ガヴリール「……」カチカチ
ヴィーネ「……」
ガヴリール「……」アタマポリポリ
ヴィーネ「ねえ、ガヴ」
ガヴリール「ん?なんだよヴィーネ」
ヴィーネ「長くなってきたし、あんたそろそろ髪切ったら?」
ガヴリール「別にいいじゃん……めんどくさいし、そんなことにお金使いたくないし」
ヴィーネ「女の子なんだし、もっと気を遣わないとだめよ」
ガヴリール「めんどくさ……あ、そうだ。ヴィーネが切ってくれない?」
ヴィーネ「えっ?」キョトン
元スレ
ガヴリール「ヴィーネに髪を切ってもらおうかな」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1500381993/
ガヴリール「私はお金をかけずに、しかも外に出る労力を使わずに髪を切れる」
ガヴリール「ヴィーネは私の髪にたっぷり触れる」
ガヴリール「これぞウィンウィンの関係だ」
ヴィーネ「……なんか腑に落ちないところがあるんだけど」
ヴィーネ「っていうか私、髪なんて切ったことないわよ?」
ガヴリール「大丈夫、ちょっと全体的に梳いて、前髪を揃えてくれればいいから」
ヴィーネ「でも……失敗したら怖いし」
ガヴリール「失敗しても別に恨みはしないから、まあ気軽にちょちょいとやっちゃってよ」
ヴィーネ「そう……じゃあ、やってみようかしら」
◆
ガヴリール「櫛、髪切りはさみ、梳きばさみ、ヘアピンっと」ズラーッ
ガヴリール「こんなもんでいいだろ」
ヴィーネ「ずいぶん用意がいいのね……」
ガヴリール「天界にいたころお母さんがよく切ってくれててさ。その時使ってたのを持ってきたわけ」
ガヴリール「いまでもたまに自分で切ったりしてるし」
ヴィーネ「へえ……。え、じゃあ今回も自分で切ればいいじゃない」
ガヴリール「それすらもめんどくさい……」ダラーン
ヴィーネ「あんたねえ……」ハァ
ガヴリール「で、問題はどこで切るかってことだけど」
ゴチャゴチャ…
ヴィーネ「この散らかった部屋じゃ無理ね……」
ガヴリール「別にいいじゃん、切った後で掃除すれば一石二鳥でしょ」
ヴィーネ「私が切りにくいのよ!」
ガヴリール「しょうがないな……じゃ、あそこしかないな」
ヴィーネ「?」
ガラガラッ
ガヴリール「ここなら部屋より片付いてるし、後片付けしやすいだろ」
ヴィーネ「洗面所ね。たしかに片付いてはいるけど……」
ガヴリール「おあつらえ向きに鏡もあるし、ちょうどいいだろ」
ヴィーネ「ええ、そうね」
ヴィーネ「……」ジーッ
ヴィーネ(私とガヴって、こんなに身長差あったんだ……ガヴちっちゃかわいい……)
ガヴリール「ヴィーネ?どうかした?」
ヴィーネ「なっ、なんでもないわよ!早く切りましょ!」アセアセ
ヴィーネ「洗面台と床に新聞紙を敷いて……」バサッ
ヴィーネ「鏡の正面に椅子を置いて、と」
ヴィーネ「これで切った髪の毛をあとでまとめて捨てられるわね」
ヴィーネ「排水溝に髪の毛を流すと詰まっちゃうからね、絶対やめなさいよ?」
ガヴリール「なるほどー。主婦の知恵だな」
ヴィーネ「だれが主婦よ……」
ヴィーネ「大き目のビニール袋ってあるかしら?」
ガヴリール「ゴミ袋用のポリ袋でよかったら……このへんに」ガサガサ
ガヴリール「お、あったあった。ほら」ポイッ
ヴィーネ「ありがと。これの底の部分を切って~……」チョキチョキ
ヴィーネ「頭からかぶせて、裾を折り返せば……ほら!ヘアーエプロンの完成!」
ガヴリール「へあー……なんて?」
