知識があるというわけではありません。
各国のトップニュースぐらいは先代も目を通しておいででしょう?
……滞空回線は学園都市の技術なんですよ」
エリ「しかし王室(ウチ)は宮殿の魔術防衛網が完璧だからか、そっち方面への興味が希薄でねえ。
リメエアぐらいか、騎士団の情報なんちゃらがどうとか言ってるのは……
おまえ、そのへんのセキュリティもなんとかしてくんない?」
ステ「はは、御冗談を。僕は僕の仕事で手一杯ですよ」ハァ
イン「結局、疲れてるステイルを最近よく見る訳よ」
ステ「いや、だから貴女が…………いえ、もういいです」ハァァァ・・・・・・
ロー「ふふふ、疲れたるならリフレッシュする必要がありて、ステイル」
ステ「今日に限っては貴女のせいで激しく疲れてるんですが」ヤツレ
ロー「まあまあそう言わず。久しぶりに二人で散歩などいかが?」
イン「へ!? ろ、ろ、ローラ?」
ロー「そんなに取り乱しては淑女失格につき、インデックス。……私を、信じてくれるのでしょう?」
イン「う、うん…………」
エリ「ん、行ってらっしゃい。じゃあ今度は二人でストⅦでもやろうじゃないか」ワクワク
ステ「…………この邸の警備は」
エリ「不備があると思うかい?」
ステ「……いえ。では行って参ります、最大主教」スッ
ロー「三十分ほどで戻りけるのよ」ファサッ
ステ(しかし相変らずの馬鹿長髪だ)
イン「……行ってらっしゃい」フリフリ
エリザード別邸周辺
スッ スッ スタスタ
ロー「懐かしきこと。昔もこんな風にあなたは後ろについてきにけり」
ステ「…………まあ確かに、懐かしいと言えなくもないですが」
ロー「インデックスともこうして? それとも、横に並びて?」
ステ「なにも変わらない。僕は最大主教の護衛です」
ロー「それは言い訳よ。横に並びても護衛はできしことよ」
ステ「……僕が、何に言い訳してると言うんだ」
ロー「私からは、目は離せぬとも、必要以上には近づきたくなきにけり。では、あの子とは?」
ステ「…………」
「あの子は、隣に来てくれとは言わないでしょう?」
けして油断してはならない相手の一言一言が、なぜかステイルの胸に妙に刺さる。
「あの子は優しいから。あなたの気持ちを慮りているから」
聞くな。ステイルは自らに言い聞かせる。目の前のコイツは、彼女を――――
「本当に、本当に。やさ、し、い…………」
「……………………」
「…………こ、んな私を、慕ってくれる。名を、呼んでくれる。抱き、ついて、くれる」
――――――――。
ローラ=スチュアートはインデックスという少女を、
かつて自らの手で生きながらの地獄に追いやった女だ。
――――しかし。
インデックスが首輪の呪縛から解放されたときも、
新たに嵌められた『枷』が外れた――あるいは、自ら外した――ときも、
ステイルは結局、この女の真意には辿りつけなかった。
だからといって目の前で流される涙粒が、真実を物語っている証拠など何もありはしない。
――だがステイルは、そっとハンカチをローラに差し出すと、しばし彼女に背を向けることに決めた。
----------------------------------------------------------------------------------------------
ステイルが再び向き直ると、ローラは常とまるで変わらない胡散臭い笑みを浮かべていた。
「ふふ、レディーの扱いが解りてきたようで何より。紳士への第一歩ね」
「齢二十四にして第一歩ですか……第五十歩ぐらい行ってないとまずいと思いますが」
「十年早し。まあ、肝心のところが確りとしているようでよきことよ」
「フン…………」
ステイルの猜疑心がどうあれ、インデックスはすでにローラを許しているのだ。
ならば警戒だけは解かずにはおくが、それ以上は踏み込むべきでない。
心の内側のことは、当人たちの問題である。
「それからまたしても、インデックスの話なりけれど」
再び縦に並んで二人は歩きだす。幾度かの雑談を交えたのち、ローラはそう切り出した。
「ようやく、本題ですか」
自分の周りには婉曲的な輩が多すぎる、とステイルは紫煙を吐く。
「あの子は今、揺れているわ」
「……ええ、そのようで」
「原因はわかりにけり?」
「…………おぼろげながら」
「では、対策は?」
「………………」
「……まあ、別にそれはよきてよ。よく悩め、青年」
「じゃあいったい、何の話ですか」
チッ、とステイルは舌を打つ。それも本筋でないらしい。どこまで話を焦らせば気が済むのだ。
ステイルが苛立ちを隠さずにいると、
「問題は、悩みを溜めこんでいる場所のことよ」
「……! 先ほどの…………?」
「ここのところ、彼女があの携帯端末を握る機会が増えてなき?」
「…………本当に油断のならない女狐だ、貴女は」
どこでそんなことを知ったというのか。いや、考えても益体のないことである。
「僕にでも、神裂にでもなく、誰かに悩みを吐きだしていると? ……いったい、誰に?」
「『吐き出して』いるのならまだ心配はいらねど……下手に私がつつきても事態をこじらせかねなし。
……とにかく、『電話相手』には気をつけておきなさい」
「……ご忠告、痛み入ります」
極めて深刻な事態、とまでいかなかったとしても、
インデックスに関わることである以上ステイルは全力を尽くす。
現れては消える疑念と、言葉にできない焦燥に包まれながらも、二人は歩みを止めはしなかった。
エリザード別邸
ロー「ただいま戻りしよー!」
イン「あ! お、おかえり! 第一の質問だけど、どうだった?」
ステ「どう、と言われましても……普通にそこらを一周してきただけですよ」フゥ
ロー「別にあなたが心配するようなことは何もなきよー」ニヤニヤ
イン「む、むむー……」
ステ(『電話相手』、か…………)
イン「? 第二の質問だけど、どうかした、ステイル?」
ステ「いえ、別に。お一人ですか。先代と一緒では?」
イン「あーー…………。エリザードなら、さっきの部屋で…………」
ステ「?」
ロー「?」
------------------- You Win! ---------------------
エリ「いやいや、小足見てから昇竜余裕って一度やってみたかったんだよなー。
ほら騎士団長、もっかい練習付き合え」
団長「…………い・い・か・げ・ん・に・し・ろ!!!!
こっちは仕事で来てるっつってんだろテメェ!!」
エリ「えーいいじゃん。どうせまたリメエアの小難しい話だろう?」
団長「いいわけあるかッ!! そもそも別邸だからってジャージで寛いでんじゃねぇェェーーーッ!!!」
「…………なるほど」
自分の悩みは尽きないが、自分より長いこと不幸の星に魅入られている人はいる。
そう、『あの男』だってそうだったではないか。
それを思い出すだけで、明日への希望は自然と湧いてくる――
そんな悟りを開きかけているステイル=マグヌス二十四の晩冬の一日であった。
--------------------------------------
OUT
くぎゅ(ルチアが矯正)
NOT IN
超教皇級の(ry
二回目につき(めんどくさいので)なし
---------------------------------------
結局、続くって訳よ
未明 ロンドン市街地
スタ スタ スタ ピラッ
ステ「………………」
ピョコピョコ
レッサー「おや、これはステイル=マグヌスじゃありませんか、お久しぶりです」
ステ「君は……レッサーか。こちらこそ、お久しぶりだね」
レッ「こんな朝も早くからお仕事ですか? まったく働き者ですね」
ステ「日課の散歩だよ。こんな時間にうろついている君には言われたくないね」
レッ「誰かさんのせいで『新たなる光』もロンドンじゃ商売あがったりなんですぅー。
少しはこっちの身にもなってくださいよ」ベー
ステ「いい歳してベー、はないだろう。……相も変わらずその尻尾は健在だし。恥ずかしくないのかい?」ハッ
レッ「あーん、レディーにためらいもなく年齢の話題を振るなんてデリカシーが欠如しきってますねぇ。
それにこの霊装のことなら心配ご無用。道行く人々が私の臀部に視線を奪われていると思うと、
それだけで…………もう……!」イヤーン!
