1 : 以下、\... - 2017/08/09 23:03:43.146 AQmMtHEx0 1/33

部長「月乃瀬さん、俺言ったよね。同じミスは三度までなら許すから、それまでにちゃんと覚えろよって」

月乃瀬「……はい」

部長「普通さ、一回ミスしたらもう間違えないようにメモとか取るじゃん。それが真摯な姿勢ってものじゃん?」

月乃瀬「……はい」

部長「まあでも、人間って完璧じゃないからさ、もう一回ミスすることはあると思うんだ。
そこで、今度はもう絶対に間違わないぞっていう決意みたいなことをするわけ」

部長「でもさ、もうこれで何回目?
ミスの間が空くんならまだいいよ、君さ、ひと月の間に何度同じこと繰り返せば気が済むわけ?」

月乃瀬「すみません……」

部長「すみませんじゃないよ全く……」

月乃瀬「うぅ……ぐす……」

部長「あー、でた。そうやってさ、かわいく泣けば許されると思ってるんだ。
でもね、ここは去年まで君が通ってた大学じゃないの。もう君はれっきとした社会人なの」

部長「言外に舐め腐んのも大概にしろよクソガキって言ってんの気付かないの?」

月乃瀬「……す、みません。次、もう、ないよう、善処します」

元スレ
【ガヴドロ】月乃瀬「JKリフレ……?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1502287423/

2 : 以下、\... - 2017/08/09 23:04:07.319 AQmMtHEx0 2/33

部長「善処、善処って言うけどさ、君、一回その言葉の意味辞書で引いた方がいいんじゃない?」

月乃瀬「うっ……ぐすっ、ひぐっ……すみま、せんでした……」

部長「……チッ、もういいよ。
君のミスはこっちで処理しておくから、さっさと残った分片付けろ」

月乃瀬「は、い」

部長「あーあ……まーた仕事増えた……」

月乃瀬「……すみません」

部長「うるせえな! 喋ってる暇あったら動けよ!」

月乃瀬「……お腹痛い」

3 : 以下、\... - 2017/08/09 23:04:29.306 AQmMtHEx0 3/33

車掌『えー、間もなく電車が参ります。黄色い線の内側に下がってお待ちくださいませー』

月乃瀬(ここで飛び込めば楽になれるのかな……。
でも、請求が実家の両親に来るって聞いた事あるし、そんなことできないわよね)

月乃瀬(おかしいな……学生時代はちゃんとできてたんだけど、どんどんくたびれて行ってる感じがする)

月乃瀬「天使の祝福とかあればなぁ……」

月乃瀬「って、そんなのいるわけないわよね……ははっ」

モブ「あの人なんかぶつぶつ言ってね?」

モブ2「キモーい……」

月乃瀬「……はぁ」

4 : 以下、\... - 2017/08/09 23:05:08.546 AQmMtHEx0 4/33

車掌『えー、ちゅぎはー、○○○―、○○○―。
お降りの際は御忘れ物にお気をつけくだしゃい』



月乃瀬(疲れた……帰って寝よ、洗濯物は明日でいいわよね……)フラフラ

JK「エンジェル☆ハイロゥでーす。
リニューアルオープンでセール中でーす」

月乃瀬(あ? あぁ……JKリフレか。
こうやって宣伝するくらいだから性的サービスはやってないんだろうけど……)

JK「クーポン券でーす。是非ご利用くださいませー」

月乃瀬「え? あ、ああ……どうも」

月乃瀬(バイトもやる気ないわね……私男に見えるって言われたことないんだけど……)

JK「リラクゼーションサービスでーす」

月乃瀬「……リラクゼーション」

月乃瀬(使うあてもないから、お金だけは溜まってる)

月乃瀬(きっとこういうの、自暴自棄って言うんだろうなぁ……)カランカラン

店員「いらっしゃいませー」

5 : 以下、\... - 2017/08/09 23:05:32.800 AQmMtHEx0 5/33

月乃瀬(なんとなく適当な子指名しちゃった……。
個室に通されて待ってろって言われたけど……いかがわしいお店じゃないわよね、これ)

JK「はいどーもー……ってうわ、OLさん?」

月乃瀬「あ、どうも……」

月乃瀬(ちっちゃい子だな……パッと見小中学生に見える。
っていうか金髪? あれ地毛なのかしら……)

JK「あ、源氏名ガヴリールです。天使とか好きなんで、ガブリエルから取ってます。
職業は高校生やってます。ってまあJKリフレだし、高校生じゃなかったら詐欺だけどさ」