ヴィーネ「髪の毛が服とかにつかないようにする道具よ」
ガヴリール「ほう……便利だけど、なんか子ども扱いされてるみたいだな」
ヴィーネ「あ、ごめん……嫌だった?」
ガヴリール「ううん、別に? 頼んだのは私なんからさ、嫌なわけないよ」
ヴィーネ「そう? ……よかった」
ヴィーネ「それじゃ、始めるわよ」
ガヴリール「お願いしますよ、店長さん」チョコン
ヴィーネ(椅子に座ると、ますますちっちゃいわね……)マジマジ
ガヴリール「……なんか失礼なこと考えなかったか?」
ヴィーネ「え、いや、そんなことないけど……」アセアセ
ガヴリール「急かすようで悪いけど、このあとネトゲのイベントがあるんだよね」
ヴィーネ「……はいはい、注文の多いお客さんね」
ヴィーネ「ふんふんふふ~ん♪」
ヴィーネ「お櫛で御髪(おぐし)を梳かします~♪」
ヴィーネ「ぐっしぐっしぐっし~♪」
ガヴリール(また変な歌を……)
ヴィーネ「……もう、ろくに手入れしてないからボサボサじゃないの」
ガヴリール「別にいいじゃん、めんどくさい」
ヴィーネ「ちゃんと整えてあげれば……ほら!こんなに綺麗なのに」サラサラ
ガヴリール「……そう、かな」
ヴィーネ「見た目だけでも天使らしくしないとダメよ?」
ガヴリール「さらっと失礼なこと言うな」ムスッ
ヴィーネ「……」サラサラ
ガヴリール「……」
ヴィーネ「……」ススーッ サラサラ
ガヴリール「……あのー、ヴィーネさん?」
ヴィーネ「んっ!?何?」ビクッ
ガヴリール「いやー、いつまで髪触ってるのかなって」
ヴィーネ「あっ、ごめん!なんか手触りよくって……」
ガヴリール「……まあ、別に好きなだけ触っててもいいんだけど……」ボソッ
ヴィーネ「えっ、でもゲームの時間が……」
ガヴリール「それとこれとはっ!……別問題だし」
ガヴリール「切ってもらう対価としてこれくらい払ってもいいかなー、なんて」
ヴィーネ「……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね♪」
ヴィーネ「……」ススーッ サラサラ…
ヴィーネ(まっすぐストレートな、透き通るような綺麗な金髪)
ヴィーネ(こうやって指を絡ませると沈み込むように馴染んで、すーっと素直に指が通る)
ヴィーネ(ずっとこうやっていたくなる、クセになる感覚)
ヴィーネ(なんだか懐かしい感じがするのは何でかしら)
ガヴリール(なんだろ、ヴィーネに髪触られるの、嫌じゃないっていうか)
ガヴリール(ヴィーネの指先触れられてる髪から、優しさが伝わってくる)
ガヴリール(気持ちいいな……)トローン…
ガヴリール(なんか懐かしい感じがするのは何でだろう)
ヴィーネ「……」ボーッ
ガヴリール「……」ボーッ
ヴィーネ「はっ!私ったら何を……」
ガヴリール「うわっ!そ、そうだよ何ぼーっとしてんの!」
ヴィーネ「ガヴだってぼーっとしてたじゃない!」
ガヴリール「しっ、しーてーなーい!」
ヴィーネ「してましたーっ!」
ガヴィーネ「むぅ~~っ……!」
ガヴリール「……」ジーッ
ヴィーネ「……」ジーッ
ガヴリール「……ふっ」
ヴィーネ「ふふっ」
ガヴリール「なに張り合ってんだよ私たち」
ヴィーネ「ほんとにね……ふふっ♪」
ガヴリール「ま、緊張も解けたってことで……そろそろお願いするよ」
ヴィーネ「わかったわ、待たせてごめんね」
ヴィーネ「じゃあ、切っていくけど……ほんとにいいのね?」
