2 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 22:47:09.55 E98teO+t0 1/454


「……目が覚めたらベッドに縛られてた。何を言ってるのか分からねーと思うが俺も何を言ってるのか分からねぇ」


「……おはよう。男くん」


「おぉ、お前はクラスメイトでクラス委員長の女じゃん」


「な、なんか棒読みで説明口調な気がするけど……まぁいっか」


「?」



元スレ
男「監禁されて始まる恋?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1323870132/

3 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 22:53:10.85 E98teO+t0 2/454


「目、覚めたみたいだね」

「あぁ」

「……」

「……」

「……」

「……」





「……え? この状況について何も聞かないの?」



4 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 22:54:51.38 E98teO+t0 3/454


「それもそうだな。じゃあなんで俺は縛られてんの?」

「……」

「……」

「……男くんが悪いんだよ……」

「えっ、マジで? ごめんな」

「……」

「……」


5 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 22:58:42.04 E98teO+t0 4/454


「……」

「……」

「……」

「……」

「?」





「……いやいや。だからさぁ、もっと掘り下げてよ!詳しく説明求めてよ!」




6 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:04:05.15 E98teO+t0 5/454


「了解。じゃあなんで俺が悪いの?」

「私がいるのに他の女と仲良くしてるからいけないんだよ……」

「友達と仲良くしちゃいけないのか?」

「だめ。ダメ。駄目。男くんは私だけ見てればいいの。他の雌共なんて眼中になくて当然なの」

「なんでそんなに拘るんだ?」

「あなたが好きだから。大好き。ずっとずっとずっとずっとずっと大好きだった。好き好き好き好き好k」

「おう……つーかしつこい。一回言えば分かるって」

「えっ……あ、その…………ごめんなさい」シュン

「いいよ。許す」



7 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:07:14.10 E98teO+t0 6/454


(……あれ? なんかおかしいなぁ)


「どうした?」

「えーっと、今まさに男くんは縛られてるよね?」

「あぁ。つーかお前が縛ったんだろ?」

「……要するに人質みたいな感じだよね?」

「まぁそうなんじゃない?」

「縛られてるから、当然何もできないよね?」

「あぁ。痒いところを自由に掻けないのは辛いな」

「……」

「……」




8 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:12:33.00 E98teO+t0 7/454


「……なんで?」

「何が」

「なんでそんな……その、余裕なの?」

「というと?」

「ほら、こういう時って普通は怖がったり萎縮したりするんじゃないのかな?」

「お前は俺に怖がったり萎縮したりして欲しいの?」

「えーっと……どう、だろう?」

「……」

「……」




9 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:15:10.54 E98teO+t0 8/454


「……でも案外怖いぜ。内心ビクビクだぜ」

「無表情に見えるのは気のせいかなぁ?」

「気のせいだろ。ほら、ちょっと薄暗くなってきたし」

「昼間なんだけどね」

「マジか。時間感覚無くなってんなー」





※男は今、縛られています。




11 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:20:26.39 E98teO+t0 9/454


「……じゃあ話を戻すよ?」

「了解」

「男くんが他の女に現抜かすからいけないんだよ」

「だからってそれが拘束に繋がるのかよ……つーか現抜かしてなんかねぇぞ」

「あの雌共……男くんの事これっぽっちも知らない癖にベタベタしやがって……!」

「あれ? 聞いてる?」

「私の男くんに近づくな近づくな近づくな近づくな近づくな近づくな……」

「あぁ、俺の意見はスルー的なアレか」



13 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:23:10.42 E98teO+t0 10/454


「…………」ブツブツ


「おーい」


「…………」ブツブツ


「おい」


「…………」ブツブツ


「……」






14 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:25:52.00 E98teO+t0 11/454






「――女ぁぁぁっ!」

「!? な、ななな何っ!?」ビクッ





16 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:28:32.44 E98teO+t0 12/454


「やばい……なんかやばいぞ!」

「ど、どうしたの!? 何がやばいの!?」

「くそっ……このままじゃ説明出来ない!」

「えっ!? えっ!?」

「これを外してくれ!そうすれば……こう、やばいアレがアレで何とかなる!」

「え、あっ……う、うん!ちょっと待ってて!」カチャカチャ

「よし、なるべく早めに頼むぞ!」

「うんっ!」カチャカチャ



17 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:31:15.89 E98teO+t0 13/454


「……よしっ!外れたよ!」

「おっしゃあ!よくやった!」

「そ、それで……どうしたの?」

「あぁ……次は外が安全かどうか確かめないとな!」

「あ、安全……!?」

「女、お前はここで待ってろ。俺が行ってくる」

「わ、私も一緒に行くよ!」

「……いや、俺だけでいい。お前が怪我なんてしたら……」

「男くん……////」

「よし、行ってくる!帰りが遅くても心配するな。またすぐ会える!」

「うんっ!気をつけてね!」




18 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:34:45.65 E98teO+t0 14/454







「…………」










「………」










「……」










(……あれ? もしかして私、騙された?)






19 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/14 23:37:43.90 E98teO+t0 15/454






「……まさか本当に解放してくれるとは。何がしたかったんだあいつは……」←普通に帰宅中



(……明日学校あるし、友にでも相談してみっか)






28 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 17:05:18.49 GyO/PqCl0 16/454




――翌日、学校。




「――って事があってよぉ」

「マジか」

「どうしたらいいのかね?」

「うーん……」

「昨日はなんとか命からがら逃げきったし」←割りと余裕でした

「また監禁されるくらいだったら逆にこっちから襲っちゃえば?」

「よし、殴る」

「めんご」



29 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 17:06:51.98 GyO/PqCl0 17/454


「しっかし、あの委員長がねぇ……」

「俺も驚いたよ。あいつの部屋って案外質素なのな」

「えっ」

「えっ」




30 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 17:09:05.44 GyO/PqCl0 18/454


「まぁそれは置いといて。どうしたらいいのかね?」

「うーん……好きにしろよ。本当にやばいんなら警察行けば?」

「んー……でも正直被害があんまりなさそうなんだよな」

「お前さっき『命からがら逃げきった』って言ってなかったっけ」

「気のせいじゃね?」

「……あ、なんかそんな気がしてきた」

「一体あいつには何の目的があるんだ……」





32 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 17:11:22.41 GyO/PqCl0 19/454


「かわいいもんじゃん。好きな人を独占したい――なんて」

「まぁ、好いてくれてるのは嬉しいな。俺のどこが良いのか分からんけど」

「幸せ者だろ、委員長に好かれるなんて。オレなんか姉貴に何回も包丁で―――」

「ん?」

「……つーかさぁ、なんなら本人に聞いてみろよ」

「そりゃ盲点だった……!じゃあ行ってくる!」

「あいよ。気ぃつけてなー」





33 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 17:14:11.64 GyO/PqCl0 20/454




「おい、女ぁー」

「……男くん」

「ちょっと聞きたい事あるんだけど、いいか?」

「……うん」





~屋上~





「早速聞かせてもらおう」

「……」

「なんで俺を監禁した?」

「えっ」

「?」




34 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 17:16:13.08 GyO/PqCl0 21/454


「いや、えっと……好き、だからだよ?」

「好きなのはもう分かった。でもだからって監禁していい事にはならねぇだろ?」

「……そんなの関係ないもん」

「?」

「他の雌共に取られるくらいなら……私が……!」ブツブツ

「……」





(……腹減ったな)




35 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 17:21:10.08 GyO/PqCl0 22/454


「そういう男くんこそ……私の事騙したよね?」

「あれ? そうだったっけ?」

「私……信じてたのに……グスッ」

(な、泣きっ!?)

「いや待て。確かに俺はそのまま帰宅したけど――」

「……グスッ……ううっ……」

「……」





36 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 17:23:53.96 GyO/PqCl0 23/454


「分かった。分かったよ」

「……え……?」

「お前の言うこと一つだけ聞いてやる。だから許せ」

「ほ、ほんと……?」

「おれ、うそつかない」

「じゃあ……今日の放課後、私の家に来て」

「了解」

「や、やった……!」





37 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 17:26:55.50 GyO/PqCl0 24/454





「そんなこんなで考えも無しに約束をしてしまった男(笑)。さて、あいつの運命やいかに……!?」





43 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 21:50:52.04 GyO/PqCl0 25/454

簡単なキャラ紹介。


・男……基本的に無感動で無表情なクールガイ。なのに馬鹿。
「緊急事態に脱力を」がモットーで好きなものは砂時計。
唯一の弱点は女の涙。(本人談)


・女……クラス委員長なだけあって成績は優秀。なのに馬鹿。ていうかもはやアホ(ry
好きなものは男くん。男くん男くん男くん男くん男くん男(ry


・友……わりとぶっ飛んだ相談事を持ちかけても親身になってくれる凄い奴。実は苦労人。
「なるべく傷は浅く」がモットーで好きなものは鳩。



22時頃になったら再開します。

44 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:09:45.15 GyO/PqCl0 26/454


「男くん。か・え・ろ……?」

「おう。つー訳だ友、お前とは帰れない」

「え?」

「は?」



「……」チラッ

「……?」



「ちょっとだけ男借りるなー」

「?」



45 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:15:02.68 GyO/PqCl0 27/454


「一体何がどーなったんさ?」

「何が?」

「委員長と話したんだろ? 監禁した理由は何だって?」

「俺の事好きだからだってさ」

「いやいや。それで納得したんかい」

「まぁ俺にも悪いところが無かった訳じゃないからよ、仲直りに女の家に行く事にした」


「あっはっはー馬鹿だこいつー♪」




46 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:21:04.01 GyO/PqCl0 28/454


「なんだと」

「馬鹿かお前。お前が馬鹿で馬鹿がお前でって感じかコラ」

「……」

「そんな『うわぁ……』みたいな目で見んな!」

「うわぁ……」

「声に出すな!」

「まぁそういう訳だから、お先ー」

「待て。お前また監禁されたらどうすんだよ」

「大丈夫だろ。女も『そんな事しないと思う』って言ってたし」

「思うってなんだよおい!」




47 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:25:37.37 GyO/PqCl0 29/454


「なんだよ。女子の部屋に行けるのが羨ましいのか?」

「文面だと羨ましく感じなくもないがやっぱ気のせいだったわ」

「とにかく大丈夫だって。ただ友達ん家行くだけだぜ」

「不安しかないぞ……」

「そんじゃあな」

「―――男!」

「今度は何だよ?」

「これ、持ってけ」

「なんだこのサロン○スみたいなのは」

「発信機」

「マジかよ」



48 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:31:32.37 GyO/PqCl0 30/454


「そうだな……足の裏とかに貼っとけ。いざって時の為にな」

「了解」

「あと明日になってお前が学校に来なかったら、昼頃お前の携帯に五分おきに二回だけ電話する。
あんまり沢山電話して警戒されたら終わりだからな」

「ふむふむ」

「一回でも取れたらお前は脱出したと見なす。二回とも取れなかったらすぐ女の家に突入する。
発信器が壊されても同じだ」

「……なんかお前凄いな。そもそも発信機とか持ち歩いてねーぜ普通」

「……あぁ、なんせ慣れてるもんで……」ハァ

「?」




49 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:37:51.55 GyO/PqCl0 31/454





――そして。



「お邪魔しまーす」

「いらっしゃい」

「昨日も思ったけど、でかい家だよなー」

「うふふ。そうかな? さ、上がって上がって」

「よっこいせ」

「じゃあ先に私の部屋行ってて。分かる?」

「階段上がってすぐ左の部屋だったっけ」

「うん。私は飲み物取ってくるから」

「お構いなく」



50 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:41:51.31 GyO/PqCl0 32/454





「……」








「……」








(……暇だな)








「……」







51 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:46:17.32 GyO/PqCl0 33/454




(……どうすりゃ仲直りできるかな)


(普通に謝るか? それとも拳で語り合うか? うーん……)





(……つーか腹減ったな)




52 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:49:35.29 GyO/PqCl0 34/454


「お待たせ」ガチャッ

「おう」

「はい」

「どーも。紅茶か」

「うん。最近寒いし…………どう? 美味しい?」

「んー。美味い」

「……少ないけどお茶菓子も。どうぞ」

「サンキュ。つか仲直りなのにこんな一方的にもてなしてもらって悪いな」






「……ううん。気にしなくていいよ」ニコッ






53 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:54:53.74 GyO/PqCl0 35/454










* * * * * * * *











54 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/15 22:57:18.13 GyO/PqCl0 36/454






()










(…)










(……)










(……!)ハッ







「……目、覚めた?」ニコッ






64 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 15:46:01.55 jfuO7Aqc0 37/454


「女……」

「……」ニコッ




(―――って、また縛られてる……)




「悪い悪い。なんかいつの間にか居眠りしちまったみたいだ」

「へ?」

「ベッドまで移してくれたのは嬉しいけど、縛る必要はないよな」

「……相変わらず冷静だね……」




65 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 15:48:19.84 jfuO7Aqc0 38/454


「……」

「……」

「……女!」

「は、はいっ!?」

「やばい!アレがこう、何となくやばいからこれ外してくれ!」

「こ、今度は騙されないよ!」

「……」

「……」





「……成長したな、女……」




66 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 15:57:31.28 jfuO7Aqc0 39/454


「……と、とにかくこれでずっとずっとずっとずっと一緒だよ?」

「……」

「私は男くんの事何でも知ってるし何でも受け入れるんだよ?」

「……はい、質問!」

「どうぞ」

「俺の言うことは聞いてくれますか?」

「うん。男くんが望む事なら」

「じゃあこれ外して」

「え? 嫌だけど……」

「ちっ」




67 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 15:59:35.59 jfuO7Aqc0 40/454


「なんだよー。『何でも言うこと聞く』とか嘘かよー」

「ち、違っ……違うもん!嘘じゃないもん!」

「えー。俺嘘つく人嫌いだなー」

「嘘じゃないもん……何でも言うこと聞くもん……!」

「だってこれ外してくれないじゃんよー」

「だって……だって、男くんの事好きなんだもん……グスッ」




(……こんなに弄られてんのに俺の事嫌いにならないのか。えぇ娘や)





※男は今、縛られています。





68 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 16:02:29.83 jfuO7Aqc0 41/454


「グスッ…………と、とにかく。私は男くんを愛してる」

「おう。そりゃ嬉しいな」

「そして男くんも私を愛してる。だから私達は結ばれるべきなの。ううん、結ばれなきゃいけないの」

「いや、そのりくつはおかしい」

「男くんとずっと一緒……どんな時でもずっと一緒にいてあげる……死ぬまで一緒だよ……ううん、死んでも放さない」ブツブツ




「……はい、質問!」

「どうぞ」




69 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 16:04:59.60 jfuO7Aqc0 42/454


「学校とかどうすんの?」

「あんな所行かなくても大丈夫だよ。私も辞めてずっとあなたの傍にいてあげるから……」

「トイレとか食事とかは?」

「全部私に任せて。男くんは私の事だけ考えてればいいの」

「でも人間って長い事同じ体勢でいると身体がおかしくなるんだってよ?」

「大丈夫。どんな男くんでも私は大好きだよ?」

「そりゃすこぶる嬉しいが、動けないのは辛すぎるな……」




70 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 16:11:11.97 jfuO7Aqc0 43/454


「……」

「……」

「……」

「……女」

「なに?」

「暇だからスマブラやろうぜ」

「……別に、いいけど。どうしたの急に?」

「何となくな」

「じゃあ準備するから待っててね?」

「了解」





71 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 16:15:37.61 jfuO7Aqc0 44/454


「あ、そうだ。俺も準備手伝うから先にこれ外してくれよ」

「ふふっ、ありがと。ちょっと待っててね」カチャカチャ

「いえいえ。どういたしまして」

「はい、外したよ」

「サンキュ。ちょっとついでにトイレ行ってくるな」

「うん。行ってらっしゃい…………ふふっ。なんだか新婚さんみたいだね」

「そうだな。じゃあまた明日」

「うんっ」




73 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 16:18:36.04 jfuO7Aqc0 45/454


「……」










「……」










(……あれ? 『また明日』ってどういう事だろう?)






75 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 16:20:28.74 jfuO7Aqc0 46/454






(……)









(……)










(……もしかして私、また騙された!?)





