1 : 以下、\... - 2017/07/20 00:23:37.074 ShHdn9kQ0 1/34

―会社―

「…………」パクパクモグモグ

「あ~、おいしー!」

女友「あんた、お昼はホントよく食べるねえ」

「うん、だっておいしいんだもん!」

女友「でもさ……最近、ちょっと太ったんじゃない?」

「え……!?」

(そういえば、洋服がちょっときつくなったし……このままじゃまずい!)

(ダイエットしなきゃ!)

元スレ
女「サナダムシでダイエットしよっと!」サナダムシ「楽して痩せようというその性根……気に入らんな」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1500477817/

5 : 以下、\... - 2017/07/20 00:27:12.850 ShHdn9kQ0 2/34

―本屋―

(なにかいいダイエット方法はないかな……)

(食事制限? 運動? うーん、かったるい。もっと楽な方法は……)

(なにこれ? サナダムシダイエット?)

(サナダムシを腸内に寄生させるだけで、栄養を吸われるのでグングン痩せます!?)

「これいい!」

「サナダムシでダイエットしよっと!」

9 : 以下、\... - 2017/07/20 00:30:09.341 ShHdn9kQ0 3/34

―自宅―

「ただいま、お兄ちゃん」

「お帰り、今日は遅かったな」

「ちょっと買い物しててね」

「ふうん、なに買ってきたんだ?」

「んーとね、サナダムシ」

「!?」

12 : 以下、\... - 2017/07/20 00:33:30.565 ShHdn9kQ0 4/34

「なんでそんなもんを……!」

「今流行りのサナダムシダイエットをやるためよ」

「やめとけ、やめとけ! ああいうのは寄生虫に愛がなきゃできるもんじゃないぞ」

「平気よ、そんなもんなくったって。痩せたいって気持ちさえあれば」

「あのなぁ、だいたいダイエットってのは、もっと地道に……」

「お説教なんて聞きたくない! いくら兄妹二人暮らしとはいえ、あまり干渉しないでよね!」

「もうお互い社会人なんだし!」

「ったく……」

13 : 以下、\... - 2017/07/20 00:36:29.282 ShHdn9kQ0 5/34

「じゃ、さっそく……お腹に入れましょうかね」

サナダムシ「俺で痩せようというのか?」

「うわっ」

「なにこいつ、しゃべれるの!?」

サナダムシ「まぁな」グネグネ

サナダムシ「そんなことよりもう一度聞こう。俺を使って痩せようというのか?」

「そうよ! あんたを体内に宿して、体重落として、いくら食べても太らない体になるのよ!」

サナダムシ「楽して痩せようというその性根……気に入らんな」

「な、なんですって!?」

17 : 以下、\... - 2017/07/20 00:40:03.663 ShHdn9kQ0 6/34

サナダムシ「寄生虫を用いて、手軽に痩せようとするなど、愚かな行為だ」

サナダムシ「ダイエットに近道はない。近道しようとすれば、落とし穴にはまるだけだ」

サナダムシ「そもそも体調管理というのは、自分の力で行わねば意味がない」

サナダムシ「なぜなら……」

「寄生虫のくせにお兄ちゃんみたいに説教しないでよ!」

「宿主に寄生してないと満足に生きてけないくせに!」

サナダムシ「む……」

20 : 以下、\... - 2017/07/20 00:43:16.146 ShHdn9kQ0 7/34

サナダムシ「……いいだろう、入ってやる」

「なんだか不服そうね。腸内で悪さしないでしょうね」

サナダムシ「心配するな、役目は果たす」

「なにが役目よ、栄養吸い取るだけのくせに」

サナダムシ「じゃ、入るぞ」グネグネ

「頼んだわよ、あーん」

グネグネ…

(ん~……腸に入ったわね。いよいよサナダムシダイエットの始まりだわ!)

