1 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:07:21.285 lrpf5que0 1/28

 
-ヴィーネの家-



 ぎゅぅ

タプリス「えへへ……月乃瀬先輩……」スリスリ

ヴィーネ「……」


 ぎゅぅぅ

タプリス「先輩……せんぱぁい……」スリスリ

ヴィーネ「……」



ヴィーネ(……どうして)


ヴィーネ(どうしてこうなった)


元スレ
ガヴリール「千咲ちゃん、月乃瀬先輩の角を粉末にして飲まされる」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1493899641/

2 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:10:02.744 lrpf5que0 2/28

 
- 一時間前 ヴィーネの家 -


タプリス「はぁ、やっと終わりましたぁ」

ヴィーネ「お疲れ様、タプちゃん。はいこれ、お茶」

タプリス「あ、ありがとうございます、月乃瀬先輩!」


タプリス「先輩が丁寧に教えてくれたおかげで」

タプリス「次のテストも、なんとかなりそうです」

ヴィーネ「ううん。タプちゃんが自分で頑張ったのよ。きっと良い点数も取れるわ」

タプリス「あはは、だと良いんですけどね」


タプリス「あ、でも、なんか。頭を使いすぎたせいでしょうか」

タプリス「少し頭痛がしてきました」

ヴィーネ「あら、大変。頭痛薬、出してあげる」

タプリス「そ、そんな、お気遣いなく!」

ヴィーネ「いいからいいから、って、あれ……ない」ゴソゴソ

ヴィーネ「あ……先週使い切って、買い足すのを忘れてた」

タプリス「本当に大丈夫ですから! お気持ちだけで十分です」

ヴィーネ「痛みがあるって言ってるのに、放ってなんておけないわ」


ヴィーネ「……そうだ、あれを試してみましょう」

タプリス「あれ?」

4 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:11:57.438 lrpf5que0 3/28

 
 ボキッ ゴリゴリゴリッ


タプリス「つ、月乃瀬先輩!? いったい何を!?」

ヴィーネ「ああ、これ? 私の角を粉末にしているのよ」

タプリス「そ、そんなことして大丈夫なんですか!? 痛みとかは!?」

ヴィーネ「大丈夫大丈夫。痛みはないし、一晩ですぐに生えてくるから」

タプリス「で、でも、一体なぜそんなことを?」

ヴィーネ「私の角にはね、粉末にして飲むと、頭痛を抑える効能があるのよ」

タプリス「えっ、本当ですか? それはすごいです……」

ヴィーネ「まあ悪魔の角を飲むなんて、いい気分はしないでしょうけど」

ヴィーネ「市販の頭痛薬より、ずっと胃に優しいから、おすすめなの」

タプリス「優しさ半分ところじゃないですね……」

タプリス「先輩の優しさが100%ですから、よく効きそうです」


タプリス「でもどうして、市販薬も家に置いていたんですか?」

ヴィーネ「私自身はもう、子供の頃に飲みすぎてしまって」

ヴィーネ「ほとんど効かなくなってしまったのよ」

タプリス「そうですか……それは残念ですね」


ヴィーネ「さて、できたっと。これをお茶に混ぜて飲んでみて」

タプリス「は、はい。いただきます」

 コクコクコクッ
 

6 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:14:26.384 lrpf5que0 4/28

 
タプリス(綺麗にお茶に溶けて、特に味の変化などもないですね)

タプリス(飲み心地も良いなんて、さすが月乃瀬先輩です)


タプリス「あ、あれ。頭痛がだんだんなくなって……」

ヴィーネ「さっそく効いてきたみたいね」

タプリス「すごい、まだ数分しか経ってないのに。即効性もあるだなんて」

タプリス「ありがとうございます、月乃瀬先輩!」

ヴィーネ「楽になったみたいで、本当に良かった」ニコッ


タプリス「……ッ」トゥンク

ヴィーネ「タプちゃん? どうしたの?」

9 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:16:33.615 lrpf5que0 5/28

 
タプリス「えっ、い、いえ! な、何でもないです!」

ヴィーネ「そ、そう?」


タプリス(な、なんでしょう、これ……)