ステ(そうだった、関わり合いになってはいけない人種だったな……。
…………僕の周りはそんなのばっかりじゃないか)ズーン
太陽<ヤァ
ステ「ん、日が昇ってしまったか」フゥ
レッ「んー、いい朝日ですね。ステイルはこれから最大主教のところに?」
ステ「当然。それが僕の仕事だ」
レッ「実は私、最大主教に所用がありまして……」
ステ「そうかい、じゃあまた後で」スタスタ
レッ「あーん、いけず!」ピョコピョコ
レッ「まだまだ人気がないですねぇ」
ステ「それはそうだろう。こんな時間に働いてるのはパン屋か新聞配達か……」
レッ「魔術師ぐらい、ですかね。それもここ数年はとーんと減っちゃって、実に平和ですよ」
ステ「……平和に越したことはないだろう」
レッ「いやはや間違いなく正論です。争いなんて、無いに越したことはありませんよねぇ?」
ステ「………………」
レッ「なんですかノーリアクションってー。そうですね、こんな噂知ってま」
ステ「着いたよ」
レッ「ちょっ、せっかく話題振ったんだから聞いてくださいよ!!」
『ランベスの宮』前
レッ「……やあやあ、やっと着きましたか! それでは中に」
ステ「悪いが中には入れられないね」
レッ「えーっ!? ここまで来てそれはないでしょう!」
ステ「知ってるだろう、ここは最大主教の要塞だ。
自由に出入りできるのはごく一部の人間のみ。
それ以外は事務的にも魔術的にも、少々面倒な手続きを踏んでもらうことになるよ」
レッ「だったらなんで連れてきたんですか!」
ステ「そのガッカリ顔を見るため、とか」ハッ
レッ「んがー! ムカつきますねーー!」
ステ「というか、正式な遣いなら事前に何らかのアクションがあって然るべきなんだよ。
……聖堂でなら普通に会えるから、そっちで待っていろ」ハァ
レッ「ちぇっ、とんだ無駄足でしたね……おや?」
舞夏「おー、ステイルにレッサー。珍しい組み合わせだなー。」
ステ「おはよう。ミセス土御門」
レッ「おはようございます! あれ、あなたは普通に通れるんですか?」
ステ「まあ、僕と彼女は出入りできるよ。護衛と世話係だからね」
舞夏「最低限、朝は用意しなくちゃならんからなー。まあそれだけでもひと仕事だー」
ステ「最近ようやくマシになってきた気がするのが救いだね」
レッ「えー!? あの大食らいが……マジですか?」
舞夏「まあ、朝のおかわりが十回から八回ぐらいにはなったなー」
ステ「それでも恐るべき変化だよ…………。何かしたのかい?」
レッ「乙女が小食になるといったらアレです、ダイエットでしょう! ……なーんて」ハハッ
ステ「それだけはあり得ないね」ハハッ
舞夏「ところが、そのまさかなんだぞー」ニヤニヤ
レッ「!?」
ステ「!?」
舞夏「ちょっと最近、膨らんできたんじゃないかー? って言ったら、顔色を変えてなー」
ステ「なん…………だと………………?」
レッ「二重の驚きです……! ふ、太ってるんですか? 今まで何ともなかったのに!?」
舞夏「ちなみに私は、胸のことを言ったんだけどなー」
ステ(ひでえ)
レッ「それはそれで許せません……まだ膨らむんですかアレ!? ステイルのせいですよまったく!!」
ステ「意味不明の言い掛かりをつけるな!! 僕は何もしてやしない!!」
レッ「わかってるじゃないですかいやーん!
……ま、それはそれとして体重計を気にするような乙女心があったっていうのは更に驚き、ま…………」
ステ「まったくそこに尽きるね……。昔からそんなこと、一顧だにした事がないよ」
舞夏「ちなみに気にしてるのは、どちらかといえば体重計の数字じゃないなー」ニヤニヤ
ステ「は?」
レッ「……あーなるほどなるほど、そういうことですか」ニヤニヤ
ステ「……よくわからないな」ハァ
レッ「まあまあ、頑張って! じゃあ私は女子寮にでも遊びに行きますから、また後で!」ダッ
ステ「…………はぁ」
舞夏「じゃ、お姫様が目を覚ます前にいくかー」
ステ「そういえば、こんなに早く来て土御門の食事はいつもどうしてるんだい?」
舞夏「兄貴にかまけてる暇はないから夜に作り置き、朝に『温めて食べてください』だー」
ステ(ざまあ)
『ランベスの宮』
ステ「何度来ても慣れない場所だ……」
舞夏「じゃ、起こしに行ってくるぞー」
ステ「よろしく。それじゃあ僕は……」
舞夏「いつも通り一緒にインデックスの寝顔を眺めに」
ステ「一度たりともやっていないのは君がよく知ってるだろう!」
舞夏「どっちかっていうと、やってない方が問題だと思うなー」
ステ「……とにかく、僕は礼拝室で待ってるよ」
舞夏「おう、また後でなー」ジャ!
ステ「どいつもこいつも、好き勝手を言いやがる…………」スタ スタ
二十分後 礼拝室
ステ(…………)
バタン!
イン「第一の挨拶だけど、おはようステイル!」
ステ「……ん! お、おはようございます、最大主教。……ドアは静かに開けてください」ハァ
イン「開口一番これかも……。結局、もう少し爽やかな朝の挨拶が欲しいって訳なんだZE!」
ステ「…………今の言葉、そっくりそのままお返ししますよ」
舞夏「よーし、じゃあまた朝食でなー」フリフリ
バタン
イン「ごっはん、ごっはん!」ウキウキ
ステ「祈りの時間ぐらい欲求から解放されてください」
イン「あはは、冗談冗談かも」
ステ(まったくジョークに聞こえない)
イン「えへへ……始めよっか」フフ
ステ「やれやれ……始めましょう」フッ
更に四十分後 食堂
ドドドドンッ!
