1 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 01:35:04.86 4pY3+XKu0 1/31

「どっひゃーっ!!!」

「ど、どうしたの!?」

「あ、あなた! あなななたたたたた! あなななななたたたたたたたたた!」

「だからどうしたの!?」

「宝くじで……三億円当たっちゃった!」

「マジで!?」

元スレ
嫁「宝くじで三億円当たっちゃった!」男「マジで!?」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1512750904/

4 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 01:38:35.17 4pY3+XKu0 2/31

「――と見せかけて、実は当たってないパターンなんだろ? 分かる分かる」

「実は去年の宝くじとか」

「今年よ」

「番号見間違えたとか」

「何度も見返したわ」

「他人の宝くじを預かっただけとか」

「正真正銘あたしのよ」

「マジかよ……」

「マジよ」

「ねえ、宝くじが当たったら一度やってみたかったことがあるの」

「やってもいい?」

「? ……いいけど」

7 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 01:41:41.88 4pY3+XKu0 3/31

「さ、さ、三億! 一等三億!」

「ホッ!」

「さ、さ、三億! 一等三億!!」

「ヨッ!」

「さ、さ、三億! 一等三億ゥ!!!」

「バー」

「まさか……これがやりたかったこと?」

「……うん」

「君はとても可哀想な頭をしてるんだね」

「あまりハッキリいわないで」

10 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 01:44:17.89 4pY3+XKu0 4/31

「三億もあれば、漬け物すげえ食えるなぁ」

「あなたの大好物だものね」

「で、三億円はどうすればもらえるのかしら?」

「銀行に行けば換金してもらえるはずだけど」

「あら、そうなんだ。当たったことないから知らなかったわ」

「よぉし、銀行に換金しに行こう!」

12 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 01:46:06.83 4pY3+XKu0 5/31

―銀行―

銀行員「いらっしゃいませ」

「宝くじが当たったので、換金したいのですが」

銀行員「ほう、いくらですか?」

「三億円です」

銀行員「三億!? ……チッ」

銀行員「こちらへどうぞ! ……チッ」

「正直で、とても好感の持てる銀行員さんだね」

「ホント」

16 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 01:50:16.26 4pY3+XKu0 6/31

銀行員「お待たせしました!」ヨロヨロ…

銀行員「三億円です」

ドサッ

「まさかの現金!?」

銀行員「はい、現金で三億です。せめてもの嫌がらせに」

「すっげえなぁ」

「ますます好感度が上がったわ」

銀行員「さ、お持ち帰り下さい」

「むき出しじゃねえ……せめてトランクに入れてもらうとかはできないの?」

銀行員「トランクの代金は2億9000万円になります」ニコッ

「この商売上手!」

18 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 01:53:22.31 4pY3+XKu0 7/31

「しかたない、このまま持って帰るか」

「よっ!」ガシッ

「重いな……!」

「三億円って30kgあるらしいわよ。一億円が10kgらしいから」

「そんなに!?」



銀行員「ありがとうございました~!」

21 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 01:59:35.67 4pY3+XKu0 8/31

「う~ん、重い……!」

「しかも、三億円をむき出しで持ち歩くって危なすぎないかなぁ?」

「襲って下さいっていってるようなもんだろ」

「ええ、きっとみんな襲いかかってくるわよ」

「そりゃそうだよなぁ。サラリーマンの生涯賃金が三億円だなんていうし」

「なんだか……ワクワクしちゃうわね!」

「うん……無事三億円を持ち帰れるか、楽しみになってきた!」

22 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:01:41.10 4pY3+XKu0 9/31

スタスタ… スタスタ…

エーマジー? ソノケンニツキマシテハ… ギャハハハッ ゲームヤロウゼー ウケルー




「……」

「……」

「みんな俺たちのことなんか見向きもしないな」

「そうね」

25 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:05:05.00 4pY3+XKu0 10/31

「なんか……心細くなってきたよ」

「あたしも……まるで二人だけ違う世界に隔離されてるみたい」

「これが“孤独”ってやつなのか……」

「もし俺たちがここで突然死したとしても、誰も悲しんでなんかくれないんだろうなぁ……」

「二つの亡骸が、誰からも見向きもされずに朽ちていくのね……」

「うっ、うっ……」

「泣かないであなた、ほらハンカチ」

「ありがとう……」グシュッ

26 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:09:28.47 4pY3+XKu0 11/31

強盗「やい、金を出せ!」

「キター!」

「よかったわね、あなた!」

「ああ、俺たちは孤独じゃなかった!」

「もし、この事件に名前がつくとしたら、どんな名前かしら?」

「そりゃあ、≪三億円事件≫じゃないか?」

「すごい! あの有名な事件と同じ名前じゃない!」

「たしかに! あ、だけど同じ名前だとあれだし≪三億円事件2≫になるかも!」

「キャーッ、続編みたい!」

「だけど、その分プレッシャーもかかるな。『1でやめときゃよかったのに』っていわれるのが怖い」

「そうねえ。続編がコケたせいで、前作の評価も下がっちゃうのは嫌だわ」

強盗「俺を無視すんな!」

31 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:14:05.08 4pY3+XKu0 12/31