76 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 16:22:29.65 jfuO7Aqc0 47/454






「……またしても脱出成功。もしかして女ってお馬鹿さんなのか?」←普通に帰宅中


(発信機、結局使わなかったな。明日友に返すか……)




83 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 22:49:47.55 jfuO7Aqc0 48/454


――翌日、学校。




「よう」

「おう。おはよ」

「最近寒ぃよなー」

「あぁ、全くだ」

「……」

「……」

「……」




「……いや、おい」

「?」



84 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 22:51:41.72 jfuO7Aqc0 49/454


「なに? お前普通にピンピンしてんじゃん!」

「おう。危なかったが……なんとかな」←割りと余裕でした

「大丈夫だったか? 何もされなかったか?」

「あぁ、なんか女ん家行って少ししたらすぐ眠くなってな。そんで気づいたら縛られてた」

「よく無事に脱出できたな……ん?」

「どした」

「『女ん家行って少ししたらすぐ眠くなった』?」

「おう」




85 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 22:53:15.21 jfuO7Aqc0 50/454


「その『少し』の間に何かしたか?」

「いや、特に」

「……そうか。じゃあなんで急に眠くなったんだ?」

「分からん。紅茶入れてもらったくらいしか……」

「……」

「……」

「……いや、どう考えてもそれだろおい」




86 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 22:58:01.35 jfuO7Aqc0 51/454


「?」

「だから、紅茶だよ紅茶。紅茶に入ってたんだよ」

「何が? ナトリウムが?」

「アホか。んなもん大抵の食品に入ってるっつーの」

「?」

「本気で分かってねぇのか……睡眠薬だよ。お馴染みのな」

「マジか」

「恐らくな」




87 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:02:30.75 jfuO7Aqc0 52/454


「うーん……睡眠薬ねぇ」

「複合して使うと市販のでも効果倍増するからな……多分間違いない」

「……よし、じゃあ女に聞いてみるか」

「いやいや、何一つ『よし』じゃねぇよ!」

「その方が手っ取り早くね?」

「そりゃそうだけど答えてくれる訳ねーだろが」

「いや、案外試供品をくれるかも……」

「清々しくも何ともない馬鹿かお前は。薬局じゃねぇんだよ」




88 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:07:02.32 jfuO7Aqc0 53/454


「……つーかさっきから思ってたけど、お前腕どうしたん?」

「あぁ、これ? 切らr……じゃなくて、間違えて切っちまった」

「うお。痛そうだな……どうして切ったんだ?」

「妹―――じゃねぇや。オレが料理してたら急にGが出やがってな……」

「ははっ。で、驚いて切っちまったと」

「……まぁ、そんなとこ」ハァ






「……あれ? でもお前、料理できないって言ってなかったか?」

「……あ、そうだったっけ」




89 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:11:42.07 jfuO7Aqc0 54/454


――そんでもって昼休み。




「おい」

「……」ボー

「おい」

「……」ボー

「……ったく。オレ先に教室戻ってんぞ」

「んー」











「……」







90 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:12:38.97 jfuO7Aqc0 55/454





「……」ボー



「……男くん」



「……」ボー



「……男くん」



「……」ボー



「……男くん?」





91 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:14:20.03 jfuO7Aqc0 56/454


(すごいボーッとしてる……かわいいなぁ)

(……あれ? この状況……)



無防備な男くんが目の前に→キスしちゃえ→ゴールイン☆



「か、完璧!やった!私って天才っ!?」





「うるせーなぁ…………あれ、女じゃん」

「」




92 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:17:36.71 jfuO7Aqc0 57/454



「お、おはよう」

「……」

「べ、別に何もしてないよ? 襲っちゃおうとか全然考えてないよ?」

「……」ボー

「ちょっ、ちょっと!戻ってきて!」

「どうした?」

「……男くんさぁ、また昨日嘘ついたよね?」

「え?」

「なんで嘘ついたの? せっかく仲直りしたのに……ねぇ、なんで?」

「……」

「なんで何も言わないの? あ、分かった。クラスの雌共に唆されたんでしょ?」

「……」




93 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:19:12.60 jfuO7Aqc0 58/454


「きっとそう。あの豚共のせいなんだ」

「……」

「ごめんね、男くんを疑っちゃって。男くんは私を愛してるんだもん……嘘なんて絶対につかないよね?」

「……」

「ね? 男くん?」

「……」







「……」ボー

「」




94 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:21:44.49 jfuO7Aqc0 59/454


「……おっと。悪い、何か言ったか?」

「うぅ……何も言ってないよもぉ……」グスッ



―――キーンコーンカーンコーン



「やっべ、授業始まる。早く戻ろうぜ」

「う、うん……」




96 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:32:28.06 jfuO7Aqc0 60/454



――放課後。



「友ー、帰ろうぜー」

「おう」

「そういや明日は創立記念日で平日ながら休みなんだよなー」

「いや知ってるよ。つーかなんで棒読み?」

「だって言わなきゃ分かんないだろ?」

「えっ」



97 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:34:39.21 jfuO7Aqc0 61/454




「なー、明日暇か?」スタスタ


「いやー。予定ある」スタスタ


「マジかー。何すんの?」スタスタ


「女ん家行ってスマブラやるー」スタスタ


「ふーん。インドアだなー」スタスタ


「ほっとけ」スタスタ





98 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:37:54.42 jfuO7Aqc0 62/454




「……」スタスタ



「……」スタスタ



「……」スタスタ



「……」ピタッ



「どうした?」



「なぁ。そろそろいいか?」



「……え? よく分からんけど、いいよ」











「お前は馬鹿か!!!!」




99 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:40:50.35 jfuO7Aqc0 63/454



「なんだ? 委員長ん家行って? スマブラやるだぁ?」

「うん。昼休みに誘われてな。昨日は出来なかったし」

「……馬鹿か……やはり馬鹿か」

「なんだよ? もしかして羨ま――」

「――しくねぇよアホか」

「ならどうしたんだよ」

「お前また監禁されたらどうすんの?」

「大丈夫だろ。ゲームやりに行くだけだぜ」

「昨日も似たような事言ってただろが……」




100 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:42:55.31 jfuO7Aqc0 64/454


「いい加減学べよ……それともなにか? お前はMなのか?」

「Sが七割、Mが三割かな。最近気づいたんだけど」

「どうでもいい情報までありがとよ」

「大丈夫だ。俺を信じろ」

「お前を信じられても委員長を信じられねぇよ」

「なんならお前も来るか?」

「遠慮しとく。殺されたくねぇしな」

「大袈裟だな」




101 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/17 23:45:29.85 jfuO7Aqc0 65/454


「……じゃあ無理には止めねぇよ。昨日渡した発信機、まだ持ってるか?」

「あぁ」

「あいよ。そんじゃあ昨日と同じ流れで」

「おう。悪いね」

「悪いと思うなら自分から蟻地獄に飛び込むなよ……」ハァ







「じゃ、また明後日な」

「あぁ。気ぃつけてなー」




114 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 12:46:30.01 Fe+tSugu0 66/454


――はい、翌日。



「……」ピーンポーン

「いらっしゃい」ガチャッ

「早いな出るの」

「だってずーっと待ってたもん。上がって上がって」

「了解。お邪魔しまーす」

「先に私の部屋に行ってて。私は飲み物持って来るから」

「お構いなく」




115 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 12:47:17.57 Fe+tSugu0 67/454


「……」








(……暇だな)








(……スマブラでどのキャラ使うか決めとくか)




116 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 12:48:10.84 Fe+tSugu0 68/454


「お待たせ」ガチャッ

「おう」

「はい。どうぞ」

「お、紅茶か」

「今日はアップルティーだよ」



(……なんかこれ、デジャヴだな)




117 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 12:49:27.99 Fe+tSugu0 69/454





「……悪い、やっぱ俺あんまり喉渇いてないわ」


「え?」





118 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 12:51:45.86 Fe+tSugu0 70/454





「だからお前だけ飲んでくれよ」


「……」


(残念だったな……薬を飲ませようったってそうはいかねぇぞ)


「……そっか……ごめんね。余計なことして……」グスッ


(泣きっ!?)


「……ごめんね。嫌いにならないで」


「お、おう……?」



119 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 12:53:37.48 Fe+tSugu0 71/454


「……」

「……」

(……ったく。しゃーねぇなぁ)

「……あれ? なんか急に喉が渇いてきたぞ?」

「ほ、ほんと!?」

「だからやっぱり紅茶貰おうかなー」

「うんうん!どーぞ!」



(――よし、ここが勝負だ!)




120 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 12:55:34.46 Fe+tSugu0 72/454




(向かって俺に近い方のカップが俺用の―――つまり睡眠薬入り。なら上手い具合に女用のカップを取れば……!)

(無事に紅茶を飲めて女は熟睡。そして一人でlevel9のCPU三人相手にスマブラ無双できる……!)

(……恐ろしく完璧だな。よし)




121 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 12:59:55.90 Fe+tSugu0 73/454


「じゃ、頂きまーす」スッ


「……うん」


(悪いな。銀色のコントローラーは俺が独占すんぜ)ゴクッ


「……」


「……どうした? お前は飲まないのか?」







「……うん。もう済んだから」ニコッ




122 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 13:00:53.44 Fe+tSugu0 74/454









「おやすみなさい……」









131 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 22:42:43.56 Fe+tSugu0 75/454






「……ん」

「おはよう」

「おぉ。また居眠りして悪いな。どうやら俺は紅茶を飲むと意識が途切れやすくなるらしい」

「あ、うん……そうなんだ……」

「つーかまた縛られてるし」

「だって男くんがすぐ逃げるんだもん」

「そりゃあな。『縛られてからが勝負』みたいなところあるからな」





「……相変わらずだね。なんか安心したよ」




132 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 22:45:11.55 Fe+tSugu0 76/454



「でも今度は違うよ。今度こそずっと一緒だから。今までが甘すぎたんだよね?」

「俺も今度こそスマブラやりたかったんだがな」

「もう絶対絶対絶対絶対ぜーったい放さないから……安心して?」

「分かった。安心する」




133 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 22:46:30.81 Fe+tSugu0 77/454




「じゃあ……大人しく待っててね?」


「どっか行くのか?」


「うん。男くんに近づく雌豚共を粛清してくるから……」


「マジか」




134 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 22:48:51.24 Fe+tSugu0 78/454



「……え? なに、殺しちゃうの?」

「うん。あんな泥棒猫共は死んで当然でしょ?」

「過激だねぇ」

「私の男くんに色目使いやがって………!」

「いやだから色目使われた覚えはねぇし、他の女子となんて大して仲良くもねぇぞ?」

「……刺す千切る潰す砕く殴る抉る捩る裂く……」ブツブツ

「聞いちゃいねぇや♪」





※男は今、縛られています。




135 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 22:51:23.28 Fe+tSugu0 79/454



「じゃあ行ってきます……」


「お前一人だとなんか不安だな」


「大丈夫だよ」


「本当か?」


「うん。私には男くんの愛がついてるから」


「マジか。なら大丈夫だな」




136 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 22:53:32.24 Fe+tSugu0 80/454




「じゃあ……すぐ戻るから待っててね」ニコッ


「あ、そうだ。ちょっと待って」


「?」


「俺も手伝うからさ、これ外してくれよ」


「え? 嫌だけど……」


「ちっ」




137 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 22:56:39.19 Fe+tSugu0 81/454


「やっぱり人殺しなんて良くないだろ」

「……」

「俺らまだ高校生だし」

「……関係ないもん……」





「……でもさぁ、やっぱ俺としても(俺の事が)好きな女子に殺人なんてして欲しくないんだよ」

「ふぇっ!?」





138 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 22:58:19.90 Fe+tSugu0 82/454


「ん?」

「…………」

「あれ? 聞いてる?」

「……き……私の事が……好き……///」ブツブツ

「おーい」

「えへへ……知ってたことだけどさ、改まって言われると恥ずかしいね……」

「……恥ずかしい? 何が?」




「えっ」

「えっ」




139 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:00:17.23 Fe+tSugu0 83/454


「仕方ないなぁ。男くんったら寂しがり屋さんなんだから……特別だよ?」


「やったぜ」


「一人残らず駆逐したいところだけど、どうせここから一歩も出ないもんね? 大丈夫だよね?」


「おう。俺に任せとけ(?)」


「うふふふふふふふふふふ……」





140 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:02:13.63 Fe+tSugu0 84/454




「……よし、そんじゃあスマブラやろうぜ」

「だめ」

「ちっ」





※男は今、縛られて(ry




142 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:04:52.54 Fe+tSugu0 85/454


「そんな事よりさぁ……私はあいつらから男くんを助け出したんだよ……?」

「ん? そうなる……のか?」

「そうだよ。だから褒めて? ねぇ、褒めてよ……褒めて褒めて褒めて褒めて褒めて褒めて?」

「よし、ならば頭をなでなでしてやろう」

「ほ、ほんと!?」

「おれ、うそつかない」

「やったぁ!」




143 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:06:18.81 Fe+tSugu0 86/454



「そんじゃあこれ外してくれ」

「うん。待っててね!」カチャカチャ

「おう。焦らなくてもいいぞ」

「???♪」カチャカチャ

(随分と嬉しそうだな……可愛いじゃねぇか)




144 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:07:49.26 Fe+tSugu0 87/454



「外れました!」


「褒めてつかわす。近う寄れ」


「はいっ」


「……よし、では始める」スッ


「……」ドキドキ


「……」


「……」ドキドキ


「……」ポフッ


「っ……!」ピクッ




145 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:09:29.62 Fe+tSugu0 88/454



「大丈夫か?」


「う、うん……早く続けて……」


「おう」ナデ


「!」ピクッ


「……」


「……」ドキドキ




(……もしかして、女って案外ウブなのか?)



146 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:11:41.97 Fe+tSugu0 89/454




「……?」ドキドキ


「……」ナデ


「っ……!」


「……」ナデナデ


「!?☆*Ω※&#……!///」





「いや、マジで大丈夫?」



147 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:12:54.90 Fe+tSugu0 90/454


「だいじょぶ、だから……つづけて……」


「……」ナデナデ


「……え、えへへへへ…………」グデー


「……」ナデナデ


「……うふふふふふふ…………」グデー


「……」ナデナデ


「あは……あはははは……」グデー





(……なにこれツボ押されたカピバラみたい)



148 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:14:29.06 Fe+tSugu0 91/454






―――そして。





「結局、五分くらいずっと撫でてたらいつの間にか女は寝てしまいました」

「すぅ……すぅ……」

「なんたる無邪気で可愛い寝顔だろうか。つーか俺、もしかして撫でる才能あんじゃね?」

「……zzz……」

「……まぁ、風邪引かないように毛布くらいは掛けておいてやるか」



149 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:18:17.40 Fe+tSugu0 92/454



「……ムニャ……大、好き……男……くん……」


「!」


(……寝言でも好かれてるなんて、幸せもんだねぇ)


「……すぅ……すぅ……」


(さて、帰るか――)


「……グスッ……」


(っと、起こしちまったか?)



150 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:21:02.06 Fe+tSugu0 93/454




「…………んね……」


(ん?)


「……グスッ…………ごめん…ね……男、く…ん……」


(……)


「……すぅ……すぅ……」



151 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:21:57.23 Fe+tSugu0 94/454




「……」








「……」ナデナデ








「……また明日な、女」




152 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/19 23:23:21.25 Fe+tSugu0 95/454






(そういや結局スマブラできなかったけど……まぁいっか)


(……明日学校めんどくせーなぁ……)





165 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 22:39:43.88 n37FtWJQ0 96/454




―――翌日、学校。




「おはよー」

「よう。無事に脱出できたみたいだな」

「おう」

「……相変わらず軽いな」

「……いや、お前も大概だろ」




166 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 22:41:45.22 n37FtWJQ0 97/454


「で、今回はどうだった? スマブラはできたか?」

「いや。女ん家行く→縛られる→撫でる→帰宅って感じだった」

「なにそれこわい」

「あとさ、俺撫でんのめっちゃ上手いかもしれん」

「……は?」

「え?」

「撫でる?」

「うん。撫でる」




167 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 22:43:00.41 n37FtWJQ0 98/454


「まぁ、その件は一旦置いといて……お前また縛られたのか」

「そうなんだよ。紅茶飲んだら眠くなった」

「いい加減学べよ……」

「いや、流石に俺も警戒して女用のカップで飲んだんだよ。でも眠くなったぞ?」

「あぁ、そりゃアレだ。両方に睡眠薬入ってたんだろ」

「これはやはり俺が紅茶を飲んだら意識が途切れやすくなる体質だということを――」

「いやいやいや。わりと常套手段だぞ?」

「でも両方に入れるとか回りくどいし面倒じゃね?」

「その前に人を監禁すること自体がよっぽど面倒だっつーの」




168 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 22:46:15.85 n37FtWJQ0 99/454




「あとさ、案外あいつウブなんだな。すぐ赤面するし」


「……へぇ。そうなのか」


「寝顔とか凄ぇ可愛かったぞ」


「そ、そうか」


「まだ来てないみたいだけど……風邪でもひいたのかね?」


「……」


「大丈夫かな? 毛布一枚だけじゃ寒かったか?」


「……」


「どうした?」




169 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 22:49:24.32 n37FtWJQ0 100/454



「あのさぁ…………ぷっ。くくくっ……!」プルプル

「何故に笑う」

「いやいや……」












「……お前、なんだかんだで委員長のこと好きなのかなーって思って」


「―――え?」





170 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 22:51:53.71 n37FtWJQ0 101/454


「俺が、女のことを好いてる?」

「なんだ。自覚無かったのか?」

「……? ?? ?」

「……おーい?」

「なに? 俺ってあいつのこと好きだったの?」

「オレに聞くなよ」

「…………??」

(うわー、こいつマジで悩んでる……仕方ねぇなぁ)





171 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 22:53:42.66 n37FtWJQ0 102/454


「――お前さぁ、委員長に監禁されて本当に嫌だと思ったことあるか?」

「んー……特には。危害は加えて来ないし」

「だよな。本当に嫌だったら(つーか大抵の場合は)警察にでも行くよな?」

「まぁな」

「じゃ次な。どういう状況下かはともかく、委員長と一緒にいて詰まんないって思うことはあるか?」

「それも特に思ったことはないな。たまに話が噛み合わないけど」



(……そりゃ多分お前のせいだろ……)




172 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 22:55:26.69 n37FtWJQ0 103/454


「じゃあ最後の質問な」

「おう。バッチ来い」

「これからも、その気持ちは変わらなさそうか?」

「んー……」

「……」













「……なんでだろうな。変わらないって言い切れる気がする」


「……そっか」フッ




173 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 22:57:00.57 n37FtWJQ0 104/454




「寝顔を可愛いと感じ、ちょっといないだけで心配になって、なんだかんだで一緒にいて楽しいんだろ?」


「簡単に言うとな」


「……そりゃお前、恋だよ」


「そうなのか? 正直分からん。確かに俺ん中で女は嫌いじゃない。でもかといって好きかって言うと……」


「言うと?」


「なんつーか、曖昧なんだ」


「……それくらいで丁度いいんだよ」


「え……?」





174 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:00:31.62 n37FtWJQ0 105/454




「恋なんて曖昧でいい。いや、曖昧であるべきなんだよ。だからこそすぐ冷めたり熱したり出来るんだ」


「……」


「そんで、余裕が出来たら本当に好きか嫌いか考えて判断すりゃいい。葛藤なんてあってナンボだしな」


「……そんなもんなのかな」


「そんなもんさ」


「……そんなもんか」




175 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:01:52.05 n37FtWJQ0 106/454




「―――なぁ」


「なんだ?」


「ありがとよ」


「……おう。今のはお袋の受け売りだけどな」


「ははっ」




176 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:03:19.00 n37FtWJQ0 107/454



――昼休み。




「……」スタスタ


(……女のことが好き、か……)スタスタ


(それが本当だとしたら…………俺は、俺は……!)