タプリス(先輩の笑顔を見たら、急に胸が苦しく……)

タプリス(つ、月乃瀬先輩の笑顔は、とても可愛らしいと思いますけど)

タプリス(今まで、こんな気持ちになったことは……、一度も)


タプリス(それになんだか、月乃瀬先輩から目が離せません……)

タプリス「……ッ」

ヴィーネ「タプちゃん?」

タプリス「本当に何でもないですから! お気になさらずっ」

ヴィーネ「だ、大丈夫? あ、まさか、まだ頭痛が残っているんじゃ」

タプリス「え? あ……そ、そうかもしれませんね」

ヴィーネ「粉末の量が足りなかったのかも。もう少し飲んでみましょうか」

タプリス「は、はい、いただきます……」

 コクコクコクッ
 

15 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:19:53.650 lrpf5que0 6/28

 
タプリス(だ、だめです。気持ちが抑えられません……)

タプリス(月乃瀬先輩の、もっと近くにいって、そして……)

タプリス(ふ、触れて、みたい……)

タプリス(って、わたしは何を考えているんですか!?)

ヴィーネ「どう? 少しは良くなったかしら」ズイッ

タプリス「あっ、だめ、だめです先輩っ、近づかないでください!」

ヴィーネ「えっ、どうして? ただ熱を測ろうとしただけよ?」

タプリス「な、なんかっ……わたし、変なんです!!」

ヴィーネ「ふふっ、おかしなタプちゃん。別に何も変じゃないわよ?」

ヴィーネ「ほら、少しだけおでこ、触らせてね」

 ぴとっ

タプリス「あっ、あぁっ……」

タプリス(せ、先輩の手が、わたしのおでこにっ……)

タプリス(だめ、もう、我慢が……)

17 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:23:54.190 lrpf5que0 7/28

 
 ぎゅっ

ヴィーネ「タ、タプちゃん? 私の手を握ったりして、何を……」

タプリス「はぁっ……はぁ……」

タプリス(先輩の、手……ああ、すべすべしていて、気持ちいいです……)

タプリス「はっ!?」

 パッ

タプリス「ご、ごめんなさい! 先輩!」

ヴィーネ「う、ううん。大丈夫だけど、いったいどうしたの?」

ヴィーネ「それに、顔も真っ赤にして。あ、やっぱり熱が……」

タプリス「ほ、本当にごめんなさい! わたし、そろそろ失礼します!」

ヴィーネ「だ、だめよ!」

タプリス「えっ?」

ヴィーネ「こんなに具合悪そうなタプちゃんを、そのまま帰せないわ」

ヴィーネ「ほら、ベッドに横になりましょう?」

タプリス「ご、ご心配いただけるのはうれしいですけど……」

タプリス「わたし、やっぱりいつもと違って、変で……」

ヴィーネ「熱があるときなんて、たいてい誰でも変になるわよ」

タプリス「で、でしたら……せめて、わたしを縛ってください!」

18 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:26:38.656 lrpf5que0 8/28

 
ヴィーネ「え? し、縛る?」

タプリス「動けなくしないと、わたし、先輩に何をするか……」

ヴィーネ「ふふっ、なにそれ。今の流行りか何か?」

タプリス「ち、違います! わたし、本気で!」

ヴィーネ「そうだ。実は私の角、解熱効果も少しあるのよ」

ヴィーネ「ちょっと待っててね」

ヴィーネ「……そうだ。どうせだし、限界まで作り置きしておきましょう」

 ゴリゴリゴリッ

ヴィーネ「よし、できたっと、残りは瓶にしまって……」

ヴィーネ「タプちゃん、はい。少し多めに白湯に混ぜたから、ゆっくり飲んでね」

タプリス「は、はい。いただきます……」


 コクコクコクコクッ


――――――

――――

――


 ぎゅぅ

タプリス「えへへ……月乃瀬先輩ぃ……」スリスリ

ヴィーネ「……」

ヴィーネ(こうして、今に至る、わけだけど……)


ヴィーネ(抱きつきたくなる……症状なんて、聞いたことないわ)

ヴィーネ(も、もしかして、私の角のせいかしら……)

19 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:32:22.947 lrpf5que0 9/28

 
ヴィーネ(でも、こんな副作用、今まで起きたことなんて……)

ヴィーネ(悪魔じゃないと、こうなってしまうとか?)