22 : 以下、\... - 2017/07/20 00:48:32.945 ShHdn9kQ0 8/34

次の日――

「あっ!」

「見て見て、お兄ちゃん! いきなり5kgも痩せてる!」

「サナダムシが頑張ってくれたおかげだな。少しは感謝しろよ」

「ふんっ! あんな説教くさい奴に感謝するつもりなんかないよ!」

「…………」

「よぉ~し今日から食べまくるぞぉ~!」

ガツガツ… モグモグ…

「おいひぃ~!」

「おいおい……」

24 : 以下、\... - 2017/07/20 00:51:08.971 ShHdn9kQ0 9/34

―会社―

女友「あれ? もしかして痩せた?」

「ん、まぁねー」

「あれから、ちょっと変わったダイエットしてさ」

女友「ねえ、どんなダイエットしてるの? 教えてよ」

「ナ、イ、ショ」

女友「ずるーい!」

26 : 以下、\... - 2017/07/20 00:54:20.270 ShHdn9kQ0 10/34

ガツガツ… ムシャムシャ…

「うん、おいしい」モグモグ…

女友「…………」

女友「そんなに食べて、大丈夫なの?」

「平気平気、私はいくら食べても太らない体質になったの!」

「だからたくさん食べないと損なの!」

女友「すごーい!」

(うひょ~、サナダムシダイエット最高!)

29 : 以下、\... - 2017/07/20 00:59:01.182 ShHdn9kQ0 11/34

―自宅―

(相変わらず、ベスト体重をキープできてるし……)

「今日もいっぱい食べよっと!」

「……おい」

「なに、お兄ちゃん?」

「そろそろ健康診断を受けるべきじゃないか」

「ちゃんと会社の健康診断を受けてるわよ。全部異常なし!」

「お前じゃない、体内のサナダムシだ」

「ハァ?」

30 : 以下、\... - 2017/07/20 01:03:36.947 ShHdn9kQ0 12/34

「なんでこいつなんかに……」

「そのサナダムシはお前の暴飲暴食を支えるために、だいぶムリしてるはずだ」

「すぐ健康診断を受けさせてやれ」

「嫌よ、めんどくさ――」

「寄生虫を大切にできない奴に、寄生虫を宿す資格はない」キッ

「……分かったわよ」

「じゃ、腸から出すよ」ウプッ

「おえええええええっ!!!」

ドチャッ…

サナダムシ「…………」グネグネ

「わっ、こんなにおっきくなってる!」

「最初は1メートルぐらいだったのに、今は10メートル以上ある!」

「やっぱりな……明らかに食いすぎだ。診てもらった方がいい」

34 : 以下、\... - 2017/07/20 01:07:29.408 ShHdn9kQ0 13/34

―病院―

「私のサナダムシの体調はいかがでしょう?」

医者「あまりよくないですな」

医者「余分な栄養を吸い取るどころか、お嬢さんの体調を整えるために無理をしすぎてるようです」

医者「コレステロールをコントロールしたり、血糖値が上がりすぎないようにしたり」

医者「風邪などの細菌やウイルスとも戦ってるようですしね」

「そ、そんな……! そこまでしてくれてたなんて……!」

「なんで……なんでずっと黙ってたのよ!」

サナダムシ「いっただろう、役目は果たすと」

「――バカッ!」

38 : 以下、\... - 2017/07/20 01:10:23.976 ShHdn9kQ0 14/34

「あんたがこんな目にあってるなら、私、あんなに食べなかった!」

「誰かの犠牲で痩せても、私ちっとも嬉しくない!」

サナダムシ「しかし、俺が腹から出たら、体調が悪化してしまうぞ」

「私……これからは自力で頑張る! 自分の力でダイエットする!」

サナダムシ「……そうか。ならば俺は精一杯フォローしよう」

45 : 以下、\... - 2017/07/20 01:13:48.087 ShHdn9kQ0 15/34

―自宅―

「あれ? サナダムシを体から出したままなのか」

「うん、これからは体内じゃなく体外で飼うって決めたの」

「ってことは体調管理は……」

「自力でやることにしたの!」

サナダムシ「居候させていただきます。よろしくお願いします」ペコッ

「こちらこそ」ペコッ



(さすが俺の妹……よく目を覚ましてくれた!)

48 : 以下、\... - 2017/07/20 01:17:37.006 ShHdn9kQ0 16/34

(ケーキを食べたい……けど!)