月乃瀬「う、えーと。月乃瀬です……。
新卒経理やっています」

ガヴリール「あーはいカッコいい苗字だね、よろしく。
……えっと、お姉さんレズの人?」

月乃瀬「ち、違うけど」

ガヴリール「じゃあなんでこんなとこ来たの? 基本的にキモいおっさんしか来ないけど。
キモいお姉さんなワケ?」

月乃瀬「え? んー、いや……なんでかしら。自分でもわからない」

ガヴリール「……ヤバい客引いちゃったかな」

月乃瀬(暇そうにしてたから指名したんだけど、やっぱり乱暴な接客ね……)

月乃瀬(……って、なんか落ち着いてる自分がいる。私ってM?)

6 : 以下、\... - 2017/08/09 23:05:52.163 AQmMtHEx0 6/33

月乃瀬「えーと、……やっぱりそういうサービスするの? ラップ越しにキスとか、手で、とか」

ガヴリール「風営法引っかかるわ。マッサージとか添い寝とか、そんなんだけだよ」

月乃瀬「そうよねー、安心した―……」

ガヴリール「まあ時間もあるし、さっさと横になった方がいいんじゃない?
安くない金払ってるし、なんもしないの勿体ないでしょ」

月乃瀬「あ、うん」

ガヴリール「オイルとか使うから、脱いで」

月乃瀬「下着も?」

ガヴリール「脱ぎたいなら」

月乃瀬「じゃあ上着だけでいいか……」ヌギッ

ガヴリール「はーい、じゃあそこの台にうつぶせになってー」

7 : 以下、\... - 2017/08/09 23:06:16.907 AQmMtHEx0 7/33

ガヴリール「じゃあオイル塗るよ。意外と冷たいから気をつけて」ヌリー

月乃瀬「つめたっ」

ガヴリール「……うっわ、固っ。
お姉さん整体行ったほうがいいよこれ」

月乃瀬「時間があればねー……」

ガヴリール「社会人は大変そうだなー。じゃあ、早速始めるから」

月乃瀬「う、うん……」

ガヴリール「……えぃ、ふんっ」モミュモミュ

月乃瀬(あ、言葉遣いは乱暴だけど……案外丁寧にマッサージしてくれてるんだ。
按摩の資格とか持ってるのかな……結構堂に入ってる)

ガヴリール「どうっすかねお客さん。一応さ、姉さんからお墨付き得てるんだけど」

月乃瀬「うぁー……うん、いい、すっごくいい……」フニャー

ガヴリール「腰の辺りバッキバキじゃん。飲食ってそんなに腰に来る?」モミュッ

月乃瀬「基本的に座りっぱなしで……目も痛いし足もエコノミークラス症候群一歩手前だし、腰もずっと同じ体勢だから凝って仕方ないのよ」

ガヴリール「あー、そうなんだ。将来はデスクワークはやめとくわ」グニュグニュッ

月乃瀬「そうした方がいいわよー……ぁうっ」

8 : 以下、\... - 2017/08/09 23:06:31.878 AQmMtHEx0 8/33

月乃瀬「ガヴちゃんの髪って、それ地毛?」

ガヴリール「そうだよ、親がハーフなんだ。
小学校の頃はガイジンってからかわれてた」ゴリッゴリッ

月乃瀬「それは苦労したのねー……はぅ」

月乃瀬「えぁー……ガヴちゃんって、なんでこのバイト始めたの?」

ガヴリール「えー? 初対面でそんなこと聞いちゃう?」ハニュッ

月乃瀬「いや、思いのほかちゃんとしたマッサージだし、根は真面目な子なんだろうなって」

ガヴリール「残念ながらハズレ。
単に普通のバイトとかめんどくさかったから、JKっていう称号とある程度の容姿さえあれば稼げるここが天職だったわけよ」ゴニュッゴニュッ

