----魔界----
サターニャ「ああこの空気、久しぶりね。もうかれこれ半年ぶり位になるのかしら」
ラフィエル「こ、ここが魔界、ですか……」ゴクリ
ラフィエル「なんというか、禍々しい空気でいっぱいですね。少し怖いです……」
サターニャ「?」
サターニャ「(なんかかなり元気ないわね、さっきまではあんなにうれしそうだったのに)」
サターニャ「ああそっか、あんたはここに来るの初めてだもんね。大丈夫? そんなに怖いならちょっと休憩してもいいけど」
続きです、前のやつ読んでないと意味わからないかも
元スレ
ラフィエル「結婚後!?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1495382716/
14 : 以下、\... - 2017/05/22 01:13:05.815 IHgLXxL/p 2/57続きものなら前スレ晒すなりあらすじ書くなりしないと支援しないZE
17 : 以下、\... - 2017/05/22 01:16:41.207 gLdE28P3H 3/57そっか、前スレ
ラフィエル「婚約!?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1494515935/
http://ayamevip.com/archives/50551179.html
これも長いからあらすじ
ラフィエルが親の会社の跡取りの都合で許婚と結婚させられそうになったのを
サターニャが魔界に逃げさせようとして結婚したお話です
大雑把すぎてだめか
ラフィエル「いえ、そこはまだ頑張れそうです」
サターニャ「そう、じゃあまだ結構歩くけど頑張ってついて来るのよ。あ、でも辛くなったら遠慮せず言いなさいよ?」
ラフィエル「ふふ、サターニャさん、優しいですね」シガミッ
サターニャ「ちょっ、歩きにくいでしょ? やめなさいよ///」カァ
ラフィエル「いいじゃないですか。私たち夫婦なんですからっ」ギュウウ
サターニャ「な、なんなのよぉ……///」
ラフィエル「私、魔界の事は全く分からないのでサターニャさんについて行く事しかできなくて……お役に立てなくてごめんなさい」シュン
サターニャ「はぁ?」
サターニャ「(ああ、なるほど。確かここの空気は対天使成分が含まれてるのよね、だからネガティブ気味になってるのかも)」
サターニャ「(普段の仕返しにからかってみるのも面白いかもしれないけど、まあホントに辛そうだしかわいそうかな)」
サターニャ「何言ってるのよ。あんたは天使なんだから魔界の事なんて知らなくて当然でしょ? 最初から全く当てになんてしてないから、安心して私についてくればいいのよ」ナデナデ
ラフィエル「(全く当てにしてないって、それはそれで少し傷つきます……ってこんな事言ったら私めんどくさい新妻になっちゃいますよね、気を付けないと)」
ラフィエル「はい、ありがとうございます。じゃあ甘えさせてもらいますね♪」
サターニャ「ふっ、そうするといいわ」トクイゲ
ラフィエル「で、今はどこに向かわれているんですか? 少しずつ田舎の方に向かっているようですが……?」
サターニャ「ああ、今向かってるのは私の実家よ、正直私もほとんど予定なんて立てずに勢いでこっちに来ちゃったしどうしようか迷ったんだけど」
サターニャ「やっぱり頼れるのは両親かなぁって……」
サターニャ「あっ、ごめん」
ラフィエル「いえいえ、私は全く気にしてませんよ。でもサターニャさんのご両親ならきっととってもお優しい方たちなんでしょうね」
サターニャ「うーん、どうなのかしら。でも他のクラスメイトの親の話を聞く限りではうちは確かに甘いほうだったわ」
サターニャ「勉強なんてしなくても咎められなかったし、いつも私たちの資質を信じてくれてたの」
ラフィエル「私たち?」
サターニャ「え、あんたでも知らないの? ちょっと意外かも、私弟がいるのよ? 驚いたでしょ?」フフン
ラフィエル「えええええ!?」
サターニャ「うわっ」ビクッ
サターニャ「驚きすぎよ、こっちまでビックリするじゃないの!///」カアア
ラフィエル「す、すみません。ですがまさかあのサターニャさんに弟さんがいたなんて……」
サターニャ「あの私ってどの私よ、なんか失礼じゃない?」
ラフィエル「ああ、聞こえてましたか。」
サターニャ「そりゃ聞こえるでしょ……」
ラフィエル「でもサターニャさんの弟なんて、ちょっと羨ましいです」
サターニャ「んな、何言ってんのよ、あんたおかしいんじゃないの……///」
ラフィエル「ただサターニャさんとずっと一緒に居られるなんて、とてもおもしろ、ううんっ、楽しそうだなあと」
サターニャ「だからさっきから何なのよ/// 不自然に褒めちゃって……」
サターニャ「あ、わかった! 私に案内させるのが悪いと思って気を遣ってるのね?」
ラフィエル「気を遣ってなんていませんよ……ってあれ?」
ラフィエル「気を遣われているように思ったって事は……サターニャさん、ひょっとして嬉しかったんですか?」ニマニマ
サターニャ「そ、そんなわけないじゃない、心外よ!」
ラフィエル「うふふ、本当ですかぁ?」
サターニャ「ほんとよ! 全然まったくちっとも嬉しくなんてないんだからぁ!///」
ラフィエル「うふふふふ~♪」ニマニマ
サターニャ「何がおかしいのよ、もぉ!」
サターニャ「ラフィエルなんてもう知らないんだからっ」フンッ
ラフィエル「サターニャさん?」
サターニャ「……!」フイッ
ラフィエル「えぇ……ちょっとやりすぎましたかね? 普段と変わらないと思うのですが……」
サターニャ「その普段に問題があるのよ!」
ラフィエル「普段に問題がある人と結婚したんですか?」ニコッ
サターニャ「う、うるさいわね、もう話しかけないでよ!」
ラフィエル「(あらあら、拗ねサターニャさんも可愛いですね~ ちょっと油断したらにやけちゃいそうです♪)」
ラフィエル「は、話しかけないでって、ちょっと酷くないですか? 私はただサターニャさんとコミュニケーションを……」
サターニャ「そんなコミにゅっ…… そんなのいらないわ!」
ラフィエル「ぶふっ!」クスクス
サターニャ「笑わない!///」
ラフィエル「す、すみません」
サターニャ「大体ねぇ、あんた天使に弄ばれる悪魔の気持ちがわかる?」
ラフィエル「サターニャさんはいつも楽しそうですよ?」
サターニャ「楽しくない!」
ラフィエル「え? 楽しくなかったんですか!?」
サターニャ「あ、当り前じゃない、すごく不愉快なのよ!」
サターニャ「だからそんな真似もう二度としてこないでよね! じゃないともうずっと無視だから!」
ラフィエル「む、無視だなんて……」
サターニャ「そうよ、一生口きいてあげないんだから」
ラフィエル「そんなぁ、そうだったんですね……」
ラフィエル「サターニャさんはいつも、そんなに嫌な思いをしていたんですね……」
サターニャ「私いつもやめてって言ってるじゃない、あんた耳聞こえてんの?」
ラフィエル「そうですね、私、サターニャさんが口ではやめてと言っていても、心の内では楽しんでいるんだと勝手に察した気になっていました……」
サターニャ「(勝ったぁ!?)」
ラフィエル「そんなに、そんなに嫌だったんですね……私、気付けなくてっ」ウルッ
サターニャ「めちゃくちゃ嫌なの、だから今までの行いを悔いて、私を二度とコケにしないと誓いなさい!」
ラフィエル「ぅぅ……」ウルウル
サターニャ「う、嘘泣きなんてしたって無駄よ? あ、謝らないと許してあげないんだから」
ラフィエル「ぅぅ……うぇぇ」ポロポロ
サターニャ「え? なに? 本気で泣いてるの?」
ラフィエル「うぅっ……ぅぅぅ 泣いて、ないですぅ……ぇぇぇぇ」ポロポロ
サターニャ「ちょ、ちょっとマジ?」
サターニャ「何であんたが泣くのよ!? 普段散々私の事弄り倒してくるくせに、打たれ弱すぎでしょ!」
ラフィエル「ごめんなさい……でも、まさかサターニャさんがいつもそんなに嫌がってただなんて、私、全く思ってなくてぇ」ポロポロ
ラフィエル「嫌われてしまってもしょうがないですよね……本当にごめんなさいぃ。うえぇぇぇ」ポロポロ
サターニャ「えぇ?」
サターニャ「ほんとにあんたややこしいわね。冗談よ冗談、別にいつも嫌じゃないっていうか、寧ろ私に構ってくれて嬉しいっていうか///」アセアセ