(……M、だったのか……!)


(前にSが七割、Mが三割とか言ったが……真逆まであるか? ……いや、最悪二対八くらいの可能性すら……)




177 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:05:13.18 n37FtWJQ0 108/454



ボフッ。



「――きゃっ!」


「おっと」


「ご、ごめんなさい……」


「あぁいや、俺こそ――」








「――って、女か」

「お、男くん……」




178 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:06:25.95 n37FtWJQ0 109/454



「……」

「……」

「……よ、よう。来てたのか」

「……う、うん。ついさっき来たの」

「……」

「……」






((……なんだか気まずい……))




179 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:07:42.71 n37FtWJQ0 110/454




「……」


「……」


「……今日は」


「?」


「監禁、しないのか?」


「……ここ、学校だよ?」


「……あぁ。そうだったな」




180 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:08:43.62 n37FtWJQ0 111/454




「……」


「……」


「……男くんこそ逃げないの?」


「ここ、学校だぞ」


「…………そうだね」






((……き、気まずい……))




181 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:11:01.74 n37FtWJQ0 112/454





(……なんか知らんが女の顔をまともに見れない……)


(……男くん、さっきから目を合わせてくれない……)


(目線を反らしちまう……まさかこれもMになる兆候なのか!?)※違います


(……そりゃそうだよね……)


(これはいよいよやばいか……?)


(……嫌われちゃった、かな……)グスッ




183 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:12:03.60 n37FtWJQ0 113/454




(……やっぱり、謝らないと……)


(――駄目だ。耐えられん)








「お、男く―――」

「わ、悪い!そういや友と約束があったんだった!」

「……え、と……」

「すまん。また今度な!」

「あ……!」




184 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/20 23:13:44.89 n37FtWJQ0 114/454




「……」












「……」












「………………男くん…………」







196 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 15:37:27.30 wD3O14jP0 115/454






――翌日。






197 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 15:39:31.80 wD3O14jP0 116/454


「よう。今日は早いんだな」

「お前が遅いんだよ。もう朝のHR終わったぞ」

「ちょっと一悶着あってな……それよりどうだ? 昨日は大丈夫だったか?」

「……あぁ。何もされなかった」

「そりゃ良かったな――と言いたいところだけど……」

「……」

「……」






「……お前、どうかしたのか?」




198 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 15:42:09.61 wD3O14jP0 117/454



「……なぁ」


「ん?」


「……俺さ……」


「うん」


「……俺……」


(……おっ。まさか委員長の件、踏ん切りがついたか?)










「結構なMかもしれん」

「…………そんな事だろうと思ったよ……」ハァ




199 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 15:43:45.37 wD3O14jP0 118/454


「お前さぁ、ちょっと今シリアスになりかけてんだからボケんなよ」

「……」

「そんな目で見るな。オレは悪くねーぞ」

「……あぁ……」





(…………)




200 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 15:46:30.53 wD3O14jP0 119/454


「―――委員長」


「……」ピクッ


「……まだ来てないみたいだな」


「……あぁ」


「昨日は昼休み頃に来てたけど」


「……あぁ」


「そもそも委員長が遅刻すること自体珍しいよな」


「……あぁ」






(……こりゃ重症か……)




201 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 15:48:51.93 wD3O14jP0 120/454







先生「――ではここを……男くん、解いて下さい」

「……」ボー

先生「……男くん?」

「……」ボー

先生「男くん」

「……」ボー

先生「こら!」

「……」ボー

先生「……良かろう。それほど私のチョークの錆になりたいか……」




「せ、先生!オレが代わりに解きます!解かして下さい!」




202 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 15:50:02.20 wD3O14jP0 121/454









―――結局その日、女は学校に来なかった。









203 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 15:59:02.66 wD3O14jP0 122/454






――そして、放課後。



「おーい、帰ろうぜ」


「……あぁ……」ボー


「……」


「……」ボー


「……」




204 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 16:01:00.65 wD3O14jP0 123/454






(……どうすっかなぁ……)



(…………)



(……女ん家、行くか……?)



(いや……行ってどうする?)



(……でも、様子見も兼ねて……それに放課後に友達ん家行くくらい普通だよな……)



(…………)



(……『友達』か……)






205 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 16:02:44.53 wD3O14jP0 124/454











* * * * * * * * * *












206 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 16:06:38.51 wD3O14jP0 125/454


(……来てやったぜ、女)



―――時刻は16:30。



(よし、行くか……!)



場所は―――。



(……恋は曖昧っ!)ピーンポーン












「はい」ガチャッ


(えっ、出るの早っ!あれ?)





213 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:29:14.60 wD3O14jP0 126/454




「お、男くん……どうしたの?」

(んん? 普段通りか?)

「いや……なんだ、その……」

「……?」

(どうする俺? 『スマブラやりに来た』か『お前が心配で来た』かどっちにする? まずい、どっちも捨て難い……)

「……」

「……」








「……でもまぁ、来てくれて嬉しいよ。上がって」

(おぉ、やっぱりえぇ娘や……)




214 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:30:20.97 wD3O14jP0 127/454




「お邪魔しまーす」


「どうぞ」


「あー、なんだかんだ言ってこの部屋も見慣れたもんだな」


「……そう、だね」


「……」


「……」




215 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:31:40.99 wD3O14jP0 128/454




「……なぁ」


「……な、なに?」


「……」


「?」


「……いや、何でもない」




216 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:33:23.82 wD3O14jP0 129/454




(気まずい……やっぱり『スマブラやりに来た』って言った方が良いか?)


「……」


「……」


「……」


「……今日はさ」


「?」


「紅茶、無いんだな」


「……」


(あれ? とりあえず話しやすそうな話題を出してみたんだが……)




217 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:35:01.36 wD3O14jP0 130/454






「……う…………ら…」










「ん?」










「……もう………めたから」










「??」





218 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:37:33.32 wD3O14jP0 131/454











「……もう、遠回りするのは止めたから」スッ


「――え?」カチャッ











219 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:38:53.41 wD3O14jP0 132/454




(カチャッという金属音と手首の冷たい感触……また手錠ですね分かります)

(そして一瞬にしてベッド上で馬乗りになられた訳です。流石に手慣れてますね――と言ってる間にもう一方の腕にも手錠がね。うん)








「……えーっと、リアクションは?」

「……ん? あぁ、正直手際が良すぎて何されたかよく分からんかったわ。流石だな」

「男くんも流石だよ……」




220 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:41:49.74 wD3O14jP0 133/454




「……まぁ、もう別にいいけどね」ゴソゴソ


「……はい、質問!」


「な、なに?」ヌギヌギ


「どーして女さんは服を脱いでるんですか?」


「……分からないの?」ヌギヌギ


「分かりません。これって、ト○ビアになりませんか?」


「……」ヌギヌギ







(……おいおい、待て待て待て。マジか)




221 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:44:31.45 wD3O14jP0 134/454




「……わ、分からないなら教えてあげる」


「そうしてくれ」


「私達は、今から一緒になるの」


「マジか」


「う、うん。マジだよ」


「……」


「……」


「……」


「……」










「顔、真っ赤だぞ」


「―――っ!!??////」





※男は今、縛ry(




222 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:46:05.20 wD3O14jP0 135/454




「……も、もう関係ないもん。男くんは動けないんだから私の好きなようになるんだよ?」

「……」

「……」

「……勝手にしろ」

「うん。そうするね」スルスル

「……」



224 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:50:05.02 wD3O14jP0 136/454




「ねぇ男くん。み、見てよ。私の……か、身体……っ」


「あぁ。薄目開けたら顔がまだ真っ赤なのは分かった」


「ちょっ!!??////」





※男は今(ry




225 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:51:57.17 wD3O14jP0 137/454




「で、でもほら……自分で言うのもなんだけど、結構大きいんだよ?」ムニュッ


「なんか当たってるけど気のせいだなうんきっとそうだ!」


「そんなこと言っても、その……ち、ち、ち……////」


「ち?」


「……ゴホン。こ、ここは正直だよ……?」







(……やっぱこの娘ウブだ。凄ぇウブだ)





※男(ry




226 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:54:51.16 wD3O14jP0 138/454


「顔真っ赤だぞ」

「……うぅ……」

「――で、どこが正直だって?」

「こ、ここだよ!ほらっ!」

「……」

「……」

「……」

「そ、そんな……」










「変化なし……だと……!」

「……ふふん」




227 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:56:39.88 wD3O14jP0 139/454




「な、なんで? なんでなんでなんでなんでなんでなんで?」


「……ククク……」


「あ、分かった。私の身体って魅力無いんだ。そりゃそうだよね。こんな汚い身体見ても気持ち悪いだけだよね。ごめんね……」ブツブツ


「……いや、そんなことは全然ないけど?」


「嘘。だって…………は、反応しないじゃない」




228 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 22:57:41.61 wD3O14jP0 140/454




「あぁ、これは局部に血液が集中するのを防ぐために交感神経ではなく副交感神経に意識を向けてるだけさ」


「えっ」


「だから俺はいま両足の指に意識を集中してる。こうすることによって副交感神経が優位になり、仁王立ちが収まってるって訳だな」


「なにそれすごい」





※事実です。




229 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:02:25.05 wD3O14jP0 141/454




「でも耐えるのがまた辛くて辛くて。何回流されかけたことか」


「……そ、そんな……」


「という訳で俺の勝ちだな。お前はもっと自分を大切にしなさい」


「……」


「……」


「……」







(危ねぇ危ねぇ、友がこの技教えてくれてなかったらマジでやばかった…………でもちょっと惜しいことしたな)



230 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:05:50.06 wD3O14jP0 142/454







「……」



「……」



「……」



「……」



「………………ッ……」










(……ん? 今、女が泣いてたような―――)




232 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:06:56.32 wD3O14jP0 143/454







「…………」



「な、なぁ―――」



「……やっぱり、ダメだったかぁ……」ボソッ



「ん?」



「……ううん。何でもないよ」スッ



(俺の上から降りて服を着始めた……)





233 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:08:26.53 wD3O14jP0 144/454






「……」カチャカチャ



(俺の手錠も外した……?)



「……」



「……なぁ」



「……」



「えっと、その…………どうかした、のか?」






234 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:12:15.95 wD3O14jP0 145/454







「……私、分かってた。男くんは私を見てないって」


「!」


「どんなことをしても……私だけを見てくれることは無かったよね」


「……それは」


「……前まではさ、私だけを見てくれないならいっそのこと二人で……って思ってた」


「!」


「ふふっ……。でもね、どうしても出来なかったんだ」


「……」




235 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:13:29.94 wD3O14jP0 146/454







「……あなたのことが、本当に大好きだったから」


「!」






236 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:15:29.93 wD3O14jP0 147/454




「笑っちゃうよね。男くんに迷惑ばっかりかけてた癖に……」


「……」


「……いざとなったら怖じ気づいてたの」


「……」


「あなたが本当に本当に大切で、傷つけることなんて絶対に出来なかった……」


「……」


「最後の手段で……なんて思ったけど、それでも男くんは私を見てくれなかった」







(……だって俺も凄ぇ恥ずかしかったしまともに見たら絶対抑えられなかったもん)




237 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:17:41.19 wD3O14jP0 148/454




「……私……」


「……」


「……私、男くんが好き。きっとこれからもずっと……」


「お、女……」


「……たくさん酷いことして、ごめんなさい」


「……」


「もう……二度と男くんに近づかないようにする、から……」ポロッ


「!」




238 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:21:05.04 wD3O14jP0 149/454




「グスッ、うっ……ふぇぇ……!」ポロポロ


「女……」スッ


「こ、来ないで……」


「でも――」


「……いいの……」グスッ


「……」











「……もう、いいの……」ニコッ


(……なんでだよ。どうしてそんな悲しそうに笑うんだよ……)




239 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:25:38.19 wD3O14jP0 150/454




「……本当に……ごめんなさい」


(……もう謝んなよ。俺が本当に嫌がる事は一回もやらなかっただろ)


「今まで……ありがとう」


(なんでお前はそうやって……)


「……さよなら……」


(勝手に進めんな。俺は……)











『……お前、なんだかんだで委員長のこと好きなのかなーって思って』











(―――あぁ。認めるよ)




240 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:28:24.37 wD3O14jP0 151/454






「……よし」


「……」


「……今から抱き締めるけど、いいか?」


「え……?」








「―――ひゃっ!?」




241 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:31:08.56 wD3O14jP0 152/454




「お、男くん……!?」



「ありがとよ」



「え……?」



「……ようやく、俺にも余裕が出来た」



「そ、それって……」
















「……女。俺はお前のことが好きだ」







242 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:34:45.56 wD3O14jP0 153/454




「え……?」


「やっと気づいた。どうやら俺もお前が好きらしい」


「……は、放して。そんなこと言われたら私、また男くんを……」


「大丈夫だよ」


「……!」




243 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:38:55.58 wD3O14jP0 154/454




「……ウブなところも、そのくせ積極的なところも、どこか抜けてるところも……」


「……」


「全部、好きだ」


「……っ……!!」




246 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:41:23.49 wD3O14jP0 155/454





「だから、大丈夫だよ」ナデナデ



「……男くん……グスッ……男、くん……!」



「おう。ここにいるぞ」



「…………っ……!」ポロポロ



「よし泣け。そりゃもう思いっきり泣け」









「う、うわぁぁああぁん……!」ポロポロ






247 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:43:33.74 wD3O14jP0 156/454











* * * * * * * * * * *











251 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/22 23:58:08.63 wD3O14jP0 157/454









――翌日。









252 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:00:10.41 HEjZBWb10 158/454











「――という訳で、女と付き合うことになりました」

「おぉ。おめでとう」

「……あんまり驚かないんだな」

「まぁな。正直オレは予想出来てたし」

「マジか」

「あぁ」

「……」

「……」







「……いや駄目だ。もっと驚け」

「なにその独裁者ぶり」




253 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:00:58.05 HEjZBWb10 159/454


「――それにしても不思議なもんだよな」

「ん?」

「だってさ、最初は(つっても五日前だけど)訳も分からず監禁されてたんだぜ?」

「そうだな……つーかまだ五日しか経ってないのか。随分昔のことのような気がするよ」

「それが今や彼氏彼女だもんな」

「な」




254 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:02:52.55 HEjZBWb10 160/454



「これだけは言える。一週間も経たずして四回も監禁されたのは全世界でお前が初めてだ」

「そうかね?」

「当たり前だろ……つーかお前のノリが軽すぎんだよ。監禁されてたんだぞ監禁」

「俺は至って普通に接してただけだけどな」

「だから余計に心配だったんだっつーの」

「……」

「……」







「…………でもさ、やっぱり平和なのが一番だろ?」

「まぁ……そうだな」




255 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:05:34.37 HEjZBWb10 161/454




「……おら、報告終わったんなら早く女んとこ戻ってやれよ」

「でもそうしたらお前、寂しくなんないか?」

「無表情で言うな。心配してねーだろ」

「あ、それと――ほら。これ」ポイッ

「ん……あぁ、発信機ね」

「ありがとよ。なんだかんだ言って一回も使わなかったけど」

「そうかい」

「おう。じゃあ休み時間にな」

「あいよ」




256 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:06:26.28 HEjZBWb10 162/454






(……)






257 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:09:12.78 HEjZBWb10 163/454






(……)










(監禁されて始まる恋、か……)










(……)










(……あぁ、今日は平和だ)





258 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:11:11.56 HEjZBWb10 164/454









「おーい、女」

「なぁに?」

「いや、相変わらず可愛いなぁ……と」

「なっ、なななななに急にっ!!??////」

「ほら。筆箱が」





「えっ」

「えっ」




259 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:12:13.10 HEjZBWb10 165/454




「冗談だよ」


「ほ、ほんとに?」


「………………あぁ」


「ちょ、その間は何!?」


「大丈夫、マジで冗談だから」




260 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:17:30.14 HEjZBWb10 166/454




「それならいいけど……」


「まぁ女が可愛いのは元からだよな」ポフッ


「℃▲〆↑☆っ……!!??」


(本当に弄りがいがあるなーこいつ。つーか、やっぱ俺ってMじゃなくね!?)




