友「そういやさー」
男「ん?」
友「ふと思ったんだけど、お前の声って大谷育江そっくりじゃね?」
男「え、マジ?」
友「うん、メチャクチャ似てる」
男「そんなに似てるの?」
友「なんで今まで気づかなかったんだろうってぐらい似てる」
元スレ
男「俺の声は大谷育江にそっくりだからピカチュウの真似してガキ共喜ばせるの楽しすぎwwwww」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1501083612/
男「大谷育江って、たしかピカチュウの声優さんだよな」
友「うん」
友「ちょっとさ……ピカチュウの真似してみてくんね?」
男「え~? まぁいいけど」
男「ピカチュウ!」
友「似てる!」ブフッ
男「マジ? 声高い自覚はあるけど、自分だと分からないもんだな」
友「ちょ、もう一回やって」
男「ピーカーチュー!」
友「似すぎ! かなり棒読みだけど!」
男「ピーカー!」
男「ピカチュウ!」
男「ボク、ピッピだッピ! ギエピー!」
友「ギャハハハハッ!」
男「オッス、オラピカチュウ! かめはめ波ァァァァァッ!!!」
友「ピカチュウはそんなこといわない」
友「あ~……面白かった」
友「じゃあなー」
男「またなー」
男「……」
男(知らなかった……俺の声がピカチュウと似てただなんて……)
男(これ、なんかに利用できないか……?)
男(あ、いいこと思いついた……)ニヤッ
―幼稚園―
園児A「キャハハ~」タタタッ
園児B「待ってよー!」タタタッ
男(お、ガキどもがいやがったぜ)
男(よぉし……物陰に隠れて……ちょっとやってみるか)コホンッ
男「ピーカー!」
男「ピッカッチュウ!」
男「ピッカピー! ピッピカチュウ!」
園児A「え!?」
園児B「今ピカチュウの声きこえた!」
園児A「どこー? ピカチュウー!」
園児B「ピカチュウってホントにいるんだ!」
男「ふふふ、うまくいった」
―保育園―
園児C「だるまさんはころんだ!」
園児D「わーいわーい!」
コソッ…
男「ピッピカチュウ! ピーカチュー!」
園児C「今のピカチュウ!?」
園児D「ピカチュウだったよね!」
―小学校―
児童A「帰ったらポケモンやろうぜ!」
児童B「いいねー!」
男「ピィィィィ……カァァァァ……チュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
児童A「!? ――な、なんだ今の!?」
児童B「ピカチュウの声だったよな!?」
―公園―
男「ピカッ、ピカチュウ!」
「今の声!」 「ピカチュウだ!」 「この公園にはピカチュウが住んでるんだ!」
―森―
男「ピーカーピッ、ピカチュウ!」
「うわぁっ!?」 「今のピカチュウじゃね!?」 「昆虫採集やめてピカチュウ採集やろうぜ!」
―スーパーマーケット―
子供「うわぁ~い!」ドドドドドッ
母「コラッ、走らないの!」
男「ピカカッ! ピッカー!」
母「ほら、ピカチュウも怒ってるわよ!」
子供「ごめんなさい……」シュン
母(って、今の声はなんだったのかしら?)
男「……ってわけなんだ」
友「へぇ~」
男「どこでやっても大盛り上がりで、ピカチュウの人気っぷりを改めて思い知ったわ」
男「家でも声録音しながら練習してだいぶ上達してきたしな。面白くてやめられねえよ」
友「いいなぁ~」
友「オレもフリーザのモノマネには自信あるんだが、子供怖がらせちまうしなぁ」
男「やってみろよ」
友「じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!」
男(……似てる!)
その後も――
ガキ大将「てめえ、ブン殴ってやる! 爪の間に針刺してやる!」
いじめられっ子「助けて……」ビクビク
男「ピーカーッ!」
ガキ大将「今のはピカチュウ!? おい、一緒にピカチュウ探そうぜ!」
いじめられっ子「うん!」
男(ふっ、いじめ問題も解決してしまった……)
男「よぉ~し、ピカチュウの真似してガキ共を喜ばせまくるぜ!」
男「ピカピカーッ!」
男「チュウーッ!」
男「ピッピカチュウ!」
男「ピーカーピッピカチュウ! ピッカ~! ピーカーチュー!」
――――――
――――
――
友「おーい」
男「ん?」
友「お前、相変わらずピカチュウのモノマネ続けてるのか?」
男「ああ、毎日三時間はやってる」
友「実はさ、お前のピカチュウの真似で、とんでもない騒ぎが起こってるぞ」
男「――え!?」
友「テレビ見てみろよ」
~TV~
リポーター『最近、この○×町でピカチュウの声が頻繁に聞こえるとの情報が入りました』
リポーター『果たしてピカチュウは本当にいるのでしょうか?』
リポーター『いかがでしょう、町長さん』
町長『もし本当にいるなら、ピカチュウで町おこしして大儲けじゃ! ヒェッヒェッヒェ!!!』
友「ほら……取材まで来てて、町長のインタビューまで……」
男「マジかよ」
~TV~
総理大臣『もし○×町にピカチュウがいるとしたら、全力で駆除せねばならん!』
総理大臣『10万ボルトを出す生物なんてヒアリ以上に危なくて仕方ないからな!』
総理大臣『ハンターを雇って、射殺してくれるわ!』
友「こんなことになってる」
男「ど、どうしよう……駆除されたくねえよ」
男「やばいな……本格的に調査されたら、俺が犯人だってすぐバレるんじゃねえか?」
友「ああ、なにしろこの辺に住んでる奴でピカチュウの声に似てるのなんてお前ぐらいだしな」
男「だよなぁ……」
友「とにかく、しばらくはピカチュウの真似はやめとけ」
友「そうすりゃ、そのうちやっぱりピカチュウなんていなかったーってなるだろ」
男「ったく、とんでもないことになっちまったなぁ……」
しばらくして――
~TV~
リポーター『○×町で、今度はピカチュウそのものの目撃情報が見受けられるようになりました』
リポーター『こちらが撮影された映像です』
リポーター『まさしく、ピカチュウそのものです』
リポーター『これで収まりかけてた○×町のピカチュウ騒動、さらに過熱するものと……』
男「な、なんだと!?」
男(せっかく沈静化してきたのに、どうして……!)