 ぎゅぅぅ

ヴィーネ「ひゃぅ! タ、タプちゃん? どうしたの?」

タプリス「あ、あの……わたしを無理やり、離してください……」

ヴィーネ「えっ?」

タプリス「ごめんなさい、どうしても、離れることができなくて……」

タプリス「こんなの、気持ち悪いですよね……」

ヴィーネ「う、ううん! 少し驚いただけで、そんなことないから」

タプリス「……お優しい先輩を、苦しめたくないんです」

タプリス「お願いです、先輩。正直に言ってください……」

タプリス「わたし、こうしてちゃ……、だ、だめですよね?」ポロポロ

ヴィーネ「……ッッ」カァァ


ヴィーネ(なっ!? ななっ……か、かわいいっ。かわいすぎるっ)

ヴィーネ(こんなにドキドキするの、久しぶりかも……)

タプリス「ごめっ……ぐすっ……ごめんなさい……」

ヴィーネ「な、泣かないで、タプちゃん。離したりなんかしないし」

ヴィーネ「このままでも全然、構わないわ」

タプリス「ほ、本当ですか?」

ヴィーネ「ええ」

22 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:35:45.582 lrpf5que0 10/28

 
タプリス「う、嬉しいです、月乃瀬先輩……」スリスリ

ヴィーネ「……」ナデナデ

ヴィーネ(たまにはこうやって、タプちゃんを愛でたって大丈夫よね)

ヴィーネ(そ、そう。先輩と後輩のスキンシップよ、スキンシップ)


――

ヴィーネ(もう何時間経ったかな……おなかもちょっと空いてきたかも)

ヴィーネ「タプちゃん、そろそろごはんを作りたいから、一度離れてもいい?」

タプリス「あっ……」

ヴィーネ「ダメかな?」

タプリス「……ぐすっ」ポロポロ

ヴィーネ「あー、うそうそっ! ごめんね! 泣かないで!」

ヴィーネ「離れないから、うん! このままでいるからね!」

タプリス「……」ギュゥ

ヴィーネ(か、かわいすぎだけど、これは困ったわね……)

24 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:38:40.680 lrpf5que0 11/28

 
-ヴィーネの家 キッチン-


ヴィーネ(なんとか、ここまでやってきたけど……)

タプリス「……」ギュゥ

ヴィーネ(しがみついてるタプちゃんはかわいい)

ヴィーネ(でも、少し動きづらい……かな)


ヴィーネ(それにしても……)

ヴィーネ(キッチンで調理中に、後ろから抱きつかれるのって)

ヴィーネ(ちょっとドキドキする)


――

ヴィーネ「じゃあ、いただきます」

タプリス「……」ギュゥ

ヴィーネ「タプちゃん。手を離さないと、食べられないわよ」

タプリス「……」フルフル

ヴィーネ(次は駄々っ子モードなのかしら。かわいいけど)

ヴィーネ「ふふっ。もう、しょうがないわね。ほら、あーん」

タプリス「……」パクッ

ヴィーネ「おいしい?」

タプリス「……」コクコク

ヴィーネ「よかった、たくさん食べてね」

26 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:41:39.085 lrpf5que0 12/28

 
タプリス「……」ウトウト

ヴィーネ「たくさん食べたら、眠くなってきちゃった?」

タプリス「……」コクコク

ヴィーネ「じゃあ少し横になりましょうか、私も一緒について行くからね」


 ぎゅぅぅ

タプリス「……」スリスリ

ヴィーネ「ふふっ、タプちゃん、くすぐったい」ナデナデ

ヴィーネ(きっと……幼い妹がいたら、こんな風なのかしらね)


ヴィーネ(思えば……こうやって抱き合って、誰かのぬくもりを感じるのなんて)

ヴィーネ(いつぶりかしら。私が小さかったころ以来?)