強盗「包丁で刺されたくなきゃ、財布の中身出しな」ギラッ

「これやるよ。三億ある」

強盗「いらねえ。財布の中身でいいんだ」

「いやだから、これやるって」

強盗「いらねえって! オーバーマネーだ!」

「やるって!」

強盗「いらねえ!」

「やる!」

強盗「いらない!」

「まあまあ、ケンカしないで二人とも」

32 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:16:37.30 4pY3+XKu0 13/31

「こういうのはどう?」

「強盗さん、あなた一億円持ってちょうだい。およそ10kg」

「で、あたしたちの家まで持ち帰ったら、バイト代としてそれをあげる。どぉう?」

「そりゃいいな! 正直重くて困ってたんだ!」

強盗「チッ、一億円もいらねえけど……それで手を打ってやるか」

34 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:19:40.99 4pY3+XKu0 14/31

アハハハハ… ウフフフフ…

「強盗さん、あんたなかなかいい男だね」

「ホント、強盗にするには惜しいくらいだわ」

強盗「あんたらこそ、いい夫婦じゃねえか。今日が11月22日じゃないのが残念だ」

「ところで、あんたはなぜ強盗なんか?」

強盗「会社をリストラされちまってね……」

強盗「家族のために、どうしても金が欲しかったんだ……」

「そうか……じゃあ三億円やるよ」

強盗「おっと! その手には乗らねえ!」

「……くそっ」

「ねえ二人とも! あそこ見て!」

35 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:24:05.62 4pY3+XKu0 15/31

暴漢「金出せやァァァッ!」

社長「ひいい……!」



強盗「あ、あれは社長!?」

「もしかして、あんたをリストラした社長か!」

「暴漢に襲われてるわ! いい気味!」

「これぞまさに天もうなんたらかんたらかんたらってやつね!」

「天網恢恢疎にして漏らさずね」

「リストラした報いだ。俺たちはここでじっくり社長が襲われるのを見物しようじゃないか」

「うんっ!」

強盗「……」

38 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:28:25.93 4pY3+XKu0 16/31

強盗「社長ッ!」ダッ

「なにやってるの!?」

「バカ、あんな奴見捨てろ!」



強盗「うおおおおおっ! 一億円アターック!」ブオンッ

ゴッ!

暴漢「ぐはぁっ……!」ドサッ

強盗「紙とはいえ10kgあるからな……立派な武器になるのさ」

強盗「社長、ご無事ですか」

社長「き、君は……!? 私がリストラしたはずの……!」

社長「なぜ私を助けた……!? 恨んでいるだろうに……!」

強盗「たとえリストラされても、雇ってもらっていたのは事実ですから」

社長「ううっ……!」

39 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:31:24.46 4pY3+XKu0 17/31

社長「ムシのいい話だが、もう一度我が社に戻ってきてはくれないか」

強盗「いいんですか!?」

社長「いいとも……!」

社長「もう二度と、私は君を手放しはしない!」ガシッ

強盗「ありがとうございます!」



強盗「というわけで、一億円返すわ」

「あーあ、戻ってきちゃった……」

42 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:36:55.82 4pY3+XKu0 18/31

―ファミレス―

「あ~……重かった」ドサッ

「どうしましょう、これ。家までまだ結構距離あるわよ」

「そこらへんの人にあげちゃおうか」

「だったらあの人がいいんじゃない? なんだか幸薄そうだし」

「そうだな。俺たちより、ああいう人の方が三億円に相応しいかも」

「あのー」

喪服女「……なにかしら」

45 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:40:06.10 4pY3+XKu0 19/31

「三億円いりません?」

喪服女「いらないわ」

「なぜだ!」

喪服女「だって……急に大金を手に入れた人って、破滅しちゃうことが多いのよ」

喪服女「お金をめぐって人間関係が悪化したり、金銭感覚が狂ったりしてね」

喪服女「……私は破滅したくないもの」

「は、破滅!?」

46 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:43:50.14 4pY3+XKu0 20/31

「どうしましょ、あなた! 破滅ですって!」

「まずいな……!」

「なんか急に三億円が厄病神に思えてきた……」


三億円「……」ゴゴゴゴゴ…


「見ろよ、このどす黒いオーラ」

「まるで『人間ども、我で欲望をかき立てられ破滅するがよいわ』っていってるようね」

「こうなったら……なんとしても三億円を誰かに押し付けるんだ!」

「うん!」

51 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:49:16.09 4pY3+XKu0 21/31