ガヴリール「大丈夫だって。私も見てるから、ミスってたら言うからさ」
ヴィーネ「わかったわ。じゃあまずは梳きばさみで全体を軽くしていくわね」
ガヴリール「ういーっす」
ヴィーネ「……」チョキチョキチョキ
ガヴリール「……」
ヴィーネ(緊張する……)チョキチョキ
ガヴリール「そんなに強張らなくていいよ、ちゃんとできてるし」
ヴィーネ「そう?ならいいんだけど」
チョキッ チョキチョキ
ヴィーネ(全体のバランスを考えて……毛量が偏らないように)
ヴィーネ(意外と難しいわね……)
ガヴリール「ヴィーネ?」
ヴィーネ「ん? どうしたのガヴ?」
ガヴリール「暇だからさ、なんか話してよ」
ヴィーネ「あのねえ……ガヴは暇かもしれないけど私は集中してるのよ」
ガヴリール「じゃあ歌でもいいよ。料理してるときとか歌ってるじゃん」
ヴィーネ「あ、あれ聞いてたの……? ちょっと恥ずかしいんだけど」テレッ
ガヴリール「あれ聴くの結構好きなんだよね、楽しそうな感じで」
ヴィーネ「そうなの……/// で、でも今は歌わないわよ、絶対!」
~5分後~
ヴィーネ「ふんふんふふ~ん♪」
ヴィーネ「綺麗な金髪きっちり切って~♪」
ヴィーネ「ちょきちょきちょきちょき梳きましょう~♪」
ガヴリール(歌ってるじゃん……もしかして無自覚なのか?)
ガヴリール(……でもなんか、聴いてると安心するというか)
ガヴリール(昔、お母さんに髪を切ってもらったの思い出すな……)
ガヴリール「お母さん……」ボソッ
ヴィーネ「はっ!?私はあなたのお母さんじゃないわよっ!」クワッ!!
ガヴリール「なんだその過剰反応!?」ビクッ
ヴィーネ「うん、だいたい梳けたわね。どう?」
ヴィーネ「見た目はそんなに変わらないんだけど……鏡を見てみて?」
ガヴリール「どれどれ……おおー、いいじゃんいいじゃん!軽くなって涼しくなったよ」
ガヴリール「ヴィーネって理容師の素質あるんじゃない?」
ヴィーネ「悪魔の素質は無いのにね……」ドヨーン
ガヴリール「ちょっ、勝手に落ち込むなよ……褒め損じゃん」
ヴィーネ「……でも、ありがとうね。ちょっと自信持てたわ」
ガヴリール「あと、前髪も伸びてるから揃えてほしいんだけど……頼める?」
ヴィーネ「もちろんよ。理容師ヴィーネさんに任せなさい!」ニコッ
ヴィーネ「それじゃあ今度はこっちを向いて……っ!」ドキッ
ヴィーネ(わかってたけど、前髪を切るには向き合わないといけないのよね……)
ガヴリール「はいよ、椅子をヴィーネの正面に置けばいいんだな」クルッ
ガヴリール「……ヴィーネ? どうしたんだよ固まって」
ヴィーネ「あ、えっと……見つめられると緊張するな、というか」
ガヴリール「切ってる間は目を瞑るから大丈夫だろ」
ヴィーネ「あー……それもそうね」
ヴィーネ(それでも耐えられるかしら……)
ヴィーネ「長さはどれくらいがいいの?」
ガヴリール「目の上くらいかな。今のままだと完全に目が隠れちゃってるし」
ヴィーネ「前髪って結構印象変わるわよね。責任重大……」ドキドキ
ガヴリール「どうせ私のことなんて誰も見てないんだし、テキトーでいいんだよテキトーで」
ヴィーネ「いいわけないでしょ!!」
ガヴリール「うぇっ!?」ビクッ
ヴィーネ「あ、ごめん大声出して……でもきっと、誰も見てないなんてことはないわよ」
ガヴリール「ふ、ふーん……でも私のことを見てるなんて、相当物好きな奴なんだろうな?」ニヤッ
ヴィーネ「……本当にね?」クスッ