261 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:21:45.32 HEjZBWb10 167/454




「か、からかわないでよ……///」


「ははっ。悪い悪い」


「……それで、どうかしたの?」


「おぉ、そうだそうだ」




262 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:23:13.74 HEjZBWb10 168/454




「……今日の放課後、暇か?」


「う、うん。特に予定は無いよ」











「よし。それじゃあ―――」





263 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:25:12.17 HEjZBWb10 169/454











「―――学校終わったら、お前ん家行っていいか?」











264 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/23 00:27:10.34 HEjZBWb10 170/454



女さんの返事は……もう決まってますよね。




―――という訳で、これにて終了です。
短い間でしたが、皆さんお付き合いただき有難うございました。

ある日急に「監禁→脱出を繰り返すのって面白そうじゃね?」とか思い立ったせいでこんな文が出来てしまいました。
実は後ほんの少しだけ繰り返すつもりだったんですが、あまりやり過ぎるとマンネリ化しそうだったんで……


本当に有難うございます。いつかまたどこかで投下することがあれば見てやってくれると嬉しいです。






292 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/25 23:39:20.20 dcIHxQZJ0 171/454


メリークリスマス。

例によって例の如く投下量は少ないです。

それでは番外編、始めますね。


293 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/25 23:42:15.23 dcIHxQZJ0 172/454



ジリリリリリリリ……



「……ん……」



リリリリリリリリ……



「……っ……っ……!」



リリリリリリリリ……



「……っ……おらっ!」ポチッ



リリリッ



「…………」














「……寒ぃ……」






294 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/25 23:44:00.02 dcIHxQZJ0 173/454











* * * * * * * * * * *











295 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/25 23:45:20.69 dcIHxQZJ0 174/454



「おはよー……」

「あ、おはよ」

「眠……」

「そろそろ朝ご飯出来るってさ」

「おう。今日の当番は……姉貴、か」

「うん」

(……牛乳でも飲むか)





296 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/25 23:47:01.63 dcIHxQZJ0 175/454




「……おはよ」


「……」←料理中


「……姉貴?」


「……あ?」ギロリ


「おはよ」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……ちっ……」









(……おっ、今日はわりと機嫌が良いみたいだな)ゴクゴク






297 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/25 23:49:48.33 dcIHxQZJ0 176/454




「よっこらせ」ドサッ


「……」


「……どうした?」


「……お姉ちゃんへの挨拶、あたしの時より1オクターブほど高かったんだけど」


「え? そうか?」


「……まさかあたしの事嫌いになったの? 見捨てるの? この家から追い出すの?」


「いや、そんな訳ないだろ」


「なーんだ。良かった」




298 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/25 23:53:24.50 dcIHxQZJ0 177/454




「……おら」コトッ


「お、頂きます」


「頂きまーす」


「……」


「……あっ。この目玉焼き、半熟だね」


「だな」




299 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/25 23:55:26.54 dcIHxQZJ0 178/454




「ねぇ、兄貴」


「ん?」


「……これって暗に『お前は人間としても半熟で中途半端だ』ってあたしに伝えてるのかな?」


「あははー。そんな訳ないだろー!」


「だよねー」


「黙って喰え」スッ


「そんでもってナチュラルに包丁突きつけないでくれよー」




301 : ◆rbnDpFBcoNc6 - 2011/12/25 23:58:16.75 dcIHxQZJ0 179/454



「あ、お姉ちゃん。今日の夜、『世にも微妙な物語』やるらしいよ」


「……大して怖くないからつまんねぇ」


「そう? じゃああたしの感覚がおかしいのかぁそっかぁ病院行こうかなぁ」


「…………おかわりは?」


「あ、うん。ありがと!」


「……」










(………いや、これでも平和な朝の食卓の風景なんです。マジで)






310 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/26 00:34:02.84 uHjI1HOj0 180/454


再会します。


・妹……友くんの二つ年下で中学二年生。被害妄s…ではなく感受性がとても豊かな女の子。
ちょっとした些細な事もネガティb…ではなく多角的に捉える豆腐メンタルの持ち主。
そのくせすぐ立ち直る明るい性格してんだから世の中は面白い。
情緒不安t…冗談が通じない事が多いのが珠に傷。


・姉……友くんの三つ年上の大学一年生。鋭い眼光を放つヤンk……華の女子大生。一応姉妹仲は良好。
会った事のある男くん曰く、「あの目付きはカタギじゃない」とのこと。
主な武器は独自に改良を加えた出刃包丁。
美人で料理も出来て成績も優秀で運動神経も良いのに、ちょっとだけアレな娘。どうしてこうなった。




どうか友くんを応援してあげて下さい。



311 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/26 00:37:12.10 uHjI1HOj0 181/454



「ごっそーさん」ガタッ

「……おい」

「ん?」

「どけ」

「いや、洗い物くらいやるよ」

「……」ギロッ

「……」

「分かりやすく言ってやる。私と代わるか、十分ほど気絶するか選べ」スッ




「分かったから包丁しまって!?」




312 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/26 00:39:26.28 uHjI1HOj0 182/454




「じゃあ行ってきまーす」


「……あぁ」


(あんにゃろう……自分だけそそくさと逃げやがって)


「……で?」ギロッ


「うん。オレも学校行ってきまーす!」


「ちっ……最初からそうしろよ」




313 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/26 00:41:08.40 uHjI1HOj0 183/454






――そして。








「ふぁーあ……」


(……男の奴はまだ来てないのか)


(妹も姉貴も機嫌良さそうだったし、今日は平和な日になりそうだ――)







「おはよーっす」




314 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/26 00:42:37.12 uHjI1HOj0 184/454



「よう。おはよう」

「……いやー、最近寒いな」

「な。今日は布団から出るのが億劫だったぜ」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……あ。そういや俺、昨日監禁されたんだけどさ」

「うん」













「……うん?」






315 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/26 00:44:32.58 uHjI1HOj0 185/454



「?」

「えっ……何? 換金?」

「……いや、多分だけど字が違う」

「監禁?」

「そう。そっち」

「……」

「いやー、大変だったよ」

「そ、そうか……」

「……」

「……」




316 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/26 00:46:57.15 uHjI1HOj0 186/454



「いや待て。自己解決すんなよ」


「?」


「だから詳細を聞かせろっての。お前もそのつもりだったんじゃねーのか?」


「おぉ、そうだな。実は―――」


「ふむふむ」




317 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/26 00:49:52.33 uHjI1HOj0 187/454








「――って事があってよぉ」


「マジか」












(あぁ……平和な日が遠のいていく…)





325 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 22:48:46.16 YD15RqY50 188/454






「ただいまー……」

「あ、おかえり。遅かったねぇ。やっぱり見捨てられたのかと思ったよ」

「はは……そんな訳ないだろー……」

「元気ないけど、どうしたの? あたしなんかとは話したくない?」

(果たして他言して良いものか……)

「兄貴ー?」






326 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 22:51:09.49 YD15RqY50 189/454




(こういう時は話題を変えよう……)




「ていうかなんでお前が夕飯の準備してんの? 姉貴は?」

「なんか用事あって夜ご飯までには帰れないんだって。だからあたしが作ってるの」

「ほう。悪いな」

「まぁ、暇だしねー」

「そっか」












「…………そうだよね。やっぱり勉強とか部活とかしろって思うよね。あぁもう学校やめようかなー」

「いやまだ何も言ってないんですけど!?」






327 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 22:54:44.42 YD15RqY50 190/454







――夕方。




「……」


TV〈 やはり心理学の見地から申しますと、特定の人物への依存心が――


「……」


TV〈 「対象者を傷つける」や本当の意味で「束縛する」という行動に出ることもあり――


「……」


TV〈 事実、前例としてそのまま無理心中に至ったケースも――


「……」








(いや……あいつ大丈夫か? これ凄ぇ心配になってきたぞ!?)




328 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 22:56:57.68 YD15RqY50 191/454





(連絡は……無し、か)


「どうしたの兄貴ぃ? 携帯ばっか見て」トントントントン


「あぁいや、何でもねーよ」


「ふーん。あと少しで出来るから待っててー」トントントントン


「あいよ」


「―――っ!!!?」ビクッ


「ん? どうし―――」






329 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 22:58:09.16 YD15RqY50 192/454








「きゃあぁああああああぁぁっ!!!!」


「えっ!? ちょ、何があった!?」








330 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 22:59:45.47 YD15RqY50 193/454





「にゃあああああぁああああぁ出たぁぁああああぁ!!!!」ダダダッ


「な、何が!? つーか何処へ行く!?」






タンタンタン……ガチャッ、バタンッ!







331 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:01:17.68 YD15RqY50 194/454



(部屋に閉じこもりやがった……)

(つーか『出た』って、何がだ? 確かキッチンの方で――)チラッ






カサカサカサ……



G〈 やぁ。私だ






(……お前か)







332 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:03:20.13 YD15RqY50 195/454













(……ったく。妹の奴、怖がり過ぎなんだっつーの)タンタンタン



「おーい」コンコン



「……」



「おーい?」コンコン



「虫なら退治したぞー。大丈夫だから出てこいよ」



「……」



「妹ー?」コンコン






333 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:04:55.90 YD15RqY50 196/454




「……」スッ



カチャッ……



(おっ。鍵は掛かってないのか……)

「入るぞー?」ガチャッ












「覚悟ぉぉぉおおおおっっ!!!!」バッ

「えっ」





334 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:06:11.84 YD15RqY50 197/454






―――ざくっ。






335 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:08:35.38 YD15RqY50 198/454






……急な質問だが、皆さんは刃物で切られた事はあるだろうか。

学校の図工の時間にカッターや彫刻刀で――とか、料理中に間違えて――とか、ガラスや石で――とか、ふとした拍子に紙で――とか。

しかしこれらは飽くまで「切ってしまった」に過ぎない。

ではなく「切られた」である。

故意か過失かはともかく、人に切られるというのは途徹もなく痛い。

あの「切られた」と意識してから一瞬遅れて襲い来る激痛や、骨伝導によって耳に残る形容しがたい不愉快な音。



―――あぁ、やはりアレは幾度経験しても慣れないものである。






(友著・『平和よ、いずこへ』より抜粋)




336 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:12:26.19 YD15RqY50 199/454





「――いってぇぇぇぇぇっ!!」


「あ、兄貴っ!!??」




337 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:13:50.58 YD15RqY50 200/454




(超痛ぇ!何!? オレなんかした!?)


「えっ、なんで兄貴が!?」


「おまっ……何しやがる!」


「ご、ごめん!虫が来たと思って……」


「……喋ってドア開けられる虫がいるんなら是非見てみたいもんだよ……」ボタボタ


「だっ、大丈夫!?」


「死ぬほど痛いっつーの。と、とにかく手当てしないとな……」ボタボタ


「あ、あたしがやるよ!」




338 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:15:52.62 YD15RqY50 201/454







―――そして。




「……頂きます」


「……痛だきます」


「……」


「……」


「……ほんとにごめん」


「……まぁ、左腕だからまだマシだ。気にすんな」


「……ごめん……」




339 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:17:00.42 YD15RqY50 202/454




「……」


(……)


「……」


(っ……!)ズキッ


「……だ、大丈夫?」


「あぁ……」


「……」


(……)


「……」




340 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/27 23:19:54.93 YD15RqY50 203/454






(……今日は平和にゃ程遠い日だったな……)



(……)



(でも……飯は美味いし、まぁいいか)






352 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:26:33.44 UL1GvGzb0 204/454



ジリリリリリリ……



「……っ……」



リリリリリリ……



「……らっ……!」ポチッ



リリリッ



「……」












「痛っ……」





353 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:29:10.93 UL1GvGzb0 205/454




(眠ぃし寒ぃし痛ぇ……)スタスタ


(……)スタスタ


(結局男から連絡は無かった。委員長のこと警戒しとくか……)


(……)スタスタ









(――あれ? リビングの灯りが点いてる……誰だ?)





354 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:30:28.68 UL1GvGzb0 206/454



「……」ガチャッ…

「あ……」





「……」





「……姉貴? どうしてこんな朝早くに台所にいんの?」

「……」



355 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:33:40.51 UL1GvGzb0 207/454




「今日の当番はオレだよな?」

「……」

「……いや、そりゃ確かにオレ料理下手だけど姉貴がやる必要ねぇって。昨日帰って来たのも遅かったんだろ?」

「……ちっ」ギロッ







(おぉっふ。相変わらず姉貴の一睨みは眠気覚ましに丁度良いぜ……)





356 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:35:50.57 UL1GvGzb0 208/454



「…………腕」


「ん?」


「ちっ……」


「……まぁ良いや。ほら、とりあえずまだ寝てろよ」


「……」










「 失 せ ろ 」スッ


「だから包丁は止めてよぉ!――っていうか今どっから出した!?」




357 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:38:17.75 UL1GvGzb0 209/454




「……」


「……」


「……腕、怪我したんだろ」


「あ、まぁ……一応。でも大したことねぇよ」


「……」


「パン焼くくらいなら余裕だし」


「ダメだ」


「……いやでも目ぇ覚めちまったし―――」


「私が寝かしつけようか?」スッ


「大人しくしてるんで包丁はしまって下さいお願いします」


「ちっ……」





358 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:39:39.69 UL1GvGzb0 210/454




「……」←料理中

「……」

「……」

(やっぱりまだ男からの連絡は無い……か)

「……」

「……」

「……おい」

「何?」

「……」









「………………か?」ボソッ


「え?」





360 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:41:50.46 UL1GvGzb0 211/454







「今なんて?」



「…………か……つってんの……」ボソッ



「?」



「だ、だから…………腕、だいじょぶか……っつってんの」ボソッ



「ごめん聞こえないわ」スタスタ



「こっち来んな!」ギロッ



「えぇぇぇ!? 理不尽過ぎんだろ!」







361 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:45:00.38 UL1GvGzb0 212/454


「黙れ黙れ黙れ。妹起こしに行けっつったんだよ」ギロッ

「あー、成る程ね。了解」スタスタ

「……ちっ」

「……」

「……」





「…………はぁ……」




362 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:47:34.02 UL1GvGzb0 213/454



――そんでもって、学校。


(あいつはまだか……不安だ)

(昼頃……12時になったら電話、だな)

(もしあいつが来なくて委員長だけが来たら……どうすっかな。一応保険で電話するか)

(それでまだ監禁されてるようだったら、委員長が学校にいるなら脱出のチャンスだしな……)




「よう」



363 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:48:54.91 UL1GvGzb0 214/454




「おう。おはよ」

「最近寒ぃよなー」

「あぁ、全くだ」

「……」

「……」

「……」





「いや、おい」

「?」


364 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:49:59.41 UL1GvGzb0 215/454






* * * * * * * * * * *






366 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:54:06.24 UL1GvGzb0 216/454


――自宅。



(今日はかなり疲れた……特にツッコミで体力使った気がする……)


(……男の奴、危ない目にあわなきゃいいけどな)


(……)


(やべぇ、眠くなってきた……部屋で寝ないと風邪引くぞ……)ウトウト


(……くっ……)ウトウト


(……ダメだ、我慢できん……)



367 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:57:42.98 UL1GvGzb0 217/454




「ただいまー」ガチャッ

(――って、あれ?)


「……zzz ……」


(なんでリビングで寝てるのかな?)