友「お前、声真似じゃあきたらず、今度はあんなもん作ったのか!?」
男「知らねーよ!」
友「ってことは、ピカチュウ騒動に乗じて、どっかのバカがよくできた人形を作ったってことか」
男「だろうな」
友「しかも、今度は実物が目撃されてるから、大勢観光客やハンターがやってくるぜ」
男「俺はどうすりゃいいんだ……!? 助けてくれっ!」
友「とにかくお前は声出すな! 出す時はなるべく声を変えるようにしろ!」
男「わ、分かった!」
町はパニックになった。
ワアァァァ……! ワアァァァ……!
「ピカチュウを探せーっ!!!」
「絶対この町にいるはずなんだ!!!」
「見つけたらゲットしてやるぜ!!!」
~TV~
リポーター『○×町は大騒ぎになっています!』
リポーター『ピカチュウ目当ての観光客が大勢押し寄せ、町じゅうが大混雑……』
リポーター『観光客の一部は暴徒化し、怪我人が出るなどの被害も……』
リポーター『あっ、ガラス瓶が飛んできました! 危ないッ!』バリィンッ
男「オイオイオイ……死人出るわコイツ」
友「ほっとけ、そのうち沈静化するさ。お前が気にすることじゃねえよ」
男「いや……俺は行く!」ガタッ
友「!」
男「だって本物のピカチュウなら……こういう時出ていくはずだから」
友「お前……ッ!」
男「じゃあ……行ってくる」
友「死ぬなよ!!!」
観光客A「オラァァァァァッ!」
観光客B「ピカチュウはどこだ!? どこにいやがる!?」
観光客C「見つけたら、10万ドルやるぞぉぉぉぉぉ!」
ドガァァァン! ガシャァァァァン! ワァァァァァ!
男(生で見ると、ホントに恐ろしいな)
男(だけど、俺にも責任はあるんだ……名乗り出るしかない!)
男(ポケモンGOならぬ……ポケモン業!)
男「――あ、あのっ! 皆さん、聞いて下さい!」
ザワザワ…… ガヤガヤ……
観光客A「ん?」
観光客B「なんだアイツ?」
観光客C「声たけーな、てかピカチュウの声っぽい」
男「実はこの町に出るピカチュウってのは、みんな俺の仕業だったんです!」
男「ほらこの通り! ピーカー! ピカチュウ! ピーカーチュー!」
男「……ね? 似てるでしょ?」
男「すんませんでしたっ!!!」
ザワザワ…… ドヨドヨ……
「なーんだ」 「そうだったのか……」 「ま、こんなに熱あげちゃったオレらも悪いな」
「仮に本物がいたとしても、そっとしとくべきだ」 「そうだな」 「帰ろうぜ!」
男「……」
男(よかった、わりとあっさり許されそうな雰囲気……)
ササッ
男「ん?」
観光客A「おい、あそこっ! ――ピカチュウがいるぞ!」
ピカチュウ「……」ササッ
男「うわっ!?」
男(あのネズミ、アニメやゲームのピカチュウにそっくりだ……!)
男(普通のネズミに色を塗ったとか、そういう感じでもない)
男(そうか、あのテレビの映像に映ってたピカチュウは誰かのイタズラじゃなくて本物……!)
男(つまり、俺じゃない“本物のピカチュウ”は存在したんだ!)
ピカチュウ「……」ササッ
男「あの~あなたはピカチュウですよね?」
男「騒ぎが収まりそうだから、みんなの前に出てきてくれたんですよね?」
ピカチュウ「……」ジリ…
男(警戒してる……)
男(だったら十八番のピカチュウの真似で話しかけてみるか)
男「ピーカー?」
「おおっ、似てるな!」 「すげー!」 「へぇ~」
ピカチュウ「ヴィイ”イ”イ”イ”イ”ガア”ア”ア”ア”ジュウ”ア”ア”ア”ア”!!!!!」
「うわぁぁぁぁっ!」 「こんなのピカチュウじゃない!」 「逃げろぉぉぉぉぉっ!」
男(“本物のピカチュウ”の声はこんなにごついのか……!)
~おわり~