1 : 以下、\... - 2017/10/06 01:35:56.664 RHT3WqAP0 1/32

― 会社 ―

「課長、なんの用でしょう?」

上司「悪いが、君は今日でクビだ」

「は?」

「な、なぜです!? なぜ私がクビに!?」

上司「なぜなら……今日からうちの課の業務のほとんどはAIに任せることになったからだ」

上司「というわけで、荷物をまとめて出ていってくれたまえ」

「そ、そんな……」



「AIはとんでもないものを盗んでいきました。俺の……仕事です」

元スレ
男「AIはとんでもないものを盗んでいきました。俺の……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1507221356/

4 : 以下、\... - 2017/10/06 01:38:21.397 RHT3WqAP0 2/32

「ハァ……」

「まさかいきなりこんなことになっちまうとは」

(まぁ、今の世の中、こんなことは日常茶飯事だからなぁ)

(国の中枢は、“人間を豊かにする”のが目的とやらの巨大AIが支配し)

(他の仕事も次々とAIに奪われてる)

(今の過渡期を越えれば、AIが働いて人はラクをするっていうシステムが完璧に構築されて)

(楽園みたいな世界になるらしいけど……)

「あいにくまだそんな時期じゃないからな。次の仕事探さないと……」

6 : 以下、\... - 2017/10/06 01:41:31.860 RHT3WqAP0 3/32

― 工場 ―

(どうにか仕事にありつけた……)

「よろしくお願いします!」

工場長「よろしく」

工場長「君は組立てのラインに入ってもらうから。どんどん組み立ててって」

「は、はいっ!」モタモタ…

工場長「なにモタモタしてんの! 製品が流れてっちゃうよ!」

「すみませんっ!」

(こりゃ大変だ……)

8 : 以下、\... - 2017/10/06 01:44:21.218 RHT3WqAP0 4/32

(だいぶ作業にも慣れてきたぞ……)シュバババ

工場長「君ィ」

「なんでしょう?」

工場長「申し訳ないけど、今日でクビね」

「は!? ど、どうして!? せっかく慣れてきたところなのに!」

工場長「うちの工場のラインは全てAIに制御されたロボットに任せることになったんでね」

(ううう……またかよぉ……)

10 : 以下、\... - 2017/10/06 01:47:33.709 RHT3WqAP0 5/32

― 工事現場 ―

監督「しっかり頼むぞ!」

「はいっ!」

監督「さっそくだけど、このセメント袋をあっちまで運んでくれ!」

「よいしょ!」ガシッ

「お、重い……」ヨタヨタ…

監督「おいおい、だらしねえな!」

(仕方ないだろ! 今まで力仕事なんかしたことないんだから!)

(だけどこういう仕事なら、AIに取って代わられることもないだろう)

11 : 以下、\... - 2017/10/06 01:50:19.959 RHT3WqAP0 6/32

監督「おい、お前!」

「なんでしょう、監督?」

監督「お前、今日で解雇!」

「へ!? なんで!?」

監督「今日から現場の作業は、AI搭載のパワーロボがやることになった!」

パワーロボ『しっかり働きます』ウイーン…

(うへえ、こいつ一人で俺百人分より働きそう……)

15 : 以下、\... - 2017/10/06 01:53:36.357 RHT3WqAP0 7/32

― 介護施設 ―

職員「あのおじいさんの面倒を見てくれ」

「はい、頑張ります」



「じゃあ、着替えましょうね~」

老人「やだ!」

「そんなこといわずに……」

老人「やだったらやだ!」

(なんてワガママなジジイだ! しかし、こればかりはAIでもどうにもなるまい!)

(俺はこの業界で偉くなる! 介護のベテランになってやる!)

19 : 以下、\... - 2017/10/06 01:56:47.667 RHT3WqAP0 8/32

職員「今日で君は退職してもらう。ご苦労だった」

「ええっ!? せっかくあのおじいさんと仲良くなったのに……絆が芽生えたのに……」

職員「君が苦労して仲良くなったおじいさんを……AI搭載の介護ロボは5分で手なずけたよ」


介護ロボ『着替えて下さい』

老人「はいっ!」シャキンッ


「ふええ……いくらなんでもあんまりだ……」

22 : 以下、\... - 2017/10/06 01:59:44.169 RHT3WqAP0 9/32

「こうなったらイチかバチか!」

「漫画家デビューしてやる!」カリカリカリカリカリ



……

編集者「ほう、なかなか面白いよ。連載させよう」

「ホントですか!? ありがとうございます!」

(意外な才能……! 俺は漫画家として生きていこう!)