「……おかえり」

「あ、ただいまー」




368 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/29 21:59:58.72 UL1GvGzb0 218/454




「あたしも夕飯の準備手伝うよ」

「……別にいい」

「そっか。あたしほんとは役立たずだったんだ。二人ともあたしに気を使って今まで言わなかったんだね。分かった」

「……ちっ。じゃあ野菜切っといて」

「はーい」



「……zzz……」




――こうして夜は更けていく。



375 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:06:06.93 5VZdYjZM0 219/454



「……」←洗い物中

「……」←TV鑑賞中

「……」←同じくTV鑑賞中


376 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:07:47.44 5VZdYjZM0 220/454





「……」

「……」


TV〈 なんでやねん!


「……」

「あははは!」


TV〈 なんでやねんッ!


「……」

「あはっ!あははは!」


TV〈 なぁぁぁんでやねぇぇぇん!!


「……」

「あっはっはっは!あはっ、あははゲホゲホッ!」



(つまんねぇ……笑いのツボ浅すぎだろ、妹よ)

「……」←洗い物中



377 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:09:00.14 5VZdYjZM0 221/454



「……」チラッ

「……」

「……」

「……」

「……」チラッ

「……ねぇ、さっきから携帯ばっか見てどうしたの?」

「あ、えーと」

「昨日もそうだったよね?」

「……まぁ、ちょっとな」

「……」←洗い物中



378 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:11:16.34 5VZdYjZM0 222/454




「……ふーん」

(こいつならここで「やっぱりあたしの相手するのなんて面倒だよね。ごめん。お詫びに自分の携帯へし折ってくる!」とか言い出すだろう……)

(……まぁすぐ立ち直るから別に良いんだけどさ)

「……」




「もしかして彼女でもできた?」

「―――はい?」


379 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:13:08.97 5VZdYjZM0 223/454




「あれ? 動揺してるって事は――」

(予想の斜め上なんだよ畜生!)



――ガシャァン!!



「えっ?」

「!」

「…………」


380 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:15:05.54 5VZdYjZM0 224/454




「お、お姉ちゃん!?」

「おいおい。大丈夫か?」

「…………手が滑った」

「怪我とかしてない?」

「……大丈夫」

「あー、危ねぇからオレが片付けとくよ」

「ちっ。だから大丈夫だっての……」サッサッ




「いや、箒とちり取り使い方逆だぞ!?」

(お姉ちゃんの方が動揺してる!?)


381 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:16:40.00 5VZdYjZM0 225/454



「いい。テレビ見てろ」

「飽きた」

「じゃあ自分の部屋に戻れ」

「だから危ねぇっての。どいたどいた」

「……」

「?」



「も・ど・れ」ギロッ

「わかりました。なのでどうかほうちょうをしまってくださいおねがいします」



382 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:18:57.68 5VZdYjZM0 226/454



そして更に夜になりました。


「……」ペラッ

「……」

「……」ペラッ



――コンコン。



「んー」

「お邪魔しまーす」ガチャッ

「どうした?」ペラッ

「スマブラやりに来た!」

「仕方ねーなー」

「サンキュー」



383 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:20:18.96 5VZdYjZM0 227/454




「……」

「……」

「……」ペラッ

「……ねぇ」

「んー?」

「早くキャラ選んでくれないと始まらないんだけど」

「……なんでコントローラー二つ用意してんの?」

「はーやーく!」

「オレはいいや。今良いとこだし」ペラッ

「……」



384 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:22:36.84 5VZdYjZM0 228/454




(本当は腕の傷も痛いんだけど……言わないでおくか)

「……」

「……」ペラッ

「……」





「……そっか。あたし弱いし、あたしなんかとやっても面白くないよね。ちょっとスマブラ強い妹に生まれ変わってくる」

「あーなんかいきなり暇になったからゲームでもやろっかなぁー!?」



385 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:24:17.65 5VZdYjZM0 229/454





「よっしゃー!あたしのヨッ○ーの錆にしてやるぅぅぅ!」


「どんな錆だよ。まぁ、お手柔らかに」





386 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:26:55.05 5VZdYjZM0 230/454






――そして。



「……そういえば兄貴、明日学校休みなんだっけ?」

「あー、そうね」

「いいなぁ。あたしも明日は午前授業ではあるんだけどさ、一日休めるのは羨ましいよ」

「だろ」

「……あ、そうだ。明日暇だったら午後から買い物付き合ってくれない?」

「んー……午後からなら別に良いぜ」

「サンキュー」



387 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:28:49.34 5VZdYjZM0 231/454




(ま、男から連絡来たときの為に携帯は肌身放さず持っときゃ大丈夫か……)

「……」

(……正直なところ、大して心配でもないけどな)

「……」

「……」





「……だって仕方ないじゃん学校の友達は皆午後から部活なんだからさぁ!」グスッ

「いやオレ何も言ってないんだけど!? なんで涙目!?」



388 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:31:14.13 5VZdYjZM0 232/454




「……ねぇ、兄貴」カチャカチャ


「なんだ?」カチャカチャ


「さっきの、実際のところ……どうなの?」カチャカチャ


「さっきの?」カチャカチャ


「ほ、ほら……その、彼女が……」カチャカチャ


「……あぁ、ちょっと面倒があっただけだ。彼女なんかいねぇよ」カチャカチャ


「…………ふーん。そっかぁ」カチャカチャ


「……なんでニヤついてんだ?」カチャカチャ


「別にー?」


「ふーん。おっと、隙あり」カチャカチャ


「ちょ待っ……あああぁぁ!狡いよぉぉぉ!」




389 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:34:11.65 5VZdYjZM0 233/454




「あ、あたしのヨッ○ーが……」

「相変わらず弱いなーお前」

「……」

(ははっ。ふて腐れちゃったか? やっぱりまだまだ子供なんだな)

「……」





「やっぱりそうだ。あたしが役立たず過ぎるからこうやって躾てるんだ。兄貴は優しいからこうやって遠回しにあたしに罰を与えてるんだ。暗に『悪い事するとヨッ○ーみたいに星にするぞ』って伝えてるんだきっとそうだ……」ブツブツ

(や、やりにくっ!!!)



390 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:36:50.63 5VZdYjZM0 234/454





――ガンッ!


「?」

「んー?」




ガチャッ。


「風呂」


バタン。




391 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:39:44.91 5VZdYjZM0 235/454



「……あ、はい……」

「……今のノックだったんだ……」





「……っと、隙ありぃぃぃ!!」カチャカチャ

「あ!狡ぃぞお前っ!」

「へへん。油断大敵だよ」

「くっそ……アピールまでしやがって……!」

「兄貴も大したことないねぇ」

「……上等だ」


392 : ◆4dEEs59OFQ - 2011/12/30 22:43:57.15 5VZdYjZM0 236/454






―――その後も、風呂にも入らずひたすら遅くまでスマブラをやっていた二人。

そしてめでたく友くんは妙に機嫌の悪い姉に刺されかけましたとさ。





405 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 21:44:07.61 uexngmpy0 237/454




――翌日。



「ふぁーあ……」


「……」


(十二時……そろそろ妹が帰ってくるか?)


(……顔洗お)スタスタ



406 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 21:45:08.10 uexngmpy0 238/454




ガチャッ。


(お、帰って来たか)スタスタ

「……おーい、今日どこ行くつもりなんだ?」チラッ




「……あ?」ギロッ




「あ、姉貴っ!?」




407 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 21:46:33.13 uexngmpy0 239/454



「……」

「……今日は早いんだな」

「……」

「……」

「……」スタスタ

(……)



408 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 21:47:33.32 uexngmpy0 240/454




(……あれ? まだ機嫌悪いのか? なんで?)

(昨日の……そうだな。夜飯食った時までは普通だったのに)

(あの時お気に入りの皿割っちまったからか?)

(???)




409 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 21:49:20.93 uexngmpy0 241/454




ガチャッ。


「ただいまー」

「おう」

「あれ? お姉ちゃんも帰ってるの?」

「あぁ、たった今な」

「じゃあ今日お姉ちゃんも連れて行こうよ!」

「良いけど……来るかな?」

「大丈夫だって。じゃあ聞いてくるねー」





410 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 21:51:12.89 uexngmpy0 242/454








「―――で、何か買いたい物でもあんの?」

「あたしは普通に冬物の服とか」

「……姉貴は?」

「……」

「……姉貴?」

「……」ギロッ

(おうふ)




「…………私も同じ」

「へぇ……」



411 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 21:52:22.30 uexngmpy0 243/454




(あれ? これわざわざオレまで付いていく意味なくね?)


「なんか言った?」


「何でもねぇ。早く行こうぜ」キリッ


「……」




412 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 21:54:37.48 uexngmpy0 244/454




そして―――。


「どう? 似合う?」

「あぁ」

「……」




「……どう? 似合う?」

「あぁ」

「……」




「……どう? 似合う……?」

「あぁ」

「……」




「……」

「あぁ」

「……」



413 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 21:56:03.23 uexngmpy0 245/454




「……」


「……」


「……グスッ……」


「いやお前ならもう少し明るい色の方が良いんじゃねぇか?」キリッ


「ほんと!? 兄貴にそう言われたら迷うなぁー」


「……」




419 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:31:26.36 uexngmpy0 246/454






(――はい。そしていつの間にか二人とはぐれてしまいました……っと)

(ったく。面倒くせぇなぁ――ん?)



〈 キミタチカワウィーネ!

〈 ダレデスカー??



(……まさか……)




420 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:32:35.60 uexngmpy0 247/454




DQN1「君達何処から来たのー?」

DQN2「今暇ー?」

「暇じゃないでーす!」ニコッ

「……ちっ」





(……あ、ヤバい。これはヤバい。主に向こうの人達が)




421 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:33:37.50 uexngmpy0 248/454



DQN1「君達可愛いねー」

「あはは。よく言われまーす」

DQN2「どっか遊びに行かない?」

「だから暇じゃないでーす。ていうかまだ買い物の途中でーす」ニコッ

DQN1「そっちの娘は?」

「……」

「あ、お姉ちゃん人見知りなんですよー」



422 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:36:09.89 uexngmpy0 249/454



DQN1「お姉ちゃん?」

DQN2「へぇ、姉妹なの? 全然似てないねー」

「あはは。それもよく言われまーす」

「…………」





(うわあああああぁぁ姉貴の目付きがヤバくなってるぅぅぅ!!)

(止めねぇと!主に向こうの人達の為に!!)




423 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:38:19.33 uexngmpy0 250/454




DQN2「よし。じゃあ何処行こっか?」ガシッ


「―――っ!」イラッ


(あ、これはヤバいかも……)


DQN2「どうしたの?」


「……」スッ…






「はいストォ――――ップ!!」ガシッ



424 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:39:42.70 uexngmpy0 251/454




「あ」


「……」


DQN1「あぁん? 誰だよあんた」


「危ねぇ……ぎりセーフか……」


DQN2「誰だって聞いてんだよ」


「ったく……そうやってすぐ光り物出したらダメだっての。前にも言ったろ? しかも店ん中で」


「……ちっ」


DQN1「だから誰だよ答えろコラァ!」




425 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:43:31.71 uexngmpy0 252/454




DQN1「格好つけてんじゃねぇぞオイ!」

DQN2「誰なんだコラァ!」

「……じゃ、そろそろ出るか」

「あ、うん」

「……」






DQN1「待ってよコラァ!」

DQN2「無視しないでよコラァ!」




427 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:46:01.02 uexngmpy0 253/454








「はぁ……ナンパされたからって限度があるだろ?」


「……」


「おい、聞いてんのかよ」


「…………急に手、掴むから」


「だからってなぁ……いつもみたいに無視するか睨めば良かったのに」ハァ


「……」


「……」



428 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:48:14.66 uexngmpy0 254/454




「……」


「……」


「……って、お前は珍しく静かなんだな」


「さっきからお姉ちゃんの心配ばっかり……やっぱりあたしって要らない娘なのかな? いまいちキャラも立ってないし……」ブツブツ


「いやお前は軽くいなしてたから心配なかったんだよ!つーかキャラがどうとか言うの止めて!?」




429 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:50:01.21 uexngmpy0 255/454




――そして、夜。


「……」ペラッ

「……」

(……姉貴の様子がおかしい。ていうか怖い)ペラッ

(夜飯の時もどこか放心状態だったし、なにより目付きと機嫌がいつもの三割増しで悪い)

(と思ったら妹とは普通に話してるし……オレ、なんかしたか?)

(さっきのナンパの事か……?)

(……??)




430 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:51:49.39 uexngmpy0 256/454




コンコン。



「あいよー」

「おじゃま」ガチャッ

「どうした?」

「スマブラやろーぜ!」

「却下。やるなら一人でやれ」ペラッ

「えー」

「……」

「……」




431 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:54:03.35 uexngmpy0 257/454




「やろーよぉ」

「断る」

「……」

「……いや、マジで。悪ぃけどまだ腕が痛ぇんだ。ごめんな」

「あ……そっか。ごめん」

「んーん」ペラッ




432 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:56:10.19 uexngmpy0 258/454




「……じゃ、おやすみ」

「――あ、ちょい待って」

「?」

「ちょっと聞きたい事があってさ。姉貴の事なんだけど」

「お姉ちゃんがどうかした?」

「……なんかさ、機嫌悪くね?」

「そうかな? 普通だけど……」

「お前にはな。でもオレにはいつも以上にシビアというかドライというか……」

「いつから?」

「多分昨日の夜飯食った後くらいからだと思う。買い物の時も帰り道くらいでしか話してねぇしさ」




433 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 22:58:11.17 uexngmpy0 259/454




「……昨日の夜って、あのお笑い番組見てた時らへん?」

「そうそう」

「……」

「なんなんだろうな一体……」

「……えーっとねぇ」

「おっ。分かるのか?」

「分かるって言うか……その……」

「いいから教えてくれ。流石にこれ以上死と隣り合わせの生活は辛いしな」

「あはは……えっと、多分だけど―――」

「ふむふむ」



434 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:00:25.96 uexngmpy0 260/454







(……結局、確信出来る事は無かった)

(妹から言われたのは「『とある言葉』を姉貴に言え」とだけ……)

(ほんとにそんなんで機嫌が直るのか……些か心配である)

(……ていうか今の姉貴に近付くなんて出来ません。怖いから。)

(どうすっかなぁ……)





――コンコン。





435 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:02:21.83 uexngmpy0 261/454



(このノックは……また妹か。どうしたんだ?)

「なんだ? スマブラはやんねぇぞ―――」ガチャッ





「……は? スマブラ……?」





(ちょ、ミュ○ツーが来なすったぁぁぁぁぁ!!?)




436 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:05:33.49 uexngmpy0 262/454




「あぁいや、何でもない」

「……」

「……で、どうした―――んですか?」

「なんで敬語……」

(やっぱ怖いぜ……どうか刺されませんように)

「……」

「……」

「……」

「取りあえず、座れば?」

「……」スッ




437 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:07:48.71 uexngmpy0 263/454




「……」


「……」


「……どうかした?」


「……ちっ……」


(怖い)


「……」


「……」



438 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:09:10.67 uexngmpy0 264/454





「…………きは……めん……」ボソッ



「……はい?」



「……だ、だから!」ギロッ



「は、はいっ!!」





439 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:10:21.21 uexngmpy0 265/454





「さ、さっきはごめん!!」


「……え?」





440 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:12:05.63 uexngmpy0 266/454




「さ、さっき……って買い物ん時のナンパの件、か?」


「……ちっ」


(あ、そうなんだ……)


「……」


(……そんな事をわざわざ謝りに来るなんて……)ホロリ


「……何泣いてんの」ギロッ


「……いや。何でもないっす」


「……ちっ」




441 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:15:00.94 uexngmpy0 267/454




「と、取りあえずそれだけだから」スクッ


(……あ、そうだ)


「……」スタスタ


「姉貴」


「……」ピタッ


(えーっと、確か……)







「『オレ、別に彼女とかいないから』」




442 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:17:37.98 uexngmpy0 268/454



「……」


(……おいおい、固まっちまったぞ。ホントにこんなんで機嫌直るのか妹よ?)


「……」


「……えっと、姉貴ー?」


「……」







「……ちっ!」



ガチャッ、バタン!



(……あれ? なんかもっと怒らせちゃってなかったか?)




443 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/02 23:19:45.22 uexngmpy0 269/454




(…………)



(……まぁ、分からん事を考えても仕方ない。もう寝るか)



(…………)



(結局男からは連絡なし、か……)




461 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:22:00.48 yoKDzkMF0 270/454



ジリリリリリリ……



「……ぁ……?」



リリリリリリ……



「……っ……っ!」ポチッ



リッ



「……」









「……ふぁーあ……」




462 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:23:19.11 yoKDzkMF0 271/454




「っはよー……」


「おはよー」←料理中


「……ょ…」ボソッ


「あー……眠っ……」スタスタ


「……」


「ふんふふーん」




463 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:25:13.32 yoKDzkMF0 272/454




(あーにき!)ヒソッ

(ん?)ゴクゴク

(お姉ちゃん、すっごく機嫌良さそうだよ!)ヒソヒソ

(あぁ。みたいだな)ヒソッ

(やっぱりあたしの言った通りだったでしょ?)