「今日は我慢!」

サナダムシ「その意気だ」

「うんっ!」

サナダムシ「偉いぞ」ナデナデ

「寄生虫に頭なでられても、嬉しくないよ」

サナダムシ「む……」

(なーんて、実は結構嬉しかったりして……)

50 : 以下、\... - 2017/07/20 01:20:11.799 ShHdn9kQ0 17/34

タッタッタッタッタ…

「はっ、はっ、はっ……」

サナダムシ「大丈夫か?」グネグネ

「まだいける!」

サナダムシ「ほら、ポカリだ」ポイッ

「ありがと!」グビグビ

「よぉ~し、あと1キロ!」

タッタッタ…

57 : 以下、\... - 2017/07/20 01:23:26.921 ShHdn9kQ0 18/34

―プール―

ザバザバ…

サナダムシ「どっちが早く泳げるか、勝負だ!」グネグネグネ

「負けないんだから!」ザバザバザバ

ザバザバザバザバ…



監視員「サナダムシと水泳する女性なんて、珍しいなぁ」

60 : 以下、\... - 2017/07/20 01:28:13.030 ShHdn9kQ0 19/34

しばらくして――

―自宅―

「どぉう?」スラッ…

「おお……すごい!」

「サナダムシに頼らず自力で体を引き締めたからか、全身から自信と色気が漂ってる!」

「実の妹とはいえ、危うく惚れちゃうかもしれないところだ!」

「ありがと、お兄ちゃん!」

サナダムシ(うむ、これでよかったのだ……)

62 : 以下、\... - 2017/07/20 01:32:33.986 ShHdn9kQ0 20/34

―会社―

ワイワイ… ガヤガヤ…

同僚男A「近頃、とてもキレイになったね!」

同僚男B「今夜、ぜひ食事にでも行かない?」

同僚男C「いやいや、ボクとデートを……」

「みんな、ありがとう。でもパスさせてもらうわ」



女友「あんた、最近モテモテだね~。ま、同性のあたしから見てもキレイになったけどさ」

女友「まだダイエットやってるの?」

「うん……だけど今は普通のやり方でね。運動したり、食事制限したり……」

女友「やっぱりダイエットに近道なし、か」

64 : 以下、\... - 2017/07/20 01:34:47.444 ShHdn9kQ0 21/34

―自宅―

「今日もみんなにモテモテだったの!」

「どう? すごいでしょ! これもあんたのおかげよ!」

サナダムシ「……そうか」グネグネ

「?」

「なによ、その態度!」

65 : 以下、\... - 2017/07/20 01:37:28.102 ShHdn9kQ0 22/34

「ねえ、サナダムシ!」

「最近、ちょっと変じゃない?」

サナダムシ「俺は元々こういう性格だが?」

「ウソ! 昔はもっと優しかったじゃない!」

「モテたって報告したら、よかったじゃないか、ぐらいいってくれたじゃない!」

サナダムシ「よかったじゃないか。これでいいか?」

「…………!」

68 : 以下、\... - 2017/07/20 01:40:43.498 ShHdn9kQ0 23/34

(なによ……! サナダムシったら!)

(ちょっとぐらいヤキモチ妬いてくれたっていいのにさ)

(私がキレイになったのは、誰のためだと思ってるのよ!)



サナダムシ(俺としたことが人間の女に特別な感情を抱いてしまうとは……)

サナダムシ(このままではいかん。お互いのためにならぬ)

サナダムシ(こうして関係を悪化させ、静かにこの家を去るとしよう)

70 : 以下、\... - 2017/07/20 01:44:03.925 ShHdn9kQ0 24/34

「今日は俺がメシ作ったんだ! さ、二人とも食べよう!」

シ~ン……

「…………」モグモグ

サナダムシ「…………」ムシャムシャ

「二人とも、最近どうしたんだ? メシ時に全然しゃべらなくなっちまったが」

「なにもない」モグモグ

サナダムシ「なんでもない」ムシャムシャ

「そ、そうか」

73 : 以下、\... - 2017/07/20 01:46:28.724 ShHdn9kQ0 25/34

「今日からは別々の布団で寝ましょ」

サナダムシ「そうだな」

「おやすみ」モゾッ

サナダムシ「ふん」ゴロン…



(いつも同じ布団に寝てたのに……いったいどうしちまったっていうんだ)

75 : 以下、\... - 2017/07/20 01:50:24.628 ShHdn9kQ0 26/34

(なによ! サナダムシのヤツ!)

(せめて寝る時ぐらいは一緒にいようではないか、っていって欲しかったのに!)

(結局、私のことは宿主としてしか見てなかったんだわ!)