サターニャ「だからほら。ね? 結婚初日よ? 泣きやんでよ」アセアセ
ラフィエル「はい、泣きやみました」ケロッ
サターニャ「は?」
ラフィエル「うふふ♪」
ラフィエル「サターニャさんが拗ねちゃったので、私も嘘泣きしてみました、てへっ♡」
サターニャ「え? ええ?」
ラフィエル「どうかなさいましたか?」
サターニャ「くっそぉ、また騙したのね!?」
ラフィエル「うふふふ~」
ラフィエル「(やっぱりサターニャさんをからかうのは楽しいですね)」
サターニャ「この悪魔ぁ~」
サターニャ「もうホントに知らないんだから!!」フイッ
ラフィエル「ああ、待ってくださいサターニャさーん」タッタッタ
サターニャ実家前
サターニャ「ようやく着いたわ、ここが私の実家よ」
ラフィエル「やっとですか、もう歩き疲れましたよ……」
ラフィエル「っておお、いかにもケーキ屋さんって感じのお家ですね」
サターニャ「当然でしょ? 実際家はケーキ屋なんだし」
ラフィエル「まあ確かにそうなんですけどね。でも普通あまりこういった店舗の奥の住宅って入る機会ないじゃないですか」
サターニャ「言われてみれば確かに、こう言う家に住んでるのって珍しいのかもね」
ラフィエル「そうですよ、私は実際住んでる人初めて見ました。下界のアニメで見てから憧れてたんですよ ちょっとワクワクしちゃいます」
サターニャ「何10年以上も前のアニメなんか見てんのよ、まあいいけど、私は電工の仕事には就かないからね?」
ラフィエル「わかってますよ、現実との次元の違いは理解しているつもりです」
サターニャ「次元の違いって、突っ込みしにくいコメントは控えてよ……」
サターニャ「あ、あと中はいたって普通だから気を落とさないでよね?」
ラフィエル「気を落とすだなんて、ただ入れていただけるだけで、感謝してもしきれないほどですよ」
サターニャ「まさか追い帰したりなんてしないって、だから安心しなさい」
サターニャ「それに、もしも親があんたを追い帰すような事したら、私だって家を出るわ。そしたら貧乏にはなっちゃうけど、2人で生きていきましょうね」
ラフィエル「ありがとうございます、なんだか少し安心できました」
サターニャ「そう、よかった。じゃあ入るわよ? 連絡は入れてあるからもうみんな起きてるかもしれないけど、気なんて使わなくていいからね」
サターニャ「ただいまー」ガチャ
サターニャ父「おおサタニキア、今帰ったか。待ちわびたぞ」
サターニャ母「お帰りなさい。優秀なる我らが娘サタニキア」
サターニャ「お父様、お母様、只今無事帰還しました」
ラフィエル「(なんなんですかこの状況!? 玄関開けたらいきなりこれですか……)」
サターニャ父「ところで、連絡にあった婚約者というのは……?」
サターニャ母「まあ、親に相談もせずに入籍だなんて、なんて悪魔的なんでしょう、さすがサタニキア!」
サターニャ「ええ。紹介するわ、これが私の」
サターニャ弟「いやいや、とりあえず玄関で話すのやめようよ」
サターニャ「……」
サターニャ父「……」
サターニャ母「……」
サターニャ父「ははは、それもそうだ。久しぶりのサタニキアの帰宅につい舞い上がってしまってな。さあ入りなさい」
サターニャ母「なんて冷静な判断、さすが、さすが我らが息子」
サターニャ弟「ハァ」ヤレヤレ
――――――――――――――――――――
サターニャ父「ふむ、皆かけたところで、まずはサタニキアの婚約者について聞かせてもらおうか」
サターニャ「はい、お父様。彼女は白羽=ラフィエル=エインズワース、下界の学校で知り合ったの」
サターニャ父「ほう、ラフィエル君か。はじめまして」
ラフィエル「はじめまして。連絡も申し上げず突然押しかけて、ご無礼は承知の上ですが」
ラフィエル「私とサターニャさんの結婚を認めてもらえませんか。お願いします」
サターニャ父「うむ、『はじめまして』に続く言葉がそれとは、なかなか悪魔的な子だ、サタニキアが選んだだけの事はある」
サターニャ母「エインズワース? どこかで聞いた名ね」
サターニャ「お母さま、彼女の両親は天界で企業の経営をしているらしいから、その企業名などを通じて知ったのかもしれないわ」
サターニャ母「(適当に言っただけだったんだけど名家の子だったのね…………ん?)」
サターニャ母「て、天界ですって?」ガタッ
サターニャ父「私にもそう聞こえたのだが、サタニキア、いったいどういう事なんだ」
サターニャ「ええ、彼女は、天使なのよ……」
サターニャ父母弟「!?…………」
サターニャ父「(サタニキアは悪魔の純血を守り抜くだろうと思っていたのだが、意外だな)」
サターニャ母「(天使と結婚? 天使をも魅せてしまうなんてさすがよ……でも天使と結婚なんて、別に問題ないけどちょっと意外ね)」
サターニャ弟「(姉さんの事だからてっきり悪魔の純血を守るとか何とか言って悪魔同士で結婚すると思ってたんだけど、予想が外れたか)」
サターニャ「(あ、やっぱり天使との結婚なんて印象よくないのかしら。とりあえず株を上げないとだめよね)」
サターニャ父「そ、そうか、天使だったのか、道理で晴れやかなオーラを纏っているはずだ」
サターニャ「しかもラフィエルは天使学校を次席で卒業したのよ? 普通の天使のオーラとは格が違うわ」
ラフィエル「格が違うだなんて言いすぎですよ。まだ学生身分の私の天使力なんてたかが知れてます」
サターニャ「そんな謙遜しないで、あなたはかなり優秀な天使よ。大人にだって全然負けてないわ」
ラフィエル「サターニャさん……///」
サターニャ父「しかし次席か、それはすごいな」
サターニャ母「サタニキアが選んだ人なだけの事はあるようね」
サターニャ「まあね……」
サターニャ父「? どうしたサタニキアよ」
サターニャ「な、何でもないわ!」
サターニャ「ただ、話さなきゃいけないことがあるの」
サターニャ父「ほう、聞こうじゃないか」
サターニャ「さっきも言ったけど、彼女の親は天界で会社を経営してるの」
サターニャ「それが上手くいってるらしいんだけど、個人経営から始めた企業だから親族間で社長の席を移したいんだって。」
サターニャ「だけど生まれたのはこのラフィエルと妹の2人だけ、後継ぎがいなくなっちゃったってわけよ」
サターニャ「だから早く優秀な人と結婚させて、その男の人に会社を継いでもらおうとしてたの」
サターニャ「だけどラフィエルはそんなこと望んでなかった。だから私が彼女を連れだしたの」
サターニャ「女の子同士って言うのがこれから何も問題にならないとは思ってない。だけど彼女を救いたかったの……」
サターニャ父「なるほど…… だがサタニキア、私たちが聞きたい事はそんな事じゃないんだよ。なあ妻よ」
サターニャ母「ええ。私も同じことを考えていたわ」
サターニャ「え?」
サターニャ「でもすごく大事な話でしょ?」
サターニャ父「確かに大事な話だった。だがサタニキア、そんなことは二の次だ」
サターニャ父「私は基本的にあまりにも人道、いや悪魔道に反したことをしようとしない限り、お前たちのしたいと言うことを咎めるつもりはない」
サターニャ「それが、なんだっていうの?」
サターニャ父「だがサタニキア、結婚は相手のある事だ、婚約者の前でこんなことを言うのもなんだが、その相手を巻き込んででもお前が幸せになれないのなら、私はその結婚を許せない」
サターニャ父「お前はこの子を本当に愛しているのか? 心の底から結婚したいと思って結婚するのか?」
サターニャ「!?」
サターニャ「(い、言われてみれば確かに、私が実際にラフィエルの事を意識しだしたのって、ラフィエルが天界に帰るって知って、出来る事なら止めたいと思ってからよね)」
サターニャ「(そう知る前、例えばガヴリールやヴィーネとみんなでお昼ご飯を食べていたとき、みんなで海に行ったとき、2人だけで家に向かっていたとき、私は本当にラフィエルの事を想っていたの?)」
サターニャ「(ひょっとして、今はラフィエルを助けたいがためにラフィエルの事を好きになったように錯覚してるだけで、あと2、3年もしたら思いもなくなっちゃってるんじゃあ……)」
サターニャ「(そうなったとしたらどう? 傷つくのは私じゃない、ラフィエルよ)」
サターニャ「(今の私の突発的な感情がラフィエルの将来を苦しめるのなら、いっそラフィエルは優秀なんだから、どこかに誘拐した養子としておいてもらった方がラフィエルの為なんじゃあ……)」
