―会社―
女「…………」パクパクモグモグ
女「あ~、おいしー!」
女友「あんた、お昼はホントよく食べるねえ」
女「うん、だっておいしいんだもん!」
女友「でもさ……最近、ちょっと太ったんじゃない?」
女「え……!?」
女(そういえば、洋服がちょっときつくなったし……このままじゃまずい!)
女(ダイエットしなきゃ!)
元スレ
女「サナダムシでダイエットしよっと!」サナダムシ「楽して痩せようというその性根……気に入らんな」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1500477817/
―本屋―
女(なにかいいダイエット方法はないかな……)
女(食事制限? 運動? うーん、かったるい。もっと楽な方法は……)
女(なにこれ? サナダムシダイエット?)
女(サナダムシを腸内に寄生させるだけで、栄養を吸われるのでグングン痩せます!?)
女「これいい!」
女「サナダムシでダイエットしよっと!」
―自宅―
女「ただいま、お兄ちゃん」
兄「お帰り、今日は遅かったな」
女「ちょっと買い物しててね」
兄「ふうん、なに買ってきたんだ?」
女「んーとね、サナダムシ」
兄「!?」
兄「なんでそんなもんを……!」
女「今流行りのサナダムシダイエットをやるためよ」
兄「やめとけ、やめとけ! ああいうのは寄生虫に愛がなきゃできるもんじゃないぞ」
女「平気よ、そんなもんなくったって。痩せたいって気持ちさえあれば」
兄「あのなぁ、だいたいダイエットってのは、もっと地道に……」
女「お説教なんて聞きたくない! いくら兄妹二人暮らしとはいえ、あまり干渉しないでよね!」
女「もうお互い社会人なんだし!」
兄「ったく……」
女「じゃ、さっそく……お腹に入れましょうかね」
サナダムシ「俺で痩せようというのか?」
女「うわっ」
女「なにこいつ、しゃべれるの!?」
サナダムシ「まぁな」グネグネ
サナダムシ「そんなことよりもう一度聞こう。俺を使って痩せようというのか?」
女「そうよ! あんたを体内に宿して、体重落として、いくら食べても太らない体になるのよ!」
サナダムシ「楽して痩せようというその性根……気に入らんな」
女「な、なんですって!?」
サナダムシ「寄生虫を用いて、手軽に痩せようとするなど、愚かな行為だ」
サナダムシ「ダイエットに近道はない。近道しようとすれば、落とし穴にはまるだけだ」
サナダムシ「そもそも体調管理というのは、自分の力で行わねば意味がない」
サナダムシ「なぜなら……」
女「寄生虫のくせにお兄ちゃんみたいに説教しないでよ!」
女「宿主に寄生してないと満足に生きてけないくせに!」
サナダムシ「む……」
サナダムシ「……いいだろう、入ってやる」
女「なんだか不服そうね。腸内で悪さしないでしょうね」
サナダムシ「心配するな、役目は果たす」
女「なにが役目よ、栄養吸い取るだけのくせに」
サナダムシ「じゃ、入るぞ」グネグネ
女「頼んだわよ、あーん」
グネグネ…
女(ん~……腸に入ったわね。いよいよサナダムシダイエットの始まりだわ!)
次の日――
女「あっ!」
女「見て見て、お兄ちゃん! いきなり5kgも痩せてる!」
兄「サナダムシが頑張ってくれたおかげだな。少しは感謝しろよ」
女「ふんっ! あんな説教くさい奴に感謝するつもりなんかないよ!」
兄「…………」
女「よぉ~し今日から食べまくるぞぉ~!」
ガツガツ… モグモグ…
女「おいひぃ~!」
兄「おいおい……」
―会社―
女友「あれ? もしかして痩せた?」
女「ん、まぁねー」
女「あれから、ちょっと変わったダイエットしてさ」
女友「ねえ、どんなダイエットしてるの? 教えてよ」
女「ナ、イ、ショ」
女友「ずるーい!」
ガツガツ… ムシャムシャ…
女「うん、おいしい」モグモグ…
女友「…………」
女友「そんなに食べて、大丈夫なの?」
女「平気平気、私はいくら食べても太らない体質になったの!」
女「だからたくさん食べないと損なの!」
女友「すごーい!」
女(うひょ~、サナダムシダイエット最高!)