ヴィーネ(それになんだろう、すごく安心する)

ヴィーネ(別にホームシックってわけじゃないけど)

ヴィーネ(ちょっとお母さんに会いたくなっちゃった)

27 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:44:37.240 lrpf5que0 13/28

 
タプリス「すぅ……すぅ……」

ヴィーネ「タプちゃん、寝ちゃった……みたいね」

ヴィーネ(さてと、じゃあ私は、買い物にでも行こうかな)

ヴィーネ(よく眠っているし、大丈夫よね)

 バタンッ


――

タプリス「……ん」

タプリス「あれ、月乃瀬先輩……?」

タプリス「先輩? ど、どこですか? 先輩?」

 ガバッ

タプリス「いや……、どこ? どこにいったんですか?」

 タッタッタッ

タプリス「家のどこにもいない……そんな……」

タプリス「やだよぉ…………」ポロポロ


タプリス「いやぁっ、わたしを一人に、一人にしないで……」

タプリス「……」

タプリス「……行かないと」

タプリス「先輩のところに行かないと……」


 ゴトンッ

タプリス「この瓶は……」

28 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:47:48.133 lrpf5que0 14/28

 
 ガチャ

ヴィーネ「ただいまー」

ヴィーネ(タプちゃんはまだ寝てるかな……)

ヴィーネ「って、ベッドにいない……トイレとかかな」


ヴィーネ「い、家のどこにもいない……まさか」

ヴィーネ「私を探しに外へ? ど、どうしよう……あんな状態で?」

ヴィーネ「と、とりあえず、みんなに連絡を……」



-数時間後 ガヴリールの家-


ヴィーネ「タ、タプちゃんがここに来たって本当!?」

ガヴリール「……ああ、さっきここに来たぞ」

ヴィーネ「それで、その後、どこに行ったか知らない?」

ガヴリール「……そこまでは知らない」

ヴィーネ「そ、そう。ありがとう、それじゃ私は――」

ガヴリール「……それよりも」

 ガシッ ドンッ

ヴィーネ「え? ガ、ガヴ?」

ガヴリール「なぁヴィーネ、スケベしようや……」

30 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:51:23.555 lrpf5que0 15/28

 
ヴィーネ「は、はぁ!? ガヴ、なに言って!?」

ガヴリール「お前が、この部屋に入ってきた時点で」

ガヴリール「もうずっと我慢できなかったんだよ」グッ

ヴィーネ「な、ななっ!? ちょ、服脱がせようとしないでっ!」

ガヴリール「だって、そんな姿して……絶対、私のこと誘ってるじゃないか」

ヴィーネ「そんな姿ってなに!? いつもと変わらないんだけど!」

ガヴリール「いいだろ? ヴィーネ……」

ヴィーネ「だ、だめっ、だめぇぇぇっ!!」



-舞天市 水道局-

 シュンッ


ラフィエル「……タプちゃん、本当に良いのですね?」

タプリス「はい、これで、みんなが幸せになれますから」

ラフィエル「そうですかそうですかぁ」

ラフィエル「……それでは、その瓶をこちらに」

タプリス「どうぞ」


 ザバァッ

ラフィエル「崇高なるヴィーネ様のために」

タプリス「ヴィーネ様のために」

31 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:53:54.128 lrpf5que0 16/28

 
-ヴィーネの家-


ヴィーネ(とりあえず、ガヴは縛り上げてきたけど……)

ヴィーネ(って、やっぱり。私の角の粉末が入った瓶がなくなってる)

ヴィーネ(タプちゃんが持っていったの……よね)

ヴィーネ(どうしてそんなことを……)

ヴィーネ(ラフィとサターニャは連絡がつかないし)