(……あぁ)




464 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:26:56.36 yoKDzkMF0 273/454




(……まぁ、なんでかは全く分からんが)

(色々あるんだよ。女の子にはね)

(ふーん。女の子ねぇ……)






(……そりゃあたしはこんな起伏の少ない体型だけどこれでも女の子なんだよね。でもそうだよね全然女の子らしくないよね。あ、そうだちょっと豊胸手術してくる)


(だから何も言ってねぇから落ち着け!皆違って皆いいんだよ!)




465 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:28:45.71 yoKDzkMF0 274/454




「……何話してんの」ジロッ


「あ、いや。何でもないよ」


「……」


「さ、さーて。今日の朝飯はなーにっかなー!?」


「今日は食パンとハムエッグでーす!」


「やったぁいつも通りだ!」


「……ちっ……」




466 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:30:09.77 yoKDzkMF0 275/454




――学校。


(よしよし。このまま行けば今日こそ平和な一日になる筈だ)



「おはよー」

「よう。無事に脱出できたみたいだな」

「おう」

「相変わらず軽いな……」

「お前も大概だろ」




467 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:32:13.27 yoKDzkMF0 276/454








* * * * * * * * * * *








468 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:34:02.72 yoKDzkMF0 277/454




―――昼休み。



「……」スタスタ


(それにしても男の奴、委員長の事好きになってるとはね……)


(なんか似たようなのあったよな。人質が犯人に惚れる――みたいな)


(何とか症候群、だっけ?)


(……)スタスタ


(……)スタスタ


(……つーかあいつ、どこ行ったんだ?)




469 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:35:56.01 yoKDzkMF0 278/454




(……)


〈 ネェネェ、ホウカゴカイモノイコー!

〈 イイヨー


(……)


〈 ブカツオワッタララーメンクオーゼ

〈 リョーカイ

〈 ダガコトワル


(……)


〈 キミタチ、サイキンセイセキガ――

〈 スミマセン……




(……平和って、良いよね……)ホロリ




470 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:37:08.73 yoKDzkMF0 279/454




(あれ? なんか目から暖かいものが――)


〈 よ、よう。来てたのか

〈 う、うん。ついさっき来たの


(――ん? この声は……)ソーッ




「……」

「……」




(おぉ、やっと見つけたぜ。つーか委員長まで……)



471 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:39:29.72 yoKDzkMF0 280/454



(今までだったらこの状況は危険だったけど、朝にあんな話したから正直面白そうにしか思えない……)



〈 今日は……監禁しないのか?

〈 ここ、学校だよ?



(よりによって何言ってんのあいつ!? 馬鹿か!あぁそういや馬鹿だったな!)



〈 ……男くんこそ逃げないの?

〈 ここ、学校だぞ



(えぇー……ちょっともう何この会話……)




472 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:41:10.39 yoKDzkMF0 281/454




(……なんか急に二人とも黙っちまったな)



(……なんか知らんが女の顔をまともに見れない……)

(……男くん、さっきから目を合わせてくれない……)

(目線を反らしちまう……まさかこれもMになる兆候なのか!?)※違います

(……そりゃそうだよね……)

(これはいよいよやばいか……?)

(……嫌われちゃった、かな……)



(……あ、こりゃ多分アレだ。考えてる事が微妙に噛み合ってないパターンだ)




473 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:42:51.85 yoKDzkMF0 282/454




「……」

「……」



(見つめ合ってもないのに素直にお喋り出来てねぇぞこいつら……)



「お、男く―――」

「わ、悪い!そういや友と約束があったんだった!」



(ちょ、オレをだしに使うな!委員長に警戒されたらどーすんの!?)



「……え、と……」

「すまん。また今度な!」

「あ……!」




474 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/03 22:44:32.95 yoKDzkMF0 283/454




(あーあ。行っちまった……)

(……委員長の方は、っと……)チラッ





「………………男くん…………」





(……)

(こりゃ平和な一日……とはいかないかな?)




482 : 以下、あけまして - 2012/01/05 02:54:01.94 cmHJPrSwo 284/454

ちょっと待て。友の家が超絶不安定なほのぼの状態なのはわかったけど、なんで発信機なんて持っていた?

483 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:14:55.48 ydC3CvAv0 285/454

>>482
ぎくっ……

えーと設定としては一応、姉妹と外出するとよくはぐれる(特に妹が)→痺れを切らした友くんが発信機を→外出する時は常に持ち歩くようになった

みたいな感じです。一応。


入手ルートは…………まぁ、その……



……ごめんなさい。始めます。



484 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:17:58.53 ydC3CvAv0 286/454





(……)ボーッ


TV〈 待って!お願い!私を捨てないで!


(……)ボーッ


TV〈 ごめん。他に好きな人が出来たんだ……

TV〈 う、嘘……だよね……?


(……)ボーッ



485 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:20:02.73 ydC3CvAv0 287/454



(……)ボーッ


TV〈 ごめん……

TV〈 ま、待って―――


(……)ボーッ





「なんか今日の兄貴、変じゃない?」←片付け中

「……」←同じく




486 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:21:41.04 ydC3CvAv0 288/454




「普段はドラマとか殆ど見ないのに。しかもドロドロな恋愛系なんて」

「……」

「何かあったのかな?」

「『何か』って?」

「うーん……」チラッ




TV〈 グスッ……○○くん……


「はぁ……」




「恋愛ドラマを見て、悟ったかのように軽く溜め息……これは……!」

「?」




487 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:22:28.54 ydC3CvAv0 289/454





「恋、だね!」


「……」




――パリンッ!




「ん? どーした?」





488 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:24:36.04 ydC3CvAv0 290/454




「あ、いや、何でもないよぉー」


「……手が。滑った……」


「もう。大丈夫?」


「……ちっ」サッサッ


「ちょ、それちり取りじゃない!フライパンだよ!?」


「……」




489 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:26:53.98 ydC3CvAv0 291/454




「……でもまぁ、なぁんの根拠も無い勘だけどねぇ」


「……ちっ」ギロッ


「はい分かってます紛らわしい事言ってごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


「……」





(……)




490 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:29:31.40 ydC3CvAv0 292/454




――そして。



(……今日は特に寒ぃな……)

(……)

(……)ペラッ

(……)

(……)ペラッ




491 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:30:58.02 ydC3CvAv0 293/454




(さっきの……昼休みの時……)






『………………男くん…………』






(……男の奴、惚れた相手にあんな悲しそうな顔させて良いのかよ)


(……多分だけど今日あいつは普通に帰宅してる筈だ)




492 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:31:57.37 ydC3CvAv0 294/454




(……)


(男に、連絡してみるか……?)


(……)


(……いや、あいつは馬鹿だけど冷静に物事を判断出来る奴だ。馬鹿だけど)


(……多分あの二人は相思相愛だ。あとは男の方が意識するだけなんだが……)


(……)




493 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:34:17.01 ydC3CvAv0 295/454




(……)


(……委員長もどっか抜けてるし、すれ違って変な事にならなきゃ良いが……)


(……オレからどうこう言うのはもう止めとこう。あとは二人の問題だしな)


(……)





「……今日はホントに寒ぃな……」




494 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:36:55.90 ydC3CvAv0 296/454








* * * * * * * * * * *









495 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:39:14.00 ydC3CvAv0 297/454






――夜中。





「……ん……」ムクッ



「……」



(……トイレ……)ヒタヒタ




496 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:40:27.12 ydC3CvAv0 298/454






(……寒…い……眠……い)ヒタヒタ

(……早く……お布団に……戻りたい……)ヒタヒタ



カチャッ……

……パタン。



(……ん……)モゾモゾ





(……あれ……? なんだか…凄く…暖かい……)モゾモゾ




497 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:42:10.75 ydC3CvAv0 299/454






(……抱き枕なんて……持ってたっけ……?)モゾモゾ









(…………)








(……)






498 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:44:00.32 ydC3CvAv0 300/454






――はい、翌朝。






499 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:46:17.40 ydC3CvAv0 301/454






「…………」


「……んぅ……」モゾモゾ






500 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:48:35.31 ydC3CvAv0 302/454




「……落ち着け、落ち着くんだオレ。取りあえず深呼吸をしよう」


「すーーはーー」


「…………よし」





「……なんで妹がオレの布団にいんの?」

「……zzz……」




501 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:52:04.67 ydC3CvAv0 303/454




(ここは間違いなくオレの部屋。ってことはこいつの方から来たって事だ)

(寝巻きは乱れてない……状況証拠的に人間失格な事をした訳じゃなさそうだ。良かった)

(しかしなんでオレの部屋に? まぁ、取りあえず起こすか)





「おい」

「ん……?」




502 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:53:16.80 ydC3CvAv0 304/454




「……はれ? 兄ひ……?」ムクッ


「うん。寝惚けてるところ悪いんだけど、なんでお前がオレのベッドにいるんだ?」


「……へ?」


「……」






「!!!!」




503 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:55:22.14 ydC3CvAv0 305/454




「え? え? え!?」

「……」

「な、なんで兄貴が――えっ!?」

「……」

「……」






「ま、まさか……あたしに何かしたの!?」

「あぁ、予想通りの反応をありがとね」




504 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:56:19.79 ydC3CvAv0 306/454






※説明中です。暫くお待ち下さい※






505 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 14:58:58.37 ydC3CvAv0 307/454




「――って訳だ。だからオレは悪くないな。うん」

「あ、あたしだって―――あっ」

「ん?」

「……いや、何でもない」

「……ったく。もう一緒に寝るような歳でもないんだから」

「……うっ……」

「それとも何か? 怖い夢でも見たとか?」

「……ぐぐぐ……///」

「やっぱりまだまだ子どもなのかねぇ―――」




506 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 15:03:18.85 ydC3CvAv0 308/454




「――るっさいなぁ!兄貴こそここぞとばかりに寝てる妹の身体触りまくったんじゃないの!? このシスコン!」

「し、シスコン!? そんなん言ったら皆のオレへの見る目が変わるから止めてくんない!?」

「そうだよね……こんな貧相な身体触っても楽しくないよね。ごめん。ちょっと肉付きの良い大人の女になってくる」

「待て待て!なんで机の引き出し開けてんの!?」

「五年後……いや、十年後の方が良いかな……」ブツブツ

「あぁもう相変わらずメンタル弱ぇなオイ!」





※今は早朝です。




507 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 15:06:37.88 ydC3CvAv0 309/454




「と、とにかく下に降りるか」

「あ、うん……」

「姉貴にこんなとこ見られたら刺されるぜ―――」





――ガンッ。





「あ……!こ、このノック音は……!!」


(こんなの絶対おかしいよ……)




508 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 15:08:22.62 ydC3CvAv0 310/454







「―――早く起きろ」ガチャッ







516 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:27:53.90 ydC3CvAv0 311/454






「あ」


「あ」


「…………」






517 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:29:39.60 ydC3CvAv0 312/454






……急な質問だが、皆さんは「走馬灯」を見た事はあるだろうか。

走馬灯とは元々、影絵が写るように細工された灯籠の事である。
近年では「死に際を体験した時に今までの記憶がフラッシュバックする」現象を指し、前者よりもこちらの意味が広く使われている。


閑話休題。筆者は幸か不幸かその珍しい現象を幾度か体験している。

人間とは不思議なものであり、死の脅威が目の前に迫っていると、頭では「逃げなくては」や「死にたくない」などと考えてはいるものの、本当に身体が動かないのだ。
侮るなかれ、本当に微動だにしてくれないものなのだ。

もはや死後硬直どころか死前硬直である。




(友著・『現代和平辞典』より抜粋)




518 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:31:19.60 ydC3CvAv0 313/454




「―――!!!!!」ギロッ


(ああぁぁ目付きがヤバいぃぃぃぃ!!!!)


(やべー遺書まだ書いてねぇや)




520 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:33:13.03 ydC3CvAv0 314/454




「……あ、あの……」

「……」

「……たち……」

「?」

「……あんた達……」

「は、はい?」

「……あ、あんた達……何やって……」グスッ





(えっ!?)

(あ、あの姉貴が……泣いてる!?)




521 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:34:36.57 ydC3CvAv0 315/454




「…………兄妹、なのに……」

「ちょっと待った!誤解だ!」

「そ、そうだよ!何もしてないよ!」

「……グスッ」

「……話、聞いてくれ」

「……」




522 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:35:59.29 ydC3CvAv0 316/454




「な? すぐ済むし」


「……」


「よし、じゃあ――」


「―――おい」グスッ


「はい?」


「……二人とも正座しろ」




523 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:36:51.70 ydC3CvAv0 317/454




「じゃあ説明しろ」ギロッ

「……」←正座中

「ううぅ……」←同じく正座中

「いやぁ、あのですね……」

「……」ギロッ





(怖ぇ!何も後ろめたい事なんて無いのに弁解出来ない!!)

(ついさっきまでの涙目お姉ちゃんはどこに!?)




524 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:38:29.48 ydC3CvAv0 318/454




「だ、だから……何もしてない、です」

「……」スッ

「あ、当たってます!刃が首に当たってます!」

「動くな。分かりやすく説明しろ」ギロッ

「は、はいっ!」



(目が充血してる分いつもよりヤべぇぇぇぇ!!)

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」ガタガタ




525 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:40:01.83 ydC3CvAv0 319/454




「だ、だから……確かに朝起きたら、その……こいつがオレの布団に入ってました」

「続けろ」

「……でも何もしてないです。ホントに」

「……」ギロッ

「嘘偽り全く無いです!本当です!」

「……」

「……」

「……」




526 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:43:34.79 ydC3CvAv0 320/454




「……」

「……」

「……」

「……分かった。信じる」

(よ、良かった!)

(助かったぁ!)

「……まだ終わってない」ギロッ

「はいっ!」

「はいっ!」




「……妹?」

「は、はいっ!? なんでしょうか!!」

「なんで自分のベッドで寝てない?」




527 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:45:43.10 ydC3CvAv0 321/454




「説明しろ」

「え、えーっと……あたしも記憶が曖昧なんですが、多分昨日の夜中トイレに起きた時に寝惚けて兄貴の部屋に間違って入ってそのまま寝てしまったんだと思います。以上です」

「ご苦労」




(……ていうかすぐそうやって説明すれば姉貴をキレさせる事も無かったんじゃね?)




528 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:48:58.85 ydC3CvAv0 322/454




「……と、いう訳です……」

「……」

(あーヤバい。そろそろ脚の感覚が……)

「……」

「お、お姉ちゃ……お姉様?」

「……」ギロッ

(ひゃっ!?)ビクッ




529 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:51:01.46 ydC3CvAv0 323/454




「……」

「……」

「……」






「……朝ご飯、出来てるから」スクッ




530 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:53:37.52 ydC3CvAv0 324/454




ガチャッ……バタン。




「……」


「……」


「ふぅううぅぅぅ………ヤバかったぁぁぁぁぁ!!」


「よ、良かった!あたし達まだ生きてる!生きてるよ!」


「オレ首から血出てないよね!? 大丈夫だよね!?」




531 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/06 23:58:07.23 ydC3CvAv0 325/454




「つーかお前!さっさと寝惚けてましたって言ってれば穏便に済んだかも知れねぇだろ!」

「ご、ごめん……なんか負けたみたいで嫌だったから」

「なんだそりゃ」

「でも兄貴の布団すっごくあったかかったよ?」

「あーそうかい」

「お姉ちゃんも一回兄貴のベッドで寝てみれば分かると思うなぁ。よく眠れるのに」

「そりゃ良かったな……悪いけどオレは朝から疲れたよ……」




532 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/07 00:01:37.42 FV5mx1FC0 326/454




「……という訳でなんとか無事に纏められました。いやぁ、人間話せば分かるもんだね」

「ぶっちゃけ姉貴が泣いてるところを見たのは久し振りだった。今回ばかりは頸動脈とさようならするかと思ったよ……」

「……でも姉貴の作った朝飯はいつも通り美味かったし、妹はいつも通り豆腐メンタルでした」

「……」




「あ、でも学校は普っ通に遅刻しました(笑)」




540 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 22:47:07.32 D7D6u2IV0 327/454



「――よう。今日は早いんだな」

「お前が遅いんだよ。もう朝のHR終わったぞ」

「ちょっと一悶着あってな……それよりどうだ? 昨日は大丈夫だったか?」

「……あぁ。何もされなかった」

「そりゃ良かったな――と言いたいところだけど……」

「……」

「どうかしたのか?」



541 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 22:48:14.64 D7D6u2IV0 328/454



「……なぁ」

「ん?」

「……俺さ……」

「うん」

「……俺……」

(……おっ。まさか委員長の件、踏ん切りがついたか?)