月乃瀬「そのうち風俗行きそうね、それ……」

ガヴリール「……それはちょっと腹立つな。えやっ!」バキバキバキッ

月乃瀬「あがっ……バキバキ鳴らさないでよ……」

ガヴリール「いくら同性でも、風俗落ちしそうはデリカシーとかに欠けると思う」マニッ

月乃瀬「うーん、そうね……ごめん」

9 : 以下、\... - 2017/08/09 23:06:43.807 AQmMtHEx0 9/33

ガヴリール「……よし、あらかた解れたかな。どう、お姉さん?」

月乃瀬「ん、ちょっと身体軽くなった感じがする」

ガヴリール「それはよかった。
……えーと、添い寝のサービスとかもあるけど、どうする?」

月乃瀬「ふぇ!?」

ガヴリール「ちょ、本気で驚くのガチっぽいから止めなよ……」

月乃瀬「え、えーと……ガヴちゃんは、どうなの?」

ガヴリール「……お姉さん処女でしょ? 彼氏もいたことないでしょ?」

月乃瀬「うがっ……! あ、あるわよ! 具体的には999人くらい!」

ガヴリール「はいはい嘘乙」ニヤニヤ

月乃瀬「が、ガヴちゃんは経験、豊富……なのよね。ここで働いてるくらいだし……」

ガヴリール「……ないよ」ムスッ

月乃瀬「え? なんて言ったの?」

ガヴリール「サービス、どうするの? って言ったの」

月乃瀬「あ、じゃあ……うん。受ける」

ガヴリール「はーい、添い寝入りましたー」

11 : 以下、\... - 2017/08/09 23:09:04.138 AQmMtHEx0 10/33

ガヴリール「温かいでしょ、これね、台に床暖房的な装置ついてんの。
普通なら『おじさんと一緒に寝られて興奮してるのかも』ってリップサービスするんだけどねー」

月乃瀬「……ぶっちゃけるわね」

ガヴリール「うーん、だってお姉さんなんか好感持てるし」

月乃瀬「え……?」

ガヴリール「疲れた目してる奴って、大抵は自分のことしか考えないんだよね。これ経験則」

月乃瀬「……仕方ないんじゃない? 自分にしか気が回らないから、疲れてるんだし」

ガヴリール「その通りだ。
でもお姉さんって、割と私を気遣ってくれたりしたわけじゃん?」

月乃瀬「いや、遣ってないわよ……?」

ガヴリール「私はそう感じたからいいの。
その……割と、嬉しかったし、さ」

月乃瀬「……そ、そっか」

12 : 以下、\... - 2017/08/09 23:09:46.062 AQmMtHEx0 11/33

ガヴリール「ほれほれ、他のおっさんみたいにママーとか言ってもいいんだぞ?」

月乃瀬「……言わないわよ」

ガヴリール「辛かったな、苦しかったな。でも今だけは平気だぞ、私はお姉さんの敵じゃないからな。味方でもないけど」ギュゥゥ

月乃瀬「……っ」

ガヴリール「ほーれ、よしよし……」ナデナデ

月乃瀬「うっ……ぐすっ……ひぐっ」

ガヴリール「え?」

月乃瀬「ひぐっ、ずずっ……うぅ、あぅぁ……」

ガヴリール「えー……ガチで泣くのかよ」

月乃瀬「うぁぁぁ……うぇ、あぁああ……」

ガヴリール「……」

ガヴリール「……泣いていいよー、怖くないぞー。
えっと、今だけはお姉さんの味方だからなー」

月乃瀬「……りがと、うぇぇぇ……」

ガヴリール「よく、頑張ったなー。偉いぞー」ナデナデ

月乃瀬「あぁああぁぁぁぁ……うぁぁぁぁぁぁ……!」

13 : 以下、\... - 2017/08/09 23:10:11.824 AQmMtHEx0 12/33

月乃瀬「え、えと部長……ここって、どうやるんでしたっけ?」

部長「あ? ここ前にも聞かなかったっけ?」

月乃瀬「す、すみません……メモ、取ったんですけど、記入漏れがあったみたいで」

部長「あのさぁ、じゃあ取ったメモを俺に目を通してもらうとかしようよ。
なに、言われなきゃそんなことも考えつかないわけ? 大学の四年間なにしてたの?」

月乃瀬「……勉強してました」

部長「そーいうことじゃなくってさ! え!? 常識だろそれくらい!
やれよ!! わかんないなら聞けよ!!」

月乃瀬「で、ですから聞きに来て……」

部長「俺がいま忙しいってことわかんないわけ!?
ほんっと新卒って頭堅いねー! あ、君だけかー!」

月乃瀬「……ごめんなさい」

部長「チッ、ああもう泣くな鬱陶しい。
山崎さん今手が空いてるから教えてもらえ」

月乃瀬「は、はい……」

部長「ほんっと使えねーな……親御さんもこんなのの為に高い学費払ったんじゃないだろ?
もっとちゃんとしろよ」

月乃瀬「……みません」

月乃瀬(お腹、痛い……)ズキッ

14 : 以下、\... - 2017/08/09 23:10:53.465 AQmMtHEx0 13/33

月乃瀬(……あーあ、死のうかな)