ヴィーネ(と、とにかく、タプちゃんを探しに行かないと)



-住宅街-


 タッタッタッ

ヴィーネ(タ、タプちゃん、いったいどこに……)

 ドンッ

女の子「きゃっ」

ヴィーネ「あ、ごめんなさい! だ、大丈夫? 怪我はない?」

女の子「……」

ヴィーネ「いけない、打ちどころが悪かったのかしら……」

女の子「……」ギュゥ

ヴィーネ「えっ?」

女の子「……」スリスリ

ヴィーネ「な、なに……ど、どうしたの?」

32 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:57:00.505 lrpf5que0 17/28

 
 ドドドドドッ

ヴィーネ「えっ、なんでこんなに人が、集まって……」


街の人A「おお、あのお方は……」

街の人B「も、もう我慢できない……」


ヴィーネ「な、何か様子が……おかしいわ」

女の子「おねーさん」スリスリ

ヴィーネ「え? な、なに?」

女の子「……すけべ、しようや」

ヴィーネ「ひっ!!」

 ドンッ

女の子「いたっ」

ヴィーネ「ごめんね! でも、私を逃がしてっ!!」

33 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 21:59:32.718 lrpf5que0 18/28

 
 タッタッタッ

ヴィーネ「ま、まさか……まさかみんな……」

ヴィーネ「私の角の粉末を、飲んでしまったの?」

ヴィーネ「でも、こんな短時間にどうやって……」


ラフィエル「いました、みなさん! ヴィーネ様です!」


 ドドドドドドッ

ヴィーネ「ラ、ラフィ!?」

ヴィーネ(あ、あの子も粉末を飲んじゃったの!?)

ヴィーネ(じゃあ、この拡散はラフィの仕業よね、きっと……)

ヴィーネ(な、なんてことを……)

35 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:02:30.756 lrpf5que0 19/28

 
-工事現場-


 ドドドドドッ

 『ヴィーネ様! ヴィーネ様! ヴィーネ様!』

 『ヴィーネ様! ヴィーネ様! ヴィーラ様!』

 『ヴィーネ様! ヴィーネ様! ヴィーネ様!』


ヴィーネ「に、逃げ場が……もう……」

タプリス「もう観念してください、月乃瀬先輩」

ヴィーネ「タ、タプちゃん!? ど、どうしてこんなことを!」

タプリス「どうしてって、決まっているじゃないですか」

タプリス「わたし、先輩をぎゅぅってして……とても幸せでした」

タプリス「だからそれを、他のみんなにも教えてあげたかったんです」

ヴィーネ「そ、そんな……」


 ジリッ ジリジリッ

ヴィーネ(一般の人に、怪我をさせるわけにはいかない)

ヴィーネ(でも、タプちゃんにだけなら、大歓迎だけど……)

ヴィーネ(こんな見ず知らずの人たちに、抱き締められるなんて絶対に嫌!)


タプリス「さぁ、みなさん。抱き締めちゃってください!」


 『『『ヴィーネ様ぁ!!!』』』

 ガバァッ


ヴィーネ(た、助けて、誰かっ! お母さんっ!)

36 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:05:31.368 lrpf5que0 20/28

 
――――――

――――

――

ヴィーネ母「ヴィネット、よく聞きなさい」

幼ヴィーネ「なーに?」

ヴィーネ母「もし、私たちの角を相手に飲ませる時はね」

ヴィーネ母「必ず左右の角を均等に混ぜるのよ」

幼ヴィーネ「どーして?」

ヴィーネ母「そうしないとね、体に悪い成分が中和されなくて」

ヴィーネ母「飲んだ人を苦しめちゃうことがあるの」

幼ヴィーネ「んー、よくわかんない」

ヴィーネ母「ふふっ、まだ、ヴィネットには早かったかもしれないわね」

ヴィーネ母「でもこれだけは覚えておいてね」

ヴィーネ母「左右の角を均等に、よ。わかった?」

幼ヴィーネ「うん、わかった!」

――

――――

――――――
 

37 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:08:45.966 lrpf5que0 21/28

 
ヴィーネ(そ、そうだ! 思い出した!!)