「結構なMかもしれん」

「……そんな事だろうと思ったよ……」ハァ



542 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 22:50:02.90 D7D6u2IV0 329/454




「それからというもの、男は心ここに在らず……といった感じでした」


「先生に指されても完全にシカト、昼飯食う時も箸を逆に持ち、授業中は常にシャーペンを分解しては組み立て、分解しては組み立て……」


「なんかもう、目に見えて放心状態でした」


「オレが話しかけても空返事ばかり」





「……結局、委員長は学校に来ませんでした」




543 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 22:52:07.67 D7D6u2IV0 330/454




――放課後。



「おーい、帰ろうぜ」

「……あぁ……」ボー

「……」

「……」ボー

「……」




544 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 22:53:37.84 D7D6u2IV0 331/454



「……」

(……)

「……」

(……)

「……」




(……じゃ、オレは帰るか)




545 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 22:56:33.40 D7D6u2IV0 332/454




(……)スタスタ


(ありゃ腹括ろうとしてる奴の顔だった……)


(……)スタスタ


(……オレが口出すまでも無かったかな)


(……)スタスタ






(…………上手くやれよ、男)フッ




546 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 22:57:55.84 D7D6u2IV0 333/454








* * * * * * * * * * *









547 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:00:55.26 D7D6u2IV0 334/454




「ただいまー」ガチャッ


(……まぁ、まだ誰も帰ってないんですけどね)


(……)


(夜飯作るの面倒だな。今日は外食にすっかなぁ……)


(……よしそうだそうしよう)




548 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:02:07.72 D7D6u2IV0 335/454




(……となったら二人にメールしとくか)

(『今日は外食。何時頃帰る?』……っと)

(よし。これで―――)



ヴーッヴーッ



(返信早っ)




549 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:04:26.87 D7D6u2IV0 336/454


12/20 17:32
from 妹
sub:無題
―――――――――
あと十分くらい!
どこ食べに行くの?



(うーん……どこにすっかな?)



――ガチャッ。



「ただいまー」




550 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:05:51.61 D7D6u2IV0 337/454




「えっ」


「えっ?」


「……」


「……」


「……えっ?」


「えっ??」




551 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:07:17.38 D7D6u2IV0 338/454




「……あぁ、おかえり」

「ただいまー。外寒いよぉ」

「……」

「……」

「……えっ? 今のメール嘘じゃね?」

「へ?」

「ほら、『あと十分くらい』っての」

「あ、うん。嘘だね」

「なんで?」

「……ごめん。何となく」

「……」




552 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:09:52.18 D7D6u2IV0 339/454




「いかんいかん、しょうもない嘘によって無駄に時間を浪費してしまった。本題に戻ろう」

「りょーかい」

「で、どこにするよ?」

「そういえばお姉ちゃんは?」

「まだ返信来ない……つっても全然経ってないけど」



ヴーッヴーッ



「おっ」




553 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:11:30.87 D7D6u2IV0 340/454


12/20 17:35
from 姉貴
sub:無題
―――――――――
五、任



「あと五分くらいで帰るって」

「なんだ、割りとすぐ近くにいたんだね」

「それでどこにするかはオレらに任せるってよ」

「ふーん」



554 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:16:03.04 D7D6u2IV0 341/454






「――という訳で、近場に最近できたパスタ屋さんに来ました」

「いや、分かってるけど?」

「でも取りあえず言っとかないと分かんないだろ?」

「へ?」

「……」




555 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:17:28.14 D7D6u2IV0 342/454







「……」

「……」

「……」

「頼むもん決まったか?」

「うん」

「姉貴は?」

「……ん」

「じゃあ呼ぶわ」ピンポーン



556 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:20:30.18 D7D6u2IV0 343/454



店員「いらっしゃいませー。ご注文をお伺いします」

「ミートソースを一つ!」

店員「ミートソースをお一つ」



(姉貴、先いいぞ)チラッ

(……後でいい)

(あいよ)



「じゃあこの『伊勢海老のクリームソースパスタ』ってのを」



557 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:23:02.94 D7D6u2IV0 344/454



店員「伊勢海老のクリームソースパスタをお一つ」

「……」

店員「……お客様はどうなさいますか?」

「……あ、えっと、私も同じやつを……」

店員「畏まりました。ミートソースをお一つ、伊勢海老のクリームソースパスタをお二つで宜しいですか?」

「はい」



558 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:26:01.45 D7D6u2IV0 345/454




「……」


「……ん? どうした?」


「……あたしだけミートソース……子供っぽい……伊勢海老のほうが大人のチョイス……負けた……完全に……」ブツブツ


「いやお前まだ子供だろ」


「良いじゃん別に……ミートソース美味しいじゃん……」ブツブツ


「……もう突っ込まんぞ。あぁもう突っ込まんとも」


「……」




559 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:28:40.93 D7D6u2IV0 346/454




「―――ところでさぁ」

「立ち直り早ぇなオイ」

「……」

「兄貴よくこんな店知ってたね」

「あぁ、クラスの奴に教えて貰ってな」

「……」

「ふーん。同じクラスの人に」

「あぁ」




560 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:33:04.89 D7D6u2IV0 347/454




「それいつごろ?」

「んー、確か一週間と少し前……くらいかな?」

「……」

「教えてくれた人って男の人? 女の人?」

「なんでそこまで……」

「いいじゃんいいじゃん」

「……」

「……まぁ、女子だけど」



「……」ピクッ




561 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:36:46.43 D7D6u2IV0 348/454




「ふーん……女の人にねぇ。へぇーえ」


「あ、あぁ」


「……」イラッ


「そっかぁ。ふーん……」


「……ちっ」イライラ


「え、オレなんか悪い事言ったか?」




562 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:39:28.94 D7D6u2IV0 349/454




「……因みにそれ、どんなシチュエーションで言われたの?」


「へ? えーっと……確か学校で昼休みに『良い店だから今度一緒に行こうよ』とか言われたような……」


「……」


「……」ピシッ


「あ、姉貴? グラスにヒビ入ってますけど……」




563 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:43:29.56 D7D6u2IV0 350/454




店員「お待たせしました。ミートソースのお客様」


「あ、はーい」


店員「伊勢海老(ryのお客様―――」


「……」ギロッ


店員「ひぃっ!?」ビクッ


「あああごめんなさいテキトーに置いといてくれて結構です!!」




564 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/08 23:47:10.58 D7D6u2IV0 351/454







「い、頂きまーす!」


「……」


「……」


「……」


「……頂きまーす」ボソッ


「……頂きます」ボソッ


(なにこれこわい)




575 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 22:54:55.82 3hwi1F3/0 352/454




「……」


TV〈 やっぱり俺、お前の事が好きだ!

TV〈 ○○くん……!私、ずっと待ってたんだよ……!

TV〈 あぁ……あぁ!ごめんな……!


「……」




「……」ジーッ




576 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 22:56:04.22 3hwi1F3/0 353/454




「お姉ちゃーん、髪とかしてー」ガチャッ

「……あ、うん」

「……またドラマ見てるんだ、兄貴」

「二夜連続放送なんだって」

「ふーん」

「ほら。座れ」

「はーい」




577 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 22:57:26.45 3hwi1F3/0 354/454




「……」ボーッ



「あれ? また放心状態になっちゃってるね」

「……」サッサッ

「どうしたのかな?」

「……」サッサッ

「……」




578 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 22:59:08.35 3hwi1F3/0 355/454




「……」

「うーん……やっぱりこれは恋―――」

「……」ギリギリ

「痛い痛い痛い!櫛っ!!お姉ちゃん櫛食い込んでる!!」





「……」ボーッ


※特に何も考えてないです。




579 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:00:11.51 3hwi1F3/0 356/454




「兄貴ー」

「んー?」

「さっきからボーッとしてどうしたの?」

「んー……いや、別に」チラッ


TV〈 暖かい……

TV〈 ずっとこうしてたいね……


「……」ボーッ




580 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:02:02.22 3hwi1F3/0 357/454




「……」


「…………なんかオレも人肌恋しくなってきたな……」ボソッ







「!!」グサッ

「だから櫛痛いよぉぉぉ!!」




581 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:03:57.49 3hwi1F3/0 358/454




「あっ」

「うぅ……痛い……」

「ご、ごめ……」

「もう……じゃあいつも通り結んでくれる?」

「……あ、うん」



「……」ボーッ




582 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:05:56.32 3hwi1F3/0 359/454




――そして。



(……)ペラッ

(……)

「……へっくしっ!!」

(あー寒い。風邪引いちまったかな……?)

(……そろそろ寝るか……)




583 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:07:11.88 3hwi1F3/0 360/454




――ガンッ。




「ん? はーい」




ガチャッ……




「……」




584 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:09:47.27 3hwi1F3/0 361/454




「あれ? こんな夜中にどうした?」

「……」

「まさか……スマブラやりに来たとか?」

「……」

「……つーかなんで枕持参してんの?」

「……」

「……」




585 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:11:49.58 3hwi1F3/0 362/454




「……さ、さっき……」

「?」

「……」

「さっき? さっきって何?」

「……」

「……」

「……」

「……取りあえず、座れば?」

「……」スッ




586 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:13:46.98 3hwi1F3/0 363/454




「……」

「……」

「……今日は」

「ん?」

「……今日は、寒い」

「あぁ。そりゃとっくに冬だしなぁ」

「……」

「……」




587 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:15:29.03 3hwi1F3/0 364/454




「……」

「……」

「……寒い、から。」

「寒いから?」

「……」

「……」

「……」

「……?」







「…………ちっ」ギロッ

「えぇぇ!? な、なんか知らんけどごめんなさい!!」




588 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:19:28.12 3hwi1F3/0 365/454




(なんで今オレ睨まれたの!? 怖いよもう!!)

「……」

「あ、あの……」

「……今日は寒い」

「はい。すこぶる寒いです」

「……だから。」

「????」




589 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:22:52.73 3hwi1F3/0 366/454




「あ、あの……」

「……」

「もう少し分かりやすく説明して貰えますか……?」

「……寒いし」

「はい。寒いです」

「……そ、それにさっき…………って言ってたよな?」

「はい…………はい?」




590 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:25:03.38 3hwi1F3/0 367/454






「……だ、だから!さっき『人肌恋しい』って言ってただろ!!」ギロッ


「はい言いましたごめんなさい刺さないで下さい!!!!」






591 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:28:04.11 3hwi1F3/0 368/454




「……」

「……」

「……そういう事、だから」

(自信は無いが、枕持ってるっつーことは……)

「……」

「……えーっと、つまりオレの部屋に寝に来たって事――ですか?」

「…………っ!」ギロッ

「あああ違いますよねそんな訳ないですよねごめんなさい!!!!」




592 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:30:30.46 3hwi1F3/0 369/454




「……」


「……」


「……ってる」ボソッ


「はい?」


「そ、それで……あってる……///」ボソッ


(か、顔赤っ!何これマジギレする兆候!?)




593 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:33:29.36 3hwi1F3/0 370/454




「……わ、分かったよ。じゃあ布団敷くから―――」

「は?」

「え?」

「……」

「……」

「……さっきから何回も言ってる。今日は凄く寒い」

「えぇ、まぁ十二月ですし」

「……」

「……」




594 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:36:16.55 3hwi1F3/0 371/454




「あの……まさかとは思うけど、オレのベッドで寝る、と……?」

「……ちっ……」

(ええぇぇ!? マジですか!?)

「……」

「……」

「……寒いから、だから」

「いやー、あのですね。寒いからって姉弟で一つのベッドで寝るってのは……流石に、ねぇ?」

「……妹とは昨日寝てたのに」

「だ、だからあれは事故というか……」




596 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:39:37.64 3hwi1F3/0 372/454




「……つ、次は私の番」


「顔赤いぞ? 熱でもあるんじゃないのか?」


「……」


「だ、だから今日のところはちゃんと自分の部屋に戻って―――」


「……」ギロッ


「―――っしゃあ!さっさと寝るぞ姉貴!!」






(あっはっはー☆もうどうにでもなーれ♪)





597 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:41:59.58 3hwi1F3/0 373/454




――そして。



「……」

「……」

「……」

「……」

「……な、なぁ」

「……ん」

「狭くないか?」

「別に」

「……」

「……」




598 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:45:29.53 3hwi1F3/0 374/454





「……なぁ、やっぱり―――」

「だ、黙れ」

「……」

「……」

(はぁ……ったく。なんでオレなんかと……)

「……」







「…………き……だからだよ……」ボソッ

「ん? どうかしたか?」

「……別に」





599 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:46:35.94 3hwi1F3/0 375/454





「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……起きてる?」

「……ん」





600 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:50:03.04 3hwi1F3/0 376/454





「……あ、悪い。起こしちまったか?」

「……いや」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……り……りんご」

「……」

「……」

「……は?」

「何でもないですごめんなさい」





601 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:52:22.51 3hwi1F3/0 377/454









* * * * * * * * * * *










602 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:54:16.13 3hwi1F3/0 378/454





チッ…チッ…チッ…チッ…チッ…



(なんだか眠れない……さっきまであんなに眠かったのに)



チッ…チッ…チッ…チッ…チッ…



(さっきから時計の針の音が妙に耳につく。なんか良い匂いもするし)

(……流石に姉貴はもう寝たかな?)チラッ




603 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:58:15.86 3hwi1F3/0 379/454




「……すぅ……」


(寝てる……か。姉貴の寝顔なんて何年振りだ? つーか初めてかもな。薄暗いから鮮明ではないけど)


「……すぅ……」


(普段のしかめっ面からは考えられんほど安らかな寝息だな……)


(……)


(……ま、寝たんなら丁度いい。オレは床に布団敷いて寝るか)




604 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/09 23:59:34.70 3hwi1F3/0 380/454




(起こさないように……っと)ソーッ




―――ガシッ。




(ん?)




605 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/10 00:02:32.76 05aiBDow0 381/454






「…………だいじょ……ぶ……」



(……え?)



「……ぉ姉ちゃん……が……いる……よ……」



(!)



「……すぅ……すぅ……」



(…………ははっ。なんつー寝言だよ……)フッ






606 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/10 00:05:32.86 05aiBDow0 382/454






「……すぅ……すぅ……」


(……姉貴の手って、こんなに小さかったのか……)スッ







(……)







(……おやすみ……)






621 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 22:54:48.50 W/0MhAvy0 383/454






――翌朝。






622 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 22:57:05.89 W/0MhAvy0 384/454






「……」



「……」モゾッ



「……ん……っ」



「……」



(……あったかい……)





623 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 22:59:07.68 W/0MhAvy0 385/454




「…………」モゾモゾ

「……」

「……ZZZ……」





(……あ……)

(……ずっと、手握っててくれた……?)




624 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:01:26.95 W/0MhAvy0 386/454




(……)


「ZZZ……」


(……)


(……)ナデナデ




625 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:03:03.64 W/0MhAvy0 387/454








* * * * * * * * * * *








626 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:06:43.07 W/0MhAvy0 388/454




ジリリリリリリ……



「……ん……」



リリリリリリ……



「……らっ!」ポチッ






「…………」ムクッ




627 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:09:44.95 W/0MhAvy0 389/454




(……)


(あれ? 姉貴は……もう起きたのか)


(……)


(……なんだか、凄ぇよく眠れた気がする。疲れが殆どとれたような……)


(……妹が言ってた事も案外正しいかもな)




628 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:13:03.68 W/0MhAvy0 390/454




「っはよー」

「おはよ」

「……」←料理中

(さーて今日も牛乳ーっと)ゴクゴク

「…………おはよ」

「……」

「……」






「―――え!?」

「……な、なに」




629 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:18:14.89 W/0MhAvy0 391/454




「今、おはようって……!」

「……は? それが?」

「……いや、なんでもない。なんでもないんだ……」ホロリ

「?」

(分かる……分かるよ兄貴っ……!)

「まぁいいけど。……お皿、運んどいて」

「おう。任せろ」




630 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:21:23.94 W/0MhAvy0 392/454






「頂きまーす」


「頂きまーす!」


「……頂きます」






631 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:24:00.99 W/0MhAvy0 393/454








* * * * * * * * * * *








632 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:26:25.26 W/0MhAvy0 394/454




――学校。



「……」ボーッ


「よっ、友」


「おう。おはよ」


(……ん? なんとなく男の顔が緩んでる気がする……)


「あー寒っ」




633 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:31:54.35 W/0MhAvy0 395/454




(一応聞いておくか……)

「そういや昨日は委員長ん家行ったのか?」

「ん? あぁ。つーか凄ぇな、なんで知ってんだよ」

「で? どうだった?」

「……また監禁された」

「へぇ」

「そして押し倒されかけた」

「マジか」



(……委員長の奴、ウブだって言ってたのになんて大胆な……)




634 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:35:54.08 W/0MhAvy0 396/454




「かけた……って事は未遂だったのか」

「あぁ」

「良かったな……いや、残念だったな――か?」ニヤリ

「お前から教わったあの技が役に立ったんだが……正直、惜しい事した気がする」

「……そうか」

「あぁ」




635 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:41:29.93 W/0MhAvy0 397/454




「……」

「……」

「……で?」

「ん?」

「他には報告するべき事、ないのか?」

「……あぁ。実は―――」




636 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:44:24.65 W/0MhAvy0 398/454








「――という訳で、女と付き合うことになりました」


「おぉ。おめでとう」








637 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:47:14.08 W/0MhAvy0 399/454






(良かった……やっとだ……)





638 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:48:04.49 W/0MhAvy0 400/454






(やっと……やっと言える……!)