サターニャ「(ああ、どうすればいいの!? この気持ちは嘘なの!? わからない…… 私は自分の本心すらもわからない落ちこぼれだって言うの……)」
サターニャ「わからない……」ボソ
サターニャ父「え?」
サターニャ「お父様ごめんなさい、私には自分の気持ちがわからない……」
サターニャ父「どういうことだ、同情だけで結婚しようとしていたという事か?」
サターニャ「それはちがうわ!」
サターニャ「ただ、わからないの…… 今、私はラフィエルの事をとっても愛してるし、今までの人生の中できっと一番、切実に消失を思える相手だと思うわ」
ラフィエル「サターニャさん///」
サターニャ弟「(ったく、姉さんのこんな話を聞かされる僕の身にも待ってほしいよな……///)」
サターニャ「でも、もし私のこの気持ちが、このラフィエルとずっと一緒に居たいっていう気持ちが一時的なものだったとしたら、私はきっとラフィエルを傷つけちゃう」
サターニャ「それが怖いの、すごく。だから、いっそのことラフィエルはどこかに養子として引き取ってもらった方が
いいのかもしれない……」
ラフィエル「サターニャさん……」
サターニャ父「ほお……」
サターニャ父「では、サタニキアの結婚を祝って乾杯をしなくてはいけないな」
サターニャ母「そうね。こんなめでたい乾杯は当然、人間の生き血で……」
サターニャ「え? 私の話ちゃんと聞いてたの!?」
サターニャ父「聞いていたからこそこう言っているんだ。サタニキア、本当に誰かを愛したとき、無責任に責任を負うなどと言える者がいると思うか?」
サタ-ニャ母「それにあなたの話を聴いて、ラフィエルさんの事を大切に思っていないと思う人なんていないと思うわよ?」
サターニャ「パパ、ママ……」ウルッ
サターニャ父「おほんっ」
サターニャ父「では、乾杯……」
チン
サターニャ「本物みたいね、ラフィエルは牛乳でも飲んでなさい」
ラフィエル「あ、はい。ありがとうございます」
サターニャ弟「(いやいや、また同じことやって…… どうせこれトマトジュースでしょ)」ゴク
サターニャ弟「って、うわぁっ。これ本当に人間の生き血だよ! 生臭!」
サターニャ「あんたはおこちゃまね、この生臭くて生を渇望するような感じ、何とも言えないわ」
サターニャ父「ははは、直ぐにお前にもこの味の良さがわかる時が来るさ」
ラフィエル「ん、ん、……」ゴクゴク
サターニャ母「本当、本物の生き血を飲むのなんて何年ぶりかしら…… しかも1945年製よ、人間の血が一番生臭かった時期じゃない」
サターニャ父「さあ、ではサタニキアとラフィエル君の結婚を祝ってやろうじゃないか」
サターニャ「ありがとう、ほんとにありがとう」ウルッ
サターニャ母「ふふ、何を泣いているのサタニキア。せっかくなんだから楽しくお祝いしましょ?」
サターニャ父「その通りだ、実に気分が良い、もう一度乾杯と行こうか」
ラフィエル「あ、牛乳お替りただいてもよろしいですか?」
――――――――――――――――――――
サターニャ「ふう、もうおなか一杯。これ以上食べられないわ」
ラフィエル「うふふ、無理して食べるからですよ」
サターニャ父「はっはっは。ラフィエル君の言うとおりだサタニキア」
サターニャ「お父様まで馬鹿にして…… 私はちょっとここで休んでいくわ。ラフィエルは奥の私の部屋にでも行ってていいわよ?」
ラフィエル「そんな、せめて後片付けのお手伝い位させてください」
サターニャ母「何言ってるのよ、今日は疲れているでしょう、もう休むといいわ」
ラフィエル「でも……」
ラフィエル「ふぁぁぁ」
ラフィエル「…………///」カアァ
サターニャ母「ふふふ、明日からは家族としてしっかり働いてもらうんですから、今日くらいは休みなさい?」
ラフィエル「すみません、ではお言葉に甘えて……」
サターニャ「私の部屋分かるかしら?」
ラフィエル「ちょっと自信ないですね」
サターニャ「そう、あんた案内してあげなさい」
サターニャ弟「僕が? …… わかったよ」ガタッ
サターニャ弟「あの、じゃあラフィエルさん、部屋こっちですんで……///」
サターニャ「ぷー 何照れてんのよ」クスクス
サターニャ弟「べ、別に照れてないよ!///」
サターニャ「あらそ~う? 顔真っ赤よ?」プププ
サターニャ「もううるさいよ! ラフィエルさん、こっちなんで、早く行きましょう」
ラフィエル「あ、待ってくださいっ」
廊下
ラフィエル「弟さん、ご迷惑をおかけして。その、すみません」
サターニャ弟「別に迷惑なんかじゃないですよ、気にしないでください」
ラフィエル「そうですか、それなら嬉しいです。案内してくれてありがとうございます」
サターニャ弟「いえそんな、うちの中の事なんで、別に手間でも何でもありありませんから///」
ラフィエル「うふふ♪」
サターニャ弟「(何がおかしいんだろう、僕何かおかしなこと言ったか? てか何で僕はさっきから照れてんだ、姉さんの奥さんだろ?)」
サターニャ弟「……」
ラフィエル「……」
サターニャ弟「(沈黙が気まずい…… 何か適当に話しかけないと)」
サターニャ弟「あー それにしても天使学校次席なんてすごいですよね。どうして姉さんなんかと」
ラフィエル「お姉さんなんかと、なんて言ってはいけませんよ? サターニャさんは可愛くて、優しくて、思いやりがあって、とてもいい人です」
サターニャ弟「姉さんが優しい?」
ラフィエル「はい。ここに来る途中でもずっと私に気をかけてくれて、本当に良い方です。私にはもったいないくらいですよ」
サターニャ弟「そ、そうですか? あんな利己主義者見たことありませんよ……///」
ラフィエル「うふふ、素直じゃないですね」ニコッ
サターニャ弟「(ああ、ほんとに姉さんのこと好きなんだな。まあ家には特別財産があるわけでもないし、好きでもなければ許婚と結婚してるか……)」
サターニャ弟「あ、ここが姉さんの部屋です。あの様子だと下で寝ちゃうと思うんで、なにかあれば向かいの部屋に声かけてください」
ラフィエル「ありがとうございます。サターニャさんの弟さんもやっぱり優しいですね」ニコ
サターニャ弟「し、失礼します///」
ラフィエル「うふふふ、可愛い弟さんですね♪」
リビング
サターニャ「あ~ ほんとにおなか一杯、もう死んじゃいそう」
サターニャ父「満腹で死ぬとは愉快な死だな」
サターニャ「ほんとね、その死に方だけは勘弁してほしいわ」
サターニャ「はぁ……」
サターニャ父「どうしたんだサタニキア、せっかく今日はお前が結婚した祝だというのに。なんだか浮かない顔をしているじゃないか」
サターニャ「浮かない顔?」
サターニャ母「ええ、私も気になっていたの。今日はサタニキアに元気がないって……」
サターニャ「はぁ。(やっぱり付き合い長いとわかっちゃうのかしら)」
サターニャ「うん…… 実は何も相談せずに、多少数はいるとはいえ、まだ珍しい天使との結婚、しかも同性間で……」
サターニャ「それに学費だって安くはないはずなのに、本当に親不孝よね。そう思うと申し訳なくて……」
サターニャ「本当にごめんなさい」
サターニャ父「ははは、全く、お前は本当に心配性だな」
サターニャ母「本当、誰に似たのかしらね」
サターニャ「えっ」
サターニャ母「確かに、どうして1つもそんな連絡はなかったのに学校を辞めて結婚なのか。気にならなかった訳じゃないわ」
サターニャ母「でもその道を選んだのは私たちが一番信用している私たちの子供、詮索なんて野暮な真似はよそうと2人で決めていたのよ、まああなたが全部話しちゃったけど……」
サターニャ母「つまり、私たちはいつでもサタニキアの味方だから、安心してサタニキアの選ぶ道を進んでいくといいわ」ギュッ
サターニャ父「それに、ここに来たということは私たちをまだ頼ってくれてるという事だろう? 私たちはそれだけでも嬉しいんだよ」
サターニャ「お父様、お母様…………ありがとう、ありがとう」ギュウウ
サターニャ母「いいのよ、親として当然の事よ」
サターニャ母「それより、ラフィちゃんが部屋で待ってるんでしょう? 早く行ってあげなさい」
サターニャ「わかったわ、本当にありがとう」タッタッ
サターニャ母「ふふふ、いつの間にか大きくなってるんだから」
サターニャ父「全くだな。寂しくなる、もう1人くらい作っておくk」シュン!