 ボキィッ ゴリゴリゴリッ

ヴィーネ「はぁぁぁぁっ!! マッハゴリゴリィ!!」

タプリス「つ、月乃瀬先輩!? 角を折って、何を……」


ヴィーネ「よし、できた! いくわよ、せーのっ!!」

 ブンッ サラサラァ

タプリス「なっ!? ゴホッ、ゴホッ! 目くらましのつもりですか!」

ヴィーネ「違うわっ! みんな! これで正気に戻りなさい!!」

 ブンッ サラサラァ

 『ヴィーネ様ぁ……って、あれ?』

 『ヴィーネ……ん? どうしてこんなところに……』

 『わ、私いったい何を……』


タプリス「みなさんが元に戻っていく、どうして……」

ヴィーネ「タプちゃんには粉末を……たくさん飲ませてしまったわね」

ヴィーネ「本当にごめんなさい、これであなたも……」

 スッ

タプリス「あぐっ……」

 バタンッ

ヴィーネ「元通りだから」

38 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:11:35.077 lrpf5que0 22/28

 
-数日後 ヴィーネの家-


ヴィーネ(私の角粉ばら撒き事件のあと)

ヴィーネ(ラフィにはもう一度、水道局に飛んでもらい、逆の角の粉を水に混ぜて)

ヴィーネ(街中の人たちの中和は、ほぼ完了)

ヴィーネ(元はと言えば、私がお母さんの言いつけを守らなかったせいなので)

ヴィーネ(自業自得、といったところかしら)


タプリス「月乃瀬先輩、本当にごめんなさい!」

ヴィーネ「もう、そんなに謝らなくてもいいのよ。元は私が悪いんだし」


ヴィーネ(タプちゃんはあれから毎日、家に来て、私に謝り続けている)

ヴィーネ(……あれだけの量を飲んだのに)

ヴィーネ(ちょっと甘えん坊になる、くらいで済んでいるということは)

ヴィーネ(よほど、元が良い子なんだっていうのが、よくわかるわね)

ヴィーネ(欲望丸出しで襲ってきた、誰かさんとは違って……)


タプリス「ですけど、わたしがやってしまったことは事実ですし……」

ヴィーネ(あぁ……、どうしてくれよう、この良い子すぎる天使ちゃんは)

40 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:14:34.402 lrpf5que0 23/28

 
ヴィーネ「ねぇ、タプちゃん」

タプリス「は、はい」

ヴィーネ「その……粉末を飲んで、私に抱きついてた時のこと、覚えてる?」

タプリス「き、記憶ははっきりとあります……」

ヴィーネ「正直……どうだったかしら?」

タプリス「い、今思うと恥ずかしいですけど、全然、嫌とかじゃなくて!」

タプリス「むしろ……その、心地よかったなぁって、思います」

タプリス「そ、それは今も変わらないです!」


ヴィーネ「私もね、あの時のタプちゃんの抱き心地が忘れられないというか」

ヴィーネ「いろいろ疲れちゃって、ぬくもり恋しいときがあるのよ」

ヴィーネ「だから、タプちゃんが良かったら、なんだけど」

ヴィーネ「たまに……その、ああしてもいいかしら」

タプリス「あの……えっと……」

ヴィーネ「も、もちろん、嫌だったら断ってくれていいの」

タプリス「い、いえ! だ、大丈夫ですっ、むしろ、その……」

タプリス「わたしからも、お願いしたいといいますか……」

41 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:17:53.913 lrpf5que0 24/28

 
ヴィーネ「そ、そっか。じゃあさ……」

ヴィーネ「ちょうど今、少し疲れちゃってて、だから……」

タプリス「あ、はい。わ、わかりましたっ」

タプリス「では……し、失礼しますね」

 ぎゅぅ

ヴィーネ「……」

タプリス「……」

ヴィーネ(はぁ、この抱き心地、やっぱり癒やされるわね……)

