1 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 21:33:09.419 jVjthQMx0 1/30

犯人「クックック、この時をどんなに待ったことか……」

「お、お前は……!」

犯人「今こそ恨みを晴らしてやる! 死ねえっ!」ダッ

グサッ!

「ぎゃああああああっ!」

犯人「はぁっ、はぁっ、ざまあみやがれ!」タタタッ

「ぐっ……!」

「ナイフで脇腹を刺された……ダイイングメッセージ書かなきゃ!」


元スレ
男「ぐっ、ナイフで刺された……ダイイングメッセージ書かなきゃ!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1504701189/

8 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 21:36:43.871 jVjthQMx0 2/30

探偵「男さん、ずいぶん遅いな……」

助手娘「ええ、トイレにしては遅すぎます」

大阪人「何かあったんちゃうか?」

犯人「まさか……トラブルに巻き込まれんじゃ!? 誰かにナイフで襲われたとか……」

女剣士「考えられるわね……」

料理人「心配デース!」

助手娘「先生、男さんの部屋に行ってみましょう!」

探偵「うん、そうしよう」

15 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 21:40:03.225 jVjthQMx0 3/30

探偵「こ、これは……!?」

助手娘「ひどい……」

大阪人「男さんが血を流して倒れとるやんけ!」

犯人「きっとナイフで刺されたに違いない……誰がこんなことを!」

女剣士「とにかく死体を片付けないと……」

料理人「そうデースね!」

探偵「いや待て! さわるな!」

探偵「男さんは指に血をつけて、何かを書き残している! 犯人の手掛かりになるかもしれん!」

犯人(な、なんだと!?)

大阪人「ダイイングメッセージっちゅうやつやな、工藤!」

探偵「誰が工藤だ!」

19 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 21:44:10.691 jVjthQMx0 4/30

「……」プルプル…

助手娘「っていうか先生、男さんまだ書いてる途中ですよ! プルプルしてます!」

探偵「なんだと!?」

大阪人「なんやて!?」

女剣士「まだ生きてるってことじゃない。すぐ手当てしないと……」

犯人(ちいっ、しまった!)

探偵「よし、このロッジには救急箱もあるし、応急手当てをしよう。助手、手伝ってくれ」

助手娘「はいっ!」

「やめろ!!!」

23 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 21:47:49.814 jVjthQMx0 5/30

「まだ俺はダイイングメッセージを書いてるんだ……!」

「邪魔……するな……!」

探偵「しかし、そのままでは死んでしまうぞ!」

助手娘「そうですよ、すぐ手当てしないと!」

「うるさい!!!」

「俺のダイイングメッセージを邪魔した奴は……殺す!」

探偵「……いいでしょう」

探偵「そこまでの覚悟であれば、あなたが書き終わるのを待ちましょう」

26 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 21:52:08.707 jVjthQMx0 6/30

「えぇ~と……私を指し殺した犯人は、と……」プルプル…

探偵「あ、字が間違ってますよ」

探偵「刃物とかの“さす”は“指す”ではなく“刺す”です」

「あ、そうでしたっけ」

「誰か修正液持ってませんかね?」

助手娘「あ、あたし持ってます!」

「ありがとうございます」

犯人(まずい……このままではまずい……。俺の名前を書かれてしまう……)

32 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 21:55:23.583 jVjthQMx0 7/30

「……」プルプル…



大阪人「ったく、いつまで書いてるんや、あいつ……。もう五時間やで!」

大阪人「このまま待つんか、工藤?」

探偵「邪魔したら殺されるんだから、待つしかないだろう。あと俺は工藤じゃねえ」

大阪人「まったく……とんでもないことになってしもたわ」

犯人(時間が経つにつれ、だんだん罪悪感が大きくなってきた……)

犯人(もう全てを話した方が……)

36 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 21:58:20.901 jVjthQMx0 8/30

犯人「あ、あの……」

探偵「なんですか?」

犯人「実は……あいつを刺し殺したのは……」

探偵「?」

犯人「この俺――」



「やめろーっ!!!」

39 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:01:09.904 jVjthQMx0 9/30

犯人「お、お前!?」

「心配すんな……必ずダイイングメッセージを書き切ってやるからよ!」

「だから……見守っててくれ! 自白しないでくれ! 一生のお願いだ、頼む!」

犯人「……う、うん!」

探偵「あの、何をいおうとしたんですか?」

犯人「あ、いや、なんでもないです! ハハハ……」

42 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:05:23.396 jVjthQMx0 10/30

女剣士「ところで、お腹減ってきたわ。そろそろご飯にしない?」

助手娘「そうですね。もう夕ご飯の時間ですし……」

料理人「それが……」

探偵「どうしたんですか?」

料理人「ワタシが味見しすぎて、食料なくなってしまったんデース!」

探偵「な、なんだって!?」

大阪人「ホンマかいな!?」

料理人「ホンマデース」

44 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:08:28.283 jVjthQMx0 11/30

女剣士「殺人事件が起きた上に、ご飯がないなんて、冗談じゃないわ! もう帰りましょうよ!」

探偵「それもそうですね」

助手娘「ご飯抜きはツライですもんね」

犯人「え、でも事件は……?」

探偵「このロッジを出てから、警察に通報すればいいんですよ。あとは全て警察に任せればいい」

大阪人「それは名案やで、工藤!」

探偵「工藤じゃないっちゅうに」



「そうはいくか!」ポチッ

48 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:11:39.658 jVjthQMx0 12/30

ドゴォォォォォォンッ!!!