639 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:49:43.36 W/0MhAvy0 401/454







(……あぁ、今日は平和だ!)







おわり。





640 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/11 23:52:57.78 W/0MhAvy0 402/454



これにて友編は終了です。

裏で暗躍してた分、普通に友くんの方が苦労人のような気がします。気のせいでしょうか。

これからも男くんは監禁されたり、友くんは妹さんに振り回されて姉御に刺されそうになったりするんでしょうね。


とにかく、お付き合い頂き本当に有難うございました。
またいつか駄文を書くことがあったら見てやって下さい。

ではまた。




……あぁ、可愛い娘に監禁されたい。



655 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 22:59:15.95 sLJwSvP00 403/454




コンコン。


「はいよー」


ガチャッ……


「……」




656 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:00:48.58 sLJwSvP00 404/454




「……」

「……あのさぁ」

「やだ」

「え!? まだ何も言ってないよ!?」

「スマブラだろ? やだ。つーかオレこれから出掛けるし」

「ち、違うって!」

「えっ」




657 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:01:41.79 sLJwSvP00 405/454




「じゃあどうしたんだ?」

「ちょっと相談事があって……」

「……ふーん。言ってみ」

「……」

「あ、なるべく手短にな」

「……」






「あたし人気ないみたいなんだけど」

「は?」




659 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:03:47.81 sLJwSvP00 406/454




「人気ない? 誰に?」

「ううん。皆に」

「皆? どこの皆だよ」

「だから、見てくれてる皆だよ」

「は?」

「え?」

「……」

「……」

「見てくれてる皆?」

「うん。見てくれてる皆」




660 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:04:39.49 sLJwSvP00 407/454




「お姉ちゃんは可愛い可愛い言われてるのに『妹可愛い』って言ってる人全然見たことないもん……」ブツブツ

「姉貴も関係してんの?」

「なんでかな? あたしも『こんな妹が欲しい』とか言われたいんだけど」

「皆に、か?」

「皆に」ウン

「……えーっと、すまん。一から十まで話が分かんねぇわ」




661 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:05:18.98 sLJwSvP00 408/454




「なんでかな? なんでだろ?」

「……要するにアレか。お前は可愛い可愛い言われたいのか」

「う、うん……まぁね」

「OK分かった。お前は可愛いよ。じゃあ留守番頼むわ」

「待って待って!そうじゃない!あたしは皆に言われたいの!」ガシッ

「えぇー……」

「そんなの兄貴に言われたって―――うん、まぁ嬉しいけどさ」

「いや、オレにどうしろと?」




662 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:06:43.89 sLJwSvP00 409/454




「……」

「……」

「お兄ちゃん!」

「は?」

「……どう?」

「何が」

「……」

「?」




663 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:08:29.78 sLJwSvP00 410/454




「……おはようございます。兄さん」

「え?」

「いかがですか?」

「いや、だから何が」

「……」

「……」

「……」

「?」





「……」ツー

「無表情のまま泣くなよ!怖ぇわ!!」



664 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:10:13.27 sLJwSvP00 411/454




「……」グスッ


「……ったく。そんな下らんこと気にすんなって」


「下らなくないよ……」


「大丈夫だよ。お前は可愛いから」ポン


「……」


「な?」


「……ん……」コクッ


「じゃ、行ってくるわ」


「……あ、兄貴っ」




665 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:11:20.41 sLJwSvP00 412/454




「ん?」

「……」

「どうした?」

「え、えっと……その……」

「……」

「……あ、あ、あ……」

「あ?」




666 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:12:07.53 sLJwSvP00 413/454






「……アイス買ってきてくれる? 帰りにでいいから」

「行ってきまーす!!」






670 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:16:12.35 sLJwSvP00 414/454




とあるファミレス。


店員「いらっしゃいませー。何名様ですか?」

「一人っすけど……待ち合わせしてるんですよね。先に一人来ませんでした?」

店員「いえ……まだいらっしゃってませんが」

「……あ、じゃあ待ちます。禁煙席で」

店員「ではこちらにどうぞ」



671 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:18:22.60 sLJwSvP00 415/454




「……えーっと、取りあえずドリンクバーを一つ」

店員「かしこまりました。グラスの方はあちらにございますので」

「うっす」





(……)





(……遅ぇな、男の奴……)




672 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:21:06.43 sLJwSvP00 416/454




――そして十分後。



「よっ」

「よう」

「わり、遅れた」

「ったく、お前から呼び出しといてよぉ……」

「すまんすまん。……あ、ドリンクバー一つ」

店員「かしこまりました。グラスの方は(ry」




673 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:22:35.14 sLJwSvP00 417/454




「……で?」

「ん?」

「何の用だよ?」

「用?」

「あぁ」

「……」

「……」






「いや、ねぇよ。そんなの」

「よし表出ろ」




674 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:24:15.66 sLJwSvP00 418/454




「?」

「用もねぇのに呼び出しやがったのか?」

「あぁ」

「……」

「……」

「右ストレートか左アッパー、どっちか選べ」

「……あ、わり。ちょっと飲みもん取ってくるわ」

「……」




「この会話の噛み合わなさ……うん、なんか懐かしいね」




675 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:26:11.05 sLJwSvP00 419/454






「……やっぱ砂糖とミルクは二対八の割合だよな」ドサッ

「……」

「どうした? 頭抱えて」

「いや、何でもねぇ……」

「ふーん」ズズー

「……」

「……あぁ。そういや俺、さっきまで監禁されてたんだけどさ」

「ほぉ……」







「……お?」




676 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:29:39.60 sLJwSvP00 420/454




「お、お前まだ監禁されてんの!?」ガタッ


〈 カ,カンキン?

〈 ナンダナンダー?

〈 ザワ…ザワ…


「声でかいぞ」

「あ、あぁ……悪ぃ」




677 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:31:41.12 sLJwSvP00 421/454




「……いや、それマジ?」

「あぁ。大体週に三回くらいのペースで」

「バイトみたいに言うなよ」

「……」ズズー

「つーか委員長と付き合ってから一ヶ月以上経つよな?」

「あぁ。時が経つのは早いな」

「なのにまだ監禁されてんのかよ……」

「あぁ」




678 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:33:31.57 sLJwSvP00 422/454




「最長で二日間縛られっぱなしってのはあった」

「二日か…………って、二日?」

「おう」

「なんか案外短いんだな」

「あぁ。大抵は俺が怒った振りすりゃ女が泣きそうになって解放してくれるからな」ズズー

「お前、やっぱ隠れSじゃね?」

「……逆に最短記録は十八秒だったっけな」

「それ一体何が起きたの!?」




679 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:35:26.77 sLJwSvP00 423/454




「……」ズズー

「つーか『さっきまで監禁されてた』って……大丈夫なのか?」

「大丈夫。ちゃんと『友と遊ぶ』って置き手紙しといたし」

「なるほど。オレをだしに使った、と」

「そうなるな」

「少しは否定しろよ……」



(つーか委員長の奴、男と付き合えば少しは大人しくなると思ってたんだが……)




680 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:36:29.49 sLJwSvP00 424/454




「ま、見たところ大丈夫そうだったんだな」

「あぁ」

「今回はどんな感じだった?」

「今回? 今回は……そうだな……」




ホワンホワンホワン……




681 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:40:16.90 sLJwSvP00 425/454




『……おっ』

『目、覚めた?』

『あぁ』

『……』ニコッ

『――おっ、手錠新しいのに変えたのか?』

『うん』

『ほぉー、格好良いな。ふーん』

『……き、気に入ってくれたなら良かったよ』




682 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:42:35.88 sLJwSvP00 426/454




『……今日って何曜日だっけ』

『金曜日だよ』

『えっと……今週はこれで確か三回目か』

『ううん。四回目だよ』

『あぁ、そうだったっけ』

『ふふっ。うっかり屋さん』ツンッ

『あはは』

『うふふ』




683 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:44:35.38 sLJwSvP00 427/454




『で、今日はどうやった? 何も飲み食いしてないよな?』

『今回はなんと睡眠ガスを使いました!』

『マジか。これまた思い切った事したなぁ』

『手に入れるのが大変だったよ。でも効果てきめんだったね』

『……あぁ、道理でガスマスクしてた訳だよ。成長したな』

『ふふっ。ありが




「はいごめんね!ちょっと一旦回想止めてもらえる!?」





684 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:46:44.06 sLJwSvP00 428/454




「なんだよ急に。良いとこだったろ」

「……なんだよと言われたら言いたい事は沢山あるんだけど、取りあえず全体的に一言」

「おう」





「何だよこの会話!!?」

「えっ」




685 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:49:49.53 sLJwSvP00 429/454




「お前縛られてたんだろ!?」

「あぁ」

「なんかもう全体的に軽すぎんだよ!『あはは』『うふふ』じゃねぇよ!!ガスマスクしてたら警戒しろよ!!!」

「うるせぇな……周り見てるぞ」

「馬鹿かよこいつら……あぁ馬鹿だったなそういえば……」

「……でも毎回こんな感じだったけどな」

(……慣れって怖いね……)




686 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:51:50.81 sLJwSvP00 430/454




「頼むよ……頼むから学べよ……」

「じゃあ続けるぞ?」

「……好きにしろ」

「はい、リスタート」




ホワンホワンホワン……






687 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:56:04.06 sLJwSvP00 431/454




『女、これ外してくれ』

『だめ』

『マジか』

『うん』

『……』

『……』

『女』

『はい?』

『これ外してくれ』

『いや、だから―――え?』




688 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:57:33.26 sLJwSvP00 432/454




『外して』

『いやいや、今―――』

『外してー』

『ちょっ……』

『外してくれ』

『待っ……』

『外してくれさい』

『だ、だからダメだってばぁ!』







(つ、ツッコミてぇ……!)ギリッ

「何お前歯ぁ食い縛ってんの?」



689 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/17 23:59:19.25 sLJwSvP00 433/454




『……じゃ、失礼します……』ギシッ

『相変わらず体重軽いなーお前』

『……』ゴクリ…

『?』

『……』ヌギヌギ

『おーい、なんで上着脱いでんの?』

『……ほ、ほら。今日は凄く寒いじゃない?』

『……まぁ、まだ真冬だしな』

『だから人肌で暖め合おうかなぁ……なんて……』




690 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:01:26.35 mTDmQPig0 434/454




『……』


『……』


『……』


『……』


『……と、言いつつも相変わらず顔が真っ赤な女であった』


『っ……!////』




691 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:04:35.37 mTDmQPig0 435/454




『……今日こそ……今日こそ……』ブツブツ

『なんか怖いぞお前』

『……大丈夫。私はやれば出来る子……やれる子……』ブツブツ

『……』

『深呼吸……』スーハースーハー

『……』

『……最初は痛いって聞くけど……大丈夫。男くんとなら……』ブツブツ

『……』




692 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:06:32.89 mTDmQPig0 436/454




『……ん?』

『?』

『おい、髪にゴミついてんぞ』

『へ? どこ?』サッサッ

『あー違う違う。もう少し上』

『こ、この辺?』サッサッ

『あー行き過ぎ。もう少し左の方に――』

『取れた?』サッサッ

『いや、全然』




693 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:10:30.54 mTDmQPig0 437/454




『うぅ……!』サッサッサッサッ

『……』

『と、取れた?』

『……あぁもう焦れったい。これ外してくれ。俺が取ったる』

『あ、なんかごめんね。お願い』カチャカチャ

『おう。気にすんな』

『……はい。外れたよ』




694 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:12:23.21 mTDmQPig0 438/454




『えっと、この辺に……』スッ

『っ……』ピクッ

『ん?』

『あ、大丈夫。何でもない』

『んー……なんか引っ掛かってて取りにくいな』サワサワ

『んっ……そ、そう……?』

『……』サワサワ

『……んぅ……』モジモジ




695 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:14:18.74 mTDmQPig0 439/454




『……おし!取れたぞ』スッ

『あ、うん。ありがと……』

『……』サワサワ

『……』

『……』サワサワ

『あのー……男くん?』

『なんね』サワサワ




696 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:15:59.38 mTDmQPig0 440/454




『……もうゴミは取れたんでしょ?』

『あぁ』サワサワ

『……』

『……』サワサワ

『な、なのになんでまだ髪の毛触ってる、の……?』

『なんか凄ぇサラサラだからずっと触りたくなってきてな』サワサワ

『ちょっ……///』




697 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:17:14.40 mTDmQPig0 441/454




『……』モジモジ

『……すまん。嫌だったか?』サッ

『あっ……!だ、だめ!』

『ん?』

『や、やめないで……』

『良いのか?』

『……ぅん……///』




698 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:18:55.19 mTDmQPig0 442/454




『じゃ、失礼して』

『はい……』

『やっぱ柔らけぇなぁ』サワサワ

『あ、あ、あり……がと……』

『ずっと触ってたいぜー』サワサワナデナデ

『そう…………嬉しい……///』

『……』サワサワナデナデ




699 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:20:39.61 mTDmQPig0 443/454






『……』サワサワナデナデ


『……っ……』


『……』サワサワナデナデ


『……んー……』


『……』サワサワナデナデ


『……気持ち…ぃぃ……』ウツラウツラ






700 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:23:11.59 mTDmQPig0 444/454






……ホワンホワンホワン




「―――で、いつの間にか女が熟睡したから、俺は普通に抜けてきたって訳だ」

「……」

「こうして俺は一流の撫でプロへの道を―――って、どうした?」

「……今のって監禁された時の回想だよな?」

「あぁ」

「……」

「?」




701 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:24:53.97 mTDmQPig0 445/454




「……あ、でも今度はちゃんと毛布も布団もかけてやったから風邪は引かないと思うぜ」

「……そういう事じゃねんだよ」

「??」

「なんだよ今の回想!後半全部のろけ話じゃねーか!!」

「え? そうか?」

「自慢か。自慢か畜生……」

「じゃあ自慢って事にしとくわ」

「だから少しは否定しろよ!!」




702 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:27:24.30 mTDmQPig0 446/454




「それにしてもお前からのろけ話を聞かされるとはな……」

「まぁ、さっきも言った通り毎回こんな感じだけど」

「……ちっ……」ズズー

「あ、それと女の寝顔は相変わらず可愛いのな」

「くそっ、爆発しやがれ」

「(笑)」

「笑ってんじゃねーよ。ついでに飲みもん取ってこい」




703 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:31:04.80 mTDmQPig0 447/454




「……つーかお前、毎回こんな感じだって言ったよな?」

「あぁ」

「じゃあ何か? お前毎回押し倒されてんの?」

「あぁ。ここんとこずっとな」

「……でも、その、なんだ。そういう事はしてねぇんだろ?」

「あー、そういうのはまだ早いだろ。うん」



(……委員長、このアホは強敵だ。頑張れよ……)




704 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:35:42.94 mTDmQPig0 448/454




「……で、お前の方はどうなんだ?」

「オレ?」

「あぁ。姐さんと妹ちゃんは元気か?」

「……あー、二人とも相変わらずだよ」

「ふーん。って事は相変わらず姐さんは光り物常備してんのか」

「まぁな」

「……で、妹ちゃんは超絶豆腐メンタルと」

「まぁな……」

「お前も大変だな」

「……まぁな……」




705 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:38:41.66 mTDmQPig0 449/454





「なぁ」

「ん」ズズー

「……お前はさぁ、彼女作んねぇの?」

「んー……まぁ今は自分の事で精一杯だしな」

「ふーん」

「それに、お前みたいに自分の事を一途に想ってくれる娘が同じクラスにいました!なんて事がありゃ苦労しねぇしな」

「もしかしてそれが本音か?」

「悪ぃかよ。大体なぁ―――」







706 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:40:56.83 mTDmQPig0 450/454









* * * * * * * * * * *









707 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:41:44.26 mTDmQPig0 451/454




「……おっと、もうこんな時間か」

「マジだ。早いな」

「そんじゃあこの辺でお開きにすっか」

「まぁファミレスで駄弁っただけだけどな」

「てめーが呼んだんだろうが。その上ご丁寧に惚気てくれやがって」

「めんご」

「……ったく……」




708 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:43:08.50 mTDmQPig0 452/454






「―――じゃあまた明日」


「おう。学校で」






709 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:44:22.53 mTDmQPig0 453/454






「もう監禁されないようにな」


「お前こそ刺されないようにな」






おわり。





711 : ◆4dEEs59OFQ - 2012/01/18 00:47:57.26 mTDmQPig0 454/454


これにて終了です。ホントに終了です。
蛇足だったかも知れませんが、どうか生暖かい目で見てやって下さい。


長々と書くのもアレなんで、最後に一言だけ。



今まで本当に有難うございました!




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