―自宅―
女(相変わらず、ベスト体重をキープできてるし……)
女「今日もいっぱい食べよっと!」
兄「……おい」
女「なに、お兄ちゃん?」
兄「そろそろ健康診断を受けるべきじゃないか」
女「ちゃんと会社の健康診断を受けてるわよ。全部異常なし!」
兄「お前じゃない、体内のサナダムシだ」
女「ハァ?」
女「なんでこいつなんかに……」
兄「そのサナダムシはお前の暴飲暴食を支えるために、だいぶムリしてるはずだ」
兄「すぐ健康診断を受けさせてやれ」
女「嫌よ、めんどくさ――」
兄「寄生虫を大切にできない奴に、寄生虫を宿す資格はない」キッ
女「……分かったわよ」
女「じゃ、腸から出すよ」ウプッ
女「おえええええええっ!!!」
ドチャッ…
サナダムシ「…………」グネグネ
女「わっ、こんなにおっきくなってる!」
女「最初は1メートルぐらいだったのに、今は10メートル以上ある!」
兄「やっぱりな……明らかに食いすぎだ。診てもらった方がいい」
―病院―
女「私のサナダムシの体調はいかがでしょう?」
医者「あまりよくないですな」
医者「余分な栄養を吸い取るどころか、お嬢さんの体調を整えるために無理をしすぎてるようです」
医者「コレステロールをコントロールしたり、血糖値が上がりすぎないようにしたり」
医者「風邪などの細菌やウイルスとも戦ってるようですしね」
女「そ、そんな……! そこまでしてくれてたなんて……!」
女「なんで……なんでずっと黙ってたのよ!」
サナダムシ「いっただろう、役目は果たすと」
女「――バカッ!」
女「あんたがこんな目にあってるなら、私、あんなに食べなかった!」
女「誰かの犠牲で痩せても、私ちっとも嬉しくない!」
サナダムシ「しかし、俺が腹から出たら、体調が悪化してしまうぞ」
女「私……これからは自力で頑張る! 自分の力でダイエットする!」
サナダムシ「……そうか。ならば俺は精一杯フォローしよう」
―自宅―
兄「あれ? サナダムシを体から出したままなのか」
女「うん、これからは体内じゃなく体外で飼うって決めたの」
兄「ってことは体調管理は……」
女「自力でやることにしたの!」
サナダムシ「居候させていただきます。よろしくお願いします」ペコッ
兄「こちらこそ」ペコッ
兄(さすが俺の妹……よく目を覚ましてくれた!)
女(ケーキを食べたい……けど!)
女「今日は我慢!」
サナダムシ「その意気だ」
女「うんっ!」
サナダムシ「偉いぞ」ナデナデ
女「寄生虫に頭なでられても、嬉しくないよ」
サナダムシ「む……」
女(なーんて、実は結構嬉しかったりして……)
タッタッタッタッタ…
女「はっ、はっ、はっ……」
サナダムシ「大丈夫か?」グネグネ
女「まだいける!」
サナダムシ「ほら、ポカリだ」ポイッ
女「ありがと!」グビグビ
女「よぉ~し、あと1キロ!」
タッタッタ…
―プール―
ザバザバ…
サナダムシ「どっちが早く泳げるか、勝負だ!」グネグネグネ
女「負けないんだから!」ザバザバザバ
ザバザバザバザバ…
監視員「サナダムシと水泳する女性なんて、珍しいなぁ」
しばらくして――
―自宅―
女「どぉう?」スラッ…
兄「おお……すごい!」
兄「サナダムシに頼らず自力で体を引き締めたからか、全身から自信と色気が漂ってる!」
兄「実の妹とはいえ、危うく惚れちゃうかもしれないところだ!」
女「ありがと、お兄ちゃん!」
サナダムシ(うむ、これでよかったのだ……)
―会社―
ワイワイ… ガヤガヤ…
同僚男A「近頃、とてもキレイになったね!」
同僚男B「今夜、ぜひ食事にでも行かない?」
同僚男C「いやいや、ボクとデートを……」
女「みんな、ありがとう。でもパスさせてもらうわ」
女友「あんた、最近モテモテだね~。ま、同性のあたしから見てもキレイになったけどさ」
女友「まだダイエットやってるの?」
女「うん……だけど今は普通のやり方でね。運動したり、食事制限したり……」
女友「やっぱりダイエットに近道なし、か」
―自宅―
女「今日もみんなにモテモテだったの!」
女「どう? すごいでしょ! これもあんたのおかげよ!」
サナダムシ「……そうか」グネグネ
女「?」
女「なによ、その態度!」
女「ねえ、サナダムシ!」
女「最近、ちょっと変じゃない?」
サナダムシ「俺は元々こういう性格だが?」
女「ウソ! 昔はもっと優しかったじゃない!」
女「モテたって報告したら、よかったじゃないか、ぐらいいってくれたじゃない!」
サナダムシ「よかったじゃないか。これでいいか?」
女「…………!」
女(なによ……! サナダムシったら!)
女(ちょっとぐらいヤキモチ妬いてくれたっていいのにさ)
女(私がキレイになったのは、誰のためだと思ってるのよ!)