助手娘「きゃあぁぁぁっ!」

料理人「爆発の音デース!」

探偵「何をした!?」


「ククク……このロッジの近くにある吊り橋を爆破したのさ」

「さらに、電話線も切ったし、もちろんここは携帯電話も圏外だ!」

「町の連中がここの異変に気づいて救助を出すまで……ざっと三日はかかるだろうな!」

49 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:14:47.407 jVjthQMx0 13/30

「つまり、お前たちは閉じ込められたというわけさ!」

「おとなしく俺が書き終わるのを待ってるんだな!」



探偵「くっ……!」

助手娘「なんて人なの!?」

大阪人「意地でも俺らにダイイングメッセージを見せたいっちゅうことかい!」

女剣士「おのれぇ……!」

料理人「なんてこっターイ!」

犯人(そこまでしてダイイングメッセージを……なんて執念だ!)

犯人(俺、あいつのこと誤解してたのかも……)

52 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:20:15.507 jVjthQMx0 14/30

三日後――

「……あれ?」

「血がなくなっちゃった」

探偵「そりゃそうですよ」

探偵「こんな長々と血でダイイングメッセージを書いてたら、出血は止まるし、血は乾きますからね」

大阪人「しかも、あんたのキズ、治りかけとるしなぁ。カサブタできとるで」

助手娘「いわば、今の男さんはインクの切れたボールペン……ということですね?」

大阪人「そういうことやな。なぁ、工藤?」

探偵「だから工藤じゃないって」

「そ、そんな……! せっかくここまで書いたのに……!」

55 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:24:04.663 jVjthQMx0 15/30

「おい!」グイッ

犯人「ひっ!?」

「お前、もう一回俺を刺せ! 出血させろ!」

犯人「ええっ!?」

「そうしないと、俺がダイイングメッセージを書き切れない!」

犯人「い、イヤだ! もう人を刺すなんて懲り懲りだ!」

「ちっ、この臆病者が! どうしてもやらないんならムリヤリ……」

探偵「よせ! 嫌がってるじゃないか!」

「よくない! ここまできて諦め切れるか!」

56 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:30:13.827 jVjthQMx0 16/30

「こうなったら、お前たちの血を使うしかない……全員殺す!!!」


探偵「な……!?」

助手娘「先生、あの人本気ですよ!」

大阪人「ああ……ヤツの目には殺意がビンビンしとるでえ!」

女剣士「こうなったらやるしかないようね!」チャキッ

料理人「六対一ですが、仕方ありまセーン!」

犯人「お前のことは……必ず止めてみせる!」


「さぁ、まとめてかかってこい!!!」

58 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:33:19.070 jVjthQMx0 17/30

……

「この程度か?」


探偵「つ、強い……」

助手娘「いたたた……」

大阪人「あいつの強さ……ホンモノやでぇ……」

女剣士「くっ……!」

料理人「ワタシの包丁が通用しまセーン!」

犯人「俺では彼の凶行を止めることはできないのか……!」

60 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:36:32.980 jVjthQMx0 18/30

女剣士「まだよ!」チャキッ

探偵「女剣士さん!」

女剣士「私の剣に諦めの文字はない! 諦めなければ……必ず道は切り開ける!」

「な、なに!? どこにこんな力が!?」

女剣士「うわぁぁぁぁぁっ!!!」



ザンッ!

61 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:39:22.335 jVjthQMx0 19/30

ボトッ……

「ぐおおぉぉぉ……!」ブシュゥゥゥゥ…



探偵「おおっ、ヤツの右腕を斬り落とした!」

大阪人「やるやないか、あの姉ちゃん! なぁ、工藤!」

探偵「だから工藤じゃねえっての!」

62 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:42:42.693 jVjthQMx0 20/30

「ぐっ……! この俺が……あんな女一匹に……ッ!」

女剣士「片腕になった今、あなたの戦闘力は半減したわ! 私の勝ちよ!」

「ちくしょう……ちくしょおおおおおおおおお!!!」

女剣士「アーッハッハッハッハッハ!」


「なんちゃって!」


女剣士「は……?」

63 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:46:37.642 jVjthQMx0 21/30

「バカ笑いしやがって。俺が右腕を切り落とされたぐらいで死ぬと思ったのか?」

女剣士「なんですって……!?」

「ふんっ!」グニュグニュ…

助手娘「み、右腕が……」

料理人「生えていきマース! まるでトカゲデース!」

「ぬうう……」グニュグニュグニュ…

ギュバッ!