舞夏「よーし、それでは召し上がれ!」
ステ「………………」
イン「いっただきまーす!」バクヒョイモグパクッ
ステ「いただきます…………」チラッ
レッ「ひゃー、美味しそうですねー! いただきます!」
ステ「……おい」
リメエア「あら、なかなか……いただきます」
ステ「あの……」
キャーリサ「見た目は宮殿のコックにも劣らないの。いただくぞ」
ステ「聞け!」
ステ「とりあえず、一つに絞りましょうか。……どうやって入ったんですか?」ゲッソリ
キャ「私は英国王妹だし。私が入れない場所などこのイングランドには無い!」カチャカチャ
ステ「入った場合不法侵入ですがね……答えになってないし」
イン「モグモグモグ」
キャ「だいたいヴィリアンは出入り自由にしてこの私を通さないとはどーいう事なの?」
ステ(こーいうのが面倒だからなんだが)
リメ「まあ本当のところは、少し前に手続きを済ませているのだけど」パク
ステ「……一応、警備責任者である僕の元に話が来るはずなんですが」
イン「ングングング」
リメ「まあ。土御門が『オレに任せとけ』と言っていたのに……前代未聞だわ」
ステ「護衛も連れず、のこのこ伏魔殿に乗り込んでくる女王陛下(クイーンレグナント)も
前代未聞だとは思います。っていうかまたアイツは面白がって……」ハァァ
レッ「なんで私をナチュラルにゼロにカウントしてるんですか!」モシャモシャ
イン「ゴキュゴキュゴキュ」
ステ「だいたい君はさっきしょぼくれて帰ってっただろう」ハンッ
レッ「しょぼくれても帰ってもいません!
いやー何というか、よく確かめたら許可下りてたみたいで」イヤーン
舞夏「ステイルのしょぼくれた顔が見れた、ってことで良しとしようかー」オカワリイリマスカー
レッ「ですね」ア、オネガイシマス
ステ「良くてたまるk」
イン「ズズズズズズ!」
ステ「…………もしかしてわざとやってますか?」
イン「ドキッ!」
ステ「いや『ドキッ!』じゃなくて。全部口に出てますし」
イン「にゃんのことだかふぁからないぜよ」モキュッモキュッ ゴクン!
ステ「一番信用の置けない口調も一緒に出てきてるんですよ!」
キャ「テンポのいいジャパニーズ・マンザイなの」
レッ「二人とも日本は長いですからねー。日本人も身近に沢山いますし」
リメ「日本人は漫才を誰もが嗜む民族なのね……」
舞夏(あの二人のせいで日本が誤解されたなー)
ステ「で? 結局何の御用ですか? 女王陛下に王妹殿下」
キャ「別に大したことじゃないな。ほら、今日はこれからちょっと忙しいし」
ステ「(じゃあ来るなよ……)護衛は…………お二人とも取らない主義でしたね」
キャ「騎士団長がうるさいからとりあえず、一人連れてきたの」
ステ「よりにもよって、の最悪の人選ですね」ハァ
レッ「やーんステイルくんってば、そんなに照れなくてもぉ」
リメ「それで聞きたいのは、この間のロシアの件で」
ステ「……? 僕の報告に何か不備が?」
レッ(放置プレイもイケる口ですよ、私は)ヌフフ
リメ「そちらに問題があったという事ではありませんの。
……ただ、当の総大主教のお人柄を確かめたのは最大主教だから」ニヤ
ステ(……?)ゾク
キャ「仔細をもう一度、インデックスの口から語ってほしいということだ」ニヤリ
イン「私?」
レッ「警備体制に不備が無かったか、という点も気になるので……
警備責任者の挙動も詳らかにお願いしますよ」ニヤニヤ
ステ「なんだそのこじつけはぁ!! 揃いも揃ってそんなことの為に来たんかいッ!!!」バァンッ!
イン「第一の私見だけどいい感じでキレキレかも、ステイル! 私も負けてられないんだよー!」
ステ「勝たなくていいからぁ!! ちょっと、ノリノリで喋らないでくださいぃぃぃーーっ!!!」
一時間後
ステ「くそっ、くそおっ……本当にアレだけで帰りやがった…………!」ゲッソリ
舞夏「いやーそんな事になってたなんてー」
イン「まいかはどうせもとはるから聞いてるに決まってるんだにゃー」
舞夏「ま、そうなんだけど」
ステ「これじゃ、僕……イギリスを守りたくなくなっちまうよ……」モヤモヤ
イン「いやあ、クイーンレグナントは強敵でしたねー」
舞夏「インデックスとステイルでこんなに意識の差があるなんて……」
イン「……それはどうかなぁ」ボソッ
ステ「結局、土御門もどうしてアレらを通したんだ?」
イン「第一の質問だけど、まいかは何か知ってる?」
舞夏「あー……んー…………まあ、そのー………………」
ステ&イン「「?」」
舞夏「わ、私の料理を王室にも自慢したかったらしいぞー」テレテレ
ステ「そんな馬鹿な…………」
イン「もとはるならあり得ることなの」
ステ「だいたいアイツ、自分が御夫人の料理を満足に食べられないのによくそんな心境になったね」
舞夏「まあそこは本人も悩んでたけど、ステイルを弄ぶって聞いて決心したみたいだー」
ステ「…………おい、君は知ってたのか」
舞夏「てへっ☆」
ステ「」ピキビキ
イン「『嫁の料理自慢』+『ステイル大わらわ』>『一緒に食べられない手料理』」
イン「……ってことだにゃー」
ステ「なにを考えて生きてるんだアイツ…………!!!」
スタスタ ガチャ
火織「おはようございます、皆。……おやステイル、
いつもより顔色が…………いや、いつも通りですね」
ステ「どういう意味だ!!」
イン「おはよーなの、かおり!」
火織「おはようございます、インデックス。……キャーリサ殿下とお会いになったんですか?」
イン「なんでわかるんだし?」
火織(用法がメチャクチャな気もしますが……可愛らしいので良しとしましょうか)ハァ
舞夏「おう、準備できてるぞー火織」
火織「よろしくお願いします、師匠! ……今日という今日こそは!」
イン「第二の質問だけど、今日の朝ご飯はどうだった?」
火織「うぐっ!!!」
ステ「……朝ぐらい和食にすればいいだろう。
仕事の方も相変わらずのようだし、いい加減に騎士団長の胃がストレスでマッハだね」
火織「うう……でも、残さず食べてくれるものですから、つい……」テレ
ステ「」シラー
イン「」シラー
火織「そんな目で私を見るなぁ!!」
火織「コホン……失礼しました。……おや、いつもより食器の数が少ないように見えますが」
舞夏「今日は三人多かったはずなんだけどなー」
イン「! そ、それはだなー」アタフタ
ステ「最大主教はダイエット中だそうだよ」
イン「!? ま、ま、まいかぁぁ…………っ!」
舞夏「~~♪」
火織「そうなのですか、インデックス! ようやく私の気持が伝わったのですね!!」
イン「え、あ…………? そ、そーなの! 火織に言われて節制を心がけてるんだぜい!」
ステ「…………ああ、なるほど。そういうことだったんですか。それは喜ばしいことで」パチパチ
イン「第一の解答だけど、そういうことなんだZEい!」
火織(こころなしか、聞き覚えが……)
ステ「……そろそろお時間です、最大主教」
イン「これからオルソラとシェリーのとこだったかなー?」
ステ「…………ええ、その通りですよ。もう既に胃が痛くなってきた……」
火織「それは、なんというか……ご愁傷様です」
舞夏「骨は拾ってやるぞー」
イン「骨が残ればいいんだけどなの」
火織「…………」
ステ「はぁぁ……先に言っておいていいですか」
火織「……どうぞ」
イン「どうぞだし」
舞夏「どうぞだぞー」
ステ「………………今日も不幸だ」ハアアアアァァァァッッ・・・・・・・・・・・・
ステ(これじゃあまだ悟りには遠いな……)
OUT
アックア(ヴィリアンが一時間でやってくれました)
IN
元第二王女(未婚)←New!