サナダムシ(俺としたことが人間の女に特別な感情を抱いてしまうとは……)
サナダムシ(このままではいかん。お互いのためにならぬ)
サナダムシ(こうして関係を悪化させ、静かにこの家を去るとしよう)
兄「今日は俺がメシ作ったんだ! さ、二人とも食べよう!」
シ~ン……
女「…………」モグモグ
サナダムシ「…………」ムシャムシャ
兄「二人とも、最近どうしたんだ? メシ時に全然しゃべらなくなっちまったが」
女「なにもない」モグモグ
サナダムシ「なんでもない」ムシャムシャ
兄「そ、そうか」
女「今日からは別々の布団で寝ましょ」
サナダムシ「そうだな」
女「おやすみ」モゾッ
サナダムシ「ふん」ゴロン…
兄(いつも同じ布団に寝てたのに……いったいどうしちまったっていうんだ)
女(なによ! サナダムシのヤツ!)
女(せめて寝る時ぐらいは一緒にいようではないか、っていって欲しかったのに!)
女(結局、私のことは宿主としてしか見てなかったんだわ!)
サナダムシ(あの娘のぬくもり……恋しいといえば恋しい)
サナダムシ(しかし、これでいい……これでいいのだ……)
サナダムシ(俺たちは相容れぬ仲なのだ……)
………………
…………
……
ある日のこと――
―自宅―
兄「いただきます!」
兄「って、また二人はだんまりか」
女「…………」モグモグ
サナダムシ「…………」ムシャムシャ
兄「しょうがない奴らだ――うっ!?」
兄「あいたたたたたたた……! 腹が! 腹がぁっ!」
女「どうしたの、お兄ちゃん!?」
兄「腹が……痛いんだッ! 痛くてたまらない! 助けてくれぇ……!」
女「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」ユサユサ
サナダムシ「うかつに動かしてはならん!」
女「う、うんっ!」
サナダムシ「ちょっとお腹をさわってみよう」グネ…
兄「あいたたたたたたたた……!」
サナダムシ「これは……腹部に異物があるな」
女「ええっ!?」
兄「し、死ぬ……! 死んでしまうぅっ!」
女「どうしたらいいの!? サナダムシ、助けて!」
サナダムシ「腹のあたりを押して、異物を吐き出させるしかあるまい。しかし、俺一人の力では――」
女「だったら二人で押し出しましょう! 二人ならできる! 共同作業よ!」
サナダムシ「うむ!」
兄「た、頼む……」
サナダムシ「胃袋のあたりを、二人で押すのだ!」
女「せーのっ!」
グンッ
兄「うぷっ!」
女「もっかい!」
グンッ
兄「うぼぉっ……!」
兄「ゲボォォォォォォッ!」ウゲェェェェェッ
アニサキス「…………」ドチャッ…
サナダムシ「…………!」
女「これは……巨大アニサキス!」
女「そっか! お兄ちゃんだから、アニサキスに寄生されてたのね!」
女「兄だから、アニサキス!」
女「兄だから、アニサキス!!」
女「 兄 だ か ら 、 ア ニ サ キ ス ! ! ! 」
兄「ふっ、よくやったな。演技したかいがあった」
女「え?」
兄「見事なコンビネーションだった。やはりお前たち二人はお似合いだよ」
兄「俺たちのようにな……」
女「ど、どういうこと?」
アニサキス「ふふっ、久しぶりね」
サナダムシ「姉さん……ッ!!!」
兄「へえ、二匹は姉弟だったのか」
アニサキス「まぁね。種族は違うんだけど、姉弟の関係なのよ」
サナダムシ「まさか、こんなところで会えるなんて……」
アニサキス「あたしは彼の体内から、ずっとあなたを見てたけどね」
女「お兄ちゃんに寄生してたアニサキスは、サナダムシのお姉ちゃんだったなんて……」
女「アニサキスだけどお姉ちゃん!」
女「アニサキスだけどお姉ちゃん!!」
女「 ア ニ サ キ ス だ け ど お 姉 ち ゃ ん ! ! ! 」
女「そっか、お兄ちゃんはずっとアニサキスを寄生させてたのね」
女「どうりでサナダムシの体調を見抜いたし、寄生虫に詳しいわけだわ……」
兄「ああ、五年前からな。うっかり古い刺身を食べた時に、寄生されてしまったんだが」
兄「だんだんと愛し合うようになっちまってな……」
アニサキス「懐かしいわね」
兄「だからお前がサナダムシを寄生させるって時は驚いたよ。これも血筋かなって」
兄「だけどお互い素直になれないみたいだから、一芝居打ったってわけだ」
女「…………」
兄「もう分かっただろう。お前たち、自分の心に素直に生きろ!」
兄「お前たちは俺たちに劣らない、最高のカップルだ!」
アニサキス「その通りよ」
女「…………」
サナダムシ「…………」グネッ
女「私……もう自分の気持ちをごまかすのはやめる! 正直に生きる!」
女「ダイエットだって、正々堂々やるようになったんだから!」
女「サナダムシ……だーい好きっ!」
サナダムシ「……俺もお前も好きだ」
チュッ
おわり