月乃瀬(学生時代の友達とは疎遠になっちゃったし、お父さんもお母さんも連絡ないし……)

月乃瀬(なんか一人ぼっちっていうか、孤立無援っていうか、あ、同じ意味だ)

月乃瀬「あはは、ばっかみたーい……」フラフラ

JK「エンジェル☆ハイロゥでーす」

月乃瀬(……私の味方)

月乃瀬(ガヴちゃん……)

15 : 以下、\... - 2017/08/09 23:11:16.477 AQmMtHEx0 14/33

ガヴリール「まさかのリピーター? やっぱレの字の人?」

月乃瀬「……」グスッ

ガヴリール「なんで開始早々泣きそうなんだよ……大丈夫?」

月乃瀬「……いて、いい?」

ガヴリール「ごめん、聞こえなかった。鼻声過ぎる」

月乃瀬「抱き着いて、いい?」

ガヴリール「……本来ならお金必要だけど、まあ、お姉さんならいいか」

月乃瀬「ガヴちゃん……っ!!」ギュッ

ガヴリール「……どうしたの? 辛いことでもあった?」

月乃瀬「……辞めたい、仕事、辞めたい」ナデナデ

ガヴリール「どうして辞めたいの?」

月乃瀬「味方がいないの、一人ぼっちなの……私、頭悪いから、みんな遠巻きに笑ってるの」

ガヴリール「そっか……それは、まあ、なんというか、大層お辛いことで」

月乃瀬「うぅ……ぐすっ」

ガヴリール「お姉さん存外泣き虫だな……」

ガヴリール「大丈夫だから、ここにはお姉さんを傷つける奴らはいないからなー」ナデナデ

月乃瀬「うぇぇ……」

16 : 以下、\... - 2017/08/09 23:11:54.757 AQmMtHEx0 15/33

ガヴリール「落ち着いた?」

月乃瀬「……うん」

ガヴリール「もっと、吐き出したいことあるだろ?」

月乃瀬「いいの?」

ガヴリール「まあ……私も仕事だから、お客様に満足していただくことが喜びでございますよ」

月乃瀬「うん……ありがとう」

ガヴリール「いや、仕事だって言ったじゃん」

月乃瀬「私さ、頭悪いのかな」

ガヴリール「え? いや……私お姉さんの普段とか知らないし、判断しづらいっていうか」

月乃瀬「あ、それも、そうか」

ガヴリール「学校の成績とかなら判断できるかも。まあ素人目だけど」

月乃瀬「……大学だったら、それなりに上位だった、かな」

ガヴリール「へー、お姉さん大卒なんだ。どこ大?」

月乃瀬「○△大」

ガヴリール「うへぇ、偏差値65以上のところじゃん。
私からしてみれば雲の上だよ」

ガヴリール「え、なに。そんな所の成績上位で頭が悪いとか嫌味なの?」

月乃瀬「……そ、そんなつもりじゃ」

18 : 以下、\... - 2017/08/09 23:12:17.549 AQmMtHEx0 16/33

ガヴリール「大丈夫だって、多分、そういう感じのこと言われてさ、そう思い込んでるだけだよ。
お姉さんは、お姉さんが思ってる以上に立派な人だから安心しなって……多分」

月乃瀬「ぐすっ、ガヴちゃん……」

ガヴリール「あー、もう、また泣くなって」ナデナデ

月乃瀬「うん……」

ガヴリール「……泣かないでいいからな。私の前じゃ安心しきっていいからな?」

月乃瀬「……うっ、ひっく、ひっく」

ガヴリール「あーあ……ダチョウ倶楽部かよ」クスッ

ガヴリール(鼻水とかで服汚れるけど……まーいっか)