続くのである
『必要悪の教会』 図書室
シェリー「おう、来たか。おはよう二人とも」
イン「おはようなの、シェリー! オルソラ!」
ステ「……おはよう」
シェ「何だ元気がねぇな。なにか疲れることでもあったの?」
ステ「確かにあったが、これはどちらかと言うと現在進行形というか……」
オルソラ「それではおやすみなさいませ、五和さん。あまり夜更かししてはいけないのですよ」
シェ「…………ああ、そうだよなそりゃ。私は慣れたけど」トオイメ
イン「……ちなみに『これ』は『いつ』なのかにゃー?」
シェ「えーっと、寝る間際に五和に会ったのは……六日前だったかな」
ステ「…………」
イン「…………」
シェ「そんな顔するんじゃないわよ! 仕事モードのときは話は通じるんだ!」
ステ「ふぅ…………はぁぁぁあああ…………さっさと始めてくれ、頼むから」
オル「あら? 最大主教様にステイルさん。いつの間にこちらに?」
イン「第一の解答だけどついさっきかも。……気にせずおしごt」
オル「まあ、でもどうしてジンバブエに?」
ドンガラガッシャーン!
ステ「君こそジンバブエに何の用があるっていうんだ!? ここはイギリスだ!」
オル「あらあら。先ほどといえば、五和さんはもうお休みになったのでございますよ?」
ステ「朝だ! 今は!! あと五和は仕事中だ!!!」
オル「ジンバブエのお料理は美味でございますよー」
ステ「本当に行ってたのかよ! しかも何しに行ってんだ!!」
オル「まあ、私はいつの間にイギリスに帰ってきていたのでしょう?」
ステ「知るかぁーーっ!! というかこっち側に帰ってきてくれ頼むから!!!」
シェ「いやあ、私も参考にしたい丁寧な捌きっぷりね。あやかりてーな」
イン「ステイルの労災申請、してあげた方がいいかも」ソノウチタオレソウ
十分後
オル「では最大主教様、いつものお仕事を始めましょう」
シェ「おつかれさん」ポンポン
ステ「」チーン
イン「ステイルの犠牲は無駄にはしないZE!」
シェ「聞いたぞ。また新しい案件を抱え込んだんですって?」
イン「人の身にあまるエネルギーを体に取り込んだとゆー点では、
『コレ』と状況は類似してるんだけどなー」
シェ「それにしたってお人良しが過ぎんだよ。……ま、嫌いじゃないけどね」
オル「溢れる叡智を人の世に役立てようとする…………。
最大主教様のおこないは私もシェリーさんもとても好ましく思っていますよ」
シェ「……勝手に言ってろ」
イン「うん……そう簡単にはいかないけど、これは私が選んだ道だから」
ステ(『禁書目録』の平和的利用、か……)
今より、五年ほど前。
『生涯』の大半を過ごした学園都市を去り、インデックスは故郷イギリスに単身渡ってきた。
短い生涯でただ一人愛した男と、大切な友人が結ばれるのを見届けての帰還――いや旅立ち。
納得づく、というわけではないだろうが、その事を引きずっているようには一見して見えなかった。
実際数年後に執り行われた二人の挙式では彼女は新郎親族席に座り、
寂しさを堪えながらも――誰もが気付いていたが――しっかり笑い、そして泣いていたのだ。
だが彼女が生きる目的の一つを失った、という事実は変わらない。
愛した男の側に寄り添い、笑い、助けとなる。それはもう叶わないことなのだ。
周囲が見かねるような煩悶の中で彼女が縋りついたのが――
自らの存在意義、『禁書目録』の編纂作業だった。
『僕が心配しているのはあくまで、彼女の持つ『知識』であって――』
いつ言ったかも判然としないような自身の言葉がどうしてか彼女に伝わり、
『ステイルだって言ったんでしょ? 私の価値は、『知識』にあるって』
そしてまた新たな『枷』を生んでしまったのだと気付いたとき、ステイルは自らを呪った。
(結局、僕はまた君を傷つけてしまったのか)
彼女を、自分に深入りさせたくない。あるいは、自分が深入りしたくなかった?
そのような気持ちから出た一言だった気がするが――
結果は、このザマだ。
そうしてインデックスは人並の幸福を放棄し、己が内の『毒』と闘う道を選んでしまったのである。
ステ(…………少しボーッとしていたな。作業は……?)ウツラ
オル「……こんなところでございましょうか」
シェ「書き方一つ間違えりゃあ墓場行き、ってのがこの仕事の辛いところよね」
イン「ごめんね……無理させてるかも」
シェ「嫌なら最大主教の命令だろうが何だろうが断ってるわよ」
オル「シェリーさんの言う通りでございますよ。これは私たちが望んで行っていることです」
イン「…………ありがと。シェリー、オルソラ」
ステ(………………)
シェ「さあて、偽書化はこのぐらいにして一旦休憩しねぇ?」
オル「では、お茶を入れて参りますね」スッ スタスタ
ステ「そのくらい、僕がやって……おっと」フラッ
シェ「あら、だらしないわね」
イン「…………ステイル、第一の質問だけど」
ステ「な、なんですか?」
イン「徹夜、何日目?」
ステ「…………!」
シェ「あら、そういうことなの?」
ステ「…………ここのところ、別の『仕事』が忙しくてね」
ステ(『電話相手』もさっぱりだしな……)
イン「……私は、何日目って聞いたんだし」
ステ「………………ほんの、三日ほどです」
シェ「おいおい、そんなんで護衛が満足にできんのか?」
イン「気付かない私だって悪いけど……。…………すている」ガバ
ステ「も、申し訳ありません。ですがねって、え?」
グイッ ポフッ
ステ「」
イン「………………寝て」オサエツケ
シェ「…………ヒュー♪」ニヤニヤ
オル「あら? あらあら、まあまあでございますね♪」モドッテキタ
ステ「み、見てないで、止めろッ!!」
シェ「別に止める必要ないでしょ? ここからは危険性の低い考察タイムだし」
オル「ええ、ええ。ステイルさんが気をお張りにならなくとも大丈夫でございますよ」
ステ「待て、まさかこのまま」
イン「すている。命令なんだよー」
ステ「…………クソッ! 勝手にしてください……!」フテ
シェ「そ、気にせず寝てなさい」ニヤニヤ
オル「すこやかにお眠りください。
……(パン)そうです最大主教様、子守唄など唄われては?」ニコニコ
ステ「ふっ、ふざけ……」
イン「――Sleep then my prince, oh sleep 」
ステ「お、おい……!」
イン「Slowly the grey shadows creep ~♪」ニコッ
ステ「…………」メヲツムル
イン「Forest and meadow are still――」
-----------------------------------------------------------
シェ「……いやあ、いつ聞いても惚れ惚れするな」パチパチ
オル「ステイルさんもよく眠ってございます」パチパチ
イン「えへへ、お粗末さまなんだにゃー」ペコリ
シェ「しかしこいつは意外と溜めこむタイプなのね」プニプニ
イン「……ここのところ、確かに顔色がビリジアン気味だったけど、
まさかこんなに無茶してたなんて……」
シェ(ビリジアンて)
オル「ステイルさんは今回の事についてどの程度?」
イン「…………第二の解答だけど、全部の情報を握ってるのはもとはるだけなの。
私はあくまで『治療』のことだけに専念してて欲しいって」
シェ「だが少なくとも、コイツが出ずっぱりになるところまで
事態は進行してるってことだな……」
イン「………………」
オル「くだんの方々は、いつお着きになるのでしたか?」
シェ「……いや、今日だろ。その話を一週間ぐらいさんざんしたでしょうが!」
オル「あら?」
イン「…………無事で着いてくれるか、不安なの」
シェ「祈りは、届くんだろ? だったらシャンとしてなさい」
オル「どうかご安心ください、最大主教様」
イン「…………うん。そうだね!」
一時間後
ステ「…………んん」
「……から…………も危機……きなの…………」
「…………ぁ………………はどのよ…………ざいますか?……」
「……うーん…………れはちょ……かと…………んだよ……」
ステ(……僕は、寝たんだっけか。あの無茶な状況で……)ズーン
ステ(何を話してるんだ? …………緊張とかとはかけ離れているが)
シェ「……そういうわけでこの! 『出会い系』ってやつにオルソラを登録したんだよ!」
ステ「なにやってんだお前ぇぇーーーーーっっ!!!!」ガバッ!