パリィン
サターニャ父「え?」
サターニャ母「あ、すみません。お皿を落としてしまいました」ニコォ
サターニャ父「ああ、そうか……」バクバク
サターニャの部屋
ラフィエル「ふ~ 今日はなんだかんだ結構歩いたので疲れましたね」
ラフィエル「ですがサターニャさんのご両親は本当にお優しい方々でした、悪魔のサターニャさんがあんなに優しいのも頷けます」コクコク
サターニャ「(左側が私の部屋だったわよね、半年もいないと記憶が曖昧に…… あ、ネームプレートまだ貼ってある)」
ラフィエル「ああサターニャさん。弟さんは下で寝てしまうと言ってましたが、私たち新婚ですよ? 一緒に寝たいですよ」
サターニャ「(? これは……ラフィエルの独り言ね! くくく、聞いて後でからかってやるんだから)」プークスクス
ラフィエル「なんて、わがまますぎますよね。私はサターニャさんと結婚できただけでも幸せなんです」
ラフィエル「まあそれに、きっと私の説明もしてくれてるんでしょう。やっぱり私の前では話しにくい事もあったでしょうし」
ラフィエル「サターニャさん、可愛いサターニャさん。いつか私たちもお庭があるような2人だけの家を建てて、休日は毎週一緒にお出かけして、行く行くは子供も作って……」
ラフィエル「素敵な夫婦でいましょうね、サターニャさん♪」クッションギュウウ
サターニャ「(こ、こんな独り言聞いちゃったら恥ずかしくて入れないじゃないの///)」
サターニャ「…………」
ラフィエル「…………」
ラフィエル「ふぁぁ、やっぱりサターニャさん戻ってきませんね。もうそろそろ寝た方が良いでしょうか」
サターニャ「(まずい、ラフィエルが寝ちゃう。一緒に寝たいって言ってたしそろそろ入った方がいいかしら)」アセアセ
ラフィエル「ん?」
ラフィエル「(あれ? 今扉から何かが擦れる音がしましたよね)」
ラフィエル「(ま、まさかサターニャさんに……?)」
ラフィエル「(うぅ、これは恥ずかしいです、どこから聞かれてたんですかね)
ラフィエル「(ってあぁ、盗み聞きしているということは確実に良くないことの一言や二言は聞かれてますよね。諦めましょう)」
ラフィエル「(でも、まだ他の言葉をつけ足せば、サターニャさんに馬鹿にされない位には回復できるかもしれませ)」
ガチャッ
ラフィエル「え?」
サターニャ「ま、待たせたわね。ちょっと親と話し込んじゃって……///」
ラフィエル「そ、そうですか。大丈夫ですよ~(明らかに聞いてましたね、顔真っ赤です)」
サターニャ「いやー今日は疲れたわね~ 久々にあんなに歩いたわ」
ラフィエル「本当ですね。万歩計付けてくればよかったです」
サターニャ「しかもあんたは初めての魔界でしょ? まだ夕方にもなってないけど、今から寝る?」
ラフィエル「そうですね。私ももう眠気が限界で、そろそろ寝ましょうか」
サターニャ「そう、じゃあベッド使っていいわよ。私は床で寝るから」
ラフィエル「すみません、じゃあベッド使わせてもらいますね」
サターニャ「ええ、電気消すわよ?」
ラフィエル「はい」
パチン
サターニャ「」テトテト
サターニャ「ゔぇっ」ギュウ
サターニャ「え? な、なに?」
ラフィエル「あ、あの。一緒に、寝たいです……///」ギュウウ
サターニャ「ちょ、何言ってるの? 今から寝るんじゃない、離しなさいよ」
ラフィエル「そういう事じゃなくて、一緒の布団で寝たいって意味です///」カアア
サターニャ「何言ってんのよ、狭くて疲れも取れないじゃないの」
ラフィエル「嫌です。私、サターニャさんが一緒に寝るって言ってくれるまで、離しませんっ」ギュウウ
サターニャ「はぁ……」
サターニャ「もう、シングルの布団に2人は狭いんじゃなかったの?」
ラフィエル「狭い方がいいんです、そっちの方がサターニャさんを近くに感じていられますから……」ギュウ
サターニャ「しょ、しょうがないわね/// 特別よ?」ゴロン
ラフィエル「嬉しいですっ」ギュウウ
サターニャ「(一緒に寝るって言ったら離してくれるって言ったじゃないの、なんて言えないわね……)」
翌朝
ラフィエル「ふぁぁ、久しぶりによく寝られました。」
ラフィエル「(やっぱりサターニャさんが隣にいてくれたからでしょうか……)」
ラフィエル「うふふ♪」
サターニャ「んにゃ、おはようラフィ」
ラフィエル「おはようございます、サターニャさん」ニコニコ
サターニャ「なにニヤニヤしてるのよ?」
サターニャ「はっ! まさか私の顔に落書きしたんじゃないでしょうね?」
ラフィエル「そ、そんなことしませんよ…… 私も今起きたばかりですから、安心してください」
サターニャ「あんたにそんなこと言われて安心できると思った?」
ラフィエル「ひ、ひどいですね。結構グサッと来ました……」シュン
サターニャ「あ、ごめん」
ラフィエル「うふふ、冗談ですよ。それより今日はどうしますか?」
サターニャ「そうね、とりあえず私たちも収入がないと何もやっていけないし、職探しかしら……?」
ラフィエル「それもそうですね、私もがんばっちゃいます!」
サターニャ「そのことなんだけど、出来ればラフィエルには家の洋菓子屋を手伝っててもらいたいの」
ラフィエル「え?」
サターニャ「詳しくは今度ちゃんと話し合うつもりだけどね、古い思考だと思われるかもしれないけど、私は自分1人の稼ぎで二人で生活できるようになりたいと思ってる」
ラフィエル「私はそれでもいいんですけど、サターニャさんに負担がかかってしまって申し訳ないような……」
サターニャ「申し訳ないなんて思う必要ないのよ、結婚してるんだし共有財産って言うやつになるでしょ?」
ラフィエル「それが申し訳ないと思うんですけど……」
サターニャ「それにあんた可愛いから、きっと店の売り上げも伸びると思うわ」
ラフィエル「サターニャさん///」
サターニャ「ふふ」グウウ
ラフィエル「あ、おなか鳴りました?」クスクス
サターニャ「まあ、こんな事私の仕事も決まってないのに話してもしょうがないし?/// リビング行きましょうか!///」
ラフィエル「そうですねっ」クスクス
リビング
サターニャ「パパママおはよ~」
サターニャ母「おはようサタニキア、それにラフィちゃんも、朝ご飯出来てるわよ」
ラフィエル「ありがとうございます!」
サターニャ「わあ、朝ご飯が勝手に出てきた!」
ラフィエル「家族旅行に来たお母さんじゃないんですから……」
サターニャ「だってそうでしょ? ほんと、独り暮らしなんてするもんじゃないわね」
サターニャ父「ははは、だがそのおかげでこのご飯のありがたみがわかっただろ?」
サターニャ「ま、それもそうね。いただきまーす」
サターニャ「」パクパク
ラフィエル「」モグモグ
サターニャ父「ところで、これから当分はここで過ごすつもりなんだろうが、いつかは2人でどこかに行くんだろ?」
サターニャ「ええ、そのつもりでいるわ」
サターニャ父「なら将来的に自立するためにお金は必要だろ? 当然働いて自分たちでお金を貯めてもらわなくては困るが」
サターニャ父「少しでも二人の将来の足しにしてくれ」
サターニャ「なにこれ」
サターニャ父「これはお前が大学に行くことになった時に使おうと思っていたお金だ。500万ほどある」
サターニャ「500万!? これは確かに私たちの足しにはなるけど…… もらうのは遠慮しとくわ」
サターニャ父「? どうしてだ?」
サターニャ「私たち、自分たちでためたお金で自立したいの。まあお金が貯まるまでここには住ませてもらうことになっちゃうけど……」