ガヴリール「ほら、胸貸すから。路線変更で、全部吐きだしちゃったほうがいいよ」

月乃瀬「うん……うん……!」グズッ

月乃瀬「うぁああああ……あああああ……」

ガヴリール「……よーしよし」

19 : 以下、\... - 2017/08/09 23:13:30.569 AQmMtHEx0 17/33

ガヴリール「今度こそ落ち着いた?」

月乃瀬「うん……」

ガヴリール「まだぎゅってしてた方がいい?」

月乃瀬「……お願い」

ガヴリール「あいよー」

ガヴリール「……ねえお姉さん、仕事、もうちょっとだけ頑張ってみれば?」

月乃瀬「え?」

ガヴリール「そうだな……こうやって考えようか。
後一か月だけ努力してみよう。それで駄目だったら就職エージェントに泣きつこう……みたいな考え」

月乃瀬「就職エージェントって……結構条件厳しいんじゃ」

ガヴリール「お姉さんなら平気だって。だってほら、私の太鼓判とかあるしさ」

ガヴリール「あ、いや……それを自信の源にしろっていうのは流石に馬鹿か……。
ごめん、忘れて」ニヘラ

月乃瀬「……」

月乃瀬「ううん、ガヴちゃんの太鼓判、嬉しいわ」

ガヴリール「え? そう? そう言ってもらえると嬉しいな」

月乃瀬「……もうちょっとだけ頑張ってみるね」

ガヴリール「うん、頑張れ」

20 : 以下、\... - 2017/08/09 23:14:25.130 AQmMtHEx0 18/33

月乃瀬「ガヴちゃんって優しいわね」

ガヴリール「いや、仕事だし」

月乃瀬「仕事でも……愚痴聞くのって管轄外でしょ?」

ガヴリール「愚痴+慰めも入ってるね」

月乃瀬「……ガヴちゃんと会えてよかったって思う」

ガヴリール「え? あ、その、えと……」カァァ

ガヴリール「そう、言われると、なんか照れるな……えへへ」

月乃瀬「また来ていい?」

ガヴリール「ふふっ、ほどほどにしないとレズのロリコンってあだ名つけられるぞ?」

月乃瀬「もうつけられてるんじゃない?」クスッ

ガヴリール「ククッ……聞いてみるよ」

ガヴリール「まあ、お姉さんがそれでもいいなら……」

月乃瀬「?」

ガヴリール「お姉さんの駆け込み寺になるのも……や、やぶさかじゃないな……」

月乃瀬「うん……」

22 : 以下、\... - 2017/08/09 23:15:05.932 AQmMtHEx0 19/33

部長「おい月乃瀬ぇ! ここ何回目だよ! 間違ってんぞ!」

月乃瀬「え!? いや、でも、そこは山崎さんに言われた通りやったんですけど……」

部長「はぁ!? 言い訳すんじゃねえよ!
あーもう、いつもいつも出社する度にミスミスミスミス!!!
お前はあれか? 俺を苛立たせるために入社してきたスパイかなんかか!?」

月乃瀬「そ、そんなこと」

部長「だいたいお前腹立つんだよ! なんなんだその態度!
もっと上司とか敬えよ、最初澄ました顔してたくせによ、一皮むけばこれだよ!!」

部長「お前みたいなヤツな、親の教育がなってねえんだよ!
大卒ってのはこれだから……ああもうなんでお前みたいな無能だけが大学行けるんだよ!」

月乃瀬「……す、みま」フラッ

部長「そうやって傷付いたふりして、周りチラチラ窺って!?
助け舟出してもらえるの待って!!? ああ本当に卑劣だなお前は!
お前みたいな性根の腐った若い奴が、日本をどんどん駄目にしていくんだよ!
恥を知れ恥を!!!」