「三億円やるよ!」

不良「いらねえよ、そんなもん!」

「三億円あげるわ!」

主婦「オホホ、遠慮しとくわ」

「三億円欲しくない?」

少女「いらなーい!」

「三億円あげる!」

ホームレス「ケツ拭く紙にもなりゃしねえ」



「……ダメだ、誰ももらってくれない!」

「どうしましょ! このままじゃあたしたち破滅よ!」

52 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:53:19.68 4pY3+XKu0 22/31

「そうだ!」

「へい、パース!」ヒュッ

会社員「!」ドサッ

会社員「へい、パース!」

老人「おお!?」ドサッ


パース! パース! パース! パース! ……



「これは……どういうこと?」

「人間はパスされると意外と素直に受け取っちゃう習性がある」

「それを利用したのさ!」

「すごいわ!」

「三億円は永久にパスされ続けて、二度と戻ってくることはないだろう……さ、帰ろう!」

56 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 02:58:41.62 4pY3+XKu0 23/31

「やっと家に着いた」

「よかったわね~、三億円を処分できて」

「ああ、一時はどうなることかと思ったよ」

近所のおばさん「こんにちは~」

「あ、どうも」

近所のおばさん「へい、パース!」ヒュッ

「ん?」ドサッ

「うわあああああああ!!!」

「戻ってきたわあああああ!!!」

58 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 03:01:38.65 4pY3+XKu0 24/31

「おばさん、これパスし返します!」

近所のおばさん「ダ~メ、それはルール違反よ」

「くそっ……!」

「近くにパスできそうな人はいないし……」キョロキョロ

「どうしましょ? このままじゃ破滅よ! 破滅待ったなしよ!」

「こうなったら仕方ない……!」

60 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 03:05:08.61 4pY3+XKu0 25/31

「燃やそう」

シュボッ


メラメラメラメラ…

ゴォォォォォォ……!





「これで……よかったのよね」

「ああ、金は人を悪魔に変える。これでよかったんだ……」

62 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 03:08:45.61 4pY3+XKu0 26/31

「あら……?」

「どうした?」

「燃やした灰が……どんどん集まっていくわ!」


モクモクモク…

モワモワモワ…



「再生してる……!?」

「いや、これは再生なんてもんじゃない! “復元能力”だ!」

65 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 03:12:27.42 4pY3+XKu0 27/31

三億円「フハハハハ……!」



「復活しやがった!」

「どうしましょ、あなた!」

「こうなったら素手だ! 素手で戦うしかない!」サッ

「無理だわ! 相手は三億円なのよ!?」

「くっ……!」

三億円「お前たち……」

「?」

三億円「なぜオレを燃やそうとするんだッ!!! ……せっかく当てたのにさぁ!」

68 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 03:17:31.78 4pY3+XKu0 28/31

「そりゃあ、破滅するからに決まってるだろ!」

三億円「破滅しないようにすればいいだけだろ!」

「防げる破滅なんて破滅じゃないわ。不可避だからこそ破滅なのよ」

「そうだそうだ! そんなのはせいぜい準破滅だ!」

三億円「だから、オレによって起こり得る破滅なんてのはせいぜい準破滅なんだよ!」

三億円「お前たちの理論なら、準破滅なら防げるんだろ?」

「そうだけど、準破滅も破滅には違いないから、やっぱり破滅と同じぐらい危険なんだ!」

三億円「しかし、破滅の危険度を100としたら、準破滅の危険度は80ぐらい! それなら防げる!」

「いや、80を甘く見ると痛い目を見るぞ! 俺も昔……」

「二人とも、落ち着きなさい」

71 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 03:21:21.97 4pY3+XKu0 29/31

三億円「失礼、取り乱してしまった。三億円ともあろう者が」

「俺こそ……すまなかった」

三億円「本音をいおうか」

「……」ゴクッ

「……」ゴクッ

三億円「せっかくこの世に金として生まれたのに燃やされるなんてあんまりだ!」

三億円「どうか……どうかこの家に置いて下さい!」

三億円「お願いします!」

「……」

72 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 03:24:05.90 4pY3+XKu0 30/31

「どうする、あなた……?」

「三億円はたしかに俺たちに破滅をもたらす危険性があるのかもしれない」

「だけど……俺たちなら、やっていけるさ! どんな破滅でも乗り越えられる!」

「そうね!」

三億円「ありがとうございます! ありがとうございます!」

「じゃあ、今日からよろしくな! 三億円!」

「よろしくね!」

三億円「はいっ!」

75 : 以下、5... - 2017/12/09(土) 03:27:42.22 4pY3+XKu0 31/31

その後――

「あなた、漬物ができたわ」

「ありがとう!」

「お、うまい!」ポリポリ

「なにしろ、三億円だもの」

「三億円を重しにして漬けた漬物は最高だ!」ポリポリ







おわり

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