サターニャ「でも生活費はちゃんと入れるし、出来ることは手伝うから」
サターニャ「だから、このお金は将来2人で旅行に行くのにでも使って?」
サターニャ父「そうか…… お前は……」ウルッ
サターニャ弟「(おお、姉さんにしてはいいこと言うな)」モグモグ
サターニャ母「でもじゃあこれからどうするの? 私は2人も世話のかからない可愛い娘が家にいつまでもいてくれるなら嬉しいんだけど、そういうつもりじゃないでしょ?」
サターニャ「そうね、とりあえず今日はハロワってとこに行ってみるわ」
サターニャ父「そうか、いい仕事が見つかるといいな」
サターニャ「ええ、応援しといてね」
サターニャ「で、もう一つお願いしたいんだけど」
サターニャ母「なに?」
サターニャ「私が働いている間、ラフィエルをここで雇ってほしいの」
ラフィエル「ええ!? さっき話し合うって言ってたじゃないですか!」
サターニャ「さっきはそう言ったけど、でも頼んどくのは早い方が良いでしょ? それに私は本当はそうしてほしいし」
サターニャ「あ、嫌ならいいのよ? ラフィエルの両親みたいにラフィエルのやりたいことを無視して強制したくはないから」
ラフィエル「嫌か嬉しいかと言われたら、サターニャさんの為に働ける方が嬉しいんですけど、でもやっぱりご迷惑が……」
サターニャ「だから迷惑だなんて全く思わないって、これは私の理想なの」
ラフィエル「サターニャさん…… それなら、私の希望も同じです。ここで、雇ってもらえませんか?」
サターニャ母「もちろん大歓迎よ! ねえパパ?」
サターニャ父「ああ、当然だ、それにラフィエル君は可愛いらしいから、店の売り上げも伸びそうだしな。ははは」
ラフィエル「(さすが親子、同じこと言ってます……)」
――――――――――――――――――――
サターニャ「ああ美味しかった。ごちそうさま~」
ラフィエル「お義母さん、ごちそうさまでした」
サターニャ母「うふふ、お義母さんなんて嬉しいわ」
ラフィエル「あ、すみません///」
サターニャ母「いいのよ、これからもそう呼んでくれると嬉しいわ」
ラフィエル「うぅ、なんか恥ずかしいです///」
サターニャ母「可愛いわね」ニコニコ
サターニャ「へえ、ラフィエルが顔真っ赤にしてるなんて珍しいわね」パシャ
ラフィエル「しゃ、写メ撮らないでくださいよ!///」
サターニャ「あはははは。まだ顔赤い~」パシャパシャ
サターニャ父「お前はそんなことしていていいのか? もう9時だぞ?」
サターニャ「うわ、ほんとだ、それじゃあそろそろ行こうかしら」
ラフィエル「はい、頑張ってきてください!」グッ
サターニャ「ええ、それじゃあ行ってきまーす」バタン
ラフィエル「いってらっしゃーい」
サターニャ父「それじゃあ私たちもそろそろ開店だ、今日はもうお菓子は全部できてるから、接客だけでも覚えてもらおうかな」
ラフィエル「はい、頑張ります!」
ハローワーク
サターニャ「(ハロワ、ハロワ…… あったあれね)」
サターニャ「ふう、(意外に家から近いわね、普段用のない物って身近にあっても気づかないものね)」
サターニャ「(なんかちょっと嫌な空気を感じるけど…… まあいいわ)」
ウィーン
サターニャ「(結構人いるのね……)」
サターニャ「(でも初めて来たし、何からすればいいんだろ)」キョロキョロ
サターニャ「(わかんないけどとりあえずあの受付っぽい奴に聞いてみましょ)」
胡桃沢洋菓子店
ラフィエル「ありがとうございました、またお越しください」
サターニャ父「うん、初めてなのに呑み込みが早くて助かるよ。今日は初めてだから疲れると思うけど、頑張ってね」
ラフィエル「はい、ありがとうございます」
ラフィエル「(これ以外とキツいですね、ずっと立ちっぱなしなのも疲れます……)」
ラフィエル「(でもまだ開店してから3時間なのに色んな方がケーキを買って笑顔になってくれて、天使の本能にぴったりの職業かもしれません♪)」
カランカラン
ラフィエル「いらっしゃいませー」
ややこしくてすみません……
サターニャ実家
サターニャ「ただいまー」ガチャ
ラフィエル「サターニャさん、お帰りなさい」
サターニャ母「おかえりサタニキア、ちょうど今からご飯にしようと思っていたのよ」
サターニャ「やった、今日の晩御飯は何かなー♪」
ラフィエル「今日はからげですよ、私も少し手伝いました!」
サターニャ「ラフィエルって料理できたんだ」
ラフィエル「できるという程では…… でも頑張りましたっ」
サターニャ「楽しみ~ 早く食べましょっ」
サターニャ母「ふふふ、早く手を洗ってらっしゃい」
サターニャ「はいは~い」
ラフィエル「(子供っぽいサターニャさん可愛いですぅ♡)」
サターニャ「何やってんのよラフィエル? 早くリビング行きましょ」
ラフィエル「あ、はい今行きます」
リビング
サターニャ父「帰ったかサタニキア、どうだった職安は?」
サターニャ「職安? ああ、ハロワの事ね、まあぼちぼちだったわ」
サターニャ弟「(ぼちぼちってテキトーだな…… ラフィエルさん大丈夫なのかな?)」
サターニャ弟「ぼちぼちって…… ちゃんと行ってきたの?」
サターニャ「行ってきたに決まってるじゃない! なんか申込用紙みたいなので応募もしてきたわ。今度面接があるって」
サターニャ母「面接ねぇ、あんたおかしな事するんじゃないわよ?」
サターニャ「わ、わかってるわよ。うるさいわね///」
サターニャ母「え? まあいいわ、とりあえず食べましょ」
ラフィエル「そうですね、いただきましょう」
サターニャ「いただきまーす」
サターニャ母「ええどうぞ。ラフィちゃんとっても器用なのよ? 凄く助かったわ。またよろしくね」ニコ
ラフィエル「そんなことありませんよ/// でもお力に慣れて嬉しいです」
サターニャ「うふふ~」モグモグ
サターニャ弟「何ニヤけてるんだよ、気持ち悪い……」
サターニャ「気持ち悪いって何よ! ただラフィエルとママが仲良さそうでよかったと思っただけ」
サターニャ母「うふふ、ラフィちゃん一生懸命だからとっても助かってるわ」
サターニャ父「ああ、店でも頑張ってくれてたよ。大助かりだ」
ラフィエル「あ、ありがとうございます///」ゴニョゴニョ
サターニャ「ラフィエルって褒められるとすっごい照れるわね、かわいい」
ラフィエル「か、かわいい///」ポッ
サターニャ弟「(うわ、やめてくれよ恥ずかしい)」
サターニャ弟「ねえお母さん、あ、明日消しゴム買っといてよ。予備がなくなっちゃってさ」
サターニャ母「? わかったわ」
ラフィエル「それなら私が行きましょうか? 近所の事も何も知らないので少し勉強したいですし」
サターニャ母「それなら一緒に行きましょうか、ラフィちゃんと買い物なんて楽しみ♪」
サターニャ父「おいおい、ラフィエル君には店の手伝いを……」
サターニャ母「買い物なんて1時間もかからないわよ。お店は1人で回してて」
サターニャ「ラフィエル大人気ね」
ラフィエル「そんなこと…… いえ、少し嬉しいです」
サターニャ「うふふ、パパもママも変わってるけどすぐ慣れると思うから、それまで我慢してね」
ラフィエル「我慢だなんて、私はお義父さんもお義母さんも頼りがいがあって大好きですよ」
サターニャ父「嬉しいねぇ、もうここで死んでもいいくらいだよ」
サターニャ弟「いやいや、浮かれすぎでしょ」
サターニャ母「うふふふふ、2人も増えると食卓が楽しいわね」