イン「あわわ! 急に起き上がると危ないんだYOすている!!」ヨケッ
シェ「あら、おはよう王子様。お姫様の膝枕はどうだったよ?」
ステ「…………そんなことはいい! それよりなにを世迷言を言ってるんだ君は!」
イン「………………」
オル(あらあら)
シェ「いやさ、いつまでもオルソラが行かず後家予備軍ってのはおかしいでしょう?」
オル「私の身は神に捧げたものでございますよ、アンジェレネさん」
ステ「……済まない、当事者ではあるが君に出てこられるとカオスにもほどがあるんだ」
オル「あらあら」オクチチャック
ステ「ゴホン! ……人の心配よりまず自分のことだろうがゴスロリ女ぁっ! 歳を考えろ歳を!!」
シェ「ははん、私はそういうこだわりを既に超越してんだよ。芸術家だし」
イン(聞いててちょっと悲しくなるし)
ステ「ちいっ、この方面からでは駄目か……!」
シェ「それより、ちょっとおかしいのよ。聞いてくれ」
ステ「聞きたくねぇ……」
シェ「まあそんなこと言わないで。登録してから一月ぐらい経つんだけどよ、なんの反応もないの」
ステ「……喜ばしいことだね、彼女の為には」
イン「でもでも第一の疑問だけど、オルソラぐらいの美人さんに
男が食いついてこないっていうのは変なんだよー」
オル「照れてしまうのでございますよステイルさん」テレテレ
ステ「(そっちは僕じゃない)……どれ、携帯を見せてくれ」
シェ「はいよ」ヒョイ
ステ「どれどれ…………」ポチッ
デーンデーンデーン デデデ デデデ デーンデーンデーン
イン「…………」
ステ「…………」
イン「……火織のテーマ曲ですたい」
シェ「そんなのあったのかよ? 羨ましいわねー」
オル「私も欲しいのでございますよー」
ステ「………………」
ステ「……………………」
イン「……どうぞ、ステイル」
ステ「……一つだけ言うなら。…………これは『出会え系』、だ」
イン「オルソラ君! 座布団いちm」
ステ「やかましいわぁぁーーーーーーっっ!!!!」
シェ「似たようなもんだろ、何か違うのかしら?」
ステ「大岡越前とコンバット越前ぐらい違うんだよ!!」
イン「どうどう、落ち着いてー」
ステ「貴女は僕を休ませたいのか疲れさせたいのかどっちなんだ!」
イン「『ステイルには休んで欲しい』『ドタバタも見たい』
「両方」やらなくっちゃあならないってのが「最大主教」のつらいところかも」
シェ「覚悟はいいか? ワタシはできてるわ」
ステ「僕は出来てないんだよォォーーーーッッ!!!」
オル「お茶が美味しいのでございますー」ホノボノ
オル「さて皆さま、今日のところはこれぐらいにしておきましょうか」
ステ(僕は何のためにここに居るんだろう)ゼェハァ
シェ「当面の課題には答えが出たしな。……あと何冊だったかしら?」
イン「第三の解答だけど、これであと十万二十七冊かな」
シェ「ははは、そりゃあいい。十万を割るまであと少しね」
オル「先は長いですが精一杯協力させていただきますよ」
イン「ありがとう。私一人じゃどー頑張ってもここまでは来れなかったんだよ」
イン(…………『私一人』じゃ……)
シェ「またなの? いちいち礼なんて要らないっての」
ステ「…………貴女のひたむきな姿勢があればこそ、ですよ」
オル「ふふふ、それではお開きに……」
prrrrrrr チャラーチャッチャラーン
ステ「……失礼」
イン「あ! ちょっとごめんなの」
シェ「…………!」
オル「…………?」
イン「……わかったんだよ。わざわざありがとう!」ピ
シェ「……着いたのか?」
イン「うん! いつわからで、今こっちに向かってるって!」
オル「まあ、喜ばしいことでございます」
ステ「……いいだろう、すぐに行ける。また後で」ピ
イン「ステイル?」
ステ「……予め言っておきますが、土御門ですから。
そちらも無事進行中のようですから、今度こそ着いて来ないでくださいよ」
イン「むー。……まあ、しょうがないなー」
シェ「寮の中ならそこそこ安全よ。安心して行ってきな」
オル「お土産など買ってきていただけますかー?」
ステ「……とにかく、行ってきます」スッ
イン「……行ってらっしゃい」フリフリ
ロンドン とある路地裏
スタスタ
ステ(この間より奥だな……)
元春「おっ、来たな」
??「どうも」
ステ「…………彼が?」
??「ええ、自分の口からご説明するのが筋、というものですので。
わざわざご足労いただきありがとうございました」
---------------------------------------------------------
『必要悪の教会』女子寮
ワイワイ ガヤガヤ
五和「最大主教、お連れしました」
イン「ありがとなんだよ、いつわ。
みんな、今日からここに住むことになる二人でございますよ。
……さ、自己紹介して」
トチトリ「私の名はトチトリと言う。今日からお世話になる。……ほら、お前も!」
「元、『翼ある者の帰還』所属の魔術師、エツァリと申します。どうかよろしく」
「わ、わかってる! アス……いや、メキシコ出身のショチトルだ。よ、よろしく頼む」
------------------------------------
OUT
フレ/ンダ(シェリーがついでに矯正)
IN
おばあちゃん ←New!