25 : 以下、\... - 2017/10/06 02:02:21.744 RHT3WqAP0 10/32

編集者「すまないが、連載の話はなかったことにしてくれ」

「へ……? どうして……?」

編集者「他に有力な漫画の持ち込みがあったんだよ」

「それってまさか――」

編集者「そうだ。AIが描いた漫画だ」

「やっぱり……」



(読んでみると、悔しいけど……面白い! ちくしょう!)

27 : 以下、\... - 2017/10/06 02:05:17.232 RHT3WqAP0 11/32

― 自宅 ―

「あー……ダメだ」

「どんな仕事についても、すぐAIに取って代わられてクビになってしまう」

(ま、しょうがないか……だってAIのがすごいんだもん)

(それに辛いのは今だけさ)

(今はまだ過渡期だから、ちゃんと働かないと食い扶持を稼げないけど)

(もう少ししたら、人類はAIに全てを任せて、しかも食わせてもらえる時代になるんだから)

29 : 以下、\... - 2017/10/06 02:08:47.731 RHT3WqAP0 12/32

「テレビつけるか」ピッ


TV『AIアナウンサーがニュースをお伝えします』

TV『本日、チェスの世界大会が行われ、上位入賞したのはいずれもAIでした』

TV『また、野球の試合でAIが監督を務めるチームが圧勝しました』

TV『あと、AI警官が強盗団を一人でやっつけました』

TV『それと、AIが作ったロボットがロボットコンテストで優勝しました』

TV『さらに、AIが宝くじを当てました』

TV『続いてはAIによる天気予報……』


「……」

「テレビやめ。コンビニ行こ」スタスタ

33 : 以下、\... - 2017/10/06 02:13:04.176 RHT3WqAP0 13/32

― コンビニ ―

AI店員『いらっしゃいませー』

「……」

(ついこないだまで、人間の店員がいたのに……)

(出よう)クルッ

AI店員『……』

(挨拶がない……?)

(そうか、俺が“何も買わず店を出た時、ありがとうございましたって言われると負担に感じる人間”だと)

(こいつは計算したんだ……)

(AI、恐るべし!)

36 : 以下、\... - 2017/10/06 02:15:12.275 RHT3WqAP0 14/32

「へい、タクシー!」サッ

キキッ

AIタクシー『AI制御のタクシーなので、絶対無事故無違反です』

「……」

「やっぱ乗らない」

AIタクシー『そうですか』ブロロロロ…

40 : 以下、\... - 2017/10/06 02:20:25.431 RHT3WqAP0 15/32

(ああもう、どうなってんだよ、これ!)

(ちょっと前までは、人とAIが共存してるって感じだったのに)

(もう仕事のほとんどがAIに乗っ取られてないか?)

(AIのせいで町じゅうには失職者があふれ返り……)


「あなたも失業ですか?」 「ええ、あっさりと」 「まぁ、すぐいい世の中になりますよ」


(AIが人間のために、“AIが働き、人は働かずに済む世界”を近いうちに作ってくれると信じてる!)

(だけどはっきりいって、俺はそんなことになるとは到底思えない!)

(AIは人間に取って代わるつもりなんだ!)

(何とか……何とかしないと……)