月乃瀬「ひぐっ……ぐすっ……」

部長「だいたいお前は」

取締役「あー……ちょっといいですか?」

部長「はひっ?」

24 : 以下、\... - 2017/08/09 23:16:29.098 AQmMtHEx0 20/33

取締役「パワハラが行われてるって報告があって来たんだけど……」

部長「パワハラ!? バカな、そんなことどこにも……」

取締役「いやー……君さ、大学云々は関係ないでしょー……」

部長「いえ、ですが」

取締役「山崎くんにも確認取ったけどさ、月乃瀬さんに間違ったやり方教えたって謝ってたよ?」

部長「え」

取締役「……パワハラの責任ってさ、本社のほうに来るのよ。
だからー……そのね、これ以上続くようならさ、君の処遇も考えなきゃいけないから」

取締役「まあ月乃瀬さんにも責任がないとは言えないけど……君、ちゃんと教えてあげた?
確か教育担当は君だったでしょ?」

部長「マニュアルを、通読させました」

取締役「それじゃ駄目だよー……マニュアル人間の誕生じゃない」

部長「で、ですが!」

取締役「もう一回ね、月乃瀬さんにちゃんと教えてあげなさい。
あのね、学歴コンプレックス丸出しの僻み根性はみっともないよ」

取締役「それじゃあ私は戻るから」

部長「……」

月乃瀬「……あ、あのー」

部長「……チッ」

25 : 以下、\... - 2017/08/09 23:17:04.175 AQmMtHEx0 21/33

部長「……で、ここはこの段階で処理してはならない。ここは知ってたよな」

月乃瀬「ま、マニュアルにはこの段階で処理するって書いてあったんですけど……」

部長「あぁ!?」

月乃瀬「あっ、す、すみません……」

部長「……ともかく、こうしておけよ。便所行ってくる」

月乃瀬「あ、はい……」

社員「月乃瀬さん月乃瀬さん」

月乃瀬「は、はい?」

社員「……えーと、部長ってああいう人だから。
またなんかやられたら、相談とか乗るからな」

社員2「ほら、乗りかかった船っていうかさ、もう一蓮托生じゃん?」

社員3「わかるよー、月乃瀬さんの気持ち。私も入社したての頃はああだったもん」

月乃瀬「え、あ……はい」

社員「ごめんな、これまで遠巻きにしてて」

社員3「そうそう、大丈夫だから大丈夫だって」

月乃瀬「……はい。ありがとう、ございます!」

26 : 以下、\... - 2017/08/09 23:17:27.151 AQmMtHEx0 22/33

月乃瀬(働くことのストレスがなくなったわけじゃないし、部長の私への攻撃が止んだわけでもない)

月乃瀬(でも、前よりずっと息がしやすくなった)

月乃瀬(心が折れて辞めていたら、きっと、今ごろ酷いことになっていたのだろう)

月乃瀬(多分、ちょっとガヴちゃんに救われたんだと思う……)

月乃瀬(お礼、言わなきゃいけないわね……)

27 : 以下、\... - 2017/08/09 23:17:43.767 AQmMtHEx0 23/33

受付「え? ガヴリール……ああ、天真さんですか。
もう辞めましたよ、一週間前に」

月乃瀬「え?」

受付「なんか親にバレたらしくて、店内にご両親登場で騒動になって」

月乃瀬「……あ、そ、そうですか」

受付「えーと、月乃瀬さん、でしたっけ」

月乃瀬「はい」

受付「……うーん、まあ、本人が良いって言ってるならいいのかなー……」

受付「あのですね、舞天高校に通ってるって、もし月乃瀬さんが来たら教えてあげて欲しいってガヴちゃん言っててですね」

受付「……まあ、伝えましたから」

月乃瀬「は、はい。どうも……」

月乃瀬(舞天高校って確か、あの駅よね……)

月乃瀬(多分……路線同じだ……)

受付「純愛ですか?」

月乃瀬「ふぇっ!?」

受付「応援はしますよ、応援は」

月乃瀬「え、ええと……はぁ、どうも……?」

28 : 以下、\... - 2017/08/09 23:18:07.936 AQmMtHEx0 24/33

部長「だからさ! もういい加減にしろって!!」

月乃瀬「……すみません、すみません!」

部長「もう辞めちまえお前なんか!!」

月乃瀬「ご、めんなさい……」グスッ

部長「……便所行ってくる。今教えたところ、死ぬ気で覚えとけよ?」

月乃瀬「はい……」

社員「……月乃瀬さん、どこわかんないの?」

月乃瀬「えと、ここです……」

社員2「あー、ここね。これさ、この間やり方変わったんだよね。
部長それ目ぇ通してないみたいでさ、わからないのが当たり前だから安心せい」

社員「まずは、ここのキーを押してから……」

月乃瀬「……はい、はい」メモメモ

29 : 以下、\... - 2017/08/09 23:18:30.181 AQmMtHEx0 25/33

月乃瀬(……やっぱり、辛い。死にたい、生きるのも仕事も辞めたい)

月乃瀬(あそこに行っても、ガヴちゃんいないのよね……)フラッ

月乃瀬「あれっ……足、力入らない」バタン

モブ「ざわざわ……なにあれ」

モブ2「えー、貧血かなにかじゃね?」

モブ3「やべーじゃん……誰か救急車呼べよ」

モブ4「……急患発見、なう。リツイートされるかなー」

月乃瀬(恥ずかしいな……こんな人前で、貧血って)

月乃瀬(立たなきゃ……いけないなー。でも、このままでもいたいような……そんな感じ)

月乃瀬(あーあ……このまま眠るように死んで行ければ、きっと幸せなんだろうな)

「……なにしてんの、お姉さん」

月乃瀬「――え?」

「なんかのパフォーマンス? 相当こっ恥ずかしいから止めたほうがいいと思うよ?」

月乃瀬「あ……ガヴ、ちゃん?」

天真「外では天真だし、それ本名じゃないし……」

天真「とりあえず、家まで来る? お姉さん、めっちゃ疲れてるみたいだしさ」

月乃瀬「……え、あ、いい、の?」

天真「お姉さんなら構わないよ。どうせ親父も母さんも帰り遅いしさ」

30 : 以下、\... - 2017/08/09 23:19:07.812 AQmMtHEx0 26/33

天真「ほら、立てる?」

月乃瀬(……不思議だ)