------------------------------------
続くんだぞー
現代において、世界は大きく三つに分けることが可能である。
第三次世界大戦を引き起こした科学サイドと魔術サイド。
これら二大勢力は基本的にそれぞれの分野に特化しており、お互いの技術が相入れることはまずない。
しかし二大勢力が鎬を削る傍らには、第三勢力が目を光らせているというのが歴史の常である。
科学と魔術、そのどちらをも利用しようとする者たち。
三次大戦を静観していた彼らはこれを好機とし、外交・戦場の両面から攻勢をかけるはずであった。
しかし蓋を開ければ、両サイドは多少は疲弊したものの深手を負うことはなかった。
魔術側に至っては終戦間際に三宗派のトップが手を取り合う、という全くの想定外。
先だって中米最大の魔術結社が事実上の壊滅状態に陥っていた『第三世界』は大きく動揺し、
科学と魔術が表面上だけでも友好的に歩む中、世界各地で徐々に混迷を深めていったのである。
「ステイル=マグヌスさんですね? お初にお目にかかります」
張り付けたような笑みを浮かべながら、どう見ても東洋人にしか見えないアステカの魔術師が会釈する。
「貴方が、土御門の『共犯者』か」
「『共犯者』、とは言い得て妙です。自分達の関係を表すにはこれ以上ない。
さすがですね、土御門さん」
「よせやい、照れるぜい」
「…………軽口はいい」
どうにも腹に一物も二物も持ってそうな男である。
ステイルにとって、あの女狐を連想させる人格の持ち主は天敵と言ってもよい。
……天敵が多すぎる気もするが。
「なるほど、依然変わらず短気な方のようだ」
事実、早速表情も変えずに小型の爆弾を投げ込んでくるではないか。
ステイルも負けじと動揺を挙動に出さないよう努めて応じた。
「僕を知ってるのか」
「ええ、存じ上げておりますとも」
――優男は、ますます笑みを深めた。
「あなたには、自分の身の上話をしておく方が話の通りが良さそうですね」
「できれば、遠慮したいが……」
「まあ聞いてやれ、ステイル。お前にもなかなか興味深い話だと思うぞ」
「だったら、君がしたらどうなんだ……!」
口を挟んできた土御門に怒気を見せはしたものの、これ以上押し合っていても話が先に進まない。
ステイルは首だけ動かしエツァリを促した。
「インパクトの強い話から始めてしまいましょうか。上条当麻のことです」
「……!」
「掴みはオッケー、のようですね」
(まったく、本当に僕の周囲にはこんなヤツばかりだ)
胃以外に心臓まで痛むのを感じながら、ステイルは毒をすんでのところで胸中に収める。
「中米の魔術結社『翼ある者の帰還』は、かつて『幻想殺し』が周囲に
科学魔術問わず引きつける、極めて強大な戦力を危険視しました」
――上条勢力。
ステイルがそのような不愉快なネーミングを知るはずもないが、心当たりならありすぎるほどにある。
「そして組織は上条当麻を抹殺すべく、刺客を放った。それが、自分の物語のプロローグですね」
「まあ、正確にはそのもう少し前に転機があったわけだが」
「いやですねえ。それをこれから話すところだったんじゃないですか」
「茶番はいいよ。次」
「上条勢力……あ、これは自分が勝手にそう呼んだだけですが。
その存在を自分が監視するにあたって、あなたのことも調べていた、というわけです」
「なるほどね……。次」
「……気乗りしてないというか、普通に体調悪くないですかあなた?」
「一日三回の胃薬が欠かせない日々だよ……」
「…………手短にいきますね」
……横で大笑いしているアロハ野郎よりは良心の持ち合わせがあるらしい。
「…………監視対象の中に、自分の人生をレールから思いきり外してくれた女性がいました。
――御坂美琴。当然あなたもご存知ですね?」
「別にあの子が何かしたわけでもなく、お前が勝手に踏み外しただけ、って話だけどにゃー」
御坂美琴。知らないわけがない。
上条当麻が彼女を選ばなかったただ一つの理由である女性の名は、
ステイルにとっても特別なものだった。
「謝る、と言うわけではありませんが」
口を噤んだステイルを尻目にエツァリは続ける。
「上条当麻がみ……美琴さんを選んだのは、ひとえに自分との約束を守るためです。
極論、そこだけでも承知して欲しくこの話を貴方にしたのですよ」
ステイルの脳裏に過ぎる、いつかの光景。
『どうしてだ。どうしてあの子を選ばなかった?』
――意味のない問いかけだった。あんなことをして、誰が報われるわけでもなかった。
(僕はあのとき、どんな答えが欲しかったんだ……?)
上条は目の前の男との約束を守り、ステイルとの約束を完遂することはなかった。
彼の意志がどうであったとしても、それが事実であり、結果である。
別段誰が悪いと言う話でもない。
上条当麻を、あるいはこの男を責める資格など、ステイルには無いはずだった。
「………………終わった話だね」
「…………そうですか」
咥え煙草を上下に揺らしながら、ステイルは自嘲する。
――いったい、何が終わったと言うんだ。
「では、あとの話は端折って進めてしまいましょう」
「おいおい、こっからが本題だろうが」
「まあまあ」
肩の荷が下りたのか、エツァリは先刻よりハリボテ感の薄れた笑顔で大胆にのたまう。
「僕は事情が理解できればなんでもいいさ。続けてくれ」
「ではお言葉に甘えて――」
紆余曲折を経てエツァリは、かつての同僚とともに組織の残骸に追われる身となった。
いや、残りカスだけならばたいした問題にはならなかったのだ。
なにせ三人が身を隠したのは科学の中枢、学園都市だったのだから。
――問題は、エツァリが二冊の『原典』をその身に宿す、正真正銘の『魔導師』であるという点に在った。
「……それは、本当なのかい」
「ええ、この場でお見せしても構いませんよ?」
「勘弁してくれ……」
不幸中の幸いか、その情報は三宗派をはじめとする純正の魔術サイドに大々的に伝わることは無かった。
しかしエツァリは『第三世界』――特に中米に点在する魔術結社に、
反攻のための兵器として狙われる事となってしまったのである。
---------------------------------------------------------------------------
見知らぬ人々に囲まれ、ショチトルは不安を堪えてあたりを見回した。
奇抜な格好をしたリーダーらしき女性の後ろに群がる数十人のシスター。
少女趣味の服装を纏った、ちょっと……いやかなり少女には見えない女性。
ここまで護衛してくれた女性からは温かみを感じる。……例えるなら、おしぼり的な。
長髪ポニーテール以上に、嫌に露出度の高い服装が印象に残る女性。
そして、兄と慕う人の知人を通して、今まで幾度となく電話越しに助言をくれた――
他の全てが霞む美貌を誇るこの集団のトップ、最大主教。
女子寮なのだから当然のことなのだが、見事なまでに女女女。
更に揃いも揃って美人どころとなるといかに同性とはいえ、ショチトルは気後れを隠せない。
「な、なあトチトリ……エツァリはどこに行ったんだ?」
この場でもっとも心の許せる親友の袖を引き、ショチトルは自らの最大の不安をぶちまける。
二十代半ばだというのに幼さの残る彼女の仕草に、数人のシスターが鼻を押さえてのけぞった。
…………大丈夫かこの寮。
「まったくお前は……この歳になってまーだ『愛しのエツァリお兄ちゃん』と
離れ離れになるのが堪えられないのか?」
「おまっ、ちょっ、何を言い出すんだトチトリィィ!!??」
二人の香ばしいやりとりに、シスターどもから今度は黄色い悲鳴が上がる。
そうそう、そういう反応が正しいんだよお前ら。
「愛しの!」
「お兄ちゃん!! とミサカは(ry」
「ブラコン!? ねぇブラコンなの!?」
「なんと背徳的な……これは主への冒涜です!!」
「いやいや、義兄妹で血のつながりが無いってパターンこそ至高だぞー」
「どのみちガチよ今の反応! ねぇそのエツァリさんとどこまでイってるの!?」
「かーっぺっ! 結局男持ちですかい! どいつもこいつも貞操観念がなってやしねーです!!」
「んもーそんなこと言ってるから行き遅れるんですよシスター・アニふがっ!!」
「あらまあ、膝枕とは甘酸っぱいですねぇ」
一部怨嗟の声も混じっていたが(時間軸がおかしいのも居る気がするが割愛)とにもかくにも姦しい。
女三人姦しいとは言うが、少なく見積もっても五十人はこの場に居るのだ。
姦しい×16である。
「あ……う…………ええぇぇぇぇ…………?」
ショチトルの混乱やら羞恥心やらが極限に達しようとしたそのとき――
「静かになさいっ、あなたたち!!!」
乱痴気騒ぎを切り裂く凛とした声が一閃した。
声の元はまとめ役たる最大主教……では当然なく、エプロン姿の聖人のものであった。
「彼女たちは長旅で疲れているんです。くだらない話をしてる暇があればまず休息でしょう!」
いまいち迫力に欠けるがそこは腐っても(腐ってないけど)聖人、怒らせては後が怖い。
「まったくですね! ほらあなた達、やんなきゃならねー事が山積みでありやすよ!」
「「「「「はーい」」」」」
女子寮の男持ち率に嘆いていたアニェーゼ=サンクティス二十四歳も
ようやく正気に戻り、シスターをぞろぞろと率いて寮を出ていく。
「それではお土産を楽しみにしてくださいませ」
「お前は行くんじゃねぇ!!」
またジンバブエにでも行くつもりだったのだろうか。
「…………ヤレヤレなんだよ」
「それでは、女子寮の中をご案内させていただきます、とミサカは久々の仕事に奮い立ちます」
女子寮の管理人――ショチトルにはどこか見覚えのある顔――に連れられ、寮内を見学して回る。
比較的まともな人格の者ばかりだったことも手伝って、ショチトルの緊張も徐々に和らいできた。
「ここがお二人の部屋です。では中に……」
「あ、すまない。……ちょっといいだろうか?」
「何かご不明な点がありましたか、とミサカは自らの説明に不備があった可能性を危惧します」
いよいよ二人が暮らす相部屋の前に来たとき、ショチトルが突然声をあげた。
「いや、そういうわけでは! ……その、最大主教殿はお時間のほう、大丈夫だろうか?」
「んー? 第一の解答だけど、遠慮しなくていいかも。
それから私の事は、インデックスって呼んでくれると嬉しいな!