タプリス「ど、どうですか?」

ヴィーネ「うん。体中の疲れが、抜けていく感じ……」

タプリス「そ、それなら、よかったです……」


 バタンッ

ヴィーネ「……」ビクッ

 サッ

サターニャ「ヴィネット! 聞いたわよ! って……」

サターニャ「なに、二人で正座してるの」

ヴィーネ「ちょっと! いきなり入ってこないでよ、サターニャ!」

サターニャ「はぁ? あんたが呼んだんでしょうが」

42 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:20:31.378 lrpf5que0 25/28

 
サターニャ「角にそんな効果があるなんて、知らなかったわ」

ヴィーネ「え、そうなの?」

サターニャ「ええ」

ヴィーネ「へぇ、知る悪魔ぞ知る、なのかしら」

ヴィーネ(それにあの時、サターニャは普通だったって言うし)

ヴィーネ(悪魔には、耐性があることもわかったわね)

サターニャ「ふふっ。にしても、良いことを聞いたわ」

ヴィーネ「ちょっとサターニャ、あまり変なことするんじゃないわよ」

サターニャ「わかってるわよ。それじゃあ、私は急用ができたから!」



 バタンッ

ヴィーネ「もう……台風みたいな子ね……」

タプリス「……」

43 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:23:34.908 lrpf5que0 26/28

 
ヴィーネ「タプちゃん?」

タプリス「へっ、な、なんですか、月乃瀬先輩?」

ヴィーネ「どうしたの? ぼーっとして」

タプリス「いえっ、その……えっと……」カァァ

ヴィーネ「も、もしかして……さっきの……」

ヴィーネ「中断しちゃって、寂しかったとか?」

タプリス「……」コクッ

ヴィーネ「か……かわいいっ!!」


 ぎゅぅぅ

タプリス「せ、先輩……?」

ヴィーネ「今日は時間の許す限り、ずっと抱きしめてあげるからっ」

タプリス「えへへ、望むところです」

ヴィーネ「ぎゅぅぅぅっ」

タプリス「あははっ、せんぱいっ、苦しいですよぉ」

タプリス「じゃあ、わたしも……ぎゅぅぅぅっ」

ヴィーネ「あはははっ」

44 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:26:43.881 lrpf5que0 27/28

 
-数日後 サターニャの家-


サターニャ「できたわ、私の角の粉末を仕込んだメロンパン」

サターニャ「これを天使どもに食べさせれば……」

サターニャ「私の下僕として、一生こき使うことができる!」

サターニャ「くくっ、なーはっはっはっ!」



-ガヴリールの家-


ガヴリール「お前がおみやげを持ってくるなんて、珍しいな」

タプリス「大量のメロンパンですね」

サターニャ「ちょっと、たくさん貰いすぎてしまってね」

サターニャ「まぁ敵に塩を送るってやつよ」

ガヴリール「腐ってないだろうな」

タプリス「怪しいです……」

サターニャ「失礼ね! 産地直送の出来立てよ!」

サターニャ「ほら、私が先に食べてあげるわ!」モグモグ


ガヴリール「まぁ、大丈夫そうだな。じゃあ、もらうぞ」

タプリス「い、いただきます」


サターニャ(くっくっくっ、食べてるわね。作戦大成功だわ!)

47 : 以下、\... - 2017/05/04(木) 22:29:32.774 lrpf5que0 28/28

 
-数時間後 ガヴリールの家-


ガヴリール「おらぁ! 進め進め!」

 ビシッ パカパカ

サターニャ「も、もう許して!」

サターニャ(な、何よこれ! は、話と違うじゃない!)


タプリス「わたしの馬になりなさいっ! ですぅ!」


 ビシッ ビシッ

サターニャ「ど、どうして、私の角だけ……」



ガヴリール「ひぃやっはぁぁぁぁぁっっ!!!」

タプリス「あははははははははっ!!!」



サターニャ「こんな、ドSになるのよぉぉぉぉっ!!」



おしまい

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