天真「……お姉さーん? 泣くにはまだ早いぞー?」

月乃瀬(年が一回り離れているはずなのに、本名も知らないはずなのに)

天真「ほら、ぼーっとしてないで。だいぶ目立って私も恥ずかしいんだ。
さっさと立った立った」

月乃瀬(私には、まるで、目の前の女の子が天使のように思えたのだから)

終われ

48 : 以下、\... - 2017/08/10 00:08:08.032 faDfyuo40 27/33

天真「……狭い家だけど」

月乃瀬「お邪魔、します」

天真「そこリビングだから。今からお茶持ってくるから、適当に座って待ってて」

月乃瀬「あ、うん……」

月乃瀬(人の家の匂い……嗅いだの久しぶりだな)

月乃瀬(ガヴちゃん……じゃないや、天真さんのお家。
もっと異国情緒にあふれたエキセントリックな内装かと思ったけど、普通の2Kの団地だったから、夢ってあんまりないわよね……)

天真「……ほい、お姉さん。ほうじ茶大丈夫な人?」

月乃瀬「あ、うん」

天真「……ちゃんとご飯食べてる? 鉄分とか摂取しないとだめだぞ?」

月乃瀬「えーと……一応、サプリでなら」

天真「……なにか適当に作ろうか? レバーあるし」

月乃瀬「い、いいの? だって、私、お店の外じゃあなたとは全く関係ないし……」

天真「まあ、知り合いに分類されるだろうしさ、構わないよ」

月乃瀬「じゃあ、お願いします」

天真「お願いされました」

50 : 以下、\... - 2017/08/10 00:08:37.467 faDfyuo40 28/33

月乃瀬「……」

天真「……手持ち無沙汰なら、テレビ観ていいよ」カシャッカシャッ

月乃瀬「え?」

天真「だって、ずーっとそこで座ってんのもあれじゃん? なんだったら寝転がっていいし」

月乃瀬「で、でも」

天真「両親の帰り、いつも遅いんだ。だから平気。
ほら、なんならゲームしててもいいし。お姉さんゲームとかできる?」

月乃瀬「まぁ……基本的な操作くらいならわかるけど。
結構あるわね……これ、全部天真さんの?」

天真「うん。ゲーム好きなんだ。
最近PC買ってネトゲに傾きつつあるけど」

月乃瀬「そうなんだ……。じゃあ、天真さんのご厚意に甘えるわね」

天真「……やっぱさ、天真さん禁止ね」

月乃瀬「え?」

天真「ガヴちゃんの方がしっくりくるというか、なんていうか……」

天真「私さ、源氏名考えるとき、結構悩んだんだよね。
ほら、私ってキャラメイクも一、二時間こだわり抜くタイプじゃん?
だからガヴリールって名前に愛着あるっていうかさ」

月乃瀬「……」

月乃瀬(なんだろう。本名で呼ぶなっていう、一般的には距離を感じる所なんだろうけど。
ちょっと、嬉しかったりする)

51 : 以下、\... - 2017/08/10 00:09:00.986 faDfyuo40 29/33

月乃瀬(天真さん改めガヴちゃんは、たぶんレシピ通りでしかない、素っ気ないレバニラ炒めを持って来てくれた)

ガヴリール「いや、姉さんの見よう見まねで作ってみただけなんだけどさ……」

月乃瀬「お姉さん、いるの?」

ガヴリール「いるよ。もう寮がある大学に行って、長期休みくらいにしか帰ってこないけどさ」

月乃瀬「そう……なんだ」

ガヴリール「他にも妹なんかもいる。今さ、ちょっと轢かれちゃって入院してるけど」

月乃瀬「そ、それ大丈夫なの!?」

ガヴリール「私がここでヘラヘラしてるくらいだし、大事には至らなかったよ」

ガヴリール「右足と右手折っちゃったくらいでさ、もう少ししたら退院できるって」

月乃瀬「あ、じゃあお父さんとお母さんが帰り遅いのって」

ガヴリール「うん。共働きの帰りに妹のお見舞い」

月乃瀬「そうなんだ……」

月乃瀬(もしかして、あのバイト始めたきっかけの楽だからっていうのは、自分の本心を隠すための方便……?)