2年後
ラフィエル「(それから数日後、サターニャさんはある学校に卸をしたりする会社の面接に合格して、そこで働く事になりました)」
ラフィエル「(サターニャさんのご両親は不安そうでしたが、サターニャさんが仕事に数日間行って、晩御飯を食べながら『仕事が楽しい』と言ったのを聞いて、少し安心できたようでした)」
ラフィエル「(サターニャさんと夜に二人で話していても、会社の悪いところは言っていたことが無いので、本当に合った仕事に就けたんだと思います)」
ラフィエル「(サターニャさんの苦しむ顔なんて死んでも見たくは無かったので、サターニャさんが嬉しそうな顔で職場の話をしてくださるのは、いつも本当に嬉しいです)」
ラフィエル「(私はというと、今でもサターニャさんの家の洋菓子店を手伝っています)」
ラフィエル「(最初の出勤のあの日から毎日頑張って仕事を覚えて、今では新しい商品をお義父さんと一緒に考えたりもさせてもらっています)」
ラフィエル「(あ、最初の月の終わりにお給料を貰えることになって、2人の貯金のペースは思っていたよりも早くなっています)」
ラフィエル「(私はおいてもらえているだけでもありがたいと言ったのですが、聞き入れてもらえませんでした。頑固なのも親譲りのようですね、サターニャさん♪)」
ラフィエル「(ですが、サターニャさんが外で苦労してお金を稼いでいるというのに、私はお家で雇ってもらってお金をもらっているなんて)」
ラフィエル「(サターニャさんにいくら『私の希望なんだから』と言われても、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいでした)」
ラフィエル「(でも私のそういう気持ちとは裏腹に、サターニャさんは本当に仕事を頑張って、2年間で3回も昇給してしまいました)」
ラフィエル「(その仕事が本当に楽しいようで、またほとんど生活費以外にお金をかけることが無かったので、お金はだいぶ貯まって来たのですが)」
ラフィエル「(サターニャさんが2人で過ごすために貯金をしていることを忘れてしまっているようなのが、少しだけ不安です)」
――――――――――――――――――――
サターニャ「(私は初めてハローワークに行ってから5日後の面接で学校の卸をする会社に受かった)」
サターニャ「(その会社は本当に私に合っていた)」
サターニャ「(また、下界にいた頃になんだかんだ優しいと言われていた私の性格も幸いしたのか、得意先との付き合いもうまく行って、昇給も何度かした)」
サターニャ「(ラフィエルはよく、 『私は家の手伝いのようなことだけしかできなくて、申し訳ないです』なんて言っていたけど、それは私のわがままを聞いてくれただけ)」
サターニャ「(その私のわがままが、ラフィエルに肩身の狭い思いをさせているのなら、謝りたいのはむしろ私の方だった)」
サターニャ「(だけど両親がラフィエルに少しお給料をくれるようになって(ラフィエルは最後まで受け取るのを拒否していたけど)貯金もペースよく溜まっていた)」
サターニャ「(もうすでに田舎のマンションの頭金分くらいは貯まっていたから、もう会社を田舎の方に移って、のんびり2人で暮らしたかったんだけど)」
サターニャ「(なんだか高校も中退したこんな私を拾ってくれて、親切にしてくれた会社の人たちに申し訳なくて転職なんてできなくなっていた)」
サターニャ「(そうなると、会社の近くに住まないといけないんだけど、この辺りは少し家が高い)」
サターニャ「(仕事は確かに面白いんだけど、手段だったはずの仕事が目的になってしまっているような気がして、少しもどかしくもあった)」
某日
サターニャ「じゃあそろそろ行くわね」ガチャ
ラフィエル「いってらっしゃい。頑張ってきてください!」
サターニャ母「めざましの占いで事故に注意って書いてあったわよ、気を付けてね」
サターニャ「うん、行ってきまーす」
バタン
サターニャ父「よしラフィちゃん、今日も1日頑張ろうか」
ラフィエル「はい、それじゃあ今日もお願いします!」
サターニャ父「この前出してくれた新作良かったね、あれ来週から店で出そうか」
ラフィエル「本当ですか。ありがとうございます」
サターニャ父「こっちがお礼を言いたいくらいだよ、ラフィちゃんが来てくれてから店の売り上げは前より伸びたし、新作の評判も毎回いいし」
サターニャ父「本当に頑張ってくれてありがとう」
ラフィエル「いえそんな、もっと頑張ります!」
サターニャ父「嬉しいなあ……」シミジミ
サターニャ父「昔はたまにサターニャが手伝ってくれてたんだけどね、おかしな真っ黒のケーキを作っては店に勝手に並べたり、無茶苦茶だったんだよ」
ラフィエル「無茶苦茶ですか…… 私は独創的で素敵だと思いますよ?」ニコニコ
サターニャ父「なんて優しい子なんだ、今更ながらサターニャにはもったいない気がしてくるよ……」
ラフィエル「そんなそんな、サターニャさんこそ立派で、優しくて、思いやりがあって、私にはもったいないくらいですよ」
ラフィエル「だから、私も今更ですけど、こんな天使との結婚を許してくださって、本当に感謝してます」
サターニャ父「あぁぁ、浄化されそう……」
ラフィエル「うふふふ♪」
胡桃沢洋菓子
カランカラン
ラフィエル「いらっしゃいませー あ、また来てくださったんですね、ありがとうございます」ニコッ
おばあさん「ええ、この前買って帰ったら孫が喜んでね、婆は孫の喜ぶ顔が嬉しいのよ」
ラフィエル「婆だなんて、まだまだお若いじゃないですか」ニコニコ
おばあさん「あははは、若いなんておべっか言っちゃって、もうしょうがないわね~」ニコ
おばあさん「じゃあショートケーキと、モンブランと、シュークリームを3つずつ頂戴」ウレウレ
ラフィエル「3つずつ!? そんなに沢山食べきれますか? 賞味期限は明日ですよ?」
おばあさん「いいのよ、若いのはいくらでも食べるんだから。それにこんなにかわいい子に接客してもらったら、2個や3個じゃ申し訳ないわ」
ラフィエル「うふふ、ありがとうございます。じゃあ少しおまけして、3500円です」ニコッ
おばあさん「3500円ね、5000円からでいいかしら」
ラフィエル「はい、5000円からですね、1500円のお返しです」
ラフィエル「ありがとうございました~」
ラフィエル「(たくさん買ってもらっちゃいました、おばあさんが楽しそうで、私も嬉しくなっちゃいますね♪)」
カランカラン
ラフィエル「あ、いらっしゃいませ~」
男「あの、母にここなら店員さんがアドバイスしてくれると言われてきたんですけど……」
ラフィエル「お母さま? …… ああ、ひょっとして氷室さんのお宅の?」
男「はい、そうです! どうしてわかったんですか?」
ラフィエル「なんとなく面影が、それで、何のご相談ですか?」
男「はい、あの、実は恥ずかしながら、この年で初めて女性のお家にお呼ばれされたんですけど、手土産にどんなものを持っていけばいいのかわからなくて……」
男「それで、とりあえずケーキを持って行こうという結論に至ったんですけど、どんなものを選べばいいのかさっぱり……」
男「だからどんなケーキを持っていけば女性が喜んでくれるのか、教えてくれませんか?」
ラフィエル「ほお、なるほど、それは大切なご相談ですね……」
ラフィエル「う~ん……」
ラフィエル「女性に人気なのはこのチーズケーキとモンブラン、最近はティラミスというのも流行っていますね」