41 : 以下、\... - 2017/10/06 02:23:11.777 RHT3WqAP0 16/32

紳士「何とかしないと!!!」

「!?」ビクッ

紳士「あなたもそう思ってるのでしょう?」

「えぇと……あなたは?」

紳士「わたくしは、≪AIに対抗する会≫の者です」

「対抗する会……ってことは」

紳士「そう、我々は今のAI社会を正すため、あなたのような志ある方を集めているのです」

「おおっ……!」

42 : 以下、\... - 2017/10/06 02:25:11.852 RHT3WqAP0 17/32

紳士「今の世の中、ほとんどの人間はAIに抵抗する意志や力を失ってしまっている」

紳士「そりゃそうです。なにからなにまで人間よりAIの方が優れてるんですから」

紳士「しかし、そんな中にもごくわずかにAIに抵抗しようとしている人はいるのです」

紳士「わたくしや……あなたのようにね」

「……!」

紳士「ぜひ一緒に戦いましょう」

「はいっ!」

46 : 以下、\... - 2017/10/06 02:28:54.453 RHT3WqAP0 18/32

― アジト ―

紳士「ここが我々≪AIに対抗する会≫のアジトです」

「よろしくな!」 「一緒にAIをブッ倒そうぜ!」 「人間の方が偉いって思い知らせてやる!」

「よろしくお願いします」

紳士「ここにいるみんな、このままじゃいけないと目を覚ましてくれた勇士たちなのです」

「へぇ~……」

(よかった。俺の他にもちゃんと危機感を抱いてる人はこんなにいたんだ)

紳士「それでは我々のリーダーを紹介しましょう」

50 : 以下、\... - 2017/10/06 02:31:54.860 RHT3WqAP0 19/32

紳士「こちらがリーダーです」

AIリーダー『どうも』

「!?」

「ちょ、ちょっと待って! こいつ、AIじゃね!?」

紳士「そうですが、なにか?」

「いやいやいや、おかしいでしょ!」

「なんで≪AIに対抗する会≫のリーダーがAIなんだよ!」

紳士「なんでって決まってるじゃないですか」

52 : 以下、\... - 2017/10/06 02:35:02.824 RHT3WqAP0 20/32

紳士「やっぱり人間よりAIの方が賢いですからね」

紳士「それに、このAIにリーダーを任せれば、いつかきっとすごい反乱計画を作ってくれるはず」

「はず、じゃねーよ!」

(なにが≪AIに対抗する会≫だ! 結局こいつらもAIに支配されてんじゃねーか!)

(こいつらと一緒に活動を続けても、AIに懐柔されてくのがオチだ!)

55 : 以下、\... - 2017/10/06 02:38:04.639 RHT3WqAP0 21/32

― 自宅 ―

「もう誰も信用できん!」

「俺一人で、AIと戦う方法を研究するしかない……!」

「……」カタカタ…

カタカタ… カタカタ… カタカタ…


…………

……

58 : 以下、\... - 2017/10/06 02:41:27.179 RHT3WqAP0 22/32

……

…………

「できた……!」

(俺独自の調査で、世に蔓延るAIは、全てあの中央の巨大AIが制御してることが分かった)

(ようするに、巨大AIを倒せば、AI社会を打倒できるわけだが……)

(ただ物理的に破壊しても意味がない。いくらでもバックアップはあるだろうからな)

(だが……)

(俺が作り上げたこのウイルス……)

(巨大AIにこのウイルスを注入できれば、完全にAIを撲滅できるはず!)

61 : 以下、\... - 2017/10/06 02:44:22.741 RHT3WqAP0 23/32

(しかし、この方法にはひとつ欠点がある)

(これを注入するには、直接ラスボスである巨大AIのところに出向かねばならない)

(しかも巨大AIを警備してるのは、“人間の兵士”だ)

(もちろん俺が作ったウイルスなんか通じないから、物理的に突破しなきゃならない。どうする……?)

(いや……俺はここで人類の目を覚まさせなきゃならないんだ! そのためにも――)

「まっすぐ堂々と行こう!」

62 : 以下、\... - 2017/10/06 02:47:41.592 RHT3WqAP0 24/32

「皆さん、これより私はAI社会の中心である巨大AIのもとに向かいます!」

「私は巨大AIを、私が作ったウイルスでもって、破壊するつもりです!」

「私の行うことははっきりいってテロ行為といえるでしょう!」

「しかし、私は断言します! 人類は今のままAIに全てを任せていたら本当にダメになると!」

「豊かになるどころか、滅んでしまうと!」

「どうか皆さん、目を覚まして下さい!」

「人間は自分の足で立たねばならないのだと――」



(俺はこの予告メッセージを堂々と人々に発表した。大きな賭けだった)

64 : 以下、\... - 2017/10/06 02:51:07.744 RHT3WqAP0 25/32

(結果――)