ヴィーネ「まずは前髪を横に揃えて切って……」チョキッ
ヴィーネ「自然に見えるように、細かくはさみを入れればいいわね」チョキチョキ
ヴィーネ(最初は怖かったけど、案外いけるものね)チョキチョキ
ヴィーネ(……)ジーッ
ヴィーネ(……目を瞑ってこっちを向いてるガヴを見てると……なんだか)
ガヴリール「……」
ヴィーネ(キスされるのを待ってるみたいに見えてくるような……)
ガヴリール「……ヴィーネ? 手が止まってるみたいだけど、どうかした?」
ヴィーネ「ひゃいっ! な、なんでもないわ! もうすぐ終わるからっ!」アセアセ
ガヴリール「?」
ヴィーネ「ふぅー……終わったわよ」
ガヴリール「どれどれ……おお、悪くないじゃん!視界が開けた!」
ヴィーネ「短すぎない? 変な形じゃない?」
ガヴリール「大丈夫、ちゃんとできてるよ。ありがと」
ヴィーネ「じゃあ、片付けましょうか。ビニール袋を外して、新聞紙をまとめて……」
ガヴリール「あ、ちょっと待って」
ヴィーネ「どうしたの?」
ガヴリール「もうひとつお願いがあるんだけどさ……あとで、さっきみたいに髪を撫でてくれない?」
ヴィーネ「……えっと、それは……」
ガヴリール「髪を切ったあとの手触りを確認してほしいの!それだけ!」プイッ
ヴィーネ「……うん。わかったわ」クスッ
ヴィーネ「……」サラサラ
ガヴリール「……どう?」
ヴィーネ「ん、柔らかくて良い感触よ。」
ガヴリール「あのさ……さっき撫でられた時さ、なんか懐かしい感じがしたんだ」
ヴィーネ「えっ、ガヴもなの? 実は私も思い出して……」
ガヴリール「ヴィーネもだったんだ……なんか嬉しいな」
ヴィーネ「忘れるわけがないじゃない、大切な思い出よ」
ガヴリール「それもそうか」フフッ
ガヴリール「私が天界から下りてきて、私たちが出会って友達になって」
ヴィーネ「ガヴったら本当にいい子だったから、可愛くてつい何回も頭を撫でさせてもらったわね」
ガヴリール「……今はこんな駄天使だけどな」
ヴィーネ「……こんな駄天使でも、ガヴはガヴよ。変わらないわ」
ガヴリール「この懐かしさは、あの時と同じ感触だったんだな」
ヴィーネ「……髪を整えるだけで、こんなに印象が変わるなんてね」ナデナデ
ガヴリール「髪は女の命とはよく言ったもんだな」
ヴィーネ「ねえ、どれくらい撫でてていいのかしら」ナデナデ
ガヴリール「……ヴィーネの気の済むまで、ずっと撫でてていいよ」
ヴィーネ「……うん」ナデナデ
…………
……
ガヴリール「今日はほんとにありがとな、助かった」
ヴィーネ「ううん、私もちょっと楽しかったわ。時間かかっちゃってごめんね、イベントがあったんでしょ?」
ガヴリール「いいんだよ、ゲームなんてちょっとの課金で逆転できるんだし」ガシッ
ヴィーネ「そんなことしてるからお金がなくなるのよ……」
ガヴリール「ヴィーネが散髪してたら、散髪代が浮くようになるからいいんだよ!」ニヤッ
ヴィーネ「あんたねえ……」
ガヴリール「あのさ、迷惑じゃなかったら……これからも頼みたいんだけど、どうかな」チラッ
ヴィーネ「……いいに決まってるじゃない!」ニコッ
ヴィーネ「だって私は、ガヴ専属の理容師さんなんだもの、ね♪」
おしまい。
39 : 以下、\... - 2017/07/18 22:16:41.500 sXdPCUCI0.net 25/25ありがとうございました。ヴィーネがガヴの髪を切るだけのお話でした。