男「じゃあそれを下さ……」
ラフィエル「ですが、私は人気の物を送ってもらうよりも、お相手の方が一生懸命選んでくれたものが、一番嬉しいですよ?」ニコッ
男「…… なるほど、僕は彼女に気に入られたいがために、肝心な事をおざなりにしていたのかもしれません」
男「では、このタルトというものと、それからシフォンケーキ。あとせっかく教えてもらったのでティラミスを2つずつ下さい」
ラフィエル「6つも今日食べきれないと思いますよ? 賞味期限は明日ですし……」
男「ああ、良いんですよ。明日まで持つなら母に持って帰ればいいだけの話ですし」
ラフィエル「そうですか、それなら。2400円です」ニコッ
男「じゃあ3000円で」
ラフィエル「はい、400円のお返しです。頑張ってくださいね、応援してます!」ニコニコ
男「あ、ありがとうございます」
サターニャ父「(間違いなく客単価上がってるよな……)」
――――――――――――――――――――
サターニャ父「よし、追加のケーキ焼けたよ」
ラフィエル「はい、お疲れ様です。並べておきますね」
サターニャ父「ああ、お願いするよ」
ラフィエル「任せてください」
サターニャ母『ラフィちゃん? 今ちょっといい?』
サターニャ父「ママが呼んでるね」
ラフィエル「はい、なんでしょうかね」
ラフィエル「お義母さんすみませーん、いま……」
サターニャ父「いや、行ってきた方が良いよ、行ってきなさい」
ラフィエル「え? でもこれを並べておかないと」
サターニャ父「いや、それは私が並べておくよ。私が仕事を頼んだせいでラフィちゃんが向こうへ行けなかったなんてバレたら、私が怒られてしまうからね」
ラフィエル「うふふ、そうですか、ではお言葉に甘えさせてもらいます。お疲れ様です!」
サターニャ父「はい、お疲れ様~」
リビング
ラフィエル「お義母さん、呼びましたか?」
サターニャ母「ええ、ちょっと話があってね。大事な話だから」
ラフィエル「大事な話、ですか?」
サターニャ母「ええ、結構大きな問題だと思うんだけど……」
ラフィエル「どうしたんですか? お義母さんらしくなく歯切れが良くないですね……」
ラフィエル「ひょっとして、私なにかご迷惑を?」
サターニャ母「いえ、そういう事じゃないの。ただ、前々から気になっていたんだけど、ラフィちゃんは今の生活をどう思ってるの?」
ラフィエル「今をどう思っているか、ですか……?」
サターニャ母「う~ん、ごめんなさい。ちょっと聞き方が大雑把すぎたわね」
サターニャ母「つまりここで暮らしているのはあなたたちにとって、2人で暮らしていくための通過点だったはずじゃない?」
ラフィエル「はい、申し訳ないとは思っていますが。ここで暮らさせてもらって、お金がたまってから2人でどこかにと」
サターニャ母「だけどサタニキアの様子を聞くと、どうも会社を移るに移れないような状況らしいのよ」
ラフィエル「はい、それは私も少し聞いていましたが……」
サターニャ母「うん。それなら余計な説明はしなくていいわね」
サターニャ母「実はついさっき、サタニキアから電話があったんだけどね」
ラフィエル「サターニャさんが会社からですか? 珍しいですね」
サターニャ母「ええ、その内容がもっと面白い事なのよ」
ラフィエル「面白い事?」
サターニャ母「まあ単刀直入に言えば、サタニキアが今の会社の親会社に転勤になったそうなの」
ラフィエル「ええ!? 転勤ですか?」
ラフィエル「でも転勤って、じゃあ引っ越しですか?」
サターニャ母「そうなるらしいわ。私も電話口だったし詳しくは聞けてないんだけど、ここよりゲート寄りの所に引っ越さないといけないって」
ラフィエル「引っ越しですか、でもまだそんな都会に家を借りれるようなお金ありませんよ……」
サターニャ母「? ああ、ふふふ、ラフィちゃんって結構世間知らずよね」
ラフィエル「え?」
サターニャ母「会社の都合で引っ越しさせられる場合は大抵、引っ越し先の家賃としていくらか手当を出してくれるのよ?」
ラフィエル「そうだったんですか。私てっきり毎月10万円くらい取られるのかと……」
サターニャ母「うふふ、そういうお金に関することはまあそこまで問題ないんだけど、サタニキアが『ラフィエルが魔界の都会の方に行っても大丈夫かな』なんて心配してたから」
ラフィエル「魔界の都会はなにか違うんですか?」
サターニャ母「ああ、ラフィちゃんはそんな事知らないわよね…… 魔界の中枢部はテロ対策として対天使薬が散布されてるの」
サターニャ母「それのせいで慣れるまでは少し疲れやすくなったりすると思うわ。だから『単身で行こうかな』なんて言ってたけど、どうしたい?」
ラフィエル「なるほど、サターニャさんも心配性ですね」ニコッ
サターニャ母「? ……」
ラフィエル「私がサターニャさんだけでどこかに行かせるなんて、するわけないじゃないですか」
サターニャ母「…… ふふ、本当、誰に似たのかしらね?」ニコッ
ラフィエル「でも、お義母さんも結構心配性なところがありますよ?」
サターニャ母「ええ? そう?」ギク
ラフィエル「はい、さっきだって、とても不安そうな顔をしていました」
ラフィエル「私がサターニャさんを単身赴任させるんじゃないかと、不安だったんですよね? でも少し悔しいです。もっと信用してください」
サターニャ母「あらら、何でもお見通しね、千里眼ってやつかしら?」
ラフィエル「いいえ、これだけ親しくしてもらっていれば、千里眼なんて使わなくてもお義母さんの気持ちくらいは」
サターニャ母「じゃあなるべく仲良くしない方が良かったのかしら……?」
ラフィエル「ええ……」
サターニャ母「冗談よ。それじゃあお仕事中に呼び出して悪かったわね」
ラフィエル「いえ、わざわざ報告してくださって、ありがとうございます」
ラフィエル「それじゃあ、お店に戻りますね」
サターニャ母「うん、頑張ってね」
夜道
サターニャ「(サターニャ「ただいま~」ガチャ)」
サターニャ「(ラフィエル「サターニャさん、お帰りなさい」)」
サターニャ「(サターニャ「ただいま。晩御飯は後でいいから、ちょっと部屋で話しましょうか」)」
サターニャ「(ラフィエル「そうですね、私もそうしたいと思っていました」)」
サターニャ「(こんなにうまくいくのかしら…… なんかすっごい不安なんだけど)」
サターニャ「(びびってラフィエルに繋がらないように電話しちゃったし、そもそもちゃんと伝わってるのかな……)」
サターニャ「ああああ、ナニコレ超不安なんだけど!?」
サターニャ「…………///」
サターニャ「(と、とりあえず落ち着きましょ、問題は、ラフィエルにちゃんと伝わってるか、それからママ越しに伝えたのを怒ってないか……)」
サターニャ「(あとはついて来てくれるかよね…… というかこれ以外は殆どどうでもいいわ)」
サターニャ「(ああぁ、どうしよう。面と向かって言うのが怖い……)」
サターニャ「…………」
サターニャ「しょうがない! 電話ですましましょう!」
サターニャ「……」スマホポチポチ
サターニャ「さあ、かかれ! いや、かかるな!」ピ
prrrrrr pr
ラフィエル『はい、もしもし?』
サターニャ「あ。(かかった……)」
ラフィエル『もしもし? どうかなさったんですか??』
サターニャ「ああ、もしもし? ごめんごめん、ちょっとスマホの上下間違えてたわ」
ラフィエル『ええ? 大丈夫なんですか? かなり疲れているんじゃ……』