……これ、電話でも言ったよねー?」
「す、すまない! 面と向かうと、やはり失礼なのではないかと……
それでは皆さん、できればインデックスと二人きりで話をさせて頂きたいのだが」
残りの面々は――特に火織と五和は――顔を見合わせると頷いて、
「いいでしょう、私たちは下の食堂で待ちます。何かあれば呼んでください」
ぞろぞろ連れだって、階下へ降りていった。
「それじゃ、中に入ろっかにゃー」
(…………にゃー?)
質素な内観のワンルームに机とベッドが二つ、それに小さな箪笥だけが備え付けられている。
インデックスとショチトルはお互いベッドに座って向き合った。
「まずは、お礼を言わせて欲しい。……何から何まで、大変お世話になりました。
それだけ、二人きりで伝えたかったんだ」
「…………ふふ。困っている人を見たら思わず手を差し伸べちゃう。
イギリス清教にはね、そんなおかしな病気に罹ってる人がたくさんいるんだよ」
「……それは、とても素敵なことだ」
今までショチトルが殆どエツァリ達としか共有したことの無い温かさが、この場所には溢れている。
――自然と、笑みがこぼれた。
「身体の方は、その後変わりないの?」
「ああ。こうして二本の足で立てるのも、あなたと、あのお医者様のおかげだ」
「……くすぐったいなあ。あなたの体に残った最後の『毒』を抽出する方法は、
ついさっき、確立が終わったんだよ」
「……ほ、本当なのか? こんなに早く?」
「私ひとりでは無理だったけど、たくさんの人に協力してもらったから。
…………エツァリに教えたら、ものすごーく喜んでくれるかにゃー?」
なごやかに進む会話の中、にやりとほくそ笑んだインデックスがやおら舵を切る。
前触れもなく揺らいだ足場に対応できず、ショチトルは狼狽した。
「ななななな、なんでどいつもこいつもアイツの名前を出すんだぁっ!!!」
「べっつにー? 私は依頼人に報告しなきゃならないだけで他意は無いし」
「ウソをつくなぁっ!!」
「ふふ…………照れなくてもいいのでございますよー」
「照れてないっ!!」
ショチトルをひとしきりからかった後、改めてインデックスは話題を振った。
「でもいいよね。強くて冷静で格好いいなんて、理想の男性かも」
「…………ストーカーでさえなければな」
「…………あー…………」
選択肢を間違えたことを悟ったインデックスの頬が引きつる。
と同時に、この話を続けると『どこ』に辿りつくか明確に意識してしまう。
「そっか…………エツァリは、みことの事が好き、だったんだよね……」
二人の間に初めて、気まずい沈黙が降りる。
しかし全ての事情を把握しているわけではないショチトルは
問題が野郎の側にあると思いこみ、ピンポイントで墓穴を掘ってしまった。
「ま、まあ! 過去の話だ! 今はストーキングしてるわけじゃあない!
エツァリも彼女の側には信頼できる男が居ると言っていた!」
「う、うん…………。それは良かった……ね?」
ショチトルの認識では、インデックスと美琴は単なる友人でしかなく、
その間に立つ『男』の正体など彼女が知る由もない。
決して悪気がある訳ではないのだが――
「そ、そうだ!」
――だが、彼女の失敗は残念ながらこれに留まらない。
「わたしの事はもういいだろう! あなたの方こそどうなんだ、インデックス?」
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「クシュン! ……失礼。あなた今、自分の噂しませんでしたか?」
「目と耳はどこに付いてるんだ貴様!?」
「話を続けようぜい」
エツァリの事情はおおむね説明が済んだ。
ではいったい何故、今回イギリス清教が彼らを保護するに至ったのであろうか。
答えは明快、現在のイギリス清教の『敵』が中米の魔術結社くずれだからである。
「敵の敵は味方。はっ、なるほど単純明快だ」
「だろ?」
「……皮肉を言ったつもりだったんだがね、『背中刺す刃』」
「心配するな、自覚はある」
年月をかけて緩やかに異常に蝕まれた『第三世界』は一年ほど前、ついに一線を越えて暴走を開始した。
各魔術結社が科学兵器を併用したゲリラ活動に踏み切ったのである。
主な標的はいまなお最大勢力たるローマでも、極寒という地の利を持つロシアでもなく――
科学の総本山学園都市と、その友好勢力イギリス清教であった。
大半は内乱などで崩壊した組織のなれの果てである。
所詮は科学や魔術に正面きって戦う力などあるはずもない。
しかし科学にも魔術にもなりきれない半端者どもの抵抗は、
大方の予想をはるかに越えて長期化の様相を呈していた。
烏合の衆ですらなかったゲリラ組織だが、この場合はそれが功を奏するという結果になった。
ただでさえ数だけはいるのに潰すべき頭が存在せず、一網打尽になどしようがないのである。
「なるほど、ようやく話が見えてきたね……」
「お察しいただけて幸いです」
そこで土御門はその卓越したスパイとしての能力を生かし、大胆にも敵の巣窟メキシコに潜入した。
彼はイギリス清教が魔導師(エツァリ)を手中に収めようとしている、
という噂を中米全域に流し――ほぼ事実ではあったが――組織の危機感を煽った。
「そして見事、連中を誰もが待ち望んでいた『烏合の衆』に仕立て上げたってわけだ」
「自分で見事とか言うな」
「あとはオレたちの……いやお前の陣地に引きずり込んで一網打尽、だ」
「……その割には僕も含めてみな、作戦の全容を知らないんだが」
「『さっき』皆には伝えた。準備万端なんてそぶりで
一月も二月も手ぐすね引いてたら敵さんも警戒が強まるだろう。
あくまでこれは向こう側の奇襲作戦なのさ。……対応できないとは、言わせないぜ」
「……本当に、好き勝手言うよ」
危険な賭けだが、土御門が胴元なのだ。すなわち十分に成算がある、ということである。
「まあ、そういうわけでお世話になる、ということです」
「これは双方の利害が一致した話だ。そうでもなきゃ受け入れられなかったんでな」
「よく言うねまったく。かたや魔術三大勢力、かたや三人の男女。
『利』だけで成り立つ取引ではありえないな」
「……ま。そのへんが私情ってやつさ」
極めて珍しいことに、土御門が言いにくそうに口ごもった。
よほどの事情があると言うのだろうか。
それともやはりこの優男に友情のひとつも感じていて、それが気恥ずかしいだけなのか。
ステイルが思考の末、これ以上の追及は止そうかと考えていた矢先――