「これで元通りだ……ガッカリしたかね?」

女剣士「ひいい……再生できるなんて……!」

67 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:50:47.454 jVjthQMx0 22/30

「だが、俺を怒らせたことに変わりはない……今度こそ六人とも皆殺しにしてやる!」

犯人「あわわ……」

大阪人「あの兄ちゃん、元気いっぱいやで! なんとかせえや、工藤!」

探偵「工藤じゃねえっつってんだろ!!!」

探偵(しかし、なんとかしないと……全員あの男に殺されてしまう!)

探偵(なんとかヤツの機嫌を取らないと……あ、そうだ!)

探偵「あのさ……今流れた血でダイイングメッセージを完成させればいいじゃん!」

「なるほど!」

72 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 22:56:43.346 jVjthQMx0 23/30

一時間後――

「や、やった……!」

「できた……! ついにダイイングメッセージが完成したぞ!」


やったーっ!!!

パチパチパチパチパチ…





ようやく、渾身のダイイングメッセージが完成した。

文字数10万字に及ぶダイイングメッセージは、起承転結あり、笑いあり、涙あり、叙述トリックありの、芸術的な文章に仕上がっていた。

余談だが、このダイイングメッセージは「世界一長いダイイングメッセージ」として、
ギネス登録されることとなる。

74 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 23:00:14.799 jVjthQMx0 24/30

犯人「やったな! すげえよ、お前!」

「いや、みんなの力があったからだよ」

「俺を刺してくれたお前、アドバイスしてくれた探偵さん、探偵さんを支えた助手のお嬢さん」

「俺の右腕を切った女剣士さん、つまみ食いした料理人さん、色々やかましかった大阪人さん……」

「このロッジに集まってくれたみんなの力がなきゃ、このダイイングメッセージは完成しなかっただろう」

「みんな、本当にありがとう!」

77 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 23:04:16.026 jVjthQMx0 25/30

料理人「ワタシ、ダイイングメッセージ完成を祝して、料理を作りマーシタ!」

探偵「えっ、本当に!?」

助手娘「やったー!」

大阪人「ほう、気がきいとるやないか!」

女剣士「嬉しいっ!」

犯人「なにしろ、三日間飯抜きだったからね……お腹ペコペコだよ」

「さっそく三日ぶりの食事にしよう!」

79 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 23:09:05.720 jVjthQMx0 26/30

いただきまーす!!!



探偵「うん、うまい!」モグモグ

助手娘「このお肉、おいしいですね!」モグモグ

大阪人「イケるでこれ!」モグモグ

女剣士「へえ、なかなかの味ね……」モグモグ

犯人「肉汁たっぷりで、とってもジューシィだ!」モグモグ

「なんだかとても親しみのある味だ……」モグモグ

料理人「皆さんに喜んでいただけて嬉しいデース!」モグモグ

81 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 23:12:41.320 jVjthQMx0 27/30

犯人「あのさ……」

「ん?」

犯人「三日前は……お前のこと、刺してごめん」

「俺こそすまない……俺はお前に恨まれて当然のことをしてたんだから」

犯人「いや、もう恨んじゃいないさ」

犯人「よかったら仲直り……しないか?」

「もちろんさ!」


助手娘「あの二人、仲直りしてくれたみたいですね!」

探偵「ああ……雨降って地固まるってやつだな」



美味しい食事を通じて、互いの理解を深め、和解に至る――

これぞダイニングメッセージ!!!

84 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 23:17:12.580 jVjthQMx0 28/30

バババババ…



女剣士「あっ、救助のヘリが来たわよ!」

料理人「これでやっとこのロッジから出られマース!」

大阪人「工藤……今回は俺の完敗や。だけど次は負けへんでぇ! またどこかで推理対決しようや!」

探偵「ああ、楽しみにしてるよ。あと俺は工藤じゃねえ」


探偵(これで哀しみと憎しみに満ちた一連の事件はめでたく幕を閉じた)

探偵(だけど、一つだけ解決していないことが……)

86 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 23:21:21.425 jVjthQMx0 29/30

救助隊「皆さん、順にヘリコプターに乗って下さい!」



「はい!」

犯人「お先に!」

女剣士「やっと帰れるわぁ~」

大阪人「色々あったけど、楽しかったで!」

料理人「ワタシもデース!」

探偵「……」

助手娘「先生、どうしました?」

探偵「うん……ちょっと気になることがあってな」

探偵(料理人さんはつまみ食いで食料を全部食べてしまったはずなのに)

探偵(最後の肉料理に使われた肉は一体どこから出てきたんだ……!?)

89 : 以下、\... - 2017/09/06(水) 23:24:40.545 jVjthQMx0 30/30

探偵「!」ハッ

探偵(女剣士に切り落とされた、男の右腕が消えている! ってことは、あの肉は――……)

助手娘「先生? なにか分かったんですか?」

探偵「いや……なんでもない。世の中には明かさない方がいい真実ってもんもある」

探偵(やれやれ、推理力が高すぎるってのも困りもんだぜ!)





― END ―

記事をツイートする 記事をはてブする