サターニャ「あはは、冗談に決まってるじゃないの。それより! ちょっと話があってかけたのよ」
ラフィエル『はい、お義母さんからある程度聞きました』
サターニャ「ってことはちゃんと伝わってるのね。少し安心したわ」ホッ
サターニャ「で、まあ聞いてると思うんだけど。私、転勤することになったの。少し都会の方に」
ラフィエル『はい、親元の会社に転勤なんですよね、おめでとうございます』
サターニャ「あ、ありがと…… でも、ちょっと引っ越しに問題があって……」
サターニャ「都会の方って天使に悪い空気なのよ。テロの対策とかなんだとか中学校の頃に習ったんだけど、なんか天使の体力消費量をあげるんだって」
ラフィエル『お義母さんから都会の空気が良くないって言うのは聞いたんですけど、体力消費の問題だったんですね』
サターニャ「ええ、そのおかげでテロ集団を捕まえられたこともあったんだって、まあ天使がテロなんて何千年前の話だって感じだけど」
ラフィエル『過激派組織なんて教科書でしか見ませんね……』
サターニャ「って、脱線脱線。話したいことはこんなことじゃなくて」
サターニャ「だから転勤で、引っ越さなきゃいけないの。だけどそこの空気が……」
ラフィエル『そこはもう聞きましたよ』
サターニャ「ああそうだったわ。えーと、あのね、つまりその空気も悪いし親とは離れちゃうし家も狭くなるし今より経済的に厳しい状態になっちゃうだろう都会に行かなくちゃいけないの」
ラフィエル『酷い言いようですね……』
サターニャ「だけど、私はラフィエルの事が好きなの、ずっと近くにいて欲しいと思ってる」
サターニャ「だからラフィエルにしんどい思いをさせちゃうかもしれない。それでも、私はついて来てほしい。お願い、また私について来て!」
ラフィエル『……』
サターニャ「」ゴクリ
サターニャ「……」ウズウズ
ラフィエル『うふふふ♪』
サターニャ「え?」
ラフィエル『私がサターニャさんを1人でどこかに行かす訳がないじゃないですか』
ラフィエル『前にも言いましたよね? サターニャさんのいる場所なら、どこへだって湧きますよ?』
サターニャ「ラフィエル…… うぅ」ウルッ
ラフィエル『さ、サターニャさん!? 泣かないでくださいよ?』
ラフィエル『ああ、少し間を取ったのは謝ります、緊張感を出したかったんですよ。ごめんなさい』アセアセ
サターニャ「よかったぁぁあ。ラフィエル、ありがとう!」
ラフィエル「わぁっ」
ラフィエル「(柔らかくて、温かくて、優しい声。ああ、幸せ)」
ラフィエル「幸せだって、こんなに自然に思えるようになったのは、2年前にここに来てからかもしれません)」
ラフィエル「(例えばお義母さんやお義父さんや弟さんと話しているとき、みんなで揃ってご飯を食べているとき、誰か、いえ、家族と一緒に買い物に行くとき)」ウルッ
ラフィエル「(私はここに来るまで、こんなにも自然に感じることのできる幸せに飢えていたのかもしれません)」ポロポロ
ラフィエル「(私はそれを、サターニャさんがこの世界に連れ出してくれたからこそ、感じることができました)」
ラフィエル「(だけどこれまでの何物も、サターニャさんが私を本当に必要としてくれたときほど、私を幸せな気持ちには、してくれませんでした)」
ラフィエル「(やっぱり、私はサターニャさんが、サターニャさんの事が……)」
サターニャ「(ラフィエル、私はあなたを疑ってしまってたわ。それも無意識のうちに。本当に申し訳なかったと思ってる)」
サターニャ「(でも許してほしい。私だってもしかしたらあなたが私から離れちゃうんじゃないかと心配だったの。なんて、言い訳よね……)」
サターニャ「(だけどラフィエル、本当は私はあなたに、あなただけにはどうしてもついて来て欲しかった、離れたくなかった)」
サターニャ「(だって、私はラフィエルの事を、ラフィエルの事だけを、愛しているから)」
ラフィエル『サターニャさん、私はサターニャさんが大好きです。だから、サターニャさんに拒絶されるまで、私はどこまでも、サターニャさんについて行きます!』
サターニャ「ラフィエル…… ありがとぉ」ポロポロ
ラフィエル「(その日から2日間、私たちは電話口で号泣してしまったのが、お互いに恥ずかしくて、目も合わせることができませんでした)」
ラフィエル「(ですが、サターニャさんはなんだかいつもより少し嬉しそうでした。あとからお義母さんに私も嬉しそうにしていたと言われましたが)」
ラフィエル「(そんな事より、今日は絶好の引っ越し日和です! 引っ越しなんてしたことはありませんが……)」
ラフィエル「(日も高く上がっていますし、天気も上々。かといって風がないわけでもなく、とても心地のいい日です)」
ラフィエル「(だから、外に出るだけで気分が良くなってしまうようなこんな日に、サターニャさんご一家とお別れというのは、普通の天気の日のお別れよりもなんだか悲しい気がしてしまいます)」
ラフィエル「(なんて、どん天気の日でも、どんな風の日でも、きっと私はこんな風にお別れに泣いてしまっていたんでしょうけど)」
ラフィエル「(サターニャさんは、また会おうと思えば会える、なんて言っていましたが、私に隠れて悲しそうな顔をしているところを私は見てしまいました)」
ラフィエル「(そのおかげでもあるのかもしれません。私は自分が悲しいと思うだけ、涙を流せていました。優しくしてくださった皆さんに、笑顔でお別れしたかったのですが……)」
………………
ラフィエル「(今はサターニャさんと移動中。荷物は引っ越しの業者さんが運んでくださっているので、私たちは1日分の着替えだけ持って、次の家の近くのホテルに一泊します)」
ラフィエル「(次のお家は、結婚当時に思い描いていたようなお庭があるようなお家ではないですけど。私たちはまだまだ19歳、今からでもどんどん成長していきます)」
ラフィエル「(サターニャさんと一緒なら、なぜかずっと、うまく言っていない時でも、そう思えてしまいます)」
サターニャ『フィエル? ちょっとラフィエル?』
サターニャ『ちょっとラフィエル!?』
ラフィエル「はっ、なんでしょう、サターニャさん?」
サターニャ「また上の空だったの? あんたは考えだすとほかの事が入ってこないんだから……」
ラフィエル「あはは、すみません」
ラフィエル「で、何の話でしたっけ?」
サターニャ「ああ、あのね、ひ、1つ提案があるんだけど……」
ラフィエル「はい、なんでしょう?」
サターニャ「私たち、ずっと他人行儀な呼び方じゃない? だからほら、そろそろ『さん付け』とか『ラフィエル』とかやめにしない?」
ラフィエル「いいですね! すごくいいと思います!」
サターニャ「そう? じゃあ今日からはそういう事で、よろしくね、ラフィ……///」
ラフィエル「うふふ、よろしくお願いします。サターニャちゃん♡」
サターニャ「『ちゃん』は辞めなさいよ『ちゃん』は!! そんな風に呼ばれたことは一回もないわぁ!!」
おしまい
75 : 以下、\... - 2017/05/22 02:13:38.235 7s2GOxpud 56/57乙
弟の消ゴムの件はなんだったのか
76 : 以下、\... - 2017/05/22 02:17:12.637 gLdE28P3H 57/57>>75
自分の前で姉夫婦にイチャイチャしてほしくないという思春期のあれです
僕は少年期、父と10年ほど年の離れた叔父夫婦にそういう感情を抱いてました