「やはり、ショチトルの『おねがいお兄ちゃん♪』作戦の戦果は計り知れないものでしたねぇ」
待ちに待った、と言わんばかりにエツァリが大型焼夷弾を投下した。
「…………おい」
「~~♪」
「兄妹……もとい夫婦そろって同じようなリアクションを取るな!」
「……まあ、むかし舞夏が誰彼かまわず、それこそカミやんにまで
『お兄ちゃん』呼ばわりしてたことへの……ささやかな意趣返しぜよ」
「なんでそれが今、廻り廻って僕に精神的ダメージを与えてるんだっ…………!!」
「人の世のつながりとは数奇なものですねえ」
「元はといえば貴様のせいだぁーーーーっ!!!」
寂しい路地裏にお決まりの絶叫が反響した。
人払いをしてなければ野次馬が集まってもおかしくはなかった……
……やっぱ集まんないかも。いつもの事だし。
「しかしやはり、自分としてはあなたに奇妙な繋がりを感じずにはいられませんよ」
焼夷弾の延焼被害に遭ってしまったステイルが落ち着くのを見計らって、
エツァリが神妙な顔で新たな話題を切り出す。
「……ぜぇ……はぁ…………何の話だい?」
「…………少々、愚痴っぽくなるのですが」
ステイルの疑問に構わず、彼は微笑を苦笑に変えて続ける。
「報われない恋……というのはなかなかに、と言う話です」
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「あなたの方こそどうなんだ、インデックス?」
悪意など微塵もない言葉が、インデックスの胸に突き刺さる。
「…………駄目なんだよ。私の愛した人は、他の女の子を選んだの。
私から見てもお似合いというか、似た者同士の二人で…………。
だからその恋はもう、終わってる……はずなの」
本当に、よく似た二人であった。
誰かが、いや誰だったとしても苦しんでいるのを見れば放ってはおけず、
自らが傷つくことを顧みずに手を差し伸べてしまう。
……言葉にすればいやに薄っぺらく聞こえてしまうものだ。
しかし彼と彼女にとって、
その他人が鼻で笑うような感情こそが、
時に独善と呼ばれる行動こそが、
自分だけの現実(パーソナルリアリティ)など、軽く凌駕する――
――自分だけの信念(アイデンティティー)なのである。
だからこそかつてインデックスは、自らの敗北をあっさり認める事ができたのだ。
認めて、しまったのだ。
「…………大した経験のない私が言うのもなんだが、恋は一生涯に一度きりではないだろう」
「……そうだね。確かにいま、他に気になってる人はいるんだよ」
煙と焔の匂いを常に纏う、同僚の――今は部下という事になっているが――赤髪の魔術師。
彼は自分の記憶の外側で、更には意識の外側でも、変わらずに自分を守り続けてくれていた。
そのことを、情報としてインデックスは既に知っている。
「でもね……。それも、駄目なの」
そして今なお、昔と『なにも変わらず』自分を守ってくれる。
「……いったい、何故なんだ?」
だからこそ、無理なのだ。
「あの人が、すているが好きなのは……私じゃないから」
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「僕が愛したのは、彼女じゃあない」
ステイルが煙と共に吐き出した呟きに、エツァリはおろか土御門でさえ驚きを隠しきれなかった。
「おいステイル、お前…………」
「――そんなことは、大した問題じゃあないんだ。……『僕にとっては』ね」
続いた言葉に、二人は押し黙る。
口調は軽いが、言葉に籠る重さがどうしようもなく圧し掛かってきた。
「…………なるほど。自分もこういう事に関しては一家言持っているつもりでしたが」
「別に僕のそれだって、大それたものではないよ」
そう、ステイルにとって自分の想いなど何ほどのこともない。
今までさんざん、封をして閉じ込めてきたモノなのだから。
だから、ステイル=マグヌスにとっての『問題』とは『そこ』ではないのだ。
気まずい沈黙の中、突如としてステイルが目を瞑り、僅かののち見開く。
「無駄話をしてるうちに、来たようだね」
「……! 早すぎやしませんか……!!」
「そうか? オレは今日迎え撃つ腹積もりだったがな……どこだ?」
「テムズ川沿い上流から……八人か」
「……自分が行きます」
「ふざけるな。何のためにお前をロンドンに連れてきたと思ってるんだ」
「………………」
エツァリは俯いて歯噛みする。本来ならそこまで義理堅い男ではないのだが、
これが大きな『借り』であるという感覚は拭い去りがたい。
「お前は寮に行って、大事な女を側で守れ。なあに、心配しなくても……」
土御門がそんな彼を見かねて叱咤する。
そのとき、こともなげにステイルが放った一言は、エツァリをして驚愕させるに十分であった。
「そいつらは、大したことがなかった。……七人、片付いたよ」
「な…………」
「数が合わないが、あと一人はどうした?」
「どうも、一般人と一緒に居るようで手が出しづらい」
「人質でも取ったか? それは少し厄介だな……」
「僕が直接行って対処したほうがよさそうだね」
「いやいや、お前は最大主教とランベスに戻って指揮を取れ」
「………………はあ?」
露骨に顔をしかめるステイルだが、すぐに土御門の言わんとするところに思い当たる。
「そんな顔色で戦場に出てこられても足手まといだ、と言ってるんだ」
「……チッ」
今回の襲撃の前触れだったのかはわからないが、
彼は小規模な魔術師集団への対処のため、深夜に意識を張っていた。
そのせいでここ三日ほど、ステイルは満足な睡眠を――ほんの一時間ほどを除いて――取っていない。
「……ギリギリまで情報を伏せていたのはオレだ。全面的に信頼しろとは言わないがな」
……それも、納得できないことではない。
土御門を越える頭脳が他に『必要悪の教会』に存在しない以上、
リスクを見越して情報の分散を最低限に抑えることはすこぶる合理的であった。
「…………わかったよ」
「では、行きましょうか」
この場は、土御門が正しいことを認めざるを得ない。
既にすっかり落ち着きを取り戻しているエツァリを伴い、ステイルは路地裏から去っていく。
その背中に向けてどこかおどけた、しかし喜色を隠しきれない声がかかった。
「ステイル、『オレ』を信じろとは言わん」
「ただ、テメエの築いた『要塞』と……」
「――必要悪の教会(オレら)を信じて、待ってろ」
続き
ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」【2】