ガヴリール「……お姉さん変に勘ぐってるみたいだけどさ、そんな小説みたいな理由はないからね?」

月乃瀬「え? あ、ああ、うん! そんなこと考えてないわよ」

ガヴリール「……ホントかなぁ?」

52 : 以下、\... - 2017/08/10 00:09:23.602 faDfyuo40 30/33

月乃瀬(それから、色々な話をした)

月乃瀬(ガヴちゃんは学校では、
やたらと絡んでくる娘と、性格が良いのか悪いのかわからない変態と楽しく毎日を過ごしているということ)

月乃瀬(熱を上げた客にストーキングまがいのことをされて、大事になりかかったこと)

月乃瀬(ガヴちゃんの本名が、意外とどこにでもいそうな凡庸極まりない名前であったこと)

月乃瀬(天使を好きになったきっかけが女神転生っていうゲームだっていうこと)

月乃瀬(お店とは逆で、私はひたすら聞き役に徹した。ガヴちゃんは立て板に水の如く、自分の身の上を喋り倒した)

月乃瀬(……彼女も、彼女なりの寂しさを抱えていたりするのかな、なんて考えてみたりする。
誰もがそうであるように、彼女もきっとそうなのだろう)

月乃瀬(そう考えた瞬間、なにかがスッと取り払われたのがわかった)

53 : 以下、\... - 2017/08/10 00:09:38.009 faDfyuo40 31/33

ガヴリール「……やべ、そろそろ親父たち帰って来るわ」

月乃瀬「あ、うん。本当にありがとね、色々ごちそうになって。助かったわ」

ガヴリール「うん、まあ……別にそこまで気にしなくてもいいから」

月乃瀬「そ、それじゃあ、そろそろお暇するから……」

ガヴリール「ん……」

月乃瀬「……」

ガヴリール「……」

月乃瀬「ケータイ、持ってる?」

ガヴリール「今のご時世で逆にケータイ持ってない方が珍しいだろ」

月乃瀬「そうよね……ふふっ」

ガヴリール「なに?」

月乃瀬「番号、交換しない?」

ガヴリール「……あのさ」

月乃瀬「ん?」

ガヴリール「……まあいいや。また帰りに倒れてるお姉さん発見するの嫌だもんな」

月乃瀬「……これ、って」

ガヴリール「み、見ればわかるだろ。合鍵だよ」

54 : 以下、\... - 2017/08/10 00:10:15.988 faDfyuo40 32/33

月乃瀬「え? え? でも、私、厳密には他人だし……」

ガヴリール「だーかーらーさー……」

ガヴリール「またお姉さんに倒れられてもこっちが迷惑なの。
ああやって私の前で同情してくれみたいなことされてさ、情を持つなって言う方が無理だって」

ガヴリール「ん、だから。
本当につらくなったときさ、事前に連絡入れてくれれば、私、家にいるから」

月乃瀬「……あ」

ガヴリール「ほ、ほらスマホ出せ! あれだよ、あれ……LINEの、なんか振り合うやつ!」

月乃瀬「え? なにそれ?」

ガヴリール「はぁ……? うわー……LINE出荷時の状態じゃん……どうやって連絡取り合ってたの?」

月乃瀬「えと……G-mailと電話で」

ガヴリール「……ほら、設定終わったから。さっさと時代に追いつけ」

月乃瀬「こ、これ振ればいいの? 振ればいいのね?」

ガヴリール「そうだよ。こう、野球のボール投げるみたいに」

月乃瀬「わ、わかったわ!」

55 : 以下、\... - 2017/08/10 00:10:30.460 faDfyuo40 33/33

月乃瀬「……あ、りがとね」

ガヴリール「うん。まあ、いいけどね」

ガヴリール「えーと……ほらほら、呆けてないでさっさと帰れ!
……あれだぞ? 下手すれば警察沙汰だぞ?」

月乃瀬「……ふふっ、それは、嫌ね」

ガヴリール「うん、だからさっさと行け」

月乃瀬「……うん」

月乃瀬「ねえガヴちゃん」

ガヴリール「なに?」

月乃瀬「合鍵、ありがと。大切にする」

ガヴリール「……まぁ、家の鍵だし、勝手に無くされたらこっちが被害に遭うから、その辺り弁えて慎重に」

月乃瀬「それじゃあ、また今度ね」

ガヴリール「おいおい、また疲れ切る前提かよ」

月乃瀬「……うん。また、お願いするから」

ガヴリール「……はいはい。それじゃあね、お姉さん」

今度こそ終われ

記事をツイートする 記事をはてブする