サナダムシ(あの娘のぬくもり……恋しいといえば恋しい)

サナダムシ(しかし、これでいい……これでいいのだ……)

サナダムシ(俺たちは相容れぬ仲なのだ……)



………………

…………

……

76 : 以下、\... - 2017/07/20 01:54:43.042 ShHdn9kQ0 27/34

ある日のこと――

―自宅―

「いただきます!」

「って、また二人はだんまりか」

「…………」モグモグ

サナダムシ「…………」ムシャムシャ

「しょうがない奴らだ――うっ!?」

「あいたたたたたたた……! 腹が! 腹がぁっ!」

「どうしたの、お兄ちゃん!?」

82 : 以下、\... - 2017/07/20 01:59:02.690 ShHdn9kQ0 28/34

「腹が……痛いんだッ! 痛くてたまらない! 助けてくれぇ……!」

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」ユサユサ

サナダムシ「うかつに動かしてはならん!」

「う、うんっ!」

サナダムシ「ちょっとお腹をさわってみよう」グネ…

「あいたたたたたたたた……!」

サナダムシ「これは……腹部に異物があるな」

「ええっ!?」

87 : 以下、\... - 2017/07/20 02:04:02.543 ShHdn9kQ0 29/34

「し、死ぬ……! 死んでしまうぅっ!」

「どうしたらいいの!? サナダムシ、助けて!」

サナダムシ「腹のあたりを押して、異物を吐き出させるしかあるまい。しかし、俺一人の力では――」

「だったら二人で押し出しましょう! 二人ならできる! 共同作業よ!」

サナダムシ「うむ!」

「た、頼む……」

サナダムシ「胃袋のあたりを、二人で押すのだ!」

「せーのっ!」

グンッ

「うぷっ!」

「もっかい!」

グンッ

「うぼぉっ……!」

90 : 以下、\... - 2017/07/20 02:07:40.772 ShHdn9kQ0 30/34

「ゲボォォォォォォッ!」ウゲェェェェェッ

アニサキス「…………」ドチャッ…



サナダムシ「…………!」

「これは……巨大アニサキス!」

「そっか! お兄ちゃんだから、アニサキスに寄生されてたのね!」

「兄だから、アニサキス!」

「兄だから、アニサキス!!」

「 兄 だ か ら 、 ア ニ サ キ ス ! ! ! 」 

96 : 以下、\... - 2017/07/20 02:10:14.431 ShHdn9kQ0 31/34

「ふっ、よくやったな。演技したかいがあった」

「え?」

「見事なコンビネーションだった。やはりお前たち二人はお似合いだよ」

「俺たちのようにな……」

「ど、どういうこと?」



アニサキス「ふふっ、久しぶりね」

サナダムシ「姉さん……ッ!!!」

100 : 以下、\... - 2017/07/20 02:14:09.770 ShHdn9kQ0 32/34

「へえ、二匹は姉弟だったのか」

アニサキス「まぁね。種族は違うんだけど、姉弟の関係なのよ」

サナダムシ「まさか、こんなところで会えるなんて……」

アニサキス「あたしは彼の体内から、ずっとあなたを見てたけどね」

「お兄ちゃんに寄生してたアニサキスは、サナダムシのお姉ちゃんだったなんて……」

「アニサキスだけどお姉ちゃん!」

「アニサキスだけどお姉ちゃん!!」

「 ア ニ サ キ ス だ け ど お 姉 ち ゃ ん ! ! ! 」

103 : 以下、\... - 2017/07/20 02:18:35.715 ShHdn9kQ0 33/34

「そっか、お兄ちゃんはずっとアニサキスを寄生させてたのね」

「どうりでサナダムシの体調を見抜いたし、寄生虫に詳しいわけだわ……」

「ああ、五年前からな。うっかり古い刺身を食べた時に、寄生されてしまったんだが」

「だんだんと愛し合うようになっちまってな……」

アニサキス「懐かしいわね」

「だからお前がサナダムシを寄生させるって時は驚いたよ。これも血筋かなって」

「だけどお互い素直になれないみたいだから、一芝居打ったってわけだ」

「…………」

「もう分かっただろう。お前たち、自分の心に素直に生きろ!」

「お前たちは俺たちに劣らない、最高のカップルだ!」

アニサキス「その通りよ」

「…………」

サナダムシ「…………」グネッ

104 : 以下、\... - 2017/07/20 02:22:19.695 ShHdn9kQ0 34/34

「私……もう自分の気持ちをごまかすのはやめる! 正直に生きる!」

「ダイエットだって、正々堂々やるようになったんだから!」

「サナダムシ……だーい好きっ!」

サナダムシ「……俺もお前も好きだ」

チュッ







おわり

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