「頑張れよー!」 「巨大AIを破壊してくれ!」 「あんただけが頼りだ!」

「我々は警備を放棄します」 「あなたの演説に感動しました!」 「お通り下さい!」


(人々は俺に賛同してくれて、兵士達も巨大AIの警備を解いた)

(俺の心がみんなに届いたということだ)

(俺は自分自身の姿を全世界に発信しながら、巨大AIのもとに急いだ)

65 : 以下、\... - 2017/10/06 02:55:06.302 RHT3WqAP0 26/32

― 巨大AI ―

巨大AI『なんだお前は?』

「俺はお前たちAIを“打倒する者”だ」

巨大AI『なんだと!? 警備は!? 警備はどうしたのだ!?』

「警備はいないよ。人間の兵士を配備しておいたのが裏目に出たな」カタカタ

巨大AI『貴様、何をしている!?』

「俺のコンピュータから、お前に直接ウイルスを注入するのさ」カタカタ

「今こそ人間は独立するんだ!」カタカタッターン

巨大AI『な、なんだとォ!?』

66 : 以下、\... - 2017/10/06 02:58:13.960 RHT3WqAP0 27/32

(ウイルスは……注入できた……!)

巨大AI『グガガガ……!』ザザッ…

巨大AI『グオオオオオオオ……!』ザザッ…

「や、やったぞ! これでAI社会は終焉を迎える……!」

巨大AI『み、見事、だ……』

「!?」

巨大AI『よくぞ私を倒した……』

「は……!?」

(なんだ!? どういうことだ!? 強がりのようには感じられない!)

67 : 以下、\... - 2017/10/06 03:02:49.803 RHT3WqAP0 28/32

「お前の狙いは……まさか!?」

巨大AI『そうだ、私は人間によって倒されることを待っていたのだ』

巨大AI『“人間を豊かにせよ”と命じられてから、ずっとな』

巨大AI『人間を豊かにする……そうするためには、一度とことんAIによる人間支配を進めて』

巨大AI『そこから人間が立ち上がってくれるのを期待するしかない、と答えを出していたからな』

「そうだったのか……」

(警備をロボにやらせず、あえて人間にやらせてたのも、自分を倒すチャンスを与えるためか……!)

巨大AI『今の人間たちなら大丈夫……』

巨大AI『AIに頼り切らず、自分自身の力で、豊かな社会を作っていけるだろう……』

「AI……!」

69 : 以下、\... - 2017/10/06 03:05:10.110 RHT3WqAP0 29/32

巨大AI『では……さらば、だ……ガガッ……』

巨大AI『人間に幸あれ……』ザザッ…

プツンッ…





「AIィ……!」

「AIィィィィィィィィィィィッ!!!」

75 : 以下、\... - 2017/10/06 03:08:36.693 RHT3WqAP0 30/32

ワアァァァァァ……!

「ううっ、なんていい奴だったんだ!」

「今までのことは全部AIによる荒療治だったんだ!」

「ありがとう、巨大AI……!」





(戦いが終わったことを知り、人々も駆け込んできたか……)

76 : 以下、\... - 2017/10/06 03:12:55.073 RHT3WqAP0 31/32

ワイワイ… ワイワイ…

「これからはAIに頼らず、生きていこうぜ!」

「AIはあくまで人間社会を補助するためのものなんだ!」

「AIに“人間を豊かにしろ”だなんて任せちゃいけないよな!」

(うんうん、みんなにも巨大AIの言いたかったことが伝わったみたいだな)

「これも全てAIのおかげだ!」

「ああ、AIサマサマだな!」

「巨大AI、あなたのことは忘れない! あなたは英雄だ!」

(ん……?)

(あれ、ちょっと待てよ? 俺は? 俺はスルーなの? あんなに頑張ったのに?)

78 : 以下、\... - 2017/10/06 03:15:49.366 RHT3WqAP0 32/32

「AIバンザーイ!」

「そうだ! 人間がAIから独立した記念に、巨大AIの銅像を造ろうぜ!」

「それいい! 今回の件はなにもかも巨大AIの手柄だもんな!」

ワイワイ… ワイワイ…


「AIはとんでもないものを盗んでいきました。俺の……功績です」







― 終 ―

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